(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127466
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両搭載用クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/44 20060101AFI20240912BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B66C23/44 A
B66C23/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036633
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 賢一
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA08
3F205CA03
3F205DA04
(57)【要約】
【課題】ブームを格納可能な車両搭載用クレーンにおいて、重量及びコストを大幅に増加させることなく、ブームを格納するときの衝撃を緩和させる。
【解決手段】速度制御部200は、作動油の流路として、第一流路210及び第二流路220を備えている。第一流路210は、作動油配管114Rとロッド側作動油室113Rとを接続し、可変絞りRを有している。可変絞りRは、開度が大きいときには速度制御用絞りRAとして機能し、開度が小さいときには衝撃緩和用絞りRBとして機能する。第二流路220は、作動油配管114Rとロッド側作動油室113Rとを、第一流路210を介さずに接続する。第二流路220には開閉部として、ロッド側作動油室113Rから流出する作動油を遮る向きにチェック弁221が備えられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒れた姿勢と立った姿勢とを選択可能なコラムと、該コラムの姿勢を変更するための油圧シリンダと、該油圧シリンダの作動油を制御するためのコントロールバルブと、該油圧シリンダの作動油室と前記コントロールバルブとを接続する作動油流路と、を備えており、前記油圧シリンダの伸縮によって前記コラムの姿勢が変化する車両搭載用クレーンであって、
前記作動油流路は、前記油圧シリンダの動作速度を制御するための速度制御部を備えており、
前記速度制御部は、速度制御用絞りを有する第一流路と、前記第一流路の一部に備えられており前記油圧シリンダのピストンの位置に応じて開度が変化する衝撃緩和用絞りと、前記速度制御用絞り及び前記衝撃緩和用絞りを介さずに、前記作動油室と前記作動油流路とを接続する第二流路と、該第二流路の開閉状態を切り替える開閉部とを備えており、
前記衝撃緩和用絞りは、前記油圧シリンダが、前記コラムが立った姿勢をとる長さから所定の長さになるまでの間、前記速度制御用絞りと同じ開度になり、前記油圧シリンダが前記所定の長さから前記コラムが倒れた姿勢をとる長さまでの間、前記速度制御用絞りよりも開度が小さくなり、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記コラムが倒れた姿勢になるときに作動油が流出する第一作動油室の作動油ポートに接続されており、
前記開閉部は、前記第一作動油室から作動油が流出するときは前記第二流路を閉状態にし、前記第一作動油室に作動油が流入するときは前記第二流路を開状態にすることを特徴とする車両搭載用クレーン。
【請求項2】
前記第二流路が開状態及び閉状態のいずれの状態であっても、前記第一流路は開状態であることを特徴とする請求項1に記載の車両搭載用クレーン。
【請求項3】
前記油圧シリンダは、前記作動油ポートをシリンダチューブの側面に備えており、
前記油圧シリンダのピストンは、前記第一作動油室側の部分に、該ピストンの他の部分よりも径が小さい小径部を備えており、
前記作動油ポートが形成されている位置及び前記ピストンにおける前記小径部の長さは、前記ピストンの前記他の部分と前記作動油ポートとが径方向から見て重なることがないように設定されており、前記油圧シリンダが前記コラムが立った姿勢をとる長さから前記所定の長さになるまでの間、前記作動油ポートは径方向から見て前記小径部と重ならず、前記油圧シリンダが前記所定の長さから前記コラムが倒れた姿勢をとる長さまでの間、前記作動油ポートは径方向から見て前記小径部と重なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両搭載用クレーン。
【請求項4】
前記速度制御部は、その内部に前記第一流路を形成する第一流路形成部材を備えるとともに、該第一流路形成部材の端部は、前記作動油ポートから前記第一作動油室内に突き出しており、該端部の前記第一作動油室への突き出し長さは、前記小径部の外周面と前記シリンダチューブの内周面との間に形成される隙間の幅未満であり、
前記端部には、前記第一流路形成部材の開口部が設けられており、径方向から見て前記端部と前記小径部とが重なっているときに、前記端部と前記小径部との間に、前記速度制御用絞りよりも開度が小さい前記衝撃緩和用絞りが形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両搭載用クレーン。
【請求項5】
前記作動油ポートの内周面と前記第一流路形成部材の外周面との間に、前記第二流路の開口部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両搭載用クレーン。
【請求項6】
前記第一流路形成部材は、前記速度制御部に着脱可能であることを特徴とする請求項5
