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特開2024-127405上柱の建込み支援装置、及び上柱の建込み支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127405
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】上柱の建込み支援装置、及び上柱の建込み支援方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036538
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】尻無濱 昭三
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA31
(57)【要約】
【課題】下柱2の直上に上柱1を安全に建て起こして、上柱1の建込みを支援する上柱1の建込み支援装置6、及び上柱1の建込み支援方法を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する上柱1の建込み支援装置6であって、下柱2の上端部に取り付けた下柱側基部12と、寝かせた状態における上柱1の下端部の下側に取り付けた上柱側基部11と、下柱側基部12に対して上柱側基部11を、前後方向Xを回転軸にして枢動可能に連結する一対の連結アーム20とが備えられ、一対の連結アーム20の回転半径に沿って上柱1側から下柱2側に向かう方向を半径方向として、一対の連結アーム20は、上柱1を半径方向へ移動可能にする移動手段(楕円挿通孔21b)と、上柱1の半径方向への移動を規制する移動規制部24とが備えられたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置であって、
下柱の上端部に取り付けた下柱側基部と、
寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取り付けた上柱側基部と、
前記下柱側基部に対して前記上柱側基部を、水平方向を回転軸にして枢動可能に連結する枢動部とが備えられ、
該枢動部の回転半径に沿って前記上柱側から前記下柱側に向かう方向を半径方向として、
前記枢動部は、
前記上柱を前記半径方向へ移動可能にする移動手段と、
前記上柱の前記半径方向への移動を規制する移動規制手段とが備えられた
上柱の建込み支援装置。
【請求項2】
前記枢動部は、
前記下柱側基部に対して前記上柱側基部を枢動可能に連結する板状の連結アームが備えられ、
前記移動手段は、
前記連結アームの前記回転軸となる軸体が挿通されるとともに、前記上柱側から前記下柱側に向かう前記半径方向に長い長楕円形状の長孔部で構成され、
前記移動規制手段は、
前記長楕円形状の前記長孔部における長軸の延長上に配置され、前記連結アームに固定された板状の固定プレートと、
前記軸体に枢支され、前記固定プレートに当接する板状の枢動プレートとで構成された
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項3】
前記枢動プレートと前記固定プレートとの接触面が、前記軸体を中心とする円弧面で構成された
請求項2に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項4】
前記移動規制手段は、
前記固定プレートの主面に固定されるとともに、前記水平方向で前記枢動プレートに対向する対向部が備えられた
請求項2に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項5】
前記枢動部は、
前記固定プレートに当接した前記枢動プレートを固定する固定手段が備えられた
請求項2に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項6】
前記枢動部は、
前記下柱側基部及び前記上柱側基部をそれぞれ枢動可能に連結する板状の連結アームが備えられ、
前記連結アームは、
前記半径方向とは逆方向へ向けて前記上柱側基部との連結箇所から延設された部分の先端に、寝かせた状態の前記上柱に当接する当接部が備えられた
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項7】
前記下柱側基部に取り付けられるとともに、前記下柱の直上に前記上柱を案内するガイド部材が備えられた
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、
前記上柱が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材が備えられた
請求項7に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項9】
前記下柱と前記上柱とが所定のルートギャップを隔てた状態において、
前記上柱または前記下柱のいずれか一方に、他方に接合した裏当金に当接する裏当金ストッパが備えられた
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項10】
長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援方法であって、
下柱の上端部に取り付けた下柱側基部に対して、寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取り付けた上柱側基部を、水平方向を回転軸とする枢動部を介して枢動可能に連結する工程と、
前記枢動部の回転半径に沿って前記上柱側から前記下柱側に向かう半径方向への前記上柱の移動を前記枢動部の移動規制手段によって規制する工程と、
前記枢動部を介して前記下柱に連結された前記上柱の上端部を吊り上げて、前記枢動部の回転軸を中心に前記上柱を回動させる工程と、
前記上柱が起立した状態において、前記移動規制手段による前記上柱の移動規制を解除する工程と、
前記枢動部の移動手段によって起立状態の前記上柱を下方へ移動させる工程とを行う
上柱の建込み支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援するような上柱の建込み支援装置、及び上柱の建込み支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば線路の上空に駅舎などの建築物を建設する場合、線路の上空に設けた床版を貫通する下柱に上柱を連結して、建築物の柱を組み立てることがある。
この際、建設現場では、長手方向が略水平となるように寝かせた状態でトラックなどの荷台に搭載した上柱を、重機などを用いて吊り上げて建て起こすとともに、建て起こした状態の上柱を床版上に移動して下柱に組み付けている。
あるいは、上柱を寝かせた状態のまま荷台から床版上に移動させたのち、寝かせた状態の上柱を床版上で建て起こして下柱に組み付けている。
【0003】
