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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127410
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240912BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036551
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA11
5J084BA34
5J084BA36
5J084BA47
5J084BA50
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB10
5J084BB12
5J084BB20
5J084BB27
5J084BB28
5J084CA03
5J084EA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定対象物迄の距離に拘らず測定が可能な測量装置を提供する。
【解決手段】測定対象物に測距光35を射出する発光素子28を有する測距光射出部23と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子39を有する測距光受光部24と、前記測距光射出部を制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を前記受光素子に結像させる受光レンズ43を有し、該受光レンズは径方向に向って連続的に焦点位置が変化する第1レンズ部と、面内位置に拘らず焦点位置が一定となる第2レンズ部とを有する単一の奇数次非球面レンズとなる様に構成された。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を前記受光素子に結像させる受光レンズを有し、該受光レンズは径方向に向って連続的に焦点位置が変化する第1レンズ部と、面内位置に拘らず焦点位置が一定となる第2レンズ部とを有する単一の奇数次非球面レンズとなる様に構成された測量装置。
【請求項2】
前記第1レンズ部は前記受光レンズの中心部に形成され、前記第2レンズ部は前記第1レンズ部の外周側に形成され、前記第1レンズ部は中心に近づく程焦点距離が短くなる様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記第2レンズ部は前記受光レンズの中心部に形成され、前記第1レンズ部は前記第2レンズ部の外周側に形成され、前記第1レンズ部は中心から離れる程焦点距離が短くなる様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記受光レンズは、所定の距離以下の近距離測定時に受光光量が最大となる様に設計された請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元座標を取得可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナやトータルステーション等の測量装置は、測定対象物として再帰反射性を有するプリズムを用いたプリズム測距、反射プリズムを用いないノンプリズム測距により測定対象物迄の距離を検出する光波距離測定装置を有している。
【0003】
遠距離測定に於いて、所望の反射測距光の受光量を得る為に測距光の光量を増大すると、近距離を測定した時の反射測距光の受光光量が過剰となり、受光系の電気系が飽和する虞れがある。一方で、近距離測定に於いて、所望の反射測距光の受光量を得る為に測距光の光量を低減すると、遠距離を測定する場合に測定に必要な充分な反射測距光の受光光量を得ることができない虞れがある。
【0004】
この為、遠距離測定の際に測定対象物から反射される反射測距光のスポット径を小さくし、充分な反射測距光の受光光量を得ると共に、近距離測定の際に受光系が飽和しない程度の反射測距光の受光光量を得ることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5452245号公報
【特許文献2】特許第4127579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、測定対象物迄の距離に拘らず測定が可能な測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を前記受光素子に結像させる受光レンズを有し、該受光レンズは径方向に向って連続的に焦点位置が変化する第1レンズ部と、面内位置に拘らず焦点位置が一定となる第2レンズ部とを有する単一の奇数次非球面レンズとなる様に構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記第1レンズ部は前記受光レンズの中心部に形成され、前記第2レンズ部は前記第1レンズ部の外周側に形成され、前記第1レンズ部は中心に近づく程焦点距離が短くなる様構成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記第2レンズ部は前記受光レンズの中心部に形成され、前記第1レンズ部は前記第2レンズ部の外周側に形成され、前記第1レンズ部は中心から離れる程焦点距離が短くなる様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
