(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127486
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ブロック連結体の構築方法、ブロック連結体、ベース構造体の構築方法、水中構造物、及び水中構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20240912BHJP
E02D 27/04 20060101ALI20240912BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E01D19/02
E02D27/04
E02D27/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036673
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】513054967
【氏名又は名称】川崎 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 篤
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】稲川 雄宣
(72)【発明者】
【氏名】川崎 秀明
【テーマコード(参考)】
2D046
2D059
【Fターム(参考)】
2D046DA03
2D059AA03
(57)【要約】
【課題】プレキャスト造のコンクリートブロックを積み上げたブロック連結体を、安定した状態で鉛直自立させるとともに、安定したブロック連結体を利用して、水中構造物を効率よく構築することである。
【解決手段】ブロック体の貫通孔に、下部が地盤もしくはベース構造体に定着した緊張材を挿通させ、挿し替えなしに張力を与えて、前記ブロック体を複数段を積み上げるブロック連結体の構築方法であって、前記ブロック体の貫通孔に前記緊張材を挿通させたのち、張力を導入する張力導入工程と、前記緊張材に張力を導入した状態を維持しつつ、前記貫通孔に充填材を充填する充填工程と、前記充填材が硬化したのち、前記緊張材の張力を除荷する除荷工程と、
を含み、前記ブロック体を積み上げるごとに、前記張力導入工程、前記充填工程、及び前記除荷工程を繰り返す。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック体の貫通孔に、下部が地盤もしくはベース構造体に定着した緊張材を挿通させ、挿し替えなしに張力を与えて、前記ブロック体を複数段積み上げるブロック連結体の構築方法であって、
前記ブロック体の貫通孔に前記緊張材を挿通させたのち、張力を導入する張力導入工程と、
前記緊張材に張力を導入した状態を維持しつつ、前記貫通孔に充填材を充填する充填工程と、
前記充填材が硬化したのち、前記緊張材の張力を除荷する除荷工程と、
を含み、
前記ブロック体を積み上げるごとに、前記張力導入工程、前記充填工程、及び前記除荷工程を繰り返すことを特徴とするブロック連結体の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブロック連結体の構築方法において、
前記緊張材の少なくとも上方側を水上に配置し、
前記張力導入工程で、最上段に位置する前記ブロック体の上部に前記緊張材が貫通する荷重伝達具を、天端が水上に到達するよう設置し、
該荷重伝達具の天端で、前記緊張材に張力を導入することを特徴とするブロック連結体の構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブロック連結体の構築方法により構築されたことを特徴とするブロック連結体。
【請求項4】
請求項3に記載のブロック連結体において、
前記緊張材に、突起部が設けられており、
該突起部は、積み上げた前記ブロック体の接触面を挟んだ少なくともいずれか一方側に配置されていることを特徴とするブロック連結体。
【請求項5】
請求項4に記載のブロック連結体において、
前記突起部が前記接触面を挟んで対をなし、該突起部を含む所定の高さ範囲に、前記張力導入工程、前記充填工程、及び前記除荷工程によるプレストレスが導入されていることを特徴とするブロック連結体。
【請求項6】
請求項3に記載のブロック連結体において、
前記ブロック体に備えた前記貫通孔の内壁であって、前記ブロック体どうしの接触面を跨いだ範囲に、補剛材が設けられていることを特徴とするブロック連結体。
【請求項7】
請求項3に記載のブロック連結体を支持する、ベース構造体の構築方法であって、
地盤上にベース区画を設定する工程と、
該ベース区画内に、前記緊張材の下部を収納するさや管を配置する工程と、
