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特開2024-127411重合体、粘着剤組成物、重合体粒子、及び重合体の製造方法
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  • 特開-重合体、粘着剤組成物、重合体粒子、及び重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127411
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】重合体、粘着剤組成物、重合体粒子、及び重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20240912BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 2/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F2/38
C08L101/06
C08F2/06
C08F2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036552
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】川谷 諒
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聖月
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4J002AA051
4J002BG011
4J002BG041
4J002CD002
4J002EE046
4J002ER006
4J002FD142
4J002FD146
4J002GJ00
4J002HA07
4J011AA05
4J011HA02
4J011HA03
4J011HB14
4J011HB22
4J011HB27
4J011NA17
4J011NB04
4J011NC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腐食や粘着特性の低下等の問題の発生が少ない重合体、及び、該重合体を提供することができ、かつ、充分に分子量の制御が可能である重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む、重合体が提供される。

(式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む、重合体。
【化21】
(式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。)
【請求項2】
前記末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖が、さらに、下記式(22)で示される基を末端に有する、請求項1に記載の重合体。
【化22】
(式(22)中、R51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
は水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。)
【請求項3】
前記重合体は、チオール系連鎖移動剤に由来する硫黄の含有率が、100ppm以下である、請求項1または請求項2に記載の重合体。
【請求項4】
前記ポリマー鎖は、繰り返し単量体単位を有し、
前記繰り返し単量体単位は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基から選択される少なくとも1種の基を有する、請求項1または請求項2に記載の重合体。
【請求項5】
請求項4に記載の重合体と、
イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤とを含む、粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の重合体を含む重合体粒子であって、
前記重合体粒子は、平均粒子径が0.05~500μmである、重合体粒子。
【請求項7】
重合体の製造方法であって、
下記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む、製造方法。
【化23】
(式(23)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基であり、
51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
は水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。)
【請求項8】
前記重合工程において、酢酸エチル、エチルメチルケトン、トルエンから選択される1種以上の有機溶剤中でラジカル重合性化合物を重合する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の重合工程と、架橋剤配合工程を含む、粘着剤組成物の製造方法であって、
前記架橋剤配合工程では、得られた重合体にイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤を配合する、製造方法。
【請求項10】
前記重合工程において、水性媒体中で前記ラジカル重合性化合物を重合する、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、粘着剤組成物、重合体粒子、及び重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルメタクリレート等のラジカル重合性化合物を重合させる際、重合体の分子量を調節する等の目的で連鎖移動剤が用いられ、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物が従来から使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マレイミド基及びメルカプト基を有する化合物からなる連鎖移動剤が開示されている。また、特許文献2には、特定の構造を有するチオール化合物が開示されており、該化合物を連鎖移動剤として用いることが開示されている。
【0004】
また、n-ドデシルメルカプタン等の硫黄を含むチオール系連鎖移動剤を用いて、様々な用途の重合体を重合する技術は多数開示されている。例えば、特許文献3には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル系多官能モノマーとを含むモノマー成分を、チオール系連鎖移動剤の存在下で重合する工程を有する、(メタ)アクリル系架橋粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-321506号公報
【特許文献2】特開2004-292428号公報
【特許文献3】国際公開第2017/022423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メルカプタン化合物は重合体の分子量を効率よく制御できる利点がある。一方で、メルカプタン化合物は、特有の臭気を有し、適用箇所によっては、メルカプタン化合物を連鎖移動剤として用いて重合した重合体が腐食を引き起こす等の問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いた重合体に比べ、腐食の問題を引き起こしにくい重合体及び従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いる場合に比べ、腐食の問題の発生が少なく、かつ、充分に分子量の制御が可能である重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む、重合体が提供される。
【0009】
【化21】
【0010】
式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。
【0011】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有する化合物を連鎖移動剤として用いて単量体を重合させて重合体を得ると、従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いた重合体に比べ腐食の問題を引き起こしにくい重合体を得ることができ、かつ、充分に分子量の制御が可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む、重合体。