更に又本発明は、前記受光レンズは、所定の距離以下の近距離測定時に受光光量が最大となる様に設計された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を前記受光素子に結像させる受光レンズを有し、該受光レンズは径方向に向って連続的に焦点位置が変化する第1レンズ部と、面内位置に拘らず焦点位置が一定となる第2レンズ部とを有する単一の奇数次非球面レンズとなる様に構成されたので、前記測定対象物迄の距離に拘らず、充分な前記反射測距光の受光光量を得ることができ、前記測定対象物の測距が可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
図2】第1の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
図3】第1の実施例に係る受光レンズを示す説明図である。
図4】(A)は20次の偶数次非球面レンズを表す式であり、(B)は20次の奇数次非球面レンズを表す式である。
図5】測定距離と受光素子に対する反射測距光の受光光量との関係を示すグラフである。
図6】(A)は偶数次非球面レンズを用いた際の受光素子に結像される無限共役部の遠距離物点のスポットダイアグラムを示し、(B)は奇数次非球面レンズを用いた際の受光素子に結像される無限共役部の遠距離物点のスポットダイアグラムを示している。
図7】第2の実施例に係る受光レンズを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0014】
先ず、図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0015】
測量装置1は、例えばレーザスキャナであり、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に取付けられた測量装置本体3とから構成される。
【0016】
前記整準部2は整準ネジ10を有し、該整準ネジ10により前記測量装置本体3の整準を行う。
【0017】
該測量装置本体3は、固定部4と、托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査ミラー15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19等を具備している。尚、前記演算制御部17としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0018】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0019】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0020】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0021】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体3の座標系の原点となっている。
【0022】
前記托架部5には、凹部22が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部22内に延出し、前記一端部に前記走査ミラー15が固着され、該走査ミラー15は前記凹部22に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0023】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査ミラー15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0024】
前記走査ミラー15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査ミラー15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0025】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのメモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0026】
前記記憶部18には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算するプログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部17により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0027】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果や画像等を表示する表示部とを兼用している。
【0028】
次に、図2を参照して、前記距離測定部19について説明する。
【0029】