このような上柱の建て起こしを支援する技術として、例えば特許文献1には、車輪を設けた柱受台を上柱の下端部に連結し、上柱の上端部の吊り上げに伴って、柱受台が床版上を走行することで、寝かせた状態の上柱の建て起こしを支援することが開示されている。
【0004】
ところで、このような上柱の建込みでは、上端部の吊り上げによって起立した上柱の下端部を、所定のルートギャップを隔てて下柱の直上に近接させるとともに、起立した上柱の下端部を溶接によって下柱に接合して組み付けている。この際、下柱または上柱の内周面に裏当金を予め接合しておくことで、下柱と上柱との確実な接合を実現している。
【0005】
例えば特許文献1において、下柱に裏当金を予め接合した場合、下柱の上方以外で建て起こした上柱を、重機の旋回によって下柱の上方へ移動させたのち下降することで、裏当金との接触を回避しながら上柱を下柱に近接することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、重機の旋回に伴って上柱が揺れ動くおそれがあるため、吊り上げた上柱の揺れ動きを抑えながら下降させる必要があり、安全性の観点から好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-139702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、下柱の直上に上柱を安全に建て起こして、上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置、及び上柱の建込み支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置であって、下柱の上端部に取り付けた下柱側基部と、寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取り付けた上柱側基部と、前記下柱側基部に対して前記上柱側基部を、水平方向を回転軸にして枢動可能に連結する枢動部とが備えられ、該枢動部の回転半径に沿って前記上柱側から前記下柱側に向かう方向を半径方向として、前記枢動部は、前記上柱を前記半径方向へ移動可能にする移動手段と、前記上柱の前記半径方向への移動を規制する移動規制手段とが備えられたことを特徴とする。
【0010】
またこの発明は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援方法であって、下柱の上端部に取り付けた下柱側基部に対して、寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取り付けた上柱側基部を、水平方向を回転軸とする枢動部を介して枢動可能に連結する工程と、前記枢動部の回転半径に沿って前記上柱側から前記下柱側に向かう半径方向への前記上柱の移動を前記枢動部の移動規制手段によって規制する工程と、前記枢動部を介して前記下柱に連結された前記上柱の上端部を吊り上げて、前記枢動部の回転軸を中心に前記上柱を回動させる工程と、前記上柱が起立した状態において、前記移動規制手段による前記上柱の移動規制を解除する工程と、前記枢動部の移動手段によって起立状態の前記上柱を下方へ移動させる工程とを行うことを特徴とする。
【0011】
上記上柱の下端部とは、寝かせた状態における上柱の長手方向の一端部であって、上柱を建て起こした状態における下端側となる部位のことをいう。
上記下柱側基部は、下柱のエレクションピース、下柱のエレクションピースとは別体で下柱またはエレクションピースに取り付けた部材のことをいう。
【0012】
上記上柱側基部は、上柱のエレクションピース、上柱のエレクションピースとは別体で上柱またはエレクションピースに取り付けた部材のことをいう。
上記移動手段は、枢動部及び上柱を一体的に移動させる手段、あるいは下柱及び枢動部に対して上柱を相対移動させる手段などのことをいう。
【0013】
この発明によれば、寝かせた状態における上柱の上柱側基部が枢動部を介して下柱の下柱側基部に枢動可能に連結されるため、寝かせた状態における上柱の上端部が吊り上げられた際、水平方向を回転軸として上柱を回動させることができる。このため、上柱の建込み支援装置は、寝かせた状態の上柱を、下柱の直上に起立させることができる。
【0014】
さらに、枢動部が上柱側から下柱側に向かう半径方向への上柱の移動を可能にする移動手段と、上柱の移動を規制する移動規制手段とを備えているため、上柱の建込み支援装置は、移動規制手段による上柱の移動規制を解除することで、起立状態の上柱を下方へ移動させることができる。
【0015】
この際、上柱の建込み支援装置は、下柱と上柱とが枢動部によって連結されているため、上柱の揺れ動きを抑えながら、上柱の回動と上柱の下降とを支援することができる。
【0016】
これにより、上柱の建込み支援装置は、例えば下柱に裏当金を予め接合した場合であっても、裏当金との接触を回避する回転半径で上柱を安全に回動させることができるとともに、上柱を所定のルートギャップを隔てて下柱に安全に近接させることができる。
よって、上柱の建込み支援装置、及びこれを用いた上柱の建込み支援方法は、下柱の直上に上柱を安全に建て起こして、上柱の建込みを支援することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記枢動部は、前記下柱側基部に対して前記上柱側基部を枢動可能に連結する板状の連結アームが備えられ、前記移動手段は、前記連結アームの前記回転軸となる軸体が挿通されるとともに、前記上柱側から前記下柱側に向かう前記半径方向に長い長楕円形状の長孔部で構成され、前記移動規制手段は、前記長楕円形状の前記長孔部における長軸の延長上に配置され、前記連結アームに固定された板状の固定プレートと、前記軸体に枢支され、前記固定プレートに当接する板状の枢動プレートとで構成されてもよい。
【0018】
この構成によれば、移動手段が半径方向に長い長楕円形状の長孔部で構成されているため、起立状態の上柱を簡素な構成で下方へ移動させることができる。
一方、移動規制手段が連結アームに固定された固定プレートと、固定プレートに当接する枢動プレートとで構成されているため、上柱の建込み支援装置は、上柱の移動規制と移動規制の解除とを、枢動プレートの回動によって行うことができる。
【0019】
これにより、上柱の建込み支援装置は、下柱の直上への上柱の建て起こしだけでなく、上柱の下柱への近接をより容易にして上柱の建込みを支援することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記枢動プレートと前記固定プレートとの接触面が、前記軸体を中心とする円弧面で構成されてもよい。
この構成によれば、固定プレートへの枢動プレートの当接と、固定プレートからの枢動プレートの離間とをよりスムーズにすることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記移動規制手段は、前記固定プレートの主面に固定されるとともに、前記水平方向で前記枢動プレートに対向する対向部が備えられてもよい。
