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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012738
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114445
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA02
5G405FA04
5G405FA09
(57)【要約】
【課題】取付け壁面を伝わって流下してきた水滴がケースの内部に侵入するのをより効果的に防ぐことができる発信機を提供する。
【解決手段】押ボタンおよび検知手段を有する本体ケースと、押ボタンの一部を露出させる開口部を有する前面パネル部とを備え、本体ケースの内部に出力信号を生成する回路が実装された回路基板および端子台が配設されている発信機において、本体ケースは、検知手段および回路基板を収納し後端部が開口された収納ケース部と、収納ケース部の後端側の開口を閉鎖するための裏面カバー部とを備え、裏面カバー部は、端子台に対向する部位に開口を有し上面および両側面に、辺に沿った方向に延びる溝が形成され収納ケース部の後端に固定される第1カバー部材と、上壁部と両側壁部とを有し第1カバー部材の溝に係合可能な係合部を両側壁部の内面に備え、上下方向にスライド可能に装着される第2カバー部材とを備えるようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方から操作可能な押ボタンおよび該押ボタンが操作されたことを検知可能な検知手段を有する本体ケースと、少なくとも前記押ボタンの一部を露出させる開口部を有する前面パネル部と、を備え、前記本体ケースの内部に、前記検知手段の状態に応じて外部へ出力する信号を生成する回路が実装された回路基板および端子台が配設されている発信機であって、
前記本体ケースは、前記検知手段および前記回路基板を収納し後端部が開口された収納ケース部と、前記収納ケース部の後端側の開口を閉鎖するための裏面カバー部と、を備え、
前記裏面カバー部は、
前記端子台に対向する部位に開口を有し上面および両側面に、辺に沿った方向に延びる溝が形成され、前記収納ケース部の後端に固定される第1カバー部材と、
上壁部と両側壁部とを有し前記第1カバー部材の前記溝に係合可能な係合部を前記両側壁部の内面に備え、両側部の前記係合部が前記溝に沿って移動することにより上下方向にスライド可能に装着される第2カバー部材と、
を備えていることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記第2カバー部材の前記上壁部の内面には前記第1カバー部材の前記溝に係合可能なリブが形成され、
前記第1カバー部材の上面および両側面には前後2条の溝が形成されており、前記第2カバー部材の前記リブおよび前記係合部は、前記第1カバー部材の前記前後2条の溝のうちに後方側の溝に係合されていることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記2条の溝を分離する隔壁部の高さは前記2条の溝を形成する前壁および後壁の高さよりも大きく設定され、
前記収納ケース部の後端の内壁面には前記隔壁部の先端が係合する段差部が形成されており、前記隔壁部の幅と前記段差部の前後幅は同一に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の発信機。
【請求項4】
前記第2カバー部材の上下方向長さは、前記収納ケース部の上下方向長さと同一もしくは長く設定され、
前記第1カバー部材は、矩形状をなす枠体部と該枠体部の内側に設けられ前記開口を有するパネル部とからなり、
前記第1カバー部材の前記枠体部の後方側の下部には、表面が上部や側部に比べて前方側に落ち込む凹みが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急報知用の発信機に関し、例えば建物の壁部に設けられ緊急事態の発生時に操作されることで警報を発するための発信機に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災など緊急事態の発生を知らせるために、押ボタンスイッチを備えた手動の発信機が建物の壁面に適切な高さで設置されている。緊急事態の発生時には、発見者が発信機の押ボタンスイッチを強く押すことにより、緊急事態の発生を知らせる信号が受信機等へ伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し緊急事態の発生を知らせることができるようになっている。
