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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127455
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】駆動回路及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240912BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240912BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/015 101
B41J2/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036616
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】井出 典孝
(72)【発明者】
【氏名】田端 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】野澤 大
(72)【発明者】
【氏名】谷本 里香
(72)【発明者】
【氏名】植松 悟
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AF51
2C057AK07
2C057AN01
2C057AR03
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】駆動信号の波形精度を向上させることが可能な駆動回路を提供すること。
【解決手段】変調信号を出力する変調回路と、前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、前記基準信号が入力され、レベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、前記レベル切替信号が第1電位のときに前記第1増幅変調信号を出力し、前記レベル切替信号が第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を出力するレベルシフト回路と、レベルシフト回路が出力する第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、を備え、前記レベル切替信号生成回路は、前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える、駆動回路。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路であって、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える、
ことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記基準信号生成回路は、
前記基駆動信号の情報が記憶されている記憶部を備え、
前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて前記基準信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記基準信号生成回路は、前記基駆動信号が入力され、前記基駆動信号に基づいて前記基準信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記帰還回路は、前記駆動信号に応じて第2帰還信号を出力し、
前記変調回路は、前記第2帰還信号に基づいて前記変調信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記帰還回路は、ハイパスフィルターを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記レベル切替信号生成回路は、前記基駆動信号の値が一定の期間において、前記レベル切替信号の電位を保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基駆動信号の値が一定の第1期間において、前記レベル切替信号の電位を保持せず、前記第1期間に続く、前記基駆動信号の値が一定の第2期間において、前記レベル切替信号の電位を保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項8】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
前記基準信号生成回路は、
前記基駆動信号の情報が記憶されている記憶部を備え、
前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて前記基準信号を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記基準信号生成回路は、前記基駆動信号が入力され、前記基駆動信号に基づいて前記基準信号を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記帰還回路は、前記駆動信号に応じて第2帰還信号を出力し、
前記変調回路は、前記第2帰還信号に基づいて前記変調信号を出力する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記帰還回路は、ハイパスフィルターを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記レベル切替信号生成回路は、前記基駆動信号の値が一定の期間において、前記レベル切替信号の電位を保持する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基駆動信号の値が一定の第1期間において、前記レベル切替信号の電位を保持せず、前記第1期間に続く、前記基駆動信号の値が一定の第2期間において、前記レベル切替信号の電位を保持する、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出して媒体に画像や文書を形成する液体吐出装置には、圧電素子を用いたものが知られている。このような液体吐出装置において、圧電素子は、液体を吐出する複数のノズルのそれぞれに対応して設けられ、それぞれが駆動信号に従って駆動される。そして、圧電素子が駆動することで、当該圧電素子に対応して設けられたノズルから液体が吐出される。このような圧電素子を動作させるためには十分な電流を供給する必要がある。そのため、圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路は、駆動信号の基となる源信号を増幅回路によって増幅する増幅回路を含んで構成されている。
【0003】
特許文献1には、駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力するパルス変調回路と、変調信号を増幅した増幅変調信号を第1出力点から出力する増幅回路と、増幅変調信号の電位をシフトしたレベルシフト増幅変調信号を第2出力点から出力するレベルシフト回路と、レベルシフト増幅変調信号を復調し、駆動信号を出力する復調回路と、を備えることにより、信号の増幅を効率的に行うことができる駆動回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-057167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レベルシフト回路のスイッチング損失又は駆動信号の波形精度の観点において、特許文献1に記載の技術では十分ではなく、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る駆動回路の一態様は、
駆動部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路であって、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える。
【0007】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の構造の一例を示す図である。
図2】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図3】ヘッドユニットにおける複数の吐出部の配置の一例を示す図である。
図4】吐出部の構成の一例を示す図である。
図5】駆動信号の信号波形の一例を示す図である。
図6】第1実施形態における駆動回路の機能構成の一例を示す図である。
図7】駆動回路の動作を説明するための図である。
図8】リップル電流を説明するための図である。
図9】レベル切替信号がLレベルからHレベルに切り替わるタイミングの一例を示す図である。
図10】レベル切替信号がHレベルからLレベルに切り替わるタイミングの一例を示す図である。
図11】第2実施形態における駆動回路の機能構成の一例を示す図である。
図12】第2実施形態における基駆動信号、変調信号、停止時間測定信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の一例を示す図である。
図13】第2実施形態における基駆動信号、変調信号、停止時間測定信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の他の一例を示す図である。
図14】第3実施形態における基駆動信号、変調信号、停止時間測定信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の一例を示す図である。
図15】第3実施形態における基駆動信号、変調信号、停止時間測定信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の他の一例を示す図である。
図16】第4実施形態における駆動回路の機能構成の一例を示す図である。
図17】ハイパスフィルターの構成の一例を示す図である。
図18】第4実施形態における基駆動信号及び基準信号の波形の一例を示す図である。
図19】第4実施形態における基駆動信号、基準信号、第1帰還信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の一例を示す図である。
図20】第5実施形態における基駆動信号、基準信号、第1帰還信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の一例を示す図である。
図21】第6実施形態における基駆動信号、基準信号、第1帰還信号、レベル切替信号及び駆動信号の波形の一例を示す図である。
図22】変形例における駆動回路の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
以下の説明では、本発明に係る液体吐出装置の一例として、コンシューマー用のインクジェットプリンターを用いる。しかしながら、液体吐出装置は、インクジェットプリンターに限るものではなく、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置、有機ELディスプレイ、面発光ディスプレイ等の電極形成に用いられる電極材料吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出装置等であってもよい。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置の概要
図1は、液体吐出装置1の構造の一例を示す図である。図1に示すように、液体吐出装置1は、移動体2と、移動体2を主走査方向に沿って往復移動させる移動ユニット3と、を備える。
【0012】
移動ユニット3は、移動体2の主走査方向に沿った往復移動の駆動源となるキャリッジモーター31と、両端が固定されたキャリッジガイド軸32と、キャリッジガイド軸32とほぼ平行に延在しキャリッジモーター31により駆動されるタイミングベルト33と、を有する。
【0013】
移動体2は、キャリッジ24を有する。キャリッジ24は、キャリッジガイド軸32に往復移動自在に支持されるとともに、タイミングベルト33の一部に固定されている。そして、キャリッジモーター31によりタイミングベルト33が正逆走行することで、キャリッジ24を有する移動体2が、キャリッジガイド軸32に案内されて往復移動する。また、移動体2のうち、媒体Pと対向する部分にはヘッドユニット20が位置している。すなわち、ヘッドユニット20は、キャリッジ24に搭載されている。媒体Pと対向するヘッドユニット20の面には、液体としてのインクを吐出する多数のノズルが位置している。また、ヘッドユニット20には、ケーブル190を介してヘッドユニット20の動作を制御する各種制御信号が供給される。このようなケーブル190としては、移動体2の往復移動に追従して摺動可能なフレキシブルフラットケーブル等を用いることができる。
【0014】
また、液体吐出装置1は、媒体Pを搬送方向に沿ってプラテン40上で搬送させる搬送ユニット4を備える。搬送ユニット4は、媒体Pの搬送の駆動源である搬送モーター41と、搬送モーター41の駆動力に伴い回転することで媒体Pを搬送方向に沿って搬送する搬送ローラー42と、を有する。
【0015】
以上のように構成された液体吐出装置1では、媒体Pが搬送ユニット4によって搬送されるタイミングに同期して、ヘッドユニット20が当該媒体Pにインクを吐出する。これにより、ヘッドユニット20が吐出するインクが媒体Pの所望の位置に着弾し、媒体Pの表面に所望の画像や文字が形成される。
【0016】
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図2に示すように、液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、移動ユニット3、搬送ユニット4及びケーブル190を備える。ケーブル190は、制御ユニット10とヘッドユニット20とを電気的に接続する。
【0017】
制御ユニット10は、電源回路11、制御部100及び駆動回路50を有する。
【0018】
電源回路11は、液体吐出装置1の外部から供給される商用交流電源から所定の電圧値の電圧信号VHV1,VHV2,VDDを生成し、液体吐出装置1の各部に出力する。ここで、電源回路11が出力する電圧信号VHV1,VHV2は、例えば、21Vの直流電圧であり、電圧信号VDDは、例えば、3.3Vの直流電圧である。このような、電源回路11は、例えば、商用交流電源から所定の電圧値の直流電圧を生成するAC/DCコンバーターと、生成した直流電圧の電圧値を変換することで電圧信号VHV1,VHV2,VDDを生成するDC/DCコンバーターと、を含んで構成されていてもよい。なお、電源回路11は、電圧信号VHV1,VHV2,VDDに加えて異なる電圧値の直流電圧を出力してもよい。ここで、以下の説明において、電圧信号VHV1の電圧を電圧vhv1と称し、電圧信号VHV2の電圧を電圧vhv2と称し、電圧信号VDDの電圧を電圧vddと称する場合がある。
【0019】
制御部100には、液体吐出装置1の外部に設けられる不図示の外部機器であって、例えば、ホストコンピューター等から画像データが供給される。制御部100は、供給される画像データに各種の画像処理等を施すことで、液体吐出装置1の各部を制御するための各種制御信号を生成し、各部に出力する。
【0020】
具体的には、制御部100は、画像データに基づいて移動体2の往復移動を制御するための制御信号Ctrl1を生成し、移動ユニット3に含まれるキャリッジモーター31に出力する。また、制御部100は、画像データに基づいて媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl2を生成し、搬送ユニット4に含まれる搬送モーター41に出力する。これにより、主走査方向に沿った移動体2の往復移動と、搬送方向に沿った媒体Pの搬送と、が制御部100により制御される。すなわち、ヘッドユニット20は、媒体Pの搬送に同期した所定のタイミングで、媒体Pにインクを吐出することができる。これにより、媒体Pの所望の位置にインクを着弾させることが可能となり、媒体Pに所望の画像や文字を形成することができる。
【0021】
なお、制御部100は、移動体2の往復移動を制御するための制御信号Ctrl1を不図示のキャリッジモータードライバーにより信号変換した後、移動ユニット3に供給してもよく、同様に、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl2を不図示の搬送モータードライバーにより信号変換した後、搬送ユニット4に供給してもよい。
【0022】