この構成によれば、枢動プレートの水平方向への移動や変形を対向部によって抑えることができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱の移動規制が意図せず解除されることを確実に防止して、上柱のより安全な建て起こしを支援することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記枢動部は、前記固定プレートに当接した前記枢動プレートを固定する固定手段が備えられてもよい。
この構成によれば、上柱の移動規制を確実に維持できるため、上端部の吊り上げによって回動する上柱が意図せず移動開始することを防止できる。これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱のより安全な建て起こしを支援することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記枢動部は、前記下柱側基部及び前記上柱側基部をそれぞれ枢動可能に連結する板状の連結アームが備えられ、前記連結アームは、前記半径方向とは逆方向へ向けて前記上柱側基部との連結箇所から延設された部分の先端に、寝かせた状態の前記上柱に当接する当接部が備えられてもよい。
【0024】
この構成によれば、連結アームの当接部が寝かせた状態の上柱に当接するため、上柱側基部と枢動部との連結箇所を回転軸として、上柱の上端部が下方へ向けて回動することを規制することができる。
これにより、上柱の建込み支援装置は、当接部を備えていない場合に比べて、上柱の寝かせた状態をより安定させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記下柱側基部に取り付けられるとともに、前記下柱の直上に前記上柱を案内するガイド部材が備えられてもよい。
この構成によれば、水平方向を中心に回動する上柱を、下柱の直上へ向けて案内することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱を確実かつ効率よく建て起こすことができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記ガイド部材は、前記上柱が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材が備えられてもよい。
この構成によれば、下柱の直上に上柱をよりスムーズに案内することができる。
【0027】
これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱の回動が阻害されることによる意図しない不具合、あるいはガイド部材との摺動による上柱の傷付きを防止することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱の安全な建て起こしをより確実に支援することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記下柱と前記上柱とが所定のルートギャップを隔てた状態において、前記上柱または前記下柱のいずれか一方に、他方に接合した裏当金に当接する裏当金ストッパが備えられてもよい。
【0029】
この構成によれば、移動規制手段による上柱の移動規制が解除され、起立状態の上柱が下方へ移動した際、下柱と上柱との間に所定のルートギャップを確実に確保することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、下柱と上柱との確実な接合を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、下柱の直上に上柱を安全に建て起こして、上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置、及び上柱の建込み支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】起立状態における上柱の概略を説明する説明図。
図2】吊り上げ直前の上柱の概略を説明する説明図。
図3】建込み支援装置の外観を示す正面図。
図4】斜め下方視における枢動機構部の外観を示す外観斜視図。
図5】分解状態における枢動機構部の外観を示す分解斜視図。
図6】枢動プレートの固定構造を説明する断面図。
図7】下柱側基部と連結アームの連結箇所を中心に回動する上柱の状態を説明する説明図。
図8】建て起こし過程における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
図9】上柱が起立した状態における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
図10】枢動プレートを回動させた状態を説明する説明図。
図11】上柱を下降させた状態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施例では、寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する建込み支援装置6について、図1から図6を用いて説明する。
【0033】
なお、図1は起立状態における上柱1の概略を説明する説明図を示し、図2は吊り上げ直前の上柱1の概略を説明する説明図を示し、図3は建込み支援装置6の正面図を示し、図4は斜め下方視における枢動機構部10の外観斜視図を示している。
【0034】
さらに、図5は分解状態における枢動機構部10の分解斜視図を示し、図6は枢動プレート25の固定構造を説明する断面図を示している。
なお、図3中の丸枠部分は移動規制部24を拡大した要部拡大図を示し、図6は上柱1が起立した状態において、固定ボルト27を通る前後方向Xに沿った鉛直断面における断面図を示している。
【0035】
また、図1中の上側を本実施形態における上方とし、図1中の下側を本実施形態における下方として、図中の矢印Xは前後方向(以下、前後方向Xとする)を示し、図中の矢印Yは前後方向Xに対して平面視直交する幅方向(以下、幅方向Yとする)を示している。
【0036】
まず、上柱1は、図1に示すように、下端が基礎などに固定された下柱2の上端に連結され、例えば線路の上空に建設される駅舎などの建築物の鉄骨柱3を構成している。
この上柱1は、図1に示すように、下柱2に連結された状態において、上下方向を長手方向とする筒状の鉄骨であって、水平方向(短手方向)に沿った断面形状が断面略矩形に形成されている(図4参照)。
なお、上柱1は、長手方向が上下方向となるように起立した状態において、外側面と下端面との隅部1aが面取りされた形状に形成されている。
【0037】
さらに、上柱1には、図1に示すように、下方の端部である下端部に配置された下側エレクションピース1bと、上方の端部である上端部に配置された上側エレクションピース1cとが、各外側面に2つずつ接合されている。
【0038】
加えて、上柱1には、図1に示すように、上側エレクションピース1cよりも下方に配置された梁ブラケット1dが、各外側面に1つずつ接合されている。
