(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127435
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】振動監視システム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/01 20240101AFI20240912BHJP
【FI】
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036587
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】更谷 安紀子
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105FF02
2G105FF16
2G105MM02
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】取得した振動に関するデータを有効に利用する振動監視システムを提供する。
【解決手段】振動監視システム10は、建物11に取り付けられ、建物11の振動度合いに応じた信号を出力するセンサ12a~12cと、センサ12a~12cから出力された信号が入力されて、振動度合いに応じた処理を実行する処理装置14とを備える。処理装置14は、振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する処理を実行し、振動度合いが閾値未満である場合には、振動度合いでの建物11の振動に関するデータを生成し、建物11の構造と関連付けて記憶する処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に取り付けられ、前記建物の振動度合いに応じた信号を出力するセンサと、
前記センサから出力された前記信号が入力されて、前記振動度合いに応じた処理を実行する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、前記振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する前記処理を実行し、
前記振動度合いが前記閾値未満である場合には、前記振動度合いでの前記建物の振動に関するデータを生成し、前記建物の構造と関連付けて記憶する前記処理を実行する、振動監視システム。
【請求項2】
複数の建物のそれぞれに取り付けられ、前記建物の振動度合いに応じた信号を出力するセンサと、
前記各センサから出力された前記信号が入力されて、前記振動度合いに応じた処理を実行する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、前記振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する前記処理を実行し、
前記振動度合いが前記閾値未満である場合には、前記振動度合いでの前記建物の振動に関するデータを生成し、前記建物の構造と関連付けて記憶する前記処理を実行する、振動監視システム。
【請求項3】
前記処理装置は、地震の発生の有無を示す地震関連データを取得し、前記地震の発生の有無を示す前記地震関連データに基づいて、前記地震の発生の有無を判定し、
前記処理装置は、前記振動度合いが閾値未満であり、かつ前記地震が発生していないと判定した場合、前記建物の振動に関するデータを前記建物の構造と関連付けて記憶する前記処理を実行する、請求項1又は2に記載の振動監視システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記建物周辺の環境振動を特定するための環境振動データを取得するものであり、
前記振動度合いが閾値未満であり、かつ前記地震が発生していないと判定された場合、前記環境振動データに基づいて、環境振動の種別を特定する、請求項3に記載の振動監視システム。
【請求項5】
前記建物の振動に関するデータと関連付けられる前記建物の構造には、前記建物の構造の種別、前記建物が有する階の数、前記建物の躯体に関する情報、前記建物がスラブを有する場合の前記スラブの仕様に関する情報、及び、前記建物の建設地に関する情報の少なくとも一つが含まれる、請求項1又は2に記載の振動監視システム。
【請求項6】
前記振動度合いが前記閾値未満である場合、前記処理装置は、前記振動度合いでの前記建物の振動に関するデータを、前記建物の構造及び用途に関連付けて記憶する前記処理を実行する、請求項1又は2に記載の振動監視システム。
【請求項7】
振動度合いが前記閾値未満である場合、前記処理装置は、前記振動度合いでの前記建物の振動に関するデータと、前記建物の振動に対する評価に関するデータとを、前記建物の構造に関連付けて記憶する前記処理を実行する、請求項1又は2に記載の振動監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設けた振動度合いに応じた信号を出力するセンサを用いた振動監視システムに係り、特に、地震と環境振動とを判定することが可能な振動監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地震が起きる際には、通常、気象庁から緊急地震速報が発せられ、これにより、地震の発生が特定されている。これ以外に、例えば、建物(住宅)に加速度センサを設置し、この加速度センサの計測データから地震の発生を特定することも可能である。
