(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127472
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】使用済樹脂の再生方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
C08J11/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036647
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖昭
(72)【発明者】
【氏名】古川 欣史
(72)【発明者】
【氏名】内田 均
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA10
4F401AB10
4F401AC01
4F401CA58
4F401CB01
4F401CB18
4F401EA67
4F401EA70
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】使用済樹脂を、臭気が抑制され、靭性に関する引張伸び及び衝撃強さの低下も抑制された、リサイクルの用途幅が広い再生樹脂に再生する。
【解決手段】使用済樹脂にアミン化合物系のVOC捕捉剤を0.03~0.3重量%添加して溶融混合し、該使用済樹脂に含まれるVOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを前記VOC捕捉剤に捕捉するとともに、該使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質を減圧により気化除去して、臭気が抑制された再生樹脂にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済樹脂にアミン化合物系のVOC捕捉剤を0.03~0.3重量%添加して溶融混合し、該使用済樹脂に含まれるVOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを前記VOC捕捉剤に捕捉するとともに、該使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質を減圧により気化除去することを特徴とする使用済樹脂の再生方法。
【請求項2】
前記使用済樹脂は廃棄自動車由来のものである請求項1記載の使用済樹脂の再生方法。
【請求項3】
前記使用済樹脂にバージン樹脂を混合する請求項1記載の使用済樹脂の再生方法。
【請求項4】
前記溶融混合前の使用済樹脂にホスファイト系酸化防止剤を添加する請求項1記載の使用済樹脂の再生方法。
【請求項5】
前記溶融混合は混練押出機にて行う請求項1~4のいずれか一項に記載の使用済樹脂の再生方法。
【請求項6】
前記減圧は前記混練押出機の減圧ベントにて行う請求項5記載の使用済樹脂の再生方法。
【請求項7】
前記混練押出機は2機を前後直列で用いる請求項5記載の使用済樹脂の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済樹脂をリサイクル可能な再生樹脂に再生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済樹脂はそれに含まれたVOC(揮発性有機化合物)等により臭気を発することが多く、そのままではリサイクルの用途幅が狭い。そこで、使用済樹脂に臭気抑制剤を加えることにより、臭気を抑制した再生樹脂にすることが試みられている。
【0003】
特許文献1には、ポストコンシューマー樹脂(使用済樹脂)に、臭気抑制剤としてのCaO等の金属酸化物と酸性コポリマーとの組み合わせを加えることが記載されている。金属酸化物は5.0eVを超えるバンドギャップを有するものに特定され、CaOのほか、MgO、SrO、Al2O3も挙げられている。酸性コポリマーは、エチレンモノマー及びカルボン酸コモノマーを含有するコポリマーである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の再生方法には、次の問題がある。
・使用済樹脂にCaO等の金属酸化物を添加すると、再生樹脂の特に靭性に関する引張伸び及び衝撃強さが低下するため、ダウンサイクル利用が多くなり、元部品へリサイクルすることが難しい。
・臭気成分として、揮発性ヘテロ-カルボニル種(揮発性C1~C16のアルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アルコール、エーテル)を挙げているが、炭化水素系化合物の除去については言及されていない(除去できていないと考えられる)。
