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特開2024-127376水素精製用多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127376
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】水素精製用多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20240912BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240912BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240912BHJP
   C01B 32/312 20170101ALI20240912BHJP
【FI】
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01J20/30
C01B32/312
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036499
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 益宏
(72)【発明者】
【氏名】森田 優平
【テーマコード(参考)】
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4G066AA04B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA35
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA35
4G066CA38
4G066CA51
4G066DA04
4G066FA03
4G066FA18
4G066FA21
4G146AA06
4G146AB03
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC08A
4G146AC08B
4G146AC09A
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC23A
4G146AC23B
4G146AC28A
4G146AC28B
4G146AD11
4G146AD32
4G146BA22
4G146BA24
4G146BA31
4G146BB04
4G146BB05
4G146BC23
4G146BC33B
4G146BD02
4G146DA02
4G146DA05
4G146DA14
(57)【要約】
【課題】PSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる、多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の水素精製用多孔質材料は、アセトン吸着量が12.5質量分率%以上であり、かつ、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトン吸着量が12.5質量分率%以上であり、かつ、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL以上である、水素精製用多孔質材料。
【請求項2】
比表面積が550m/g以上1600m/g以下であり、かつ、前記アセトン吸着量をA(質量分率%)とし、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)としたときに、A/Bの比が72.5以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
前記0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)とし、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量をC(NmL/g)としたときに、C/Bの比が10.5以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項4】
充填密度が0.45g/mL以上0.80g/mL以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項5】
単位面積当たりの圧壊強度が0.60kgf/mm以上である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項6】
粒径が0.15mm以下の炭素粉末を含む原料を、粒状に成型する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質材料を備える、水素精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素精製用多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、最近のエネルギー変換の問題を始め、直接発電及び石油化学工業、並びに半導体、ニューセラミックスなどハイテク商品の製造時に必要な雰囲気ガスとして、並びに燃焼時に二酸化炭素を排出しないことから、従来の炭化水素原料に替わるクリーンエネルギーとして、熱源や燃料電池用途を始め大幅な需要の増加が期待されている。
【0003】
代表的な水素の分離精製方法としては、圧力スイング法(以下、「PSA法」とも称する)が挙げられる。PSA法は、石油化学プラントからのオフガス、天然ガス、及びナフサ等の水蒸気改質ガス、コークス炉ガス、並びにメタン、メタノールと水蒸気との反応による改質ガスなどの水素含有ガスから、分子篩炭素材などを吸着材として、水素以外のメタン、二酸化炭素、一酸化炭素、及び窒素などの不純物を吸着及び脱着することで除去する方法である。
【0004】
分子篩活性炭については、その吸着及び脱着性能をより向上させるために多くの研究が進められている。
