(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127431
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】感放射線性組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240912BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240912BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036580
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氷上 裕一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正之
(72)【発明者】
【氏名】柄川 冬輝
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF24P
2H225AF53P
2H225AF54P
2H225AF66P
2H225AF71P
2H225AF92P
2H225AH11
2H225AH16
2H225AH17
2H225AH19
2H225AH36
2H225AH38
2H225AH40
2H225AH41
2H225AH50
2H225AJ13
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ58
2H225AJ59
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB10
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】優れた現像欠陥抑制性及びLWR性能を発揮可能なレジスト膜を形成し得る感放射線性組成物及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】酸解離性基を有する構造単位(I)を含む重合体と、上記重合体よりフッ素原子の質量含有率が高い高フッ素含有量重合体と、感放射線性酸発生剤と、溶剤とを含有し、上記重合体のハンセン溶解度パラメータと上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータとの下記式(A)で表される差ΔHSPが3.0以上である、感放射線性組成物。
【数1】
(式(A)中、dD
1、dP
1及びdH
1は、上記重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表し、dD
2、dP
2及びdH
2は、上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性基を有する構造単位(I)を含む重合体と、
上記重合体よりフッ素原子の質量含有率が高い高フッ素含有量重合体と、
感放射線性酸発生剤と、
溶剤と
を含有し、
上記重合体のハンセン溶解度パラメータと上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータとの下記式(A)で表される差ΔHSPが3.0以上である、感放射線性組成物。
【数1】
(式(A)中、dD
1、dP
1及びdH
1は、上記重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表し、dD
2、dP
2及びdH
2は、上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表す。)
【請求項2】
上記重合体を構成する全構造単位に占める上記構造単位(I)の含有割合が、30モル%以上50モル%以下である、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項3】
上記構造単位(I)は下記式(3)で表される、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
【化1】
(式(3)中、
R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はアルコキシアルキル基である。
R
8は、炭素数1~8の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基である。
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1~8の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基であるか、又はR
9及びR
10が互いに合わせられR
9及びR
10が結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の単環式脂肪族炭化水素基を表す。)
【請求項4】
上記重合体は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する構造単位(II)をさらに含む、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
上記構造単位(II)における環状構造が単環構造である、請求項4に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
上記重合体を構成する全構造単位に占める上記構造単位(II)の含有割合が、40モル%以上70モル%以下である、請求項4に記載の感放射線性組成物。
【請求項7】
上記重合体を構成する全構造単位に占める上記構造単位(II)の含有割合が、上記構造単位(I)の含有割合より多い、請求項4に記載の感放射線性組成物。
【請求項8】
上記重合体を構成する全構造単位の側鎖構造(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位において、上記単量体の炭素-炭素二重結合に隣接する-COO-は除く。)における酸素原子の数NOの炭素原子の数NCに対する比が、0.14以上である、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
【請求項9】
上記高フッ素含有量重合体の含有量が、上記重合体100質量部に対し1質量部以上10質量部以下である、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
【請求項10】
酸拡散制御剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の感放射線性組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の感放射線性組成物を基板上に直接又は間接に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光する工程と、
露光された上記レジスト膜を現像液で現像する工程と
を含むパターン形成方法。
【請求項12】
上記露光を、ArFエキシマレーザーを用いる液浸露光により行う、請求項8に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子における微細な回路形成にレジスト組成物を用いるフォトリソグラフィー技術が利用されている。代表的な手順として、例えば、レジスト組成物の被膜に対するマスクパターンを介した放射線照射による露光で酸を発生させ、その酸を触媒とする反応により露光部と未露光部とにおいて重合体のアルカリ系や有機系の現像液に対する溶解度の差を生じさせることで、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
上記フォトリソグラフィー技術ではArFエキシマレーザー等の短波長の放射線を利用したり、さらに露光装置のレンズとレジスト膜との間の空間を液状媒体で満たした状態で露光を行う液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)を用いたりしてパターン微細化を推進している。
【0004】