また、発信機は、押ボタンスイッチが押された場合に信号を伝送するための回路が内蔵されており、建物の壁面に埋め込むように設置されるが、水が壁面を伝わって発信機のケース内に侵入して回路が誤動作を起こすおそれがある。
【0003】
上記のような発信機は、多くの場合は建物の内壁面に設置されるが、建物の外壁面に設置されることもある。建物の外壁面に設置される場合は、風雨に伴う雨水や埃の侵入を防ぐ処置が施される。しかし、雨水や埃の侵入を防ぐ処置はコストアップにつながることもあり、屋内設置の場合、ほとんど行われていない。しかし、雨漏りあるいは結露によって生じた水が壁面を伝わって発信機のケース内に侵入するおそれがある。
【0004】
そこで、壁面に取り付けた発信機の表面から侵入した水を排出させるスリットや孔を押しボタンを収納するケースの下部に設けた先行技術として、例えば特許文献1や2に記載されている発明がある。なお、特許文献1には、発信機本体内への水の侵入を防止するため、押しボタン収納ケースと取付け面との間に防滴パッキンを設ける技術も記載されている。また、特許文献2には、発信機本体ケース内へ侵入した水が回路部分へ入らないように、ケース内部に流下阻止壁を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-160310号公報
【特許文献2】特開2018-120517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に記載されている発信機にあっては、押しボタンを収納するケースの下部に排水用のスリットや孔を設けている。これは、そもそも雨漏りや結露で生じた水が壁面を伝わって発信機のケースの内部に侵入するのを完全に防ぐことはできないためである。
例えば特許文献2に記載されている発信機にあっては、図7に示すように、取付け壁Pの表面を伝わって上方より流下してきた水滴Wは、発信機の取付けベース体13のフランジ13Bと取付け壁Pとの隙間へ入り、収納枠部13Aの外周と取付け壁Pの開口との隙間を通って取付け壁Pの内側へ移動する。そして、本体ケース12の収容部12Aの後壁を伝わって、収納ケース部12Bの上壁へ流下し、収納ケース部12Bと裏蓋(裏カバー)12Cとの合わせ目から、毛細管現象により収納ケース部12Bの内部へ引き込まれて侵入することがある。同様な現象は、本体部の後部にカバー蓋体を有する特許文献1の発信機においても起き得る。
【0007】
なお、収納ケース部12Bの内部への上述したような水滴の侵入を回避するため、本体ケース12を収納ケース部12Bと裏蓋12Cとの接合構造ではなく、射出成形で一体ものとして形成することが考えられるが、射出成形を採用する場合、本体ケース内部や外部の形状により、分割した方がコスト的に有利になる場合がある。これは、射出成形の場合、型に樹脂を射出後、型から製品を抜く必要があるので、抜きにくい形状の場合、型を分割する必要があり、型の複雑化や成形時間が多く必要になるためである。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、本体ケースの構造に収納ケース部と裏蓋との接合構造を採用した場合に、取付け壁面を伝わって流下してきた水滴がケースの内部に侵入するのを効果的に防ぐことができる発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
前方から操作可能な押ボタンおよび該押ボタンが操作されたことを検知可能な検知手段を有する本体ケースと、少なくとも前記押ボタンの一部を露出させる開口部を有する前面パネル部と、を備え、前記本体ケースの内部に、前記検知手段の状態に応じて外部へ出力する信号を生成する回路が実装された回路基板および端子台が配設されている発信機において、
前記本体ケースは、前記検知手段および前記回路基板を収納し後端部が開口された収納ケース部と、前記収納ケース部の後端側の開口を閉鎖するための裏面カバー部と、を備え、
前記裏面カバー部は、
前記端子台に対向する部位に開口を有し上面および両側面に、辺に沿った方向に延びる溝が形成され、前記収納ケース部の後端に固定される第1カバー部材と、
上壁部と両側壁部とを有し前記第1カバー部材の前記溝に係合可能な係合部を前記両側壁部の内面に備え、両側部の前記係合部が前記溝に沿って移動することにより上下方向にスライド可能に装着される第2カバー部材と、