また、加速度センサの計測データを使って地震が発生した後の建物の損傷を評価することもなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に、緊急地震速報と、加速度センサの計測データとを用いて、構造物における構造躯体の損傷、非構造躯体の損傷及び地盤の損傷を判定する構造物検証システムが提案されている。
また、特許文献2には、傾斜計として建物の各階の柱脚にMEMS型加速度センサを配置した被災度判定システムが提案されている。特許文献2では、傾斜計が地震発生前を含む常時、震度を計測する地震計の機能を有すること、地震発生前後における鉛直方向の傾斜角変化である層間変形角θを直接計測して出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-201704号公報
【特許文献2】特開2019-203713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2は、いずれも振動に関する加速度センサのデータを地震発生後の損傷の特定に利用している。しかしながら、建物は地震発生時以外に様々な振動に曝されているが、振動に関する加速度センサの計測データは、地震発生後の損傷を評価する用途以外には特に利用されていないのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取得した振動に関するデータを有効に利用する振動監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の振動監視システムによれば、建物に取り付けられ、建物の振動度合いに応じた信号を出力するセンサと、センサから出力された信号が入力されて、振動度合いに応じた処理を実行する処理装置と、を備え、処理装置は、振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する処理を実行し、振動度合いが閾値未満である場合には、振動度合いでの建物の振動に関するデータを生成し、建物の構造と関連付けて記憶する処理を実行する、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の振動監視システムでは、取得したセンサのデータを有効に利用できる。例えば、振動のモニタリング結果を、安全性(健全性)確保と、建物の品質向上(設計)に利用することができる。
【0008】
また、本発明の振動監視システムによれば、複数の建物のそれぞれに取り付けられ、建物の振動度合いに応じた信号を出力するセンサと、各センサから出力された信号が入力されて、振動度合いに応じた処理を実行する処理装置と、を備え、処理装置は、振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する処理を実行し、振動度合いが閾値未満である場合には、振動度合いでの建物の振動に関するデータを生成し、建物の構造と関連付けて記憶する処理を実行する、ことにより解決される。
上記のように構成された本発明の振動監視システムでは、複数の建物のそれぞれについて取得したセンサのデータを有効に利用できる。例えば、各建物での振動のモニタリング結果を、安全性(健全性)確保と、建物の品質向上(設計)に利用することができる。
【0009】
また、上記の振動監視システムにおいて、処理装置は、地震の発生の有無を示す地震関連データを取得し、地震の発生の有無を示す地震関連データに基づいて、地震の発生の有無を判定し、処理装置は、振動度合いが閾値未満であり、かつ地震が発生していないと判定した場合、建物の振動に関するデータを建物の構造と関連付けて記憶する処理を実行すると、好適である。
上記の構成によれば、地震の判定の精度を高くでき、取得したセンサのデータを更に一層有効に利用できる。
また、処理装置は、建物周辺の環境振動を特定するための環境振動データを取得するものであり、振動度合いが閾値未満であり、かつ地震が発生していないと判定された場合、環境振動データに基づいて、環境振動の種別を特定すると、より好適である。
上記の構成によれば、環境振動の種別を特定することにより、取得したセンサのデータを更に一層有効に利用できる。
【0010】
また、上記の振動監視システムにおいて、建物の振動に関するデータと関連付けられる建物の構造には、建物の構造の種別、建物が有する階の数、建物の躯体に関する情報、建物がスラブを有する場合のスラブの仕様に関する情報、及び、建物の建設地に関する情報の少なくとも一つが含まれてもよい。
上記の構成によれば、取得したセンサのデータを、建物の構造に関する様々な情報と紐付けることで、なお一層有効に利用できる。
また、上記の振動監視システムにおいて、振動度合いが閾値未満である場合、処理装置は、振動度合いでの建物の振動に関するデータを、建物の構造及び用途に関連付けて記憶する処理を実行してもよい。
上記の構成によれば、取得したセンサのデータを、建物の用途と紐付けることで一段と有効に利用できる。
また、上記の振動監視システムにおいて、振動度合いが閾値未満である場合、処理装置は、振動度合いでの建物の振動に関するデータと、建物の振動に対する評価に関するデータとを、建物の構造に関連付けて記憶する処理を実行してもよい。
