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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127434
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】貨幣収納装置、及び、貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/125 20190101AFI20240912BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G07D11/125
E05B65/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036585
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 彰
(72)【発明者】
【氏名】竹村 揚一
(72)【発明者】
【氏名】下平 友志
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141DA10
3E141FC10
3E141FC11
(57)【要約】
【課題】収納庫の取り外しが適切な手順によって行われることを保証する。
【解決手段】貨幣収納装置(回収部4)は、収納庫(回収カセット5)と、収納庫を支持するベース42と、収納庫とベースとの接続と、接続の解除とを切り替える切替部6と、収納庫がベースと接続した状態において収納庫がベースから取り外されることを制限し、切替部におって接続が解除されているときに、収納庫の取り外しの制限を解除する第1制限部7と、を備えている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を収納する収納庫と、
前記収納庫が接続され、前記収納庫と接続した状態で前記収納庫を支持するベースと、
前記収納庫と前記ベースとの接続と、接続の解除とを切り替える切替部と、
前記収納庫が前記ベースと接続した状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記切替部によって前記収納庫と前記ベースとの前記接続が解除されているときに、前記収納庫の取り外しの制限を解除する第1制限部と、を備えている、貨幣収納装置。
【請求項2】
前記収納庫は、貨幣が通過する第1開口を有し、
前記ベースは、前記第1開口に接続される第2開口を通じて前記収納庫へ貨幣を送る搬送部を有し、
前記切替部は、前記第1開口と前記第2開口との接続と、接続の解除とを切り替える、請求項1に記載の貨幣収納装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記第1開口と前記第2開口との間で第1方向に貨幣を送り、
前記切替部は、前記収納庫と前記搬送部とが前記第1方向に離れるように、前記収納庫及び前記搬送部の少なくとも一方を相対移動させることにより、前記接続から前記接続の解除へ切り替える、請求項2に記載の貨幣収納装置。
【請求項4】
前記切替部は、接続している前記収納庫と前記搬送部とが前記第1方向に離れないように、前記収納庫の移動を制限する第2制限部を有している、請求項3に記載の貨幣収納装置。
【請求項5】
前記第2制限部は、コントローラーからの信号を受けた場合に、前記収納庫の移動の制限を解除するロック機構を有している、請求項4に記載の貨幣収納装置。
【請求項6】
前記第2制限部は、前記収納庫に直接又は間接的に係合する係合部と、前記係合部の係合を解除させるレバーであって、手動操作されるレバーと、を有し、
前記ロック機構は、前記レバーの操作を制限すると共に、前記コントローラーからの信号を受けた場合に、前記レバーの操作を許容する、請求項5に記載の貨幣収納装置。
【請求項7】
前記切替部は、前記収納庫を、前記収納庫と前記ベースとが接続される第1位置と、前記収納庫と前記ベースとの接続が解除される第2位置との間で移動させ、
前記第1制限部は、前記収納庫が前記第1位置に位置している状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記収納庫が前記第2位置に位置している状態において前記収納庫が前記ベースに対し取り外されることを許容する、請求項1~6のいずれか1項に記載の貨幣収納装置。
【請求項8】
前記第1制限部は、閉状態において前記収納庫の少なくとも一部を覆うことによって前記収納庫の取り外しを制限し、開状態において前記収納庫を開放することによって前記収納庫の取り外しを許容するカバーを有している、請求項7に記載の貨幣収納装置。
【請求項9】
前記第1制限部は、前記収納庫の位置と前記カバーの開閉とを連動させるリンクを有している、請求項8に記載の貨幣収納装置。
【請求項10】
前記カバーは、前記リンクが係止する係止部を有していて、前記リンクとの係止状態において閉状態から開状態への移行が制限されかつ、前記リンクとの非係止状態において閉状態から開状態への移行が許容され、
前記リンクは、前記収納庫が前記第1位置に位置している場合は前記係止部に係止し、前記収納庫が前記第2位置へ移動した場合は前記カバーに対して相対移動することによって前記係止部に非係止になる、請求項9に記載の貨幣収納装置。
【請求項11】
前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限している場合に、前記収納庫と前記ベースとが接続することを許容し、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限していない場合に、前記接続を制限する第3制限部をさらに備えている、請求項1~10のいずれか1項に記載の貨幣収納装置。
【請求項12】
前記第3制限部は、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限している場合に前記第1制限部に係合することにより、前記収納庫が前記ベースに接続する方向へ移動することを許容し、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限していない場合に前記第1制限部に係合しないことにより、前記収納庫が移動することを制限する、請求項11に記載の貨幣収納装置。
【請求項13】
貨幣を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される貨幣を収納する貨幣収納装置と、
前記搬送部及び前記貨幣収納装置へ制御信号を出力するコントローラーと、
前記貨幣収納装置を、引き出し可能に収容する筐体と、を備え、
前記貨幣収納装置は、
貨幣を収納する収納庫と、
前記収納庫に接続され、前記収納庫と接続した状態で前記収納庫を支持するベースと、
前記収納庫と前記ベースとの接続と、接続の解除とを切り替える切替部と、
前記収納庫が前記ベースと接続した状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記切替部によって前記収納庫と前記ベースとの前記接続が解除されているときに、前記収納庫の取り外しの制限を解除する制限部と、を有している、貨幣処理装置。
【請求項14】
前記貨幣収納装置は、前記搬送部により搬送された貨幣が通過する第1開口と、該第1開口を遮蔽するシャッターと、前記貨幣収納装置が前記筐体から引き出されることを制限する第1ロックと、前記切替部の切り替えを制限する第2ロックと、を有し、
前記コントローラーは、前記収納庫の取り外しの指示信号を受けた場合には、前記シャッターを閉じて前記第1開口を遮蔽しかつ、前記第1ロック及び前記第2ロックへ解除信号を出力する、請求項13に記載の貨幣処理装置。
【請求項15】
前記コントローラーは、貨幣の搬送エラーが発生した後の装置の復旧時には、前記第1ロックの解除指示信号と、前記第2ロックの解除指示信号とを個別に受けると共に、前記第1ロックの解除指示信号を受けた場合には前記第1ロックへ解除信号を出力し、前記第2ロックの解除指示信号を受けた場合には前記第2ロックへ解除信号を出力する、請求項14に記載の貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、貨幣収納装置、及び、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理装置が記載されている。この従来の紙幣処理装置は、カセットからなる収納庫を、金庫に収容している。カセットは、紙幣の長手の縁を下にして立てた姿勢で、複数の紙幣を水平に並べて収納する。カセットは、水平方向に移動させることによって、金庫の開口部から外へ引き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8485432号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紙幣処理装置は、収納庫を一方向に移動させるだけで、収納庫を装置から取り外すことができる構造を有している。従来の構造とは異なり、収納庫が装置側の特定部材に接続されていることに起因して、収納庫を装置から取り外す際に、その接続の解除が必要な構造が考えられる。この構造において、収納庫の取り外しの際に、操作者が、接続を解除せずに収納庫を装置から取り外そうとすれば、収納庫及び/又は装置側の部材の破損を招く恐れがある。収納庫の取り外しに際して、適切な手順で取り外しが実行されるような構造が求められる。
【0005】