また、制御部100は、駆動回路50に基駆動信号dAを出力する。この基駆動信号dAは、ヘッドユニット20に供給される駆動信号COMの信号波形を規定する情報を含むデジタル信号である。駆動回路50は、基駆動信号dAをアナログ信号に変換した後、変換したアナログ信号を増幅することで駆動信号COMを生成する。そして、駆動回路50は、生成した駆動信号COMを、ヘッドユニット20に供給する。なお、駆動回路50の構成及び動作の詳細は後述する。
【0023】
また、制御部100は、ヘッドユニット20の動作を制御するための駆動データ信号DATAを生成し、ヘッドユニット20に出力する。ヘッドユニット20は、選択制御部210、複数の選択部230及び液体吐出ヘッド21を有する。また、液体吐出ヘッド21は、圧電素子60を含む吐出部600を複数個有する。複数の選択部230のそれぞれは、液体吐出ヘッド21が有する複数の吐出部600のそれぞれに含まれる圧電素子60に対応して設けられている。
【0024】
選択制御部210には、駆動データ信号DATAが入力される。選択制御部210は、
駆動データ信号DATAに基づいて選択部230のそれぞれに対して駆動信号COMを選択すべきか又は非選択とすべきかを指示する選択信号Sを生成し、複数の選択部230のそれぞれに出力する。複数の選択部230のそれぞれには、駆動信号COMと、対応する選択信号Sとが入力される。複数の選択部230のそれぞれは、選択信号Sに基づいて、駆動信号COMを選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成し、出力する。すなわち、複数の選択部230は、それぞれが駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを生成し、液体吐出ヘッド21に含まれる対応する吐出部600に含まれる圧電素子60の一端に供給する。
【0025】
また、複数の吐出部600に含まれる圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSが共通に供給されている。基準電圧信号VBSは、駆動信号VOUTにより駆動する圧電素子60の駆動の基準電位として機能する信号であって、例えば、5.5Vや6V、グラウンド電位(0V)等の一定の電位の信号である。
【0026】
圧電素子60は、ヘッドユニット20における複数のノズルのそれぞれに対応して設けられている。そして、圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動する。その結果、圧電素子60を含む吐出部600から圧電素子60の駆動量に応じた量のインクが吐出される。
【0027】
なお、図2では、ヘッドユニット20が1つの液体吐出ヘッド21を有する場合を図示しているが、ヘッドユニット20が有する液体吐出ヘッド21の数は、1つに限るものではなく、ヘッドユニット20は、吐出するインクの種類や数等に応じて複数の液体吐出ヘッド21を有してもよい。
【0028】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、駆動信号COM,VOUTが供給されることで駆動する複数の圧電素子60を有し、複数の圧電素子60の駆動により液体との一例としてのインクを吐出する液体吐出ヘッド21と、駆動信号COMを出力する駆動回路50と、を備える。
【0029】
1-2.吐出部の構成
次に、液体吐出ヘッド21が有する複数の吐出部600の構成及びヘッドユニット20における複数の吐出部600の配置の一例について説明する。図3は、ヘッドユニット20における複数の吐出部600の配置の一例を示す図である。図3では、ヘッドユニット20が4個の液体吐出ヘッド21を有する場合を例示している。
【0030】
図3に示すように、4個の液体吐出ヘッド21は、それぞれが一方向に列状に設けられた複数の吐出部600を有する。すなわち、液体吐出ヘッド21は、吐出部600に含まれる後述するノズル651が一方向に並ぶノズル列Lを含む。また、液体吐出ヘッド21は、ヘッドユニット20において、ノズル列Lと交差する方向に並んで位置している。すなわち、ヘッドユニット20には、液体吐出ヘッド21と同数のノズル列Lが形成されている。なお、ノズル列Lにおけるノズル651の配置は、一列に限るものではなく、例えば、複数のノズル651の内の一方の端部から数えて偶数番目のノズル651と、複数のノズル651の内の一方の端部から数えて奇数番目のノズル651と、の位置が相違するように千鳥状に配置されていてもよく、複数のノズル651が2列以上で並設されることで1つのノズル列Lを形成してもよい。
【0031】
次に、吐出部600の構成の一例について説明する。図4は、吐出部600の構成の一例を示す図である。図4に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631及びノズル651を含む。振動板621は、図4において上面に設けられた圧電素子60の駆動に伴い変位する。振動板621は、キャビティー631の内部
容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。キャビティー631の内部には、インクが充填されている。キャビティー631は、圧電素子60の駆動による生じる振動板621の変位により、内部容積が変化する圧力室として機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に形成されるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。そして、キャビティー631の内部容積の変化に伴い、キャビティー631の内部に貯留されたインクが、ノズル651から吐出される。
【0032】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。この構造の圧電体601は、電極611と電極612との電位差に応じて電極611,612及び振動板621の中央部分が両端部分に対して図4における上下方向に撓む。
【0033】
具体的には、圧電素子60の一端である電極611に駆動信号VOUTが供給され、他端である電極612に基準電圧信号VBSが供給される。そして、駆動信号VOUTの電圧の変化に応じて圧電素子60が上方向に駆動した場合、振動板621が上方向に変位する。その結果、キャビティー631の内部容積が拡大する。したがって、リザーバー641に貯留されているインクがキャビティー631に引き込まれる。一方で、駆動信号VOUTの電圧値の変化に応じて圧電素子60が下方向に駆動した場合、振動板621が下方向に変位する。その結果、キャビティー631の内部容積が縮小する。したがって、キャビティー631の内部容積の縮小の程度に応じた量のインクがノズル651から吐出される。
【0034】
以上のように、液体吐出ヘッド21は、圧電素子60を含み、圧電素子60の駆動により媒体Pに対してインクを吐出する。なお、吐出部600及び吐出部600に含まれる圧電素子60は、図示した構成に限られるものではなく、駆動信号VOUTに基づいて圧電素子60が駆動するとともに、圧電素子60の駆動により対応するノズル651からインクを吐出させることができる構造であればよい。
【0035】
1-3.駆動回路の構成及び動作
次に、駆動回路50の構成及び動作について説明する。
【0036】
1-3-1.駆動信号COMの信号波形
駆動回路50の構成及び動作を説明するにあたり、まず、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形の一例について説明する。図5は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。図5に示すように、駆動信号COMは、周期T毎に台形波形Adpを含む。台形波形Adpは、電圧vcで一定の期間と、電圧vcで一定の期間の後に続き電圧vcよりも低い電圧vbで一定の期間と、電圧vbで一定の期間の後に続き電圧vcよりも高い電圧vtで一定の期間と、電圧vtで一定の期間の後に続き電圧vcで一定の期間と、を含む。すなわち、駆動信号COMは、電圧vtと電圧vbとの間で電圧が変化するとともに、周期Tにおいて、電圧vcで始まり電圧vcで終了する台形波形Adpを含む。
【0037】
電圧vcは、圧電素子60の変位の基準となる電位に相当する。そして、圧電素子60に供給される駆動信号COMの電圧が電圧vcから電圧vbとなることで、圧電素子60は、図4に示す上方向に駆動する。その結果、振動板621が図4に示す上方向に変位する。そして、振動板621が図4に示す上方向に変位すると、キャビティー631の内部容積が拡大し、インクがリザーバー641からキャビティー631に引き込まれる。その後、圧電素子60に供給される駆動信号COMの電圧が電圧vbから電圧vtとなることで、圧電素子60が、図4に示す下方向に駆動する。その結果、振動板621が図4に示す下方向に変位する。そして、振動板621が図4に示す下方向に変位すると、キャビティー631の内部容積が縮小し、キャビティー631に貯留されているインクがノズル6
51から吐出される。
【0038】
また、圧電素子60の駆動によりノズル651からインクが吐出された後の一定の期間、ノズル651の近傍のインクや振動板621が振動を継続する場合がある。駆動信号COMに含まれる電圧vcで一定の期間は、このようなインクや振動板621に生じたインクの吐出に寄与しない振動を静止させるための期間としても機能する。
【0039】
ここで、図5に示す駆動信号COMの信号波形は一例であり、これに限るものではなく、液体吐出ヘッド21が吐出するインクの物性や、駆動信号COMの周期Tの長さ、媒体Pの搬送速度等に応じた様々な形状の信号波形を含んでもよい。
【0040】
1-3-2.駆動回路の構成
次に、駆動回路50の構成について説明する。図6は、第1実施形態における駆動回路50の機能構成の一例を示す図である。図6に示すように駆動回路50は、D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570、レベル切替信号生成回路710及びレベルシフト回路750を有する。
【0041】
D/A変換回路510には、制御部100からデジタル信号である基駆動信号dAが入力される。D/A変換回路510は、基駆動信号dAをデジタル-アナログ変換した後、変換したアナログ信号を基駆動信号aAとして出力する。この基駆動信号aAの電圧振幅は、例えば、1~2Vであり、駆動回路50は、基駆動信号aAを増幅した信号を駆動信号COMとして出力する。すなわち、基駆動信号aAは、駆動信号COMの増幅前の目標となる信号に相当する。
【0042】
加算器511の+側の入力端には、基駆動信号aAが入力される。加算器511の-側の入力端には、駆動信号COMが後述する帰還回路570を介して帰還した帰還信号VFBが入力される。そして、加算器511は、基駆動信号aAから帰還信号VFBを差し引いた信号をパルス変調回路520に出力する。
【0043】
パルス変調回路520は、加算器511が出力する信号をパルス変調することで変調信号MSを生成する。変調信号MSは、Lレベルの電位と、Lレベルよりも高いHレベルの電位を含むデジタル信号である。そして、パルス変調回路520は、生成した変調信号MSを増幅回路550に出力する。このようなパルス変調回路520は、加算器511が出力する信号をパルス密度変調(PDM:Pulse Density Modulation)方式により変調したパルス密度変調信号(PDM信号)を生成し、当該PDM信号を変調信号MSとして増幅回路550に出力する。具体的には、パルス変調回路520は、加算器511の出力信号の電圧と、所定の基準電圧vrefとを比較する。そして、パルス変調回路520は、加算器511の出力信号の電圧が基準電圧vrefよりも大きい場合にHレベルとなり、加算器511の出力信号の電圧が基準電圧vrefよりも小さい場合にLレベルとなる変調信号MSを生成し、出力する。
【0044】
このように、D/A変換回路510、加算器511及びパルス変調回路520によって構成される回路は、駆動信号COMの基となる基駆動信号dAを変調し、変調信号MSを出力する変調回路500として機能する。
【0045】
増幅回路550は、ゲートドライブ回路530、ダイオードD1、コンデンサーC1及びトランジスターM1,M2を含む。増幅回路550は、変調信号MSを増幅した第1増幅変調信号AMS1を生成し、第1出力点OP1から出力する。
【0046】
ゲートドライブ回路530は、変調信号MSに基づいてゲート信号HGD1とゲート信号LGD1とを出力する。具体的には、変調信号MSは、ゲートドライブ回路530が有するゲートドライバー531に入力され、ゲートドライバー531は、変調信号MSをレベルシフトしたゲート信号HGD1を生成し、トランジスターM1に出力する。また、変調信号MSは、インバーター521において論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路530が有するゲートドライバー532に入力され、ゲートドライバー532は、変調信号MSの論理レベルが反転された信号をレベルシフトしたゲート信号LGD1を生成し、トランジスターM2に出力する。
【0047】
トランジスターM1,M2は、共にNチャネルのMOSFETで構成されている。トランジスターM1は、一端であるソース端子が第1増幅変調信号AMS1の出力される第1出力点OP1と電気的に接続し、他端であるドレイン端子に電源電圧として電圧信号VHV1の電圧vhv1が供給され、ゲート端子に入力されるゲート信号HGD1に基づいて動作する。また、トランジスターM2は、一端であるドレイン端子が第1出力点OP1と電気的に接続し、他端であるソース端子にグラウンド電位が供給され、ゲート端子に入力されるゲート信号LGD1に基づいて動作する。
【0048】
そして、トランジスターM1がゲート信号HGD1に基づき動作し、トランジスターM2がゲート信号LGD1に基づき動作することで、第1出力点OP1に、変調信号MSを電圧vhv1で増幅した第1増幅変調信号AMS1が生成される。
【0049】
ここで、ゲートドライブ回路530の動作について説明する。ゲートドライブ回路530は、ゲートドライバー531,532を含む。前述の通り、ゲートドライバー531には、変調信号MSが入力され、ゲートドライバー532には、変調信号MSの論理レベルがインバーター521により反転された信号が入力される。すなわち、ゲートドライバー531に入力される信号と、ゲートドライバー532に入力される信号とは、排他的にHレベルとなる。ここで、排他的にHレベルとなるとは、ゲートドライバー531とゲートドライバー532とに同時にHレベルの信号が入力されないことが含まれる。すなわち、ゲートドライバー531とゲートドライバー532とに同時にLレベルの信号が入力される場合を除外するものではない。
【0050】
ゲートドライバー531の低電位側の電源端子は、第1出力点OP1と電気的に接続している。したがって、ゲートドライバー531の低電位側の電源端子には、第1出力点OP1に生じた信号が電圧信号HVS1として供給される。また、ゲートドライバー531の高電位側の電源端子は、ダイオードD1のカソード端子及びコンデンサーC1の一端と電気的に接続している。そして、ダイオードD1のアノード端子には、電圧vmが供給され、コンデンサーC1の他端は、第1出力点OP1と電気的に接続している。すなわち、ダイオードD1とコンデンサーC1とは、ブートストラップ回路を構成し、当該ブートストラップ回路の出力電圧がゲートドライバー531の高電位側の電源端子に供給される。したがって、ゲートドライバー531の高電位側の電源端子には、ゲートドライバー531の低電位側の電源端子に入力される電圧信号HVS1よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号HVD1が供給される。
【0051】
よって、ゲートドライバー531は、Hレベルの変調信号MSが入力された場合、第1出力点OP1の電圧よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号HVD1に基づく電圧のゲート信号HGD1を出力し、Lレベルの変調信号MSが入力された場合、第1出力点OP1の電圧である電圧信号HVS1に基づく電圧のゲート信号HGD1を出力する。
【0052】
ここで、電圧vmは、トランジスターM1,M2及び後述するトランジスターM3,M4のそれぞれを駆動することが可能な電圧であって、例えば7.5Vの直流電圧である。
このような電圧vmは、例えば、電源回路11が出力する電圧信号VHV1,VHV2,VDDを降圧又は昇圧することで生成される。
【0053】