・使用済樹脂は、包装容器(ボトル、パッケージ、フィルム)由来が主であって、廃棄自動車由来の言及はない。なお、特許文献1以外の従来技術をあたっても、廃棄自動車由来の使用済樹脂を再生して自動車内装部品へリサイクルする事例は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、使用済樹脂を、臭気が抑制され、靭性に関する引張伸び及び衝撃強さの低下も抑制された、リサイクルの用途幅が広い再生樹脂に再生することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]使用済樹脂にアミン化合物系のVOC捕捉剤を0.03~0.3重量%添加して溶融混合し、該使用済樹脂に含まれるVOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを前記VOC捕捉剤に捕捉するとともに、該使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質を減圧により気化除去することを特徴とする使用済樹脂の再生方法。
【0008】
[作用]
使用済樹脂にアミン化合物系のVOC捕捉剤を0.03~0.3重量%添加して溶融混合することにより、次の化学反応式に示すように、該使用済樹脂に含まれるVOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが前記VOC捕捉剤に捕捉され、再生樹脂の臭気が低減する。また、使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質を減圧により気化除去することにより、CaO等では除去できないと考えられるC11~C18の低分子量炭化水素等が除去され、再生樹脂の臭気がさらに低減する。
【化1】
【0009】
前記VOC捕捉剤の添加量が、0.03重量%未満であると前記捕捉が不十分となり、0.3重量%を超えると再生樹脂の引張伸び及び衝撃強度が低下する。VOC捕捉剤の添加量は、0.04~0.2重量%がより好ましい。
【0010】
[2]使用済樹脂は廃棄自動車由来のものである[1]記載の使用済樹脂の再生方法。
使用済樹脂が廃棄自動車由来のものである場合、従来は臭気規格を満足できなかった廃棄自動車由来の使用済樹脂の臭気を十分に低減し、臭気規格を満足する再生樹脂にすることができる。その再生樹脂は、自動車内装部品へリサイクルすることができる。こうして、大量に発生する廃棄自動車由来の使用済樹脂のリサイクルにより、CO2排出量削減、サーキュラーエコノミーに貢献できる。
【0011】
[3]使用済樹脂にバージン樹脂を混合する[1]又は[2]記載の使用済樹脂の再生方法。
使用済樹脂にバージン樹脂を混合することにより、再生樹脂の特性がバージン樹脂に近付き、引張伸び及び衝撃強度が向上する。
【0012】
[4]前記溶融混合前の使用済樹脂にホスファイト系酸化防止剤を添加する[1]~[3]のいずれか一項に記載の使用済樹脂の再生方法。
溶融混合前の使用済樹脂にホスファイト系酸化防止剤を添加することにより、後述するようににおい評価が改善される。ホスファイト系酸化防止剤が、使用済樹脂に含まれる樹脂劣化物であるパーオキサイドやラジカルなどと直接反応して安定化させ、低分子量物の生成を抑制する。
【0013】
[5]前記溶融混合は混練押出機にて行う[1]~[4]のいずれか一項に記載の使用済樹脂の再生方法。
前記溶融混合を混練押出機にて行うことにより、独立した混練機で行う場合と比べて、再生の効率が高くなる。
【0014】
[6]前記減圧は混練押出機の減圧ベントにて行う[5]記載の使用済樹脂の再生方法。
前記減圧を混練押出機の減圧ベントにて行うことにより、独立した減圧機で行う場合と比べて、再生の効率が高くなる。
混練押出機は、単軸混練押出機でも二軸混練押出機でもよい。
【0015】
[7]前記混練押出機は2機を前後直列で用いる[5]記載の使用済樹脂の再生方法。
前記溶融混合を2機の混練押出機にて前後直列に行うことにより、VOCをVOC捕捉剤により十分に捕捉することができる。
前記VOC捕捉剤の添加は、前後の混練押出機のいずれか一方または両方で行うことができるが、廃棄自動車から回収した使用済樹脂を溶融リペレット化する第1混練時にVOC捕捉剤を添加する方が捕捉効果が高く、好ましい。
前記減圧は、前後の混練押出機のいずれか一方または両方で減圧脱気により行うことができるが、少なくとも後の混練押出機で行うことが好ましい。再生樹脂を得る最終段階で減圧脱気することにより、低分子量物などを取りこぼし少なく除去できるためである。