ここに開示する技術は、収納庫の取り外しが適切な手順によって行われることを保証する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、貨幣収納装置に係る。この貨幣収納装置は、貨幣を収納する収納庫と、前記収納庫が接続され、前記収納庫と接続した状態で前記収納庫を支持するベースと、前記収納庫と前記ベースとの接続と、接続の解除とを切り替える切替部と、前記収納庫が前記ベースと接続した状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記切替部によって前記収納庫と前記ベースとの前記接続が解除されているときに、前記収納庫の取り外しの制限を解除する第1制限部と、を備えている。
【0007】
収納庫は、貨幣を収納する。貨幣は、紙幣又は硬貨である。ベースは、収納庫を支持する。ベースと収納庫とは、機械的に、及び/又は、電気的に接続されている。機械的な接続は、ベースの部位と収納庫の部位とが互いに係合していることを主に意味する。電気的な接続は、ベースと収納庫とが、例えば端子を介して接続していることを主に意味する。端子は、例えば信号の送受及び/又は電力の供給に用いられる。但し、ベースと収納庫との接続は、これらの例示に限らず、特定の機能が発揮される様々な形態を含むことができる。
【0008】
例えば、後述するように、ベースにおける搬送部の第2開口が、収納庫の第1開口に接続される。第1開口と第2開口とは機械的に接続される。
【0009】
ベースと収納庫とは接続されているため、接続を解除せずに収納庫をベースから取り外すと、ベース及び/又は収納庫が破損する恐れがある。第1制限部は、収納庫がベースから取り外されることを制限する。操作者が、接続を解除しないで収納庫を取り外そうとする誤操作を行っても、収納庫は取り外すことができない。ベース及び/又は収納庫の破損が抑制される。
【0010】
切替部は、収納庫とベースとの接続を解除する。第1制限部は、切替部によって収納庫とベースとの接続が解除されているときに、収納庫の取り外しの制限を解除する。操作者が収納庫を取り外す際に、ベースと収納庫とは接続していない。収納庫の取り外しの際に、ベース及び/又は収納庫が破損することが抑制される。貨幣収納装置は、収納庫の取り外しが適切な手順によって行われることを保証できる。
【0011】
前記収納庫は、貨幣が通過する第1開口を有し、前記ベースは、前記第1開口に接続される第2開口を通じて前記収納庫へ貨幣を送る搬送部を有し、前記切替部は、前記第1開口と前記第2開口との接続と、接続の解除とを切り替える、としてもよい。
【0012】
収納庫の第1開口と搬送部の第2開口とが接続している状態では、収納庫へ貨幣を送ることができる。収納庫の第1開口と搬送部の第2開口とが接続している状態で、収納庫が取り外されると、第1開口及び/又は第2開口が破損する恐れがある。
【0013】
収納庫が取り外される際に、切替部は、第1開口と第2開口との接続を解除する。第1開口及び/又は第2開口の破損が抑制される。
【0014】
前記搬送部は、前記第1開口と前記第2開口との間で第1方向に貨幣を送り、前記切替部は、前記収納庫と前記搬送部とが前記第1方向に離れるように、前記収納庫及び前記搬送部の少なくとも一方を相対移動させることにより、前記接続から前記接続の解除へ切り替える、としてもよい。
【0015】
収納庫と搬送部とが第1方向に近づくことによって、第1開口と第2開口とは接続し、収納庫と搬送部とが第1方向に離れることによって、第1開口と第2開口との接続は解除される。操作者は、収納庫と搬送部との相対位置に基づいて、第1開口と第2開口との接続と、接続の解除とを見分けることができる。操作者は、正しい手順で、収納庫を取り外すことができる。
【0016】
前記切替部は、接続している前記収納庫と前記搬送部とが前記第1方向に離れないように、前記収納庫の移動を制限する第2制限部を有している、としてもよい。
【0017】
第2制限部は、収納庫と搬送部との接続状態を維持させる。搬送部は、収納庫へ貨幣を安定的に送ることができる。第2制限部は、後述するように、収納庫及び/又は搬送部に係合する係合部を有してもよい。第2制限部が、収納庫及び/又は搬送部に係合している場合、収納庫及び/又は搬送部の移動が制限される。収納庫と搬送部との接続状態が維持される。第2制限部と、収納庫及び/又は搬送部との係合が解除されれば、収納庫及び/又は搬送部の移動は制限されない。収納庫と搬送部との接続が解除できる。
【0018】
前記第2制限部は、コントローラーからの信号を受けた場合に、前記収納庫の移動の制限を解除するロック機構を有している、としてもよい。
【0019】
収納庫の移動の制限が解除されると、収納庫の接続が解除できるため、収納庫をベースから取り外すことができる。第2制限部のロック機構は、コントローラーからの信号に応じてロックとロックの解除とを切り替える。ロックが解除されなければ収納庫が移動できないため、操作者は収納庫を取り外すことができない。第2制限部のロック機構は、収納庫の取り外し手順を適正にする他にも、貨幣収納装置の高いセキュリティを確保可能にする。
【0020】
前記第2制限部は、前記収納庫に直接又は間接的に係合する係合部と、前記係合部の係合を解除させるレバーであって、手動操作されるレバーと、を有し、前記ロック機構は、前記レバーの操作を制限すると共に、前記コントローラーからの信号を受けた場合に、前記レバーの操作を許容する、としてもよい。
【0021】
操作者は、レバーを操作することによって係合部の係合を解除させることができる。係合部の係合が解除されれば、収納庫は搬送部から離れるように移動できるから、収納庫と搬送部との接続が解除できる。
【0022】
ロック機構は、レバーの操作を制限する。操作者がレバーを操作できないから、収納庫と搬送部との接続が解除できない。収納庫を取り外すことができないから、ロック機構は、貨幣収納装置のセキュリティを確保できる。ロックが解除されることによってレバーの操作が許容されれば、収納庫と搬送部との接続が解除できる。操作者は、収納庫を取り外すことができる。操作者は、正しい手順に従って、収納庫をベースから取り外すことができる。
【0023】
尚、ロック機構は、レバーの操作を制限する代わりに、係合部の係合解除を制限してもよい。また、第2制限部のレバーを省略し、係合部が、コントローラーからの信号に応じて、係合状態と係合解除状態とを切り替えてもよい。
【0024】
また、係合部には、様々な形態が採用され得る。係合部は、収納庫、又は、収納庫を保持するフレームに係合するフックであってもよい。また、係合部は、収納庫、又は、収納庫を保持するフレームに係合する突起であってもよい。
【0025】
前記切替部は、前記収納庫を、前記収納庫と前記ベースとが接続される第1位置と、前記収納庫と前記ベースとの接続が解除される第2位置との間で移動させ、前記第1制限部は、前記収納庫が前記第1位置に位置している状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記収納庫が前記第2位置に位置している状態において前記収納庫が前記ベースに対し取り外されることを許容する、としてもよい。
【0026】
第1制限部は、収納庫の位置に対応して、収納庫の取り外しの制限と許容とを切り替える。収納庫の接続/非接続と、収納庫の取り外しの制限/許容とが連動する。また、操作者は、収納庫の位置を見ることによって、収納庫の取り外しが可能か否かを判断できる。正しい手順で収納庫が取り外されることが保証される。
【0027】
第1位置は、収納庫と、ベースにおける接続箇所とが近接する位置であり、第2位置は、収納庫と前記接続箇所とが離間する位置である、としてもよい。収納庫は、前記接続箇所(例えば前述した搬送部)に対して、前記第1方向に近接及び離間する、としてもよい。
【0028】
前記第1制限部は、閉状態において前記収納庫の少なくとも一部を覆うことによって前記収納庫の取り外しを制限し、開状態において前記収納庫を開放することによって前記収納庫の取り外しを許容するカバーを有している、としてもよい。
【0029】
カバーは、操作者が収納庫の取り外すことを効果的に制限できる。操作者の誤操作が抑制される。また、カバーが収納庫の取り外しを直接的に制限するため、貨幣収納装置の高いセキュリティが確保できる。尚、収納庫は、ベースに対して、第1位置と第2位置との移動方向に直交する第2方向に、取り付け/取り外しされてもよい。閉状態のカバーは、収納庫に対して第2方向に隣り合って位置し、第2方向に移動しようとする収納庫に干渉することによって、収納庫の取り外しを制限してもよい。カバーは、開状態へ移行することにより、収納庫に対して第2方向に隣り合う位置から離れて、収納庫が第2方向に移動することを許容してもよい。
【0030】
前記第1制限部は、前記収納庫の位置と前記カバーの開閉とを連動させるリンクを有している、としてもよい。
【0031】
収納庫が第1位置と第2位置との間を移動することによって収納庫の接続/非接続が切り替われば、リンクが、その切り替わりと収納庫の取り外しの制限/許容とを連動させる。収納庫を取り外す際の操作者の誤操作が抑制される。
【0032】
前記カバーは、前記リンクが係止する係止部を有していて、前記リンクとの係止状態において閉状態から開状態への移行が制限されかつ、前記リンクとの非係止状態において閉状態から開状態への移行が許容され、前記リンクは、前記収納庫が前記第1位置に位置している場合は前記係止部に係止し、前記収納庫が前記第2位置へ移動した場合は前記カバーに対して相対移動することによって前記係止部に非係止になる、としてもよい。