に記載の車両搭載用クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラック等の車両に搭載して用いられる車両搭載用クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型自動車に分類されるトラックに車両搭載用クレーンを搭載する場合には、走行時の車高を道路運送車両の保安基準に適合した高さにしながら、クレーン作業時の作業範囲を確保するために、ブームを格納可能な車両搭載用クレーンが使われることがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両搭載用クレーンは、ブームを支持するコラムの角度を変更することができ、コラムの角度を変更するために、油圧シリンダであるコラムシリンダが用いられている。コラムシリンダが縮むとコラムが立ち、車両搭載用クレーンは作業姿勢になり、コラムシリンダが伸びるとコラムが倒れ、車両搭載用クレーンはクレーン装置が格納された走行姿勢になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コラムが立つ方向に動くときは、コラムシリンダ内のピストンはピストンロッドを縮める方向に作動油の圧力を受け、コラムが倒れる方向に動くときは、コラムシリンダ内のピストンはピストンロッドを伸ばす方向に作動油の圧力を受ける。コラムが動いているときは、クレーン装置の重さによってコラムを倒そうとする方向の力が生じるため、コラムシリンダは動作時にピストンロッドを伸ばす方向に作用する力を受ける。
【0006】
コラムが立つ方向に動く場合は、クレーン装置の重さによって生じる力は抵抗となるが、コラムが倒れる方向に動く場合には、クレーン装置の重さによって生じる力によって負荷が減少する。そのため、コラムの動作する方向によってコラムシリンダが必要とする作動油圧力は異なる。
【0007】
ピストンロッドをコラムが倒れる方向に動作させる場合には、ピストンロッドがストロークエンドまで到達したときの衝撃が無負荷時よりも大きくなる。そのため、大径のコラムシリンダを使用することで動作を減速させたり衝撃を受ける部分を高強度化したりする必要が生じ、クレーン装置の重量増加やコスト増加の原因となる。
そこで本発明は、大幅な重量増加やコスト増加を招くことなく、クレーン装置格納時に衝撃を緩和できる車両搭載用クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、倒れた姿勢と立った姿勢とを選択可能なコラムと、該コラムの姿勢を変更するための油圧シリンダと、該油圧シリンダの作動油を制御するためのコントロールバルブと、該油圧シリンダの作動油室と前記コントロールバルブとを接続する作動油流路と、を備えており、前記油圧シリンダの伸縮によって前記コラムの姿勢が変化する車両搭載用クレーンであって、
前記作動油流路は、前記油圧シリンダの動作速度を制御するための速度制御部を備えており、
前記速度制御部は、速度制御用絞りを有する第一流路と、前記第一流路の一部に備えら
れており前記油圧シリンダのピストンの位置に応じて開度が変化する衝撃緩和用絞りと、前記速度制御用絞り及び前記衝撃緩和用絞りを介さずに、前記作動油室と前記作動油流路とを接続する第二流路と、該第二流路の開閉状態を切り替える開閉部とを備えており、
前記衝撃緩和用絞りは、前記油圧シリンダが、前記コラムが立った姿勢をとる長さから所定の長さになるまでの間、前記速度制御用絞りと同じ開度になり、前記油圧シリンダが前記所定の長さから前記コラムが倒れた姿勢をとる長さまでの間、前記速度制御用絞りよりも開度が小さくなり、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記コラムが倒れた姿勢になるときに作動油が流出する第一作動油室の作動油ポートに接続されており、
前記開閉部は、前記第一作動油室から作動油が流出するときには前記第二流路を閉状態にし、前記第一作動油室に作動油が流入するときには前記第二流路を開状態にすることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
【0009】
第二の発明は、第一の発明に記載の前記第二流路が開状態及び閉状態のいずれの状態であっても、前記第一流路は開状態であることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明に記載の前記油圧シリンダは、前記作動油ポートをシリンダチューブの側面に備えており、
前記油圧シリンダのピストンは、前記第一作動油室側の部分に、該ピストンの他の部分よりも径が小さい小径部を備えており、
前記作動油ポートが形成されている位置及び前記ピストンにおける前記小径部の長さは、前記ピストンの前記他の部分と前記作動油ポートとが径方向から見て重なることがないように設定されており、前記油圧シリンダが前記コラムが立った姿勢をとる長さから前記所定の長さになるまでの間、前記作動油ポートは径方向から見て前記小径部と重ならず、前記油圧シリンダが前記所定の長さから前記コラムが倒れた姿勢をとる長さまでの間、前記作動油ポートは径方向から見て前記小径部と重なることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
【0010】
第四の発明は、第三の発明に記載の前記速度制御部は、その内部に前記第一流路を形成する第一流路形成部材を備えるとともに、該第一流路形成部材の端部は、前記作動油ポートから前記第一作動油室内に突き出しており、該端部の前記第一作動油室への突き出し長さは、前記小径部の外周面と前記シリンダチューブの内周面との間に形成される隙間の幅未満であり、