該ベース区画にコンクリートを打設し、前記さや管を埋設する工程と、を含み、
前記コンクリートに埋設される埋込式型枠兼架台を設け、
該埋込式型枠兼架台に、前記さや管を固定することを特徴とするベース構造体の構築方法。
【請求項8】
請求項7に記載のベース構造体の構築方法において、
該地盤が河床部であるとともに、
前記ベース区画を設定する工程の前に、前記河床部の堆積物を、上流側から下流側に向けて流体を噴射させて除去し、該河床部上を整形する工程を含むことを特徴とするベース構造体の構築方法。
【請求項9】
水中に構築された請求項3に記載のブロック連結体を備えることを特徴とする水中構造物。
【請求項10】
請求項9に記載の水中構造物において、
前記ブロック連結体を型枠として利用し充填した中詰め材を含むことを特徴とする水中構造物。
【請求項11】
請求項10に記載の水中構造物において、
前記ブロック連結体を構成する前記ブロック体が、前記中詰め材の充填領域を備えた筒体であることを特徴とする水中構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト造のコンクリートブロックを積み上げたブロック連結体の構築方法、ブロック連結体、ブロック連結体を支持するベース構造体の構築方法、ブロック連結体を利用した水中構造物、及び水中構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水中構造物を構築する場合、一般には水中で仮締切工事を実施して施工対象領域をドライアップしたのち、この施工対象領域で水中構造物を構築する。
【0003】
仮締切工事の大まかな手順は、例えば特許文献1で開示されているように、施工対象領域を囲うようにして、複数の鋼矢板もしくは鋼管矢板を水中地盤に順次打設し、天端が水上に到達する高さの井筒を構築する。必要に応じて、鋼矢板の継手に止水工を設ける、または鋼管矢板に中詰めコンクリートを打設する。
【0004】
さらには、井筒内の水底面に底盤コンクリートを打設するなど、種々の準備作業を行う。こののち、井筒内に支保工を設置しながら段階的に水を汲み上げ、井筒内をドライアップする。なお、支保工は不用な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の仮締切工事では、水中構造物を構築したのち、ドライアップした施工対象領域に注水を行うとともに、水中切断機で鋼矢板もしくは鋼管矢板を切断して井筒を撤去する、もしくは引き抜くといった撤去作業も発生する。このため、大規模な工事となりやすく、多大な費用と工期を要する。また、これらの撤去作業や、施工対象領域をドライアップするまでに実施する上記の様々な準備作業は、潜水士による水中作業となる。
【0007】
さらに、仮締切工事を河川で実施しようとすると、施工対象領域の岩盤が硬い場合が多く、井筒を構築するために台船上に打設機などを搭載した状態での鋼矢板の打設作業は、困難となりやすい。このような場合には、水上に打設機を支持するための構台を、別途構築する必要が生じる。また、河川の流速が大きい場合には、大きな側圧(水圧)に耐えるべく井筒を堅牢な構造とせざるを得ないなど、様々な課題があり、水中構造物の合理的な施工方法が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、プレキャストコンクリート造のブロック体を積み上げたブロック連結体を、安定した状態で鉛直自立させるとともに、安定したブロック連結体を利用して、水中構造物を効率よく構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明のブロック連結体の構築方法は、ブロック体の貫通孔に、下部が地盤もしくはベース構造体に定着した緊張材を挿通させ、挿し替えなしに張力を与えて、前記ブロック体を複数段積み上げるブロック連結体の構築方法であって、前記ブロック体の貫通孔に前記緊張材を挿通させたのち、張力を導入する張力導入工程と、前記緊張材に張力を導入した状態を維持しつつ、前記貫通孔に充填材を充填する充填工程と、前記充填材が硬化したのち、前記緊張材の張力を除荷する除荷工程と、を含み、前記ブロック体を積み上げるごとに、前記張力導入工程、前記充填工程、及び前記除荷工程を繰り返すことを特徴とする。
【0010】
本発明のブロック連結体の構築方法は、前記緊張材の少なくとも上方側を水上に配置し、前記張力導入工程で、最上段に位置する前記ブロック体の上部に前記緊張材が貫通する荷重伝達具を、天端が水上に到達するよう設置し、該荷重伝達具の天端で、前記緊張材に張力を導入することを特徴とする。
【0011】
本発明のブロック連結体は、本発明のブロック連結体の構築方法により構築されたことを特徴とする。
【0012】