【0033】
リンクとカバーとの間の機械的な係止/非係止が切り替わるため、リンクがカバーに係止している状態において、操作者はカバーを開状態へ移行させることができない。リンクがカバーに係止していない状態において、操作者はカバーを開状態へ移行させることができる。第1制限部は、操作者の誤操作による収納庫の取り出しを効果的に制限できる。
【0034】
前記貨幣収納装置は、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限している場合に、前記収納庫と前記ベースとが接続することを許容し、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限していない場合に、前記接続を制限する第3制限部をさらに備えている、としてもよい。
【0035】
第3制限部は、操作者が収納庫をベースに取り付ける際に、収納庫が正しく取り付けられるよう制限する。つまり、第1制限部が収納庫の取り外しを制限していない場合、操作者は収納庫をベースに接続させることができない。第1制限部が収納庫の取り外しを制限している場合、操作者は収納庫をベースに接続できる。第3制限部は、収納庫がベースに正しく取り付けられることを保証するから、収納庫とベースとが接続されている状態においては、前述したように、収納庫の取り外しが制限される。
【0036】
前記第3制限部は、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限している場合に前記第1制限部に係合することにより、前記収納庫が前記ベースに接続する方向へ移動することを許容し、前記第1制限部が前記収納庫の取り外しを制限していない場合に前記第1制限部に係合しないことにより、前記収納庫が移動することを制限する、としてもよい。
【0037】
収納庫の取り付けの際に第3制限部と第1制限部とが連動する。この連動によって、収納庫は、正しく取り付けられる。
【0038】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置に係る。この貨幣処理装置は、貨幣を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される貨幣を収納する貨幣収納装置と、前記搬送部及び前記貨幣収納装置へ制御信号を出力するコントローラーと、前記貨幣収納装置を、引き出し可能に収容する筐体と、を備え、前記貨幣収納装置は、貨幣を収納する収納庫と、前記収納庫に接続され、前記収納庫と接続した状態で前記収納庫を支持するベースと、前記収納庫と前記ベースとの接続と、接続の解除とを切り替える切替部と、前記収納庫が前記ベースと接続した状態において前記収納庫が前記ベースから取り外されることを制限し、前記切替部によって前記収納庫と前記ベースとの前記接続が解除されているときに、前記収納庫の取り外しの制限を解除する制限部と、を有している、を有している。
【0039】
前述したように、貨幣収納装置、及び、貨幣処理装置は、収納庫の取り外しが適切な手順によって行われることを保証できる。
【0040】
前記貨幣収納装置は、前記搬送部により搬送された貨幣が通過する第1開口と、該第1開口を遮蔽するシャッターと、前記貨幣収納装置が前記筐体から引き出されることを制限する第1ロックと、前記切替部の切り替えを制限する第2ロックと、を有し、前記コントローラーは、前記収納庫の取り外しの指示信号を受けた場合には、前記シャッターを閉じて前記第1開口を遮蔽しかつ、前記第1ロック及び前記第2ロックへ解除信号を出力する、としてもよい。
【0041】
例えば収納庫に収納された貨幣を回収する際に、操作者が操作部への入力操作により収納庫の取り外しを指示すれば、コントローラーは、シャッターを閉じて第1開口を遮蔽すると共に、第1ロック及び第2ロックへ解除信号を出力する。操作者は、貨幣収納装置を装置筐体の外へ引き出すと共に、切替部の切り替えによって接続が解除された収納庫を、ベースから取り外すことができる。
【0042】
収納庫の取り外しが指示された場合に、収納庫の第1開口は閉じる。ベースから取り外された収納庫内へのアクセスが阻止されるため、収納庫は高いセキュリティを保つことができる。また、第1開口が閉じているから、ベースから取り外された収納庫の第1開口から貨幣が外に出てしまうことが抑制できる。
【0043】
前記コントローラーは、貨幣の搬送エラーが発生した後の装置の復旧時には、前記第1ロックの解除指示信号と、前記第2ロックの解除指示信号とを個別に受けると共に、前記第1ロックの解除指示信号を受けた場合には前記第1ロックへ解除信号を出力し、前記第2ロックの解除指示信号を受けた場合には前記第2ロックへ解除信号を出力する、としてもよい。
【0044】
搬送エラーが発生した後の装置の復旧は、一般的には、特別な権限を有する操作者であって、復旧手順を知っている操作者が行う。操作者は、搬送エラーの状況と、その状況に対応する復旧手順に従って、第1ロックの解除指示、及び、第2ロックの解除指示を、操作部への入力操作により個別に行う。コントローラーは、第1ロックの解除指示信号と、第2ロックの解除指示信号とを個別に受ける。コントローラーが、第1ロックの解除指示信号、及び/又は、第2ロックの解除指示信号に基づいて、第1ロックへの解除信号、及び/又は、第2ロックへの解除信号を出力する。このことによって、操作者は、解除が必要なロックのみを解除できるから、スムースかつ、誤操作せずに、装置を復旧できる。コントローラーは、操作部へ、第1ロックの解除指示、および、第2ロックの解除指示を個別に行うための表示を指示してもよい。操作部への操作者からの入力に基づいて、特別な権限を有する場合に、前記表示を指示してもよい。搬送エラーが発生していない場合には、前記表示をしないようにしてもよい。もしくは、搬送エラーが発生していない場合には、個別のロック解除指示を受け付けないようにしてもよい。
【0045】
尚、搬送エラーが発生した後の装置の復旧時には、収納庫は、前記の開口を閉じなくてもよい。例えば復旧のために、開口付近の貨幣を取り除く場合もあるためである。復旧を行う操作者は特別な権限を有しているため、開口が開いたままの収納庫がベースから取り外されても、セキュリティは保たれる。
【発明の効果】
【0046】
前述した貨幣収納装置、及び、貨幣処理装置は、収納庫の取り外しが適切な手順によって行われることを保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、貨幣処理装置の外観を示している。
図2図2は、貨幣処理装置の内部構造を示している。
図3図3は、貨幣処理装置のブロック図である。
図4図4は、回収部の内部構造を示している。
図5図5は、回収部の平面図である。
図6図6は、切替部の平面図である。
図7図7は、切替部の側面図である。
図8図8は、第1制限部を示している。
図9図9は、カバーとリンク部材との係止/非係止を示している。
図10図10は、回収カセットの取り外し手順を示している。
図11図11は、回収カセットの取り外しに関する制御手順を示している。
図12図12(a)(b)は、インターフェース部に表示される画面例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、貨幣収納装置及び貨幣処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する貨幣収納装置及び貨幣処理装置は例示である。
【0049】
(貨幣処理装置の全体構造)
図1は、貨幣処理装置1の外観を示している。図2は、貨幣処理装置1の内部の構造を模式的に示している。貨幣処理装置1は、紙幣に関する処理を行う装置である。貨幣処理装置1は、紙幣の入金処理、及び/又は、紙幣の出金処理を行う。貨幣処理装置1は、例えば小売店といった店舗のバックオフィスに設置される。尚、貨幣処理装置1は、例えば銀行といった金融機関に設置されてもよい。
【0050】
尚、以下の説明において、図1の紙面左手前を前、紙面右奥を後と呼ぶ場合がある。貨幣処理装置1の前は、利用者が、貨幣処理装置1を利用する際に位置する側であり、貨幣処理装置1の後は、それとは逆側である。また、図1の紙面左奥を左、紙面右手前を右と呼ぶ場合がある。貨幣処理装置1の左は、貨幣処理装置1を利用している利用者を基準にした左であり、貨幣処理装置1の右は、それとは逆側である。以下の説明の前、後、左、右、上、下は、貨幣処理装置1の構造を限定しない。
【0051】
貨幣処理装置1は、上部筐体11を有している。貨幣処理装置1は、下部筐体12を有している。下部筐体12は、上部筐体11の下側に位置している。下部筐体12は、金庫の構造を有している。図2に示すように、下部筐体12は、第1領域122と第2領域123とに分かれている。
【0052】
下部筐体12は、扉121を有している。図1又は図2の例において、扉121は、下部筐体12の前に位置している。尚、扉121の位置は、下部筐体12の前に限定されない。扉121が開くと下部筐体12の内部が開放される。扉121は錠を有している。錠は、シリンダ錠又は電子錠である。扉121を開けることは金庫を開けることである。特別な権限を有する者、例えば管理者は、扉121を開けることができる。
【0053】