前記端部には、前記第一流路形成部材の開口部が設けられており、径方向から見て前記端部と前記小径部とが重なっているときに、前記端部と前記小径部との間に、前記速度制御用絞りよりも開度が小さい前記衝撃緩和用絞りが形成されることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
【0011】
第五の発明は、第四の発明に記載の前記作動油ポートの内周面と前記第一流路形成部材の外周面との間に、前記第二流路の開口部が設けられていることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
第六の発明は、第五の発明に記載の前記第一流路形成部材は、前記速度制御部に着脱可能であることを特徴とする車両搭載用クレーンである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大幅な重量増加やコスト増加を招くことなく、クレーン装置格納時に衝撃を緩和できる車両搭載用クレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両搭載用クレーンの作業姿勢を車両の背面から見た図である。
【
図2】車両搭載用クレーンの走行姿勢を車両の背面から見た図である。
【
図3】コラムを立たせたときのコラムシリンダの姿勢を表す切り欠き図である。
【
図4】コラムを倒したときのコラムシリンダの姿勢を表す切り欠き図である。
【
図7】
図6における作動油ポート部分の拡大図である。
【
図9】
図8における作動油ポート部分の拡大図である。
【
図10】コラムシリンダ伸長時に作動油室から流出する作動油量を示すグラフである。
【
図11】コラムシリンダ収縮時に作動油室に流入する作動油量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
なお、図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
以降の実施形態に係る説明及び図面において、クレーン装置を搭載した車両は水平な位置にあり、クレーン搭載車両が前進する方向(シフトがDレンジ等に選択されている姿勢で走行する方向)を、「前方」又は「正面」と記載する場合がある。同様に、以降の説明及び図面では、クレーン搭載車両が後退する方向(シフトがRレンジに選択されている姿勢で走行する方向)を、「後方」又は「背面」と記載する場合がある。また、以降の説明及び図面では、「左側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における左側とし、「右側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における右側とする。また、「下側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における下側とし、「上側」を、クレーン搭載車両を運転する運転者における上側とする。
また、旋回基台は、ブームを格納する角度にあるものとし、コラムシリンダ等の構成及び作用に係る説明及び図面では、コラムシリンダが水平な状態を基準にして、ロッド側作動油ポートがある方を「上側」とし、ピストンがある方を「下側」として説明する。
【0016】
<車両搭載用クレーンの構成>
図1から
図4は本実施形態に係る車両搭載用クレーンを背面から見た図である。なお
図1から
図4において、車両と作動油用のホース類は図示を省略している。また、図中の一点鎖線は切り欠き線CLである。
本実施形態に係る車両搭載用クレーンは、車両に固定されるベースBと、ベースBの上に設けられているクレーン装置100と、ベースBの側面に設けられているアウトリガ装置O1及びO2と、クレーン装置100とアウトリガ装置O1及びO2との駆動用の作動油を制御するコントロールバルブCと、を有している。
【0017】
クレーン装置100は、ベースBの上面左側に配置されている固定基台101と、固定基台101の上に、旋回装置102を介して旋回可能に設けられている旋回基台103と、基端部が前記旋回基台103に傾斜可能に支持されているコラム110と、端部がコラム110の先端部に傾斜可能に支持されているブーム120と、シリンダチューブの基端部が旋回基台103に支持されておりシリンダロッドの先端部がコラム110に支持されているコラムシリンダ111と、シリンダチューブの基端部が旋回基台103に支持されておりシリンダロッドの先端部がブーム120に支持されているブーム起伏用シリンダ1
21と、を備えている。コラムシリンダ111及びブーム起伏用シリンダ121は、油圧シリンダである。コラムシリンダ111には、速度制御部200が設けられている。ブーム120は公知の多段伸縮ブームであり、基端部にフック104を上下動させるためのウィンチ105が設けられている。
【0018】
本実施形態に係る車両搭載用クレーンは、クレーン作業時には作業範囲を確保するためにコラム110を立たせた作業姿勢(
図1)をとり、車両走行時には道路運送車両の保安基準に適合する車高とするために、コラムを倒した走行姿勢をとる(
図2)。
【0019】
図3のようにコラムシリンダ111が縮むと、コラム110が立ち、ブーム120が持ち上がる。クレーン装置100は、コラムシリンダ111がストロークエンドまで縮みきったときに作業姿勢になる。
図4のようにコラムシリンダ111が伸びると、コラム110が倒れブーム120がベースBに近づく。クレーン装置100は、コラムシリンダ111がストロークエンドまで伸びきったときに走行姿勢となる。