液浸露光法において用いられるレジスト組成物には、レジスト膜の表面改質によってレジスト性能やプロセス効率を改善することを目的として、レジスト組成物に撥水性成分を添加する試みがなされている(特許第6774214号参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既存の感放射線性組成物では現像欠陥抑制性やレジストパターンの線幅のバラつきを示すラインウィドゥスラフネス(LWR)性能について十分なレベルで得られない場合がある。特に、現像欠陥抑制のためにレジスト膜表面を高撥水性にしすぎると、現像液への溶解性能が低下してLWR等の性能が劣化してしまうというトレードオフの問題がある。
【0007】
本発明は、優れた現像欠陥抑制性及びLWR性能を発揮可能なレジスト膜を形成し得る感放射線性組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記特性が不十分となる原因を特定しようと成分組成やレジスト膜の性状を検討したところ、レジスト膜の表面におけるフッ素原子の存在量が少ないことが影響している可能性があるとの知見を得た。この知見を展開したところ、ベース材料となる重合体と撥水性成分である高フッ素含有量重合体との分離性が低く、両者がインターミキシングを生じていることが要因の一つと考えられた。さらに検討を重ねた結果、高フッ素含有量重合体がレジスト膜表面に偏在すれば上記特性を得るのに有利であることを突き止め、このような重合体と高フッ素含有量重合体との分離性を定量的に制御可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一実施形態において、
酸解離性基を有する構造単位(I)を含む重合体と、
上記重合体よりフッ素原子の質量含有率が高い高フッ素含有量重合体と、
感放射線性酸発生剤と、
溶剤と
を含有し、
上記重合体のハンセン溶解度パラメータと上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータとの下記式(A)で表される差ΔHSP(以下、「ΔHSP」ともいう。)が3.0以上である、感放射線性組成物。
【数1】
(式(A)中、dD
1、dP
1及びdH
1は、上記重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表し、dD
2、dP
2及びdH
2は、上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表す。)
【0010】
当該感放射線性組成物では、重合体及び高フッ素含有量重合体の各ハンセン溶解度パラメータが所定の関係(すなわち、ΔHSPが3.0以上)を満たす。換言すると、マトリクス材としての重合体と高フッ素含有量重合体との分離性が良好であるので、現像欠陥抑制性及びLWR性能を十分なレベルで発揮可能なレジスト膜を形成することができる。
【0011】
本発明は、別の実施形態において、
当該感放射線性組成物を基板上に直接又は間接に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光する工程と、
露光された上記レジスト膜を現像液で現像する工程と
を含むパターン形成方法に関する。
【0012】
当該パターン形成方法では、現像欠陥抑制性及びLWR性能に優れるレジスト膜を形成可能な上記感放射線性組成物を用いているので、高品位のレジストパターンを効率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。実施形態において好適な態様の組み合わせもまた好ましい。
【0014】
《感放射線性組成物》
本実施形態に係る感放射線性組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、重合体(以下、「ベース重合体」ともいう。)、高フッ素含有量重合体、感放射線性酸発生剤及び溶剤を含む。さらに必要に応じて、酸拡散制御剤を含む。上記組成物は、本発明の効果を損なわない限り、他の任意成分を含んでいてもよい。感放射線性組成物によれば、重合体と高フッ素含有量重合体とが所定のハンセン溶解度パラメータの関係を満たすので、高いレベルでの現像欠陥抑制性及びLWR性能を発揮することができる。
【0015】
[ハンセン溶解度パラメータの差ΔHSP]
本実施形態において、上記重合体のハンセン溶解度パラメータと上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータとの上記式(A)で表される差ΔHSPは3.0以上である。ΔHSPの下限は3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、3.8が特に好ましい。ΔHSPの上限は特に限定されないものの、7.0が好ましく、6.5がより好ましく、6.0がさらに好ましく、5.5が特に好ましい。ΔHSPを上記範囲とすることで、当該組成物により得られるレジスト膜の現像欠陥抑制性及びLWR性能を向上させることができる。なお、ΔHSPの算出方法は実施例の記載による。
【0016】
ΔHSPを上記範囲に制御する重合体及び高フッ素含有量重合体の好適な構造は後述するものの、重合体を相対的に親水性の構造とし、高フッ素含有量重合体を相対的に疎水性の構造とすることが好ましい。重合体を相対的に親水性の構造とする方策としては、側鎖構造の炭素原子の含有割合を低くしたり、極性構造(例えば、ヘテロ原子含有構造等)を導入したり、環構造を含む場合には多環より単環を採用したりすること等が挙げられる。高フッ素含有量重合体を相対的に疎水性の構造とする方策としては、フッ素原子や炭素原子の含有割合を高めること等が挙げられる。
【0017】
[重合体]
重合体は、酸解離性基を有する構造単位(I)を含む。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、スルホ基等が有する水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。当該感放射線性組成物は、重合体が構造単位(I)を有することで、パターン形成性に優れる。
【0018】
重合体は、構造単位(I)以外にも、後述するラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する構造単位(II)を含むことが好ましく、構造単位(I)及び(II)以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0019】
(構造単位(I))
構造単位(I)は、酸解離性基を有する構造単位である。構造単位(I)としては、酸解離性基を含む限り特に限定されず、例えば、第三級アルキルエステル部分を有する構造単位、フェノール性水酸基の水素原子が第三級アルキル基で置換された構造を有する構造単位、アセタール結合を有する構造単位等が挙げられるが、当該感放射線性組成物のパターン形成性の向上の観点から、下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(I-1)」ともいう)が好ましい。
【0020】
【化1】
(式(3)中、
R
7は、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はアルコキシアルキル基である。
R
8は、炭素数1~8の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基である。
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1~8の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基であるか、又はR
9及びR
10が互いに合わせられR
9及びR
10が結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の単環式脂肪族炭化水素基を表す。)
【0021】
上記R7としては、構造単位(I-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0022】
上記R8~R10で表される炭素数1~8の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖飽和炭化水素基、又は炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0023】
