(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127360
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ターボチャージャ用のコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20240912BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240912BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F02B39/00 G
F04D29/44 P
F04D29/44 X
F04D29/66 L
F04D29/66 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036475
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 智己
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佳祐
【テーマコード(参考)】
3G005
3H130
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA11
3G005FA12
3G005GB15
3G005GB85
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB47
3H130AC14
3H130BA05B
3H130BA13B
3H130CA02
3H130CA13
3H130CA21
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130DD09Z
3H130EA06B
3H130EA07B
(57)【要約】
【課題】コンプレッサインペラが回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができるターボチャージャ用のコンプレッサを提供する。
【解決手段】ターボチャージャ用のコンプレッサ1のコンプレッサハウジング3には、コンプレッサインペラ2が回転可能な状態で収容されたシュラウド流路32と、シュラウド流路32の外周側において、シュラウド流路32を流れる空気Aの一部がシュラウド流路32の上流側L1へ循環される循環流路33とが形成されている。シュラウド流路32に繋がる循環流路33の出口連通部333には、循環流路33を流れる空気Aをインペラベーン21の上流部210へ導入するためのガイドベーン41が周方向Cに並んで複数形成されている。複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路、及び前記シュラウド流路の外周側において、前記シュラウド流路を流れる空気の一部が前記シュラウド流路の上流側へ循環される循環流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記シュラウド流路に繋がる前記循環流路の出口部には、前記循環流路を流れる空気を前記インペラベーンの上流部へ導入するためのガイドベーンが周方向に並んで複数形成されており、
複数の前記ガイドベーンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項2】
複数の前記インペラベーンは、周方向に等間隔に並んで形成されており、
前記ガイドベーンは、前記循環流路の軸方向の上流側位置において、径方向の外周側から内周側へ突出するとともに軸方向の上流側から下流側へ突出して形成されており、
複数の前記ガイドベーンの枚数と複数の前記インペラベーンの枚数との関係が1以外の公約数を有する関係にあり、
前記コンプレッサインペラが回転する際に、前記ガイドベーンの内周側端面における周方向の中心位置と、前記インペラベーンの上流側端面における周方向の幅の範囲とが、周方向において同時に複数箇所で重ならないよう、複数の前記ガイドベーンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチと異なる、請求項1に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項3】
複数の前記ガイドベーンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、前記ガイドベーンの内周側端面における周方向の幅の範囲内で、他の形成ピッチと異なる、請求項1又は2に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項4】
前記循環流路を周方向に仕切る流路仕切部が、周方向に並んで複数形成されており、
複数の前記流路仕切部の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、請求項1に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項5】
前記シュラウド流路における前記コンプレッサインペラよりも上流側には、周方向に並んで配置された複数の整流フィンが形成されており、
複数の前記整流フィンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、請求項1又は4に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項6】
インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路、及び前記シュラウド流路の外周側において、前記シュラウド流路を流れる空気の一部が前記シュラウド流路の上流側へ循環される循環流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記循環流路を周方向に仕切る流路仕切部が、周方向に並んで複数形成されており、
複数の前記流路仕切部の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項7】