を備えるようにしたものである。
【0010】
上記のような構成によれば、収納ケース部の後端側の開口を裏面カバー部により閉鎖するため、収納ケース部内に直接水滴が侵入するのを防止できるとともに、第1カバー部材の上面および両側面に形成された溝により、取付け壁面を伝わって流下してきた水滴がケースの内部に侵入するのを効果的に防ぐことができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記第2カバー部材の前記上壁部の内面には前記第1カバー部材の前記溝に係合可能なリブが形成され、
前記第1カバー部材の上面および両側面には前後2条の溝が形成されており、前記第2カバー部材の前記リブおよび前記係合部は、前記第1カバー部材の前記前後2条の溝のうちに後方側の溝に係合されているように構成する。
【0012】
上記構成によれば、第1カバー部材の上面および両側面に2条の溝が形成されているとともに、第2カバー部材のリブおよび係合部が第1カバー部材の前後2条の溝のうちに後端側の溝に係合されているため、収納ケース部と第1カバー部材とが接合する合わせ面から引き込まれた水滴が収納ケース部の内部空間に到達するまでの経路が長くなり、より効果的に水の侵入を防止することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記2条の溝を分離する隔壁部の高さは前記2条の溝を形成する前壁および後壁の高さよりも大きく設定され、
前記収納ケース部の後端の内壁面には前記隔壁部の先端が係合する段差部が形成されて
おり、前記隔壁部の幅と前記段差部の前後幅は同一に設定されているように構成する。
かかる構成によれば、第1カバー部材に設けられている2条の溝の隔壁部と収納ケース部の後端の内壁面の段差部とが接合することでシール部として機能するため、より効果的に水の侵入を防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記第2カバー部材の上下方向長さは、前記収納ケース部の上下方向長さと同一もしくは長く設定され、
前記第1カバー部材は、矩形状をなす枠体部と該枠体部の内側に設けられ前記開口を有するパネル部とからなり、
前記第1カバー部材の前記枠体部の後方側の下部には、表面が上部や側部に比べて前方側に落ち込む凹みが設けられているように構成する。
【0015】
上記構成によれば、裏面カバー部によって収納ケース部の背面側に端子台が背面に露出するのを防止しつつ、第1カバー部材の枠体部の背面側の下部に設けられた凹みによって、第1カバー部材の下部と第2カバー部材の下部との間に、信号線(リード線)が挿通可能な空間が形成されるため、収納ケース部の背面側に端子台を設けたとしても、信号線(リード線)が挿通される開口部からの水の侵入を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発信機によれば、本体ケースの構造に収納ケース部と裏蓋との接合構造を採用した場合に、取付け壁面を伝わって流下してきた水滴がケースの内部に侵入するのを効果的に防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の発信機を後方から見た外観を示す斜視図である。
図2】実施形態の発信機の裏面側に設けられている第2カバー部材を上方へスライドさせた状態を示す斜視図である。
図3】実施形態の発信機の裏面側に設けられている第1カバー部材および第2カバー部材を本体ケースから外した状態を示す斜視図である。
図4】(A)は実施形態の発信機を構成する第1カバー部材の詳細を示した斜視図、(B)は実施形態の発信機における第1カバー部材および第2カバー部材と本体ケースとの嵌め合いの状態を示す一部切欠き斜視図である。
図5】(A)~(C)は実施形態の発信機における第1カバー部材の上部に設けられている水路用の溝の作用を示す要部拡大断面図である。
図6】実施形態の発信機の変形例を示す要部拡大断面図である。
図7】(A)および(B)は従来の火災発信機の一例を示す後方斜視図および断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を適用した発信機の一実施形態について説明する。