該距離測定部19は、測距光射出部23と測距光受光部24と追尾光射出部25と追尾光受光部26とを有している。尚、前記測距光射出部23と前記測距光受光部24とにより測距部が構成され、前記追尾光射出部25と前記追尾光受光部26とにより追尾部が構成される。
【0030】
前記測距光射出部23は、測距光軸27を有している。又、前記測距光射出部23は、発光側から順に、前記測距光軸27上に設けられた発光素子28、例えばレーザダイオード(LD)と、投光レンズ29と、ダイクロイックミラー31と、該ダイクロイックミラー31の透過光軸上に設けられたミラー32とを有している。又、該ミラー32の反射光軸上に偏向光学部材としての反射プリズム33が設けられ、該反射プリズム33の反射光軸上に前記走査ミラー15が設けられている。更に、該走査ミラー15の反射光軸上には、透明材料で形成され、該走査ミラー15と一体に回転する窓部34が設けられている。
【0031】
尚、前記投光レンズ29、前記ダイクロイックミラー31、前記ミラー32、前記反射プリズム33等は投光光学系30を構成する。又、本実施例では、前記測距光軸27と、前記ミラー32で反射された前記測距光軸27と、前記反射プリズム33で反射された前記測距光軸27とを総称して、該測距光軸27としている。
【0032】
前記発光素子28は、所定の波長の赤外光を測距光35として射出する。又、前記投光レンズ29は、前記発光素子28から所定の広がり角で発せられた前記測距光35を平行光束とする様構成されている。
【0033】
前記ダイクロイックミラー31は、前記測距光35を透過し、追尾光36(後述)を反射する光学特性を有している。又、前記ダイクロイックミラー31は、前記測距光35と前記追尾光36の共通光路上(前記測距光軸27と追尾光軸37(後述)の交差位置)に設けられ、前記追尾光軸37が前記測距光軸27と合致する様に前記追尾光軸37を偏向(反射)する。従って、前記測距光35と前記追尾光36とは同軸で測定対象物に向って照射される。
【0034】
前記反射プリズム33は、2つの台形状のプリズムを接合させて形成される。2つのプリズムが接合された状態では、前記反射プリズム33は直方体形状となる。前記測距光35の入射面は前記測距光軸27に対して直交し、前記反射プリズム33の接合面38は前記測距光軸27に対して所定角度傾斜している。更に、前記反射プリズム33の射出面は、前記接合面38で反射された前記測距光軸27が僅かに、例えば2.5°程度傾斜して入射する様構成されている。従って、前記反射プリズム33の射出面で内部反射された前記測距光35が受光素子39(後述)に受光されるのを防止している。尚、前記接合面38の傾斜角は、前記測距光軸27が受光光軸41(後述)及び前記軸心11aと合致する様、前記測距光軸27を偏向(反射)させる角度となっている。又、前記受光素子39としては、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)、或は同等の光電変換素子が用いられる。
【0035】
前記接合面38の中心部には、ビームスプリッタ膜(図示せず)が形成されている。該ビームスプリッタ膜は、前記測距光35の光束に合わせて楕円形状となっており、該測距光35の光束径と同等又は該光束径よりも僅かに大きくなっている。又、前記ビームスプリッタ膜は、例えば80%の光を反射し、20%の光を透過する光学特性を有している。
【0036】
尚、前記ビームスプリッタ膜に於ける反射率と透過率の割合は、用途や測定対象物迄の距離に応じて適宜設定される。例えば、測定対象物迄の距離が近い場合には、前記ビームスプリッタ膜を例えば反射率50%~70%、透過率30%~50%の範囲から選択するのが望ましい。又、測定対象物迄の距離が遠い場合には、前記ビームスプリッタ膜を例えば反射率70%~90%、透過率10%~30%の範囲から選択するのが望ましい。
【0037】
前記測距光受光部24は、前記受光光軸41を有している。又、前記測距光受光部24は、受光側から順に、前記受光光軸41上に設けられた前記受光素子39と、受光プリズム42を有すると共に、該受光プリズム42で反射された前記受光光軸41上に設けられた所定のNA(Numerical Aperture)を有する受光レンズ43を有している。
【0038】
前記受光プリズム42は、分離面としてのダイクロイック膜44(後述)を有している。前記受光プリズム42は、測定対象物で反射された前記測距光35(反射測距光45)と、該反射測距光45と同軸で入射した前記追尾光36(反射追尾光46)とを同一平面内で少なくとも1回反射させる様構成されている。又、前記ダイクロイック膜44は、前記反射測距光45を反射し、前記反射追尾光46を透過する光学特性を有している。
【0039】
尚、前記受光プリズム42、前記受光レンズ43、前記反射プリズム33等で受光光学系47が構成される。又、本実施例では、前記受光光軸41と、前記受光プリズム42及び前記ダイクロイック膜44で反射された前記受光光軸41とを総称して、該受光光軸41としている。
【0040】
前記追尾光射出部25は、前記追尾光軸37を有している。又、前記追尾光射出部25は、発光側から順に、前記追尾光軸37上に設けられた追尾発光素子48、追尾投光レンズ49、前記ダイクロイックミラー31を有すると共に、該ダイクロイックミラー31の反射光軸上に設けられた前記ミラー32と、該ミラー32の反射光軸上に設けられた前記反射プリズム33とを有している。