例えば、特許文献1には、ミクロ孔とマクロ孔との大きさ及び分布を制御した水素精製用分子篩炭素材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-63397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の炭素材は、比表面積が500m/g以上、かつ、750m/gという低い領域に限定していることから、不純物ガスの吸着量が少ないという問題を有する。加えて、ミクロ孔の平均孔が0.6nm以上0.7nm以下という小さい細孔径の領域に限定していることから、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対する脱着性能が低いという問題を有する。以上の点から、水素精製に際し吸着工程での不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素の吸着量が少なく、かつ、脱着工程での不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素の脱着が十分に進行せず、水素精製に対する効率が悪いという問題を有する。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、PSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる、多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねてきた結果、特定の水素精製用多孔質材料が、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、PSA法において、効率的に水素精製を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の実施態様を含む。
【0010】
[1]アセトン吸着量が12.5質量分率%以上であり、かつ、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL以上である、水素精製用多孔質材料。
【0011】
[2]比表面積が550m/g以上1600m/g以下であり、かつ、前記アセトン吸着量をA(質量分率%)とし、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)としたときに、A/Bの比が72.5以下である、[1]に記載の多孔質材料。
【0012】
[3]前記0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)とし、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量をC(NmL/g)としたときに、C/Bの比が10.5以下である、[1]又は[2]に記載の多孔質材料。
【0013】
[4]充填密度が0.45g/mL以上0.80g/mL以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0014】
[5]単位面積当たりの圧壊強度が0.60kgf/mm以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質材料。
【0015】
[6]粒径が0.15mm以下の炭素粉末を含む原料を、粒状に成型する工程を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
【0016】
[7][1]~[5]のいずれかに記載の多孔質材料を備える、水素精製装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、PSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる、多孔質材料及びその製造方法、並びに水素精製装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】実施例及び比較例で得られた、アセトン吸着量に対する、(x1-x2)のそれぞれの値を示す。
図1b】実施例及び比較例で得られた、アセトン吸着量に対する、(y1-y2)のそれぞれの値を示す。
図2a】実施例及び比較例で得られた、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積に対する、(x1-x2)のそれぞれの値を示す。
図2b】実施例及び比較例で得られた、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積に対する、(y1-y2)のそれぞれの値を示す。
図3a】実施例及び比較例で得られた、比表面積に対する、(x1-x2)のそれぞれの値を示す。
図3b】実施例及び比較例で得られた、比表面積に対する、(y1-y2)のそれぞれの値を示す。
図4a】実施例及び比較例で得られた、A/Bの比に対する、(x1-x2)のそれぞれの値を示す。
図4b】実施例及び比較例で得られた、A/Bの比に対する、(y1-y2)のそれぞれの値を示す。
図5a】実施例及び比較例で得られた、C/Bの比に対する、(x1-x2)のそれぞれの値を示す。
図5b】実施例及び比較例で得られた、C/Bの比に対する、(y1-y2)のそれぞれの値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0020】
[水素精製用多孔質材料]
本実施形態の水素精製用多孔質材料(以下、単に「多孔質材料」)とも称する)は、PSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有するため、水素と不純物、特に、水素とメタン及び二酸化炭素とを効率的に分離することができる。即ち、本実施形態の多孔質材料は、不純物から水素を選択的に分離する方法に好適である。
【0021】
本実施形態の多孔質材料は、アセトン吸着量が12.5質量分率%以上であり、かつ、0.6nm以上かつ1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/g以上を満たすものである。
【0022】