本発明のブロック連結体は、前記緊張材に、突起部が設けられており、該突起部は、積み上げた前記ブロック体の接触面を挟んだ少なくともいずれか一方側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のブロック連結体は、前記突起部が接触面を挟んで対をなし、該突起部を含む高さ範囲に、前記張力導入工程、前記充填工程、及び前記除荷工程によるプレストレスが導入されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のブロック連結体は、前記ブロック体に備えた前記貫通孔の内壁であって、前記ブロック体どうしの接触面を跨いだ範囲に、補剛材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明のベース構造体の構築方法は、地盤上にベース区画を設定する工程と、該ベース区画内に、前記緊張材の下部を収納するさや管を配置する工程と、該ベース区画にコンクリートを打設し、前記さや管を埋設する工程と、を含み、前記コンクリートに埋設される埋込式型枠兼架台を設け、該埋込式型枠兼架台に、前記さや管を固定することを特徴とする。
【0016】
本発明のベース構造体の構築方法は、該地盤が河床部であるとともに、前記ベース区画を設定する工程の前に、前記河床部の堆積物を、上流側から下流側に向けて流体を噴射させて除去し、該河床部上を整形する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の水中構造物は、水中に構築された本発明のブロック連結体を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の水中構造物は、前記ブロック連結体を型枠として利用し充填した中詰め材を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の水中構造物は、前記ブロック連結体を構成する前記ブロック体が、前記中詰め材の充填領域を備えた筒体であることを特徴とする。
【0020】
本発明のブロック連結体の構築方法及びブロック連結体によれば、ブロック体を積み上げるごとに緊張材への張力導入工程、充填材の充填工程、張力の除荷工程を繰り返す。これにより、積み上げたブロック体の接触面各々に、所望の圧縮力を均等に作用させることができる。このため、地上だけでなく水流のある河川など側圧が大きく作用する環境下にあっても、ブロック連結体を、緊張材の下部を定着させた地盤もしくはベース構造体上で、安定して鉛直自立させることができる。
【0021】
また、緊張材への張力導入工程で、荷重伝達具を利用すれば、最上段に位置するブロック体の上部が水中に位置する場合にも、水上で緊張材への張力導入作業を実施でき、潜水士による水中作業を省略できる。
【0022】
さらに、緊張材に、積み上げたブロック体の接触面を挟んで一対の突起部を設けると、緊張材の周面摩擦に加えて突起部による支圧力が作用するため、接触面に対して効率よく圧縮力が作用し、ブロック連結体の安定性をより高めることができる。
【0023】
加えて、対をなす突起部を含む高さ範囲の充填材に、張力導入工程、充填工程、及び除荷工程によるプレストレスを導入してもよい。この場合、除荷区間が緩衝材となって、後行のブロック体を据え付け張力導入工程を実施する際、先行のブロック体どうしの接触面に作用する圧縮力のキャンセルを防止でき、ブロック連結体の品質を向上させることができる。
【0024】
本発明のベース構造体の構築方法によれば、緊張材の下部を収納するさや管を埋込式型枠兼架台に固定すると、緊張材の配置間隔が規定されるため、緊張材の定着作業の簡略化を図ることができる。また、この埋込式型枠兼架台に最下段のブロック体を載置させれば、このブロック体を据え付ける際の不陸調整作業も省略できる。したがって、作業の効率化を図ることができるだけでなく、ベース構造体を水底で構築する場合に、潜水士による水中作業の省力化を図ることもできる。
【0025】
本発明の水中構造物及び水中構造物の構築方法によれば、水中でブロック連結体を構築しつつ、これを型枠として利用し中詰め材を充填していく。これにより、水流のある河川など側圧が大きく作用する環境下にあっても、ブロック連結体が鉛直自立を維持できるため、従来のように堅牢な井筒は必要ない。また、ブロック連結体を河床部に根入れする作業も省略できるなど、水中構造物の構築に係り、設計及び施工の両面で合理化を図ることが可能となる。
【0026】
また、中詰め材が水中コンクリートである場合、ブロック体を積み上げるごとにその背面で水中コンクリートを打設し、両者を固着させる。これにより、先行して積み上げたブロック体は、安定した状態を維持できる。
【0027】