【0041】
尚、本実施例では、前記追尾光軸37と、前記ダイクロイックミラー31で反射された前記追尾光軸37と、前記ミラー32で反射された前記追尾光軸37と、前記反射プリズム33によって反射された前記追尾光軸37とを総称して、該追尾光軸37としている。又、前記ダイクロイックミラー31の反射側に前記追尾光36を発する前記追尾発光素子48が設けられ、前記ダイクロイックミラー31の透過側に前記測距光35を発する前記発光素子28が設けられているが、前記ダイクロイックミラー31の透過側に前記追尾発光素子48を設け、前記ダイクロイックミラー31の反射側に前記発光素子28を設けてもよい。
【0042】
前記追尾発光素子48は、例えばレーザダイオード(LD)であり、前記測距光35とは波長の異なる近赤外波長の前記追尾光36を射出する様構成されている。又、前記追尾投光レンズ49は、前記追尾発光素子48から発せられた前記追尾光36を平行光束とする様構成される。
【0043】
前記追尾光受光部26は、追尾受光光軸51を有している。又、前記追尾光受光部26は、受光側から順に、前記追尾受光光軸51上に設けられた追尾受光素子52、バンドパスフィルタ59、受光プリズム42及び該受光プリズム42の反射光軸上に設けられた前記受光レンズ43を有している。
【0044】
尚、本実施例では、前記追尾受光光軸51と前記受光プリズム42で反射された前記追尾受光光軸51とを総称して、該追尾受光光軸51としている。
【0045】
前記追尾受光素子52は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記追尾受光素子52上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記追尾受光素子52の中心を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記追尾受光素子52上での位置が特定される。
【0046】
前記距離測定部19は、前記演算制御部17により制御される。前記発光素子28から前記測距光軸27上にパルス状の前記測距光35が射出されると、該測距光35は前記投光レンズ29に入射する。該投光レンズ29は、前記測距光35を平行光束とする。
【0047】
前記投光レンズ29、前記ダイクロイックミラー31を透過し、前記ミラー32で反射された前記測距光35は、前記反射プリズム33の入射面に対して直角に入射し、該反射プリズム33内部を透過して前記接合面38で前記受光光軸41及び前記軸心11aと同軸になる様反射される。前記反射プリズム33から射出される前記測距光35は、前記走査ミラー15によって直角に偏向され、前記窓部34を介して測定対象物に照射される。前記走査ミラー15が前記軸心11aを中心に回転することで、前記測距光35は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。
【0048】
尚、前記窓部34は、該窓部34で反射された前記測距光35が前記受光素子39に入射しない様、前記測距光軸27の光軸に対して所定角度傾斜して設けられている。
【0049】
測定対象物で反射された前記反射測距光45は、前記走査ミラー15で直角に反射され、前記受光光学系47を経て前記受光素子39で受光される。
【0050】
前記演算制御部17は、前記発光素子28の発光タイミングと、前記受光素子39の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速に基づき、前記測距光35の1パルス毎に測距を実行し(Time Of Flight)、測定対象物迄の距離を演算する。尚、前記発光素子28の発光のタイミング、即ちパルス間隔は、前記操作パネル16を介して変更可能となっている。又、測距結果と前記水平角エンコーダ9及び前記鉛直角エンコーダ14で得られた水平角データ及び鉛直角データに基づき、測定対象物の3次元座標を演算できる。
【0051】
又、前記測距光35を所定のパルス間隔で射出しつつ、前記托架部5と前記走査ミラー15とをそれぞれ定速で回転させることで、該走査ミラー15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協動により、前記測距光35が2次元に走査される。又、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物の3次元座標及び測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0052】
又、測距作動と並行して、追尾発光素子48から前記測距光35とは異なる波長の前記追尾光36が射出されると、前記追尾投光レンズ49で平行光束とされた後、前記ダイクロイックミラー31により前記測距光35と同軸となる様に偏向される。
【0053】
前記測距光35と同軸で測定対象物に照射され、測定対象物で反射された前記反射追尾光46は、前記受光光学系47を通過する過程で、前記ダイクロイック膜44で前記反射測距光45と分離され、前記追尾受光素子52で受光される。又、該追尾受光素子52への前記反射追尾光46の受光により、追尾像(図示せず)を得ることができる。
【0054】