上記の構成によれば、取得したセンサのデータを、振動に対する評価に関するデータと合わせて記憶することで更に有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の振動監視システムによれば、取得した振動に関するデータを有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の振動監視システムの一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態の振動監視システムの処理装置の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態の振動監視システムのフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態の振動監視システムの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<本発明の一つの実施形態に係る振動監視システムについて>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して図示している。また、図中に示すサイズ(寸法)等についても、実際のものとは異なっている。
【0014】
図1は本発明の一実施形態の振動監視システムの一例を示す模式図であり、
図2は本発明の一実施形態の振動監視システムの処理装置の一例を示す模式図である。
図1に示す振動監視システム10は、建物11が1棟の建物である場合の例である。
1棟の建物11は、定められた建設地B、つまり、建設地Bとして計画された土地に建てられている。建物11は、特に限定されるものではなく、例えば、一軒家、マンション、ホテル、工場、又は病院である。
振動監視システム10は、
図1に示すように、例えば、建物11に設けられている。振動監視システム10は、
図1に示すように、例えば、3つのセンサ12a、12b、12cと、カメラ13と、処理装置14と、入力部15とを有する。3つのセンサ12a、12b、12cとカメラ13と入力部15とは、処理装置14に接続されている。
【0015】
3つのセンサ12a、12b、12cは、それぞれ振動を検出するものであり、建物11の振動度合いに応じた信号を出力する。センサ12a、12b、12cは、常時振動を測定しており、常時振動計と、地震計との2つの機能を果たす。
上記3つのセンサ12a、12b、12cは、互いに異なるレベルに設けられ、詳しくは、互いに異なる階層に設置されている。例えば、センサ12aは建物11の敷地内の地面に設けられている。センサ12bは、建物11の1階部分に設けられている。センサ12cは、建物11の2階部分の床面に設けられている。センサ12aは、建物11に免震層がある場合、免震層に設けてもよい。
センサ12a、12b、12cは、振動を検出することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、加速度センサが用いられる。加速度センサは、例えば、圧電型加速度センサ、サーボ型加速度センサ、歪みゲージ式加速度センサ及び半導体式加速度センサを用いることができる。
建物11に、3つのセンサ12a、12b、12cを設けたが、加速度センサの数は、3つに限定されるものではなく、少なくとも1つあればよい。
【0016】
カメラ13は、建物11の周囲を撮影するものであり、カメラ13により撮影映像が得られる。カメラ13は、建物11の周囲を撮影することができれば、特に限定されるものではなく、監視カメラに用いられる撮影機器を利用可能である。
カメラ13により撮影して得られた撮影映像から建物11の周囲の交通量等を特定でき、建物11の周囲の状況を特定できる。
【0017】
入力部15は、処理装置14に各種の情報を入力するものである。入力部15は、例えば、地震の発生の有無を示す地震関連データを取得して、処理装置14に入力する。地震の発生の有無を示す地震関連データは、例えば、緊急地震速報である。
また、入力部15は、電車及びバスの時刻表のデータ、設備の稼働状況のデータを取得して、処理装置14に入力する。
入力部15は、例えば、インターネットに接続されており、インターネットを介して、上述の各種のデータを取得する。
【0018】
処理装置14は、センサ12a、12b、12cから出力された振動度合いに応じた信号が入力されて、振動度合いに応じた処理を実行する。
処理装置14は、取得部20、判定部22、特定部24、警告部26、メモリ28、表示制御部30、表示部32及び制御部34を有する。振動監視システム10の取得部20、判定部22、特定部24、警告部26、メモリ28及び表示制御部30は、制御部34によって制御される。
振動監視システム10において、処理装置14の取得部20、判定部22、特定部24、警告部26、表示制御部30及び制御部34は、例えば、ROM(Read Only Memory)等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)が実行されるコンピュータによって構成されてもよいし、専用回路で構成された専用装置であってもよく、上述のようにプログラムがクラウド上で実行されるようにサーバーで構成してもよい。
【0019】
3つのセンサ12a、12b、12cは、所定の時間間隔で振動度合いに応じた信号を出力し、建物11の振動が常時測定されている。
