(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127478
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ素子の製造方法及び固体電解コンデンサ素子
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20240912BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036655
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 康浩
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶縁マスク層の形成を必須としない容量の大きい固体電解コンデンサ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解コンデンサ素子の製造方法は、誘電体層が形成された弁作用金属基体10を準備する工程と、モノマー含有溶液並びに酸化剤含有溶液を準備する工程と、弁作用金属基体の下部10Bを、モノマー含有溶液又は酸化剤含有溶液の何れかである第1液に浸漬して、弁作用金属基体の下部10Bから第1液を弁作用金属基体10の上方に向かって浸透させる第1液浸漬工程と、モノマー含有溶液が第1液である場合は酸化剤含有溶液を第2液220とし、酸化剤含有溶液が第1液である場合はモノマー含有溶液を第2液として、第1液を浸透させた弁作用金属基体10を、第1液が浸透した領域の上端10Tより下方の領域において第2液に浸漬する第2液浸漬工程と、弁作用金属基体を洗浄する洗浄工程と、を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する工程と、
化学重合反応により固体電解質層となるためのモノマー及び溶媒を有するモノマー含有溶液、並びに前記モノマーを重合させる酸化剤及び溶媒を有する酸化剤含有溶液を準備する工程と、
前記弁作用金属基体の下部を、前記モノマー含有溶液又は前記酸化剤含有溶液のいずれかである第1液に浸漬して、前記弁作用金属基体の下部から前記第1液を前記弁作用金属基体の上方に向かって浸透させる第1液浸漬工程と、
前記モノマー含有溶液が第1液である場合は前記酸化剤含有溶液を第2液とし、前記酸化剤含有溶液が第1液である場合は前記モノマー含有溶液を第2液として、前記第1液を浸透させた前記弁作用金属基体を、前記第1液が浸透した領域の上端より下方の領域において前記第2液に浸漬する第2液浸漬工程と、
前記弁作用金属基体を洗浄する洗浄工程と、を行う、固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【請求項2】
前記モノマー含有溶液は、さらにドーパントを含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1液が含有する溶媒が、アルコール系溶媒又は水系溶媒であり、
前記第2液が含有する溶媒が、アルコール系溶媒又は水系溶媒である、請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1液が含有する溶媒がアルコール系溶媒である請求項3に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
【請求項5】
誘電体層を少なくとも一方の主面に有し、その長手方向に対向して陽極部側となる第1辺と陰極部側となる第2辺を有する弁作用金属基体と、
前記誘電体層上に設けられる固体電解質層と、を備える固体電解コンデンサ素子であって、
前記固体電解コンデンサ素子の主面の法線方向から見たとき、前記固体電解質層は、前記弁作用金属基体の前記第2辺から、前記第1辺に向かうまでの一部の領域に設けられており、前記固体電解質層は、先端の両端部から先端の中央部に向かって前記第1辺に近づくように設けられており、
前記弁作用金属基体を陽極部及び陰極部に分離する絶縁マスク層を有していない、固体電解コンデンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ素子の製造方法及び固体電解コンデンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘電体皮膜を有し、弁作用を有する金属材料上の所望の位置に固体電解質を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、前記誘電体皮膜中に浸透しかつ前記浸透部の上にマスキング層を形成するマスキング材溶液を塗布する工程及び前記マスキング材を加熱処理により熱変性し高分子化する工程を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、マスキング層(以下、本明細書では絶縁マスク層という)を設けることにより弁作用金属の陽極部と陰極部を分離している。絶縁マスク層の形成の際には、マスキング材溶液が弁作用金属に対して厚さ方向に浸透するだけではなく、面方向への浸透、すなわち面方向への滲みが発生する。マスキング材の滲みが発生した領域ではマスキング材の撥水作用により固体電解質層を形成するための液が含浸されにくい。また、誘電体皮膜を形成する化成処理を行うために使用する化成液も同様に含浸されにくい。
そのため、絶縁マスク層を設けた場合には、誘電体皮膜の一部を固体電解質で被覆できないことがあり、化成処理によって誘電体皮膜を修復することが難しくなるという問題があった。
【0005】