前記演算制御部17は、前記追尾受光素子52の中心と、該追尾受光素子52に対する前記反射追尾光46の受光位置との位置偏差を演算し、該位置偏差に基づき、前記水平回転モータ8と前記鉛直回転モータ13を駆動させ、測定対象物を追尾する様に構成される。
【0055】
次に、前記受光光学系47の詳細について説明する。前記受光プリズム42は、第1プリズム53と第2プリズム54と第3プリズム55とから構成されている。尚、以下の説明では、図2中、紙面に対して上側を上、紙面に対して下側を下、紙面に対して右側を右、紙面に対して左側を左、紙面に対して奥側を奥、紙面に対して手前側を手前として説明する。
【0056】
前記第1プリズム53は、所定の屈折率を有し、第1面53a、第2面53b、第3面53c、第4面53dを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面53aは、前記反射測距光45及び前記反射追尾光46の入射面であり、前記第1プリズム53に入射する前記受光光軸41及び追尾受光光軸51と直交する様構成されている。又、前記第1面53aには全面に亘って反射防止膜(ARコート)が設けられている。
【0057】
前記第2面53bは、前記第1面53aと対向する位置に形成され、前記第3面53cは、図2中紙面に対して上側、即ち前記第1面53aの上端と前記第2面53bの上端との間に形成される。又、前記第4面53dは、前記第3面53cと対向し、前記第1面53aと前記第2面53bの下端との間に形成される。
【0058】
尚、前記第2面53bと前記第3面53cとで形成される角部には、面取り加工が施された第1面取り部56が形成され、前記第1面53aと前記第3面53cとで形成される角部には、面取り加工が施された第2面取り部57が形成されている。前記第1面取り部56と前記第2面取り部57は、それぞれ前記反射測距光45と前記反射追尾光46の光路外に位置し、反射防止塗料が塗布されている。
【0059】
前記第2プリズム54は、所定の屈折率を有し、少なくとも第1面54aと第2面54bと第3面54cとを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面54aは、前記第1プリズム53内で反射された前記反射測距光45及び前記反射追尾光46の入射面であり、前記第4面53dと同一面積を有し、該第4面53dと接合されている。即ち、前記第4面53dと前記第1面54aは前記第1プリズム53と前記第2プリズム54とを接合させる接合面となる。
【0060】
前記第2面54bは、前記第1面54aと対向し、該第1面54aに入射した前記反射測距光45と前記反射追尾光46が入射する様に構成される。又、前記第2面54bは、前記反射測距光45と前記反射追尾光46が所定の入射角で入射する様、前記受光光軸41及び前記追尾受光光軸51に対して所定角度傾斜している。前記第3面54cは、前記第1面54aと連続し、前記第2面54bで反射された前記反射測距光45が入射角0°で入射する様構成されている。
【0061】
ここで、前記第4面53dと前記第1面54aが接合されているので、前記第2面53bと前記第3面54cは連続している。又、前記第2面53bは接合面を起点として下方から上方に向って前記反射測距光45と前記反射追尾光46の入射面(前記第1面53a)から離反する方向に傾斜し、前記第3面54cは接合面を起点として上方から下方に向って前記第1面53aから離反する方向に傾斜している。従って、前記第2面53bと前記第3面54cとにより、前記第1面54a側に窪んだ凹部58が形成される。
【0062】
前記第3プリズム55は、所定の屈折率を有し、少なくとも第1面55aと第2面55bとを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面55aは、前記第2プリズム54内を透過した前記反射測距光45の入射面であり、前記第2面54bと接合されている。即ち、前記第1面55aと前記第2面54bは、前記第2プリズム54と前記第3プリズム55を接合させる接合面となる。更に、前記第2プリズム54と前記第3プリズム55との接合面には、前記ダイクロイック膜44が設けられている。
【0063】
前記第2面55bは、前記第1面55aと対向し、該第1面55aを透過した前記反射追尾光46が入射角0°で入射する様、前記追尾受光光軸51に対して所定角度傾斜している。又、前記第2面55bの中心には、所定の大きさのバンドパスフィルタ59が設けられ、該バンドパスフィルタ59の周囲には反射防止塗料が塗布されている。該バンドパスフィルタ59の大きさは、前記ダイクロイック膜44を透過する前記反射追尾光46の光束径と同等又は僅かに大きくなっている。前記バンドパスフィルタ59により、前記追尾光36の波長とは異なる波長の光を前記反射追尾光46から除去することができる。
【0064】
前記第2面54bと対向し、前記ダイクロイック膜44で反射される前記反射測距光45の集光位置には、前記受光素子39が設けられている。又、該受光素子39は前記凹部58内に位置している。
【0065】
前記ダイクロイック膜44を透過した前記反射追尾光46の集光位置には、前記追尾受光素子52が設けられている。又、該追尾受光素子52は、センサ基板61に設けられている。
【0066】
尚、前記第1面取り部56の右端(下端)と、前記センサ基板61の右端とは、略同一平面上に位置している。又、前記受光素子39は、前記平面よりも前記反射測距光45の入射面の反対側に突出しない様に配置されている。