複数の前記インペラベーンは、周方向に等間隔に並んで形成されており、
複数の前記流路仕切部の個数と複数の前記インペラベーンの枚数との関係が1以外の公約数を有する関係にあり、
前記コンプレッサインペラが回転する際に、前記流路仕切部における周方向の中心位置と、前記インペラベーンの上流側端面における周方向の幅の範囲とが、周方向において同時に複数箇所で重ならないよう、複数の前記流路仕切部の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチと異なる、請求項6に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項8】
インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記コンプレッサハウジングは、前記シュラウド流路の上流側における吸込口に、周方向に並んで配置された複数の整流フィンを有し、
複数の前記整流フィンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサ。
【請求項9】
複数の前記インペラベーンは、周方向に等間隔に並んで形成されており、
複数の前記整流フィンの枚数と複数の前記インペラベーンの枚数との関係が1以外の公約数を有する関係にあり、
前記コンプレッサインペラが回転する際に、前記整流フィンにおける周方向の中心位置と、前記インペラベーンの上流側端面における周方向の幅の範囲とが、周方向において同時に複数箇所で重ならないよう、複数の前記整流フィンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチと異なる、請求項8に記載のターボチャージャ用のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用のコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関に搭載されるターボチャージャは、内燃機関の排気ガスの流れを受けて回転するタービンと、タービンと同一軸上に配置され、タービンの回転力を受けて空気を圧縮するコンプレッサとを備える。コンプレッサは、コンプレッサインペラがコンプレッサハウジング内に回転可能に収容されている。コンプレッサにおいては、サージングの抑制、圧縮効率の向上等のために、コンプレッサインペラに導入する空気を循環させること等が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1のターボチャージャ用遠心圧縮機のハウジングにおいては、シュラウド部における環状の空気室に設けられたガイドベーンと、空気室から導入する圧縮空気をインペラ上流部へ導出する循環流路とを形成している。これにより、インペラで圧縮された空気を効率良くインペラ上流側へと循環させて、遠心圧縮機のサージングを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターボチャージャ用のコンプレッサにおいては、インペラの回転による圧縮空気の吐出圧力が低下して運転が不安定になるサージングの課題を解決するために、ガイドベーン及び循環流路を形成することが行われる。しかし、発明者の研究により、ガイドベーンを形成する場合には、コンプレッサインペラが回転する際に、ガイドベーンの形成位置とコンプレッサインペラのインペラベーンの位置とが、周方向の複数箇所において同時に一致する関係にあるときには、共鳴現象による騒音、振動等が生じやすいことが判明した。
また、ガイドベーン以外にも、コンプレッサインペラが回転する際に、インペラベーンと周方向の複数箇所において同時に一致する関係にある突起物等があると、共鳴現象による騒音、振動等が生じる場合があると考えられる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、コンプレッサインペラが回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができるターボチャージャ用のコンプレッサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路、及び前記シュラウド流路の外周側において、前記シュラウド流路を流れる空気の一部が前記シュラウド流路の上流側へ循環される循環流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記シュラウド流路に繋がる前記循環流路の出口部には、前記循環流路を流れる空気を前記インペラベーンの上流部へ導入するためのガイドベーンが周方向に並んで複数形成されており、
複数の前記ガイドベーンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサにある。
【0008】
本発明の他の態様は、インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路、及び前記シュラウド流路の外周側において、前記シュラウド流路を流れる空気の一部が前記シュラウド流路の上流側へ循環される循環流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記循環流路を周方向に仕切る流路仕切部が、周方向に並んで複数形成されており、
複数の前記流路仕切部の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサにある。
【0009】
本発明のさらに他の態様は、インペラベーンが周方向に並んで複数形成されたコンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラが回転可能な状態で収容されたシュラウド流路が形成されたコンプレッサハウジングと、を備え、
前記コンプレッサハウジングは、前記シュラウド流路の上流側における吸込口に、周方向に並んで配置された複数の整流フィンを有し、
複数の前記整流フィンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる、ターボチャージャ用のコンプレッサにある。
【発明の効果】
【0010】