なお、ブーム120は、旋回基台103に支持されているコラム110及びブーム起伏用シリンダ121に支持されることでリンク機構を構成し、ベースBと平行に近い角度を維持しながら作業姿勢と走行姿勢との間での姿勢変更が行われる。
【0020】
<車両搭載用クレーンの油圧回路>
図5は、本実施形態に係る車両搭載用クレーンの油圧回路図である。なお、本実施形態においてコラムシリンダ111及びブーム起伏用シリンダ121は、スプール弁107に接続されている。そのため、
図5においてはコラムシリンダ111及びブーム起伏用シリンダ121以外の油圧アクチュエータと、コラムシリンダ111及びブーム起伏用シリンダ121以外の動作を制御するための油圧回路とは、図示を省略している。
【0021】
本実施形態において、作動油圧を発生させるための油圧ポンプPは、作動油タンクTとコントロールバルブCとの間に接続されている。作動油タンクTは、吸い込み側にフィルタF1を備え、戻り側にフィルタF2を備えている。コントロールバルブCは、リリーフ弁106及びアクチュエータの動作を制御するためのスプール弁107を有している。
【0022】
スプール弁107にはシリンダロッド伸長位置とシリンダロッド収縮位置とシリンダロッド停止位置とがあり、操作がされていないときには、ばね力によってシリンダロッド停止位置に保たれる。スプール弁107がシリンダロッド停止位置にあるときは、油圧ポンプPから出た作動油はリリーフ弁106を通り、作動油タンクTへ戻る。スプール弁107が操作され流路が切り替わると、油圧ポンプPから出た作動油はコラムシリンダ111に流れる。コラムシリンダ111がロッド側のストロークエンドに到達するとリリーフ弁106が開き、作動油は作動油タンクTへ流れる。コラムシリンダ111がヘッド側のストロークエンドに到達すると、起立切換弁117が開き作動油はブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hに流れる。
【0023】
作動油配管114Hはコラムシリンダ111のヘッド側作動油室113H及びブーム起伏用シリンダ121のロッド側作動油室123Rに接続されている。コラムシリンダ111のヘッド側作動油ポート112Hには、コラムシリンダの動作速度を制御するためのチョーク212Hが設けられている。
【0024】
作動油配管114Hが分岐Y1より分岐してから、コラムシリンダのヘッド側作動油室113Hまでの間には倒伏切換弁122が備えられている。倒伏切換弁122は、ブーム起伏用シリンダ121が所定の伸縮位置にあるときに開くチェック弁であり、ブーム起伏用シリンダ121が伸長しているときにはコントロールバルブCからコラムシリンダ11
1のヘッド側作動油室113Hへ流れる作動油をせき止める。倒伏切換弁122は、ブーム120が作業状態にあるときにコラム110を動作させないための安全弁である。
作動油配管114Rは、コラムシリンダ111のロッド側作動油室113Rに設けられている速度制御部200及びブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hに接続されている。
【0025】
作動油配管114Rが分岐Y2より分岐してから、ブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hまでの間には起立切換弁117が備えられており、コラムシリンダのロッド側作動油室113Rまでの間には、ロッド側作動油室113Rから流出する作動油をせき止めるパイロットチェック弁118が備えられている。起立切換弁117は、コラムシリンダ111が所定の収縮位置にあるときに開くチェック弁であり、コラムシリンダ111が伸長しているときにはコントロールバルブCからブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hへ流れる作動油をせき止める。起立切換弁117は、クレーン装置100が作業状態ではないときにブーム120を動作させないための安全弁である。パイロットチェック弁118は、コラムシリンダ111のヘッド側作動油室113Hに作動油が流入していないときにロッド側作動油室113Rから作動油が流出しないようにするための安全弁である。また、作動油配管114Rが分岐してからブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hまでの間には、荷吊り時にブーム起伏用シリンダ121の収縮速度を制御するためのカウンタバランス弁124が備えられている。
【0026】
速度制御部200は、作動油の流路として、第一流路210及び第二流路220を備えている。
第一流路210は、作動油配管114Rとロッド側作動油室113Rとを接続し、可変絞りRを有している。なお、詳細は後述するが、可変絞りRは、開度が大きいときには速度制御用絞りRAとして機能し、開度が小さいときには衝撃緩和用絞りRBとして機能する。
第二流路220は、作動油配管114Rとロッド側作動油室113Rとを、第一流路210を介さずに接続する。第二流路220には開閉部として、ロッド側作動油室113Rから流出する作動油を遮る向きにチェック弁221が備えられている。
チェック弁221によって、作動油がロッド側作動油室113Rから流出する場合には第二流路220は閉状態になり、作動油がロッド側作動油室113Rに流入する場合には第二流路220は開状態になる。
【0027】
<速度制御部の構成>
図6は、
図8におけるコラムシリンダ111のB-B線断面図であり、
図7は、
図6における作動油ポート112R部分VIIの拡大図である。
図6及び