アセトン吸着量を適切な範囲に制御することで、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる。アセトンの分子サイズはメタンの分子サイズよりわずかに大きいことから、アセトン吸着量が12.5質量分率%以上にあると、多孔質材料においてメタンが吸着できる細孔の総容積が大きいことを意味している。アセトン吸着量が12.5質量分率%未満にある多孔質材料は、メタンが吸着できる細孔の総容積の差が少なく、水素精製装置に組み込んだ際、1回の吸着工程で吸着できる不純物ガスの量が少ないことから、効率的に不純物ガスの除去ができない傾向にある。以上の理由から、アセトン吸着量は12.5質量分率%以上が好ましく、13.3質量分率%以上がより好ましく、14.0質量分率%以上が更に好ましい。アセトン吸着量の上限は特に限定されないが、アセトン吸着量が過度に高い、すなわち、細孔容積が過度に大きい多孔質材料においては、多孔質材料に占める細孔部分の容積が相対的に大きいことから、多孔質材料の耐久性が大きく低下する傾向にある。以上の理由から、アセトン吸着量は40.0質量分率%以下が好ましく、35.0質量分率%以下がより好ましく、30.0質量分率%以下が更に好ましい。アセトン吸着量の具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0023】
多孔質材料の細孔径を適切な範囲に制御することで、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる。特に、細孔径0.6nm以上かつ1.5nm以下の細孔においてメタン及び二酸化炭素が高い吸着性能を有することから、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL以上にあると、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる傾向にある。0.6nm以上かつ1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL未満にあると、メタン及び二酸化炭素に対する吸着性能が高い細孔が少ないことから、効率的に不純物ガスの除去ができない傾向にある。以上の理由から、0.6nm以上かつ1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積は0.140mL/mL以上であることが好ましく、0.145mL/mL以上であることがより好ましく、0.150mL/mL以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、細孔容積が過度に大きい多孔質材料においては、多孔質材料に占める細孔部分の容積が相対的に大きいことから、多孔質材料の耐久性が大きく低下する傾向にある。以上の理由から、0.6nm以上かつ1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積は0.250mL/mL以下であることが好ましく、0.230mL/mL以下であることがより好ましく、0.210mL/mL以下であることが更に好ましい。0.6nm以上かつ1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積の具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0024】
本実施形態の多孔質材料は、比表面積が550m/g以上1600m/g以下であることが好ましい。また、本実施形態の多孔質材料は、アセトン吸着量をA(質量分率%)として、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)としたときに、A/Bの比が72.5以下であることが好ましい。
【0025】
比表面積を適切な範囲に制御することで、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる傾向ある。PSA法を用いて水素を精製分離する水素精製装置の操業においては、不純物ガスを吸着する吸着工程と、吸着した不純物ガスを脱着させて吸着材としての多孔質材料を再生する脱着工程とを交互に繰り返すことで連続的に精製水素ガスを生成することができる。その操業において、効率的に水素ガスの精製を行うためには、1回の吸着工程で、できるだけ沢山の不純物ガスを吸着する必要がある、すなわち、十分な細孔容積を有している必要がある。多孔質材料において比表面積は細孔容積と一定の相関を有する傾向にあることが知られており、多孔質材料の比表面積が550m/g以上にある多孔質材料は、細孔容積が多い傾向にあることから、1回の吸着工程で吸着できる不純物ガスの量が多く、効率的に不純物ガスの除去ができる傾向にある。以上の理由から、比表面積は550m/g以上であることが好ましく、590m/g以上であることがより好ましく、620m/g以上であることが更に好ましい。比表面積の上限は特に限定されないが、比表面積が過度に高い、すなわち、細孔容積が過度に大きい多孔質材料においては、多孔質材料に占める細孔部分の容積が相対的に大きいことから、多孔質材料の耐久性が大きく低下する傾向にある。以上の理由から、比表面積は1600m/g以下であることが好ましく、1400m/g以下であることがより好ましく、1200m/g以下であることが更に好ましい。本実施形態において、比表面積はBET法により測定される。具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0026】
アセトン吸着量(質量分率%)(A)を、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積(mL/g)(B)で割った値であるA/Bの比を適切に制御することで、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して、高い脱着性能を示すことができる傾向にある。PSA法を用いて水素を精製分離する水素精製装置の操業においては、不純物ガスを吸着する吸着工程と、吸着した不純物ガスを脱着させて吸着材としての多孔質材料を再生する脱着工程とを交互に繰り返すことで連続的に精製水素ガスを生成することができる。その操業において、効率的に水素ガスの精製を行うためには、不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着性と高い脱着性能との両方が備わっている必要がある。両方の性能が備わることで、吸着圧における不純物ガスの吸着量と、脱着圧における不純物ガスの吸着量との差分が大きくなり、吸着工程と脱着工程との一回のサイクルで、より多くの不純物ガスを除去することができる傾向にある。