上記R8~R10で表される炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基としては、単環式飽和脂肪族炭化水素基又は単環式不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。単環式飽和脂肪族炭化水素基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。単環式不飽和脂肪族炭化水素基としてはシクロプロペニル基、シクロブニテル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0024】
上記R8としては、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数4~6の単環式シクロアルキル基が好ましい。
【0025】
上記R9及びR10が互いに合わせられR9及びR10が結合する炭素原子と共に構成される炭素数3~8の2価の単環式脂肪族炭化水素基としては、上記炭素数3~8の1価の単環式脂肪族炭化水素基から1個の水素原子を除いた基であれば特に限定されない。中でも、上記炭素数3~8の2価の単環式脂肪族炭化水素基としては、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等が好ましく、シクロペンタンジイル基がより好ましい。
【0026】
構造単位(I-1)を与える単量体の具体例としては、例えば、下記式(3-1)~(3-12)で表される化合物等が挙げられる。
【0027】
【0028】
上記式(3-1)~(3-12)中、R7は、上記式(3)と同義である。
【0029】
重合体は、構造単位(I)を1種又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0030】
重合体を構成する全構造単位に占める構造単位(I)の含有割合(複数種含む場合は合計の含有割合)の下限は、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、35モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限は、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、45モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性組成物の現像欠陥抑制性やパターン形成性をより向上させることができる。
【0031】
(構造単位(II))
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する構造単位である。重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができ、その結果、当該感放射線性組成物は、LWR性能や解像性等のリソグラフィー性能を向上させることができる。また、重合体から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0032】
上記構造単位(II)におけるラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造は、いずれも環状構造を有する。環状構造としては、単環構造又は多環構造のいずれであってもよいものの、現像欠陥抑制性及びLWR性能の点から、単環構造であることが好ましい。
【0033】
構造単位(II)としては、例えば、下記式(T-1)~(T-4)で表される構造単位等が好ましい。
【0034】
【0035】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RL2~RL5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ジメチルアミノ基である。RL2が複数存在する場合、複数のRL2は互いに同一又は異なる。L2は、単結合又は2価の連結基である。kは0~2の整数である。mは1~3の整数である。
【0036】
上記L2で表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1~10の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数4~12の2価の脂環式炭化水素基、又はこれらの炭化水素基の1個以上と-CO-、-O-、-NH-及び-S-のうちの少なくとも1種の基とから構成される基等が挙げられる。
【0037】
構造単位(II)を与える単量体の具体例としては、例えば、下記式(T-1-1)~(T-1-7)、(T-2-1)~(T-2-3)、(T-3-1)~(T-3-3)、(T-4-1)、(T-5)~(T-7)で表される化合物等が挙げられる。
【0038】
【0039】
上記式式(T-1-1)~(T-1-7)、(T-2-1)~(T-2-3)、(T-3-1)~(T-3-3)、(T-4-1)、(T-5)~(T-7)中、RL1は、上記式(T-1)~(T-4)と同義である。
【0040】
重合体を構成する全構造単位に占める構造単位(II)の含有割合(複数種含む場合は合計の含有割合)の下限は、35モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、45モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限は、75モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、65モル%以下がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性組成物はLWR性能や解像性等のリソグラフィー性能及び形成されるレジストパターンの基板との密着性をより向上させることができる。
【0041】
上記重合体を構成する全構造単位に占める上記構造単位(II)の含有割合は、上記構造単位(I)の含有割合より多いことが好ましい。側鎖構造にヘテロ原子を有する構造単位(II)の含有割合を上記構造単位(I)の含有割合より多くすることで、ベース重合体を親水性の構造とすることができ、ΔHSPを適切に制御することができる。
【0042】
(構造単位(III))
重合体は、上記構造単位(I)及び(II)以外にも、その他の構造単位を任意で有する。上記その他の構造単位としては、例えば、極性基を含む構造単位(III)等が挙げられる(但し、構造単位(II)に該当するものを除く)。重合体は、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができ、その結果、当該感放射線性組成物の解像性等のリソグラフィー性能を向上させることができる。上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0043】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0044】
【0045】
上記式中、RAは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0046】
上記重合体が上記極性基を有する構造単位(III)を有する場合、重合体を構成する全構造単位に占める上記構造単位(III)の含有割合の下限は、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、8モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限は、20モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、12モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性組成物の解像性等のリソグラフィー性能をさらに向上させることができる。
【0047】