本実施形態の発信機は、緊急事態が発生した際に押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより緊急事態の発生を知らせる信号を送出する機能を備え、建造物の壁面や所定の取付けパネルなどに設置されて使用されるように構成される。具体的には、本実施形態の発信機は、例えば火災発信機であり、中央に押しボタンを有する前面パネルと、前面パネルの背部に設けられ上記押しボタンの押込み操作によってオン状態にされるスイッチおよび該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路基板を内蔵した本体ケースとから構成される。
【0019】
本実施形態の発信機は、図1に示すように、前面パネル10とその背部に設けられた箱状をなす本体ケース20とから構成されている。なお、図1は、本実施形態の発信機を後
方から見た外観を示している。特に限定されるものでないが、本実施形態の発信機は、図2に示すように円盤状をなす前面パネル10を有している。本発明の発信機は、本体ケース20の構造に特徴を有するので、前面パネル10は押しボタンを有するものであれば、どのような構造や形状であってもよい。
以下、本実施形態の発信機の特徴である本体ケース20の構造について詳しく説明する。
【0020】
図示しないが、前面パネル10の前面側の中央には、図7に示す従来の発信機と同様に、押しボタンが設けられている。本体ケース20は、前面と背面が開口した箱状をなす収納ケース部21と、該収納ケース部21の背面側の開口を閉塞する裏面カバー部22とを備え、収納ケース部21内には、上記押しボタンの押込み操作によってオン状態にされるスイッチおよび該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路基板、該回路基板上の回路と外部の火災受信機とを接続するための信号線(リード線)の端部が結合される端子台23が内蔵されている。
【0021】
裏面カバー部22は、図2に示すように、ネジ穴24に挿入されたネジによって収納ケース部21の背部に固定され収納ケース部21の背面側の開口を閉塞する第1カバー部材22Aと、第1カバー部材22Aに対して上下方向スライド可能に装着される第2カバー部材22Bとから構成されている。第1カバー部材22Aは矩形状をなす枠体を備え、該枠体の内側のパネル部には、収納ケース部21の内部に設けられ外部の信号線の端部を接続する端子台23が臨む開口部22aが形成されている。
【0022】
また、第1カバー部材22Aの枠体は前後に比較的大きな厚みを有しており、両側面には上下方向に沿った前後2条のガイド溝22bがそれぞれ形成されている。さらに、第1カバー部材22Aの枠体背面側の下部には、表面が上部や側部に比べて前方側に落ち込むよう凹み22cが設けられており、この凹み22cによって、第1カバー部材22Aの下部と第2カバー部材22Bの下部との間に、信号線(リード線)が挿通可能な空間が形成されている。
【0023】
一方、第2カバー部材22Bの側部内側には、図3に示すように、上記ガイド溝22bに係合する複数の係合突起部22eが設けられており、当該係合突起部22eがガイド溝22bに上方より挿入され、ガイド溝22bに沿って移動することで、第2カバー部材22Bが上下方向にスライド可能に構成されている。また、第2カバー部材22Bは、下部が開口、上部が閉塞されており、上部を閉塞する上壁の下面が第1カバー部材22Aの上部に当接することで、下方へ抜け落ちることがないように構成されている。
なお、特に限定されるものでないが、第2カバー部材22Bの外側面には複数の凹凸を形成してなる滑り止め部22fが設けられている。
【0024】
さらに、第1カバー部材22Aの上部には、図4(A)に示すように、水路となる溝22dが上記ガイド溝22bと連続するように形成されているとともに、第2カバー部材22Bは、図4(B)に示すように、上壁の内面(下面)に、第1カバー部材22Aの上部の上記水路用の溝22dに係合するリブ22gが形成されている。また、第1カバー部材22Aの上部から側部にかけて、上記ガイド溝22bおよび水路用の溝22dと所定の間隔をおいてケースの前側位置に水路用の溝22hが形成されている。なお、上記ガイド溝22bは、後述するように、水路用の溝としても機能する。
【0025】
また、本実施形態の発信機においては、上記第2カバー部材22Bの縦方向(上下方向)の長さおよび横幅が上記収納ケース部21の縦方向の長さおよび横幅と一致するように構成されている。一方、第1カバー部材22Aは、縦方向の長さが上記収納ケース部21の縦方向の長さよりも、上記第2カバー部材22Bの上壁部の厚さ分だけ小さく設定され、横幅が収納ケース部21の横幅よりも、上記第2カバー部材22Bの2つの側壁部の厚さ分だけ小さく設定されている。