図7に示す通りに、速度制御部200は、ボックス201及び第一流路形成部材211を有している。ボックス201は上下方向の貫通穴202と、貫通穴の上下を接続する接続流路220Aと、接続流路220Aの上側開口部と貫通穴202を介して向き合う位置からボックス201の側面までを貫通する配管用流路203と、を有している。
【0028】
接続流路220Aは、途中にチェック弁221を有している。チェック弁221は、他の流路よりも大径の弁座224及び弁室222に封入されている球形の弁体223を備えており、ロッド側作動油室113Rから第二流路220を介して作動油配管114Rへ流出する作動油をせき止める。
【0029】
第一流路形成部材211は、貫通穴202に嵌まり合い、第一ネジ部215とボックス側のネジ部204とが締まり合うことで、回転可能な半固定状態になり、半固定状態のときに、第二ネジ部216とナット217とが締まり合うことで固定される。
第一流路形成部材211は、軸方向の長さがボックス201の上下方向の長さよりも長
い。そのため、第一流路形成部材211はボックス201に固定されたとき、ボックス201の下面から突出する突出部211Aを有する。
第一流路形成部材211は軸心を通り径方向に貫通する分岐流路213と、突出部211Aから分岐流路213まで軸方向に貫通しているチョーク212Rとを有する。
また、第一流路形成部材211のチョーク212R側は、他の部分より径が小さい小径部214を有する。
【0030】
第一流路形成部材211がボックス201に固定されると、作動油配管114Rからチョーク212Rを介してロッド側作動油室113Rまで第一流路210が接続される。
また、分岐流路213によって作動油配管114Rと接続流路220Aとが接続される。ボックス201の貫通穴202と小径部214との間には隙間202Aが形成され、隙間202Aには接続流路220Aの下側開口部が臨んでいるため、隙間202Aと接続流路220Aとが接続される。よって作動油配管114Rから、接続流路220A及び作動油ポート112Rを通り、ロッド側作動油室113Rに至る第二流路220が形成される。
【0031】
<油圧シリンダの構成>
本実施例におけるコラムシリンダ111は、複動片ロッドシリンダである。シリンダチューブ111C内にはピストン116が摺動可能にはめ込まれており、ピストン116にはシリンダロッド111Rが固定されている。シリンダチューブ111C内は、ピストン116によってロッド側作動油室113R及びヘッド側作動油室113Hに分けられている。また、ピストン116のロッド側作動油室113R側の部分には、他の部分より径が小さいピストン小径部116Aが設けられている。作動油ポート112Rは、シリンダチューブの周壁であってピストン116がロッド側のストロークエンドに到達したときに、作動油ポート112Rの全体がピストン小径部116Aと重なる位置に設けられている。即ち、作動油ポート112Rが形成されている位置及びピストン116におけるピストン小径部116Aの長さは、ピストン116のピストン小径部116A以外の部分と作動油ポート112Rとが径方向から見て重なることがないように設定されている。
【0032】
第一流路形成部材211がボックス201に固定されることで、作動油ポート112Rの内側に第一流路形成部材211が配置される。そのため、作動油ポート112Rの中心部には第一流路形成部材211の開口部が設けられる。そして、作動油ポート112Rの内周面と第一流路形成部材211の外周面との間に第二流路220の一部が設けられる。
【0033】
ピストン小径部116Aは、シリンダチューブ111Cの内周面との間に作動油の流路115を形成する。流路115は、ピストン116が、そのピストン小径部116Aと作動油ポート112Rとが重なる領域で動作するときに、作動油ポート112R及びチョーク212Rとロッド側作動油室113Rとを接続する。即ち、ピストン116が、そのピストン小径部116Aと作動油ポート112Rとが重なる領域で動作するとき、流路115は、第一流路210及び第二流路220の一部となる。
また、ピストン116のロッド側端面116Bには、溝116Cが形成されており、ピストン116がロッド側のストロークエンドに位置しているときに、作動油が流入する空間を確保している。
【0034】
<速度制御用絞り及び衝撃緩和用絞り>
図8は
図6におけるコラムシリンダ111のA-A断面図であり、
図9は
図8における作動油ポート112R部分IXの拡大図である。
図8及び
図9に示す通り、ピストン116が作動油ポート112Rと重なる領域にある場合には、突出部211Aの端部はシリンダチューブ111Cの内周面とピストン116のピストン小径部116Aの間に位置する。ここで、ピストン小径部116Aと突出部2
11Aとの間には流路115の幅より狭い隙間218が形成される。隙間218の流路面積SA2はチョーク212Rの流路面積SA1よりも狭くなり(SA1>SA2)、チョーク212Rよりも強い絞りとなる。そのため、衝撃緩和用絞り絞りRBである隙間218が支配的に流量を制限する。
ピストン116が、径方向から見て作動油ポート112Rと重ならない領域にある場合には、隙間218が形成されないため、速度制御用絞りRAであるチョーク212Rが流量を制限する。
【0035】
<コラムシリンダの動作と作動油流量の関係>
次に、コラムシリンダ111と、コラムシリンダ111のロッド側作動油室113Rから流出する作動油の量及びロッド側作動油室113Rに流入する作動油の量との関係について、
図6、
図7、
図10及び
図11を用いて説明する。なお、
図6及び
図7は、後述するピストン116が第一位置A1から第二位置A2に移動している間(SEC2)の状態を示す図である。