アセトン吸着量は脱着圧下における不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素に対する吸着量と近い相関を有しており、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の細孔容積は吸着圧下における不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素に対する吸着量と近い相関を有している。そのため、A/Bの比が72.5以下であると、吸着圧下における不純物ガスの吸着量に対する、脱着圧下における不純物ガスの吸着量が少ない、すなわち、吸着圧における不純物ガスの吸着量と、脱着圧における不純物ガスの吸着量との差分が大きくなる傾向にある。以上の理由から、A/Bの比は、72.5以下であることが好ましく、72.0以下であることがより好ましく、71.5以下であることが更に好ましい。A/Bの比の下限は特に限定されないが、A/Bの比が上記範囲にあることで、水素精製装置を用いてより効率的に水素精製を行うことができる傾向にあることから、通常は72.0以下である。0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積における具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0027】
本実施形態の多孔質材料は、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)として、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量をC(NmL/g)としたときに、C/Bの比が10.5以下であることが好ましい。
【0028】
0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積(mL/g)(B)で、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量(NmL/g)(C)を割った値であるC/Bの比を適切に制御することで、効率的に水素精製を行うことができる傾向にある。水素精製装置の操業において、水素を効率よく取り出すためには、吸着工程において多孔質材料に水素が吸着することなく吸着塔を通過する必要がある。この点、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量が低いと、水素の吸着性能が低い傾向にある。そして、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積(B)は、吸着圧下における不純物ガス、特にメタン及び二酸化炭素に対する吸着量と近い相関を有する傾向にある。そのため、C/Bの比が10.5以下であると、メタン及び二酸化炭素の吸着性能に対して水素の吸着性能が低い傾向にあり、水素の吸着量を抑えながら、メタン及び二酸化炭素を選択的に吸着する傾向にある。一方、C/Bの比が10.5を超える多孔質材料においては、細孔容積に対して水素吸着量が多くなる傾向にあるため、製品として回収できず排気される水素の割合が相対的に多くなり、効率的に水素を精製できない傾向にある。以上の理由から、C/Bの比は、10.5以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、9.5以下であることが更に好ましい。C/Bの比の下限は特に限定されないが、C/Bの比が上記範囲にあることで、水素精製装置を用いてより効率的に水素精製を行うことができる傾向にあることから、通常は10.5以下である。吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量の具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0029】
本実施形態の多孔質材料は、充填密度が0.45g/mL以上0.80g/mL以下であることが好ましい。
【0030】
水素精製装置の吸着塔により大量の多孔質材料を充填させることで、吸着塔1塔当たりの不純物ガスの吸着量を増大させることができるため、より効率的に水素精製を行うことができる傾向にある。以上の点から、多孔質材料の充填密度は、0.45g/mL以上であることが好ましく、0.47g/mL以上であることがより好ましく、0.50g/mL以上が更に好ましい。充填密度の上限値は特に限定されないが、充填密度が過度に高い多孔質材料は、多孔質材料に備わっている空隙の割合が相対的に低いため、吸着工程において細孔への不純物ガスの移動が阻害され、効率的に不純物ガスを吸着できなくなる傾向にある。そのことから、水素精製を行うための吸着材として適さない傾向にあることを考慮すると、充填密度は0.80g/mL以下であることが好ましく、0.75g/mL以下であることがより好ましく、0.70g/mL以下であることが更に好ましい。充填密度の具体的な測定方法は、実施例を参照してもよい。
充填密度が上述の範囲にあることで、PSA法を用いて水素を精製分離する水素精製装置に対して、高い充填密度で水素精製に適した多孔質材料を充填することが可能となる。そのため、このような多孔質材料を水素精製装置に用いることで、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して、より高い吸着及び脱着性能を有し、より効率的に水素精製を行うことができる。
【0031】
本実施形態の多孔質材料は、単位面積当たりの圧壊強度が0.60kgf/mm以上であることが好ましい。
【0032】
水素精製装置を長時間安定して操業するためには、多孔質材料が一定の強度を有している必要がある。多孔質材料の強度が低いと、水素精製装置の操業において吸着と脱着とのサイクルを繰り返すうちに多孔質材料が破砕したり粉化したりし、配管の汚染や、閉塞の原因となる。以上の点から、多孔質材料の単位面積当たりの圧壊強度は、0.60kgf/mm以上であることが好ましく、0.65kgf/mm以上であることがより好ましく、0.70kgf/mm以上であることが更に好ましい。多孔質材料の単位面積当たりの圧壊強度の上限は特に限定されないが、多孔質材料の単位面積当たりの圧壊強度が上記範囲にあることで、水素精製装置を長時間に渡り安定して運転することができる傾向にあることから、通常は10.0kgf/mm以下である。単位面積当たりの圧壊強度の具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0033】