前記バージン樹脂の混合は、前後の混練押出機のいずれか一方または両方で行うことができるが、VOC捕捉剤の使用済樹脂に対する濃度が前の混練押出機で低くならないように後の混練押出機で行うことが好ましい。また、回収した使用済樹脂を先に溶融リペレット化した方が、種々混合された使用済樹脂を均一化するのに効果的だからである。
前記ホスファイト系酸化防止剤の添加は、前後の混練押出機のいずれか一方または両方で行うことができるが、廃棄自動車から回収した使用済樹脂を溶融リペレット化する第1混練時にホスファイト系酸化防止剤を添加する方が劣化抑制効果が高く、好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用済樹脂を、臭気が抑制され、かつ、靭性に関する引張伸び及び衝撃強さの低下が小さく、もってリサイクルの用途幅が広い再生樹脂に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は実施例の使用済樹脂の再生方法の説明図である。
【
図2】
図2は変更例の使用済樹脂の再生方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<1>使用済樹脂
使用済樹脂の樹脂種は、特に限定されない。
使用済樹脂は、粉砕された片状、粒状等の粉砕物が好ましい。
使用済樹脂の、使用時間、使用状況等は特に限定されない。
使用済樹脂の由来(使用用途)としては、特に限定されないが、廃棄自動車由来のものを好適に用いることができ、特に廃棄自動車の内装用樹脂部品を好適に用いることができる。
【0019】
<2>VOC
使用済樹脂に含まれるVOCとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン 、スチレン、メチルエチルケトン等を例示できる。本発明では、VOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを、アミン化合物系の捕捉剤に捕捉して低減させる。
【0020】
<3>アミン化合物系のVOC捕捉剤
アミン化合物系のVOC捕捉剤としては、特に限定されないが、脂肪族アミン(メチルアミン、エチルアミン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン等)、ジエチルアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド等)、エーテルアミン、アミノ酸、アミノ酸修飾シリカゲル、芳香族アミン(アニリン、トルイジン、チラミン、ヒスタミン、トリプタミン、フェネチルアミン等)、複素環式アミン(ピペリジン、ピペラジン、ピロール、イミダゾール等)を例示できる。
【0021】
<4>揮発性におい物質
使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質としては、次のものを例示できる。
・C11~C18の低分子量炭化水素であるにおい物質:C10H18(cis-p-メンタ-8-エン、デカヒドロナフタレン等)、C11H20(2-メチルデカヒドロナフタレン等)、C11H24、C12H26、C15H32、C18H38等等を例示できる。
・極性物質であるにおい物質:S・N等を含む化合物、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル等があり、これらは経年使用により樹脂に付着・混入して含まれると考えられる。具体的には、アクリル酸ブチル、2-ペンチルチオフェン、2-ヘキシルフラン、メチル基を有するN化合物(C10H19N)、シクロヘキシルイソチオシアネート(C7H11NS)、プロピレンオキシド骨格を有する化合物等を例示できる。
【0022】
<5>ホスファイト系酸化防止剤
ホスファイト系酸化防止剤としては、特に限定されないが、トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラC12-15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)フォスファイト、トリヘキシルフォスファイト等を例示できる。
【実施例0023】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、実施例の材料、条件、構造、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0024】