このような上柱1は、図2に示すように、長手方向が略水平となるように寝かせた状態(横倒し状態)で後述する床版4上に搬入され、下柱2の上方において、後述する建込み支援装置6によって建て起こしが支援される。
【0039】
また、下柱2は、図1に示すように、上下方向に延びる筒状の鉄骨であって、水平方向(短手方向)に沿った断面形状が、上柱1に略同じ大きさの断面略矩形に形成されている(図4参照)。
【0040】
この下柱2には、図1に示すように、上方の端部である上端部に配置された上側エレクションピース2aが、各外側面に2つずつ接合されるとともに、上側エレクションピース2aよりも下方に配置された梁ブラケット2bが、各外側面に1つずつ接合されている。
【0041】
さらに、下柱2には、図1に示すように、梁ブラケット2bの上方に建築物の床部分となる床版4が接合されている。このため、下柱2は、上端部が床版4に対して上方に突出するように配置されている。
【0042】
なお、下柱2の内周面には、図3に示すように、断面略矩形の筒状体である裏当金5が、下柱2の上端よりも上方に突出した状態で接合されている。この裏当金5は、下柱2の内周面に略同じ大きさの外周面を有する筒状体であって、上柱1を下柱2に溶接によって接合する際、溶接の溶け込みを容易にするために設けている。
【0043】
次に、寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する建込み支援装置6について詳述する。
建込み支援装置6は、図2に示すように、寝かせた状態における上柱1の下面を支持する2つの支持台7と、上柱1の内周面に接合した4つの裏当金ストッパ8(図3参照)と、寝かせた状態における上柱1の下端部を下柱2の上端部に枢動可能に連結する枢動機構部10を備えている。
【0044】
詳述すると、建込み支援装置6の2つの支持台7は、例えば油圧式や機械式のジャッキなどで構成されている。この2つの支持台7のうち、一方の支持台7は、図2に示すように、床版4の上面に載置され、寝かせた状態における上柱1の下側エレクションピース1bに対して上端部側で隣接する下面を支持している。
【0045】
一方、他方の支持台7は、図2に示すように、床版4の上面に載置され、寝かせた状態における上柱1の上側エレクションピース1cに対して下端部側で隣接する下面を支持している。
【0046】
また、建込み支援装置6の4つの裏当金ストッパ8は、図3に示すように、所定の厚みを有する板状であって、上柱1の下端部における内周面にそれぞれ一つずつ接合されている。この裏当金ストッパ8は、上柱1が下柱2に対して所定のルートギャップを隔てて起立した状態において、裏当金5の上端が当接する上下方向の位置に固定されている。
【0047】
また、建込み支援装置6の枢動機構部10は、図3から図5に示すように、上柱1に配設された一対の上柱側基部11と、下柱2に配設された一対の下柱側基部12と、上柱側基部11を下柱側基部12に連結する一対の連結アーム20と、上柱1の建て起こしを案内する第1ガイド部材30及び一対の第2ガイド部材40とを備えている。
【0048】
より詳しくは、枢動機構部10の一対の上柱側基部11は、図3から図5に示すように、寝かせた状態における上柱1の下面となる外側面に設けられた一対の下側エレクションピース1bで構成されている。
【0049】
この上柱側基部11となる下側エレクションピース1bは、図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する平板状に形成されている。さらに、下側エレクションピース1bで構成された上柱側基部11には、前後方向Xに貫通する略円形の貫通孔11aが開口形成されている。
【0050】
また、枢動機構部10の一対の下柱側基部12は、図3から図5に示すように、幅方向Yで対向する下柱2の外側面のうち、一方の外側面に設けられた一対の上側エレクションピース2aで構成されている。
【0051】
この下柱側基部12となる上側エレクションピース2aは、図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する平板状に形成されている。さらに、上側エレクションピース2aで構成された下柱側基部12には、前後方向Xに貫通する略円形の貫通孔12aが開口形成されている。
【0052】
また、一対の連結アーム20は、図3から図5に示すように、一対の上柱側基部11及び一対の下柱側基部12を挟んで前後方向Xに対向配置されている。
さらに、一対の連結アーム20は、図5に示すように、上柱1側がボルト13A及びナット13Bを介して、上柱側基部11の貫通孔11aに着脱自在に取り付けられるとともに、下柱2側がボルト14A及びナット14Bを介して、下柱側基部12の貫通孔12aに着脱自在に取り付けられている。
【0053】
なお、連結アーム20の下柱2側は、図5に示すように、後述する第1ガイド部材30に対しても枢動可能に連結されている。
このため、一対の連結アーム20は、一対の上柱側基部11及び一対の下柱側基部12に対して、それぞれ前後方向Xを回転軸として枢動可能に連結されている。
【0054】
このような連結アーム20は、図3から図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する板状のアーム本体21と、アーム本体21における上柱側基部11とは逆側の主面に設けた補強板22と、アーム本体21の先端に設けた円形状の当接部23とで構成されている。
【0055】
さらに、連結アーム20には、起立状態における上柱1を下方へ移動可能にする手段としての楕円挿通孔21bと、上柱1の下方への移動を規制する手段としての移動規制部24とを備えている。
【0056】
具体的には、連結アーム20のアーム本体21は、上柱1が下柱2に対して所定のルートギャップを隔てて起立した状態において、上柱側基部11の貫通孔11aと下柱側基部12の貫通孔12aとの間隔よりも長い上下方向の長さを有する平板状に形成されている(図9参照)。
【0057】
このアーム本体21には、図5に示すように、上柱側基部11の貫通孔11aに連通する正面視円形の円形挿通孔21aと、下柱側基部12の貫通孔12aに連通する正面視長楕円形状の楕円挿通孔21bとが開口形成されている。
【0058】
円形挿通孔21aは、ボルト13Aを挿通する開口であって、補強板22を貫通して開口形成されている。
楕円挿通孔21bは、ボルト14Aを挿通する開口であって、上述したように起立状態における上柱1を下方へ移動可能にしている。
【0059】
この楕円挿通孔21bは、図3に示すように、ボルト14Aの軸中心を回転軸とする連結アーム20の回動半径に沿った半径方向(上柱1が起立した状態における上下方向)を長軸とする正面視長楕円形状に形成されている。
【0060】
ここで、上柱1が下柱2に対して所定のルートギャップを隔てて起立した状態において、上柱側基部11の貫通孔11aと下柱側基部12の貫通孔12aとの上下方向の間隔を最小間隔として、さらに詳述すると、楕円挿通孔21bは、上柱1側の円弧中心が、円形挿通孔21aの中心から半径方向に最小間隔を隔てた位置に位置するように開口形成されている。