前記一態様のターボチャージャ用のコンプレッサにおいては、複数のガイドベーンの形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にしている。具体的には、複数のガイドベーンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかを、他の形成ピッチと異ならせている。この構成により、コンプレッサインペラが回転する際に、ガイドベーンの形成位置とコンプレッサインペラのインペラベーンの形成位置とが、周方向の複数箇所において同時に一致しないようにすることができる。
【0011】
それ故、前記一態様のターボチャージャ用のコンプレッサによれば、コンプレッサインペラが回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【0012】
本発明の他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサにおいては、複数の流路仕切部の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にしている。具体的には、複数の流路仕切部の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかを、他の形成ピッチと異ならせている。この構成により、コンプレッサインペラが回転する際に、流路仕切部の形成位置とコンプレッサインペラのインペラベーンの形成位置とが、周方向の複数箇所において同時に一致しないようにすることができる。
【0013】
それ故、前記態様のターボチャージャ用のコンプレッサによれば、コンプレッサインペラが回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【0014】
本発明のさらに他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサにおいては、複数の整流フィンの形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にしている。具体的には、複数の整流フィンの間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかを、他の形成ピッチと異ならせている。この構成により、コンプレッサインペラが回転する際に、整流フィンの形成位置とコンプレッサインペラのインペラベーンの形成位置とが、周方向の複数箇所において同時に一致しないようにすることができる。
【0015】
それ故、前記態様のターボチャージャ用のコンプレッサによれば、コンプレッサインペラが回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1にかかる、ターボチャージャ用のコンプレッサを断面によって示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、
図1の一部を拡大して示す説明図。
【
図3】実施形態1にかかる、コンプレッサインペラを斜視した状態で示す説明図。
【
図4】実施形態1にかかる、コンプレッサハウジングのガイドベーンの周辺を斜視した状態で示す説明図。
【
図5】実施形態1にかかる、コンプレッサハウジングの循環流路の周辺を斜視した状態で示す説明図。
【
図6】実施形態1にかかる、周方向に不均一な形成ピッチで形成された複数のガイドベーンを示す、
図1のVI-VI断面図。
【
図7】実施形態1にかかる、周方向に不均一な形成ピッチで形成された他の複数のガイドベーンを示す、
図1のVI-VI断面相当図。
【
図8】比較形態1にかかる、周方向に均一な形成ピッチで形成された複数のガイドベーンを示す、
図1のVI-VI断面相当図。
【
図9】実施形態2にかかる、ターボチャージャ用のコンプレッサを断面によって示す説明図。
【
図10】実施形態2にかかる、
図9の一部を拡大して示す説明図。
【
図11】実施形態2にかかる、循環流路の一部の斜視断面図。
【
図12】実施形態2にかかる、周方向に不均一な形成ピッチで形成された複数の流路仕切部を示す、
図10のXII-XII断面図。
【
図13】比較形態2にかかる、周方向に均一な形成ピッチで形成された複数の流路仕切部を示す、
図10のXII-XII断面相当図。
【
図14】実施形態3にかかる、ターボチャージャ用のコンプレッサを断面によって示す説明図。
【
図15】実施形態3にかかる、周方向に不均一な形成ピッチで形成された複数の整流フィンを示す、
図14のXV矢視図。
【
図16】比較形態3にかかる、周方向に均一な形成ピッチで形成された複数の流路仕切部を示す、
図14のXV矢視相当図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述したターボチャージャ用のコンプレッサにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1は、
図1~
図3に示すように、コンプレッサインペラ2及びコンプレッサハウジング3を備える。コンプレッサインペラ2には、インペラベーン21が周方向Cに並んで複数形成されている。コンプレッサハウジング3には、コンプレッサインペラ2が回転可能な状態で収容されたシュラウド流路32と、シュラウド流路32の外周側において、シュラウド流路32を流れる空気Aの一部がシュラウド流路32の上流側L1へ循環される循環流路33とが形成されている。
【0018】
図4~
図6に示すように、シュラウド流路32に繋がる循環流路33の出口部としての出口連通部333には、循環流路33を流れる空気Aをインペラベーン21の上流部210へ導入するためのガイドベーン41が周方向Cに並んで複数形成されている。複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチθと異なっている。
【0019】
以下に、本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1について詳説する。