【0067】
次に、図3を参照して、前記受光レンズ43の詳細について説明する。尚、図3は、該受光レンズ43の機能を説明する為に簡略化した模式図となっている。又、図3中、実線は第1レンズ部62(後述)に入射する近距離からの反射測距光45aを示し、破線は第2レンズ部63(後述)に入射する遠距離からの反射測距光45bを示している。
【0068】
該受光レンズ43は、中心部に形成された前記第1レンズ部62と、該第1レンズ部62以外の外周部に形成された前記第2レンズ部63とから構成されている。
【0069】
ここで、前記測距光35を前記走査ミラー15を介して回転照射する場合、該走査ミラー15が高速回転している為、特に遠距離の測定対象物の場合には、前記測距光35を射出した時の前記走査ミラー15の位置は、前記反射測距光45を受光した時の前記走査ミラー15の位置に対して僅かに変位している。従って、前記受光素子39に受光される前記反射測距光45の受光位置(スポット)が偏心し、スポット径が大きくなる。又、前記走査ミラー15の回転に伴い、スポットが前記受光素子39上で偏心する。更に、製作誤差等によっても前記反射測距光45の受光位置が偏心する場合がある。
【0070】
従って、前記受光素子39に結像するスポットが大きい場合、即ち前記受光素子39に対する前記反射測距光45のスポット径が大きい場合、スポットの偏心に伴い、スポットの一部が前記受光素子39の受光範囲から外れる虞れがある。この場合、前記反射測距光45の受光量が低下し、測距可能な距離が短くなる、或は測定精度が低下する。
【0071】
又、近距離の測定対象物を測定する場合、特に遠距離の測定対象物を測定できる様前記受光レンズ43が設計されている場合には、近距離の測定に於いて前記反射測距光45の受光光量が不足する虞れがある。
【0072】
そこで、本実施例では、前記受光レンズ43を前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63の2つのレンズ部により構成し、前記第1レンズ部62により近距離の測定対象物を測定する際の受光光量を確保し、前記第2レンズ部63により遠距離の測定対象物を測定する際の受光光量を確保している。例えば、15m以下の近距離に存在する測定対象物を測定する近距離測定時に、前記反射測距光45の受光光量が最大となる様に前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63とが設計される。
【0073】
前記第1レンズ部62は、中心に近づく程焦点距離が短くなる様に構成されている。即ち、前記第1レンズ部62は、径方向に向って連続的に焦点距離が変化する。従って、前記第1レンズ部62は、前記受光素子39の共役位置が中心部に近づく程近距離となる様に構成されている。又、前記第2レンズ部63は、該第2レンズ部63に対する面内受光位置に拘らず焦点距離が一定となる無限共役のレンズとして構成されており、前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63が単一の奇数次非球面レンズで構成されている。
【0074】
尚、前記第1レンズ部62は、前記受光レンズ43の有効径のうち、10%~70%の大きさを有し、前記第2レンズ部63は、前記受光レンズ43の有効径のうち、30%~90%の大きさを有している。前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63の大きさの比率は、測定対象物の反射率や測定距離等に応じて適宜設定される。
【0075】
次に、前記受光レンズ43を奇数次非球面レンズとした場合の効果について説明する。非球面レンズには、偶数次非球面レンズと奇数次非球面レンズとが存在し、例えば20次の偶数次非球面レンズは図4(A)に示される式で表すことができ、20次の奇数次非球面レンズは図4(B)に示される式で表すことができる。尚、図4(A)、図4(B)中、zはサグ、Rはレンズの曲率半径、κは円錐定数、hは光軸からの距離(入射の高さ)を示し、A2iとAi は非球面係数を示している。
【0076】
図5は、測定距離と前記受光素子39に対する前記反射測距光45の受光光量との関係を示すグラフである。図5中、破線のグラフ64は前記受光素子39に対する受光光量の理想値を示し、丸のプロットを結んだグラフ65は前記受光レンズ43として20次の偶数次非球面レンズを用いた場合の前記受光素子39に対する前記反射測距光45の受光光量を示し、矩形のプロットを結んだグラフ66は前記受光レンズ43として20次の奇数次非球面レンズを用いた場合の前記受光素子39に対する前記反射測距光45の受光光量を示している。
【0077】
尚、図5中で示される受光光量は、例えば0m~15mの近距離での前記反射測距光45の受光光量を1とした場合の、理想値に対する奇数次非球面レンズと偶数次非球面レンズの相対的な受光光量となっている。ここで、理想値とは、所定の距離、例えば15m以下の近距離測定に於いて、一定となる様に設定した受光光量であり、部品公差や組み立て公差、前記受光素子39の感度のバラツキを考慮した上で、電気系が飽和しない限界の光量となる様に設定される。
【0078】