さらに、ブロック体を中詰め材の充填領域を備えた筒体に形成することで、ブロック連結体を複数設けることなく、1体のみで水中構造物を構築することができる。したがって、水中構造物の外形状にブロック連結体の外形状が合致するよう、ブロック体の外形状を形成しておくことで、所望の水中構造物を迅速に構築でき、施工性を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ブロック体を積み上げるごとに、緊張材への張力導入工程、充填材の充填工程、除荷工程を繰り返すことで、地上だけでなく河川など側圧が大きく作用する環境下にあっても、ブロック連結体を安定して鉛直自立させることができる。また、このブロック連結体を利用して、水中構造物を効率よく構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施の形態の水中構造物の概略を示す図である。
【
図2】本実施の形態のブロック体及び緊張材固定治具を示す図である。
【
図3】本実施の形態のブロック連結体の構築方法及び荷重伝達管を示す図である(その1)。
【
図4】本実施の形態のブロック連結体の構築方法及び荷重伝達管を示す図である(その2)。
【
図5】本実施の形態の水中構造物の構築方法(ベース構造体の構築方法を含む)を示す図である(その1)。
【
図6】本実施の形態の水中構造物の構築方法を示す図である(その2)。
【
図7】本実施の形態の水中構造物の構築方法を示す図である(その3)。
【
図8】本実施の形態の水中構造物の構築方法を示す図である(その4)。
【
図9】本実施の形態のブロック体を吊り下す吊り治具を示す図である。
【
図10】本実施の形態のブロック体、及び水中構造物の他の事例を示す図である。
【
図11】本実施の形態の緊張材の他事例を示す図である(その1)。
【
図12】本実施の形態の緊張材の他事例を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ブロック体を安定した状態で積み上げたブロック連結体、及びブロック連結体を利用した構造物に関するものである。ブロック連結体及び構造物はともに、地上もしくは水中など、いずれの環境下でも構築することが可能である。
【0031】
本実施の形態では、河床部にブロック連結体を構築し、このブロック連結体を少なくとも型枠の一部として利用して中詰め材を充填し、水中構造物を構築する場合を事例に挙げ、
図1~
図13を参照しつつ、以下にその詳細を説明する。なお、水中構造物100は必ずしも中詰め材を充填しなくてもよい。
【0032】
≪水中構造物≫
水中構造物100は、
図1(a)で示すように、河川を横断するようにして河床部に設けられたベース構造体3上に構築されており、一対のコンクリート外壁1と、水中コンクリート2とにより構成されている。
【0033】
水中コンクリート2は、水中構造物100の中詰め材であり、上流側と下流側にそれぞれ設置された一対のコンクリート外壁1を型枠に見立て、高さ方向及び横方向に順次打ち継がれている。中詰め材は、水中構造物100の構造に応じて、中詰石材やリサイクル材など水中コンクリート以外の材料であってもよい。
【0034】
コンクリート外壁1は、河川を横断する方向に隣接して構築された、複数のブロック連結体10により構成されている。
【0035】
≪ブロック連結体≫
ブロック連結体10は、
図1(b)で示すように、積み上げた複数のブロック体11と、ブロック体11を高さ方向に貫通する緊張材12及びグラウト13とにより構成されている。
【0036】
ブロック連結体10の構築方法に関する詳細は後述するが、ブロック体11を積み上げるごとに、緊張材12の緊張、グラウト13の充填、及び緊張材12の除荷を行ってプレストレスを導入する作業を繰り返し、ブロック体11どうしを連結していく(以下、「連続緊張法」と称す。)。このような連続緊張法を採用することで、ブロック連結体10は複数のブロック体11を高さ方向に積み上げた構造でありながら、力学的に安定した状態を維持できる構造体としたものである。
【0037】
≪ブロック体≫
ブロック体11は、工場などで製造されるプレキャスト造のコンクリートブロックである。その形状や構造はいずれでも採用可能であり、例えば、上半と下半に分割可能な構造を有するものであってもよい。
【0038】
本実施の形態では、
図2(a)で示すような、平板状のブロック体11を採用している。このブロック体11は、高さ方向に貫通する貫通孔111を備えるとともに、底面には緩衝材112が設けられている。また、両側面の一方にオス型キージョイント113a、他方にメス型キージョイント113bが設けられ、水中コンクリート2と対向する面には、粗面114が形成されている。
【0039】