図1に示すように、ターボチャージャは、自動車等に用いられるエンジン等の内燃機関に搭載される。ターボチャージャは、内燃機関の排気ガスの流れを受けて回転するタービンと、タービンと同一軸上に配置され、タービンの回転力を受けて空気Aを圧縮するコンプレッサ1とを備える。タービンホイール及びコンプレッサインペラ(コンプレッサホイール)2は、回転軸11の両側にそれぞれ配置されており、ハウジング内に収容されている。コンプレッサハウジング3は、ハウジングの一部を構成する。
【0020】
(コンプレッサインペラ2)
図2及び
図3に示すように、コンプレッサインペラ2は、軸方向Lの上流側L1から吸引する空気Aを、軸方向Lの下流側L2において径方向Rの外周側へ吐出するために、軸方向Lの上流側L1から下流側L2に向けて外径が大きくなる回転ベース20と、回転ベース20の外周面に形成され、軸方向Lの上流側L1から下流側L2に向けて外径が大きくなる複数のインペラベーン21とを有する。回転ベース20は、回転軸11の外周に配置されている。複数のインペラベーン21は、周方向Cに等間隔に並んで形成されている。各インペラベーン21は、軸方向Lの上流側L1から下流側L2に向かうに連れて、周方向Cの一方側から他方側に向けて傾斜する状態で形成されている。換言すれば、各インペラベーン21は、周方向Cに螺旋状にねじれる状態で形成されている。
【0021】
各インペラベーン21の上流側端面211及び下流側端面は、径方向Rに沿って配置されている。本形態のコンプレッサインペラ2において、互いに隣接する各インペラベーン21の周方向Cの間には、補助インペラベーン22が配置されている。各補助インペラベーン22の上流側端面221は、各インペラベーン21の上流側端面211よりも軸方向Lの下流側L2に配置されている。なお、コンプレッサインペラ2に補助インペラベーン22は形成されていなくてもよい。
【0022】
(コンプレッサハウジング3)
図1及び
図2に示すように、コンプレッサハウジング3は、コンプレッサインペラ2を内部に収容するよう、複数の部品を組み合わせて形成されている。本形態においては、コンプレッサハウジング3を構成する複数の部品の一例を示す。本形態のコンプレッサハウジング3は、コンプレッサ1における空気Aの流れの上流側L1に配置された第1ハウジング3Aと、第1ハウジング3Aの下流側L2に配置された第2ハウジング3Bと、第2ハウジング3Bの下流側L2に配置された第3ハウジング3C及び第4ハウジング3Dとを有する。空気Aの流れの上流側L1は、軸方向Lの上流側L1のことを示す。
【0023】
コンプレッサハウジング3は、吸込口31、シュラウド流路32、循環流路33、ディフューザ流路34、スクロール室35を有する。吸込口31は、コンプレッサハウジング3の軸方向Lの上流側L1に形成されており、コンプレッサインペラ2に向けて空気Aが流入される部分である。シュラウド流路32は、吸込口31の軸方向Lの下流側L2に形成されており、軸方向Lの下流側L2及び周方向Cの外周側に向けて、コンプレッサインペラ2によって空気Aが吸い込まれる部分である。循環流路33は、シュラウド流路32の径方向Rの外周側に形成されており、シュラウド流路32を軸方向Lの下流側L2へ流れる空気Aの一部が、シュラウド流路32の軸方向Lの上流側L1へ循環される部分である。
【0024】
ディフューザ流路34は、シュラウド流路32の軸方向Lの下流側L2において径方向Rの内周側から外周側に向けて形成されており、コンプレッサインペラ2から径方向Rの外周側へ吐出される空気Aが昇圧される部分である。スクロール室35は、ディフューザ流路34の径方向Rの外周側に形成されており、ディフューザ流路34によって圧縮された空気Aがコンプレッサハウジング3の外部へ導かれる部分である。
【0025】
図2に示すように、第1ハウジング3Aは、径方向Rの内周側の位置に、吸込口31、シュラウド流路32、循環流路33及びガイドベーン41を形成し、径方向Rの中間位置及び外周側の位置に、ディフューザ流路34の軸方向Lの上流側L1の部分、及びスクロール室35の軸方向Lの上流側L1の部分を形成する。第2ハウジング3Bは、径方向Rの外周側の位置に、スクロール室35の軸方向Lの下流側L2の部分を形成する。
【0026】
第3ハウジング3C及び第4ハウジング3Dには、回転軸11を軸支するベアリング(図示略)が配置されている。また、第3ハウジング3Cは、ディフューザ流路34の軸方向Lの下流側L2の部分を形成する。
【0027】
循環流路33及びガイドベーン41は、シュラウド流路32を流れる空気Aの一部を再循環させることにより、シュラウド流路32に流れる空気Aの流量を増やして、空気Aの流量が不足することによって生じるサージングを抑制するために形成されている。循環流路33は、環状流路部331、入口連通部332及び出口連通部333によって形成されている。
【0028】
図2及び
図5に示すように、環状流路部331は、シュラウド流路32の径方向Rの外周側において、軸方向Lに延びる状態で環状に形成されている。入口連通部332は、シュラウド流路32と環状流路部331の軸方向Lの下流側L2の位置とを、周方向Cの複数箇所において径方向Rに連通している。出口連通部333は、シュラウド流路32と環状流路部331の軸方向Lの上流側L1の位置とを、複数のガイドベーン41によって仕切られた周方向Cの複数箇所において径方向Rに連通している。
【0029】
入口連通部332は、シュラウド流路32と循環流路33とを仕切る突出部30に、周方向Cの複数箇所に設けられた柱状の連結部334の間に形成されている。突出部30は、第1ハウジング3Aにおいて軸方向Lの下流側L2から上流側L1に向けて突出して形成されている。本形態の出口連通部333は、ガイドベーン41同士の周方向Cの間に形成された空間部42として形成されている。
【0030】
図4及び
図6に示すように、ガイドベーン41は、循環流路33の環状流路部331の軸方向Lの上流側L1の位置において、径方向Rの外周側から内周側へ突出するとともに軸方向Lの上流側L1から下流側L2へ突出して形成されている。複数のガイドベーン41は、周方向Cの一方側から他方側へ径方向Rに対して傾斜する状態で形成されている。コンプレッサインペラ2の回転方向Sは、複数のガイドベーン41が径方向Rの外周側から内周側に向けて傾斜する方向と同じである。ただし、ガイドベーン41の形状は特に限定されるものではなく、例えば、複数のガイドベーン41が、径方向Rに沿った形状とすることもできる。