上記ベース重合体を構成する全構造単位の側鎖構造(ただし、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位において、上記単量体の炭素-炭素二重結合に隣接する-COO-は除く。)における酸素原子の数NOの炭素原子の数NCに対する比(NO/NC)は、0.14以上であることが好ましい。比NO/NCの下限は、0.16がより好ましく、0.18がさらに好ましく、0.19が特に好ましい。比NO/NCの上限は、0.30が好ましく、0.28がより好ましく、0.26がさらに好ましい。これによりベース重合体を相対的に親水性の構造としてΔHSPを適切に制御することができ、その結果、現像欠陥抑制性及びLWR性能を向上させることができる。なお、比NO/NCは、ベース重合体を構成する構造単位の構造式及びモル比に基づき求めることができる。
【0048】
(重合体の合成方法)
重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶剤中で重合することにより合成できる。
【0049】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
上記重合に使用される溶剤としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記重合における反応温度としては、通常40℃~150℃であり、50℃~120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間~48時間であり、1時間~24時間が好ましい。
【0052】
重合体の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては2,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwの上限は、12,000が好ましく、8,000がより好ましく、5,000以下がさらに好ましい。重合体のMwを上記範囲とすることで、得られるレジスト膜の耐熱性や現像性を向上させることができる。
【0053】
重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0054】
本明細書における重合体のMw及びMnの測定方法は、実施例の記載による。
【0055】
重合体の含有割合としては、当該感放射線性組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0056】
[高フッ素含有量重合体]
高フッ素含有量重合体は、上記ベース重合体よりもフッ素原子の質量含有率が高い重合体である。当該感放射線性組成物が高フッ素含有量重合体を含有する場合、上記ベース重合体に対してレジスト膜の表層に偏在化させることができ、その結果、液浸露光時のレジスト膜の表面の撥水性を高めることができる。
【0057】
高フッ素含有量重合体としては、例えば下記式(5)で表される構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう。)を有することが好ましく、必要に応じて上記重合体における構造単位(I)や構造単位(II)を有していてもよい。
【0058】
【0059】
上記式(5)中、R13は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。GLは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2ONH-、-CONH-、-OCONH-、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基又はこれらの組み合わせである。R14は、炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
【0060】
上記R13としては、構造単位(IV)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0061】
GLで表される炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10の2価の直鎖状又は分岐状の鎖状炭化水素基、炭素数4~10の2価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0062】
上記GLとしては、構造単位(IV)を与える単量体の共重合性の観点から、単結合及び-COO-が好ましく、-COO-がより好ましい。
【0063】
上記R14で表される炭素数1~20の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、例えば
トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロn-プロピル基、ヘプタフルオロi-プロピル基、ノナフルオロn-ブチル基、ノナフルオロi-ブチル基、ノナフルオロt-ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロn-ペンチル基、トリデカフルオロn-ヘキシル基、5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基等のフッ素化アルキル基;
トリフルオロエテニル基、ペンタフルオロプロペニル基等のフッ素化アルケニル基;
フルオロエチニル基、トリフルオロプロピニル基等のフッ素化アルキニル基などが挙げられる。
【0064】
上記R14で表される炭素数3~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えば
フルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、フルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基等のフッ素化シクロアルキル基;
フルオロシクロペンテニル基、ノナフルオロシクロヘキセニル基等のフッ素化シクロアルケニル基などが挙げられる。
【0065】
上記R14としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基及び5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基がさらに好ましい。
【0066】
構造単位(IV)を与える単量体としては、例えば、下記式(5-1)~(5-4)で表される化合物等が挙げられる。
【0067】
【0068】
上記式(5-1)~(5-3)中、R13は、上記式(5)と同義である。
【0069】
高フッ素含有量重合体が構造単位(IV)を有する場合、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に占める構造単位(IV)の含有割合の下限は、1モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限は、40モル%が好ましく、35モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、高フッ素含有量重合体のフッ素原子の質量含有率をより適度に調整してΔHSPの値を制御できる。その結果、高フッ素含有量重合体のレジスト膜の表層への偏在化をさらに促進することができ、現像欠陥抑制性及びLWR性能をより向上させることができる。
【0070】
高フッ素含有量重合体は、構造単位(IV)とともに又は構造単位(IV)に代えて、下記式(f-2)で表されるフッ素原子含有構造単位(以下、構造単位(V)ともいう。)を有していてもよい。高フッ素含有量重合体は構造単位(f-2)を有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を効率的に抑制することができる。
【0071】
【0072】
構造単位(V)は、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-2)中、RCは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RDは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のRE側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。