粗面114は、水中コンクリート2との付着性を高めるために設けられている。その形状は、例えば機械的な凹凸を形成したものでもよいし、いわゆる目荒らしを行ったものでもよい。
【0040】
オス型キージョイント113a及びメス型キージョイント113bは、例えば
図1(a)で示すように、河川を横断する方向に隣接してブロック連結体10を配置する際、これらが篏合する形状に形成されている。これにより、複数のブロック連結体10を連続させた形状のコンクリート外壁1を、一体性の高められた構造とすることができる。
【0041】
緩衝材112は、
図1(b)で示すように、ブロック体11がベース構造体3上に配置された場合には、その上面における不陸に追従し、ブロック体11とベース構造体3との一体性を高める部材として機能する。また、ブロック体11が、先行ブロック体11a上に積み上げられた後行ブロック体11bである場合には、ブロック体11間の密着性を高める部材として機能する。
【0042】
貫通孔111は、
図2(a)で示すように、3本が間隔を設けて並列に配置されている。その形状は、グラウト13により緊張材12を定着可能な径を有していれば、その断面径や断面形状はいずれでもよい。また、本数も何ら限定されるものではない。
【0043】
≪緊張材及びグラウト≫
緊張材12は、
図1(b)で示すように、下部がベース構造体3に定着された状態で、ブロック体11の貫通孔111を貫通し、上部が水上に露出する長さを有している。PC鋼棒やPC撚線を束ねたものなど、プレキャスト部材にプレストレスを導入する際に用いられているものであり、1本の連続した形状のものであれば、いずれをも採用できる。
【0044】
また、緊張材12は、シース管121で保護されているものでもよいし、シース管121が無くてもよい。シース管121で保護されている場合には、シース管121と緊張材12との間に、グラウト13を注入できるものが好ましい。そして、グラウト13は、プレキャスト部材にプレストレスを導入する際に、一般に用いられている充填材であって、水中で使用できるものが、好適である。
【0045】
≪≪≪ブロック連結体の構築方法(連続緊張法)≫≫≫
上記のブロック連結体10を構築する手順の一例を、
図3及び
図4を参照しつつ、以下に説明する。
【0046】
≪≪据付け工程≫≫
まず、
図3(a)で示すように、先行ブロック体11aを据え付ける。先行ブロック体11aの据え付けは、貫通孔111に緊張材12を貫通させ、緊張材12をガイドにして降下させることにより行う。
【0047】
次に、
図3(b)で示すように、先行ブロック体11a上に、天端が水上に露出する程度の長さを有する荷重伝達管4を設置する。また、荷重伝達管4の天端に設けられている支圧プレート43上に、センターホールジャッキJを設置する。このとき、緊張材12は、荷重伝達管4の支圧プレート43及びセンターホールジャッキJを貫通している。荷重伝達管4の詳細は後述する。
【0048】
≪≪張力導入工程・充填工程≫≫
こののち、
図3(c)で示すように、センターホールジャッキJを用いて緊張材12に張力を導入する。そして、緊張材12に張力を導入した状態を維持しつつ、貫通孔111にグラウト13を充填する。緊張材12がシース管121で保護されている場合、シース管121の中にもグラウト13を充填する。
【0049】
グラウト13が硬化するまでの期間、緊張材12に導入した張力を維持する方法は、センターホールジャッキJによるものでもよいし、ナット123などを利用してもよい。具体的には、緊張材12が貫通する支圧プレート43上で、緊張材12をナット締めする、もしくは、緊張材12が貫通する支圧プレート43の孔(図示せず)と緊張材12との間に楔を差し込み固定して、張力を導入した状態を維持する、などしてもよい。
【0050】
≪≪除荷工程≫≫
グラウト13が硬化したところで除荷し、
図3(d)で示すように、荷重伝達管4及びセンターホールジャッキJを撤去する。これにより先行ブロック体11aには、緊張材12とグラウト13とにより、上下方向の圧縮力が作用された状態となる。
【0051】
≪≪据付け工程~除荷工程の繰り返し≫≫
こののち、
図4(a)で示すように、先行ブロック体11a上に後行ブロック体11bを積み上げ、据付ける。後行ブロック体11bの据え付けも、緊張材12をガイドにして降下させることにより行う。
【0052】
次に、
図4(b)で示すように、後行ブロック体11b上に荷重伝達管4を介してセンターホールジャッキJを設置する。こののち、センターホールジャッキJを用いて緊張材12に張力を導入する。そして、
図4(c)で示すように、緊張材12に張力を導入した状態を維持しつつ、貫通孔111にグラウト13を充填する。
【0053】
なお、張力導入工程と充填工程は前後してもよく、グラウト13を充填したのち、緊張材12に張力を導入してもよい。これは、前述の先行ブロック体11aの場合も同様である。