また、絶縁マスク層を設けた部分はコンデンサの容量に寄与しない部分となるので、絶縁マスク層の面積を減らすことができればコンデンサの容量を向上させることができる。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、絶縁マスク層の形成を必須とせず、容量の大きい固体電解コンデンサ素子を製造することが可能な、固体電解コンデンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する工程と、化学重合反応により固体電解質層となるためのモノマー及び溶媒を有するモノマー含有溶液、並びに前記モノマーを重合させる酸化剤及び溶媒を有する酸化剤含有溶液を準備する工程と、前記弁作用金属基体の下部を、前記モノマー含有溶液又は前記酸化剤含有溶液のいずれかである第1液に浸漬して、前記弁作用金属基体の下部から前記第1液を前記弁作用金属基体の上方に向かって浸透させる第1液浸漬工程と、前記モノマー含有溶液が第1液である場合は前記酸化剤含有溶液を第2液とし、前記酸化剤含有溶液が第1液である場合は前記モノマー含有溶液を第2液として、前記第1液を浸透させた前記弁作用金属基体を、前記第1液が浸透した領域の上端より下方の領域において前記第2液に浸漬する第2液浸漬工程と、前記弁作用金属基体を洗浄する洗浄工程と、を行う。
【0008】
本発明の固体電解コンデンサ素子は、誘電体層を少なくとも一方の主面に有し、その長手方向に対向して陽極部側となる第1辺と陰極部側となる第2辺を有する弁作用金属基体と、前記誘電体層上に設けられる固体電解質層と、を備える固体電解コンデンサ素子であって、前記固体電解コンデンサ素子の主面の法線方向から見たとき、前記固体電解質層は、前記弁作用金属基体の前記第2辺から、前記第1辺に向かうまでの一部の領域に設けられており、前記固体電解質層は、先端の両端部から先端の中央部に向かって前記第1辺に近づくように設けられており、前記弁作用金属基体を陽極部及び陰極部に分離する絶縁マスク層を有していない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁マスク層の形成を必須とせず、容量の大きい固体電解コンデンサ素子を製造することが可能な、固体電解コンデンサ素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
【
図3】
図3は、第2液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
【
図4】
図4は、2回目の第1液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
【
図5】
図5は、2回目の第2液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
【
図6】
図6は、洗浄工程後の弁作用金属基体を模式的に示す工程図である。
【
図7】
図7は、固体電解コンデンサ素子を構成する誘電体層及び固体電解質層の一例を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、リードフレームが外部電極として用いられている固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法及び固体電解コンデンサ素子について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
[固体電解コンデンサ素子の製造方法]
以下の例では、大判の弁作用金属基体を用いて、複数の固体電解コンデンサ素子を同時に製造する方法について説明する。
【0013】
はじめに、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する。
図1は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体の一例を示す模式図である。
図1に示すように、誘電体層20を表面に有する弁作用金属基体10を準備する。弁作用金属基体10は、支持部11と複数の素子部12とを含む。各々の素子部12は短冊状であり、支持部11から突出している。また、弁作用金属基体10の表面には誘電体層20が形成されている。弁作用金属基体10の素子部12には絶縁マスク層は形成されていない。
なお、予め切断された短冊状の素子部12を、支持部11の代わりとなるステンレス等から形成されたプレート状金属部材に溶接等で接合することにより、
図1に示された弁作用金属基体10と同様の構成としてもよい。
【0014】
図1に示す弁作用金属基体10を準備する際には、表面に多孔質部を有する弁作用金属基体10をレーザー加工又は打ち抜き加工などで切断することにより、複数の素子部12と支持部11とを含む形状に加工する。
弁作用金属基体10の主面は、多孔質状になっていることが好ましい。弁作用金属基体10の主面が多孔質状になっていることにより、弁作用金属基体10の表面積が大きくなっている。なお、弁作用金属基体10の表面及び裏面の両方が多孔質状である場合に限られず、弁作用金属基体10の表面及び裏面の一方のみが多孔質状であってもよい。
【0015】
弁作用金属基体10は、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等の弁作用金属によって構成されている。
【0016】
その後、弁作用金属基体10に陽極酸化処理(化成処理)を行うことにより、弁作用金属基体10の表面に誘電体層20となる酸化被膜を形成する。この際、レーザー加工又は打ち抜き加工などで切断された素子部12の側面にも酸化被膜が形成される。なお、すでにアルミニウムの酸化物が形成されている化成箔を弁作用金属基体10として用いてもよい。この場合も、切断後の弁作用金属基体10に陽極酸化処理を行うことにより、切断された素子部12の側面に酸化被膜を形成する。
【0017】
弁作用金属基体10の主面の法線方向から見た弁作用金属基体10の形状、すなわち、弁作用金属基体10を厚み方向から平面視した形状は四角形状であり、好ましくは、長辺及び短辺を有する矩形状である。
なお、ここでいう弁作用金属基体10の形状は、支持部11を除いた素子部12の形状であり、1つの固体電解コンデンサ素子となったときの弁作用金属基体の形状を意味する。
【0018】
弁作用金属基体10の素子部12が短冊状である場合、短冊の先端が弁作用金属基体の下端であり、短冊の先端を含む部分を弁作用金属基体の下部とする。一方、短冊の根本(支持部11の側)が弁作用金属基体の上部とする。
【0019】