ゲートドライバー532の低電位側の電源端子には、グラウンド電位の信号が電圧信号LVS1として供給される。また、ゲートドライバー532の高電位側の電源端子には、電圧vmが電圧信号LVD1として供給される。したがって、ゲートドライバー532は、Lレベルの変調信号MSの論理レベルがインバーター521によって反転されたHレベルの信号が入力されている場合、電圧vmの電圧信号LVD1に基づく電圧のゲート信号LGD1を出力し、Hレベルの変調信号MSの論理レベルがインバーター521によって反転されたLレベルの信号が入力されている場合、グラウンド電位の電圧信号LVS1に基づく電圧のゲート信号LGD1を出力する。
【0054】
レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが入力され、基駆動信号dAに基づくレベル切替信号LSを生成する。レベル切替信号LSは、Lレベルの電位と、Lレベルよりも高いHレベルの電位を含むデジタル信号である。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が所定の閾値よりも大きい場合に、Hレベルのレベル切替信号LSを生成し、基駆動信号dAの値が閾値よりも小さい場合に、Lレベルのレベル切替信号LSを生成する。
【0055】
レベルシフト回路750は、ゲートドライブ回路730、ダイオードD11,D12、コンデンサーC11,C12、トランジスターM3,M4及びブートストラップ回路BSを含む。そして、レベルシフト回路750は、第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として第2出力点OP2に出力する。
【0056】
ゲートドライブ回路730は、レベル切替信号LSに基づいて、トランジスターM3を駆動するゲート信号HGD2と、トランジスターM4を駆動するゲート信号LGD2と、を出力する。具体的には、レベル切替信号LSは、ゲートドライブ回路730が有するゲートドライバー731に入力され、ゲートドライバー731は、レベル切替信号LSをレベルシフトしたゲート信号HGD2を生成し、トランジスターM3に出力する。また、レベル切替信号LSは、インバーター721において論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路730が有するゲートドライバー732に入力され、ゲートドライバー732は、レベル切替信号LSの論理レベルが反転された信号をレベルシフトしたゲート信号LGD2を生成し、トランジスターM4に出力する。
【0057】
トランジスターM3,M4は、共にNチャネルのMOSFETで構成されている。トランジスターM3は、一端であるソース端子が第2増幅変調信号AMS2の出力される第2出力点OP2と電気的に接続し、他端であるドレイン端子に電源電圧が供給され、ゲート端子に入力されるゲート信号HGD2に基づいて動作する。また、トランジスターM4は、一端であるドレイン端子が第2出力点OP2と電気的に接続し、他端であるソース端子に第1増幅変調信号AMS1が供給され、ゲート端子に入力されるゲート信号LGD2に基づいて動作する。
【0058】
そして、トランジスターM3がゲート信号HGD2に基づき動作し、トランジスターM4がゲート信号LGD2に基づき動作することで、第2出力点OP2に、第2増幅変調信号AMS2として、第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号が生成される。
【0059】
ブートストラップ回路BSは、ダイオードD13とコンデンサーC13とを含む。コンデンサーC13は、一端が第1出力点OP1と電気的に接続しており、当該一端に第1増
幅変調信号AMS1が供給され、他端がトランジスターM3のドレイン端子と電気的に接続している。ダイオードD13のアノード端子には、電圧信号VHV2が供給され、ダイオードD13のカソード端子は、コンデンサーC13の他端及びトランジスターM3のドレイン端子と電気的に接続されている。図6では、ダイオードD13が1つのみ図示されているが、ブートストラップ回路BSは、直列に接続された複数のダイオードD13を含んでもよい。すなわち、ブートストラップ回路BSは、N個のダイオードD13を含む。Nは1以上の所定の整数である。したがって、トランジスターM3のドレイン端子には、電源電圧として、電圧信号VHV2の電圧vhv2とN個のダイオードD13の順方向降下電圧の和vf×Nとの差である電圧vhv2-vf×Nが供給される。増幅回路550のトランジスターM2が導通するときに、コンデンサー13に電荷が蓄積されるので、コンデンサー13の両端間の電圧は電圧vhv2-vf×Nとなる。
【0060】
そして、ブートストラップ回路BSは、コンデンサー13の両端間の電圧vhv2-vf×Nに第1増幅変調信号AMS1の電圧を加算した電圧信号VHV3を生成し、トランジスターM3のドレイン端子に出力する。換言すれば、ブートストラップ回路BSは、第1増幅変調信号AMS1の電位を電圧vhv2-vf×Nだけレベルシフトした電圧信号VHV3を出力する。
【0061】
ここで、ゲートドライブ回路730の動作について説明する。ゲートドライブ回路730は、ゲートドライバー731,732を含む。前述の通り、ゲートドライバー731には、レベル切替信号LSが入力され、ゲートドライバー732には、レベル切替信号LSの論理レベルがインバーター721により反転された信号が入力される。すなわち、ゲートドライバー731に入力される信号とゲートドライバー732に入力される信号とは、排他的にHレベルとなる。ここで、排他的にHレベルとなるとは、ゲートドライバー731とゲートドライバー732とに同時にHレベルの信号が入力されないことが含まれる。すなわち、ゲートドライバー731とゲートドライバー732とに同時にLレベルの信号が入力される場合を除外するものではない。
【0062】
ゲートドライバー731の低電位側の電源端子は、第2出力点OP2と接続している。したがって、ゲートドライバー731の低電位側の電源端子には、第2出力点OP2に生じた信号が電圧信号HVS2として供給される。また、ゲートドライバー731の高電位側の電源端子は、ダイオードD11のカソード端子及びコンデンサーC11の一端と電気的に接続している。また、ダイオードD11のアノード端子には、電圧vmが供給され、コンデンサーC11の他端は、第2出力点OP2と電気的に接続している。すなわち、ダイオードD11とコンデンサーC11とは、ブートストラップ回路を構成し、当該ブートストラップ回路の出力電圧がゲートドライバー731の高電位側の電源端子に供給される。したがって、ゲートドライバー731の高電位側の電源端子には、ゲートドライバー731の低電位側の電源端子に入力される電圧信号HVS2よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号HVD2が供給されている。よって、ゲートドライバー731は、Hレベルのレベル切替信号LSが入力された場合、第2出力点OP2の電圧よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号HVD2に基づく電圧のゲート信号HGD2を出力し、Lレベルのレベル切替信号LSが入力された場合、第2出力点OP2の電圧である電圧信号HVS2に基づく電圧のゲート信号HGD2を出力する。
【0063】
ゲートドライバー732の低電位側の電源端子は、第1出力点OP1と接続している。したがって、ゲートドライバー732の低電位側の電源端子には、第1出力点OP1に生じた第1増幅変調信号AMS1が電圧信号LVS2として供給される。また、ゲートドライバー732の高電位側の電源端子は、ダイオードD12のカソード端子及びコンデンサーC12の一端と電気的に接続している。また、ダイオードD12のアノード端子には、電圧vmが供給され、コンデンサーC12の他端は、第1出力点OP1と電気的に接続し
ている。すなわち、ダイオードD12とコンデンサーC12とは、ブートストラップ回路を構成し、当該ブートストラップ回路の出力電圧がゲートドライバー732の高電位側の電源端子に供給される。したがって、ゲートドライバー732の高電位側の電源端子には、ゲートドライバー732の低電位側の電源端子に入力される電圧信号LVS2よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号LVD2が供給される。
【0064】
よって、ゲートドライバー732にLレベルのレベル切替信号LSの論理レベルがインバーター721によって反転されたHレベルの信号が入力された場合、ゲートドライバー732は、Lレベルのレベル切替信号LSの論理レベルがインバーター721によって反転されたHレベルの信号が入力された場合、第1出力点OP1の電圧よりも電圧vmだけ高い電圧の電圧信号LVD2に基づく電圧値のゲート信号LGD2を出力し、Hレベルのレベル切替信号LSの論理レベルがインバーター721によって反転されたLレベルの信号が入力された場合、第1出力点OP1の電圧である電圧信号LVS2に基づく電圧のゲート信号HGD2を出力する。
【0065】
以上のように構成されたレベルシフト回路750において、レベル切替信号生成回路710がLレベルのレベル切替信号LSを出力している場合、増幅回路550の第1出力点OP1とレベルシフト回路750の第2出力点OP2とは、トランジスターM4を介して電気的に接続される。したがって、レベルシフト回路750は、レベル切替信号LSがLレベルのときに、トランジスターM4を介して第2出力点OP2に供給される第1増幅変調信号AMS1を、第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0066】
一方で、レベル切替信号生成回路710がHレベルのレベル切替信号LSを出力している場合、増幅回路550の第1出力点OP1とレベルシフト回路750の第2出力点OP2とは、ブートストラップ回路BS及びトランジスターM3を介して電気的に接続される。したがって、レベルシフト回路750は、レベル切替信号LSがHレベルのときに、第1増幅変調信号AMS1の電位を電圧信号VHV2の電圧vhv2-vf×Nだけシフトした信号である電圧信号VHV3を、第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0067】
以下の説明において、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1を第2増幅変調信号AMS2として出力する動作モードを第1モードMD1と称し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をレベルシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する動作モードを第2モードMD2と称する。レベルシフト回路750は、レベル切替信号LSがLレベルのときに第1モードMD1となり、レベル切替信号LSがHレベルのときに第2モードMD2となる。
【0068】
前述の通り、基駆動信号dAの値が所定の閾値よりも小さい場合、レベル切替信号生成回路710はLレベルのレベル切替信号LSを出力し、レベルシフト回路750の動作モードが第1モードMD1になっている。その後、基駆動信号dAの値が所定の閾値よりも大きくなることで、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替える。これにより、レベルシフト回路750の動作モードが第1モードMD1から第2モードMD2に切り替えられる。そして、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替えた直後に、レベルシフト回路750の動作モードの切り替えに伴い生じ得る駆動信号COMの波形歪みを低減するために、レベル切替信号LSとして、短期間Lレベルとなるパルス信号を1又は複数回出力する。
【0069】
一方で、基駆動信号dAの値が所定の閾値よりも大きい場合、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを出力し、レベルシフト回路750の動作モードが第2モードMD2になっている。その後、基駆動信号dAの値が、所定の閾値よりも小
さくなることで、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替える。これにより、レベルシフト回路750の動作モードが第2モードMD2から第1モードMD1に切り替えられる。そして、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替えた直後に、レベルシフト回路750の動作モードの切り替えに伴い生じ得る駆動信号COMの波形歪みを低減するために、レベル切替信号LSとして、短期間Hレベルとなるパルス信号を1又は複数回出力する。
【0070】
ここで、以下の説明において、レベルシフト回路750の動作モードが第1モードMD1から第2モードMD2に切り替えられる場合に短期間Lレベルとなるパルス信号と、レベルシフト回路750の動作モードが第2モードMD2から第1モードMD1に切り替えられる場合に短期間Hレベルとなるパルス信号とをまとめてカウンターパルスCPと称する場合がある。
【0071】
レベルシフト回路750が出力する第2増幅変調信号AMS2は、復調回路560に入力される。復調回路560は、レベルシフト回路750が出力する第2増幅変調信号AMS2を平滑することにより復調し、駆動信号COMを出力する。
【0072】
復調回路560は、インダクター561とコンデンサー562とを含む。インダクター561の一端は第2出力点OP2と電気的に接続されている。インダクター561の他端はコンデンサー562の一端と電気的に接続している。そして、コンデンサー562の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、インダクター561とコンデンサー562とはローパスフィルター回路を構成する。このローパスフィルター回路により、レベルシフト回路750から出力された第2増幅変調信号AMS2は平滑され、駆動信号COMとして駆動回路50から出力される。
【0073】
帰還回路570は、復調回路560が生成した駆動信号COMが入力され、帰還信号VFBを変調回路500に出力する。具体的には、帰還回路570は、駆動信号COMを分圧した帰還信号VFBを加算器511に供給する。これにより、駆動信号COMがパルス変調回路520にフィードバックされる。その結果、駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形精度が向上する。ここで、帰還回路570は、帰還信号VFBとして、駆動信号COMを分圧した信号と、駆動信号COMの高周波成分を抽出した信号と、を含む複数の信号を帰還してもよい。すなわち、帰還回路570は、駆動信号COMを分圧した信号を帰還する回路と、駆動信号COMの高周波成分を抽出した信号を帰還する回路とを含む複数の帰還回路を含んでもよい。これにより、駆動信号COMに含まれる高周波成分を個別に帰還することが可能となる。その結果、駆動回路50が当該高周波成分に基づいて自励発振することが可能となり、変調信号MSの周波数を、駆動信号COMの精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。したがって、駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形精度がさらに向上する。
【0074】
1-3-3.駆動回路の動作
次に、駆動回路50の動作について説明する。図7は、駆動回路50の動作を説明するための図である。なお、図7では、駆動回路50が出力する駆動信号COMの内、任意の周期Tにおける駆動信号COMのみを図示している。図7では、図示及び説明の便宜上、回路遅延や配線遅延のない理想的な場合の信号波形が図示されている。また、図7では、レベル切替信号生成回路710が出力するレベル切替信号LSの論理レベルを切り替えるための基駆動信号dAの所定の閾値をdvthとして図示し、閾値dvthに対応する駆動信号COMの電圧をvthとして図示している。さらに、駆動信号COMの電圧vt,vb,vcに対応する基駆動信号dAのデジタル値をそれぞれdvt,dvb,dvcとして図示している。なお、図7では、電圧vthが電圧vcよりも低く、閾値dvthが
デジタル値dvcよりも小さい場合を図示しているが、これに限るものではない。
【0075】
図7に示すように、時刻t0~時刻t10の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvcの基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vcの駆動信号COMを出力する。デジタル値dvcは閾値dvthよりも大きいため、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第2モードMD2となり、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0076】