【0054】
図4(d)で示すように、グラウト13が硬化したところで張力を除荷し、荷重伝達管4とセンターホールジャッキJを撤去する。こうして除荷後には、緊張材12とグラウト13とにより、先行ブロック体11aと後行ブロック体11bとの接触面Cfに、圧縮力を効果的に作用させることができる。
【0055】
先行ブロック体11a上に、予定する数量の後行ブロック体11bを積み上げるごとに、据付け工程、張力導入工程、充填工程、及び除荷工程を、順次繰り返す。これにより、積み上げたブロック体11の接触面Cf各々に、所望の圧縮力を均等に作用させることができる。
【0056】
このため、
図1(b)で示すように、ブロック連結体10をベース構造体3上で、安定して鉛直自立させることができる。ブロック連結体10は、地上だけでなく、水流のある河川など側圧が大きく作用する環境下にあっても、折れ曲がりなどの変形を抑制できる。
【0057】
ところで、
図3及び
図4では、ブロック連結体10を水中で構築する場合を事例に挙げたため、センターホールジャッキJを水上で操作できるよう、荷重伝達管4を採用している。
【0058】
≪荷重伝達管≫
荷重伝達管4は、
図3(b)で示すように、本体部41と、本体部41の下端に設けられた底部プレート42と、本体部41の上端に設けられた支圧プレート43とを備える。
【0059】
支圧プレート43は、センターホールジャッキJを載置可能な板材であり、緊張材12の挿通孔を有する。底部プレート42は、ブロック体11の上面に当接する板材であって、緊張材12の挿通孔を有する。
【0060】
本体部41は、緊張材12を貫通させることの可能な内径を有する筒体よりなる。センターホールジャッキJを用いて緊張材12に張力を導入する際、変形することなくスムーズに、後行ブロック体11bへ反力を伝達できる程度の剛性を有していれば、その断面形状はいずれでもよい。
【0061】
このような形状の荷重伝達管4は、ブロック体11に載置した際、支圧プレート43が水上に位置する高さに形成しておく。もしくは、本体部41を長さ調整可能な構造にしておいてもよい。長さを調整する機構はいずれを採用してもよく、例えば複数の単管を継ぎ足し可能な構造とする。
【0062】
これにより、水中でブロック連結体10を構築する場合に、上記の荷重伝達管4を採用すると、支圧プレート43上に載置されるセンターホールジャッキJを、水上に配置できる。このため、張力導入工程~除荷工程までの一連の作業を水上で実施することができ、潜水士による水中作業を省略できる。
【0063】
したがって、気中でブロック連結体10を構築する場合には、荷重伝達管4を省略し、センターホールジャッキJを直接、もしくは支圧プレート43を介して、ブロック体11上に設置すればよい。
【0064】
≪≪≪水中構造物の構築方法≫≫≫
上記の手順で構築可能なブロック連結体10を用いて、
図1(a)(b)を参照して説明したような、河川を横断する水中構造物100を構築する手順の一例を、
図5~
図8を参照しつつ以下に説明する。
【0065】
構築手順の詳細を説明するに先立ち、おおまかな手順を説明すると、まず、
図5(a)~(c)で示すように、水中構造物100の構築予定エリアにベース構造体3を構築する(前処理工程及び基礎構築工程)。次に、
図6(a)で示すように、さや管52を介して緊張材12の下部を、ベース構造体3に定着させる(緊張材定着工程)。
【0066】
こののち、
図6(b)~(c)及び
図7で示すように、河川の横断方向に水中構造物100を分割した複数区画のうちの一区画分101を、構築する(一区画分の構築工程)。一区画分101は、河川の上流側と下流側に設けた一対のブロック連結体10と、これら型枠として打設した水中コンクリート2の組み合わせである。
【0067】
上記の一区画分101を構築する作業を、
図8で示すように、左岸から右岸に向けて順次繰り返し、河川を横断する水中構造物100を構築する(繰り返し工程)。以下に、各工程の詳細を説明する。
【0068】
≪≪前処理工程≫≫
まず、
図5(a)で示すように、河床部における水中構造物100の構築予定エリア及びその周辺領域の岩盤から礫や砂などの堆積物を除去し、整形面Sを形成する。
【0069】
整形作業は、いずれの手順で実施してもよいが、例えば、浚渫機械を搭載した作業ロボットなどを利用して、砂礫を撤去する。また、潜水士が特殊ポンプを利用して、その他種々の堆積物を除去する。こののち、潜水士による水中作業もしくは作業ロボットによる無人作業により、噴射ノズル7から高圧水や圧縮空気などの高圧流体Hfを噴射させ、砂分を下流側に流下させる。
【0070】
≪≪ベース構造体の構築工程≫≫
次に、