取得部20は、3つのセンサ12a、12b、12cから出力された上述の信号が入力される。取得部20は、建物11のセンサ12a、12b、12cから出力された上述の信号を受信して、建物11の振動度合いに関するデータを常時取得する。
3つのセンサ12a、12b、12cから出力された上述の信号がデジタル信号の場合、デジタル信号に対して、移動平均等の平滑化処理を施すデータ処理部を有する構成でもよい。
また、3つのセンサ12a、12b、12cから出力された上述の信号がアナログ信号の場合、取得部20は、デジタル信号の変換するA/Dコンバーターを有し、デジタル信号に対して、移動平均等の平滑化処理を施すデータ処理部を有する構成でもよい。
なお、取得部20と3つのセンサ12a、12b、12cとの接続形態は、特に限定されるものではなく、有線でも無線でもよい。無線の場合、センサ12a、12b、12cは送信機を有し、取得部20は受信機を有する。
【0020】
処理装置14は、振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する処理を実行し、振動度合いが閾値未満である場合には、振動度合いでの建物11の振動に関するデータを生成し、建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けてメモリ28に記憶する処理を実行する。
判定部22は、取得部20に接続されており、取得部20からの振動度合いを示すデーが入力される。振動度合いが閾値以上である、閾値未満であるかを判定する。判定部22には、閾値が設定されており、この閾値に基づいて、振動度合いを判定する。
判定部22は、振動度合いが閾値以上である場合、非常時の振動であると判定し、警告を発する処理を、後述の警告部26で実行させる。
【0021】
また、判定部22は、振動度合いが閾値未満である場合、振動度合いでの建物11の振動に関するデータを生成し、建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けてメモリ28に記憶させる。
振動度合いでの建物11の振動に関するデータ(以下、建物11の振動に関するデータという)は、縦揺れ又は横揺れのような振動の種類、振動の大きさ(振幅)、振動の発生場所、振動の発生時刻及び継続時間、地震動の該否等を示すデータであってもよい。
建物11の振動に関するデータと関連付けられる建物11の構造には、建物11の構造の種別、建物が有する階の数、建物の躯体に関する情報、建物がスラブを有する場合のスラブの仕様に関する情報、及び、建物の建設地に関する情報の少なくとも一つが含まれるとよい。建物11の構造の種別には、制振装置の有無等が含まれてもよい。建物の躯体に関する情報には、柱又は梁に関する情報等が含まれてもよい。スラブの仕様に関する情報には、スラブの厚さに関する情報等が含まれてもよい。建設地に関する情報には、建設地における地盤、又はボーリングの状況等に関する情報が含まれてもよい。
また、上記の振動度合いに関する判定に用いられる閾値には、例えば、加速度(単位ガル)が用いられる。
【0022】
特定部24は、入力部15に接続されている。例えば、地震の発生の有無を示す地震関連データを入力部15が取得し、特定部24に地震関連データが入力される。特定部24では、地震の発生の有無を示す地震関連データに基づいて、地震の発生の有無を判定する。例えば、緊急地震速報が入力された場合、振動度合いに関わらず、閾値振動度合いが閾値未満であっても、地震の発生があったと判定する。
特定部24は、地震関連データに基づいて地震の発生があったと判定した場合、警告部26に警告を発する処理を実行させる。
一方、特定部24は、地震関連データに基づいて地震の発生がないと判定した場合、常時振動であると判定し、判定部22に、地震の発生がなく、常時振動であることを示す信号を出力し、判定部22で、上述の振動度合いが閾値未満である場合と同様に、振動度合いでの建物11の振動に関するデータを生成し、建物11の振動に関するデータを建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けてメモリ28に記憶させる。
【0023】
また、建物11周辺の環境振動を特定するための環境振動データを入力部15が取得し、環境振動データを入力された場合、環境振動データに基づいて、環境振動の種別を特定する。これにより、環境振動を特定でき、取得したセンサのデータを更に一層有効に利用できる。
【0024】
ここで、カメラ13で撮影された映像は取得部20に出力され、カメラ13の出力画像がアナログ映像である場合、デジタル映像に変換された後、判定部22に出力される。判定部22では、カメラ13からの映像から、車両を画像検出し、検出した車両の数の単位時間当り(例えば、10分)の車両数を特定する。特定された単位時間当りの車両数のデータを特定部24に出力する。なお、車両の画像検出には、パターンマッチング等を利用した公知の画像解析ソフトが用いられる。
建物11周辺の環境振動を特定するための環境振動データは、例えば、電車及びバスの時刻表のデータ、設備の稼働状況のデータである。設備は、例えば、MRI等の医療機器、発電機、ボイラー、ポンプ、変圧器、立体駐車場、及び給排水設備である。
単位時間当りの車両数のデータ及び電車及びバスの時刻表のデータにより、バスを含む車両に基づく振動、電車に基づく振動を特定できる。設備の稼働状況のデータ、例えば、ポンプの稼働スケジュールにより、設備に基づく振動を特定できる。これ以外に、人の移動により振動が発生する。例えば、車両に基づく振動、電車に基づく振動及び設備に基づく振動以外の振動を、人の移動により振動とすることができる。