【0026】
上記のような寸法に設定することにより、図4(B)に示すように、第2カバー部材22Bが装着された状態で、第2カバー部材22Bの外側面は収納ケース部21の外側面と連続するようになり、第2カバー部材22Bは収納ケース部21の後端側の開口を完全に閉塞することができる。
なお、第2カバー部材22Bの縦方向の長さは、収納ケース部21の縦方向の長さよりも若干長く設定されていても良い。
【0027】
次に、上記水路用の溝22dおよび22eの具体的な構造と機能について、図5を用いて説明する。図5は、図4(B)において破線Cで囲まれている部分を拡大して示したもので、符号21は本体ケース20の収納ケース部、22Aは第1カバー部材、22Bは第2カバー部材である。
第1カバー部材22Aの上部には、図5(A)に示すように、水路用の溝22dおよび22hが形成され、このうち溝22dに、第2カバー部材22Bの開口側端部(図では右端)に内側へ向かって突出するように設けられたリブ22gが係合されている。リブ22gの高さは溝22dの深さよりも小さく設定されており、これによってリブ22gが溝22dに係合された状態で水路となる空間が形成される。
【0028】
第1カバー部材22Aに設けられている水路用の溝22dと22hとを分離する隔壁部22iの高さは、溝22dと22hの両側の前壁22jと後壁22kの高さよりも高くされるとともに、収納ケース部21の後端(図では左端)に、隔壁部22iの先端部が係合する段差部22mが形成されている。この段差部22mは隔壁部22iの幅と同一であり、これによって隔壁部22iを挟んだ状態で第2カバー部材22Bの開口側端面と収納ケース部21の後端面とが接合し、見た目では隙間が生じないようになっている。
【0029】
ただし、第2カバー部材22Bの開口側端面と収納ケース部21の後端面との接合部(合わせ目)には、製造バラツキ等に起因して、見た目では分からないような僅かな隙間が生じてしまう。そして、このような僅かな隙間が生じていると、図5(B)に示すように、図示しない取付けパネルと取付け面との隙間から侵入して収納ケース部21の上面に流下してきた水滴Wが、毛細管現象によって、ケース内部へ引き込まれて侵入するおそれがある。このとき、第1カバー部材22Aの上部に水路用の溝22dおよび22hが形成されているため、内部へ侵入した水敵は、図5(C)に示すように、溝22dおよび22hの底に溜まり、回路基板が配設されている収納ケース部21の内部に入り込むのを阻止することができる。
【0030】
さらに、溝22dおよび22hの底に溜まった水は、溝に沿ってケースの側方へ移動し、第1カバー部材22Aの側部に設けられている上下方向の溝22b、22hに沿って流下し、本体ケース20の下方へ排出されることとなる。その結果、内部の電気回路が絶縁不良を起こして誤動作したりショートして動作不能を発生したりするのを防止することができる。
なお、本実施形態の発信機においては、第1カバー部材22Aの上部に2本の水路用の溝22d、22hを設けているが、図5に示す水路用の溝22dと22hとの間の隔壁部22iを省略して、図6に示すように、幅の広い1本の溝22dとして形成するようにしても良い。このようにしても、上記実施形態の発信機とほぼ同様な効果を奏することができる、
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本体ケース20の背部に装着される裏面
カバー部22を第1カバー部材と第2カバー部材とにより構成したが、第1カバー部材に設けられているガイド溝と同様な構造を本体ケース20の後部に設けることで、第1カバー部材を省略した構成にするようにしても良い。さらに、その場合、内側の水路用の溝を省略するようにしても良い。
【0032】
また、上記実施形態においては、第1カバー部材22Aの上部に設けられている水路用の溝22d、22hを水平に形成しているが、侵入した水の移動を促進するため、中央から左右両側方へ向かって下り傾斜するように形成しても良い。
さらに、上記実施形態では、本発明を、主として火災報知システムを構成する火災発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 前面パネル
20 本体ケース
21 収納ケース部
22 裏面カバー部
22A 第1カバー部材
22B 第2カバー部材
23 端子台
24 ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7