多孔質材料の形状は、特に限定されず、公知の吸着材として適用可能な形状とすることができる。このような形状としては、例えば、粒状、基板状(シート状)、及び繊維状が挙げられる。多孔質材料の形状が粒状である場合、より具体的な形状としては、例えば、棒状(柱状)、ブロック状、球状、及び楕円球状が挙げられる。それらの形状は、歪曲していてもよい。多孔質材料の形状は粒状であることが好ましい。多孔質材料の形状が粒状であると、吸着及び脱着性能がより向上し、加工がより容易で強度もより高く、充填密度もより高くでき、種々の用途により適用しやすい傾向にある。また、多孔質材料が粒状であると、PSA法を用いて水素を精製分離する水素精製装置等の装置の操業時に不必要な微粉がより発生しにくいので、操業時に配管等の閉塞もより起こりにくい傾向にある。
【0034】
多孔質材料の形状が粒状である場合、その平面視形状は、例えば、公知の吸着材として適用可能な形状とすることができる。そのような形状としては、例えば、平面視で、円状、楕円状、矩形状、棒状、及び歪曲状等が挙げられる。多孔質材料の形状が粒状である場合、そのサイズも特に限定されず、公知の吸着材を参考にすることができる。サイズとしては、PSA法を用いて水素を分離精製する水素分離装置等の装置に適用できることが好ましい。
【0035】
多孔質材料の形状が粒状である場合、粒の最大径が0.5mm以上50mm以下であり、アスペクト比が1:1~1:50であることが好ましい。アスペクト比が小さいほど、PSA法を用いて水素を精製分離する水素精製装置等の装置に対して、より高い充填密度で多孔質材料を充填することが可能となる。このような粒状の多孔質材料は、PSA法を用いて水素を分離精製する水素分離装置等の装置により好適である。
【0036】
多孔質材料は、PSA法を用いて水素を分離精製する水素分離装置等の装置に適用できることが好ましい。このような多孔質材料としては、例えば、活性炭、及びゼオライトが挙げられる。それらの中でも、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して、より一層高い吸着及び脱着性能を有し、より一層効率的に水素精製を行うことができることから、多孔質材料としては、活性炭が好ましい。
【0037】
〔多孔質材料の製造方法〕
多孔質材料の製造方法は、例えば、炭素粉末を含む原料を、粒状に成型する工程を含む。該製造方法では、得られた粒状の成型物を炭化して炭化物を得る炭化工程と、該炭化物を賦活処理する賦活工程とを含むことが好ましい。
【0038】
炭素粉末を含む原料としては、所望の多孔質材料を得ることができる材料であれば特に限定されない。炭素粉末の炭素源としては、例えば、石炭;パームヤシ殻、及びココナッツヤシ殻などのヤシ殻;麻、及び綿などの天然繊維;レーヨン、及びポリエステルなど合成繊維;ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、及びポリビニルアルコールなどの合成樹脂;木炭などが挙げられる。炭素粉末は、例えば、これらの炭素源を炭化し、その後、公知の粉砕又は分級技術を用いて、所定の粒度にすることで得ることができる。
【0039】
多孔質材料において、細孔径及び細孔容積をそれぞれ適切に制御でき、かつ、多孔質材料の単位質量当たりの外表面積を好適な範囲に制御できる点から、炭素源としては、石炭、ヤシ殻、合成樹脂、及び木炭のいずれか1種以上の材料を用いることが好ましく、ヤシ殻を用いることがより好ましい。
【0040】
炭素源の炭化方法は、特に限定されず、例えば、無酸素の条件で300℃以上900℃以下まで、より好ましくは300℃以上800℃以下まで加熱する方法が挙げられる。炭化時間は、原料、及び炭化を行う設備によって適宜設定できる。炭化時間としては、例えば、15分以上20時間以下程度であり、好ましくは30分以上10時間以下程度である。炭化処理は、例えば、ロータリーキルンなどの公知の製造設備を用いて、窒素雰囲気下で行われる。炭化後には、洗浄処理、及び乾燥処理等を行ってもよい。これらの条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。
【0041】
炭素粉末の粒径が小さいほど、炭素粉末の外表面積が大きくなり、後段の賦活工程での吸着サイトの生成量を増大させることができ、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して、より高い吸着性能及び脱着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができる多孔質材料が得られる。一方で、炭素粉末の粒径を過度に小さくしすぎることは、炭素源の粉砕工程における生産能力の低下及び粉末の飛散による作業性の低下の要因となる。以上の理由から、炭素粉末の粒度(平均粒子径、D50)は、0.001mm以上0.150mm以下の範囲に制御することが好ましく、0.001mm以上0.100mm以下の範囲に制御することがより好ましく、0.001mm以上0.050mm以下の範囲に制御することがさらに好ましい。また、外表面積は0.01m/g以上20m/g以下であることが好ましく、0.1m/g以上10m/g以下であることがよりに好ましく、0.3m/g以上5m/g以下であることがさらに好ましい。微細に粉砕され、平均粒子径が所定の範囲にある炭素粉末を用いて多孔質材料を製造することで得られた多孔質材料は、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して、より高い吸着及び脱着性能を有することが可能となる。粒度(平均粒子径、D50)及び外表面積の具体的な測定方法は、実施例を参照すればよい。
【0042】
炭素粉末を含む原料には、必要に応じて、添加剤等を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、水、クレオソート油(特許第4893944号公報等参照)、リグニン(例えば、日本製紙(株)製サンエキス(登録商標))、コールタール、コールタール系ピッチ、及び石油系ピッチが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせても使用することもできる。