【0025】
特定部24では、環境振動の種別を特定するタイミングにおいて、単位時間当りの車両数のデータと、電車及びバスの時刻表のデータと、設備の稼働状況のデータとの3つのデータを参照する。その結果、例えば、電車の往来がなく、設備が稼働していない場合、環境振動は、車両による交通振動であると特定される。
また、単位時間当りの車両数が少なく、設備が稼働していない場合、環境振動は、電車による交通振動であると特定される。
単位時間当りの車両数が少なく、電車の往来がない場合、環境振動は、設備の稼働による設備振動であると特定される。
単位時間当りの車両数が少なく、電車の往来がなく、設備が稼働していない場合、環境振動は、人の移動に基づく人的振動であると特定される。
例えば、単位時間当りの車両数のデータと、電車及びバスの時刻表のデータと、設備の稼働状況のデータに対して、予め振動の程度が大きい順位を付けておく。車両の往来があり、電車又はバスの往来があり、設備が稼働している状況のときには、上述の順位に基づいて環境振動の種別を特定する。
【0026】
上述のように、処理装置14は、振動度合いが閾値以上である場合には、警告を発する処理を実行するが、これは警告部26が実施する。警告部26は、建物11の利用者(図示せず)に警告を実施する。これにより、建物11の利用者に対して、避難等の退避行動を促すことができる。
より具体的には、警告部26は、建物11の利用者(図示せず)に、例えば、音、振動、又は画像を用いて、振動度合いが閾値以上であること、すなわち、地震の発生を警告するものである。警告部26は、建物11の利用者(図示せず)に警告できれば、その構成は特に限定されるものではなく、ベル、スピーカ、及びモニター等が利用可能である。これ以外に、警告部26として、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の情報端末を利用することもできる。情報端末の機能を利用して、音、振動、又は画像を用いて建物11の利用者に警告する。
建物11の利用者は、建物11の住民だけでなく、建物11に居る人も含まれる。このため、建物11に偶然居合わせた人も、建物11の利用者に該当する。
【0027】
メモリ28は、取得部20、判定部22、及び特定部24での各種の情報を記憶するものである。メモリ28は、特に限定されるものではなく、公知の各種の記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)を利用できる。
【0028】
表示制御部30は表示部32に接続されている。
表示制御部30は、取得部20、判定部22、及び特定部24によって得られた各種の情報を、表示部32の画面に表示させる。また、表示制御部30は、表示部32に警告部26による警告の内容を、表示部32の画面(図示せず)に表示させる。
【0029】
表示部32は、例えば、振動監視システム10の機能によって得られた各種の画像を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。
また、振動監視システム10は、スマートフォン(図示せず)又はタブレット端末(図示せず)の情報端末の画面に、振動監視システム10の機構によって得られた画像を表示させることもできる。この場合、情報端末が表示部32を兼ねる。
以上の構成により、振動監視システム10では、取得した振動に関するデータから、地震の発生の有無を特定したり、地震が発生していない場合には環境振動の種別を特定したりして、取得した振動に関するデータを有効に利用できる。例えば、振動のモニタリング結果を、地震が発生した場合の安全性(健全性)確保と、建物の強度等の品質向上(設計)に利用できる。
【0030】
振動監視システム10では、以下のようにして、警告をするか、又は振動に関するデータを生成し、建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けてメモリ28(
図2参照)に記憶させる。
図3は本発明の一実施形態の振動監視システムのフローチャートである。
図1では、建物11に3つのセンサ12a、12b、12cを設けているが、建物11の1階部分に設けられているセンサ12bについて説明する。
上述のように、センサ12bは、建物11の振動を常時測定している(ステップS10)。
【0031】
センサ12bから出力された振動度合いに応じた信号が、処理装置14の取得部20に入力される。取得部20では、振動度合いに応じた信号(デジタル信号又はアナログ信号)にデータ処理を施し、振動度合いに応じたデジタル信号を得る。
そして、振動度合いに応じたデジタル信号を判定部22に出力する。判定部22では、閾値に基づいて、振動度合いが閾値以上であるか、閾値未満であるかを判定する(ステップS12)。
ステップS12において、振動度合いが閾値以上である場合、非常時の振動である。すなわち、地震であると判定され、警告部26で、地震が発生したことを示す警告を発する処理を実行させる(ステップS14)。警告部26による警告は、上述の通りである。
一方、ステップS12において、振動度合いが閾値未満である場合、例えば、気象庁のデータを用いてさらに判定する(ステップS16)。
【0032】