貨幣処理装置1は、インターフェース部21を有している。インターフェース部21は、貨幣処理装置1の利用者に様々な情報を提供すると共に、利用者の様々な入力操作を受け付ける。インターフェース部21は、操作部の一例である。図1において、インターフェース部21は、タッチ機能を有するフラットパネルディスプレイである。フラットパネルディスプレイは、上部筐体11の上面に、支持アームを介して、取り付けられている。尚、インターフェース部21は、タッチ機能を有するフラットパネルディスプレイに限らない。
【0054】
尚、インターフェース部21は、外部装置からの信号を受信する受信機であってもよい。利用者が外部の操作装置を操作することにより、外部装置はインターフェース部21へ信号を送信し、インターフェース部21は該信号を受信する。
【0055】
インターフェース部21は、いずれの構造においても、利用者の操作に対応する信号を、後述する上部CPU20へ出力する。
【0056】
貨幣処理装置1は、入金部22を有している。入金部22は、入金口221を有している。入金口221は、上部筐体11に開口している。利用者は、入金しようとする紙幣を入金口221へ投入する。入金部22は、投入された紙幣を入金口221から上部筐体11の中へ一枚ずつ送り出す。
【0057】
貨幣処理装置1は、出金部23を有している。出金部23は、出金口231を有している。出金口231は、上部筐体11に開口している。出金される紙幣は、出金口231へ払い出される。利用者は、出金口231へ払い出された紙幣を手で出金口231から取り出すことができる。
【0058】
貨幣処理装置1は、カセット装着部24を有している。カセット装着部24は、図2に示すように、上部筐体11に設けられかつ、装着カセット25が、着脱可能に装着される構造を有している。装着カセット25は、紙幣の収納と、収納している紙幣の繰り出しと、を行う。装着カセット25は、入金処理、及び/又は、出金処理に用いられる場合がある。尚、ここでいう入金処理は、紙幣を金庫に収納する広義の意味での入金処理であり、出金処理は、金庫の紙幣を装置外に払い出す広義の意味での出金処理である。
【0059】
貨幣処理装置1は、識別部26を有している。識別部26は、貨幣処理装置1が処理を行う紙幣を識別する。識別部26は、すくなくとも、紙幣の金種、真偽、及び、正損を識別し、その識別信号を出力する。
【0060】
貨幣処理装置1は、一時保留部27を有している。一時保留部27は、例えば入金処理において、入金される紙幣を一時的に収納する。一時保留部27は、例えば紙幣をテープと共にドラムに巻き取る巻き取り式の収納部としてもよい。
【0061】
貨幣処理装置1は、第1リジェクト部28及び第2リジェクト部29を有している。これらのリジェクト部28、29は、識別部26がリジェクト紙幣であると判断した紙幣を収納する。
【0062】
貨幣処理装置1は、第1搬送部210を有している。第1搬送部210は、上部筐体11の内部に位置している。第1搬送部210は、搬送路を有している。搬送路は、ローラ、ベルト、これらを駆動するモータ、及び、ガイドの組み合わせによって構成されている。図2において搬送路は、太い実線で示されている。搬送路は、前述した、入金部22、出金部23、カセット装着部24、識別部26、一時保留部27、第1リジェクト部28、第2リジェクト部29を互いに接続している。紙幣は、搬送路に沿って搬送される。
【0063】
第1搬送部210の搬送路の途中には、方向変換部211が位置している。方向変換部211は、カセット装着部24と識別部26との間で搬送中の紙幣の姿勢を変換する。紙幣の姿勢は、長辺を前にした姿勢と、短辺を前にした姿勢と、の間で変換される。
【0064】
貨幣処理装置1は、収納部3を有している。収納部3は、第1~第8収納カセット31~38を有している。第1~第8収納カセット31~38は、下部筐体12の第1領域122の中に位置している。第1~第8収納カセット31~38はそれぞれ、紙幣を収納すると共に、収納している紙幣を繰り出す。第1~第8収納カセット31~38はそれぞれ、例えば巻き取り式の収納カセットである。尚、第1~第8収納カセット31~38は、紙幣を重ねて収納するスタック式の収納カセットであってもよい。第1~第8収納カセット31~38に収納される紙幣の金種は、予め定められている。
【0065】
貨幣処理装置1は、第2搬送部39を有している。第2搬送部39は、下部筐体12の第1領域122の内部に位置している。第2搬送部39は、搬送路を有している。第2搬送部39の搬送路は、第1搬送部210の搬送路に接続されていると共に、前述した、第1~第8収納カセット31~38を互いに接続している。
【0066】
貨幣処理装置1は、回収部4を有している。回収部4は、貨幣収納装置の一例である。回収部4は、下部筐体12の第2領域123の中に位置している。回収部4は、回収カセット5を装着することができる。回収カセット5は、収納庫の一例である。回収カセット5は、回収処理において用いられる。回収処理は、第1~第8収納カセット31~38に収納されている紙幣を、貨幣処理装置1から回収する処理である。回収カセット5の構造の詳細は後述する。
【0067】
回収部4はまた、第3搬送部41を有している。第3搬送部41は、下部筐体12の第2領域123の内部に位置している。第3搬送部41は、第1搬送部210及び第2搬送部39の搬送路に接続されている。第3搬送部41はまた、回収カセット5に接続されている。第3搬送部41は、回収カセット5へ紙幣を送る。第3搬送部41の構造の詳細は後述する。
【0068】
回収カセット5は、貨幣処理装置1に対して、着脱可能に装着されている。より詳細に、回収部4は、図2に示すように、ベース42を有している。回収カセット5は、ベース42に着脱可能に装着される。第3搬送部41は、ベース42の上に固定されている。
【0069】
下部筐体12の扉121が開けられて第2領域123が開放された状態において、管理者は、ベース42を、第2領域123の外へ引き出すことができる(図2の白抜きの矢印参照)。図2の例において、ベース42は、貨幣処理装置1の前方へ引き出される。第3搬送部41及び回収カセット5は、ベース42と共に、第2領域123の外へ引き出される。
【0070】
ベース42が第2領域123の外へ引き出された後、管理者は、回収カセット5を上方へ持ち上げることによって、回収カセット5をベース42から取り外すことができる(図2の黒矢印参照)。
【0071】
尚、回収カセット5を貨幣処理装置1へ装着する場合に、管理者は、前記とは逆に、回収カセット5を上から下へ降ろすことによって、回収カセット5をベース42に取り付ける。その後、管理者は、ベース42を、下部筐体12の第2領域123の中へ押し込むことによって、ベース42と共に、第3搬送部41及び回収カセット5を第2領域123の中に収容できる。尚、回収カセット5とベース42との装着構造の詳細は、後述する。
【0072】
回収部4は、第1電磁ロック43を有している。第1電磁ロック43は、ベース42に係合して、ベース42の引き出しを制限するロック機構である。第1電磁ロック43は、後述する回収部CPU40からの解除信号を受けて、ロックを解除する。第1電磁ロック43がロックを解除すれば、ベース42の引き出しが可能になる。
【0073】
図3は、貨幣処理装置1の制御に関係する構造を示すブロック図である。貨幣処理装置1は、上部CPU(Central Processing Unit)20を有している。上部CPU20には、インターフェース部21、入金部22、出金部23、カセット装着部24、識別部26、一時保留部27、第1リジェクト部28、第2リジェクト部29、第1搬送部210、及び、方向変換部211が、電気的に接続されている。上部CPU20は、インターフェース部21、入金部22、出金部23、カセット装着部24、識別部26、一時保留部27、第1リジェクト部28、第2リジェクト部29、第1搬送部210、及び、方向変換部211へ制御信号を出力できる。
【0074】
貨幣処理装置1は、下部CPU30を有している。下部CPU30には、上部CPU20、収納部3、及び、第2搬送部39が、電気的に接続されている。下部CPU30は、収納部3、及び、第2搬送部39へ制御信号を出力できる。
【0075】
貨幣処理装置1は、回収部CPU40を有している。回収部CPU40には、上部CPU20、下部CPU30、第3搬送部41、回収カセット5、及び、第1電磁ロック43が、電気的に接続されている。回収部CPU40にはまた、第2電磁ロック47が、電気的に接続されている。第2電磁ロック47は、詳細は後述するが、回収カセット5のベース42からの取り外しを制限するロック機構である。回収部CPU40は、第3搬送部41、回収カセット5、第1電磁ロック43、及び、第2電磁ロック47へ制御信号を出力できる。上部CPU20、下部CPU30、及び/又は、回収部CPU40は、コントローラーの一例である。上部CPU20、下部CPU30、及び/又は、回収部CPU40は、メモリに予め記憶されている対応するプログラムを展開して実行することにより、各部を制御して、貨幣処理装置1の機能及び動作を実現する。
【0076】
貨幣処理装置1は、利用者がインターフェース部21を介して操作入力することに応じて、様々な処理を実行する。具体的に、利用者が、インターフェース部21を通じて入金処理の実行を指示した場合、貨幣処理装置1は、入金部22に投入された紙幣、又は、装着カセット25内の紙幣を、第1~第8収納カセット31~38へ収納する処理を実行する。また、利用者が、インターフェース部21を通じて出金処理の実行を指示した場合、貨幣処理装置1は、第1~第8収納カセット31~38に収納されている紙幣を、出金部23へ払い出す、又は、装着カセット25に収納する処理を実行する。
【0077】