図5に示される様に、偶数次非球面レンズを用いた場合(前記グラフ65)、特に0m~15mの近距離に於いて、受光光量が理想値を大きく上回る距離と大きく下回る距離が存在し、受光光量が安定しない。一方、奇数次非球面レンズを用いた場合(前記グラフ66)、0m~15mの近距離に於いても、理想値と近似した安定した受光光量を得ることができる。又、奇数次非球面レンズを用いる場合、15m~50mの中長距離に於いても理想値と近似した安定した受光光量を得ることができる。
【0079】
図6(A)、図6(B)は、前記第2レンズ部63の焦点距離f~100、NAを0.25とした、遠距離測定時の前記受光素子39に対する前記反射測距光45の受光位置の分布である遠距離のスポットダイアグラム(結像性能)を示している。図6(A)は、前記受光レンズ43を偶数次非球面レンズとした場合の前記第2レンズ部63の遠距離のスポットダイアグラム67を示し、図6(B)は前記受光レンズ43を奇数次非球面レンズとした場合の前記第2レンズ部63の遠距離のスポットダイアグラム68を示している。
【0080】
図6(A)、図6(B)に示される様に、前記受光レンズ43を偶数次非球面レンズとした場合の前記第2レンズ部63の遠距離の前記スポットダイアグラム67の直径が56μmであるのに対し、前記受光レンズ43を奇数次非球面レンズとした場合の前記第2レンズ部63の遠距離の前記スポットダイアグラム68の直径は8μmとなっている。従って、前記受光レンズ43を奇数次非球面レンズとすることで、偶数次非球面レンズとした場合と比べて前記スポットダイアグラム68の直径を約1/7とすることができる。
【0081】
又、前記受光レンズ43を単一の奇数次非球面レンズとすることで、前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63とをそれぞれ異なる非球面レンズとして設計、製造する必要がない。従って、レンズ加工や金型加工の工数及びコストの増大が抑制される。又、各レンズ部62,63の連続性を確保する為の設計上の制約を考慮する必要がなく、境界付近の加工精度悪化に伴う受光光量の低下やスポットダイアグラムの悪化を防止することができる。
【0082】
測定対象物で反射された前記反射測距光45と前記反射追尾光46は、前記走査ミラー15で反射され、前記受光レンズ43に入射する。該受光レンズ43を透過した前記反射測距光45と前記反射追尾光46は、前記第1プリズム53の前記第1面53aに対して直角に同軸で入射する。前記第1プリズム53内に入射した前記反射測距光45と前記反射追尾光46は、前記第2面53b、前記第1面53a、前記第3面53c、前記第1面53aで順次同一平面内で反射され、前記第4面53d(前記第1面54a)に直角に入射する。
【0083】
前記第2プリズム54内に入射した前記反射測距光45と前記反射追尾光46は、前記第2面54b(前記第1面55a)、即ち分離面としての前記ダイクロイック膜44に入射し、前記反射測距光45と前記反射追尾光46とに分離される。
【0084】
前記反射測距光45は、前記ダイクロイック膜44で反射され、前記第3面54cに直角に入射し、前記受光素子39に受光される。又、前記反射追尾光46は、前記ダイクロイック膜44を透過し、前記第2面55bに直角に入射し、前記バンドパスフィルタ59を通過する過程で前記追尾光36の波長とは異なる波長の光が除去され、前記追尾受光素子52に受光される。
【0085】
尚、前記窓部34で反射された前記測距光35や前記追尾光36等、前記反射測距光45と前記反射追尾光46の光路外を通過する迷光は、前記第1面取り部56や前記第2面取り部57で遮断される。従って、前記受光素子39や前記追尾受光素子52への迷光の受光が防止される。
【0086】
上述の様に、第1の実施例では、受光レンズ43を中心部に形成された前記第1レンズ部62と、該第1レンズ部62の外周側に設けられた第2レンズ部63とから構成している。又、前記第1レンズ部62を中心に近づく程焦点距離が短くなる様構成したレンズとし、近距離の測定対象物を測定する際に充分な前記反射測距光45の受光光量を確保可能と共に、前記第2レンズ部63を焦点距離が一定となる無限共役のレンズとし、遠距離の測定対象物を測定する際に充分な前記反射測距光45の受光光量を確保可能としている。
【0087】
従って、測定対象物迄の距離に拘らず、充分な前記反射測距光45の受光光量を確保でき、測距が可能となるので、測定可能な距離範囲を増大させることができ、作業性を向上させることができる。
【0088】
又、前記受光レンズ43を単一の奇数次非球面で表現される奇数次非球面レンズとしている。偶数次非球面レンズを用いると、特に近距離での測定に於いて理想値に対して受光光量がばらつくのに対し、奇数次非球面レンズを用いると、近距離の測定に於いても理想値に近似した安定した受光光量を得ることができる。
【0089】
従って、前記受光素子39の受光可能な受光光量を理想値に合わせて設計した場合であっても、電気系が飽和し、測定不能となることを防止することができる。又、前記受光素子39の受光可能な受光光量を理想値に合わせて設計することで、近距離測定の際の受光光量を最大限に増大させることができるので、反射率の低い測定対象物であっても近距離測定を行うことができる。
【0090】
又、前記受光レンズ43として奇数次非球面レンズを用いることで、偶数次非球面レンズを用いる場合と比べて、前記受光素子39に結像される前記スポットダイアグラム68を1/7程度まで縮小することができる。