【0036】
図10は、コラムシリンダ111が最小の長さになるまで収縮した状態から伸長方向に動作するとき、即ちピストン116がヘッド側のストロークエンドE1からロッド側のストロークエンドE2まで移動するときの、シリンダチューブ111C内部におけるピストン116の位置を横軸とし、単位時間あたりに作動油室113Rから流出する作動油の量(以下において流出量Qoとして説明する)を縦軸としたグラフである。
図11は、コラムシリンダ111が最大の長さになるまで伸長した状態から収縮方向に移動するとき、即ちピストン116がロッド側のストロークエンドE2からヘッド側のストロークエンドE1まで移動するときの、シリンダチューブ111C内部におけるピストン116の位置を横軸とし、単位時間あたりに作動油室113Rに流入する作動油の量(以下において流入量Qiとして説明する)を縦軸としたグラフである。
【0037】
なお、
図10における、ヘッド側のストロークエンドE1から、後述する第一位置A1までの間と、
図11における、ヘッド側のストロークエンドE1から後述する第四位置A4までの間とについては、ピストン116が移動しても流出量Qo及び流入量Qiが変化しないため、グラフの一部を省略している。また、グラフは模式的なものであり、実際の流量の変化は、グラフの形状と必ずしも一致しない。
【0038】
図10に示すように、ピストン116が、ヘッド側のストロークエンドE1から第一位置A1に到達するまでの間(SEC1)において、作動油は、第一流路形成部材211の開口部から、チョーク212Rを介して作動油配管114Rに流れる。第一位置A1とは、第一流路形成部材211の開口部が、その径方向から見てピストン116のロッド側端面116Bと重なりはじめる位置である。この間(SEC1)において流出量Qoは、チョーク212Rによって制限され、速度制御時流出量Qo1となる。
【0039】
ピストン116が第一位置A1から第二位置A2に移動している間(SEC2)に、隙間218が形成される。第二位置A2とは、第一流路形成部材211の開口部の全体がその径方向から見てピストン116のピストン小径部116Aと重なり、隙間218が形成される位置である。この間(SEC2)に、流出量Qoは、隙間218によって衝撃緩和時流出量Qo2まで減少する。
ピストン116が、第二位置A2からロッド側のストロークエンドE2まで移動する間(SEC3)は隙間218が形成され続けるため、衝撃緩和時流出量Qo2が維持される。
【0040】
以上のように、速度制御用絞りRAは、作動油の流量を、ピストン116がロッド側のストロークエンドE2に近づくまではコラムシリンダ111が一定の速度で動作し、且つ
クレーン装置100の重量によって過剰な動作速度で伸長しないような速度制御時流出量Qo1になるように制限する。そして、ピストン116がロッド側のストロークエンドE2に近づいたときに、衝撃緩和用絞りRBが、作動油の流量を衝撃緩和時流出量Qo2まで制限することで、コラムシリンダ111の動作を大きく減速させる。即ち、コラムシリンダ111が伸長し、コラムが倒れる方向に動作するときの衝撃を緩和する。
【0041】
図11に示すように、ピストン116が、ロッド側のストロークエンドE2から第三位置A3に到達するまでの間(SEC4)において、作動油は、作動油配管114Rから第一流路210及び第二流路220を介して作動油室113Rに流入する。第三位置A3とは、作動油ポート112Rがその径方向から見てピストン116のロッド側端面116Bと重なりはじめる位置である。このとき、ピストン116のロッド側端面116Bはシリンダチューブ111Cの内面におけるロッド側の端部に接触しているが、ピストン116のロッド側端面116Bには溝116Cが形成されているため、作動油はまず溝116Cに流入する。溝116Cに流入した作動油によってピストン116に圧力が掛かり、ピストン116が収縮側に移動することで、作動油室113Rに作動油が流入する空間が形成される。その後、この空間に作動油が流入し、ピストン116が収縮側に移動する。第二流路220の入り口は、チョーク212Rよりも作動油配管114Rの側に形成されており、その出口は、作動油ポート112Rに接続するように形成されている。そのため、チョーク212R及び隙間218の影響を受けず、流入量Qiは、流路115の流路面積に応じた始動時流入量Qi1となる。
【0042】
ピストン116が第三位置A3から第四位置A4に移動している間(SEC5)も、作動油は、第一流路210及び第二流路220を経由して作動油室113Rに流入する。第四位置A4とは、作動油ポート112Rが、その径方向から見てピストン116のロッド側端面116Bと重なり、第二流路220の開口部が、流路115の流路面積よりも広くなる位置である。このとき、流路115は作動油の流路として機能しなくなり、この間(SEC5)における流入量Qiは、第二流路開時流入量Qi2となる。第二流路開時流入量Qi2は、クレーン装置100において、コラムシリンダ111が動作するときの最大の流量であり、速度制御時流出量Qo1、衝撃緩和時流出量Qo2及び始動時流入量Qi1よりも多くなる。なお、流路115の流路面積は、その径方向からみた作動油ポート112Rの面積以上になるように形成してもよく、その場合には始動時流入量Qi1は、第二流路開時流入量Qi2と等しくなる。
【0043】
ピストン116が第四位置A4からヘッド側のストロークエンドに到達するまでの間(SEC6)において、作動油は、第一流路210及び第二流路220を経由して作動油ポート112Rから作動油室113Rに流入する。そのため、第二流路開時流入量Qi2が維持される。
【0044】