図5(b)で示すように、河床部の整形面Sを挟んだ上流側及び下流側の各々に、ベース構造体3を構築するベース区画を設定するベース型枠31を設置する。ベース型枠31は、例えば蛇篭や大型土嚢、またはこれらを混在させて用いることができる。もしくは、地盤の掘込により、ベース区画を設定してもよい。
【0071】
複数のベース型枠31を相互に接するようにして、河川の横断方向に並列配置する。このとき、河床部の不陸などによりベース型枠31と河床部との間に隙間が生じる場合は、小土嚢を詰めるなどしてベースコンクリートの漏れ出し対策を講じる。これらの作業と併せて、ベース型枠31の打設領域側の側面に当接するようにして、緊張材固定治具5と緊張材12を配置する。
【0072】
≪緊張材固定治具≫
緊張材固定治具5は、
図5(b)で示すように、埋込式型枠兼架台51と、複数のさや管52とにより構成されている。また、さや管52には緊張材12の下部が挿入・仮固定されている。埋込式型枠兼架台51は、H形鋼よりなり、フランジが上下に位置する姿勢でベース型枠31架台に沿って配置されている。
【0073】
複数のさや管52は、
図2(b)及び(c)で示すように、ブロック体11の貫通孔111と同一の間隔で、埋込式型枠兼架台51に固定されている。埋込式型枠兼架台51に対するさや管52の固定構造はいずれでもよいが、例えば、埋込式型枠兼架台51の上フランジに孔を設ける。そして、さや管52をこの孔に貫通させるとともに、下端を埋込式型枠兼架台51の下フランジ上面に当接させる。そのうえで、埋込式型枠兼架台51の上フランジ及び下フランジとさや管52とを溶接などにより固着させる。
【0074】
このような構成の緊張材固定治具5は、地上でさや管52に緊張材12の下部を仮固定し、ベース型枠31に接する所定位置に据え付けることで、緊張材12を所望の間隔に配置でき、水中作業の省力化を図ることができる。
【0075】
なお、埋込式型枠兼架台51は、例えば、L形鋼やチャンネル鋼、角型鋼管などH形鋼以外の長尺鋼材を採用することができる。また、さや管52も、緊張材12の下部を挿入可能な構造を有していれば、いずれをも採用できる。
【0076】
上記の緊張材固定治具5を利用して緊張材12を配置したのち、
図5(c)で示すように、ベース型枠31で規定した空間にベースコンクリート32を打設し、ベース構造体3を構築する。緊張材固定治具5のうち、埋込式型枠兼架台51はほぼ全体がベース構造体3に埋設される状態となってもよいが、さや管52は少なくともその上端がベース構造体3の天端から露出した状態とする。
【0077】
≪≪緊張材の定着工程≫≫
こののち、
図6(a)で示すように、緊張材12が仮固定されているさや管52にグラウト53を注入し、このグラウト53がさや管52の上部開口から溢れ出るまで充填する。こうして、緊張材固定治具5に設けたさや管52を介して、緊張材12をベース構造体3に定着させる。
【0078】
グラウト53の充填・浸出作業は、あらかじめ緊張材12に対して離脱自在に取り付けておいた注入ホース8を利用して行う。こうすると、充填作業の終了後には、注入ホース8を水上から引き上げることができ、潜水士による水中作業を省略できる。また、さや管52に対するグラウト53の充填状況も、例えば、カメラを搭載した水中点検ロボットなどを利用することにより、潜水士による点検作業を省略できる。
【0079】
≪≪一区画分の構築工程≫≫
上記のとおり、緊張材12の下部がベース構造体3に定着したところで、このベース構造体3上に水中構造物100の一区画分101を構築する。
【0080】
まず、
図6(b)で示すように、ベース構造体3上の上流側にブロック体11を据え付ける。ブロック体11の据え付けは、
図3(a)を参照して説明した説明したように、貫通孔111に緊張材12を貫通させ、この緊張材12をガイドにして降下させる。
【0081】
このとき、ブロック体11はその一部が、
図5(b)を参照して説明した緊張材固定治具5の埋込式型枠兼架台51上に配置される状態となる。このため、据え付けたブロック体11の不陸調整などの作業を省略できる。
【0082】
こののち、ブロック体11をベース構造体3上に固定する。その手順は、上述の
図3(a)~
図3(d)を参照しつつ説明した手順により、緊張材12とグラウト13を利用して固定する。
【0083】
次に、同様の手順で、
図6(c)で示すように、ベース構造体3上の下流側にブロック体11を据え付け、これらを緊張材12とグラウト13を利用して固定する。こうして、ベース構造体3上の上流側及び下流側に、1段目のブロック体11を固定する。
【0084】
こののち、