【0031】
図2及び
図6に示すように、各ガイドベーン41は、各インペラベーン21の上流部210に対して径方向Rの外周側に位置する。また、各インペラベーン21においては、各ガイドベーン41の内周側端面411の最も近くに上流側端面211が位置する。コンプレッサインペラ2が回転する際の騒音、振動等の発生に関しては、各ガイドベーン41の内周側端面411の周方向Cの位置と、各インペラベーン21の上流側端面211の周方向Cの位置とが同時に複数箇所で一致する(又は重なる)か否かが大きく影響する。
【0032】
本形態においては、各ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの幅Wgは、各インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiよりも大きい。本形態の各インペラベーン21の上流側端面211は、径方向Rに沿って形成されている。なお、このような形態とは異なり、各インペラベーン21の上流側端面211が、径方向Rに対して湾曲して形成されていている形態とすることもできる。この場合には、「インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wi」は、インペラベーン21の上流側端面211の径方向Rの最外周位置における周方向Cの幅Wiとなる。また、幅Wgを幅Wi以下とすることもできる。
【0033】
複数のガイドベーン41が形成された直径の範囲は、コンプレッサインペラ2の各インペラベーン21の上流部210が形成された直径の範囲よりも大きい。そして、本形態において、複数のガイドベーン41の枚数は、複数のインペラベーン21の枚数よりも多い。ただし、複数のガイドベーン41の枚数を、複数のインペラベーン21の枚数以下とすることもできる。
【0034】
なお、
図2の破線で示すように、複数のガイドベーン41は、第1ハウジング3Aとは別体の部品3Eに形成されていてもよい。
【0035】
(ガイドベーン41とインペラベーン21との位置関係)
図3に示すように、複数のインペラベーン21は、回転が安定するよう、周方向Cに等間隔に並んで形成されている。換言すれば、複数のインペラベーン21は、周方向Cに均一な形成ピッチで形成されている。これに対し、
図4に示すように、複数のガイドベーン41は、騒音、振動等を改善するために、周方向Cに等間隔に並ばないよう、不均一な形成ピッチθで形成されている。
【0036】
具体的には、コンプレッサインペラ2が回転する際に、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないよう、複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチθと異なる。「周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないよう」とは、コンプレッサインペラ2が回転する際に、中心位置Ogと幅Wiの範囲とが周方向Cの1か所でのみ重なる状態が繰り返し形成されることを意味する。
【0037】
ここで、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogとの間で周方向Cの幅Wiの範囲を比較するインペラベーン21は、補助インペラベーン22を除くものとする。
【0038】
複数のガイドベーン41及び複数のインペラベーン21を周方向Cに均一な形成ピッチで形成する場合に、複数のガイドベーン41の枚数と複数のインペラベーン21の枚数とが1以外の公約数がある枚数の関係にあるときには、コンプレッサインペラ2が回転する際に、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重なる。例えば、
図8に示すように、インペラベーン21の枚数が等間隔に6枚設けられ、ガイドベーン41の枚数が等間隔に9枚設けられている場合には、コンプレッサインペラ2が1回転する間に、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に3箇所で重なるときが繰り返し生じる。この場合には、コンプレッサインペラ2が回転する際に、騒音、振動等が生じやすい。
【0039】
ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないようにするためには、ガイドベーン41の枚数とインペラベーン21の枚数との関係を1以外の公約数がない関係にすることが考えられる。例えば、インペラベーン21の枚数が6枚の場合であれば、ガイドベーン41の枚数を11枚とする関係がこれに該当する。6と11の間に1以外の公約数が存在しないことにより、コンプレッサインペラ2が1回転する間に、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重なることがない。
【0040】
しかし、ガイドベーン41の枚数を11枚にすると、ガイドベーン41同士の周方向Cの間に形成された個々の空間部42の容積が小さくなる。この場合には、循環流路33及びガイドベーン41によってインペラベーン21の上流部210に循環される空気Aの流量が減少し、サージングの発生を抑制するために必要とされる空気Aの流量を確保できない可能性がある。
【0041】
そこで、本形態においては、複数のガイドベーン41の枚数と複数のインペラベーン21の枚数とは、1以外の公約数がある枚数の関係にある場合において、複数のガイドベーン41を不均一な形成ピッチθで形成している。本形態においては、
図6に示すように、インペラベーン21の枚数が6枚であり、ガイドベーン41の枚数が9枚である場合において、複数のガイドベーン41を不均一な形成ピッチθ1,θ2,θ3,θ4で形成している。
【0042】
図8に示すように、インペラベーン21の枚数が6枚であり、ガイドベーン41の枚数が9枚である場合に、ガイドベーン41を均一な形成ピッチθで形成すると、形成ピッチθは40°となる。この