時刻t10~時刻t20の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvcからデジタル値dvbまで減少する基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vcから電圧vbまで低下する駆動信号COMを出力する。時刻t10~時刻t20の期間の内、時刻t10~時刻tc1の期間では、基駆動信号dAのデジタル値が閾値dvthよりも大きいため、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第2モードMD2を維持し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。一方、時刻t10~時刻t20の期間の内、時刻tc1~時刻t20の期間では、基駆動信号dAのデジタル値が閾値dvthよりも小さいため、レベル切替信号生成回路710はLレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第2モードMD2から第1モードMD1へと遷移し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0077】
レベルシフト回路750の動作モードが、第2モードMD2から第1モードMD1へと遷移した場合、第2増幅変調信号AMS2として出力する第1増幅変調信号AMS1の基準電位が、電圧vhv2-vf×Nからグラウンド電位に急峻に変化する。この基準電位の急峻な変化に対して、駆動回路50の応答速度が追従できない場合、駆動信号COMの信号波形に歪みが生じるおそれがある。この駆動信号COMの信号波形の歪みを低減させるために、時刻tc1において、レベルシフト回路750の動作モードが第2モードMD2から第1モードMD1へと遷移した後、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSの論理レベルを短期間反転させるカウンターパルスCPを出力する。レベル切替信号生成回路710がカウンターパルスCPを出力する期間では、レベルシフト回路750の動作モードは、レベル切替信号LSの論理レベルに応じて第1モードMD1又は第2モードMD2となり、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。このカウンターパルスCPにより、第2増幅変調信号AMS2として出力する第1増幅変調信号AMS1の基準電位の変化が緩やかになり、その結果、駆動信号COMの信号波形の歪みが低減される。
【0078】
前述の通り、時刻t10~時刻t20の期間において、駆動回路50は、電圧vcから電圧vbまで減少する駆動信号COMを出力する。このとき、圧電素子60及び復調回路560に蓄えられた電荷が放出され、この電荷の放出に伴い生じた電流が、駆動回路50に供給される。このような時刻t10~時刻t20の期間において、レベルシフト回路750が、カウンターパルスCPを出力することで、レベル切替信号LSがHレベルの期間において、駆動回路50に供給される電流がトランジスターM3を介してコンデンサーC13に供給される。すなわち、時刻t10~時刻t20の期間において、カウンターパルスCPを出力することにより、ブートストラップ回路BSのコンデンサーC13に回生電流が流れ、コンデンサーC13に電荷が蓄えられる。その結果、コンデンサーC13の電圧が低下することに起因して駆動信号COMの信号波形に歪みが生じるおそれが低減される。
【0079】
時刻t20~時刻t30の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvbの基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vbの駆動信号COMを出力する。デジタル値dvbは閾値dvthよりも小さいため、レベル切替信号生成回路710はLレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第1モードMD1を維持し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0080】
時刻t30~時刻t40の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvbからデジタル値dvtまで増加する基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vbから電圧vtまで上昇する駆動信号COMを出力する。時刻t30~時刻t40の期間の内、時刻t30~時刻tc2の期間では、基駆動信号dAのデジタル値が閾値dvthよりも小さいため、レベル切替信号生成回路710はLレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第1モードMD1を維持し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1を第2増幅変調信号AMS2として出力する。一方、時刻t30~時刻t40の期間の内、時刻tc2~時刻t40の期間では、基駆動信号dAのデジタル値が閾値dvthよりも大きいため、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第1モードMD1から第2モードMD2へと遷移し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0081】
レベルシフト回路750の動作モードが第1モードMD1から第2モードMD2へと遷移した場合、第2増幅変調信号AMS2として出力する第1増幅変調信号AMS1の基準電位が、グラウンド電位から電圧vhv2-vf×Nに急峻に変化する。この基準電位の急峻な変化に対して、駆動回路50の応答速度が追従できない場合、駆動信号COMの信号波形に歪みが生じるおそれがある。この駆動信号COMの信号波形の歪みを低減させるために、時刻tc2において、レベルシフト回路750の動作モードが第1モードMD1から第2モードMD2へと遷移した後、レベル切替信号生成回路710は、レベル切替信号LSの論理レベルを短期間反転させるカウンターパルスCPを出力する。レベル切替信号生成回路710がカウンターパルスCPを出力する期間では、レベルシフト回路750の動作モードは、レベル切替信号LSの論理レベルに応じて第1モードMD1又は第2モードMD2となり、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。このカウンターパルスCPにより、第2増幅変調信号AMS2として出力する第1増幅変調信号AMS1の基準電位の変化が緩やかになり、その結果、駆動信号COMの信号波形の歪みが低減される。
【0082】
前述の通り、時刻t30~時刻t40の期間において、駆動回路50は、電圧vbから電圧vtまで増加する駆動信号COMを出力する。このとき、圧電素子60及び復調回路560には、駆動回路50が出力する第2増幅変調信号AMS2により電流が供給され、電荷が蓄えられる。この圧電素子60及び復調回路560に電荷を蓄えるための電流は、コンデンサーC13を介して供給される。そのため、コンデンサーC13に蓄えらえた電荷が放出され、コンデンサーC13の電圧が低下するおそれが高まる。このような時刻t30~時刻t40の期間において、レベルシフト回路750が、カウンターパルスCPを出力することで、レベル切替信号LSがLレベルの期間において、圧電素子60及び復調回路560には、コンデンサーC13を介さずに電流が供給される。すなわち、時刻t30~時刻t40の期間において、カウンターパルスCPを出力することにより、ブートストラップ回路BSのコンデンサーC13に蓄えられた電荷が放出されるおそれが低減する。その結果、コンデンサーC13の電圧が低下することに起因して駆動信号COMの信号
波形に歪みが生じるおそれが低減される。
【0083】
時刻t40~時刻t50の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvtの基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vtの駆動信号COMを出力する。デジタル値dvtは閾値dvthよりも大きいため、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第2モードMD2を維持し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0084】
時刻t50~時刻t60の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvtからデジタル値dvcまで減少する基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vtから電圧vcまで低下する駆動信号COMを出力する。
【0085】
時刻t60~時刻t70の期間において、D/A変換回路510にはデジタル値dvcの基駆動信号dAが入力され、駆動回路50は電圧vcの駆動信号COMを出力する。デジタル値dvcは閾値dvthよりも大きいため、レベル切替信号生成回路710はHレベルのレベル切替信号LSを生成する。その結果、レベルシフト回路750の動作モードは第2モードMD2を維持し、レベルシフト回路750が、第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。
【0086】
1-3-4.レベル切替信号生成回路の動作
前述の通り、レベル切替信号LSがLレベルのとき、トランジスターM3が非導通となり、トランジスターM4が導通する。このとき、変調信号MSがLレベルからHレベルに変化すると、トランジスターM1が導通し、トランジスターM2が非導通となることにより、第1増幅変調信号AMS1の電圧がグラウンド電位から電圧vhv1へと変化する。そして、復調回路560のコンデンサー562に電荷を蓄えるための電流が、トランジスターM1、第1出力点OP1、トランジスターM4及び第2出力点OP2を流れる。また、レベル切替信号LSがLレベルのときに、変調信号MSがHレベルからLレベルに変化すると、トランジスターM1が非導通となり、トランジスターM2が導通することにより、第1増幅変調信号AMS1の電圧が電圧vhv1からグラウンド電位へと変化する。そして、コンデンサー562に蓄えられた電荷を放出するための電流が、第2出力点OP2、トランジスターM4、第1出力点OP1及びトランジスターM2を流れる。
【0087】
一方、レベル切替信号LSがHレベルのとき、トランジスターM3が導通し、トランジスターM4が非導通となる。このとき、変調信号MSがLレベルからHレベルに変化すると、トランジスターM1が導通し、トランジスターM2が非導通となることにより、第1増幅変調信号AMS1の電圧がグラウンド電位から電圧vhv1へと変化する。そして、コンデンサー562に電荷を蓄えるための電流が、トランジスターM1、第1出力点OP1、トランジスターM3及び第2出力点OP2を流れる。また、レベル切替信号LSがHレベルのときに、変調信号MSがHレベルからLレベルに変化すると、トランジスターM1が非導通となり、トランジスターM2が導通することにより、第1増幅変調信号AMS1の電圧が電圧vhv1からグラウンド電位へと変化する。そして、コンデンサー562に蓄えられた電荷を放出するための電流が、第2出力点OP2、トランジスターM3、第1出力点OP1及びトランジスターM2を流れる。
【0088】
このように、レベル切替信号LSがLレベルとHレベルのいずれであっても、第2出力点OP2を流れる電流は、変調信号MSの論理レベルが変化するたびに増減するので、リップル電流Irplとなる。そして、基駆動信号dAのデジタル値が一定のときは、駆動信号COMが一定電圧となるように、図8に示すように、リップル電流Irplは、変調信号MSの論理レベルに応じてゼロを中心に増減する。また、基駆動信号dAのデジタル
値が増加するときは、駆動信号COMの電圧が上昇するように、図8に示すように、リップル電流Irplは、変調信号MSの論理レベルに応じて正の値を中心に増減する。また、基駆動信号dAのデジタル値が減少するときは、駆動信号COMの電圧が低下するように、図8に示すように、リップル電流Irplは、変調信号MSの論理レベルに応じて負の値を中心に増減する。
【0089】
前述の通り、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルへと遷移すると、トランジスターM3が非導通から導通に遷移する。このとき、トランジスターM3が完全に導通するまでの時間はゼロではないため、この過渡期間におけるトランジスターM3のドレイン電流とドレイン-ソース間電圧との積がトランジスターM3のスイッチング損失となる。したがって、トランジスターM3のドレイン電流が大きいほどスイッチング損失が大きくなる。また、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルへと遷移すると、トランジスターM4が非導通から導通に遷移する。このとき、トランジスターM4が完全に導通するまでの時間はゼロではないため、この過渡期間におけるトランジスターM4のドレイン電流とドレイン-ソース間電圧との積がトランジスターM4のスイッチング損失となる。したがって、トランジスターM4のドレイン電流が大きいほどスイッチング損失が大きくなる。
【0090】
トランジスターM3,M4のドレイン電流は、いずれもリップル電流Irplであるので、リップル電流Irplの絶対値が最小のときにトランジスターM3,M4が非導通から導通に遷移すればトランジスターM3,M4のスイッチング損失が最小となる。トランジスターM3が非導通から導通に遷移するタイミングは、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルに遷移するタイミングであり、トランジスターM4が非導通から導通に遷移するタイミングは、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルに遷移するタイミングである。したがって、リップル電流Irplの絶対値が最小のときにレベル切替信号LSの論理レベルが変化すればトランジスターM3,M4のスイッチング損失が最小となる。
【0091】
図8に示したように、変調信号MSがHレベルの期間ではリップル電流Irplが増加し、変調信号MSがLレベルの期間ではリップル電流Irplが減少する。すなわち、変調信号MSに同期してリップル電流Irplの増減が切り替わり、その結果、変調信号MSがHレベルからLレベルに変化するタイミングでリップル電流Irplが最大となり、変調信号MSがLレベルからHレベルに変化するタイミングでリップル電流Irplが最小となる。基駆動信号dAの値が増加する期間では、リップル電流Irplは正の値なので、リップル電流Irplが最大のときにリップル電流Irplの絶対値が最大になり、リップル電流Irplが最小のときにリップル電流Irplの絶対値が最小になる。一方、基駆動信号dAの値が減少する期間では、リップル電流Irplは負の値なので、リップル電流Irplが最小のときにリップル電流Irplの絶対値が最大になり、リップル電流Irplが最大のときにリップル電流Irplの絶対値が最小になる。すなわち、基駆動信号dAの値が増加する期間では、変調信号MSがHレベルからLレベルに変化する立ち下がりでリップル電流Irplの絶対値が最大になり、変調信号MSがLレベルからHレベルに変化する立ち上がりでリップル電流Irplの絶対値が最小になる。また、基駆動信号dAの値が減少する期間では、変調信号MSがLレベルからHレベルに変化する立ち上がりでリップル電流Irplの絶対値が最大になり、変調信号MSがHレベルからLレベルに変化する立ち下がりでリップル電流Irplの絶対値が最小になる。そこで、本実施形態では、トランジスターM3,M4のスイッチング損失を低減させるために、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAと変調信号MSとに応じてレベル切替信号LSの電位を切り替える。
【0092】
図9に、基駆動信号dAが増加する場合におけるレベル切替信号LSがLレベルからHレベルに切り替わるタイミングの一例を示す。また、図10に、基駆動信号dAが減少する場合におけるレベル切替信号LSがHレベルからLレベルに切り替わるタイミングの一
例を示す。図9及び図10に示すように、一般に、基駆動信号dAが増加又は減少する期間において、変調信号MSがHレベルからLレベルへと遷移する期間Tf_MSや変調信号MSがLレベルからHレベルへと遷移する期間Tr_MSは、変調信号MSがLレベルの期間TL_MSや変調信号MSがHレベルの期間TH_MSに比べて十分に短く、例えば、十数分の一である。そのため、期間Tf_MSや期間Tr_MSにおいて、リップル電流Irplは定電流と見做すことができる。