添加剤は、それぞれ、炭素粉末100質量部に対して、通常0.1質量部以上50質量部以下で配合される。また、添加剤の合計量は、通常、炭素粉末100質量部に対して0.1質量部以上50質量部以下である。
【0043】
炭素粉末を含む原料を粒状に成型する方法としては、特に限定されず、多孔質材料に要求される品質に応じて、原料を、公知の混合(混練)、撹拌、成型、及び乾燥を行うことで粒状の成型物を得ることができる。
【0044】
混合及び撹拌方法としては、公知の方法であってもよく、例えば、ブレンダー、及びヘンシェルミキサーを用いた混合及び攪拌が挙げられる。
成型方法としては、例えば、ディスクペレタイザーなどの押出造粒機により、原料を円柱状等の所定形状の粒状成型物に製造する方法が挙げられる。
【0045】
粒状成型物の断面形状の直径の長さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上50mm以下程度である。なお、本明細書において、「直径」とは、断面形状が、円形の場合、その円形の直径を意味する。一方、断面形状が、卵形、長円形又は楕円形の場合、「直径」とは、それらの形状において、最も長い方向(即ち、長軸方向)を意味する。なお、本明細書において、「円形」とは、真円に加えて、卵形、直円形、及び楕円形も包含する。
【0046】
粒状成型物が円柱状である場合には、その円柱における軸方向の長さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上50mm以下程度である。
【0047】
本実施形態において、粒状成型物の直径及び軸方向の長さは、公知の方法で測定することができる。このような方法としては、例えば、ノギスなどの測定用具を用いての測定、及び活性炭成型物を光学顕微鏡や電子顕微鏡にて拡大した後、拡大画像にてメジャーを用いて計測することなどが挙げられる。また、測定回数は、特に限定されないが、通常30回程度を基準とする。
【0048】
得られた粒状成型物を炭化して炭化物を得る炭化方法としては、特に限定されず、例えば、上述の炭素源の炭化方法を採用することができる。炭化処理は、ロータリーキルン及び流動炉などの公知の製造設備を用いることができる。特に、粒状成型物の炭化においては、粒状成型物の大きさに対して制約無く炭化処理を行えることから、ロータリーキルンを用いる事が好ましい。
【0049】
得られた炭化物を賦活処理する賦活方法としては、公知の方法を採用できる。このような方法としては、例えば、水蒸気、酸素、及び二酸化炭素などの活性ガスによる賦活方法が挙げられる。賦活処理は、ロータリーキルン及び流動炉などの公知の製造設備を用いることができる。特に、粒状炭化物の賦活においては、粒状炭化物の大きさに対して制約無く賦活処理を行えることから、ロータリーキルンを用いる事が好ましい。賦活処理としては、例えば、二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素を1分間当たり10リットル以上300リットル以下の流量で0.25時間以上120時間以下程度、炭化物と接触させる方法が挙げられる。また、例えば、水蒸気を用いた場合、水蒸気を1分間当たり10リットル以上300リットル以下の流量で0.25時間以上48時間以下程度、炭化物と接触させる方法が挙げられる。
【0050】
賦活処理の温度は、特に限定されないが、多孔質材料において、細孔径及び細孔容積をそれぞれ適切に制御でき、かつ、多孔質材料の単位質量当たりの表面積を好適な範囲に制御できる点から、750℃以上1200℃以下であることが好ましく、800℃以上1100℃以下であることがより好ましい。
【0051】
賦活処理の時間は、原料、賦活温度、及び製造設備などの条件によって適宜の範囲で調節することができる。多孔質材料において、細孔径及び細孔容積をそれぞれ適切に制御でき、かつ、多孔質材料の単位質量当たりの外表面積を好適な範囲に制御できる点から、賦活時間は、0.1時間以上48時間以下が好ましく、0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。活性ガスの分圧は、通常10%以上100%以下であり、30%以上100%以下であることが好ましい。
【0052】
賦活処理後には、必要に応じて、室温まで冷却処理を行ってもよい。冷却処理としては、例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、酸素雰囲気下、又は空気雰囲気で行うことができる。多孔質材料において、細孔径を適切に制御できる点から、窒素雰囲気下にて冷却することが好ましい。
【0053】
賦活処理、冷却処理によって得られた多孔質材料は、必要に応じて、公知の方法等で洗浄してもよい。
【0054】
多孔質材料は、上述の製造条件を適切に設定することで得ることができる。
【0055】
[水素精製装置]
本実施形態の水素精製装置は、PSA法における吸着材として、本実施形態の多孔質材料を備える。
【0056】
吸着材は、単一種類もしくは複数種類の多孔質材料のみで形成されていてもよいし、他の公知の部材を組み合わせて形成されていてもよい。多孔質材料としては、例えば、活性炭やゼオライト、他の公知の部材としては、例えば、アルミナ、シリカゲルが挙げられる。
【0057】
水素精製装置は、圧力スイング法を用いて水素を分離精製する装置であれば、特に限定されない。即ち、水素精製装置は、水素ガスを含むガスから高純度で水素ガスを精製する圧力スイング吸着法による装置である。水素ガスを含むガスは、水素を多く含む水素リッチガスであることが好ましい。そのようなガスとしては、例えば、水素を20体積%以上含む水素リッチガスが挙げられる。
多孔質材料は、加圧下において、水素ガスを含むガスから、水、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、及び窒素などの不純物を吸着除去して高純度の水素ガスを精製する吸着材として、水素精製装置内に収容される。
【0058】