【0013】
【化21】
(式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。)
[2]前記末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖が、さらに、下記式(22)で示される基を末端に有する、[1]に記載の重合体。
【0014】
【化22】
(式(22)中、R51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。)
[3]前記重合体は、チオール系連鎖移動剤に由来する硫黄の含有率が、100ppm以下である、[1]または[2]に記載の重合体。
[4]前記ポリマー鎖は、繰り返し単量体単位を有し、前記繰り返し単量体単位は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基から選択される少なくとも1種の基を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体。
[5][4]に記載の重合体と、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤とを含む、粘着剤組成物。
[6][1]~[4]のいずれかに記載の重合体を含む重合体粒子であって、前記重合体粒子は、平均粒子径が0.05~500μmである、重合体粒子。
[7]重合体の製造方法であって、下記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む、製造方法。
【0015】
【化23】
(式(23)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基であり、R51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。)
[8]前記重合工程において、酢酸エチル、エチルメチルケトン、トルエンから選択される1種以上の有機溶剤中でラジカル重合性化合物を重合する、[7]に記載の製造方法。
[9][8]に記載の重合工程と、架橋剤配合工程を含む、粘着剤組成物の製造方法であって、前記架橋剤配合工程では、得られた重合体にイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤を配合する、製造方法。
[10]前記重合工程において、水性媒体中で前記ラジカル重合性化合物を重合する、[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いた重合体に比べ腐食の問題を引き起こしにくい重合体及び従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いる場合に比べ、上記問題の発生が少なく、かつ、充分に分子量の制御が可能である重合体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例10及び実施例11に係る重合体粒子のマイクロスコープによる観察画像を示す。
図2図2は、比較例4及び参考例6に係る重合体粒子のマイクロスコープによる観察画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0019】
本発明に係る重合体は、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む。
【化21】
【0020】
式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。
【0021】
上記の末端構造を有する重合体は、特定の骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合することよって得ることができる。以下、本発明に係る製造方法及び重合体について説明する。
【0022】
1.1 重合体の製造方法
本発明に係る重合体の製造方法は、後述の式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む。本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、特定の構造の連鎖移動剤を用いることにより、従来のメルカプタン化合物等のチオール系連鎖移動剤を用いた重合体に比べ、腐食等の硫黄を含むことに関連すると考えられる問題を引き起こしにくい重合体を得ることができ、また、重合効率もよく、得られる重合体の分子量の制御が可能である。
【0023】
本発明に係る重合工程における重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法を採用することができる。
【0024】
重合工程における重合率は特に限定されないが、50%以上とでき、60%以上であることが好ましい。重合率は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
<連鎖移動剤>
下記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤について説明する。
【0026】
【化23】
【0027】
式(23)で示される化合物がラジカル重合の連鎖移動剤として機能する際の反応機構は、以下のように説明できる。まず、ビニリデン基がラジカル種を受容する付加反応が生じ、次いで開裂反応が続いて、式(21)で表される末端を有するポリマー鎖が生成し、下記式(24)で示されるラジカルが生成すると考えられる。また、式(24)で表されるラジカルの生成によりポリマーの再成長が開始する。一連の反応機構は付加-開裂反応と呼称され、ここでXが付加反応の起こりやすさに、R51、R52、及びRと、R21、R22、R23、R24、及びR25が開裂反応の起こりやすさに関連する。ここで、想定するモノマーに合わせて最適なXを選択することが好ましい。連鎖移動反応により遊離するラジカル種からの再開始反応を期待する場合は、想定するモノマーに合わせて最適なR51、R52、及びRを選択することが好ましい。
【0028】
【化24】
【0029】
式(23)中、Xは、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基である。
【0030】
本発明の一実施形態において、Xは、シアノ基とできる。Xがシアノ基である場合、窒素原子の誘起効果と、シアノ基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、シアノ基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xがシアノ基である場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
【0031】
本発明の一実施形態において、Xは、任意に置換されたアリール基とできる。アリール基は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。アリール基を構成する芳香環の炭素数は、6~18とすることができ、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、及び4-ビフェニル基を挙げることができ、アリール基は、フェニル基であることが好ましい。アリール基は置換基を有することができ、置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基等を挙げることができる。Xが任意に置換されたアリール基である場合、アリール基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、アリール基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。さらに、アリール基がアルキル基やシアノ基、カルボキシ基で置換されている場合、これらの置換基を含めた、大きな共鳴効果や、超共役効果が働き、無置換のアリール基と比べてラジカルがさらに安定化される。以上から、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xが任意に置換されたアリール基である場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