図8の形態を比較形態1ということとする。この場合、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲(以下において、適宜「特定範囲」ともいう。)とは同時に3箇所において重なる。すなわち、ある1セットのガイドベーン群410の3つのガイドベーン41A,41B,41Cは、特定範囲に同時に重なる。この3箇所における重なりは、3セットのガイドベーン群410について順次生じる。
【0043】
そこで、比較形態1(
図8)の場合において、3セットのガイドベーン群410のそれぞれについて、周方向Cの位置が特定範囲と重なる3つのガイドベーン41A,41B,41Cが、同時に特定範囲に重ならないように形成ピッチを調整する。つまり、
図6に示すごとく、
図8の状態に対して、3つのガイドベーン41A,41B,41Cのうち1つのガイドベーン41Aの位置は周方向Cの一方側に所定量ずらし、他の1つのガイドベーン41Bの位置は周方向Cの他方側に所定量ずらす。位置をずらす前(すなわち
図8の状態)のガイドベーン41A,41Bを破線によって示す。これにより、コンプレッサインペラ2が回転する際に、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重なることがなくなる。
【0044】
本形態においては、複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθのうちの少なくともいずれかは、ガイドベーン41の内周側端面411における周方向Cの幅Wgの範囲内で、他の形成ピッチθと異なるようにしている。すなわち、3セットのガイドベーン群410のそれぞれについて、
図8の状態において周方向Cの位置が特定範囲と重なる3つのガイドベーン41A,41B,41Cのうち、1つのガイドベーン41Aは、内周側端面411における周方向Cの幅Wgの範囲内で周方向Cの一方側にずらし、他の1つのガイドベーン41Bは、内周側端面411における周方向Cの幅Wgの範囲内で周方向Cの他方側にずらしている。
【0045】
各ガイドベーン41の幅Wgが、軸方向(高さ方向)Lにおいて変化している場合には、各ガイドベーン41の幅Wgは平均値とすればよい。また、
図8の状態において周方向Cの位置が特定範囲と重なる3つのガイドベーン41A,41B,41Cのうち、1つのガイドベーン41Aは、内周側端面411における周方向Cの幅Wgの範囲内で周方向Cの一方側にずらし、他の1つのガイドベーン41Bは、内周側端面411における周方向Cの幅Wgの範囲内で、1つのガイドベーン41Aをずらした量とは異なる量だけ、周方向Cの一方側にずらしてもよい。
【0046】
ガイドベーン41の形成ピッチθを周方向Cにずらす量は、コンプレッサハウジング3の周方向Cの1周分である360°をガイドベーン41の枚数で割った基準形成ピッチに対して、±5%の範囲内としてもよい。本形態においては、基準形成ピッチが40°であるため、±2°の範囲内でガイドベーン41の形成ピッチθをずらしてもよい。
【0047】
図6に示すように、コンプレッサインペラ2が回転する際の騒音、振動等の発生をより効果的に低減するためには、ガイドベーン41の内周側端面411の周方向Cの幅Wgの範囲と、インペラベーン21の上流側端面211の周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないようにすることが好ましい。ここで、ガイドベーン41の内周側端面411の周方向Cの幅Wgが軸方向Lによって異なる場合には、幅Wgが最大となる高さ位置(軸方向Lの位置)において、幅Wgの範囲と幅Wiの範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないようにすることが好ましい。
【0048】
ただし、例えば、
図7のθ5,θ6,θ7に示すように、ガイドベーン41の形成ピッチθを周方向Cにずらす量を極端に大きくしすぎると、ガイドベーン41同士の間に形成された空間部42の容積が、位置によって極端に変化することになり、コンプレッサインペラ2の回転時のサージングを低減する効果が低下するおそれがある。
【0049】
ガイドベーン41の枚数とインペラベーン21の枚数との組み合わせは、種々の組み合わせとしてもよい。例えば、ガイドベーン41の枚数を12枚とするとともにインペラベーン21の枚数を8枚としてもよい。また、例えば、ガイドベーン41の枚数を10枚とするとともにインペラベーン21の枚数を6枚としてもよい。
【0050】
また、
図6の例について一般化した表現をすれば、複数セットのガイドベーン群410のそれぞれについて、内周側端面411における周方向Cの中心位置Ogが、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲と周方向Cにおいて同時に重なる複数のガイドベーン41のうち、少なくともいずれかのガイドベーン41の中心位置Ogを基準形成ピッチの形成位置から周方向Cにずらせばよい。
【0051】
複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθの中には、同じものがあってもよい。また、複数のガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθのすべてが、互いに異なっていてもよい。
【0052】
(作用効果)
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1においては、複数のガイドベーン41の形成ピッチθの少なくともいずれかを不均一にしている。具体的には、いくつかのガイドベーン41の間の周方向Cにおける形成ピッチθを、基準形成ピッチから周方向Cに所定量ずらしている。この構成により、コンプレッサインペラ2が回転する際に、ガイドベーン41の形成位置としての内周側端面411の周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の形成位置としての上流側端面211の周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cの複数箇所において同時に一致しないようにしている。
【0053】