【0093】
図9に示すように、基駆動信号dAが増加する期間では、期間Tf_MSにおいてリップル電流Irplの絶対値が最大となり、期間Tr_MSにおいてリップル電流Irplの絶対値が最小となる。本実施形態では、基駆動信号dAが増加する期間において、変調信号MSがHレベルからLレベルへと遷移する期間Tf_MSと、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルへと遷移する期間Tr_LSとは異なる。すなわち、レベル切替信号生成回路710は、リップル電流Irplの絶対値が最大となるタイミングを避けて、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替える。これにより、トランジスターM3のスイッチング損失が最大となるタイミングを避けて、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルに切り替わる。
【0094】
好ましくは、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが増加する期間では、変調信号MSの立ち上がりに同期して、レベル切替信号LSの電位をLレベルからHレベルに切り替える。具体的には、基駆動信号dAが増加して閾値dvthに達した時刻t1の後、変調信号MSの最初の立ち上がりに同期して、レベル切替信号LSの電位をLレベルからHレベルに切り替える。実際には、レベル切替信号生成回路710の回路遅延等に起因して、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルへと遷移を開始するタイミングは、変調信号MSの立ち上がりに対して遅延する。そのため、変調信号MSがLレベルからHレベルへと遷移する期間Tr_MSと、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルへと遷移する期間Tr_LSとは少なくとも一部が重なる。すなわち、レベル切替信号生成回路710は、リップル電流Irplの絶対値が最小となるタイミングの近くで、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替える。これにより、トランジスターM3のスイッチング損失が最小となるタイミングの近くで、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルに切り替わる。
【0095】
また、図10に示すように、基駆動信号dAが減少する期間では、期間Tr_MSにおいてリップル電流Irplの絶対値が最大となり、期間Tf_MSにおいてリップル電流Irplの絶対値が最小となる。本実施形態では、基駆動信号dAが減少する期間において、変調信号MSがLレベルからHレベルへと遷移する期間Tr_MSと、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルへと遷移する期間Tf_LSとは異なる。すなわち、レベル切替信号生成回路710は、リップル電流Irplの絶対値が最大となるタイミングを避けて、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替える。これにより、トランジスターM4のスイッチング損失が最大となるタイミングを避けて、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルに切り替わる。
【0096】
好ましくは、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが減少する期間では、変調信号MSの立ち下がりに同期して、レベル切替信号LSの電位をHレベルからLレベルに切り替える。具体的には、基駆動信号dAが減少して閾値dvthに達した時刻t2の後、変調信号MSの最初の立ち下がりに同期して、レベル切替信号LSの電位をHレベルからLレベルに切り替える。実際には、レベル切替信号生成回路710の回路遅延等に起因して、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルへと遷移を開始するタイミングは、変調信号MSの立ち下がりに対して遅延する。そのため、変調信号MSがHレベルからLレベルへと遷移する期間Tf_MSと、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルへと遷移する期間Tf_LSとは少なくとも一部が重なる。すなわち、レベル切替信号生成
回路710は、リップル電流Irplの絶対値が最小となるタイミングの近くで、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替える。これにより、トランジスターM4のスイッチング損失が最小となるタイミングの近くで、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルに切り替わる。
【0097】
1-4.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、増幅回路550が、トランジスターM1,M2のスイッチング動作により変調信号MSを増幅した第1増幅変調信号AMS1を生成し、レベルシフト回路750が、レベル切替信号LSの電位に応じて、第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として、トランジスターM3,M4を介して出力し、復調回路560が第2増幅変調信号AMS2を復調して駆動信号COMを出力する。したがって、トランジスターM1,M2のスイッチング動作により、トランジスターM3,M4を介して復調回路560を流れるリップル電流Irplが、変調信号MSに同期して増減する。そのため、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAに基づくレベル切替信号LSの電位の切り替えを変調信号MSに基づく適切なタイミングで行うことにより、リップル電流Irplが大きくないときにトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。したがって、第1実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50において、トランジスターM3,M4によるスイッチング損失を低減させることができる。
【0098】
また、第1実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が増加する期間においてリップル電流Irplが最小となる変調信号MSの立ち上がりに同期して、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替えるので、リップル電流Irplが比較的小さいときにトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。例えば、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が増加する期間においてリップル電流Irplが最大となる期間Tf_MSとは異なる期間Tr_LSに、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替えることにより、リップル電流Irplが最大となるタイミングを避けてトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。さらに、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が増加する期間においてリップル電流Irplが最小となる期間Tr_MSと少なくとも一部が重なる期間Tr_LSに、レベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替えることにより、リップル電流Irplが最小に近いタイミングでトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。したがって、第1実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50において、レベル切替信号LSがLレベルからHレベルに切り替わるときのトランジスターM3,M4によるスイッチング損失を低減させることができる。
【0099】
また、第1実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が減少する期間においてリップル電流Irplが最小となる変調信号MSの立ち下がりに同期して、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替えるので、リップル電流Irplが比較的小さいときにトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。例えば、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が減少する期間においてリップル電流Irplが最大となる期間Tr_MSとは異なる期間Tf_LSに、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替えることにより、リップル電流Irplが最大となるタイミングを避けてトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。さらに、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が減少する期間においてリップル電流Irplが最小となる期間Tf_MSと少なくとも一部が重なる期間Tf_LSに、レベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替えることにより、リップル電流Irplが最小に近
いタイミングでトランジスターM3,M4にスイッチング動作をさせることができる。したがって、第1実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50において、レベル切替信号LSがHレベルからLレベルに切り替わるときのトランジスターM3,M4によるスイッチング損失を低減させることができる。
【0100】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0101】
図11は、第2実施形態の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成の一例を示す図である。図11に示すように、第2実施形態における駆動回路50は、第1実施形態と同様、D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570、レベル切替信号生成回路710及びレベルシフト回路750を有する。D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570及びレベルシフト回路750の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0102】
第2実施形態における駆動回路50は、さらに、停止時間測定回路540を有する。停止時間測定回路540は、変調信号MSに応じてレベル切替信号生成回路710に停止時間測定信号STPを出力する。具体的には、停止時間測定回路540は、変調信号MSがLレベルで一定となる第1時間T1を測定し、第1時間T1が所定時間TU1を越えた場合、停止時間測定信号STPの論理レベルを反転する。例えば、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAの更新周期に同期した不図示のクロック信号のエッジで、変調信号MSが連続してLレベルとなる回数をカウントすることにより第1時間T1を測定し、カウント値が所定値に達した場合に第1時間T1が所定時間TU1を越えたと判定してもよい。
【0103】
また、停止時間測定回路540は、変調信号MSがHレベルで一定となる第2時間T2を測定し、第2時間T2が所定時間TU2を越えた場合、停止時間測定信号STPの論理レベルを反転する。例えば、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAの更新周期に同期した不図示のクロック信号のエッジで、変調信号MSが連続してHレベルとなる回数をカウントすることにより第2時間T2を測定し、カウント値が所定値に達した場合に第2時間T2が所定時間TU2を越えたと判定してもよい。
【0104】
所定時間TU1と所定時間TU2とは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。停止時間測定回路540は、停止時間測定信号STPをLレベルからHレベルに反転した後、さらにHレベルからLレベルに反転してもよい。すなわち、停止時間測定回路540は、ハイパルスの停止時間測定信号STPを出力してもよい。そして、停止時間測定回路540は、停止時間測定信号STPをHレベルからLレベルに反転したタイミングから、次の第1時間T1又は第2時間T2の測定を開始する。
【0105】
第1実施形態と同様、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが入力され、基駆動信号dAに基づくレベル切替信号LSを生成し、ゲートドライブ回路730に出力する。レベル切替信号LSは、Lレベルの電位と、Lレベルよりも高いHレベルの電位を含むデジタル信号である。詳細には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が所定の閾値よりも大きい場合に、Hレベルのレベル切替信号LSを生成し、基駆動信号dAの値が閾値よりも小さい場合に、Lレベルのレベル切替信号LSを生成する。さらに、第2実施形態では、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAと停止時間
測定信号STPとに応じてレベル切替信号LSの電位を切り替える。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、停止時間測定信号STPの論理レベルの反転に応じて、レベル切替信号LSの電位を切り替える。
【0106】
図12に、基駆動信号dA、変調信号MS、停止時間測定信号STP、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の一例を示す。なお、実際には基駆動信号dAの値の変化に対して駆動信号COMの電圧変化が遅延するが、図12では、図示及び説明の便宜上、駆動信号COMの波形は遅延がないものとして図示されている。
【0107】
図12の例では、基駆動信号dAが閾値dvthよりも大きい一定値となる時刻t1~t6の期間において、変調信号MSはLレベルを維持している。そのため、変調信号MSがLレベルで一定となる第1時間T1が所定時間TU1を越えた時刻t2において、停止時間測定信号STPがLレベルからHレベルに反転し、さらに、時刻t3において、停止時間測定信号STPがHレベルからLレベルに反転している。その結果、時刻t2においてレベル切替信号LSがHレベルからLレベルに遷移し、時刻t3においてレベル切替信号LSがLレベルからHレベルに遷移している。その後、さらに、変調信号MSがLレベルで一定となる第1時間T1が所定時間TU1を越えた時刻t4において、停止時間測定信号STPがLレベルからHレベルに反転し、さらに、時刻t5において、停止時間測定信号STPがHレベルからLレベルに反転している。その結果、時刻t4においてレベル切替信号LSがHレベルからLレベルに遷移し、時刻t5においてレベル切替信号LSがLレベルからHレベルに遷移している。すなわち、停止時間測定信号STPがHレベルである時刻t2~t3の期間及び時刻t4~t5の期間において、それぞれLパルスのレベル切替信号LSが発生している。仮に、これらのLパルスのレベル切替信号LSが発生しない場合、図12において破線で示すように、駆動信号COMに大きなオーバーシュートが発生し、オーバーシュートが収まるのに時間を要している。これに対して、これらのLパルスのレベル切替信号LSが発生することにより、図12において実線で示すように、駆動信号COMに発生するオーバーシュートが低減されており、オーバーシュートが収まるまでの時間が短縮されている。
【0108】