【0032】
本発明の一実施形態において、Xは、アシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOとすることができる。また、本発明の一実施形態において、Xは、アシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )とできる。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。COOR、すなわち、アルコキシカルボニル基(ROC(=O))としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基が挙げられる。アミド基のうち、N-置換アミド基(C(O)NHR、又はC(O)NR )としては、例えばR1がメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基であるN-置換アミド基が挙げられる。Xがアシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOである場合、カルボニル/スルホン基の酸素原子による誘起効果と、カルボニル基/スルホン基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、カルボニル基/スルホン基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xがアシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOである場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
【0033】
本発明の一実施形態において、Xは、ORとすることができる。XがORである場合、酸素原子の誘起効果と、酸素原子とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、XがORである場合はラジカル付加が起こりやすくなる。
【0034】
は、炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。炭素数が1~8のアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が1~8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、又はプロピル基であることが好ましい。Rは、任意で置換されていてもよく、置換基としては、ヒドロキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルコキシシリル基を挙げることができる。置換基は、ヒドロキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基から選択されるいずれかとすることができる。炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基は、無置換のアルキル基、(CH)nOH、(CH)nNCO、(CH)nCOOH、(CH)nNH、(CH)nSOH、(CH)nOSi(ORから選ばれる基とできる。ここで、nは1~8の自然数とでき、Rは炭素数1~8のアルキル基とできる。
【0035】
上記したXはそれぞれビニリデン基へのラジカル付加を促す効果を持っているが、これに加えて、使用するモノマー(例えば、ラジカル重合性化合物)との相性を考えて選択することが好ましい。モノマーとXの相性は、モノマーと、CH=C(H)Xで記載される置換エチレン化合物の共重合性から判断することができる。モノマーをM、置換エチレン化合物をMとした際に、Mayo-Lewisの式で表されるモノマー反応性比rが0.1~5であることが好ましく、0.3~2であることがより好ましく、0.5~1.5であることがさらに好ましい。例えば、Xがアセトキシ基である場合、上記の置換エチレン化合物は酢酸ビニルである。スチレンと酢酸ビニルの反応性比はr=22であるので、Xがアセトキシ基である連鎖移動剤は、スチレンの重合系ではほとんど機能せず、好ましくない。一方、XがCOOCHである場合、上記の置換エチレン化合物はアクリル酸メチルである。スチレンとアクリル酸メチルの反応性比はr=0.75であるので、XがCOOCH基である連鎖移動剤は、スチレンの重合系では好適である。CH=C(H)Xで記載される置換エチレン化合物をモノマーとする場合、モノマーMと、比較する置換エチレン化合物Mが同一になるので、r=1である。すなわち、使用するモノマーの置換基と同一のXを選択することが最も好ましい。例えば、アクリル酸メチルの重合系で使用する連鎖移動剤は、X=COOCHであることが最も好ましい。本発明の一実施形態に係る連鎖移動剤は、モノマーMの重合時に用いる連鎖移動剤であって、モノマーMがXを置換基として含むことが好ましい。なお、Xは、硫黄を含まないものとすることもできる。
【0036】
本発明の一実施形態において、COOR51及び/又はCOOR52は、ビニリデン基に付加したラジカルによる、開裂反応の起こりやすさを決定する基であるCOOR51及び/又はCOOR52に、これらが結合した炭素原子上のラジカルを安定化させる効果があるほど、開裂反応が起こりやすい。したがって、COOR51及び/又はCOOR52による共鳴効果による不対電子の非局在化が期待できる基が好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、COOR51及び/又はCOOR52はまた、開裂反応により遊離したラジカル種による、再開始反応の起こりやすさも決定する。再開始反応の起こりやすさは、CH=C(COOR51)COOR52で表されるモノマーをM、重合に使用するモノマーをMとしたときの共重合における、Mayo-Lewisの式で表されるモノマー反応性比rが0~5であると起こりやすく、0~2であるとさらに起こりやすく、0~1であると特に起こりやすい。しかしながら、再開始反応が全く生じない、いわゆる破壊的連鎖移動反応であっても、分子量を調整する目的は問題なく達せられる。したがって、COOR51及び/又はCOOR52は第一に、前項記載の開裂反応の起こりやすさから選択することが好ましく、再開始反応の有無によって選択範囲に制約が生じるものではない。
【0038】
51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。炭素数が1~8のアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が1~8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。
【0039】
は水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。Rは任意に置換された炭素数1~6のアルキル基とすることができ、置換基としては、例えば、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等を挙げることができる。Rはメチル基であることが好ましい。
【0040】
式(23)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。炭素数が1~8のアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が1~8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基プロポキシ基、ブトキシ基を挙げることができる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。R21、R22、R23、R24、及びR25は水素であることが好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態では、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤は、硫黄を含まなくてもよい。