【0061】
このため、楕円挿通孔21bにおける下柱2側の円弧中心は、円形挿通孔21aの中心から最小間隔よりも長い半径方向の間隔を隔てた位置に位置している。これにより、楕円挿通孔21bは、連結アーム20を介して連結された上柱1を、長楕円形状の長軸に沿った方向(ボルト14Aを回転軸とする連結アーム20の半径方向)にスライド移動可能にしている。
【0062】
また、連結アーム20の当接部23は、図4及び図5に示すように、アーム本体21の主面に平行な方向を厚み方向とする円板状であって、円形挿通孔21aよりも上柱1の上端部側へ延設した部分の先端に設けられている。
この当接部23は、連結アーム20と上柱側基部11との連結箇所であるボルト13Aを回転軸とした上柱1の正面視時計回りの回動を規制するために設けられている。
【0063】
また、連結アーム20の移動規制部24は、図3及び図5に示すように、アーム本体21における下柱側基部12とは逆側の主面に配置されている。この移動規制部24は、ボルト14Aを介してアーム本体21に枢支された枢動プレート25と、アーム本体21に固定された固定プレート26と、枢動プレート25をアーム本体21に固定する固定ボルト27とを備えている。
【0064】
具体的には、移動規制部24の枢動プレート25は、図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する正面視扇状の平板であって、アーム本体21の楕円挿通孔21bに連通する正面視円形の挿通孔25aが、正面視扇状の中心側に開口形成されている。
【0065】
加えて、枢動プレート25は、上柱1が起立した状態において、挿通孔25aの上方に位置し、固定ボルト27が挿通される正面視円形のボルト用貫通孔25bが開口形成されている(図6参照)。
【0066】
さらに、枢動プレート25は、図3に示すように、正面視において、ボルト14Aの軸中心を中心とする半径方向に交差する枢動側面25cが、ボルト14Aの軸中心を中心とする正面視円弧状に形成されている。
【0067】
この枢動プレート25には、図5及び図6に示すように、アーム本体21とは逆側の主面に、枢動プレート25を回転させる作業者が保持するための平板状の取手部28が立設されている。
【0068】
一方、移動規制部24の固定プレート26は、図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する板状であって、楕円挿通孔21bに対して円形挿通孔21a側に隣接する位置に配置されている。
【0069】
この固定プレート26は、図3に示すように、楕円挿通孔21b側の固定側面26aが、ボルト14Aの軸中心を中心とするとともに、枢動プレート25における正面視円弧状の枢動側面25cと略同じ半径の正面視円弧状に形成されている。
【0070】
このような固定プレート26は、図3に示すように、楕円挿通孔21bにおける下柱2側の円弧中心に軸中心が略一致するようにボルト14Aが位置する状態において、枢動プレート25の枢動側面25cに固定側面26aが当接する位置に固定されている。
さらに、固定プレート26には、図3図5及び図6に示すように、アーム本体21とは逆側の主面に、枢動プレート25の主面に対向する対向部29が固定されている。
【0071】
この対向部29は、図5に示すように、枢動プレート25の主面に対向する主面を有する平板状であって、固定ボルト27が挿通されるボルト用貫通孔29a(図6参照)が開口形成されるとともに、アーム本体21とは逆側の主面に固定ボルト27が螺合するウェルドナット29bが接合されている。
【0072】
また、固定ボルト27は、図6に示すように、対向部29のボルト用貫通孔29a及びウェルドナット29bを介して、アーム本体21のネジ孔21cに螺合している。この固定ボルト27は、上述した対向部29のボルト用貫通孔29a及びウェルドナット29bと、アーム本体21のネジ孔21cとの協働によって、固定プレート26に当接した枢動プレート25を固定する固定手段を構成している。
【0073】
また、枢動機構部10の第1ガイド部材30は、図4及び図5に示すように、一対の下柱側基部12の間において、下柱2の外側面に当接するように配置されている。この第1ガイド部材30は、図5に示すように、下柱側基部12に装着されるガイド基部31と、ガイド基部31の上端面に貼付した低摩擦係数の滑り部材32とで構成されている。
【0074】
具体的には、ガイド基部31は、図4及び図5に示すように、下柱2の外側面から離間する幅方向Y側が開口した略ボックス形状に形成されている。このガイド基部31は、前後方向Xに所定間隔を隔てて対向する一対の側壁部31aに、下柱側基部12の貫通孔12aに連通する貫通孔(符号省略)が開口形成されている。
【0075】
一方、滑り部材32は、自己潤滑性及び低摩擦係数のエンジニアリングプラスチック製であって、例えばモノマーキャストナイロンで構成されている。
この滑り部材32は、図3に示すように、上下方向に厚みを有する板状であって、下柱2の直上へ向かう上柱1の隅部1a近傍の回動軌跡に沿うように、上面が上方へ僅かに膨出した正面視略蒲鉾状に形成されている。
【0076】
より詳しくは、滑り部材32の上面は、正面視において、傾きを異ならせた平面を組み合わせて、幅方向Yの略中央が最も上方へ膨出した形状になるように形成されている。
【0077】
このような第1ガイド部材30は、図3に示すように、裏当金5の上端面よりも上方に、滑り部材32の上面が位置するように配置されるとともに、下柱側基部12にボルト14A及びナット14Bを用いて取り付けられている。
【0078】
また、一対の第2ガイド部材40は、図3及び図4に示すように、下柱2の前面及び後面のそれぞれに設けた一対の上側エレクションピース2aのうち、第1ガイド部材30から幅方向Yへ最も離間した位置の上側エレクションピース2aに締結固定されている。
【0079】
この第2ガイド部材40は、図3及び図4に示すように、幅方向Yに厚みを有する板材で、上柱1の回動を案内するガイド本体41と、上側エレクションピース2aに係止される係止フック42とを備えている。
【0080】
具体的には、第2ガイド部材40のガイド本体41は、図3及び図4に示すように、上側エレクションピース2aに固定される本体下部(符号省略)と、本体下部の上端から寝かせた状態の上柱1へ向けて斜め上方へ延設された本体上部(符号省略)とを備えている。
【0081】
さらに、ガイド本体41は、第1ガイド部材30側の主面に、本体下部と本体上部とに跨って接合され、本体下部と本体上部との屈曲箇所を補強する補強部43を備えている。
なお、ガイド本体41の本体上部は、ボルト14Aを中心とした上柱1の回動軌跡に沿うように斜め上方へ向けて延設されている。
【0082】
さらに、ガイド本体41の本体上部は、他方のガイド本体41に対向する側面同士の間隔が上方へ向かうほど広くなるように、他方のガイド本体41に対向する側面が傾斜した形状に形成されている。
【0083】