図13に、基駆動信号dA、変調信号MS、停止時間測定信号STP、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の他の一例を示す。なお、実際には基駆動信号dAの値の変化に対して駆動信号COMの電圧変化が遅延するが、図13では、図示及び説明の便宜上、駆動信号COMの波形は遅延がないものとして図示されている。図13の例では、基駆動信号dAが閾値dvthよりも小さい一定値となる時刻t1~t6の期間において、変調信号MSはHレベルを維持している。そのため、変調信号MSがHレベルで一定となる第2時間T2が所定時間TU2を越えた時刻t2において、停止時間測定信号STPがLレベルからHレベルに反転し、さらに、時刻t3において、停止時間測定信号STPがHレベルからLレベルに反転している。その結果、時刻t2においてレベル切替信号LSがLレベルからHレベルに遷移し、時刻t3においてレベル切替信号LSがHレベルからLレベルに遷移している。その後、さらに、変調信号MSがHレベルで一定となる第1時間T1が所定時間TU2を越えた時刻t4において、停止時間測定信号STPがLレベルからHレベルに反転し、さらに、時刻t5において、停止時間測定信号STPがHレベルからLレベルに反転している。その結果、時刻t4においてレベル切替信号LSがLレベルからHレベルに遷移し、時刻t5においてレベル切替信号LSがHレベルからLレベルに遷移している。すなわち、停止時間測定信号STPがHレベルである時刻t2~t3の期間及び時刻t4~t5の期間において、それぞれHパルスのレベル切替信号LSが発生している。仮に、これらのHパルスのレベル切替信号LSが発生しない場合、図13において破線で示すように、駆動信号COMに大きなアンダーシュートが発生し、アンダーシュートが収まるのに時間を要している。これに対して、これらのHパルスのレベル切替信号LSが発生することにより、図13において実線で示すように、駆動信号COMに発生
するアンダーシュートが低減されており、アンダーシュートが収まるまでの時間が短縮されている。
【0109】
第2実施形態の液体吐出装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
以上に説明した第2実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、駆動信号COMにオーバーシュートやアンダーシュートが発生した場合、増幅回路550がオーバーシュートやアンダーシュートを低減させるように第1増幅変調信号AMS1を出力するが、オーバーシュートやアンダーシュートが継続した場合は変調信号MSの電位が保持されるので、停止時間測定回路540が停止時間測定信号STPを出力する。そして、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAと停止時間測定信号STPとに応じてレベル切替信号LSの電位を切り替えることにより、レベルシフト回路750がオーバーシュートやアンダーシュートをさらに低減させるように第2増幅変調信号AMS2を出力する。
【0111】
具体的には、駆動信号COMにオーバーシュートが発生した場合、増幅回路550がオーバーシュートを低減させるように第1増幅変調信号AMS1を出力するが、オーバーシュートが継続した場合は変調信号MSがLレベルを保持するので、停止時間測定回路540が停止時間測定信号STPの論理レベルを反転する。そして、レベル切替信号生成回路710が、停止時間測定信号STPの論理レベルの反転に応じてレベル切替信号LSをHレベルからLレベルに切り替えることにより、レベルシフト回路750がオーバーシュートをさらに低減させるように第2増幅変調信号AMS2を出力する。
【0112】
また、駆動信号COMにアンダーシュートが発生した場合、増幅回路550がアンダーシュートを低減させるように第1増幅変調信号AMS1を出力するが、アンダーシュートが継続した場合は変調信号MSがHレベルを保持するので、停止時間測定回路540が停止時間測定信号STPの論理レベルを反転する。そして、レベル切替信号生成回路710が、停止時間測定信号STPの論理レベルの反転に応じてレベル切替信号LSをLレベルからHレベルに切り替えることにより、レベルシフト回路750がオーバーシュートをさらに低減させるように第2増幅変調信号AMS2を出力する。
【0113】
したがって、第2実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50が出力する駆動信号COMに発生するオーバーシュートやアンダーシュートのピークが低くなり、駆動信号COMの波形精度が向上するので、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0114】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0115】
第3実施形態の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成は、図11と同様であるので、その図示及び説明を省略する。ただし、第2実施形態では、停止時間測定回路540は常時動作しているのに対して、第3実施形態では、停止時間測定回路540は基駆動信号dAが一定値の期間のみ動作する。
【0116】
すなわち、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAの値が一定の期間において変調信号MSがLレベルで一定となる第1時間T1を測定し、基駆動信号dAの値が変化する期間において第1時間T1を測定しない。また、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAの値が一定の期間において変調信号MSがHレベルで一定となる第2時間T2を測定
し、基駆動信号dAの値が変化する期間において第2時間T2を測定しない。ここで、基駆動信号dAの値が一定の期間には、キャビティー631の内部容積を変化させないように駆動信号dAが厳密に一定値を継続する期間のみならず、駆動信号dAの値が略一定の期間も含まれる。駆動信号dAの値が略一定の期間とは、駆動信号COMの電圧を変化させてキャビティー631の内部容積を意図的に変化させるために駆動信号dAの値を変化させる期間を除いた期間のうち、キャビティー631の内部容積が実質的に変化しないものと同視できる程度に駆動信号dAの値がわずかに変化する期間である。
【0117】
図14及び図15に、基駆動信号dA、変調信号MS、停止時間測定信号STP、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の一例を示す。なお、実際には基駆動信号dAの値の変化に対して駆動信号COMの電圧変化が遅延するが、図14及び図15では、図示及び説明の便宜上、駆動信号COMの波形は遅延がないものとして図示されている。図14の例では、各信号波形は図12と同じであるが、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAが閾値dvthよりも高い一定値である期間のみ、変調信号MSがLレベルで一定となる第1時間T1を測定している。また、図15の例では、各信号波形は図13と同じであるが、停止時間測定回路540は、基駆動信号dAが閾値dvthよりも低い一定値である期間のみ、変調信号MSがHレベルで一定となる第2時間T2を測定している。
【0118】
第3実施形態の液体吐出装置1のその他の構成は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0119】
以上に説明した第3実施形態の液体吐出装置1によれば、第2実施形態の液体吐出装置1と同様の効果が得られる。
【0120】
また、第3実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、基駆動信号dAの値が閾値dvthよりも大きい一定の期間において駆動信号COMにオーバーシュートが発生し得るが、基駆動信号dAの値が変化する期間においては駆動信号COMにオーバーシュートが発生しない。したがって、第3実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50において、停止時間測定回路540が、駆動信号COMにオーバーシュートが発生し得る期間において第1時間T1を測定することによりオーバーシュートを低減させ、駆動信号COMにオーバーシュートが発生しない期間において第1時間T1を測定しないことにより消費電力を低減させることができる。
【0121】
また、第3実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、基駆動信号dAの値が閾値dvthよりも小さい一定の期間において駆動信号COMにアンダーシュートが発生し得るが、基駆動信号dAの値が変化する期間においては駆動信号COMにアンダーシュートが発生しない。したがって、第3実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動回路50において、停止時間測定回路540が、駆動信号COMにアンダーシュートが発生し得る期間において第2時間T2を測定することによりアンダーシュートを低減させ、駆動信号COMにアンダーシュートが発生しない期間において第2時間T2を測定しないことにより消費電力を低減させることができる。
【0122】
4.第4実施形態
以下、第4実施形態について、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態~第3実施形態のいずれかと重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態~第3実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0123】
一般に、媒体Pに形成される画像によって駆動する吐出部600の数が変わり、負荷となる静電容量が変化する。インク滴の重量を精密に制御するためには、駆動信号COMの波形を精密に制御する必要があるが、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dA
に基づいてレベル切替信号LSを生成した場合、負荷となる静電容量が変化してもレベル切替信号LSの波形は変化せず、その結果、駆動信号COMにオーバーシュートやアンダーシュートが発生するなど、駆動信号COMの波形精度が劣化するおそれがある。そこで、第4実施形態における駆動回路50では、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAとともに、駆動信号COMの電圧をフィードバックした信号も用いて、レベル切替信号LSを生成する。
【0124】
図16は、第4実施形態の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成の一例を示す図である。図16に示すように、第4実施形態における駆動回路50は、第1実施形態と同様、D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570、レベル切替信号生成回路710及びレベルシフト回路750を有する。第4実施形態における駆動回路50は、さらに、基準信号生成回路580を有する。D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550及び復調回路560の構成及び機能は、第1実施形態~第3実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0125】
第4実施形態では、帰還回路570は、復調回路560が生成した駆動信号COMに応じて第1帰還信号VFB1をレベル切替信号生成回路710に出力する。例えば、第1帰還信号VFB1は、駆動信号COMを分圧した信号であってもよい。好ましくは、帰還回路570は、ハイパスフィルターを含み、当該ハイパスフィルターにより駆動信号COMの高周波成分を抽出した第1帰還信号VFB1を出力する。図17に示すように、例えば、ハイパスフィルターは、コンデンサーと抵抗とで構成される。
【0126】
また、帰還回路570は、復調回路560が生成した駆動信号COMに応じて第2帰還信号VFB2を変調回路500に出力する。具体的には、帰還回路570は、駆動信号COMを分圧した第2帰還信号VFB2を加算器511に供給する。また、帰還回路570は、ハイパスフィルターを含み、駆動信号COMを分圧した信号と、当該ハイパスフィルターにより駆動信号COMの高周波成分を抽出した信号とを含む第2帰還信号VFB2を出力してもよい。この第2帰還信号VFB2を生成するためのハイパスフィルターと、第1帰還信号VFB1を生成するためのハイパスフィルターとは共通であってもよい。そして、変調回路500は、第2帰還信号VFB2に基づいて変調信号MSを出力する。その結果、駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形精度が向上する。
【0127】
図17に示したハイパスフィルターにおいて、コンデンサーの容量値をC、抵抗の値をR、コンデンサーと抵抗に流れる電流をi(t)とすると、第1帰還信号VFB1の電圧vfb1が式(1)となっている状態の時に、駆動信号COMと基駆動信号aAとの間に比例関係が成り立つ。式(1)において、αは定数であり、V(t)は基駆動信号aAの電圧である。
【0128】
【数1】
【0129】
抵抗値Rと容量値Cとの積RCが、電圧V(t)が変化する時間txよりも十分に小さいときは、式(1)の電圧Vfbを矩形波と見做すことができる。例えば、時間txを1μs程度とすると、RCは100×10-9以下であることが望ましい。この矩形波の電圧Vbは式(2)で表される。式(2)において、Vaは、時間txにおいて基駆動信号aAの電圧の変化量である。基駆動信号aAの時間txにおける電圧変化量Vaは、基駆
動信号dAの時間txにおけるデジタル値の変化量Daと対応している。
【0130】
【数2】
【0131】
基準信号生成回路580は、基駆動信号dAに応じた基準信号REFを生成する。本実施形態では、基準信号REFは、基駆動信号dAの時間変化量に対応する電圧の信号であり、基駆動信号dAのデジタル値が変化する時間txにおいて、基準信号REFは電圧Vbの矩形波となる。式(2)より、電圧Vbは、基駆動信号aAの電圧変化の傾きに比例する。図18に、基駆動信号dA、基駆動信号aA及び基準信号REFの波形の一例を示す。
【0132】
例えば、基準信号生成回路580は、基駆動信号dAが入力され、基駆動信号dAに基づいて基準信号REFを生成してもよい。例えば、基準信号生成回路580は、基駆動信号dAの値が更新される毎に、前回の基駆動信号dAの値との差分を算出し、当該差分に比例する電圧の基準信号REFを生成してもよい。あるいは、基準信号生成回路580は、基駆動信号dAの情報が記憶されている記憶部を備え、当該記憶部に記憶された情報に基づいて基準信号REFを生成してもよい。例えば、記憶部に記憶されている基駆動信号dAの情報は、基駆動信号dAの値が変化する期間と当該期間における基駆動信号dAの値の変化量とを含む情報であってもよい。基準信号生成回路580は、基駆動信号dAの値が変化する期間を基準信号REFの矩形波の期間とし、当該期間における基駆動信号dAの値の変化量に係数を掛けて基準信号REFの矩形波の電圧を算出してもよい。
【0133】
レベル切替信号生成回路710は、基準信号生成回路580が生成した基準信号REFが入力され、基準信号REFに基づくレベル切替信号LSを生成し、ゲートドライブ回路730に出力する。レベル切替信号LSは、Lレベルの電位と、Lレベルよりも高いHレベルの電位を含むデジタル信号である。具体的に、レベル切替信号生成回路710は、帰還回路570が出力する第1帰還信号VFB1がさらに入力され、基準信号REFと第1帰還信号VFB1とに応じて、レベル切替信号LSの電位を切り替える。詳細には、レベル切替信号生成回路710は、基準信号REFの電圧と第1帰還信号VFB1の電圧とを比較し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも高いときはHレベルのレベル切替信号LSを出力し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも低いときはLレベルのレベル切替信号LSを出力する。このように、レベル切替信号生成回路710は、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧に追従するようにレベル切替信号LSを生成するので、駆動信号COMの負荷容量の変化による影響が低減され、駆動信号COMの波形精度を向上させることができる。
【0134】