【0042】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤を1種又は2種以上用いることができる。本発明の一実施形態に係る重合工程では、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤と、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤以外の他の連鎖移動剤を併用してもよい。
【0043】
他の連鎖移動剤としては、2-メルカプトエタノール、チオグリセロール、3-メルカプトヘキサン-1-オール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプトブタン酸、6-メルカプトへキサン酸、11-メルカプトウンデカン酸、3-メルカプトピルビン酸、2-メルカプト安息香酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、n-ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、α―メチルスチレンダイマー、ナフトキノン系化合物が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、重合工程で用いる連鎖移動剤を100質量%としたとき、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤を50質量%以上含むことができ、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%含むことができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、重合工程で用いる連鎖移動剤を100質量%としたときチオール系連鎖移動剤の含有率を、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%とでき、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。チオール系連鎖移動剤は、メルカプタン化合物等の硫黄をチオール基として含む連鎖移動剤を意味するものとでき、例えば、硫黄をスルホン基として含む連鎖移動剤は含まないものとできる。また、本発明に係る式(23)の構造である連鎖移動剤は、チオール系連鎖移動剤に含まないものとできる。チオール系連鎖移動剤は、2-メルカプトエタノール、チオグリセロール、3-メルカプトヘキサン-1-オール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプトブタン酸、6-メルカプトへキサン酸、11-メルカプトウンデカン酸、3-メルカプトピルビン酸、2-メルカプト安息香酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、n-ドデシルメルカプタンを含むものとできる。本発明の一実施形態に係る重合工程では、チオール系連鎖移動剤を用いないこともできる。本発明の一実施形態に係る重合工程では、硫黄を含む連鎖移動剤を用いないこともできる。また、本発明の一実施形態に係る重合工程では、連鎖移動剤として、上記式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤のみを含むこともできる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、連鎖移動剤の使用量は、用いるラジカル重合性化合物の種類等並びに他の重合条件に応じて適宜調整すればよい。特に限定されるものではないが、ラジカル重合性化合物100質量部に対し、0.001質量部~10質量部とすることができる。連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対し、例えば、0.001質量部、0.002質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.02質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.2質量部、0.5質量部、1.0質量部、5.0質量部、10.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性化合物1molに対し、0.01mmol~200mmolとすることができる。連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性化合物1molに対し、例えば、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、100、150、200mmolであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含むことができる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、スチレン系モノマー、シアノ基含有モノマー、1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有するモノマー及びその誘導体などが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0051】
水酸基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0052】
アミノ基含有モノマーとしては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0054】
スチレン系モノマーとしては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等の官能基化スチレンが挙げられる。
【0055】
シアノ基含有モノマーとしては、シアノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0056】
1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有するモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0057】
ラジカル重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。ラジカル重合性化合物の種類及び配合量は、所望する重合体の物性に応じて、適切に選択すればよい。
【0058】
<重合開始剤>
本発明の一実施形態に係る重合工程では、重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン化合物、及びベンゾイン化合物などが挙げられる。
【0059】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、アゾ系開始剤を用いることができる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、及び4,4'-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)等が挙げられる。
【0060】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る重合工程では、重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。重合開始剤は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.001~5質量部使用することができる。
【0062】
<溶媒>
本発明の一実施形態に係る重合工程では、公知の溶媒を用いることができる。
一例として、重合に用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド等が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る重合工程では、酢酸エチル、エチルメチルケトン、トルエンから選択される1種以上の有機溶剤中でラジカル重合性化合物を重合することができる。一例として、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、酢酸エチル、エチルメチルケトン、トルエンから選択される1種以上の有機溶剤中でラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む製造方法により得ることができる。