また、弁作用金属基体の形状は短冊状に限定されるものではなく、後述する第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程において、弁作用金属基体の下部だけを浸漬することができる形状であればよい。すなわち、長手方向が定まる形状であればよく、短冊状の他に、角柱状、円柱状等の形状であってもよい。
【0020】
なお、弁作用金属基体10は、芯部と当該芯部の少なくとも一方の主面に設けられた多孔質部とによって構成されていればよく、金属箔の表面をエッチングしたもの、金属箔の表面に多孔質状の微粉焼結体を形成したもの等を適宜採用することができる。
【0021】
次に、モノマー含有溶液及び酸化剤含有溶液を準備する。
モノマー含有溶液は、化学重合反応により固体電解質層となるためのモノマー及び溶媒を有する。
固体電解質層を構成する導電性高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類等の導電性高分子等が挙げられる。これらの中では、ポリチオフェン類が好ましく、PEDOTと呼ばれるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
そのため、モノマー含有溶液に含まれるモノマーは、化学重合反応により上記の導電性高分子となるモノマーであることが好ましく、ピロール、チオフェン、アニリン等が挙げられる。これらのなかでは、3,4-エチレンジオキシチオフェンであることがより好ましい。
モノマー含有溶液に含まれる溶媒としては、水系溶媒又はアルコール系溶媒等が挙げられ、アルコール系溶媒であることが好ましい。
また、モノマー含有溶液は、弁作用金属基体10への含浸性を高めるためにも低粘度が好ましく、弁作用金属基体10上での表面張力(接触角)は、小さい方が好ましい。
【0022】
本明細書において、水系溶媒としては、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0023】
モノマー含有溶液はさらにドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸(PSS)、アントラキノンスルホン酸(AQS)塩などの芳香族スルホン酸及びその塩等が挙げられる。
【0024】
酸化剤含有溶液は、上記モノマーを重合させる酸化剤及び溶媒を含有する。
モノマーを重合させる酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、p-トルエンスルホン酸(PTSA)鉄等が挙げられる。
酸化剤含有溶液に含まれる溶媒としては、水系溶媒又はアルコール系溶媒等が挙げられ、水系溶媒であることが好ましい。
また、酸化剤含有溶液は、弁作用金属基体10への含浸性を高めるためにも低粘度が好ましく、弁作用金属基体10上での表面張力(接触角)は、小さい方が好ましい。
【0025】
以下で説明する第1液および第2液については、第1液をモノマー含有溶液とし、第2液を酸化剤含有溶液とする場合、または第1液を酸化剤含有溶液とし、第2液をモノマー含有溶液とする場合のいずれかを選択することができる。ここで、化学重合反応は、モノマー含有溶液と酸化剤含有溶液とが互いに接触することにより進行する。したがって、いずれの場合においても、第1液を浸透させた弁作用金属基体10を、第1液が浸透した領域の上端より下方の領域において第2液に浸漬することにより、化学重合反応が生じている領域からさらに上方への浸み上がりを制御することが可能である。
【0026】
次に、第1液浸漬工程を行う。
第1液浸漬工程では、弁作用金属基体の下部を、モノマー含有溶液又は酸化剤含有溶液のいずれかである第1液に浸漬して、弁作用金属基体の下部から第1液を弁作用金属基体の上方に向かって浸透させる。
第1液としてはモノマー含有溶液又は酸化剤含有溶液のどちらを用いてもよい。第1液がモノマー含有溶液である場合、後述する第2液は酸化剤含有溶液となる。第1液が酸化剤含有溶液である場合、後述する第2液はモノマー含有溶液となる。
以下には、第1液がモノマー含有溶液であり、第2液が酸化剤含有溶液である場合を例にして説明する。
【0027】
図2は、第1液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
第1液浸漬工程では、弁作用金属基体10の下部10Bを第1液210に浸漬する。第1液210は弁作用金属基体10の下部10Bから弁作用金属基体10の上方に向かって浸透する。第1液210は、第1液210の液面210Sよりも弁作用金属基体10の上方にまで浸み上がる。
図2には、第1液210が第1液210の液面210Sよりも弁作用金属基体10の上方にまで浸透した領域の上端を参照符号10Tとして指している。
すなわち、第1液浸漬工程を行った後では、第1液210が浸透した領域の上端10Tは第1液の液面210Sよりも上方に位置している。
【0028】
第1液浸漬工程では、弁作用金属基体の下端から、弁作用金属基体の長手方向の長さ(
図2に両矢印Aで示す長さ)の60%以上、90%以下の領域を第1液に浸漬することが好ましい。
【0029】
また、弁作用金属基体の一部であり、製造される固体電解コンデンサにおいて陰極部とする予定の領域を、
図2中に両矢印10Cで示している。
第1液浸漬工程では、陰極予定領域10Cの80%以上、100%以下の領域を第1液210に浸漬することが好ましく、陰極予定領域10Cの100%の領域を第1液210に浸漬することが好ましい。陰極予定領域10Cの100%の領域を第1液210に浸漬すると、第1液210の液面210Sよりも上方にまで第1液210が浸み上がるため、第1液210が浸透した領域の面積は陰極予定領域10Cの100%を超えることになるが、後の洗浄工程によって余計な第1液210を洗い流すことができるため、陰極予定領域10Cに過不足なく固体電解質層を形成することができる。
図2では、陰極予定領域10Cの100%の領域を第1液210に浸漬している。
【0030】
第1液浸漬工程の後には、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥を行う場合の温度は25℃以上、100℃以下とすることができる。また、乾燥を行わなくてもよい。