水素を含む不純物中の各成分の単位吸着材量当たりの吸着量は、圧力が大きいほど差が大きくなる。水素精製装置は、加圧環境下において、水素と不純物の吸着容量の差が大きくなることを利用して、水素よりも吸着されやすい不純物を優先的に吸着材に吸着させることで、不純物から水素を分離して回収する。一方で、圧力が大きくしようとすると所定の圧力への到達に時間を要し1回の吸脱着のサイクルに要する時間が長くなることから、過度に圧力を大きくしすぎることは水素精製の効率低下の要因となる。以上の理由から、吸着圧力は500kPa以上900kPa以下であることが好ましい。
脱着時の圧力が小さいほど吸着圧力との圧力差を生じさせることができ、脱着工程においてより多くの不純物を脱着させることができる。一方で、圧力を大気圧より小さくしようとすると、所定の圧力への到達に時間を要し1回の吸脱着のサイクルに要する時間が長くなることから、過度に圧力を小さくしすぎることは水素精製の効率低下の要因となる。以上の理由から、脱着圧力は90kPa以上110kPa以下であることが好ましく、95kPa以上105kPa以下であることがより好ましい。
【0059】
水素を得るための不純物を含むガスとしては、例えば、石油化学プラントからのオフガス、天然ガス、及びナフサ等の水蒸気改質ガス、コークス炉ガス、バイオメタン、並びにメタノールと水蒸気との反応による改質ガスなどの水素含有ガスが挙げられる。これらのガス組成は原料の性状や改質条件に大きく依存するが、例えば、文献(J. Vac. Soc. Jpn, Vol.43, No.12, 2000, 1088-1093)では、天然ガス由来の水蒸気改質ガスとして、水素77vol%、メタン2.5vol%、及び二酸化炭素18vol%を含むガスが記載されている。また、同文献では、コークス由来の水蒸気改質ガスとして、水素56vol%、メタン26.5vol%、及び二酸化炭素6.8vol%を含むガスが記載されている。更に、同文献では、メタノール由来の水蒸気改質ガスとして、水素74vol%、及び二酸化炭素24vol%を含むガスが記載されている。
【実施例0060】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
略0.01mmの粒度を有するヤシ殻由来の炭素粉末100質量部に、水を添加しつつ、硬質ピッチ25質量部と、コールタール15質量部とを加えて混練した。得られた混練物を押出造粒機に充填し、断面形状の直径が2.0mmの円柱状に成型した。このように得られた円柱状成型物をロータリーキルン中で空気を排除しつつ、最終温度が800℃になるまで約5時間かけて昇温し、炭化処理品を得た。その後、賦活ガスとして水蒸気を1分間当り100リットルの割合で加え、30分間賦活処理を行って活性炭である多孔質材料を得た。
【0062】
〔実施例2〕
賦活処理時間を30分間の代わりに40分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0063】
〔実施例3〕
賦活処理時間を30分間の代わりに50分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0064】
〔実施例4〕
賦活ガスとして水蒸気の代わりに二酸化炭素を用い、賦活処理時間を30分間の代わりに100分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0065】
〔実施例5〕
賦活ガスとして水蒸気の代わりに二酸化炭素を用い、賦活処理時間を30分間の代わりに120分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0066】
〔実施例6〕
略0.01mmの粒度を有する炭素粉末の代わりに略0.05mmの粒度を有する炭素粉末を用い、賦活処理時間を30分間の代わりに90分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0067】
〔比較例1〕
賦活処理時間を30分間の代わりに10分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0068】
〔比較例2〕
賦活処理時間を30分間の代わりに20分間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0069】
〔比較例3〕
賦活処理時間を100分間の代わりに60分間としたこと以外は、実施例4と同様の方法で多孔質材料を得た。
【0070】
〔比較例4〕
円柱状成型物の断面形状の直径を4.0mmとして成型し、賦活処理時間を90分間の代わりに60分間としたこと以外は、実施例6と同様の方法で多孔質材料を得た
【0071】
(1)平均粒子径(D50)
炭素粉末の平均粒子径(D50)は、レーザー回折光散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル製MT3300EXII(商品名))を用いて、体積基準のメジアン径として測定した。
【0072】
(2)アセトン吸着量
多孔質材料におけるアセトン吸着量(質量分率%)は、JIS K 1474:2014の方法に準拠して測定した。
【0073】
(3)細孔径分布
多孔質材料の細孔径分布は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-max(商品名))により測定した。吸着ガスに窒素を用いて、-196℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定して吸着等温線を得た。細孔径分布は、得られた吸着等温線をGCMC法で解析して求めた。解析には解析ソフト(マイクロトラック・ベル製BELMaster(商標))を用いた。
【0074】
(4)比表面積
多孔質材料の比表面積(m2/g)、単位容積当たりの細孔容積(mL/mL)、及び単位質量当たりの細孔容積(mL/g)は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-miniII(商品名))により測定した。吸着ガスに窒素を用いて、-196℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定して吸着等温線を得た。比表面積は、得られた吸着等温線をBET法で解析して求めた。解析には解析ソフト(マイクロトラック・ベル製BELMaster(商標))を用いた。