【0073】
構造単位(V)が(x)アルカリ可溶性基を有する場合、RFは水素原子であり、A1は酸素原子、-COO-*又は-SO2O-*である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。A1が酸素原子である場合、W1はA1が結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。REは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(V)が(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位(V)としては、A1が酸素原子でありW1が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-メタンジイル基である場合が特に好ましい。
【0074】
構造単位(V)が(y)アルカリ解離性基を有する場合、RFは炭素数1~30の1価の有機基であり、A1は酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SO2O-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRFに結合する部位を示す。W1は単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。REは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。A1が-COO-*又は-SO2O-*である場合、W1又はRFはA1と結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。A1が酸素原子である場合、W1、REは単結合であり、RDは炭素数1~20の炭化水素基のRE側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、RFはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のRE、W1、A1及びRFはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(V)が(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位(V)としては、A1が-COO-*であり、RF若しくはW1又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
【0075】
RCとしては、構造単位(V)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0076】
構造単位(IV)を与える単量体としては、例えば、下記式(f-2-1)~(f-2-8)で表される化合物等が挙げられる。
【0077】
【0078】
高フッ素含有量重合体が構造単位(V)を有する場合、高フッ素含有量重合体を構成する全構造単位に占める構造単位(V)の含有割合の下限は、30モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。また、上記含有割合の上限は、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時のレジスト膜の撥水性とともに現像時の溶解性をより向上させることができる。
【0079】
高フッ素含有量重合体のMwの下限としては、2,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、15,000が好ましく、12,000がより好ましく、10,000がさらに好ましい。
【0080】
高フッ素含有量重合体のMw/Mnの下限としては、通常1であり、1.1がより好ましい。上記Mw/Mnの上限としては、通常5であり、3が好ましく、2がより好ましく、1.9がさらに好ましい。
【0081】
高フッ素含有量重合体の含有量の下限は、上記重合体100質量部に対して、1質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましく、2.5質量部が特に好ましい。また、上記含有量の上限は、10質量部が好ましく、8質量部がより好ましく、6質量部がさらに好ましく、4質量部が特に好ましい。
【0082】
高フッ素含有量重合体の含有量を上記範囲とすることでΔHSPの値を適切に制御することができ、高フッ素含有量重合体をレジスト膜の表層へより効果的に偏在化させることができる。その結果、現像欠陥抑制性及びLWR性能をより高めることができる。当該感放射線性組成物は、高フッ素含有量重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0083】
(高フッ素含有量重合体の合成方法)
高フッ素含有量重合体は、上述のベース重合体の合成方法と同様の方法により合成することができる。
【0084】
[感放射線性酸発生剤]
感放射線性酸発生剤は、露光により酸を発生する成分である。露光により発生した酸は、その酸の強さによって感放射線性組成物中で、2つの機能を担うと考えられる。第1の機能としては、露光により発生した酸が、ベース重合体の構造単位(I)(及び高フッ素含有量重合体が構造単位(I)を含む場合はこの構造単位(I))が有する酸解離性基を解離させ、カルボキシ基等を発生させる機能が挙げられる。この第1の機能を有する感放射線性酸発生剤を感放射線性酸発生剤(I)という。第2の機能としては、上記感放射線性組成物を用いたパターン形成条件において、重合体の構造単位(I)が有する酸解離性基などを実質的に解離させず、未露光部において上記感放射線性酸発生剤(I)から発生した酸の拡散を抑制する機能が挙げられる。この第2の機能を有する感放射線性酸発生剤を感放射線性酸発生剤(II)という。感放射線性酸発生剤(II)から発生する酸は、感放射線性酸発生剤(I)から発生する酸より相対的に弱い酸(pKaが大きい酸)であるということができる。感放射線性酸発生剤が感放射線性酸発生剤(I)または感放射線性酸発生剤(II)として機能するかは、重合体の構造単位(I)が有する酸解離性基が解離するのに必要とするエネルギー、および感放射線性組成物を用いてパターンを形成する際に与えられる熱エネルギー条件等によって決まる。感放射線性組成物における感放射線性酸発生剤の含有形態としては、それ単独で低分子化合物として存在する(重合体から遊離した)形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよいものの、単独で低分子化合物として存在する形態が好ましい。
【0085】
感放射線性組成物が上記感放射線性酸発生剤(I)を含有することにより、露光部の重合体の極性が増大し、露光部における重合体が、アルカリ水溶液現像の場合は現像液に対して溶解性となり、一方、有機溶媒現像の場合は現像液に対して難溶性となる。
【0086】
上記感放射線性酸発生剤(II)を含有することにより、感放射線性組成物は、パターン現像性、LWR性能、CDU性能により優れるレジストパターンを形成することができる。
【0087】
感放射線性酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。これらのうち、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が好ましい。
【0088】
露光により発生する酸としては、露光によりスルホン酸、カルボン酸、スルホンイミドを生じるものをあげることができる。このような酸として、
(1)スルホ基に隣接する炭素原子に1以上のフッ素原子またはフッ素化炭化水素基が置換した化合物、
(2)スルホ基に隣接する炭素原子がフッ素原子またはフッ素化炭化水素基で置換されていない化合物
を挙げることができる。露光により発生するカルボン酸としては、
(3)カルボキシ基に隣接する炭素原子に1以上のフッ素原子またはフッ素化炭化水素基が置換した化合物、
(4)カルボキシ基に隣接する炭素原子がフッ素原子またはフッ素化炭化水素基で置換されていない化合物