【0031】
第1液が含有する溶媒がアルコール系溶媒であることが好ましい。第1液が含有する溶媒がアルコール系溶媒であると、水系溶媒に比べて浸み上がりやすいためである。
第1液としては、溶媒がアルコール系溶媒であるモノマー含有溶液を用いることが好ましい。また、第1液であるモノマー含有溶液がさらにドーパントを含むことが好ましい。
【0032】
次に、第2液浸漬工程を行う。
第2液浸漬工程では、第1液を浸透させた弁作用金属基体を、第1液が浸透した領域の上端より下方の領域において第2液に浸漬する。
第1液がモノマー含有溶液である場合、第2液は酸化剤含有溶液となる。第1液が酸化剤含有溶液である場合、第2液はモノマー含有溶液となる。
【0033】
図3は、第2液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
第2液浸漬工程では、第1液210を浸透させた弁作用金属基体10の下部10Bを第2液220に浸漬する。弁作用金属基体10が第2液220に触れている部分において、弁作用金属基体10に浸透させた第1液210に含まれるモノマーと第2液220に含まれる酸化剤が反応してモノマーの化学重合反応が進み、固体電解質層が形成される。
【0034】
第1液210と第2液220の反応は弁作用金属基体10が第2液220に触れている部分において生じる。第2液220の液面220S付近において、第2液220と反応していない第1液210が存在することにより第2液220が弁作用金属基体10の上方へ浸み上がることが阻害されるので、液面220Sより弁作用金属基体10の上方への第2液220の浸み上がりはほとんど生じない。
図3には、少しだけ第2液220が浸み上がって固体電解質層の形状が凸状になった部分を凸部220Tとして図示している。
【0035】
第2液220の上方への浸み上がりが第2液220と反応していない第1液210によって阻害されることから、第2液220への弁作用金属基体の浸漬深さを調整することによって、固体電解質層の形成領域を調節することができる。
この方法により固体電解質層の形成領域を調節する観点から、第2液220への浸漬は、第1液210が浸透した領域の上端10Tより下方の領域において行う。液面220Sより弁作用金属基体10の上方への第2液220の浸み上がりはほとんど生じないことから、固体電解質層の形成領域は第1液210が浸透した領域の上端10Tよりも下方の領域に調節される。
【0036】
第2液浸漬工程では、弁作用金属基体の下端から、弁作用金属基体の長手方向の長さ(
図3に両矢印Aで示す長さ)の60%以上、90%以下の領域を第2液に浸漬することが好ましい。
【0037】
第2液浸漬工程では、陰極予定領域10Cの80%以上、100%以下の領域を第2液220に浸漬することが好ましく、陰極予定領域10Cの100%の領域を第2液220に浸漬することが好ましい。陰極予定領域10Cの100%の領域を第2液220に浸漬すると、第2液220の液面220Sより弁作用金属基体10の上方への第2液220の浸み上がりはほとんど生じないことから、陰極予定領域10Cに過不足なく固体電解質層を形成することができる。
また、第1液浸漬工程で第1液210に浸漬した領域の80%以上、100%以下の領域を第2液220に浸漬することが好ましく、第1液浸漬工程で第1液210に浸漬した領域と第2液浸漬工程で第2液220に浸漬した領域が同じであってもよい。
図3では、陰極予定領域10Cの100%の領域を第2液220に浸漬している。
【0038】
第2液浸漬工程の後には、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥を行う場合の温度は25℃以上、100℃以下とすることができる。また、オーブンなどによる強制乾燥でなく、自然乾燥でもよい。また、半乾燥の状態でもよい。
【0039】
第2液が含有する溶媒が水系溶媒であることが好ましい。一概に水系溶媒とアルコール系溶媒との比較はできないが、第2液が含有する溶媒が水系溶媒であると、表面張力の違いによりアルコール系溶媒に比べて浸み上がりにくい傾向があるためである。
このような観点から、第2液としては、溶媒が水系溶媒である酸化剤含有溶液を用いることが好ましい。
ただし、表面張力は界面活性剤などの添加剤によって変化するため、第2液がアルコール系溶媒であっても、添加剤により第1液よりも浸み上がりにくいように調整することができる。
【0040】
固体電解質層の形成の際に、第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程を繰り返して行い、固体電解質層の厚さを増加させて、固体電解質層の厚さを所定の厚さに調節するようにしてもよい。
【0041】
図4は、2回目の第1液浸漬工程を模式的に示す工程図であり、
図5は、2回目の第2液浸漬工程を模式的に示す工程図である。
図4に示す第1液210はモノマー含有溶液であり、
図5に示す第2液220は酸化剤含有溶液である。
図4では、1回目の第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程で形成された固体電解質層40の部分が第1液210に浸漬されている。2回目の第1液浸漬工程を行う際には、1回目の第1液浸漬工程で浸み上がった第1液210が第1液210の液面210Sよりも弁作用金属基体10の上方に残っている。そのため、1回目の第1液浸漬工程とは異なり、第1液210は第1液210の液面210Sよりも弁作用金属基体10の上方にまで浸み上がらない。
【0042】
図5では、1回目の第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程で形成された固体電解質層40にさらに第1液210が浸透した部分が第2液220に浸漬されている。第2液220は第2液220の液面220Sよりも弁作用金属基体10の上方にまで浸み上がらない。