以上のように、ピストン116がロッド側のストロークエンドE2からヘッド側のストロークエンドE1まで移動するとき、速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBは作用しない。そのため、コラムシリンダ111が収縮し、コラム110が起き上がる方向に動作するとき、流入量Qiは、速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBによって制限されない。
【0045】
なお、第二流路220に備えられているチェック弁221の他に、第一流路210に作動油配管114Rから作動油室113Rに流入する作動油をせき止める向きのチェック弁を備える構成や、開閉部として第一流路210と第二流路220とを切り替えるスプール弁を備える構成とした場合であっても、本実施形態に係る速度制御部200と同様の効果を奏する。
【0046】
また、作動油室113Rに流入する作動油のうち、第一流路210を流れる量と、第二流路220を流れる量とは、チョーク212Rと、隙間218と、第二流路との流路面積の比によって変化する。そのため、例えばチョーク212R及び隙間218の流路面積を、第二流路220の流路面積に対して狭く形成することで、作動油室113Rに流入する流量のうち第二流路220の比率を増やし、疑似的に流路を切り替えてもよい。その場合、第一流路210が開状態のとき第二流路220は閉状態になり、第一流路210が閉状態のとき第二流路220が開状態になる。
【0047】
<効果>
クレーン作業を開始するときには、車両を停止させクレーン装置100を走行状態から作業状態にさせる。そのとき、コラム110は倒れた状態であり、コラムシリンダ111を収縮させることによって立った状態にさせる。コラムシリンダ111を収縮させるときには、クレーン装置100の重量が負荷となり、コラムシリンダ111を始動させるために必要な作動油圧力が高くなる。
【0048】
ピストン116をシリンダロッド111Rが収縮する方向に動作させるとき、ピストン116はロッド側のストロークエンドE2から動作を開始する。そのとき、チェック弁221が開くため、作動油は第二流路220を介してロッド側作動油室113Rに流れ、速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBの影響を受けない。よって、作動油が第一流路210を介してロッド側作動油室113Rに流れる場合よりも速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBによる圧力損失を抑えることができ、クレーン装置100の重量による負荷に抗してコラム110を立った状態に安定して動作させられる。
【0049】
コラムシリンダ111が所定の位置まで収縮すると、起立切換弁117が開き作動油はブーム起伏用シリンダ121のヘッド側作動油室123Hへ流れ、ブーム起伏用シリンダ121を伸長させる。ブーム起伏用シリンダ121が伸長し、ブーム120が水平な状態になるとクレーン装置100は作業状態になる。
【0050】
クレーン作業を終了し車両を走行可能な状態にするためには、クレーン装置100を作業状態から走行状態にさせる。クレーン装置100を走行状態にするためには、コラム110を倒した状態にする必要があるため、まずブーム起伏用シリンダ121を所定の位置まで収縮させ倒伏切換弁122を開く。倒伏切換弁122が開くことで、コラムシリンダのヘッド側作動油室113Hに作動油が流れる。このとき、コラム110は立った状態であり、コラムシリンダ111を伸長させることによって倒れた状態にする。コラムを倒す方向に動作させるとき、シリンダロッド111Rはクレーン装置100の重量によって伸長方向に作用する力を受け、負荷が減少するため動作が速くなりやすい。
【0051】
シリンダロッド111Rが伸長する方向に動作するとき、ピストン116はヘッド側のストロークエンドE1から動作を開始する。そのとき、チェック弁221が閉じるため、作動油は第二流路220を流れず、第一流路210のみを経由してコントロールバルブCへ流れる。
ピストン116が作動油ポート112Rと重ならない領域においては、作動油はチョーク212Rを介して流れるため、流量は一定に制限される。そのためシリンダロッド111Rの動作速度も一定になるように減速される。ピストン116がストロークエンドに到達しようとすると、突出部211Aの端部とピストン小径部116Aが近接し、部分的にチョーク212Rより面積の狭い隙間218が形成される。隙間218によってロッド側作動油室113Rから流出する作動油は、流量がさらに制限されるためストロークエンド直前にピストン116はさらに減速し、ストロークエンド到達時の衝撃が緩和される。
【0052】
コラム110を立った姿勢に変更させるとき、仮に第二流路220が形成されていない
構成の場合には、作動油温度が低い場合などに、衝撃緩和用絞りRBによって発生する圧力損失が大きくなり、ピストンの始動圧力を得られない場合がある。本発明は、そのような問題が発生する可能性を抑え且つ衝撃緩和機能を発揮させるために、チェック弁221によって流路を選択し、シリンダロッド111R収縮時にピストン116に掛かる実効圧力を確保している。
【0053】
また、コラム110を倒れた姿勢に変更するときの動作速度をチョーク212Rのみによって調節する構成の場合には、コラム110のすべての動作を減速させなければならず、走行姿勢から作業姿勢に変更するときや、作業姿勢から走行姿勢に変更する動作におけるすべての領域において、動作が終了するまでに余計に時間を要するという問題が生じる。
【0054】