を挙げることができる。これらのうち、感放射線性酸発生剤(I)としては上記(1)に該当するものが好ましく、環状構造を有するものが特に好ましい。感放射線性酸発生剤(II)としては上記(2)、(3)又は(4)に該当するものが好ましく、(2)又は(4)に該当する物が特に好ましい。
【0089】
これらの感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。感放射線性酸発生剤(I)の含有量の下限としては、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、ベース重合体100質量部に対して、2質量部が好ましく、6質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。感放射線性酸発生剤(I)の含有量の上限としては、放射線に対する透明性を確保する観点から、重合体100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましい。
【0090】
[溶剤]
当該感放射線性組成物は、溶剤を含有する。溶剤は、少なくともベース重合体、高フッ素含有量重合体、感放射線性酸発生剤及び所望により含有される酸拡散制御剤等を溶解又は分散可能な溶剤であれば特に限定されない。
【0091】
溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0092】
アルコール系溶剤としては、例えば、
iso-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等の炭素数1~18のモノアルコール系溶剤;
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基の一部をエーテル化した多価アルコール部分エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0093】
エーテル系溶剤としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶剤;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶剤;
上記多価アルコール系溶剤が有するヒドロキシ基をエーテル化した多価アルコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0094】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、ブタノン、メチル-iso-ブチルケトン等の鎖状ケトン系溶剤:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶剤:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0095】
アミド系溶剤としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶剤;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶剤等が挙げられる。
【0096】
エステル系溶剤としては、例えば、
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤;
γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶剤;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;
ジ酢酸プロピレングリコール、酢酸メトキシトリグリコール、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、フタル酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒が挙げられる。
【0097】
炭化水素系溶剤としては、例えば
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;
ベンゼン、トルエン、ジ-iso-プロピルベンゼン、n-アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0098】
これらの中で、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶剤、環状ケトン系溶剤、ラクトン系溶剤がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトンがさらに好ましい。当該感放射線性組成物は、溶剤を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0099】
[その他の任意成分]
当該感放射線性組成物は、上記成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、酸拡散制御剤、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0100】
(酸拡散制御剤)
当該感放射線性組成物は、必要に応じて、酸拡散制御剤を含有してもよい。酸拡散制御剤としては、上記感放射線性酸発生剤のうち感放射線性酸発生剤(II)を好適に採用することができる。酸拡散制御剤は、露光により感放射線性酸発生剤から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する。また、得られる感放射線性組成物の貯蔵安定性が向上する。さらに、レジストパターンの解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性組成物が得られる。
【0101】
酸拡散制御剤の含有量の下限としては、感放射線性酸発生剤の合計100質量部に対して、1質量部が好ましく、3質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、8質量部がさらに好ましい。
【0102】
酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。当該感放射線性組成物は、酸拡散制御剤を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0103】
[感放射線性組成物の調製方法]
上記感放射線性組成物は、例えば、ベース重合体、高フッ素含有量重合体、感放射線性酸発生剤及び溶剤、並びに必要に応じて酸拡散制御剤等を所定の割合で混合することにより調製できる。上記感放射線性組成物は、混合後に、例えば、孔径0.05μm~0.5μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。上記感放射線性組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%~50質量%であり、0.5質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0104】
《パターン形成方法》
本発明の一実施形態に係るパターン形成方法は、
上記感放射線性組成物を基板上に直接又は間接に塗布してレジスト膜を形成する工程(1)(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)と、
上記レジスト膜を露光する工程(2)(以下、「露光工程」ともいう)と、
露光された上記レジスト膜を現像する工程(3)(以下、「現像工程」ともいう)とを含む。
【0105】
上記レジストパターン形成方法によれば、現像欠陥抑制性及びLWR性能に優れるレジスト膜を形成可能な上記感放射線性組成物を用いているため、高品位のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0106】
[レジスト膜形成工程]