【0063】
また別の一例として、本発明の一実施形態に係る重合工程では、水性媒体中で前記ラジカル重合性化合物を重合することができる。水性媒体とは、水あるいは水を主成分とする媒体を意味する。具体的には、水単独、あるいはメタノールやエタノールなどの低級アルコールと水との混合物などが挙げられるが、これらのうちでは水単独が好ましい。一例として、本発明の一実施形態に係る重合体粒子は、水性媒体中で前記ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む製造方法により得ることができる。
【0064】
1.2 その他の化合物配合工程
本発明の一実施形態に係る製造方法は、目的に応じて、得られた重合体に必要な化合物を添加する化合物配合工程を含むことができる。一例として、本発明の一実施形態に係る製造方法は、重合工程と、架橋剤配合工程を含むことができ、前記架橋剤配合工程では、得られた重合体にイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤を配合することができる。後述のように、特に重合体を粘着剤組成物として用いる場合、架橋剤配合工程を有することができる。
【0065】
架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤を挙げることができる。イソシアネート架橋剤としては、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート架橋剤を用いることができる。イソシアネート架橋剤により重合体を架橋することで、架橋体を形成することができる。
【0066】
イソシアネート架橋剤のイソシアネート基数は、2以上とでき、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~6である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、重合体とイソシアネート架橋剤との架橋反応効率の点、および粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0067】
イソシアネート架橋剤の中でも、粘着性能のバランスが良好で、耐久性が高い点から、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物(綜研化学製、L-45等)、またはトリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(綜研化学製、TD-75等)、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成製、TSE-100、東ソー製コロネート2050等)を用いることができる。イソシアネート架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0068】
エポキシ架橋剤としては、例えば、1分子中のエポキシ基数が2以上のエポキシ化合物を用いることができる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。エポキシ架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0069】
金属キレート架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、特にアルミキレート化合物が好ましい。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。金属キレート架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0071】
架橋剤配合工程では、重合体100質量部に対して、架橋剤を、0.01~5質量部配合することができ、0.03~4.5質量部配合することが好ましく、0.05~3質量部配合することがより好ましい。
本発明の重合体の製造方法で得られた重合体、及び架橋剤を含む組成物は粘着剤組成物とすることかできる。
【0072】
2.重合体
本発明に係る重合体は、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含む。
【化21】
【0073】
式(21)中、R21、R22、R23、R24、及びR25は水素、炭素数が1~8のアルキル基、炭素数が1~8のアルコキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲンから選ばれる基であり、R21、R22、R23、R24、及びR25はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xはシアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。
21、R22、R23、R24、及びR25、X、Rの実施形態については、上記した通りである。
【0074】
本発明の一実施形態に係る重合体は、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖が、さらに、下記式(22)で示される基を末端に有することができる。
【化22】
【0075】
式(22)中、R51及びR52は炭素数が1~8のアルキル基であり、R51及びR52はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
は水素、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基、またはフェニル基である。
51及びR52、Rの実施形態については、上記した通りである。
【0076】
上記の末端構造を有する重合体は、特定の骨格、具体的には式(23)で示される連鎖移動剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合することよって得ることができる。上記したように、式(23)で示される化合物がラジカル重合の連鎖移動剤として機能する際の反応機構は、まず、ビニリデン基がラジカル種を受容する付加反応が生じ、次いで開裂反応が続いて、ラジカルが生成すると考えられる。この過程では、まず、式(21)で示される末端構造を有するポリマー鎖が生成し得る。また、ポリマー鎖は、一方の端部に式(21)で示される末端構造を有し、他方の端部に、式(22)で示される末端構造又は開始剤に由来する末端構造を有し得る。
したがって、本発明の一実施形態に係る重合体は、末端に下記式(21)で示される基を有するポリマー鎖を含むことができる。また、本発明の一実施形態に係る重合体は、
・一方の末端に式(21)で示される基を有し、他方の末端に式(22)で示される基を有するポリマー鎖、及び/又は
・一方の末端に式(21)で示される基を有し、他方の末端に開始剤に由来する末端構造有するポリマー鎖
を含むことができる。なお、本発明の一実施形態に係る重合体は、上記の構造のポリマー鎖以外のポリマー鎖を有していても良い。
【0077】
本発明の一実施形態に係る重合体は、チオール系連鎖移動剤に由来する硫黄含有率が、100ppm以下とできる。本発明の一実施形態に係る重合体におけるチオール系連鎖移動剤に由来する硫黄の含有率は、例えば、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。チオール系連鎖移動剤については、上述のとおりである。本発明の一実施形態に係る重合体は、一般に、チオール系連鎖移動剤を用いて重合を行った際に得られる重合体が有し得る、-C-S-C-構造を有しないものとできる。
【0078】
本発明の一実施形態に係る重合体は、本発明に係る式(23)の構造である連鎖移動剤に由来する硫黄や、ラジカル重合性化合物由来等含め、重合体に含まれる全硫黄含有率を、100ppm以下とできる。本発明の一実施形態に係る重合体における硫黄含有率は、例えば、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態に係る重合体は、従来重合体の重合に用いられているチオール系連鎖移動剤に由来する硫黄含有率が少ないため、硫黄に起因すると考えられる不具合、例えば、腐食の問題が生じにくい。
【0080】