さらに、利用者が、インターフェース部21を通じて回収処理の実行を指示した場合、貨幣処理装置1は、第1~第8収納カセット31~38のいずれか一つ又は複数に収納されている紙幣を、回収カセット5に収納する処理を実行する。回収カセット5に紙幣が収納された後、回収カセット5は、貨幣処理装置1から取り外される。回収カセット5の取り外しの手順は後述する。
【0078】
(回収部の構造)
図4は、回収部4の構造を模式的に示している。尚、図4の左右の向きは、図2の左右の向きに対して反転している。
【0079】
ベース42は、前後方向に延びている。換言すれば、ベース42は、回収部4の、貨幣処理装置1に対する引き出し/押し込み方向に延びている。第3搬送部41は、ベース42の第1側、つまり前側に位置し、回収カセット5は、ベース42の第2側、つまり後側に位置している。第3搬送部41と回収カセット5とは、前記の引き出し/押し込み方向に隣り合っている。尚、第3搬送部41と回収カセット5との並び方向は、特定の方向に限定されない。
【0080】
第3搬送部41は、搬送路411を有している。搬送路411の第1端は、第3搬送部41の上面に開口している。搬送路411の第1端は、第2搬送部39の搬送路に接続される。搬送路411の第2端は、集積空間412に接続されている。搬送路411は、第1端と第2端との間で、後述するプッシャー413を迂回するように配設されている。
【0081】
集積空間412は、開口414を有している。開口414は、後述する回収カセット5の第1開口52と接続される第2開口414である。第2開口414は、回収カセット5の方を向いている。つまり、集積空間412の第2開口414は、第3搬送部41の後面において後方を向いている。
【0082】
集積空間412は、第1方向に延びている。第1方向は、第3搬送部41から回収カセット5へ紙幣を送る方向である。第1方向は、この貨幣処理装置1においては、前後方向に対応すると共に、前記の引き出し/押し込み方向に対応する。搬送路411の第2端は、集積空間412の下面に接続されている。搬送路411に沿って集積空間412へ搬送された紙幣は、図4の上図に示すように、集積空間412の中において、長辺の縁を下にして立った姿勢で、第1方向に並んで集積される。
【0083】
第3搬送部41は、プッシャー413を有している。プッシャー413は、集積空間412における前側(つまり、第1方向の第1側)に位置している。プッシャー413は、第1方向に往復移動する。
【0084】
第3搬送部41は、ストッパ417を有している。ストッパ417は、集積空間412における後側(つまり、第1方向の第2側)に位置している。ストッパ417は、第2開口414を塞ぐ位置と、第2開口414を開放する位置とに移動可能である(図4の上図の矢印参照)。ストッパ417が第2開口414を塞いだ状態で、集積空間412の中に集積されている紙幣は、ストッパ417とプッシャー413との間に保持される。
【0085】
回収カセット5は、矩形の箱状である。回収カセット5は、図4の例では、第1方向に延びる向きで、ベース42に対し装着される。
【0086】
回収カセット5は、収納空間51を有している。収納空間51は紙幣を収納する。収納空間51は、第1方向に延びている。収納空間51内には、ステージ54が位置している。ステージ54は、紙幣の収納量に応じて、収納空間51の中を第1方向に移動する。
【0087】
収納空間51は、第1開口52を有している。第1開口52は、第3搬送部41の第2開口414に接続される。第1開口52は、第3搬送部41の方を向いている。つまり、第1開口52は、回収カセット5の前面において前方を向いている。
【0088】
第1開口52には、ガイド53が設けられている。ガイド53は、第1開口52と第2開口414とが接続した状態において、第1開口52と第2開口414との間に介在することにより、第2開口414から第1開口52へ送られる紙幣を案内する。
【0089】
第3搬送部41から回収カセット5へ紙幣を送る際に、ストッパ417は、第2開口414を開放する位置に移動し、プッシャー413は、集積空間412内の紙幣を、回収カセット5の方へ押す(図4の上図の白抜きの矢印参照)。紙幣は、第2開口414及び第1開口52を第1方向に通過して回収カセット5の収納空間51の中へ送られる。収納空間51の中において紙幣は、長辺の縁を下にして立った姿勢で、第1方向に並ぶ。
【0090】
回収カセット5は、ストッパ55を有している。ストッパ55は、収納空間51に収納されている紙幣を、ステージ54との間に押さえる機能を有している。ストッパ55は、収納空間51内に位置して紙幣を押さえる押さえ位置(図4の下図参照)と、収納空間51の外に位置する退避位置(図4の上図参照)との間で向きを変更する。回収カセット5が、ベース42に対して取り付け、及び、取り外しされる際に、ストッパ55は押さえ位置に位置づけられ、回収カセット5が、ベース42に対して装着されている状態において、ストッパ55は退避位置に位置づけられる。
【0091】
回収カセット5は、図4の下図に示すように、シャッター56を有している。シャッター56は、第1開口52を開閉する。基本的には、回収カセット5が、ベース42に対して取り付け、及び、取り外しされる際に、シャッター56は第1開口52を閉じ、回収カセット5が、ベース42に対して装着されている状態において、シャッター56は第1開口52を開ける。シャッター56は、回収カセット5が、ベース42に対して取り付け、及び、取り外しされる際に、収納空間51に収納されている紙幣が、第1開口52から外へ出ることを制限する。
【0092】
ベース42は、フレーム44を有している(図5図8図9又は図10も参照)。フレーム44は、回収カセット5を保持する。フレーム44は、回収カセット5が第1方向に直交する第2方向へ着脱可能となるよう回収カセット5を保持する。第2方向は、上下方向に対応する。
【0093】
フレーム44は、図例では、一対の側壁441、441と、一つの後壁442とを有している。一対の側壁441、441は、回収カセット5の右側及び左側のそれぞれにおいて、回収カセット5の側面を支持する。後壁442は、回収カセット5の後側において、回収カセット5の後面を支持する。尚、回収カセット5の後面は、回収カセット5の第1開口52が形成された面に対して逆側の面である。
【0094】
フレーム44は、スライダ46を介してベース42に取り付けられている。スライダ46は、第1方向に延びている。フレーム44は、スライダ46によって、ベース42に対し第1方向に相対移動する。フレーム44の相対移動に伴い、フレーム44に保持されている回収カセット5は、図4の上図に示すように、第3搬送部41に係合する第1位置と、図4の下図に示すように、第3搬送部41との係合が解除される第2位置との間で、第1方向に移動する。第1位置において、回収カセット5の第1開口52と第3搬送部41の第2開口414とは接続される。第2位置において、第1開口52と第2開口414との接続は解除される。
【0095】
ベース42とフレーム44との間には、第1付勢部材45が介在している。第1付勢部材45は、例えば圧縮又は引っ張りコイルばねである。第1付勢部材45は、回収カセット5と第3搬送部41とが接続している状態において、フレーム44が第3搬送部41に対して離れる方向に、フレーム44を付勢している。後述するように、回収カセット5と第3搬送部41との接続が解除されると、フレーム44及び回収カセット5は、第1付勢部材45の付勢力によって、第3搬送部41から離れる方向へ移動する(図4の黒矢印参照)。フレーム44及び回収カセット5が後方へ移動すると、図4の下図に示すように、ガイド53の、第3搬送部41に対する係合が解除される。
【0096】
(回収カセットの取り外しが適切な手順によって行われることを保証する構造)
回収カセット5は、前述したように、ベース42に対して、紙幣の送り方向である第1方向に直交する第2方向、つまり、上下方向に着脱される。また、貨幣処理装置1の動作時には、回収カセット5と第3搬送部41とは、第1開口52と第2開口414とが接続しており、第1開口52と第2開口414との間には、ガイド53が係合している。回収カセット5をベース42から取り外す際に、操作者が、第1開口52と第2開口414とが接続しかつ、ガイド53が第3搬送部41に係合した状態のままで回収カセット5を上方に引き上げようとすると、ガイド53が第3搬送部41と干渉して、回収カセット5及び/又は第3搬送部41が破損する恐れがある。
【0097】
そこで、貨幣収納装置である回収部4は、特定の構造を有している。この特定の構造が、回収カセット5の着脱が適切な手順によって行われることを保証し、回収カセット5及び/又は第3搬送部41の破損を抑制する。以下、特定の構造の詳細を、図面を参照しながら説明する。
【0098】
図5は、回収部4の平面図である。回収部4は、切替部6を有している。切替部6は、第1開口52と第2開口414との接続と、接続の解除とを切り替える。前述したように、第1開口52と第2開口414との接続と、接続の解除とは、回収カセット5が第1方向に移動することに依る。回収カセット5及びフレーム44を、ベース42に対して相対移動可能にするスライダ46(図4等参照)は、切替部6を構成する。
【0099】
図6は、図5における一点鎖線の四角で囲んだ箇所を拡大した拡大平面図である。図6は、切替部6の平面図である。図7は、切替部6の側面図である。
【0100】