本工程(上記工程(1))では、上記感放射線性組成物でレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等を挙げることができる。また、例えば、特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等をあげることができる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶剤を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃~140℃であり、80℃~120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm~1,000nmが好ましく、10nm~500nmがより好ましい。
【0107】
液浸露光を行う場合、上記形成したレジスト膜上に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を避ける目的で、液浸液に不溶性の液浸用保護膜を設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶剤により剥離する溶剤剥離型保護膜(例えば、特開2006-227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005-069076号公報、WO2006-035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。
【0108】
[露光工程]
本工程(上記工程(2))では、上記工程(1)であるレジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(好ましくは水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し、露光する。露光に用いる放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、EUV(極端紫外線)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などをあげることができる。これらの中でも、遠紫外線、電子線、EUVが好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、電子線、EUVがより好ましい。
【0109】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等をあげることができる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0110】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により感放射線性酸発生剤から発生した酸による重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃~180℃であり、80℃~130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒~600秒であり、10秒~300秒が好ましい。
【0111】
[現像工程]
本工程(上記工程(3))では、上記工程(2)である上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0112】
上記現像に用いる現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等をあげることができる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0113】
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒をあげることができる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の感放射線性組成物の溶剤として列挙した溶剤の1種又は2種以上等をあげることができる。これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、グリコールエーテル系溶媒が好ましく、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチル、酢酸アミルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等をあげることができる。
【0114】
上述のように、現像液としてはアルカリ現像液、有機溶媒現像液のいずれであってもよいが、上記現像液がアルカリ水溶液を含み、得られるパターンがポジ型パターンであることが好ましい。
【0115】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等をあげることができる。
【実施例0116】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0117】
[ハンセン溶解度パラメータの算出]
まず、重合体(すなわち、ベース重合体)のハンセン溶解度パラメータを求めた。ハンセン溶解度パラメータは、重合体を構成する各単量体の分散項dD、極性項dP、水素結合項dHを、ハンセン溶解度パラメータを計算するソフトフェア(ソフト名:Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP))を用いて算出し、体積分率Vで重み付けした相乗平均として計算した。下記は単量体A及び単量体Bからなる重合体について、体積分率の算出式(1)、(2)と重合体のハンセン溶解度パラメータ算出式(3)を表した式である。
【数2】
(式中、各記号は以下を表す。
v
A、v
B:単量体A及び単量体Bの各分子体積
M
A、M
B:単量体A及び単量体Bの各モル分率
dD
A、dD
B、dD
p:単量体A、単量体B及び重合体の各分散項
dP
A、dP
B、dP
p:単量体A、単量体B及び重合体の各極性項
dH
A、dH
B、dH
p:単量体A、単量体B及び重合体の各水素結合項)
【0118】
同様に、高フッ素含有量重合体についてハンセン溶解度パラメータを求めた。得られたベース重合体のハンセン溶解度パラメータと上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータとの差ΔHSPを下記式(A)に基づいて求めた。
【数3】
(式(A)中、dD
1、dP
1及びdH
1は、上記ベース重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表し、dD
2、dP
2及びdH
2は、上記高フッ素含有量重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項及び水素結合項をそれぞれ表す。)
【0119】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定]
東ソー社のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0120】
[1H-NMR分析及び13C-NMR分析]
日本電子社の「JNM-Delta400」を用いて測定した。
【0121】
<重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。なお以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。また、本発明は下記単量体及びこれらに由来する構造単位に限定されるものでない。
【0122】
【0123】
[合成例1]
(重合体(A-1)の合成)
単量体(M-1)、単量体(M-9)及び単量体(M-11)を、モル比率が35/40/25(モル%)となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解し、開始剤としてMAIB(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル)(使用した単量体の合計100モル%に対して10モル%)を添加して単量体溶液を調製した。反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール(2,000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、60℃で24時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を得た(収率:76%)。重合体(A-1)のMwは5,300であり、Mw/Mnは1.53であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-1)、(M-9)及び(M-11)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ35.2モル%、40.1モル%及び24.7モル%であった。