図1に示すように、廃棄自動車の内装用樹脂部品の粉砕材からなる使用済樹脂を、2機の第1混練押出機と第2混練押出機を前後直列に用いて溶融混練し、その際にいずれか一方の混練押出機でアミン化合物系のVOC捕捉剤を添加することにより、該使用済樹脂に含まれるVOCのうち少なくともホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを前記VOC捕捉剤に捕捉するとともに、第2混練押出機の減圧ベントで該使用済樹脂に含まれる揮発性におい物質を減圧脱気により気化除去する、という実施例1~6の樹脂再生を行った。また、比較のため、比較例1~4も行った。
【0025】
次の表1に示すように、実施例1,3,4は、第1混練押出機に使用済樹脂を(実施例5ではホスファイト系酸化防止剤も)投入し、第2混練押出機に第1混練押出機から押出後のリペレット材とバージン樹脂とVOC捕捉剤1又はVOC捕捉剤2とを投入して行った。
実施例2,5,6は、第1混練押出機に使用済樹脂とVOC捕捉剤1を投入し、第2混練押出機に第1混練押出機から押出後のリペレット材とバージン樹脂とを投入して行った。
比較例1,2は、第1混練押出機に使用済樹脂を投入し、第2混練押出機に第1混練押出機から押出後のリペレット材とバージン樹脂とを投入して行った。但し、比較例1では第2混練押出機での減圧脱気を行わなかった。
比較例3,4は、第1混練押出機に使用済樹脂を投入し、第2混練押出機に第1混練押出機から押出後のリペレット材とバージン樹脂とVOC捕捉剤1とを投入して行った。但し、VOC捕捉剤1の添加量が実施例とは異なる。
【0026】
【0027】
ここで、使用した各材料の詳細は次のとおりである。
廃棄自動車から回収した樹脂部品の粉砕材:ポリプロピレン樹脂
バージン樹脂:(自動車内装部品向け)タルク強化ポリプロピレン樹脂
これらの表中の数値は、質量部(樹脂合計100質量部)である。
【0028】
VOC捕捉剤1:アミノ酸修飾シリカゲル(東ソー社製の商品名「エミデリートAC-103」)
VOC捕捉剤2:アミン担持水酸化アルミニウム(東亞合成社製の商品名「ケスモンNS-750」)
ホスファイト系酸化防止剤:トリス(2,4-ジ-tert.-ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン社製の商品名「Irgafos168」)
これらの表中の配合数値は、上記の樹脂合計100質量部に対する質量%である。
【0029】
第2混練押出機から押し出された実施例1~6及び比較例1~4の再生樹脂と、バージン樹脂について、次の測定・試験を行った。
【0030】
[1]VOC測定
再生樹脂とバージン樹脂を80cm2 (厚み2.5mm)の試料とし、自動車技術開規格JASO M902「自動車部品のVOC放散測定法」サンプリングバッグ法に従い、次のようにVOCを測定をした。
(1) 容量10Lのサンプリングバッグ内を、窒素ガスでパージしながら加熱洗浄する。加熱洗浄温度80℃、パージを連続して8hr行う。
(2) 試料をサンプリングバッグに入れ、窒素ガスを5L充填し密閉する。
(3) 密閉後恒温槽に入れ、65℃×2hr加熱する。
(4) 加熱後、サンプリングバッグ内の試料ガスを、捕集剤(ジーエルサイエンス社製:Tenax-TA)を充てんした捕集管と、DNPHカートリッジ(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン含有カートリッジ)に捕集する。
(5) Tenax-TAをガスクロマトグラフ/マススペクトロメーターにセットし、VOCを測定する。DNPHカートリッジを高速液体クロマトグラフにセットし、VOCを測定する。
表1に、VOC(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)の測定結果を示す。
【0031】
[2]におい試験
再生樹脂とバージン樹脂を30×30mm(厚み2.5mm)の試料とし、次のようににおい試験を行った。
(1) 容量5LのPET製サンプルバッグの一端を切り、試料を入れる。
(2) ヒートシーラーで切口を熱圧着させる。
(3) 窒素ガスを4L充填する。
(4) 恒温槽で80℃×1hr加熱する。加熱後、恒温槽から取り出し、室温まで冷却する。
(5) 5人のパネラーがにおいを嗅ぐ。スリーブと鼻の距離を3~4cmに保ち、手でバッグを軽く押して出てきたにおいを嗅ぐ。各パネラーは、におい強度(0.0:無臭~4.0:強いにおい)、快不快度(-3.0:非常に不快~3.0:非常に快)を、それぞれ0.5きざみで評価する。評価はイソ吉草酸を基準臭とし、イソ吉草酸のにおい強度を3.0とし、快不快度を-2.0とする。
(6) 5人のパネラーのにおい強度と快不快度、それぞれの平均値を、各試料のにおい試験結果とする。
表1に、におい強度と快不快度の試験結果を示す。
【0032】
[3]機械物性