一方、第2ガイド部材40の係止フック42は、図3に示すように、ガイド本体41を挟んで補強部43に対向配置されるとともに、ガイド本体41の本体下部に接合されている。
【0084】
引き続き、上述した構成の建込み支援装置6を用いて、寝かせた状態の上柱1を建て起こして下柱2に連結する工程について、図7から図11を用いて説明する。
なお、図7は下柱側基部12と連結アーム20の連結箇所を中心に回動する上柱1の状態を説明する説明図を示し、図8は建て起こし過程における建込み支援装置6の状態を説明する説明図を示している。
【0085】
さらに、図9は上柱1が起立した状態における建込み支援装置6の状態を説明する説明図を示し、図10は枢動プレート25を回動させた状態を説明する説明図を示し、図11は上柱1を下降させた状態を説明する説明図を示している。
【0086】
まず、作業者は、図3に示すように、下柱2に対して連結アーム20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を取り付けるとともに、床版4に2つの支持台7を載置する。
この際、作業者は、図3に示すように、連結アーム20の枢動プレート25を固定プレート26に当接させるとともに、固定ボルト27を用いて枢動プレート25をアーム本体21に固定して、楕円挿通孔21bに沿った連結アーム20のスライド移動を規制する。
【0087】
その後、作業者は、図2に示すように、上柱1をクレーンなどの重機を用いて、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で床版4上に搬入する。
この際、作業者は、寝かせた状態の上柱1の前面及び後面が、下柱2の前面及び後面に略平行で、かつ略同じ前後方向Xの位置となるように、上柱1の向きを調整して搬入する。
【0088】
床版4上に上柱1が搬入されると、作業者は、図3に示すように、連結アーム20を上柱1に連結する。さらに、作業者は、上柱1の隅部1a近傍を第1ガイド部材30の滑り部材32に載置するとともに、寝かせた状態における上柱1の下面を2つの支持台7に載置する。
【0089】
この際、連結アーム20の当接部23は、図3に示すように、寝かせた状態における上柱1の下面に当接または近接する。
その後、作業者は、図2に示すように、上柱1の上端部にクレーンなどの重機のワイヤーWを連結して、上柱1の吊り上げ準備を完了したのち、上柱1の上端部の吊り上げを開始する。
【0090】
上端部の吊り上げが開始されると、上柱1は、図7及び図8に示すように、ワイヤーWの張力によって支持されながら、下柱側基部12と連結アーム20との連結箇所を中心に、上端部が上方へ向かうように正面視反時計周りに回動開始する。
【0091】
この際、上柱1の隅部1aは、図8に示すように、上柱側基部11と連結アーム20との連結箇所を中心に回動しながら、第1ガイド部材30の滑り部材32上を摺動する。
上柱側基部11と連結アーム20との連結箇所を中心とした上柱1の回動がさらに進むと、上柱1は、前面及び後面が第2ガイド部材40における本体上部の側面に案内されながら下柱2の直上へ向けて回動する。
【0092】
そして、下柱側基部12と連結アーム20との連結箇所を中心に回動する上柱1が起立するまで上端部を吊り上げると、作業者は、上柱1の吊り上げを停止する。
この際、上柱1は、図9に示すように、下柱2の直上で起立するとともに、各外側面の向きが下柱2の各外側面の向きに一致した状態となる。
その後、作業者は、移動規制部24による上柱1の下方への移動規制を解除する。
【0093】
具体的には、作業者は、図9及び図10に示すように、固定ボルト27を緩めてアーム本体21のネジ孔21cから離間させたのち、枢動プレート25を正面視時計回りに回動させる。
【0094】
これにより、枢動プレート25の枢動側面25cが固定プレート26の固定側面26aから離間するため、移動規制部24による上柱1の移動規制が解除され、連結アーム20の楕円挿通孔21bに沿った上柱1の下降が可能になる。
【0095】
そこで、作業者は、図11に示すように、裏当金ストッパ8に裏当金5が当接するまで、吊り上げた上柱1を下降させる。この際、上柱1及び連結アーム20が、楕円挿通孔21bの長軸に沿って一体的に下降する。
【0096】
上柱1の裏当金ストッパ8に裏当金5が当接すると、作業者は、上柱1を吊り上げた状態において、連結アーム20が連結された上柱側基部11及び下柱側基部12以外の上柱1の下側エレクションピース1bと下柱2の上側エレクションピース2aとを適宜の部材を用いて連結したのち、連結アーム20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を取り外す。
【0097】
その後、作業者は、上柱側基部11である上柱1の下側エレクションピース1bと、下柱側基部12である下柱2の上側エレクションピース2aとを適宜の部材を用いて連結したのち、下柱2と上柱1とを溶接によって接合して鉄骨柱3を構成する。
このようにして、本実施形態の建込み支援装置6は、下柱2の上空において、寝かせた状態の上柱1の建て起こしを可能にし、上柱1の建込みを支援している。
【0098】
以上のように、本実施形態における上柱1の建込み支援装置6は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する装置である。
この上柱1の建込み支援装置6は、下柱2の上端部に取り付けた下柱側基部12と、寝かせた状態における上柱1の下端部の下側に取り付けた上柱側基部11と、下柱側基部12に対して上柱側基部11を、前後方向Xを回転軸にして枢動可能に連結する一対の連結アーム20とが備えられている。
【0099】
そして、一対の連結アーム20の回転半径に沿って上柱1側から下柱2側に向かう方向を半径方向として、一対の連結アーム20は、上柱1を半径方向へ移動可能にする移動手段(楕円挿通孔21b)と、上柱1の半径方向への移動を規制する移動規制部24とを備えている。
【0100】
また、本実施形態における上柱1の建込み支援方法は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する方法である。
この上柱1の建込み支援方法は、下柱2の上端部に取り付けた下柱側基部12に対して、寝かせた状態における上柱1の下端部の下側に取り付けた上柱側基部11を、前後方向Xを回転軸とする一対の連結アーム20を介して枢動可能に連結する工程を行う。
【0101】
さらに、上柱1の建込み支援方法は、一対の連結アーム20の回転半径に沿って上柱1側から下柱2側に向かう半径方向への上柱1の移動を一対の連結アーム20の移動規制部24によって規制する工程と、連結アーム20を介して下柱2に連結された上柱1の上端部を吊り上げて、連結アーム20の回転軸(ボルト14A)を中心に上柱1を回動させる工程とを行う。
【0102】
そして、上柱1の建込み支援方法は、上柱1が起立した状態において、移動規制部24による上柱1の移動規制を解除する工程と、一対の連結アーム20の移動手段(楕円挿通孔21b)によって起立状態の上柱1を下方へ移動させる工程とを行う。
【0103】