ステップS16では、気象庁のデータとして、地震の発生の有無を示す地震関連データを入力部15が取得する。そして、特定部24に地震関連データが入力される。特定部24は、地震の発生の有無を示す地震関連データに基づいて、地震の発生の有無を判定する。地震関連情報として、緊急地震速報が入力された場合、地震の発生があったと判定する。この場合、ステップS14と同様に、警告を発する処理を実行させる(ステップS18)。これにより、センサ12bから出力された信号では判定できないものでも、地震等を判定でき、地震の判定の精度を高くできる。これにより、取得したセンサのデータを地震と明確に区別でき、更に一層有効に利用できる。
【0033】
一方、ステップS16において、緊急地震速報が入力されない場合、地震は発生していないと判定する。この場合、常時振動であると判定する。そして、さらに、環境振動データに基づいて環境振動の種別を特定する(ステップS20)。なお、ステップS20は、振動度合いが閾値未満であり、かつ地震が発生していないと判定された場合に相当する。
ここで、上述のカメラ13で撮影された映像から、車両を画像検出し、検出した車両の数の単位時間当り(例えば、10分)の車両数を特定しており、環境振動の種別を特定するタイミングにおいて、単位時間当りの車両数のデータがある。
また、上述のように、環境振動データは、例えば、入力部15が取得した電車及びバスの時刻表のデータ、設備の稼働状況のデータである。
【0034】
ステップS20では、単位時間当りの車両数のデータと、電車及びバスの時刻表のデータと、設備の稼働状況のデータとの3つのデータを参照する。その結果、例えば、電車の往来がなく、設備が稼働していない場合には、環境振動は、車両による交通振動であると特定する(ステップS22)。
また、ステップS20では、単位時間当りの車両数が少なく、設備が稼働していない場合、環境振動は、電車による交通振動であると特定する(ステップS22)。
また、ステップS20では、単位時間当りの車両数が少なく、電車の往来がない場合、環境振動は、設備の稼働による設備振動であると特定する(ステップS24)。
また、ステップS20では、単位時間当りの車両数が少なく、電車の往来がなく、設備が稼働していない場合、環境振動は、人の移動に基づく人的振動であると特定する(ステップS26)。
【0035】
上述のいずれのステップS22、S24及びS26においても、環境振動の種別を特定した後、建物11の振動に関するデータを生成し、建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けてメモリ28に記憶させる(ステップS28)。これにより、建物11の振動に関するデータを取得する。
このように取得した振動に関するデータから閾値に基づいて警告を発することができ、閾値未満の振動に関するデータも記憶することで、振動に関するデータを有効に利用できる。例えば、振動のモニタリング結果を、地震が発生した場合の安全性(健全性)確保と、建物の強度等の品質向上(設計)に利用できる。
【0036】
なお、ステップS16は、地震の発生の有無を示す地震関連データを取得し、地震の発生の有無を示す地震関連データに基づいて、地震の発生の有無を判定する工程に該当する。ステップS16において、地震が発生していないと判定した場合、建物11の振動に関するデータを建物11の構造と関連付けて記憶する処理を実行してもよい。この場合、建物11の振動に関するデータを、建物11の構造及び用途に関連付けて記憶してもよい。建物11の用途は、住宅、施設、店舗、工場、及び建屋等のような建物11の使用目的である。また、建物11の振動に関するデータとともに、建物11の振動に対する評価に関するデータを、建物11の構造に関連付けて記憶してもよい。建物11の振動に対する評価は、振動に対する評価の内容を振動の発生後に対象者から聴取することで入手してもよい。
【0037】
<<その他の実施形態について>>
図4は本発明の一実施形態の振動監視システムの他の例を示す模式図である。
図4において、
図1及び
図2に示す振動監視システム10、建物11及び建設地Bと同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図4に示す振動監視システム10aは、
図1及び
図2に示す振動監視システム10とは、複数の建物11をまとめて取り扱う点で相違する。より詳しく説明すると、
図4に示す振動監視システム10は、それぞれの建物11について、上述のように各センサから出力された信号が入力されて、振動度合いに応じた処理が建物11毎に実行される。これにより、建物11毎に取得した振動に関するデータから閾値に基づいて警告を発することができ、閾値未満の振動に関するデータも記憶することで、振動に関するデータを有効に利用できる。
振動監視システム10aでも、各建物11毎に地震の際には警告部26による警告が実施される。
また、
図4に示す振動監視システム10aでは、警告部26が建物11内に配置されている。しかしながら、処理装置14の警告部26を用いて、情報端末を介して各建物11に警告してもよい。
【0038】
以上までに、本発明の振動監視システムに関する一つ実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10、10a 振動監視システム
11 建物
12a、12b、12c センサ
13 カメラ
14 処理装置
15 入力部
20 取得部
22 判定部
24 特定部
26 警告部
28 メモリ
30 表示制御部
32 表示部
34 制御部
B 建設地