引張試験:ISO527-1に準拠して、再生樹脂とバージン樹脂をISO1号ダンベル試験片とし、室温にて試験速度50mm/minで引張試験を行い、引張強度と引張伸びを測定した。同じく試験速度1mm/minで引張弾性率を測定した。
シャルピー衝撃試験:ISO179に準拠して、再生樹脂とバージン樹脂を80×10×4mmtノッチ付き試験片とし、室温にてハンマー2Jでシャルピー衝撃試験を行い、シャルピー衝撃値を測定した。
表1に、これらの測定結果を示す。
【0033】
VOC捕捉剤を添加せず減圧しなかった比較例1は、ホルムアルデヒド0.35、アセトアルデヒド0.7、におい強度2.5、快不快度-1.4であった。また、機械特性において、引張伸び35%、シャルピー衝撃値16.4 kJ/m2 であった。この比較例1との比較で検討すると、
・VOC捕捉剤を添加せず減圧した比較例2は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの減少はわずかであったが、におい強度と快不快度は改善傾向がみられた。
・VOC捕捉剤を0.01%添加し減圧した比較例3は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの減少は依然わずかであり、におい強度と快不快度の改善はなかった。
・VOC捕捉剤を0.4%添加し減圧した比較例4は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが大きく減少し、におい強度と快不快度も大きく改善したが、靭性に関する機械特性が、引張伸び22%、シャルピー衝撃値6.7 kJ/m2 と著しく低下した。
・一方、VOC捕捉剤を0.05%添加し減圧した実施例1~7は、ホルムアルデヒド0.19以下、アセトアルデヒド0.11以下と明らかに減少するとともに、におい強度1.6以下、快不快度-1.3以上と明らかに改善した。また、靭性に関する機械特性についても、引張伸び28~37%、シャルピー衝撃値12.5 ~17.7kJ/m2 と低下は抑制されていた。
【0034】
また、実施例1,4を比較すると、VOC測定では明確な差異はないが、ホスファイト系酸化防止剤を添加した方がにおい評価は高かった。
実施例2,5,6を比較すると、VOC測定では明確な差異はないが、バージン樹脂の配合が多いほどにおい評価は高かった。
実施例1,3を比較すると、VOC捕捉剤を別のアミン化合物にしても、VOC測定とにおい評価でそれぞれほぼ同等の結果が得られた。
【0035】
以上のように臭気が抑制され靭性低下も抑制された実施例1~6の再生樹脂はこれを、
図1の下部に示すように、例えば射出成形機により金型に射出し自動車用樹脂部品(例えば元部品)を成形する等してリサイクルすることができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)
図2に示すように、使用済樹脂を1機の混練押出機のみで溶融混練し、その際にバージン樹脂の配合、アミン化合物系のVOC捕捉剤の添加、ホスファイト系酸化防止剤の添加等を行い、また、減圧ベントで減圧脱気して、本発明を実施することもできる。
(2)使用済樹脂に、アミン化合物系のVOC捕捉剤とともに他のVOC捕捉剤を添加して、本発明を実施することもできる。
VOC捕捉剤を添加せず減圧しなかった比較例1は、ホルムアルデヒド0.35、アセトアルデヒド0.7、におい強度2.5、快不快度-1.4であった。また、機械特性において、引張伸び35%、シャルピー衝撃値16.4 kJ/m2 であった。この比較例1との比較で検討すると、
・VOC捕捉剤を添加せず減圧した比較例2は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの減少はわずかであったが、におい強度と快不快度は改善傾向がみられた。
・VOC捕捉剤を0.01%添加し減圧した比較例3は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの減少は依然わずかであり、におい強度と快不快度の改善はなかった。
・VOC捕捉剤を0.4%添加し減圧した比較例4は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが大きく減少し、におい強度と快不快度も大きく改善したが、靭性に関する機械特性が、引張伸び22%、シャルピー衝撃値6.7 kJ/m2 と著しく低下した。
・一方、VOC捕捉剤を0.05%添加し減圧した実施例1~6は、ホルムアルデヒド0.19以下、アセトアルデヒド0.11以下と明らかに減少するとともに、におい強度1.6以下、快不快度-1.3以上と明らかに改善した。また、靭性に関する機械特性についても、引張伸び28~37%、シャルピー衝撃値12.5 ~17.7kJ/m2 と低下は抑制されていた。