コンプレッサインペラ2の回転時の騒音、振動等は、ガイドベーン41の内周側端面411とインペラベーン21の上流側端面211とが接近したときに、両者の間に形成される隙間に空気Aが流れ込むことによって生じると考えられる。そのため、ガイドベーン41の内周側端面411の周方向Cの中心位置Ogと、インペラベーン21の上流側端面211の周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cの複数箇所において同時に一致しないことにより、コンプレッサインペラ2の固有振動数に基づく共鳴現象が生じにくくなると考える。
【0054】
それ故、本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1によれば、コンプレッサインペラ2が回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【0055】
<実施形態2>
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1は、
図9~
図12に示すごとく、循環流路33を周方向に仕切る流路仕切部335を有する。流路仕切部335は、周方向に並んで複数形成されている形態である。複数の流路仕切部335の間の周方向における形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる。
【0056】
本形態において、流路仕切部335は、
図9、
図10に示すごとく、循環流路33の環状流路部331における、出口連通部333よりも軸方向Lの下流側L2の位置に設けてある。流路仕切部335は、入口連通部332に対向する位置に、切欠部336を有する。
ただし、流路仕切部335の具体的形状および形成位置は、これに限定されることはなく、循環流路33の少なくとも一部を周方向に仕切る機能を有するものであれば、他の形状、他の形成位置とすることもできる。例えば、流路仕切部335は、軸方向Lにおいて、入口連通部332と出口連通部333との間のみに形成された構成とすることもできる。
【0057】
本形態において、
図12に示すごとく、流路仕切部335は、周方向の3か所に形成されている。この場合、複数の流路仕切部335の間の周方向における間隔は、3個形成されることとなるが、例えば、
図12に示すごとく、一つの形成ピッチα1が、他の形成ピッチα2、α3と異なるように形成されている。
【0058】
コンプレッサインペラ2については、実施形態1と同様の構成を有する。すなわち、複数のインペラベーン21は、周方向に等間隔に並んで形成されている。
複数の流路仕切部335の個数と複数のインペラベーン21の枚数との関係が1以外の公約数を有する関係にある。すなわち、例えば、
図12に示すように、インペラベーン21の枚数が6枚であり、流路仕切部335の個数が3個であり、両者の関係が。1以外の公約数(この場合「3」)を有する関係にある。
【0059】
コンプレッサインペラ2が回転する際に、流路仕切部335における周方向Cの中心位置Ofと、インペラベーン21の上流側端面211(
図3参照)における周方向Cの幅の範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないように構成されている。このような構成となるように、複数の流路仕切部335の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチと異なるように形成されている。
【0060】
仮に、
図13に示すごとく、3個の流路仕切部335が周方向に等間隔に設けられている場合、流路仕切部335の形成ピッチα0は120°となる。この
図13の形態を比較形態2ということとする。この場合、流路仕切部335の周方向Cの中心位置Ofと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲(以下において、適宜「特定範囲」ともいう。)とは同時に3箇所において重なる。このように、流路仕切部335における周方向Cの中心位置Ofと、インペラベーン21の特定範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重なると、騒音、振動の要因となり得る。
【0061】
そこで、実施形態2においては、
図12に示すごとく、上述のように、複数の流路仕切部335の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれか(本形態においてはα1)が、他の形成ピッチ(本形態においてはα2、α3)と異なるように、流路仕切部335が配置されている。
【0062】
なお、実施形態2においては、実施形態1に示した連結部334(
図4参照)を設けずに、上記流路仕切部335を設けている。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0063】
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1においては、複数の流路仕切部335の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にしている。この構成により、コンプレッサインペラ2が回転する際に、流路仕切部335の中心位置Ofと、インペラベーン21の周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cの複数箇所において同時に一致しないようにしている。
【0064】
それ故、本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1によれば、コンプレッサインペラ2が回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【0065】