【0091】
従って、前記走査ミラー15の回転に伴う前記反射測距光45の変化や製作誤差等により、前記受光素子39に対する前記反射測距光45の受光位置が偏心した場合であっても、該反射測距光45が前記受光素子39から外れることがなく、充分な受光光量を得ることができる。
【0092】
又、前記スポットダイアグラム68が縮小されることで、前記受光素子39の径を小さくすることができるので、外光の抑制やSN比の向上を図ることができ、測定精度を向上させることができる。
【0093】
又前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63とを別途製作する必要がないので、工数やコストの低減が図れると共に、前記第1レンズ部62と前記第2レンズ部63との間の連続性も考慮する必要がない。更に、境界付近での加工精度の悪化に伴う受光光量の低下やスポットダイアグラムの悪化を防止することができる。
【0094】
又、前記受光プリズム42の前記反射測距光45と前記反射追尾光46の入射面(前記第1面53a)と反対側の面に、前記第1面53a側に窪んだ凹部58を形成し、該凹部58に前記受光素子39を配置している。従って、該受光素子39が前記受光プリズム42から突出しないので、前記受光光軸41方向の前記受光光学系47の長さを短くすることができ、該受光光学系47及び前記測量装置1の小型化を図ることができる。
【0095】
又、前記反射測距光45及び前記反射追尾光46の光路外に、前記第1面取り部56と前記第2面取り部57を形成し、前記第1面取り部56と前記第2面取り部57に反射防止塗料を塗布している。従って、前記受光プリズム42内を通過する迷光を、前記第1面取り部56、前記第2面取り部57で遮断することができるので、迷光が前記受光素子39や前記追尾受光素子52に受光され、測距精度や追尾精度の低下を防止することができる。
【0096】
尚、第1の実施例では、前記ダイクロイックミラー31の透過側に前記発光素子28と前記投光レンズ29を設け、反射側に前記追尾発光素子48と前記追尾投光レンズ49を設けているが、前記ダイクロイックミラー31の透過側に前記追尾発光素子48と前記追尾投光レンズ49と設け、反射側に前記発光素子28と前記投光レンズ29を設けてもよい。
【0097】
又、前記ダイクロイック膜44の反射側に前記受光素子39を設け、透過側に前記追尾受光素子52を設けているが、前記ダイクロイック膜44の反射側に前記追尾受光素子52を設け、透過側に前記受光素子39を設けてもよい。
【0098】
次に、図7に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図7中、図3中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。又、図7中、実線は第1レンズ部71(後述)に入射する近距離からの反射測距光45aを示し、破線は第2レンズ部72(後述)に入射する遠距離からの反射測距光45bを示している。
【0099】
第2の実施例に於いては、受光レンズ69が中心側に形成された前記第2レンズ部72と、該第2レンズ部72の外周側に形成された前記第1レンズ部71とから構成されている。
【0100】
前記受光レンズ69は、単一の奇数次非球面レンズであり、前記第2レンズ部72は、該第2レンズ部72に対する面内受光位置に拘らず焦点距離が一定となる無限共役のレンズとして構成されている。又、前記第1レンズ部71は、中心から離れる程(外周側に向う程)、焦点距離が短くなる様に構成されている。即ち、前記第1レンズ部71は、径方向に向って連続的に焦点距離が変化する。従って、前記第1レンズ部71は、受光素子39の共役位置が中心から離れる程近距離となる様に構成されている。
【0101】
尚、前記第2レンズ部72は、前記受光レンズ69の有効径のうち、50%~95%の大きさを有し、前記第1レンズ部71は、前記受光レンズ69の有効径のうち、5%~50%の大きさを有している。前記第1レンズ部71の大きさと前記第2レンズ部72の大きさの比率は、測定対象物の反射率や測定距離等に応じて適宜設定される。
【0102】
第2の実施例に於いても、前記受光レンズ69が焦点距離が一定となる無限共役のレンズである前記第2レンズ部72と、中心から離れる程焦点距離が短くなる様設計された前記第1レンズ部71とから構成された単一の奇数次非球面レンズであるので、近距離測定時の受光光量を前記第1レンズ部71で確保できると共に、遠距離測定時の受光光量を前記第2レンズ部72で確保できる。
【0103】
従って、測定対象物迄の距離に拘らず、充分な前記反射測距光45の受光光量を確保できるので、測定可能な距離範囲を増大させることができ、作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 測量装置
17 演算制御部
23 測距光射出部
24 測距光受光部
28 発光素子
35 測距光
39 受光素子
43 受光レンズ
45 反射測距光
62 第1レンズ部
63 第2レンズ部
69 受光レンズ
71 第1レンズ部
72 第2レンズ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7