そのため、1回目の第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程で形成された固体電解質層とほぼ同じ領域に、2回目の第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程で固体電解質層が形成され、固体電解質層の厚さを増加させることができる。
【0043】
次に、洗浄工程を行う。
洗浄工程では、弁作用金属基体を洗浄する。洗浄は水系溶媒(常水、純水、超純水等)又はアルコール系溶媒により行うことが好ましい。洗浄工程により未反応の第1液及び第2液を洗い流す。
水系溶媒による洗浄工程(水洗)により洗い流すことができる観点からも、第1液及び第2液が含有する溶媒がアルコール系溶媒又は水系溶媒であることが好ましい。
第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程を繰り返して複数回行った場合には、複数回の第1液浸漬工程及び第2液浸漬工程の後に洗浄工程を行い、未反応の第1液及び第2液をまとめて洗い流すことが好ましい。
【0044】
図6は、洗浄工程後の弁作用金属基体を模式的に示す工程図である。
図6には、第1液浸漬工程と第2液浸漬工程によって形成された固体電解質層40を示している。固体電解質層40が形成された領域は、第2液浸漬工程において第1液210と第2液220が触れて化学重合反応が生じた領域であり、
図3、
図4及び
図5において弁作用金属基体10の下部10Bから上方に向かって第2液220の凸部220Tまでの領域である。
図3、
図4及び
図5において第2液220の凸部220Tから第1液210が浸透した領域の上端10Tまでの領域に浸透していた未反応の第1液210は洗浄工程によって洗い流される。そのため、洗浄工程後にはその部分において誘電体層20が露出する。
また、固体電解質層40の表面等に未反応の第2液220が残っていた場合にも、洗浄工程によって洗い流される。
【0045】
上記の工程によって、固体電解質層が形成される。第1液浸漬工程と第2液浸漬工程に分けて弁作用金属基体の浸漬を行うことにより、固体電解質層の形成領域を調節することができるので、弁作用金属基体の陽極部と陰極部を分離するための絶縁マスク層を設けなくても、陽極部と陰極部を分離することができる。そして、絶縁マスク層に相当する部分だけ陰極部の割合を大きくすることができて、コンデンサの容量を向上させることができる。
【0046】
また、第1液浸漬工程、第2液浸漬工程及び洗浄工程を1セットの固体電解質層形成工程として、固体電解質層形成工程を複数回繰り返すようにしてもよい。
【0047】
固体電解質層を形成した後、カーボンペーストに弁作用金属基体を浸漬、引き上げ及び乾燥することにより、カーボン層を所定の領域に形成する。
【0048】
カーボン層を形成した後、銀ペースト等の導電性ペーストに弁作用金属基体を浸漬、引き上げ及び乾燥することにより、陰極導体層を所定の領域に形成する。
【0049】
弁作用金属基体を切断して、素子部を分離する。
【0050】
以上の工程を経て、固体電解コンデンサ素子が得られる。
【0051】
[固体電解コンデンサ素子]
本発明の固体電解コンデンサ素子は、誘電体層を少なくとも一方の主面に有し、その長手方向に対向して陽極部側となる第1辺と陰極部側となる第2辺を有する弁作用金属基体と、前記誘電体層上に設けられる固体電解質層と、を備える固体電解コンデンサ素子であって、前記固体電解コンデンサ素子の主面の法線方向から見たとき、前記固体電解質層は、前記弁作用金属基体の前記第2辺から、前記第1辺に向かうまでの一部の領域に設けられており、前記固体電解質層は、先端の両端部から先端の中央部に向かって前記第1辺に近づくように設けられており、前記弁作用金属基体を陽極部及び陰極部に分離する絶縁マスク層を有していない、固体電解コンデンサ素子である。
【0052】
図7は、固体電解コンデンサ素子を構成する誘電体層及び固体電解質層の一例を模式的に示す平面図であり、
図8は、
図7のX-X線断面図である。
図7に示す平面図は、固体電解コンデンサ素子の主面の法線方向から見た図でもある。
弁作用金属基体10の主面の法線方向から見た弁作用金属基体10の形状、すなわち、弁作用金属基体10を厚み方向から平面視した形状は四角形状であり、好ましくは、長辺及び短辺を有する矩形状である。
【0053】
図7には、その主面に誘電体層20が設けられた矩形状の弁作用金属基体10を示している。弁作用金属基体10はその長手方向(
図7に両矢印Lで示す)に対向する第1辺13と第2辺14を有する。第1辺13及び第2辺14はいずれも弁作用金属基体10の短辺である。
【0054】
弁作用金属基体10の第1辺13は陽極部31となる側の短辺であり、弁作用金属基体10の第2辺14は陰極部32となる側の短辺である。
弁作用金属基体10の主面には誘電体層20が設けられており、固体電解質層40が弁作用金属基体10の第2辺14から、第1辺13に向かうまでの一部の領域に設けられている。そして、固体電解質層40は、先端の両端部41eから先端の中央部41cに向かって第1辺13に近づくように設けられている。
【0055】
固体電解質層40が設けられた領域が陰極部32となり、固体電解質層40が設けられていない部位が陽極部31となる。弁作用金属基体10を陽極部31及び陰極部32に分離する絶縁マスク層は設けられていない。
絶縁マスク層が設けられていないと陰極部の面積を広くとることができるため、コンデンサの容量を向上させることができる。
例えば、弁作用金属基体10の長手方向の長さR1に対する固体電解質層の長手方向の長さR2の比(R2/R1)を、0.8以上にすることが好ましく、0.9以上にすることが好ましい。
固体電解質層の長手方向の長さR2は、固体電解質層の先端の中央部41cを通る直線における固体電解質層の長さとして定めるとよい。
【0056】
図9は、固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す平面図であり、
図10は、
図9のY-Y線断面図である。
固体電解コンデンサ素子1においては、カーボン層50が固体電解質層40の上に設けられている。また、陰極導体層60がカーボン層50の上に設けられている。