【0124】
[合成例2~13]
下記表1に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例1と同様にして、重合体(A-2)~重合体(A-10)及び重合体(CA-1)~重合体(CA-3)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合(モル%)及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表1に併せて示す。なお、下記表1における「-」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す(以降の表についても同様。)。
【0125】
【0126】
[合成例14]
(高フッ素含有量重合体(E-1)の合成)
単量体(M-16)、単量体(M-17)及び単量体(M-19)を、モル比率が40/55/5(モル%)となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(7モル%)を添加して単量体溶液を調製した。反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした後、反応容器内を80℃とし、撹拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。溶媒をアセトニトリル(400質量部)に置換した後、ヘキサン(100質量部)を加えて撹拌しアセトニトリル層を回収する作業を3回繰り返した。溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、高フッ素含有量重合体(E-1)の溶液を得た(収率:69%)。高フッ素含有量重合体(E-1)のMwは4,400であり、Mw/Mnは1.75であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-16)、(M-17)及び(M-19)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ40.2モル%、55.1モル%及び4.7モル%であった。
【0127】
[合成例15]
下記表2に示す種類、単量体の配合割合及び重合開始剤の配合割合を変更したこと以外は合成例14と同様にして、高フッ素含有量重合体(E-2)を合成した。得られた高フッ素含有量重合体の各構造単位の含有割合(モル%)及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表2に合わせて示す。
【表2】
【0128】
<感放射線性組成物の調製>
各感放射線性組成物の調製に用いた[A]重合体及び[E]高フッ素含有量重合体以外の成分を以下に示す。
【0129】
[[B]感放射線性酸発生剤]
B-1:下記式(B-1)で表される化合物
【0130】
【0131】
[酸拡散制御剤]
C-1:下記式(C-1)で表される化合物。
【0132】
【化12】
[[D]溶媒]
D-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
D-2:γ-ブチロラクトン
【0133】
[ArF露光用ポジ型感放射線性組成物の調製]
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]感放射線性酸発生剤としての(B-1)12.0質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)6.0質量部、[E]高フッ素含有量重合体としての(E-1)3.0質量部(固形分)、並びに[D]溶剤としての(D-1)/(D-2)の混合溶媒3,600質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過することにより、感放射線性組成物(J-1)を調製した。
【0134】
[実施例2~20及び比較例1~6]
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感放射線性組成物(J-2)~(J-20)及び(CJ-1)~(CJ-6)を調製した。
【0135】
【表3】
<ArF露光用ポジ型感放射線性組成物を用いたレジストパターンの形成>
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に上記スピンコーターを使用して上記調製したArF露光用ポジ型感放射線性組成物(J-1)を塗布し、100℃で60秒間PB(プレベーク)を行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ100nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Dipole(σ=0.9/0.7)の光学条件にて、40nmラインアンドスペースのマスクパターンを介して露光した。露光後、95℃で60秒間PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターン(40nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0136】
<評価>
上記ArF露光用ポジ型感放射線性組成物を用いて形成したレジストパターンについて、現像後欠陥数、LWR性能を下記方法に従って評価した。[A]重合体と[E]高フッ素含有量重合体との間のΔHSP及び[A]重合体の側鎖構造中の酸素原子の数NOの炭素原子の数NCに対する比(NO/NC)を合わせて下記表4に示す。なお、レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG-5000」)を用いた。
【0137】
[LWR性能]
40nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。最適露光量を照射して40nmラインアンドスペースパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計100点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(nm)とした。LWRは、その値が小さいほど、ラインのラフネスが小さく良好であることを示す。LWR性能は、2.0nm以下の場合は「良好」と、2.0nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0138】
[現像後欠陥数]
最適露光量にてレジスト膜を露光して線幅40nmのラインアンドスペースパターンを形成し、欠陥検査用ウェハとした。この欠陥検査用ウェハ上の欠陥数を、欠陥検査装置(KLA-Tencor社の「KLA2810」)を用いて測定した。直径50μm以下の欠陥をレジスト膜由来のものと判断し、その数を算出した。現像後欠陥数は、このレジスト膜由来と判断される欠陥の数が50個以下の場合は「良好」と、50個を超える場合は「不良」と評価した。
【0139】
【0140】
表4の結果から明らかなように、実施例の感放射線性組成物は、ArF露光に用いた場合、現像後欠陥数及びLWR性能が良好であったのに対し、比較例では、各特性が実施例に比べて劣っていた。したがって、実施例の感放射線性組成物をArF露光に用いた場合、現像欠陥抑制性及びLWR性能が良好なレジストパターンを形成することができる。
上記で説明した感放射線性組成物及びパターン形成方法によれば、現像欠陥抑制性及びLWR性能に優れるレジストパターンを形成することができる。したがって、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。