図19に、基駆動信号dA、基準信号REF、第1帰還信号VFB1、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の一例を示す。図19に示すように、基準信号REFは基駆動信号dAの波形を微分した波形に対応し、基準信号REFの電圧は基駆動信号dAの時間変化量に対応している。第1帰還信号VFB1は、駆動信号COMの高周波成分に対応している。そして、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがHレベルになり、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがLレベルになっている。
【0135】
その結果、基駆動信号dAの値の増加が開始する時刻t1から、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高くなる時刻t2までの期間において、レベル切替
信号LSがHレベルになるためトランジスターM1が導通する。駆動信号COMの負荷容量が大きいほど、時刻t1から時刻t2までの期間が長くなるので、トランジスターM1が導通する時間が長くなり、負荷容量に供給される電流が増加する。
【0136】
一方、基駆動信号dAの値の減少が開始する時刻t3から、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低くなる時刻t4までの期間において、レベル切替信号LSがLレベルになるためトランジスターM1が非導通となる。駆動信号COMの負荷容量が大きいほど、時刻t3から時刻t4までの期間が長くなるので、トランジスターM1が非導通となる時間が長くなり、負荷容量から放出される電流が増加する。
【0137】
すなわち、基駆動信号dAの値の変化が開始すると同時に、負荷容量の大きさに応じてトランジスターM1が導通となる期間又は非導通となる期間が適切に調整されるので、駆動信号COMの波形精度を向上させることができる。
【0138】
特に、帰還回路570において、ハイパスフィルターから出力される第1帰還信号VFB1は、駆動信号COMに対して位相が進んでいるので、そのような第1帰還信号VFB1を用いることにより、駆動信号COMの電位の変化に対するレベル切替信号生成回路710の過渡応答性が向上する。その結果、駆動信号COMの波形におけるオーバーシュートやアンダーシュートが低減される。
【0139】
第4実施形態の液体吐出装置1のその他の構成は、第1実施形態~第3実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0140】
なお、圧電素子60を含む吐出部600は「駆動部」の一例である。また、レベル切替信号LSのLレベルの電位は「第1電位」の一例であり、レベル切替信号LSのHレベルの電位は「第2電位」の一例である。
【0141】
以上に説明した第4実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、変調回路500が、駆動信号COMに応じた第2帰還信号VFB2に基づいて変調信号MSを出力し、増幅回路550が、変調信号MSを増幅した第1増幅変調信号AMS1を出力する。そのため、増幅回路550が、負荷容量の大きさに応じて変化する第2帰還信号VFB2に追従して、適切な第1増幅変調信号AMS1を出力することができる。また、基準信号生成回路580が基駆動信号dAに応じた基準信号REFを生成し、レベル切替信号生成回路710が基準信号REFと駆動信号COMに応じた第1帰還信号VFB1とに応じてレベル切替信号LSの電位を切り替え、レベルシフト回路750がレベル切替信号LSの電位に応じて第1増幅変調信号AMS1又は第1増幅変調信号AMS1の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号AMS2として出力する。すなわち、レベル切替信号生成回路710が、負荷容量の大きさに応じて変化する第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧に追従するようにレベル切替信号LSを生成するので、レベルシフト回路750が、負荷容量の大きさに応じた適切な第2増幅変調信号AMS2を出力することができる。したがって、第4実施形態の液体吐出装置1によれば、負荷容量の変化による駆動信号COMへの影響が低減されるので、駆動信号COMの波形精度が向上し、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0142】
また、第4実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、帰還回路570がハイパスフィルターにより位相が進んだ第1帰還信号VFB1を出力するので、駆動信号COMの電位の変化に対するレベル切替信号生成回路710の過渡応答性が向上し、レベルシフト回路750が、負荷容量の大きさに応じた適切な第2増幅変調信号AMS2を出力することができる。したがって、第4実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動信号COMの波形におけるオーバーシュートやアンダーシュートが低減されるので、駆動信号C
OMの波形精度が向上し、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0143】
5.第5実施形態
以下、第5実施形態について、第1実施形態~第4実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態~第4実施形態のいずれかと重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態~第4実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0144】
第5実施形態の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成は、図16に示した第4実施形態における駆動回路50と同様であるため、その図示を省略する。ただし、第5実施形態では、駆動回路50において、レベル切替信号生成回路710の動作が第4実施形態と異なる。
【0145】
第5実施形態では、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が変化する期間において、第4実施形態と同様、基準信号生成回路580が生成した基準信号REFと帰還回路570が出力する第1帰還信号VFB1とに応じて、レベル切替信号LSの電位を切り替える。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が変化する期間において、基準信号REFの電圧と第1帰還信号VFB1の電圧とを比較し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも高いときはHレベルのレベル切替信号LSを出力し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも低いときはLレベルのレベル切替信号LSを出力する。
【0146】
また、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が一定の期間において、レベル切替信号LSの電位を保持する。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも高い値で一定の期間において、レベル切替信号LSをHレベルに保持する。また、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定の期間において、レベル切替信号LSをLレベルに保持する。例えば、閾値dvth1は、トランジスターM1のドレイン端子に供給される電圧信号VHV1の電圧vhv1に対応する基駆動信号dAの値dvhv1であってもよい。
【0147】
図20に、基駆動信号dA、基準信号REF、第1帰還信号VFB1、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の一例を示す。図20において、基駆動信号dA及び基準信号REFの各波形は、図19と同じである。
【0148】
図20の例では、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定である時刻t1以前の期間において、レベル切替信号LSはLレベルを保持している。また、基駆動信号dAの値が増加する時刻t1から時刻t2までの期間において、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも高い値で一定である時刻t2から時刻t3までの期間において、レベル切替信号LSはHレベルを保持している。また、基駆動信号dAの値が減少する時刻t3から時刻t4までの期間において、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定である時刻t4以降の期間において、レベル切替信号LSはLレベルを保持している。
【0149】
第5実施形態の液体吐出装置1のその他の構成は、第1実施形態~第4実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0150】
以上に説明した第5実施形態の液体吐出装置1によれば、第4実施形態の液体吐出装置1と同様の効果が得られる。
【0151】
また、第5実施形態の液体吐出装置1では、駆動回路50において、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が一定の期間において、レベル切替信号LSの電位を保持する。したがって、第5実施形態の液体吐出装置1によれば、駆動信号COMの電位が一定の期間においてレベルシフト回路750のトランジスターM1,M2がスイッチング動作をしないので、駆動信号COMの波形精度が向上し、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0152】
6.第6実施形態
以下、第6実施形態について、第1実施形態~第5実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態~第5実施形態のいずれかと重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態~第5実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0153】
第6実施形態の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成は、図16に示した第4実施形態における駆動回路50と同様であるため、その図示を省略する。ただし、第6実施形態では、駆動回路50において、レベル切替信号生成回路710の動作が第4実施形態と異なる。
【0154】
第6実施形態では、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が変化する期間において、第4実施形態又は第5実施形態と同様、基準信号生成回路580が生成した基準信号REFと帰還回路570が出力する第1帰還信号VFB1とに応じて、レベル切替信号LSの電位を切り替える。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が変化する期間において、基準信号REFの電圧と第1帰還信号VFB1の電圧とを比較し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも高いときはHレベルのレベル切替信号LSを出力し、基準信号REFの電圧が第1帰還信号VFB1の電圧よりも低いときはLレベルのレベル切替信号LSを出力する。
【0155】
また、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値が一定の期間P1において、レベル切替信号LSの電位を保持せず、期間P1に続く、基駆動信号dAの値が一定の期間P2において、レベル切替信号LSの電位を保持する。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、期間P1において、基準信号生成回路580が生成した基準信号REFと帰還回路570が出力する第1帰還信号VFB1とに応じて、レベル切替信号LSの電位を切り替え、期間P2において、レベル切替信号LSの電位を保持する。詳細には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも高い値で一定の期間P1において、レベル切替信号LSをHレベルに保持せず、基準信号REFと第1帰還信号VFB1とに応じてレベル切替信号LSをHレベル又はLレベルに切替える。また、レベル切替信号生成回路710は、期間P2において、レベル切替信号LSをHレベル又はLレベルに保持する。例えば、閾値dvth1は、トランジスターM1のドレイン端子に供給される電圧信号VHV1の電圧vhv1に対応する基駆動信号dAの値dvhv1であってもよい。
【0156】
図21に、基駆動信号dA、基準信号REF、第1帰還信号VFB1、レベル切替信号LS及び駆動信号COMの波形の一例を示す。図21において、基駆動信号dA及び基準信号REFの各波形は、図19及び図20と同じである。
【0157】
図21の例では、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定である時刻t1以前の期間において、レベル切替信号LSはLレベルを保持している。また、基駆動信号dAの値が増加する時刻t1から時刻t2までの期間において、第1帰還信号VFB1の
電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。
【0158】
また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも高い値で一定である時刻t2から時刻t4までの期間のうちの時刻t2から時刻t3までの期間P1において、レベル切替信号LSはHレベルを保持せず、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも高い値で一定である時刻t2から時刻t4までの期間のうちの時刻t3から時刻t4までの期間P2において、レベル切替信号LSはHレベルを保持している。図21の例では、期間P1と期間P2との境界は、第1帰還信号VFB1の電圧が低下して基準信号REFの電圧と一致する時刻t3であるが、時刻t3よりも前であってもよいし、時刻t3よりも後であってもよい。
【0159】
また、基駆動信号dAの値が減少する時刻t4から時刻t5までの期間において、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。
【0160】
また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定である時刻t5以降の期間のうちの時刻t5から時刻t6までの期間P1において、レベル切替信号LSはLレベルを保持せず、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いときはレベル切替信号LSがLレベルになり、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも低いときはレベル切替信号LSがHレベルになっている。また、基駆動信号dAが閾値dvth1よりも低い値で一定である時刻t5以降の期間のうちの時刻t6以降の期間P2において、レベル切替信号LSはLレベルを保持している。図21の例では、期間P1と期間P2との境界は、第1帰還信号VFB1の電圧が上昇して基準信号REFの電圧と一致する時刻t6であるが、時刻t6よりも前であってもよいし、時刻t6よりも後であってもよい。
【0161】
ここで、時刻t2から時刻t3までの期間P1において、仮に、図20の例のようにレベル切替信号LSがHレベルを保持した場合、トランジスターM1,M4が導通し、トランジスターM2,M3が非導通となる。そのため、第1出力点OP1の電圧が電圧信号VHV2の電圧vhv2になるので、第1出力点OP1から負荷容量に向かって流れる電流iは、式(3)で表される。式(3)において、vcomは駆動信号COMの電圧であり、Lはインダクター561のインダクタンス値である。
【0162】
【数3】
【0163】
これに対して、本実施形態では、時刻t2から時刻t3までの期間P1において、レベル切替信号LSがHレベルに保持されず、図21に示すように、第1帰還信号VFB1の電圧が基準信号REFの電圧よりも高いので、レベル切替信号LSがLレベルになっている。そのため、トランジスターM2,M4が導通し、トランジスターM1,M3が非導通となり、第1出力点OP1の電圧が0Vになるので、第1出力点OP1から負荷容量に向かって流れる電流iは、式(4)で表される。