【0057】
図9及び
図10に示すように、カーボン層50は、先端の両端部51eから先端の中央部51cに向かって第1辺13に近づくように設けられている。また、陰極導体層60は、先端の両端部61eから先端の中央部61cに向かって第1辺13に近づくように設けられている。
また、カーボン層50の先端の中央部51cは、固体電解質層40の先端の中央部41cよりも陰極部32側の位置を覆うように設けられている。また、陰極導体層60の先端の中央部61cは、カーボン層50の先端の中央部51cよりも陰極部32側の位置を覆うように設けられている。
【0058】
本発明の固体電解コンデンサ素子には、絶縁マスク層が設けられていないが、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法では、固体電解質層の形成領域を調節することができるので、弁作用金属基体の陽極部と陰極部を分離するための絶縁マスク層を設けなくても、陽極部と陰極部を分離することができる。そのため、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法により本発明の固体電解コンデンサ素子を製造することができる。
【0059】
[固体電解コンデンサ]
以下に、本発明の固体電解コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサの一例について説明する。なお、本発明の固体電解コンデンサ素子は、他の構成を有する固体電解コンデンサに含まれてもよい。例えば、リードフレームが外部電極として用いられてもよい。また、本発明の固体電解コンデンサには、本発明の固体電解コンデンサ素子以外の固体電解コンデンサ素子が含まれてもよい。
【0060】
図11は、固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図12は、
図11に示す固体電解コンデンサのZ-Z線に沿った断面図である。
【0061】
図11及び
図12においては、固体電解コンデンサ100及び外装体110の長さ方向をL、幅方向をW、高さ方向をTで示している。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交している。
【0062】
図11及び
図12に示すように、固体電解コンデンサ100は、略直方体状の外形を有している。固体電解コンデンサ100は、外装体110と、第1外部電極120と、第2外部電極130と、複数の固体電解コンデンサ素子1と、を備える。固体電解コンデンサ素子1は、本発明の固体電解コンデンサ素子の一例である。
【0063】
外装体110は、複数の固体電解コンデンサ素子1を封止している。すなわち、外装体110には、複数の固体電解コンデンサ素子1が埋設されている。なお、外装体110は、1つの固体電解コンデンサ素子1を封止していてもよい。すなわち、外装体110の内部には、1つの固体電解コンデンサ素子1が埋設されていてもよい。
【0064】
外装体110は、略直方体状の外形を有している。外装体110は、高さ方向Tにおいて相対する第1主面110a及び第2主面110b、幅方向Wにおいて相対する第1側面110c及び第2側面110d、並びに、長さ方向Lにおいて相対する第1端面110e及び第2端面110fを有している。
【0065】
上記のように外装体110は、略直方体状の外形を有しているが、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、外装体110の3面が交わる部分であり、稜線部は、外装体110の2面が交わる部分である。
【0066】
外装体110は、例えば、封止樹脂から構成される。
【0067】
封止樹脂は、少なくとも樹脂を含み、樹脂及びフィラーを含むことが好ましい。
【0068】
樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が好ましく用いられる。
【0069】
フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が好ましく用いられる。
【0070】
封止樹脂としては、固形エポキシ樹脂とフェノール樹脂とシリカ粒子とを含む材料が好ましく用いられる。
【0071】
固形の封止樹脂を用いる場合、コンプレッションモールド、トランスファーモールド等の樹脂モールドが好ましく用いられ、コンプレッションモールドがより好ましく用いられる。また、液状の封止樹脂を用いる場合、ディスペンス法、印刷法等の成形方法が好ましく用いられる。中でも、コンプレッションモールドにより固体電解コンデンサ素子1の周囲を封止樹脂で封止して、外装体110を形成することが好ましい。
【0072】
外装体110は、基板と、基板上に設けられた封止樹脂とから構成されてもよい。基板は、例えば、ガラスエポキシ基板等の絶縁性樹脂基板である。この場合、基板の底面が、外装体110の第2主面110bを構成する。基板の厚さは、例えば、100μmである。
【0073】
複数の固体電解コンデンサ素子1は、高さ方向Tに積層されている。複数の固体電解コンデンサ素子1の各々の延在方向は、外装体110の第1主面110a及び第2主面110bと略平行となっている。固体電解コンデンサ素子1同士は、導電性接着剤を介して互いに接合されていてもよい。
【0074】
第1外部電極120は、外装体110の第1端面110eに設けられている。
図11では、第1外部電極120は、外装体110の第1端面110eから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dの各々に亘って設けられている。第1外部電極120は、外装体110から露出する固体電解コンデンサ素子1の弁作用金属基体10と電気的に接続されている。第1外部電極120は、外装体110の第1端面110eにおいて弁作用金属基体10と直接的に接続されてもよく、間接的に接続されてもよい。
【0075】
第2外部電極130は、外装体110の第2端面110fに設けられている。