切替部6は、フック61を有している。フック61は、第3搬送部41の側方に位置している。フック61は、ベース42に取り付けられている。フック61は、フレーム44に取り付けられたピン49に係合する。ピン49は、フレーム44の前端部に位置している。フック61がピン49に係合すると、回収カセット5は、第3搬送部41に近接した位置になり、第1開口52と第2開口414とが接続される。前述したように、フレーム44は、第1付勢部材45によって、ベース42に対して後方へ付勢されているため、フック61は、第1付勢部材45の付勢力に対抗して、フレーム44及びフレーム44に保持された回収カセット5を、第3搬送部41に近接した第1位置に保持している。フック61は、係合部の一例である。
【0101】
切替部6は、レバー62を有している。レバー62は、操作者が手動で操作をするレバーである。レバー62の下端は、左右方向に延びる第1軸63に支持されている。レバー62は、図7に実線で示す起立した位置と、二点鎖線で示す前方へ倒れた位置とに切り替わる。フック61は、レバー62の下端に一体に設けられている。レバー62が起立した位置にある場合、フック61は、ピン49に係合する。レバー62が倒れた位置にある場合、フック61は上方へ移動することにより、ピン49との係合が解除される。
【0102】
図6に示すように、レバー62には、第2付勢部材64が接続されている。第2付勢部材64は、例えば引っ張りコイルばねである。第2付勢部材64は、レバー62が倒れた位置にある場合に、レバー62が起立した位置となるように、レバー62を付勢する。第2付勢部材64により、フック61はピン49に係合した状態を維持する。切替部6は、回収カセット5と第3搬送部41とが係合した状態を維持できる。
【0103】
回収カセット5と第3搬送部41との係合を解除する場合、操作者は、第2付勢部材64の付勢力に対抗して、レバー62を前方へ倒す。フック61がピン49から外れる。第1付勢部材45が、フレーム44を後方へ移動させる。その結果、回収カセット5が第3搬送部41から離れて、第1開口52と第2開口414との接続が解除される(図4参照)。
【0104】
切替部6は、第2電磁ロック47を有している。第2電磁ロック47は、レバー62の操作を制限するロック機構である。図例の第2電磁ロック47は、進退するロッド471を有するソレノイドアクチュエータである。尚、第2電磁ロック47は、ロッド471を有するソレノイドアクチュエータに限定されない。第2電磁ロック47は、ロッド471が略前後方向に進退する向きで、ベース42に固定されている。
【0105】
ロッド471の先端は、ベルクランク48に接続されている。ベルクランク48は、上下方向に延びる第2軸481に支持されている。ロッド471の進退によって、ベルクランク48は、第2軸481を中心に回動する。
【0106】
ベルクランク48の先端は、起立しているレバー62の上方において、レバー62と干渉する位置に位置している(図6の実線参照)。レバー62とベルクランク48とが干渉する場合、操作者は、レバー62を倒すことができない。レバー62の操作が制限される。
【0107】
第2電磁ロック47のロッド471の進退によってベルクランク48が回動すると、図6に二点鎖線で示すように、ベルクランク48の先端が、レバー62の上方から移動して、ベルクランク48とレバー62との干渉が解消される。この状態では、操作者は、レバー62を倒すことができる。
【0108】
第2電磁ロック47は、非通電時には、レバー62の操作を制限する。回収部CPU40からの解除信号を受けて、第2電磁ロック47は、レバー62の操作の制限を解除する。
【0109】
フック61、レバー62、及び、第2電磁ロック47は、第2制限部60を構成する。第2制限部60は、接続状態の回収カセット5と第3搬送部41とが第1方向に離れないように、回収カセット5の移動を制限する。
【0110】
回収部4は、第1制限部7を有している。第1制限部7は、図5図8又は図10に示すように、閉状態において回収カセット5の少なくとも一部を覆うことによって回収カセット5の取り外しを制限し、図10に示すように、開状態において回収カセット5を開放することによって回収カセット5の取り外しを許容するカバーである。図5又は図8に示すように、第1制限部7は、基端部71と、中間部72と、先端部73とを有している。
【0111】
基端部71は、フレーム44の右側の側壁441に取り付けられている。基端部71は、前後方向に延びる軸に支持されている。第1制限部7は、図10に示すように、回収カセット5の上面の一部を覆う位置と、回収カセット5の上面を開放する位置との間で、回動できる。
【0112】
中間部72は、基端部71と先端部73とを左右方向に連結する。第1制限部7が閉状態にある場合に、中間部72は、回収カセット5の上側に位置する。中間部72と回収カセット5とは第2方向に隣り合う。中間部72と回収カセット5とが干渉することによって、第1制限部7は、回収カセット5の取り外しを制限する。
【0113】
先端部73は、図8に示すように、第1制限部7が閉状態にある場合、フレーム44の左側の側壁441の近傍に位置する。左側の側壁441には、マグネット443が取り付けられている。先端部73は、マグネット443に吸着される。第1制限部7は、閉状態を維持する。
【0114】
先端部73は、係止部731を有している(図5の拡大図参照)。係止部731は、先端部73の前側、つまり、第3搬送部41側に開口する溝である。係止部731には、後述するリンク部材8の先端が係止する。係止部731にリンク部材8が係止した係止状態では、先端部73は上方へ移動することができない。つまり、第1制限部7は、閉状態から開状態へ移行することができない。後述するように、係止部731にリンク部材8が係止していない非係止状態では、先端部73は上方へ移動することができ、第1制限部7は、閉状態から開状態へ移行することができる。係止部731の溝形状は一例であり、これに限定されない。係止部731は、リンク部材8の先端よりも下側の位置において、先端部73から突出する軸形状であって、軸にリンク部材8の先端が係合して先端部73の上方への移動を制限する構成であってもよい。係止部731は、先端部73から中間部72の向きへ突出する軸形状であってもよい。
【0115】
リンク部材8は、フレーム44に取り付けられている。リンク部材8は、左側の側壁441の側方において、第1制限部7の前側に位置している。リンク部材8は、前後方向、つまり第1方向に延びる板状の部材である。リンク部材8は、第1制限部7と第3搬送部41との間において、第1制限部7と第3搬送部41とを架け渡すように配置されている。リンク部材8は、その前後の二箇所にそれぞれ、長孔81を有している。長孔81はそれぞれ前後方向に延びている。長孔81には、側壁441に固定された支持ピン444が挿入されている。リンク部材8は、側壁441に支持される。リンク部材8はまた、フレーム44に対して前後方向に相対移動できる。
【0116】
リンク部材8には、第3付勢部材82の第1端が取り付けられている。第3付勢部材82の第2端は、支持部材83に取り付けられている。支持部材83は、フレーム44の側壁441の前端部に固定されている。第3付勢部材82は、例えば前後方向に延びる引っ張りコイルばねであってもよい。第3付勢部材82は、伸長した場合に、リンク部材8を、前方、つまり、第1制限部7から離れる方へ付勢する。
【0117】
第3搬送部41の後端部には、当接部材415が取り付けられている。当接部材415は、後方を向いた当接面416を有している(図9も参照)。当接面416には、リンク部材8の基端、つまり、前後方向に延びるリンク部材8の前端が当接する。より詳細には、フレーム44を前方に移動させて、回収カセット5と第3搬送部41とが接続した状態において、リンク部材8の基端は、当接面416に当接する。この状態で、リンク部材8の先端、つまり、リンク部材8の後端は、前述した第1制限部7の係止部731に係止する。回収カセット5と第3搬送部41とが接続した状態において、係止部731から当接面416までの距離は、リンク部材8の前後の長さに対応している。尚、リンク部材8の先端が係止部731に係止している係止状態において、第3付勢部材82は前後方向に伸長しており、リンク部材8には、第3付勢部材82による前方への付勢力が作用している。
【0118】
図9の上図に示すように、回収カセット5が第3搬送部41に係合している状態においては、リンク部材8の先端が第1制限部7の係止部731に係止している。操作者が、第1制限部7の先端部73を上方へ持ち上げようとしても、リンク部材8と先端部73との干渉によって、先端部73を上方へ持ち上げることはできない。第1制限部7が閉位置にあるため、操作者は、回収カセット5をフレーム44から上方へ取り外すこともできない。さらに、回収カセット5を上方へ持ち上げるための取っ手を回収カセットの上側に設け、第1制限部7をその閉位置で取っ手を覆うように設けてもよい。
【0119】
回収カセット5が第3搬送部41に係合している状態から、回収カセット5を取り外す場合、前述したように、操作者は、切替部6のレバー62を倒して、フック61とピン49との係合を外す(図9の下図参照)。尚、ここでは、第2電磁ロック47は解除されているとする。
【0120】