また、本形態においては、複数のガイドベーン41の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にすると共に、複数の流路仕切部335の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一としている。これにより、騒音、振動をより効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、複数のガイドベーン41の形成ピッチを均一としつつ、複数の流路仕切部335の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一とした構成とすることもできる。この場合にも、複数のガイドベーン41の形成ピッチ、及び、複数の流路仕切部335の形成ピッチを、それぞれ均一とする場合に比べて、騒音、振動を抑制することができる。
【0067】
<実施形態3>
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1は、
図14、
図15に示すごとく、シュラウド流路32の上流側L1における吸込口31に、複数の整流フィン311を有する。複数の整流フィン311は、周方向に並んで配置されている。複数の整流フィン311の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれかは、他の形成ピッチと異なる。
【0068】
本形態において、整流フィン311は、ガイドベーン41よりも上流側L1の位置にある吸込口31に形成されている。整流フィン311は、軸方向L及び径方向Rに略平行な状態にて配置されている。整流フィン311は、シュラウド流路32に導入される空気の流れを整流する機能を有する。
【0069】
本形態において、
図15に示すごとく、整流フィン311は、周方向の8か所に形成されている。この場合、複数の流路仕切部335の間の周方向における間隔は、8個形成されることとなるが、例えば、
図15に示すごとく、8個の形成ピッチ(β1~β3等)が不均等となっている。
【0070】
コンプレッサインペラ2については、実施形態1と同様の構成を有する。すなわち、複数のインペラベーン21は、周方向に等間隔に並んで形成されている。
複数の整流フィン311の個数と複数のインペラベーン21の枚数との関係が1以外の公約数を有する関係にある。すなわち、例えば、
図15に示すように、インペラベーン21の枚数が6枚であり、整流フィン311の枚数が8個であり、両者の関係が、1以外の公約数(この場合「2」)を有する関係にある。
【0071】
コンプレッサインペラ2が回転する際に、整流フィン311における周方向Cの中心位置Orと、インペラベーン21の上流側端面211(
図3参照)における周方向Cの幅の範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重ならないように構成されている。このような構成となるように、複数の整流フィン311の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれかが、他の形成ピッチと異なるように形成されている。
【0072】
仮に、
図16に示すごとく、8枚の整流フィン311が周方向に等間隔に設けられている場合、整流フィン311の形成ピッチβ0は45°となる。この
図16の形態を比較形態3ということとする。この場合、整流フィン311の周方向Cの中心位置Orと、インペラベーン21の上流側端面211における周方向Cの幅Wiの範囲(以下において、適宜「特定範囲」ともいう。)とは同時に2箇所において重なる。このように、整流フィン311における周方向Cの中心位置Orと、インペラベーン21の特定範囲とが、周方向Cにおいて同時に複数箇所で重なると、騒音、振動の要因となり得る。
【0073】
そこで、実施形態3においては、
図15に示すごとく、上述のように、複数の整流フィン311の間の周方向Cにおける形成ピッチのうちの少なくともいずれか(例えばβ1)が、他の形成ピッチ(例えばβ2、β3)と異なるように、整流フィン311が配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0074】
本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1においては、複数の整流フィン311の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にしている。この構成により、コンプレッサインペラ2が回転する際に、整流フィン311の中心位置Orと、インペラベーン21の周方向Cの幅Wiの範囲とが、周方向Cの複数箇所において同時に一致しないようにしている。
【0075】
それ故、本形態のターボチャージャ用のコンプレッサ1によれば、コンプレッサインペラ2が回転する際に、共鳴現象による騒音、振動等が生じにくくすることができる。
【0076】
また、本形態においては、複数のガイドベーン41の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一にすると共に、複数の整流フィン311の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一としている。これにより、騒音、振動をより効果的に抑制することができる。
【0077】
なお、複数のガイドベーン41の形成ピッチを均一としつつ、複数の整流フィン311の形成ピッチの少なくともいずれかを不均一とした構成とすることもできる。この場合にも、複数のガイドベーン41の形成ピッチ、及び、複数の整流フィン311の形成ピッチを、それぞれ均一とする場合に比べて、騒音、振動を抑制することができる。
【0078】
或いは、本形態を、循環流路33を有さない、ターボチャージャ用のコンプレッサハウジングに適用することもできる。
【0079】
また、例えば、実施形態2と実施形態3とを組み合わせた構成とすることもできる。この場合は、騒音、振動の抑制効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0080】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0081】
1 コンプレッサ
2 コンプレッサインペラ
21 インペラベーン
210 上流部
3 コンプレッサハウジング
31 吸込口
311 整流フィン
32 シュラウド流路
33 循環流路
335 流路仕切部
41 ガイドベーン
42 空間部