図12では、第2外部電極130は、外装体110の第2端面110fから、第1主面110a、第2主面110b、第1側面110c及び第2側面110dの各々に亘って設けられている。第2外部電極130は、外装体110から露出する固体電解コンデンサ素子1の陰極導体層60と電気的に接続されている。第2外部電極130は、外装体110の第2端面110fにおいて陰極導体層60と直接的に接続されてもよく、間接的に接続されてもよい。
【0076】
第1外部電極120及び第2外部電極130は、各々、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法、めっき法、及び、スパッタ法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により形成されることが好ましい。
【0077】
第1外部電極120は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第1外部電極120が樹脂成分を含むことにより、第1外部電極120と外装体110の封止樹脂との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0078】
第2外部電極130は、導電成分と樹脂成分とを含む樹脂電極層を有することが好ましい。第2外部電極130が樹脂成分を含むことにより、第2外部電極130と外装体110の封止樹脂との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0079】
導電成分は、銀、銅、ニッケル、錫等の金属単体、又は、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等を主成分として含むことが好ましい。
【0080】
樹脂成分は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を主成分として含むことが好ましい。
【0081】
樹脂電極層は、例えば、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、転写法、インクジェット印刷法、ディスペンス法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ドロップキャスト法、静電塗装法等の方法により形成される。中でも、樹脂電極層は、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成された印刷樹脂電極層であることが好ましい。樹脂電極層が、スクリーン印刷法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合、浸漬塗布法で導電性ペーストを塗工することにより形成される場合と比較して、第1外部電極120及び第2外部電極130が平坦になりやすい。すなわち、第1外部電極120及び第2外部電極130の厚みが均一になりやすい。
【0082】
第2外部電極130が樹脂電極層を有する場合、第2外部電極130、カーボン層50及び陰極導体層60が樹脂成分を含むことにより、第2外部電極130とカーボン層50との密着性及び第2外部電極130と陰極導体層60との密着性が高まるため、信頼性が向上する。
【0083】
第1外部電極120及び第2外部電極130の少なくとも一方は、めっき法により形成される、いわゆるめっき層を有していてもよい。めっき層としては、例えば、亜鉛・銀・ニッケル層、銀・ニッケル層、ニッケル層、亜鉛・ニッケル・金層、ニッケル・金層、亜鉛・ニッケル・銅層、ニッケル・銅層等が挙げられる。これらのめっき層上には、例えば、銅めっき層と、ニッケルめっき層と、錫めっき層とが順に(あるいは、一部のめっき層を除いて)設けられることが好ましい。
【0084】
第1外部電極120及び第2外部電極130の少なくとも一方は、樹脂電極層及びめっき層をともに有していてもよい。例えば、第1外部電極120は、弁作用金属基体10に接続された樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。また、第1外部電極120は、弁作用金属基体10に接続された内層めっき層と、内層めっき層を覆うように設けられた樹脂電極層と、樹脂電極層の表面上に設けられた外層めっき層と、を有していてもよい。
【0085】
図13は、リードフレームが外部電極として用いられている固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図14は、
図13に示す固体電解コンデンサのII-II線断面図である。
【0086】
図13及び
図14に示すように、固体電解コンデンサ300は、略直方体状の外形を有している。固体電解コンデンサ300は、外装体310と、第1外部電極320と、第2外部電極330と、複数の固体電解コンデンサ素子1を含むコンデンサ素子集合体340と、を備える。固体電解コンデンサ素子1は、本発明の固体電解コンデンサ素子の一例である。
【0087】
外装体310は、略直方体状の外形を有している。外装体310の内部には、複数の固体電解コンデンサ素子1を含むコンデンサ素子集合体340が設けられている。外装体310は、高さ方向Tにおいて相対する第1主面310a及び第2主面310b、幅方向Wにおいて相対する第1側面310c及び第2側面310d、並びに、長さ方向Lにおいて相対する第1端面310e及び第2端面310fを有している。なお、外装体310の内部には、1つの固体電解コンデンサ素子1が設けられていてもよい。
【0088】
コンデンサ素子集合体340は、複数の固体電解コンデンサ素子1(固体電解コンデンサ素子1a、固体電解コンデンサ素子1b、固体電解コンデンサ素子1c、固体電解コンデンサ素子1d)、および、導通部材319を備える。なお、本実施形態では、コンデンサ素子集合体340を構成する固体電解コンデンサ素子の個数は4個であるが、コンデンサ素子集合体を構成する固体電解コンデンサ素子の個数は、特に限定されない。
【0089】