本発明は、コラムの動作する方向に応じて流路を切り替えることができるため、コラム110を走行姿勢から作業姿勢に変更するときには、速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBを備えない第二流路220に作動油を流すことができる。そのため、コラムシリンダ111に油圧ポンプPが吐出可能な流量の作動油を供給できるため、姿勢変更動作を減速させることがなく、余計に時間を要しない。
【0055】
コラム110を作業姿勢から走行姿勢に変更するときには、ピストン116のストロークエンド付近までチョーク212Rによってストロークエンド直前での減速による衝撃が強くなりすぎないような速度まで減速され、ピストン116がストロークエンドに到達する直前に、チョーク212Rよりも狭い隙間218が形成されることで衝撃の緩和に必要な減速がされる。よって本発明は、チョーク212Rのみを備える構成と比べて、コラム110の動作に必要な時間を短くでき、さらに、ピストンのストロークエンド直前においてコラム110の動作を大きく減速させることができるため、衝撃緩和機能を向上させることができる。
【0056】
本発明において、第一流路形成部材211と速度制御部200とは着脱可能な別部材であるため、速度制御用絞りRA及び衝撃緩和用絞りRBの強さを容易に設定可能である。
ピストン116のストロークエンド付近以外における動作速度は、第一流路形成部材211をチョーク212Rの径が異なるものに交換することで設定でき、ストロークエンド付近における動作速度は第一流路形成部材211の固定位置を変更し、突出部211Aとピストン小径部116Aの間の隙間218の大きさを変更することで設定できる。第一流路形成部材211の固定位置は、ネジ部204と第一ネジ部215との締め合い量によって調節できる。
【0057】
さらに、速度制御部200はコラムシリンダ111の側面に取り付けられており、第一流路形成部材211が交換可能であるため、実機の動作状況に応じて後からでもコラムシリンダ111の動作速度を調節したり、絞りの強さを調節することで、シリンダ径の異なる油圧シリンダをコラムシリンダとして使用したりすることができる。
【0058】
また本発明によれば、速度制御部200のための作動油ポート112Rは一つでよい。そして、作動油ポート112Rの内周面と第一流路形成部材211の外周面との間に第二流路220の開口部が設けられていることから、小径部214の径を小さくすることで第二流路220の開口面積を、第一流路形成部材211に第二流路220の開口部を設ける場合よりも広くすることができ、ロッド側作動油室113Rに作動油が流入するときの抵抗を減らすことができる。さらに第一流路形成部材211の加工コストも減らすことができる。
【0059】
以上より、本発明を用いることによってシリンダチューブに特別な機構を設ける必要が
なく、油圧シリンダの大きさを増加させずに流路選択機能を付加させることで、コラムシリンダの大型化及び構造の複雑化を回避することができ、設計及び製造コストを大幅に増加させることなく、クレーン装置格納時に衝撃を緩和可能な車両搭載用クレーンを提供することができる。
【0060】
<変形例>
本実施例では、コラムシリンダ111が伸長することによって、コラム110が倒れた姿勢になるが、コラムシリンダ111が収縮することによってコラムが倒れた姿勢になる構成でもよい。その場合には、速度制御部200は、コラムシリンダ111のヘッド側作動油ポート112Hに接続される。
また、本実施例では、チョーク部213Rと作動油ポート112Rが同心円上に配置されているが、例えば第一流路形成部材211は、コラムシリンダ111の中央側に偏って配置されていてもよい。
【0061】
本実施例では、流路選択部に球形の弁体223を有するチェック弁221を用いているが、弁体はポペット等を用いてもよく、また、開閉部はスプールなどを用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
A1 第一位置
A2 第二位置
A3 第三位置
A4 第四位置
B ベース
C コントロールバルブ
CL 切り欠き線
E1 ヘッド側のストロークエンド
E2 ロッド側のストロークエンド
F1、F2 フィルタ
O1、O2 アウトリガ装置
P 油圧ポンプ
RA 速度制御用絞り
RB 衝撃緩和用絞り
T 作動油タンク
Qo 流出量
Qo1 速度制御時流出量
Qo2 衝撃緩和時流出量
Qi 流入量
Qi1 始動時流入量
Qi2 第二流路開時流入量
Y1、Y2 分岐
100 クレーン装置
101 固定基台
102 旋回装置
103 旋回基台
104 フック
105 ウィンチ
106 リリーフ弁
107 スプール弁
110 コラム
111 コラムシリンダ
111C シリンダチューブ
111R シリンダロッド
112R、112H 作動油ポート
113R、113H 作動油室
114R、114H 作動油配管
115 流路
116 ピストン
116A ピストン小径部
116B ロッド側端面
116C 溝
117 起立切換弁
118 パイロットチェック弁
120 ブーム
121 ブーム起伏用シリンダ
122 倒伏切換弁
123R、123H 作動油室
124 カウンタバランス弁
200 速度制御部
201 ボックス
202 貫通穴
202A 隙間
203 配管用流路
204 ネジ部
210 第一流路
211 第一流路形成部材
211A 突出部
212R、212H チョーク
213 分岐流路
214 小径部
215 第一ネジ部
216 第二ネジ部
217 ナット
218 隙間
220 第二流路
220A 接続流路
221 チェック弁
222 弁室
223 弁体
224 弁座