この構成によれば、寝かせた状態における上柱1の上柱側基部11が一対の連結アーム20を介して下柱2の下柱側基部12に枢動可能に連結されるため、寝かせた状態における上柱1の上端部が吊り上げられた際、前後方向Xを回転軸として上柱1を回動させることができる。このため、上柱1の建込み支援装置6は、寝かせた状態の上柱1を、下柱2の直上に起立させることができる。
【0104】
さらに、一対の連結アーム20が上柱1側から下柱2側に向かう半径方向への上柱1の移動を可能にする移動手段(楕円挿通孔21b)と、上柱1の移動を規制する移動規制部24とを備えているため、上柱1の建込み支援装置6は、移動規制部24による上柱1の移動規制を解除することで、起立状態の上柱1を下方へ移動させることができる。
【0105】
この際、上柱1の建込み支援装置6は、下柱2と上柱1とが一対の連結アーム20によって連結されているため、上柱1の揺れ動きを抑えながら、上柱1の回動と上柱1の下降とを支援することができる。
【0106】
これにより、上柱1の建込み支援装置6は、例えば下柱2に裏当金5を予め接合した場合であっても、裏当金5との接触を回避する回転半径で上柱1を安全に回動させることができるとともに、上柱1を所定のルートギャップを隔てて下柱2に安全に近接させることができる。
【0107】
よって、上柱1の建込み支援装置6、及びこれを用いた上柱1の建込み支援方法は、下柱2の直上に上柱1を安全に建て起こして、上柱1の建込みを支援することができる。
【0108】
また、移動手段は、連結アーム20の回転軸となるボルト14Aが挿通されるとともに、上柱1側から下柱2側に向かう半径方向に長い長楕円形状の楕円挿通孔21bで構成されている。
【0109】
そして、移動規制部24は、長楕円形状の楕円挿通孔21bにおける長軸の延長上に配置され、連結アーム20に固定された板状の固定プレート26と、ボルト14Aに枢支され、固定プレート26に当接する板状の枢動プレート25とで構成されている。
【0110】
この構成によれば、移動手段が半径方向に長い長楕円形状の楕円挿通孔21bで構成されているため、起立状態の上柱1を簡素な構成で下方へ移動させることができる。
【0111】
一方、移動規制部24が連結アーム20に固定された固定プレート26と、固定プレート26に当接する枢動プレート25とで構成されているため、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1の移動規制と移動規制の解除とを、枢動プレート25の回動によって行うことができる。
【0112】
これにより、上柱1の建込み支援装置6は、下柱2の直上への上柱1の建て起こしだけでなく、上柱1の下柱2への近接をより容易にして上柱1の建込みを支援することができる。
【0113】
また、枢動プレート25の枢動側面25cと固定プレート26の固定側面26aとが、ボルト14Aを中心とする円弧面で構成されているため、上柱1の建込み支援装置6は、固定プレート26への枢動プレート25の当接と、固定プレート26からの枢動プレート25の離間とをよりスムーズにすることができる。
【0114】
また、移動規制部24が、固定プレート26の主面に固定されるとともに、前後方向Xで枢動プレート25に対向する対向部29を備えているため、上柱1の建込み支援装置6は、枢動プレート25の前後方向Xへの移動や変形を対向部29によって抑えることができる。
【0115】
このため、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1の移動規制が意図せず解除されることを確実に防止して、上柱1のより安全な建て起こしを支援することができる。
【0116】
また、連結アーム20が、固定プレート26に当接した枢動プレート25を固定する固定ボルト27を備えているため、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1の移動規制を確実に維持できる。
【0117】
このため、上柱1の建込み支援装置6は、上端部の吊り上げによって回動する上柱1が意図せず移動開始することを防止できる。これにより、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1のより安全な建て起こしを支援することができる。
【0118】
また、連結アーム20は、半径方向とは逆方向へ向けて上柱側基部11との連結箇所から延設された部分の先端に、寝かせた状態の上柱1に当接する当接部23を備えている。
【0119】
この構成によれば、連結アーム20の当接部23が寝かせた状態の上柱1に当接するため、上柱側基部11と一対の連結アーム20との連結箇所を回転軸として、上柱1の上端部が下方へ向けて回動することを規制することができる。
これにより、上柱1の建込み支援装置6は、当接部23を備えていない場合に比べて、上柱1の寝かせた状態をより安定させることができる。
【0120】
また、下柱側基部12に取り付けられるとともに、下柱2の直上に上柱1を案内する第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を備えているため、上柱1の建込み支援装置6は、前後方向Xを中心に回動する上柱1を、下柱2の直上へ向けて案内することができる。このため、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1を確実かつ効率よく建て起こすことができる。
【0121】
また第1ガイド部材30が、上柱1が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材32を備えているため、第1ガイド部材30は、下柱2の直上に上柱1をよりスムーズに案内することができる。
【0122】
これにより、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1の回動が阻害されることによる意図しない不具合、あるいは第1ガイド部材30との摺動による上柱1の傷付きを防止することができる。このため、上柱1の建込み支援装置6は、上柱1の安全な建て起こしをより確実に支援することができる。
【0123】
また、上柱1の建込み支援装置6は、下柱2と上柱1とが所定のルートギャップを隔てた状態において、上柱1に、下柱2に接合した裏当金5に当接する裏当金ストッパ8を備えている。
【0124】
この構成によれば、移動規制部24による上柱1の移動規制が解除され、起立状態の上柱1が下方へ移動した際、下柱2と上柱1との間に所定のルートギャップを確実に確保することができる。このため、上柱1の建込み支援装置6は、下柱2と上柱1との確実な接合を容易に実現することができる。
【0125】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の水平方向は、実施形態の前後方向Xに対応し、
以下同様に、
枢動部は、連結アーム20に対応し、
移動手段及び長孔部は、楕円挿通孔21bに対応し、
移動規制手段は、移動規制部24に対応し、
軸体は、ボルト14Aに対応し、
円弧面は、枢動側面25c及び固定側面26aに対応し、