複数の固体電解コンデンサ素子1は、積層されている。この際、複数の固体電解コンデンサ素子1は、第2端面310f側の積層方向の寸法が第1端面310e側の積層方向の寸法よりも大きくなるように積層される。すなわち、複数の固体電解コンデンサ素子1は、側面視して第1端面側から第2端面側に向かって厚み方向に広がるように配置される。
【0090】
複数の固体電解コンデンサ素子1におけるそれぞれの弁作用金属基体の陽極部側の端部は、第1外部電極320に接続される。
【0091】
複数の固体電解コンデンサ素子1の陰極導体層は、導通部材319によって電気的物理的に接続され、これらは、第2外部電極330に電気的物理的に接続される。
【0092】
第1外部電極320は、外装体310の第1端面310eから外部に露出し、第1端面310e及び第2主面310bにわたって配置される。第2外部電極330は、外装体310の第2端面310fから外部に露出し、第2端面310f及び第2主面310bにわたって配置される。
【0093】
導通部材319は、例えばニッケル、銀又は銅を主成分とする電極ペーストであることが好ましい。導通部材319の最大厚みは、2μm以上、20μm以下であることが好ましい。なお、導通部材319を用いなくても、複数の固体電解コンデンサ素子1の間、固体電解コンデンサ素子1b、1cと第2外部電極330との間等で、所望の導電率以上の導電性が得られれば、導通部材319を省略することも可能である。
【0094】
第1外部電極320及び第2外部電極330は、折り曲げ加工が容易で高い導電性を有する金属材料で形成されていることが好ましい。第1外部電極320及び第2外部電極330は、例えば金属製の板材から切り出された材料で形成されている。なお、第1外部電極320及び第2外部電極330は同一材料であっても良いし、異なる材料であってもよい。
【0095】
外装体310は、樹脂が主体であり、フィラーを含んでいてもよい。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー等が好ましい。樹脂の形態は、固形樹脂、液状樹脂いずれも使用可能である。樹脂封止後のバレル研磨により、角部に丸みが付けられていることが好ましい。フィラーとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、金属粒子等が好ましい。フィラーの最大径は、例えば30μm以上、40μm以下が望ましい。固形エポキシ樹脂とフェノール樹脂に、シリカ粒子を含む材料であることがより好ましい。
【0096】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0097】
本開示(1)は、表面に誘電体層が形成された弁作用金属基体を準備する工程と、化学重合反応により固体電解質層となるためのモノマー及び溶媒を有するモノマー含有溶液、並びに前記モノマーを重合させる酸化剤及び溶媒を有する酸化剤含有溶液を準備する工程と、前記弁作用金属基体の下部を、前記モノマー含有溶液又は前記酸化剤含有溶液のいずれかである第1液に浸漬して、前記弁作用金属基体の下部から前記第1液を前記弁作用金属基体の上方に向かって浸透させる第1液浸漬工程と、前記モノマー含有溶液が第1液である場合は前記酸化剤含有溶液を第2液とし、前記酸化剤含有溶液が第1液である場合は前記モノマー含有溶液を第2液として、前記第1液を浸透させた前記弁作用金属基体を、前記第1液が浸透した領域の上端より下方の領域において前記第2液に浸漬する第2液浸漬工程と、前記弁作用金属基体を洗浄する洗浄工程と、を行う、固体電解コンデンサ素子の製造方法である。
【0098】
本開示(2)は、前記モノマー含有溶液は、さらにドーパントを含む本開示(1)に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法である。
【0099】
本開示(3)は、前記第1液が含有する溶媒が、アルコール系溶媒又は水系溶媒であり、前記第2液が含有する溶媒が、アルコール系溶媒又は水系溶媒である、本開示(1)又は(2)に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法である。
【0100】
本開示(4)は、前記第1液が含有する溶媒がアルコール系溶媒である本開示(3)に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法である。
【0101】
本開示(5)は、誘電体層を少なくとも一方の主面に有し、その長手方向に対向して陽極部側となる第1辺と陰極部側となる第2辺を有する弁作用金属基体と、前記誘電体層上に設けられる固体電解質層と、を備える固体電解コンデンサ素子であって、前記固体電解コンデンサ素子の主面の法線方向から見たとき、前記固体電解質層は、前記弁作用金属基体の前記第2辺から、前記第1辺に向かうまでの一部の領域に設けられており、前記固体電解質層は、先端の両端部から先端の中央部に向かって前記第1辺に近づくように設けられており、前記弁作用金属基体を陽極部及び陰極部に分離する絶縁マスク層を有していない、固体電解コンデンサ素子である。
【符号の説明】
【0102】
1、1a、1b、1c、1d 固体電解コンデンサ素子
10 弁作用金属基体
10B 弁作用金属基体の下部
10C 陰極予定領域
10T 第1液が浸透した領域の上端
11 支持部
12 素子部
13 第1辺
14 第2辺
20 誘電体層
31 陽極部
32 陰極部
40 固体電解質層
41c 固体電解質層の先端の中央部
41e 固体電解質層の先端の端部
50 カーボン層
51c カーボン層の先端の中央部
51e カーボン層の先端の端部
60 陰極導体層
61c 陰極導体層の先端の中央部
61e 陰極導体層の先端の端部
100、300 固体電解コンデンサ
110、310 外装体
110a、310a 第1主面
110b、310b 第2主面
110c、310c 第1側面
110d、310d 第2側面
110e、310e 第1端面
110f、310f 第2端面
120、320 第1外部電極
130、330 第2外部電極
210 第1液(モノマー含有溶液)
210S 第1液の液面
220 第2液(酸化剤含有溶液)
220S 第2液の液面
220T 凸部
319 導通部材
340 コンデンサ素子集合体