フック61とピン49との係合が解除されれば、ベース42とフレーム44との間の第1付勢部材45が、フレーム44をベース42に対して相対的に後方へと移動させる。フレーム44が後方へ移動すれば、フレーム44に取り付けられている第1制限部7の先端部73と、第3搬送部41に固定されている当接部材415との間隔が広がる。リンク部材8は、前述したように、第3付勢部材82によって前方へ付勢されているため、後方へ移動するフレーム44に対して、相対的に前方へ移動する。その結果、リンク部材8の先端が、先端部73の係止部731から外れる。リンク部材8と第1制限部7とが干渉しないため、操作者は、先端部73を上方へ持ち上げることができる。第1制限部7を開位置へと回動させることにより、操作者は、回収カセット5を、フレーム44から上方へ取り外すことができる。
【0121】
フレーム44の左側の側壁441にはまた、第3制限部9が取り付けられている。第3制限部9は、回収カセット5の取り付けが所定の手順で行われるよう、制限する。具体的に、第3制限部9は、第1制限部7が回収カセット5の取り外しを制限している状態、換言すれば、第1制限部7が閉位置にある場合において、フレーム44を前方に移動させて、回収カセット5と第3搬送部41との係合を可能にする一方、第1制限部7が回収カセット5の取り外しを制限していない状態、換言すれば、第1制限部7が閉位置にない場合において、フレーム44を前方に移動させることを制限する。
【0122】
第3制限部9は、図8に示すように、ストッパ91を有している。ストッパ91は、リンク部材8の先端の近傍に位置している。ストッパ91は、上下方向に延びている。ストッパ91は、その上部と下部との2箇所に長孔92を有している。長孔92はそれぞれ上下方向に延びている。長孔92には、側壁441に固定された支持ピン445が挿入されており、ストッパ91は、側壁441に支持される。ストッパ91はまた、フレーム44に対して上下方向に相対移動できる。
【0123】
ストッパ91には、第4付勢部材93の第1端が取り付けられている。第4付勢部材93の第2端は、取付部材94に取り付けられている。取付部材94は、側壁441に固定されている。第4付勢部材93は、例えば上下方向に延びる引っ張りコイルばねであってもよい。第4付勢部材93が収縮すれば、第4付勢部材93は、ストッパ91を、上方へ付勢する。
【0124】
第1制限部7の先端部73が、マグネット443に吸着している場合、ストッパ91の上端は、先端部73に当たって下向きに押される(図9の上図参照)。この状態では、ストッパ91は、リンク部材8と干渉せず、フレーム44は、第3搬送部41に向かって前方へ移動することができる。尚、ストッパ91の上端部は、リンク部材8の先端部に形成された切欠部85に対応する位置に位置している。フレーム44が前方へ移動する結果、回収カセット5と第3搬送部41とが接続され、リンク部材8の先端は、先端部73の係止部731に係止できる。
【0125】
一方、第1制限部7の先端部73が、マグネット443に吸着していない場合、図9の下図に実線で示すように、ストッパ91は、第4付勢部材93の付勢力によって上方へ移動する。尚、第1制限部7が閉位置にない場合、フレーム44は、第3搬送部41に対して離れている。上方へ移動したストッパ91の上端部は、リンク部材8の前端部に形成された段差84に係合する。段差84は、切欠部85の後ろにおいて、切欠部85の上方に位置している。
【0126】
この状態でフレーム44を第3搬送部41の方へ移動させようとしても、ストッパ91とリンク部材8との干渉によってフレーム44を移動させることができない。
【0127】
一方、第1制限部7を閉位置にして、先端部73がマグネット443に吸着されると、ストッパ91が先端部73に押されて下方へ移動する(図9の下図の二点鎖線参照)。ストッパ91が下方へ移動すれば、ストッパ91が段差84とは干渉しないため、フレーム44を、前方へ移動させることができ、回収カセット5は第3搬送部41に係合する。
【0128】
第3制限部9は、回収カセット5の装着の際に、所定の手順で装着させるように制限できる。
【0129】
次に、図10の遷移図を参照しながら、貨幣処理装置1の下部筐体12の外へ引き出した回収部4から、回収カセット5を取り外す手順を説明する。第2電磁ロック47は解除されているとする。操作者は先ず、工程P1において、レバー62を前方へ倒す(図10の上図の矢印参照)。これにより、フック61とピン49との係合が外れ、フレーム44は、第1付勢部材45の付勢力によって、後方へ移動する。操作者は、レバー62を倒す操作のみで、回収カセット5の第1開口52と第3搬送部41の第2開口414との接続を解除できる。
【0130】
フレーム44が後方へ移動すると、リンク部材8の先端は、第1制限部7の先端部73の係止部731から外れる。尚、操作者は、必要に応じて、フレーム44を、所定の位置までさらに後方へ移動させてもよい。リンク部材8の先端は、第1制限部7の先端部73の係止部731から確実に外れる。
【0131】
リンク部材8の係止が外れれば、操作者は、工程P2において、第1制限部7の先端部73を上方へ持ち上げて、第1制限部7を開状態へ移行させる(図10の中図の矢印参照)。第1制限部7の制限が解除されるため、操作者は、工程P3において、回収カセット5を上下へ取り外すことが可能になる(図10の下図の矢印参照)。
【0132】
このように、回収カセット5と第3搬送部41との係合を解除するよう、回収カセット5を後方へ移動させることに連動して、第1制限部7は、閉状態から開状態へと変更でき、回収カセット5をフレーム44から取り外すことが可能になる。操作者は、所定の手順を踏んで、回収カセット5を取り外すため、回収カセット5及び/又は第3搬送部41の破損が未然に防がれる。
【0133】
回収カセット5を回収部4に取り付ける手順は、前記とは逆になる。つまり、第1制限部7の開状態において、操作者は、回収カセット5をフレーム44の内部へ降ろす。その後、操作者は、第1制限部7を閉状態にする。先端部73がマグネット443に吸着されると、ストッパ91が下方に押される。この状態で、操作者は、フレーム44を前方へと移動させることができる。操作者は、第1付勢部材45の付勢力に抗して、フレーム44を前方へ移動させる。尚、前述したように、第1制限部7が開状態であれば、ストッパ91とリンク部材8との干渉によって、フレーム44は前方へ移動しない。
【0134】
操作者は、フレーム44を前方へ移動させることによって、フック61にピン49を係合させる。フック61は、図7に示すように、傾斜部611を有しているため、横断面が円形のピン49が前方へ移動すると、ピン49が傾斜部611に当たり、ピン49に押されて起立しているレバー62が前方へ倒れる。ピン49の通過後に、レバー62は、第2付勢部材64により、起立状態へと自動的に復帰する。フック61がピン49に係合する。つまり、操作者は、フレーム44を前方へ移動させるだけで、フック61をピン49に係合させることができる。フック61とピン49とが係合する位置までフレーム44を前方に移動させれば、回収カセット5の第1開口52と、第3搬送部41の第2開口414とが接続する。
【0135】
操作者は、所定の手順を踏んで、回収カセット5を装着するため、回収カセット5及び/又は第3搬送部41の破損が未然に防がれる。また、第3制限部9は、回収カセット5がベース42に正しく取り付けられることを保証するから、回収カセット5と第3搬送部41とが接続されている状態においては、前述したように、操作者は、所定の手順を踏まなければ、回収カセット5を取り外すことができない。
【0136】
尚、前述した回収部4(つまり、貨幣収納装置)では、回収カセット5が移動することによって、第3搬送部41との接続が解除されるが、回収カセット5の代わりに第3搬送部41が移動することによって、回収カセット5と第3搬送部41との接続が解除されてもよい。回収カセット5と第3搬送部41との接続が解除された後、回収カセット5が、ベース42から取り外されればよい。
【0137】
また、回収カセット5と第3搬送部41とのそれぞれが移動することによって、回収カセット5と第3搬送部41との接続が解除されてもよい。
【0138】
さらに、回収カセット5(又は第3搬送部41)は、接続の解除時に水平に移動することに限らない。回収カセット5(又は第3搬送部41)は、垂直に移動することによって接続が解除されてもよい。
【0139】
また、回収カセット5と第3搬送部41との接続は、第1開口52と第2開口414との機械的な接続に限らず、例えば端子を介した電気的な接続であってもよい。この場合、第1制限部7は、回収カセット5と第3搬送部41との電気的な接続が解除されることに応じて、回収カセット5の取り外しの制限を解除してもよい。端子は、貨幣処理装置1と回収カセット5との間の信号の授受に関する端子、及び/又は、貨幣処理装置1から回収カセット5への電力の供給に関する端子としてもよい。
【0140】
切替部6は、操作者が手動で操作をするレバー62を有しているが、手動操作のレバー62を省略してもよい。この場合、第2電磁ロック47を構成するアクチュエータが、フック61の係合と係合の解除とを直接切り替えてもよい。
【0141】
また、回収カセット5は、フレーム44に保持されることに限らず、ベース42に直接、相対移動可能に支持されてもよい。この場合、フック61は、回収カセット5に係合してもよい。
【0142】
(回収カセットの取り外しに関する制御)
回収カセット5は、回収処理において、回収すべき紙幣が回収カセット5に収納された後に、貨幣処理装置1から取り外される。貨幣処理装置1の回収カセット5は、第1開口52が回収カセット5の前面に設けられている。横向きの第1開口52が開いたまま回収カセット5が取り外されると、回収カセット5に収納されている紙幣が、第1開口52を通じて外に出てしまう恐れがある。そのため、回収カセット5は、回収処理において、回収カセット5が取り外される前に、回収部CPU40からの制御信号を受けて、前述したシャッター56を閉じる。