【0164】
【数4】
【0165】
電流iは式(3)又は式(4)に従って減少するが、式(3)よりも式(4)の方が電流iの減少が急峻である。すなわち、レベル切替信号生成回路710が、時刻t2から時刻t3までの期間P1において、レベル切替信号LSをHレベルに保持しないことにより、容量負荷に供給される電流iが0になるまでの時間が短くなるため、駆動信号COMに発生するオーバーシュートが低減される。同様に、レベル切替信号生成回路710が、時刻t56から時刻tまでの期間P1において、レベル切替信号LSをLレベルに保持しないことにより、容量負荷から放出される電流iが0になるまでの時間が短くなるため、駆動信号COMに発生するアンダーシュートが低減される。
【0166】
第6実施形態の液体吐出装置1のその他の構成は、第1実施形態~第5実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0167】
なお、期間P1は「第1期間」の一例であり、期間P2は「第2期間」の一例である。
【0168】
以上に説明した第6実施形態の液体吐出装置1によれば、第4実施形態又は第5実施形態の液体吐出装置1と同様の効果が得られる。
【0169】
また、第6実施形態の液体吐出装置1によれば、レベル切替信号生成回路710が、基駆動信号dAの値が一定の期間P1において、レベル切替信号LSの電位を保持せず、基準信号REFと第1帰還信号VFB1とに応じてレベル切替信号LSの電位を切り替えることにより、駆動信号COMに発生するオーバーシュートやアンダーシュートを低減させることができる。さらに、第6実施形態の液体吐出装置1によれば、レベル切替信号生成回路710が、期間P1に続く基駆動信号dAの値が一定の期間P2において、レベル切替信号LSの電位を保持することにより、駆動信号COMの電位が一定の期間においてレベルシフト回路750のトランジスターM1,M2がスイッチング動作をしないので、駆動信号COMの波形精度が向上し、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0170】
なお、基駆動信号dAの値の変化率が大きいほど、基準信号REFの矩形波の電圧Vbの絶対値が大きくなるので、電流iが0になるまでの時間が長くなる。逆に、基駆動信号dAの値の変化率が小さいほど、基準信号REFの矩形波の電圧Vbの絶対値が小さくなるので、電流iが0になるまでの時間が短くなる。そのため、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値の変化率に応じて、期間P1の長さを変えてもよい。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、基駆動信号dAの値の変化率が第1の値のときは期間P1を第1の時間長に設定し、基駆動信号dAの値の変化率が第1の値よりも大きい第2の値のときは期間P1を第1の時間長よりも大きい第2の時間長に設定する。
【0171】
また、駆動信号COMの負荷容量が大きいほど、負荷容量に供給される電荷量や負荷容量から放出される電荷量が大きくなるので、電流iが0になるまでの時間が長くなる。逆に、駆動信号COMの負荷容量が小さいほど、負荷容量に供給される電荷量や負荷容量から放出される電荷量が小さくなるので、電流iが0になるまでの時間が短くなる。そのため、レベル切替信号生成回路710は、駆動信号COMの負荷容量の大きさに応じて、期間P1の長さを変えてもよい。具体的には、レベル切替信号生成回路710は、負荷容量が第1の値のときは期間P1を第1の時間長に設定し、負荷容量が第1の値よりも大きい
第2の値のときは期間P1を第1の時間長よりも大きい第2の時間長に設定する。なお、負荷容量の大きさは、印刷の周期T毎に、駆動回路50が駆動する圧電素子60の数によって増減する。制御部100がホストコンピューター等から供給される画像データに基づいて生成する駆動データ信号DATAには、印刷の周期T毎に駆動回路50が駆動する圧電素子60の数を特定可能な情報が含まれている。したがって、例えば、レベル切替信号生成回路710は、駆動データ信号DATAに基づいて負荷容量の大きさを算出してもよい。
【0172】
このように、レベル切替信号生成回路710が基駆動信号dAの値の変化率や負荷容量の大きさに応じて期間P1の長さを変えることにより、電流iが0になるまでの時間を短くすることができるので、駆動信号COMに発生するオーバーシュートやアンダーシュートが低減される。
【0173】
7.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0174】
例えば、上記の各実施形態では、駆動回路50は、制御部100から基駆動信号dAが入力されているが、制御部100が基駆動信号dAの連続する2つのデジタル値の差分値のデータが入力され、当該データの各値を加算して基駆動信号dAを復元してもよい。
【0175】
また、例えば、上記の第4実施形態~第6実施形態では、基準信号生成回路580は、基駆動信号dAに基づいて基準信号REFを生成しているが、基駆動信号aAに基づいて基準信号REFを生成してもよい。図22は、この変形例の液体吐出装置1が有する駆動回路50の機能構成の一例を示す図である。図22に示すように、変形例における駆動回路50は、第4実施形態~第6実施形態と同様、D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570、基準信号生成回路580、レベル切替信号生成回路710及びレベルシフト回路750を有する。D/A変換回路510、加算器511、パルス変調回路520、インバーター521、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570及びレベルシフト回路750の構成及び機能は、第4実施形態~第6実施形態のいずれかと同様であるため、その説明を省略する。基準信号生成回路580は、D/A変換回路510が基駆動信号dAを変換したアナログ信号の基駆動信号aAが入力され、基駆動信号aAに基づいて基準信号REFを生成する。基駆動信号aAは、基駆動信号dAが変換されたアナログ信号であるので、基駆動信号dAに基づいて生成される基準信号REFは、基駆動信号dAに応じた信号である。具体的には、基準信号生成回路580は、基駆動信号aAを微分して基準信号REFを生成する。したがって、基準信号REFは、基駆動信号aAの電圧の時間変化量に対応する電圧の信号であり、基駆動信号aAの電圧が変化する期間において、基準信号REFは矩形波に近い波形となる。したがって、レベルシフト回路750は、第4実施形態~第6実施形態と同様の動作を行い、負荷容量によらず波形精度の高い駆動信号COMが得られる。
【0176】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0177】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構
成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0178】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0179】
駆動回路の一態様は、
駆動部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路であって、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える。
【0180】
この駆動回路では、増幅回路が変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力し、基準信号生成回路が基駆動信号に応じた基準信号を生成し、レベル切替信号生成回路が基準信号と駆動信号に応じた第1帰還信号とに応じてレベル切替信号の電位を切り替え、レベルシフト回路がレベル切替信号の電位に応じて第1増幅変調信号又は第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号として出力する。すなわち、レベル切替信号生成回路が、負荷容量の大きさに応じて変化する第1帰還信号の電圧が基準信号の電圧に追従するようにレベル切替信号を生成するので、レベルシフト回路が、負荷容量の大きさに応じた適切な第2増幅変調信号を出力することができる。したがって、この駆動回路によれば、負荷容量の変化による駆動信号への影響が低減され、駆動信号の波形精度を向上させることができる。
【0181】
前記駆動回路の一態様において、
前記基準信号生成回路は、
前記基駆動信号の情報が記憶されている記憶部を備え、
前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて前記基準信号を生成してもよい。
【0182】
前記駆動回路の一態様において、
前記基準信号生成回路は、前記基駆動信号が入力され、前記基駆動信号に基づいて前記基準信号を生成してもよい。
【0183】
前記駆動回路の一態様において、
前記帰還回路は、前記駆動信号に応じて第2帰還信号を出力し、
前記変調回路は、前記第2帰還信号に基づいて前記変調信号を出力してもよい。
【0184】
この駆動回路では、増幅回路が、負荷容量の大きさに応じて変化する第2帰還信号に追従して、適切な第1増幅変調信号を出力することができる。したがって、この駆動回路によれば、負荷容量の変化による駆動信号への影響が低減され、駆動信号の波形精度を向上させることができる。
【0185】
前記駆動回路の一態様において、
前記帰還回路は、ハイパスフィルターを含んでもよい。
【0186】
この駆動回路では、帰還回路がハイパスフィルターにより位相が進んだ第1帰還信号を出力するので、駆動信号の電位の変化に対するレベル切替信号生成回路の過渡応答性が向上し、レベルシフト回路が、負荷容量の大きさに応じた適切な第2増幅変調信号を出力することができる。したがって、この駆動回路によれば、駆動信号の波形におけるオーバーシュートやアンダーシュートが低減されるので、駆動信号の波形精度を向上させることができる。
【0187】
前記駆動回路の一態様において、
前記レベル切替信号生成回路は、前記基駆動信号の値が一定の期間において、前記レベル切替信号の電位を保持してもよい。
【0188】
この駆動回路によれば、駆動信号の電位が一定の期間においてレベルシフト回路がスイッチング動作をしないので、駆動信号COMの波形精度を向上させることができる。
【0189】
前記駆動回路の一態様において、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基駆動信号の値が一定の第1期間において、前記レベル切替信号の電位を保持せず、前記第1期間に続く、前記基駆動信号の値が一定の第2期間において、前記レベル切替信号の電位を保持してもよい。
【0190】
この駆動回路によれば、レベル切替信号生成回路が、基駆動信号dAの値が一定の第1期間において、レベル切替信号の電位を保持せず、基準信号と第1帰還信号とに応じてレベル切替信号の電位を切り替えることにより、駆動信号に発生するオーバーシュートやアンダーシュートを低減させることができる。さらに、この駆動回路によれば、レベル切替信号生成回路が、第1期間に続く、基駆動信号の値が一定の第2期間において、レベル切替信号の電位を保持することにより、駆動信号の電位が一定の期間においてレベルシフト回路がスイッチング動作をしないので、駆動信号の波形精度を向上させることができる
液体吐出装置の一態様は、
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調し、変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記基駆動信号に応じた基準信号を生成する基準信号生成回路と、
前記基準信号が入力され、第1電位と、前記第1電位よりも高い第2電位とを含むデジタル信号であるレベル切替信号を生成するレベル切替信号生成回路と、
前記レベル切替信号が前記第1電位のときに前記第1増幅変調信号を第2増幅変調信号として出力し、前記レベル切替信号が前記第2電位のときに前記第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を前記第2増幅変調信号として出力するレベルシフト回路と、
前記第2増幅変調信号を復調し、前記駆動信号を出力する復調回路と、
前記駆動信号に応じて第1帰還信号を出力する帰還回路と、
を備え、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基準信号と前記第1帰還信号とに応じて前記レベル切替信号の電位を切り替える。
【0191】
この液体吐出装置によれば、駆動回路において、増幅回路が変調信号を増幅した第1増幅変調信号を出力し、基準信号生成回路が基駆動信号に応じた基準信号を生成し、レベル
切替信号生成回路が基準信号と駆動信号に応じた第1帰還信号とに応じてレベル切替信号の電位を切り替え、レベルシフト回路がレベル切替信号の電位に応じて第1増幅変調信号又は第1増幅変調信号の電位をシフトした信号を第2増幅変調信号として出力する。すなわち、レベル切替信号生成回路が、負荷容量の大きさに応じて変化する第1帰還信号の電圧が基準信号の電圧に追従するようにレベル切替信号を生成するので、レベルシフト回路が、負荷容量の大きさに応じた適切な第2増幅変調信号を出力することができる。したがって、この液体吐出装置によれば、負荷容量の変化による駆動信号への影響が低減されるので、駆動信号の波形精度が向上し、液体の吐出精度を向上させることができる。
【0192】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記基準信号生成回路は、
前記基駆動信号の情報が記憶されている記憶部を備え、
前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて前記基準信号を生成してもよい。
【0193】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記基準信号生成回路は、前記基駆動信号が入力され、前記基駆動信号に基づいて前記基準信号を生成してもよい。
【0194】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記帰還回路は、前記駆動信号に応じて第2帰還信号を出力し、
前記変調回路は、前記第2帰還信号に基づいて前記変調信号を出力してもよい。
【0195】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記帰還回路は、ハイパスフィルターを含んでもよい。
【0196】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記レベル切替信号生成回路は、前記基駆動信号の値が一定の期間において、前記レベル切替信号の電位を保持してもよい。
【0197】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記レベル切替信号生成回路は、
前記基駆動信号の値が一定の第1期間において、前記レベル切替信号の電位を保持せず、前記第1期間に続く、前記基駆動信号の値が一定の第2期間において、前記レベル切替信号の電位を保持してもよい。
【符号の説明】
【0198】
1…液体吐出装置、2…移動体、3…移動ユニット、4…搬送ユニット、10…制御ユニット、11…電源回路、20…ヘッドユニット、21…液体吐出ヘッド、24…キャリッジ、31…キャリッジモーター、32…キャリッジガイド軸、33…タイミングベルト、40…プラテン、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、60…圧電素子、100…制御部、190…ケーブル、210…選択制御部、230…選択部、510…D/A変換回路、511…加算器、520…パルス変調回路、521…インバーター、530…ゲートドライブ回路、531,532…ゲートドライバー、540…停止時間測定回路、550…増幅回路、560…復調回路、561…インダクター、562…コンデンサー、570…帰還回路、580…基準信号生成回路、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、710…レベル切替信号生成回路、721…インバーター、730…ゲートドライブ回路、731,732…ゲートドライバー、750…レベルシフト回路、BS…ブートストラップ回路、C1…コンデンサー、C11~C13…コンデンサー、OP1…第1出力点、OP2…第2出力点、D1…ダイ
オード、D11~D13…ダイオード、L…ノズル列、M1~M4…トランジスター、P…媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22