本発明の一実施形態に係る重合体は、繰り返し単量体単位を有することができ、ラジカル重合性化合物に由来する繰り返し単量体単位を含むことができる。ラジカル重合性化合物としては、上記したラジカル重合性化合物を挙げることができ、エチレン性不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、スチレン系モノマー、シアノ基含有モノマー、1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有するモノマー及びその誘導体などが挙げられる。
【0081】
本発明の一実施形態に係る重合体において、繰り返し単量体単位は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基から選択される少なくとも1種の基を有することができる。ここで、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基は、ラジカル重合性化合物に由来するものとできる。すなわち、本発明の一実施形態に係る重合体は、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単量体単位を有することができる。上記の繰り返し単量体単位が、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基から選択される少なくとも1種の基を有する実施形態は、特に、後述の重合体を粘着剤組成物として用いる場合に好適である。
【0082】
本発明の一実施形態に係る重合体の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000~200万とできる。重合体の重量平均分子量は例えば、1000、2000、3000、5000、1万、2万、3万、5万、10万、20万、30万、50万、100万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0083】
本発明の一実施形態に係る重合体の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば、1.1~4.5とできる。重合体のMw/Mnは例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0084】
本発明に係る重合体は、腐食の問題が生じにくいため、このような特性を活かし、様々な用途の材料として用いることができる。一例として、本発明の一実施形態に係る重合体は、粘着剤組成物及び重合体粒子に用いることができる。
【0085】
3.粘着剤組成物
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、上記の重合体を含む。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、上記の重合体と、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤とを含むことが好ましい。イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤としては、上記したイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤を挙げることかできる。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基から選択される少なくとも1種の基を有する繰り返し単量体単位を有する重合体を含み、かつ、上記架橋剤を含み、架橋体が形成されることにより、粘着特性を向上させることができる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、重合体100質量部に対して、架橋剤を、0.01~5質量部含むことができる。架橋剤の含有量は例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.30.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0087】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、架橋剤の他、粘着付与樹脂等の粘着剤組成物に添加することができる公知の化合物を含むことができる。
【0088】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物の製造方法は特に限定されないが、本発明の重合体にイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤から選択される少なくとも1種の架橋剤を配合する、架橋剤配合工程を含むことが好ましい。本発明の重合体は、式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含むことが好ましく、ラジカル重合性化合物が、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましく、酢酸エチル、エチルメチルケトン、トルエンから選択される1種以上の有機溶剤中でラジカル重合性化合物を重合する重合工程であることが好ましい。重合工程は、重合反応を静置下で行ってもよく、撹拌下で行ってもよいが、撹拌下で行うことが好ましい。重合の温度は、モノマー成分の種類および量、連鎖移動剤および重合開始剤の種類および量等にもよるが、30~100℃の範囲であることが好ましく、40~90℃の範囲であることが好ましい。重合温度は、重合開始から終了まで一定であってもよく、上記範囲内で変動してもよい。重合温度の制御は、反応熱のみにより行ってもよく、外部からの加熱および冷却により行ってもよい。重合時間は、特に制限されるものではないが、1~30時間であることが好ましく、2~15時間の範囲であることがより好ましい。また、重合過程で、モノマー成分、連鎖移動剤、重合開始剤、溶剤を適宜追加してもよい。
【0089】
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、上記の粘着剤組成物により形成された粘着剤層および基材を含むことができる。粘着シートとしては、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離シートが貼付された粘着シートが挙げられる。
【0090】
基材および剥離シートとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)などのプラスチックフィルムが挙げられる。また、基材としては、ガラス、紙、不織布等も挙げられる。
【0091】
粘着剤層は、上記粘着剤組成物を基材もしくは剥離シートの剥離処理面上に塗布し、加熱により溶媒を除去することにより得ることができる。加熱条件は、溶媒の種類に応じて調整することができる。加熱温度は、例えば、50~150℃とすることができる。また、加熱時間は、例えば、1~10分間とすることかできる。乾燥塗膜の膜厚は、例えば、5~100μmとできる。
【0092】
粘着剤層は、上記条件で形成された塗膜上に剥離シートを貼付した後、3日以上、5~60℃で、30~70%RHの環境下で熟成する事ができる。
【0093】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【0094】
4.重合体粒子
本発明の一実施形態に係る重合体粒子は、上記の重合体を含む。重合体粒子は、平均粒子径が0.05~500μmであることが好ましい。平均粒子径は、例えば、0.05、0.10、0.20、0.50、1、2、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。平均粒子径は実施例に記載の方法で測定した平均粒子径とできる。
【0095】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子は、CV値が2~80%であることが好ましい。例えば、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、CV値は下記式により算出することができる。
CV値=標準偏差/平均粒子径×100
【0096】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子の製造方法は特に限定されないが、式(23)で示される骨格からなる連鎖移動剤および重合開始剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含むことが好ましく、重合工程は、水系溶媒中でラジカル重合性化合物を重合する重合工程であることが好ましい。また、重合工程では、必要に応じて、乳化剤、分散剤、酸化防止剤等公知の化合物を添加することができる。