【0143】
ところで、回収処理以外にも、回収カセット5は取り外される場合がある。例えば搬送エラーが発生した場合に、その搬送エラーから復旧するために、回収カセット5が、回収部4から取り外される場合がある。その場合、搬送エラーの発生場所に依っては、回収カセット5の第1開口52を開けたままで、回収カセット5を回収部4から取り外す必要がある。回収カセット5に収納されている紙幣が第1開口52から外に出てしまうことを抑制するためにも、回収カセット5は、所定の手順で取り外されることが求められる。
【0144】
貨幣処理装置1は、回収カセット5の取り外しの要因に応じて、回収カセット5の取り外しに関する制御を、第1モードと第2モードとの間で切り替える。
【0145】
図11は、貨幣処理装置1による、回収カセット5の取り外しに関する制御手順を示している。図11の制御手順は、上部CPU20、下部CPU30、及び/又は、回収部CPU40が、貨幣処理装置1の各部を制御することにより実現される。スタート後のステップS1において、貨幣処理装置1は、利用者によって処理の実行が指示されたか否かを判断する。利用者は、前述したように、インターフェース部21を通じて、各種の処理の実行を指示する。ステップS1の判断がNoの場合、貨幣処理装置1は待機する。ステップS1の判断がYesの場合、貨幣処理装置1は、ステップS2において、回収処理時の回収カセット5の取り外しであるか否かを判断する。ここでは、ステップS2の判断がNoであるとして説明を続ける。
【0146】
ステップS3において貨幣処理装置1は、利用者が指示をした処理、例えば、入金処理、出金処理又は回収処理を実行する。ここでは、回収処理の実行が指示されたと仮定する。回収処理において貨幣処理装置1は、回収対象の紙幣を収納している一又は複数の収納カセット31~38から、回収カセット5へ紙幣を移送する。
【0147】
ステップS4において、貨幣処理装置1は、処理の実行中にエラーが発生したか否かを判断する。エラーは、例えば紙幣の詰まりである。エラーが発生していない場合、貨幣処理装置1は、ステップS14において、処理が終了したか否かを判断する。処理が終了していない場合、制御プロセスは、ステップS2及びS3を経てステップS4に戻る。貨幣処理装置1は、この間、処理を継続する。
【0148】
処理中にエラーが発生した場合、ステップS4の判断はYesになる。貨幣処理装置1は、続くステップS5において、処理を中断する。貨幣処理装置1はエラーからの復旧が必要である。ここでは回収部4においてエラーが発生したと仮定する。
【0149】
貨幣処理装置1をエラーから復旧させるために、(1)回収部4を下部筐体12から引き出さなくても復旧が可能、(2)回収部4を下部筐体12から引き出すが、回収カセット5は取り外さなくても復旧が可能、(3)回収部4を下部筐体12から引き出して、回収カセット5を取り外すことによって復旧が可能、の3パターンがある。エラー復旧を行う担当者は、(1)(2)(3)に応じて復旧作業を行う。尚、回収部4を下部筐体12から引き出す(2)又は(3)を行う場合、担当者は特別な権限を必要とする。
【0150】
エラー復旧を行う担当者は、回収部4を下部筐体12から引き出す必要がある場合、インターフェース部21を通じて、第1電磁ロック43の解除を指示する。尚、特別な権限を有する担当者の場合に、インターフェース部21には、例えば図12(a)に示すように、第1電磁ロック43の解除(つまり、「引き出しのロック解除」)を指示できる画面が表示される。それ以外の者の場合、インターフェース部21には、第1電磁ロック43の解除を指示できる画面は表示されない。インターフェース部21は、操作者の操作に対応する操作信号を上部CPU20に出力する。第1電磁ロック43の解除指示信号は、操作信号の一例である。
【0151】
貨幣処理装置1は、ステップS6において、第1電磁ロック43の解除が指示されたか否かを判断する。ステップS6の判断がYesの場合、貨幣処理装置1は、ステップS7において、第1電磁ロック43を解除する。担当者は、扉121を解錠し、回収部4を下部筐体12から外に引き出すことができる。
【0152】
ステップS8において、貨幣処理装置1は、第2電磁ロック47の解除が指示されたか否かを判断する。ステップS8の判断は、インターフェース部21からの第2電磁ロック47の解除指示信号の有無に基づく。尚、特別な権限を有する担当者の場合に、インターフェース部21には、図12(a)に示すように、第2電磁ロック47の解除(つまり、「レバーのロック解除」)を指示できる画面が表示される。それ以外の者の場合、インターフェース部21には、第2電磁ロック47の解除を指示できる画面は表示されない。
【0153】
ステップS8の判断がYesの場合、貨幣処理装置1は、ステップS9において、第2電磁ロック47を解除する。担当者は、切替部6のレバー62を操作することができる。切替部6のレバー62の操作を含む、回収カセット5を取り外す手順は、前述した通りである。この場合、回収カセット5の第1開口52は開いたままである。そのため、第1開口52を通じて回収カセット5に収納されている紙幣を外に出すことが一応は可能であるが、復旧作業を行う担当者が、特別な権限を有しているため、セキュリティ性は保たれる。ステップS8の判断がNoの場合、制御プロセスはステップS9を経ずに、ステップS10へ進む。尚、ステップS6の判断がNoの場合、制御プロセスはステップS10へ進む。回収部4が下部筐体12から外に引き出されなければ、回収カセット5の取り外しは行われないためである。
【0154】
エラーの復旧において、貨幣処理装置1は、第1電磁ロック43の解除指示信号と、第2電磁ロック47の解除指示信号とを個別に受ける。第1電磁ロック43の解除指示信号、及び/又は、第2電磁ロック47の解除指示信号に基づいて、第1電磁ロック43、及び/又は、第2電磁ロック47が解除されるから、担当者は、解除が必要なロック機構のみを解除し、スムースかつ、誤操作せずに、貨幣処理装置1を復旧できる。
【0155】
ステップS10において、貨幣処理装置1は、エラーから復旧したか否かを判断する。ステップS10の判断がNoの場合、制御プロセスはステップS5に戻り、復旧作業が継続される。ステップS10の判断がYesの場合、貨幣処理装置1は、ステップS11において、中断していた処理を再開する。その後、制御プロセスは、ステップS4に戻る。
【0156】
前述した回収処理において紙幣の移送が完了すれば、ステップS2の判断がYesになる。インターフェース部21には、例えば図12(b)に示すように、操作者に、回収カセット5の取り外しを促す画面が表示される。操作者は、回収カセット5を貨幣処理装置1から取り外すために、インターフェース部21を通じて、回収カセット5のシャッター56を閉じる指示を行う(つまり、「カセット取り外し」)。尚、この場合は、回収カセット5の取り外しの際に、シャッター56が閉じるため、前記とは異なり、特別な権限は不要である。
【0157】
貨幣処理装置1は、ステップS12において、シャッター56を閉じる指示を受けたか否かを判断する。貨幣処理装置1は、指示を受けるまで待機する。ステップS12の判断がYesになれば、貨幣処理装置1は、ステップS13において、回収カセット5のシャッター56を閉じると共に、第1電磁ロック43及び第2電磁ロック47を解除する。操作者は、扉121を解錠すれば、回収部4を下部筐体12から外に引き出すことができると共に、切替部6のレバー62を操作できる。操作者は、前述した手順に従って、回収カセット5をベース42から取り外すことができる。この場合、回収カセット5のシャッター56が閉じているため、セキュリティが保たれる。また、回収カセット5の第1開口52から紙幣が外に出てしまうことがない。
【0158】
尚、回収部4が貨幣処理装置1の外に引き出されたとしても、切替部6の第2電磁ロック47のロックが解除されなければ、回収カセット5と第3搬送部41との接続が解除できず、結果として、操作者は、回収カセット5をベース42から取り外すことができない。第2電磁ロック47は、回収部4、及び、貨幣処理装置1の高いセキュリティの確保に寄与する。
【0159】
尚、図11に示すフローチャートにおいて、ステップの順番を入れ替えたり、一部のステップを省略したり、新たなステップを追加したりすることが可能である。
【0160】
また、ここに開示する技術は、図1等に示す貨幣処理装置に適用することに限らない。ここに開示する技術は、硬貨を処理する貨幣処理装置、又は、紙幣と硬貨との両方を処理する貨幣処理装置に適用することができる。また、ここに開示する技術は、着脱可能に装着される収納庫を有する貨幣収納装置、及び、貨幣処理装置に、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 貨幣処理装置
12 下部筐体
4 回収部(貨幣収納装置)
40 回収部CPU(コントローラー)
41 第3搬送部(搬送部)
414 第2開口
42 ベース
43 第1電磁ロック(第1ロック)
44 フレーム
47 第2電磁ロック(電磁ロック、第2ロック)
5 回収カセット(収納庫)
52 第1開口
56 シャッター
6 切替部
60 第2制限部
61 フック
62 レバー
7 第1制限部
731 係止部
8 リンク部材(リンク)
9 第3制限部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12