【0075】
(5)水素吸着量
多孔質材料の水素吸着量(NmL/g)は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-max(商品名))により測定した。吸着ガスに水素を用いて、25℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定した。得られた吸着等温線をLangmuir近似して得られた相関式から、吸着圧500kPaにおける水素吸着量を算出した。
【0076】
(6)活性炭の充填密度
多孔質材料の充填密度(g/mL)は、JIS K 1474:2014に記載の方法で測定した。
【0077】
(7)多孔質材料の圧壊強度
多孔質材料の単位面積当たりの圧壊強度(kgf/mm)は、次のように測定した。木屋式硬度計を用いて、得られた円柱状の多孔質材料の軸方向に対して垂直方向に力を徐々に加え、多孔質材料が破砕された際に加わった力を圧壊強度(kgf)とした。圧壊強度を、円柱の直径(mm)と円柱の軸方向長さ(mm)の積で割った値を、単位面積当たりの圧壊強度(kgf/mm)とした。以上の測定を多孔質材料30検体について行い、これらの平均値をもって多孔質材料の単位面積当たりの圧壊強度とした。
【0078】
(8)多孔質材料の外表面積
多孔質材料の単位質量当たりの外表面積(m/g)は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-max(商品名))により測定した。吸着ガスに窒素を用いて、-196℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定して吸着等温線を得た。細孔径分布は、得られた吸着等温線をt-Plotで解析して求めた。解析には解析ソフト(マイクロトラック・ベル製BELMaster(商標))を用いた。
【0079】
(9)メタン吸着量
多孔質材料を用いたメタン吸着量(mL/mL)は、次のように測定した。比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-max(商品名))により測定した。吸着ガスにメタンを用いて、25℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定した。得られた吸着等温線をLangmuir近似して得られた相関式から、吸着圧300kPaにおけるメタン吸着量x1及び吸着圧25kPaにおけるメタン吸着量x2を算出し、これらの差分(x1-x2)を得た。
【0080】
(10)二酸化炭素吸着量
多孔質材料を用いた二酸化炭素吸着量(mL/mL)は、次のように測定した。比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル製BELSORP(登録商標)-max(商品名))により測定した。吸着ガスに二酸化炭素を用いて、25℃での各測定点での平衡吸着圧力とガス吸着量を測定した。得られた吸着等温線をLangmuir近似して得られた相関式から、吸着圧300kPaにおける二酸化炭素吸着量y1及び吸着圧25kPaにおける二酸化炭素吸着量y2を算出し、これらの差分(y1-y2)を得た。
【0081】
これらの結果を表1及び表2に示す。
【0082】
【表1】
【表2】
【0083】
実施例1~6は、全て、メタン吸着量(x1-x2)が20mL/mL以上であり、かつ、二酸化炭素吸着量(y1-y2)が32mL/mLである。このことから、吸着圧におけるメタン吸着量と脱着圧におけるメタン吸着量の差分、及び吸着圧における二酸化炭素吸着量と脱着圧における二酸化炭素吸着量の差分が大きいことを示している。すなわち、本実施形態に係る多孔質材料をPSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、効率的に水素精製を行うことができることを示している。
【0084】
比較例1~4は、メタン吸着量(x1-x2)及び二酸化炭素吸着量(y1-y2)の両方において、本実施形態に係る多孔質材料を用いて得られた値よりも低い値である。このことから、吸着圧におけるメタン吸着量と脱着圧におけるメタン吸着量の差分、及び吸着圧における二酸化炭素吸着量と脱着圧における二酸化炭素吸着量の差分が、本実施形態に係る多孔質材料より小さいことを示している。すなわち、比較例で得られた多孔質材料をPSA法における吸着材として用いた場合、不純物、特にメタン及び二酸化炭素に対して高い吸着及び脱着性能を有し、十分効率的に水素精製ができないことを示している。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトン吸着量が12.5質量分率%以上であり、かつ、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位容積当たりの細孔容積が0.140mL/mL以上であり、活性炭である、水素精製用多孔質材料。
【請求項2】
比表面積が550m2/g以上1600m2/g以下であり、かつ、前記アセトン吸着量をA(質量分率%)とし、0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)としたときに、A/Bの比が72.5以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項3】
前記0.6nm以上1.5nm以下の径を有する細孔の単位質量当たりの細孔容積をB(mL/g)とし、吸着温度25℃及び吸着圧500kPaにおける単位質量当たりの水素吸着量をC(NmL/g)としたときに、C/Bの比が10.5以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項4】
充填密度が0.45g/mL以上0.80g/mL以下である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項5】
単位面積当たりの圧壊強度が0.60kgf/mm2以上である、請求項1に記載の多孔質材料。
【請求項6】
粒径が0.15mm以下の炭素粉末を含む原料を、粒状に成型する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質材料を備える、水素精製装置。