【0097】
重合工程では、重合反応を静置下で行ってもよく、撹拌下で行ってもよいが、撹拌下で行うことが好ましい。重合の温度は、モノマー成分の種類および量、連鎖移動剤および重合開始剤の種類および量等にもよるが、30~100℃の範囲であることが好ましく、40~90℃の範囲であることが好ましい。重合温度は、重合開始から終了まで一定であってもよく、上記範囲内で変動してもよい。重合温度の制御は、反応熱のみにより行ってもよく、外部からの加熱および冷却により行ってもよい。重合時間は、特に制限されるものではないが、1~30時間であることが好ましく、2~15時間の範囲であることがより好ましい。
【0098】
生成した重合体粒子は、水性媒体から分離することが好ましい。水性媒体から分離する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜適用することができる。分離の方法としては、濾過、減圧濾過、遠心分離、噴霧乾燥、凍結乾燥、蒸発乾固等が挙げられる。水性媒体から分離した重合体粒子は、必要に応じてさらに乾燥し、また必要に応じて粉砕・解砕して用いることができる。
【実施例0099】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0100】
(製造例1)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)100質量部、下記構造を有する連鎖移動剤 CTA-1 16質量部、酢酸エチル200質量部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」という。)0.1質量部を添加した。混合物の温度が70℃に維持されるように、加熱および冷却を3時間行い、重合体1を含む溶液を得た。反応終了後、前記溶液から酢酸エチルを除去し、重合体1をテトラヒドロフラン(THF)で溶解し、重合体1/THF=1mg/mLの溶液1を調製し、さらに、マトリックス溶液(2,5-ジヒドロキシ安息香酸 (DHB)/テトラヒドロフラン(THF)=10mg/mL)にて溶液1:マトリックス溶液=1:10(質量比)となるように希釈し、重合体1を含む分析用溶液を調製した。
【0101】
【化25】
【0102】
<MALDI/TOFMSによる分析>
得られた重合体1を含むポリマー溶液1を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化タンデム飛行時間型質量分析装置(MALDI/TOFMS)で分析し、MSスペクトルを得た。測定装置、測定条件等を以下に示す。
測定装置
装置名:ultraflextreme
メーカー:Bruker Daltonics Inc
測定条件
イオン化法:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)
イオン化モード;Positive
質量分離部;Reflectorモード
【0103】
重合体1に係るMSスペクトルにおいて、分子量が、以下で表されるピークが確認された。
分子量=ブチルアクリレートの分子量(128)×n+連鎖移動剤CTA-1の分子量(315)+イオン化剤(Na又はK)の分子量(23又は39)
重合体1に係るMSスペクトルにおいては、上記式において、n=1~33の整数である分子量に対応するピークが確認された。すなわち、ブチルアクリレート単量体単位をn個、及び連鎖移動剤CTA-1 1つ分の分子量を有するポリマー鎖の存在が確認された。なお、nは、ブチルアクリレートの重合度(ブチルアクリレート単量体単位の繰り返し数)を示す。
【0104】
また、重合体1に係るMSスペクトルにおいて、分子量が、以下で表されるピークが確認された。
分子量=ブチルアクリレートの分子量(128)×n+連鎖移動剤CTA-1由来の下記式(26)で示す部分の分子量(142)+開始剤由来の末端構造の分子量(68)+イオン化剤(Na又はK)の分子量(23又は39)
重合体1に係るMSスペクトルにおいては、上記式において、n=2~17の整数である分子量に対応するピークが確認された。すなわち、ブチルアクリレート単量体単位をn個、下記式(26)で示される付加開裂後の連鎖移動剤CTA-1に由来する末端構造、及び下記式(27)で示される開始剤由来の末端構造を有するポリマー鎖の存在が確認された。また、この結果から、連鎖移動剤CTA-1が開裂し、式(26)で表される末端構造を有するポリマー鎖と、下記(28)で示されるラジカルに由来する末端構造が生成することが理解される。
【0105】
【化26】
【0106】
【化27】
【0107】
【化28】
【0108】
以上より、製造例1では、上記の連鎖移動剤CTA-1に由来する式(26)で示される末端構造と、開始剤由来の式(27)で示される末端構造を有するポリマー鎖が生成していることが確認された。また、このことより、ブチルアクリレート単量体単位をn個及び連鎖移動剤CTA-1 1分子分の分子量を有するポリマー鎖は、上記の連鎖移動剤CTA-1に由来する式(26)で示される末端構造と、下記の連鎖移動剤CTA-1に由来する式(29)で示される末端構造を有するポリマー鎖であると理解される。
【0109】
【化29】
【0110】
(製造例2)
製造例1において、連鎖移動剤を、下記構造を有する連鎖移動剤 CTA-3とした以外は製造例1と同様に、重合体2を含むポリマー溶液2を調整した。
【0111】
【化30】
【0112】
<MALDI/TOFMSによる分析>
重合体1を含むポリマー溶液1と同様に、重合体2を含むポリマー溶液2をMALDI/TOFMSで分析しMSスペクトルを得た。
【0113】
重合体2に係るMSスペクトルにおいて、分子量が、以下で表されるピークが確認された。
分子量=ブチルアクリレートの分子量(128)×n+連鎖移動剤CTA-3の分子量(362)+イオン化剤(Na又はK)の分子量(23又は39)
重合体2に係るMSスペクトルにおいては、上記式において、n=1~33の整数である分子量に対応するピークが確認された。
すなわち、ブチルアクリレート単量体単位をn個、及び連鎖移動剤CTA-3 1つ分の分子量を有するポリマー鎖の存在が確認された。なお、nは、ブチルアクリレートの重合度(ブチルアクリレート単量体単位の繰り返し数)を示す。
【0114】
また、重合体2に係るMSスペクトルにおいて、分子量が、以下で表されるピークが確認された。
分子量=ブチルアクリレートの分子量(128)×n+連鎖移動剤CTA-3由来の下記式(31)で示す部分の分子量(189)+開始剤由来の末端構造の分子量(68)+イオン化剤(Na+又はK+)の分子量(23又は39)
重合体2に係るMSスペクトルにおいては、上記式において、n=2~17の整数である分子量に対応するピークが確認された。すなわち、ブチルアクリレート単量体単位をn個、下記式(31)で示される付加開裂後の連鎖移動剤CTA-3に由来する末端構造、及び上記式(27)で示される開始剤由来の末端構造を有するポリマー鎖の存在が確認された。また、この結果から、連鎖移動剤CTA-3が開裂し、式(31)で表される末端構造を有するポリマー鎖と、下記(32)で示されるラジカルに由来する末端構造が生成することが理解される。
【0115】
以上より、製造例2では、連鎖移動剤CTA-3に由来する下記の式(31)で示される末端構造と、開始剤由来の式(27)で示される末端構造を有するポリマー鎖が生成していることが確認された。また、このことより、ブチルアクリレート単量体単位をn個及び連鎖移動剤CTA-3 1分子分の分子量を有するポリマー鎖は、連鎖移動剤CTA-3に由来する式(31)で示される末端構造と、連鎖移動剤CTA-3に由来する下記の式(32)で示される末端構造を有するポリマー鎖であると理解される。
【0116】
【化31】
【0117】
【化32】
【0118】