固定手段は、固定ボルト27に対応し、
ガイド部材は、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0126】
例えば、上述した実施形態において、床版4を貫通する下柱2としたが、これに限定せず、基礎に設けた鉄骨柱の基部を下柱としてもよい。
また、寝かせた状態の上柱1の下面を2つの支持台7で支持したが、これに限定せず、寝かせた状態の上柱1の下面をいずれか一方の支持台7で支持する構成であってもよい。
また、上柱1を床版4上に搬入するタイミングは、上述の実施形態に記載のタイミングに限定せず、適宜のタイミングで搬入されてもよい。
【0127】
また、連結アーム20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を取付けるタイミングは、上述の実施形態に記載のタイミングに限定せず、上柱1の吊り上げを開始するまでの間であれば、適宜のタイミングであってもよい。
【0128】
また、連結アーム20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を取り外すタイミングは、上述の実施例のタイミングに限定しない。例えば連結アーム20、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40を取り外した状態で、上柱側基部11を含む上柱1の下側エレクションピース1bと、下柱側基部12を含む下柱2の上側エレクションピース2aとを適宜の部材を用いて連結してもよい。
【0129】
また、上柱側基部11を上柱1の下側エレクションピース1bで構成したが、これに限定せず、上柱1の下側エレクションピース1bとは別体で上柱1に取り付けた部材、あるいは下側エレクションピース1bに取り付けた部材を上柱側基部11としてもよい。
【0130】
また、下柱側基部12を下柱2の上側エレクションピース2aで構成したが、これに限定せず、下柱2の上側エレクションピース2aとは別体で下柱2に取り付けた部材、あるいは上側エレクションピース2aに取り付けた部材を下柱側基部12としてもよい。
【0131】
また、第1ガイド部材30の滑り部材32を、傾きを異ならせた平面を組み合わせた上面を有する正面視略蒲鉾状としたが、これに限定せず、上柱1の隅部1a近傍の回動軌跡に沿った正面視略円弧状の上面を有する滑り部材であってもよい。
【0132】
また、第1ガイド部材30の滑り部材32を、自己潤滑性及び低摩擦係数のエンジニアリングプラスチック製としたが、これに限定せず、ステンレスなどの金属製の滑り部材、あるいはエンジニアリングプラスチックの表面に金属製薄膜板を貼付した滑り部材などであってもよい。
この際、滑り部材の摩耗を抑制するために、上柱1の隅部1aを研磨して平滑性を向上させてもよい。
【0133】
また、第1ガイド部材30と第2ガイド部材40とを備えた建込み支援装置6としたが、これに限定せず、例えば第2ガイド部材40を備えていない建込み支援装置6としてもよい。
あるいは、第1ガイド部材30及び第2ガイド部材40に加えて、第1ガイド部材30に対向する下柱2の外側面に別のガイド部材をさらに備えた建込み支援装置6としてもよい。
【0134】
また、下柱2の内周面に裏当金5を接合し、上柱1の内周面に裏当金ストッパ8を接合したが、これに限定せず、上柱1の内周面に裏当金5を接合し、下柱2の内周面に裏当金ストッパ8を接合してもよい。この場合であっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0135】
また、連結アーム20が、上柱側基部11及び下柱側基部12に対して枢動可能に連結された構成としたが、これに限定せず、下柱側基部12と連結アーム20とが枢動可能に連結され、連結アーム20と上柱側基部11とが締結固定された構成であってもよい。
【0136】
また、下柱側基部12の貫通孔12aに連通する連結アーム20の楕円挿通孔21bを、起立状態における上柱1を下方へ移動可能にする手段としたが、これに限定しない。
具体的には、上柱側基部11の貫通孔11aに連通する連結アーム20の円形挿通孔21aを正面視長楕円形状で開口形成して、下柱側基部12の貫通孔12aに連通する連結アーム20の楕円挿通孔21bを正面視円形状で開口形成してもよい。
【0137】
この場合、上柱側基部11及び下柱側基部12に対して連結アーム20が枢動可能に連結された構成であってもよい。あるいは、下柱側基部12と連結アーム20とが締結固定され、連結アーム20と上柱側基部11とが枢動可能に連結された構成であってもよい。
【0138】
さらに、移動規制部24を連結アーム20と上柱側基部11との枢動箇所に配置することで、下柱2及び一対の連結アーム20に対して上柱1を相対移動可能にする。このような構成の上柱1の建込み支援装置であっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0139】
また、下柱側基部12と上柱側基部11とを一対の連結アーム20で連結したが、これに限定せず、下柱側基部12に対して上柱側基部11を、前後方向Xを回転軸にして枢動可能に連結する構成であれば、適宜の構成であってもよい。
例えば前後方向Xを回転軸として回動するクレビス構造の継手部で、下柱側基部12と上柱側基部11とを連結してもよい。
【0140】
この場合、起立状態の上柱1を下方へ移動可能にする移動手段を、例えば継手部を介して上柱側基部11に固定された上下方向に延びる軸体と、下柱側基部12に固定され、軸体が挿通する筒体で構成する。
【0141】
さらに、上柱1の半径方向への移動を規制する移動規制手段を、例えば筒体に枢支されるとともに、継手部に当接するプレート部材で構成する。
加えて、上柱1の回動を案内するガイド部材として、上述した第2ガイド部材40を下柱2に装着する。
このような構成であっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0142】
また、固定プレート26に当接した枢動プレート25を、固定ボルト27を用いてアーム本体21に固定したが、これに限定せず、固定プレート26に当接した枢動プレート25を固定できる構成であれば、適宜の構成であってもよい。
【0143】
また、上述した実施形態では言及しなかったが、上端部の吊り上げによって回動開始した上柱1が、寝かせた状態に戻るように転倒することを抑止する転倒抑止機構部を備えた上柱1の建込み支援装置6であってもよい。
【符号の説明】
【0144】
1…上柱
5…裏当金
6…建込み支援装置
8…裏当金ストッパ
11…上柱側基部
12…下柱側基部
14A…ボルト
20…連結アーム
21b…楕円挿通孔
23…当接部
24…移動規制部
25…枢動プレート
25c…枢動側面
26…固定プレート
26a…固定側面
27…固定ボルト
29…対向部
30…第1ガイド部材
32…滑り部材
40…第2ガイド部材
X…前後方向
図1
図2
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