(実施例1)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、n-ブチルアクリレート(BA)40部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)55.8質量部、アクリル酸(AA)4部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.2質量部、CTA-1 0.09質量部、酢酸エチル60質量部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。次いで、AIBN0.05質量部を攪拌下フラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が70℃に維持できるように、加熱および冷却を2時間30分行った。その後、温度を80℃に昇温し、2時間還流反応を行い、重合体(A-1)を得た。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、重合体(A-1)を含む固形分濃度45質量%のポリマー溶液を調製した。得られた(A-1)についてGPCにより測定したMwは48.7万であった。また、以下のようにして、腐食性の確認を行った。
【0119】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
得られた重合体ついて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で重量平均分子量(Mw)を求めた。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0120】
<重合率>
ガスクロマトグラフィーを用いた内部標準法により、下記条件で残存モノマー量を測定した。残存モノマーとして測定されたモノマー以外のモノマーは全て重合に関与したものとして重合率を算出した。結果を表1に示す。
測定装置:GC-2010Plus(島津製作所製)
カラム:Rxi-5ms 15m, 0.25mmID 0.25μm
カラム温度:50℃
昇温プログラム:50℃(5min)→20℃/min→250℃(5min)
FID温度:250℃
キャリアガス:He
【0121】
<腐食性>
サンプル瓶に重合体(A-1)を含むポリマー溶液を採取し、銅片を投入した。その後、150℃で1時間サンプル瓶を加熱し、ポリマー溶液中の溶剤を揮発させた。サンプル瓶を密閉し、さらに150℃で1時間加熱した後の銅片を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
〇:銅片に変化なし(腐食性なし)
×:銅片に変色が確認された(腐食性あり)
【0122】
(実施例2、3、比較例1、参考例1、2)
使用する連鎖移動剤を表1のとおりにしたこと以外は、実施例1と同様にして、重合体A-2~A-6を製造し、重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn、並びに腐食性を評価した。CTA-1及びCTA-3の構造は上述の通りであり、CTA-2は下記式で示される構造を有する。また、比較例1では、n-ドデシルメルカプタン(NDM)を、参考例2では、αメチルスチレンダイマー(AMSD)を用いた。結果を表1に示す。
【0123】
【化33】
【0124】
【表1】
【0125】
(実施例4)
実施例1で得られた重合体A-1を含むポリマー溶液(固形分濃度45質量%)と、粘着付与樹脂としてペンセルD-135(荒川化学工業製)と、架橋剤としてL-45(綜研化学製:イソシアネート架橋剤)とを、それぞれ固形分比が、重合体A-1が100質量部、D-135が20質量部、L-45が1.5質量部となる量で混合して、粘着剤組成物を得た。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、前記で得られた粘着剤組成物を、泡が抜けるまで静置後、ドクターブレードを用いて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させ溶媒を除去して粘着剤層を形成した。粘着剤層のPETフィルムと接している面とは反対側表面に、剥離処理されたPETフィルムを貼り合わせた。その後、40℃/dry条件で3日間静置して熟成させて、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを製造した。得られた粘着シートを用い、以下の評価を実施した。
【0126】
<粘着力>
粘着シートを25mm×150mmのサイズに裁断し試験片を作製した。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をステンレス板(SUS)に貼付して重さ2kgのローラーを3往復させて圧着した。圧着後23℃/50%RH雰囲気下で2時間放置した後、試験片の短辺を引き剥がし速度300mm/minで180°方向に引っ張り、粘着力を測定した。
【0127】
<保持力>
粘着シートを20mm×100mmのサイズに裁断し試験片を作成した。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をステンレス板(SUS)に貼付け面積が20mm×20mmとなるように貼付して2kgローラー3往復させて圧着した。その後40℃/dry環境下で20分静置し、同環境下で試験対象のせん断方向に1kgの荷重をかけ、荷重付加開始から1時間後の粘着剤層のずれ量を測定した。なお、荷重負荷開始から1時間未満で落下した場合は、荷重負荷開始から落下までの時間を記載した。
【0128】
<プローブタック>
粘着シートを20mm×150mmのサイズに裁断し、剥離処理されたPETフィルムを剥がし 、露出した粘着剤層のプローブタックを測定した。プローブは直径5mmのSUS、接触時間は1秒、プローブ速度は1cm/sec、荷重は20gとした。
【0129】
(実施例5~9、比較例2、3、参考例3、4)
使用する重合体の種類および架橋剤の量を表2のとおりにした以外は、実施例4と同様に、粘着シートの製造および評価を実施した。結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
(実施例10)
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた反応装置に、iso-ブチルメタクリレート(iBMA)100質量部、分散剤として部分けん化されたポリビニルアルコール0.75質量部、CTA-1 0.16質量部、イオン交換水200質量部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を70℃に加熱した。次いで、ラウロイルパーオキサイド1.5質量部を攪拌下フラスコ内に添加し、4時間重合反応を行った後、反応系を冷却し、重合体粒子10の分散液を得た。得られた重合体粒子10の分散液をろ過し、その後乾燥を行い、重合体粒子10を得た。得られた重合体粒子及び分散液を以下の方法で評価した。重合体粒子10のMwは16.4万、粒径は238μmであった重量平均分子量(Mw)及びMw/Mnの測定方法は実施例1と同様である。
【0132】
<重合率(分散液中のiBMA残量)>
実施例で得られた分散液中(重合反応終了後の重合液)のiBMA残量(ppm)をガスクロマトグラフィーにより測定し、重合率を算出した。ガスクロマトグラフィーの測定条件は、上記に準ずる。
【0133】
<粒径>
重合体粒子10 2gをスライドガラス上に載せて、さらにカバーガラスで覆った。カバーガラスの上方よりマイクロスコープ(VHX-5000:キーエンス製)を用いて観察した(図1及び図2)。重合体粒子10は、ほぼ球状であった。得られた観察画像から、任意の10個の重合体粒子の粒子径を測定し、平均粒子径を算出した。
【0134】
<腐食性>
サンプル瓶に重合体粒子10を3g採取後、酢酸エチル5gを投入し、重合体粒子10を溶解させた。銅片をサンプル瓶に投入し、150℃で1時間加熱し、酢酸エチルを揮発させた。サンプル瓶を密閉し、さらに150℃で1時間加熱した後の銅片を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
〇:銅片に変化なし(腐食性なし)
×:銅片に変色が確認された(腐食性あり)
【0135】
(実施例11~13、比較例4、参考例5、6)
使用する連鎖移動剤の種類及び量を表3のとおりにしたこと以外は、実施例10と同様に、重合体を製造し、評価した。
【0136】
【表3】
【0137】
以上より、本発明に係る重合体が、腐食及び粘着特性の低下等の問題を引き起こしにくいことが示された。また、本発明に係る製造方法によれば、重合するラジカル重合性化合物の種類によらず、十分な重合率で、分子量の制御が可能である。
図1
図2