図7(a)で示すように、上流側及び下流側に対をなして立設した1段目のブロック体11を型枠に見立てて、水中コンクリート2を打設する。必要に応じて、水中コンクリート2の打設前に、対をなす1段目のブロック体11の右岸側端部を塞ぐ仕切り板21を設置しておく。仕切り板21は、コンクリートの打継ぎ時に一般に使用されている、継ぎ目用鋼板や網目状の金網パネル、蛇篭など、いずれを採用してもよい。
【0085】
水中コンクリート2の打設作業が終了したのち、
図7(b)で示すように、上流側及び下流側の順で、対をなして2段目のブロック体11をそれぞれ、上述の
図4(a)~
図4(d)を参照しつつ説明した手順により、固定する。
【0086】
これら2段目のブロック体11を積み上げ固定したのち、これらを型枠に見立てて、水中コンクリート2を打ち継いでいく。このように、ブロック体11を積み上げるごとに、その背面で水中コンクリート2を打設し、両者を固着させる。これにより、先行して積み上げたブロック体11は、安定した状態を維持できる。
【0087】
上記の作業を、
図1(b)で示すよう、積み上げたブロック体11の天端が水上に露出するまで繰り返す。なお、水中コンクリート2は、ブロック体11を複数段積み上げるごとに打ち継いでもよい。これにより、ブロック体11を積み上げたブロック連結体10と、ブロック連結体10を型枠にして構築した水中コンクリート2の組み合わせが、一区画分101だけ構築される。水上でさらにブロック体11を積み上げる場合、同様の手順で積み上げればよい。
【0088】
≪≪一区画分の構築工程の繰返し≫≫
上記の水中構造物100の一区画分101を構築する工程を、
図8で示すように、ベース構造体3上で、左岸から右岸に向けて順次、繰り返し実施する。これにより、仮締切工事を採用する場合に実施していた、左岸側半分を締め切って水中構造物100の半分を構築したのち、締め切り位置を右岸側半分に切り替えて、水中構造物100の残り半分を構築する半川締め切りを省略できる。
【0089】
なお、
図8では、一区画分101の構築工程を、左岸から右岸に向けて順次繰り返す場合を例示に挙げている。しかし、これに限定するものではない。例えば、一区画分101を、構築予定エリアの中央で構築したのち、左岸及び右岸各々に向けて継ぎ足すように繰り返してもよい。もしくは、一区画置きに構築したのち、隙間を埋めるようにして、残りの区画を構築してもよい。
【0090】
また、先行して構築した一区画分101に隣接して、後行の一区画分101を構築する場合、河川を横断する方向に隣り合うブロック連結体10の間には目地部が形成される。この目地部は、浸水が生じることのないよう適宜、間詰め処理を行う。
【0091】
水中構造物100を構成するブロック連結体10は、水流のある河川など側圧が大きく作用する環境下にあっても、鉛直自立を維持できるため、従来のように堅牢化する必要がない。また、ブロック連結体10を河床部に根入れする作業も省略できるなど、水中構造物100の構築に係り、設計及び施工の両面で合理化を図ることが可能となる。
【0092】
本発明のブロック連結体の構築方法、ブロック連結体、ベース構造体の構築方法、水中構造物、及び水中構造物の構築方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0093】
≪吊り治具の利用≫
ブロック体11の据え付け作業は、
図9で示すような吊り治具6を採用するとよい。
【0094】
吊り治具6は、クレーンフックに接続する吊り具本体61と、吊り具本体61から垂下するブロック保持具62とを備える。ブロック保持具62は、上端が吊り具本体61に対して鉛直方向に回転自在に接続され、下端には、ブロック体11を保持する爪部63が設けられている。爪部63の下面はブロック体11に向けて上昇する傾斜面を有している。
【0095】
この吊り治具6を利用して後行ブロック体11bを吊り下げ、緊張材12をガイドにして先行ブロック体11aの上部に降下させる。すると、爪部63の下面が先行ブロック体11aの上面に当接した時点で、ブロック保持具62が鉛直方向に回動して、後行ブロック体11bを開放する。これにより、潜水士による玉掛外しなどの水中作業を省略できる。
【0096】
≪水中構造物及びブロック体の他の事例≫
ブロック連結体10は、コンクリートダムの上流面腹付け工や、フーチング設置など水面下における堤体周辺構造物の構築時に利用できる。また、ブロック連結体10を利用した水中構造物100としては、橋脚、堰柱、取水塔、減勢工などの水面下における自立構造物に適用が可能である。
【0097】
例えば、
図10(a)で示すように、橋脚200を構築する場合、
図10(b)で示すような、筒形状のブロック体11を採用すると、施工効率を大幅に向上することができる。つまり、ブロック体11を水中コンクリート2の充填領域を備えた筒体に形成することで、複数のブロック連結体10を、左右方向に連続させることなく、1体のブロック連結体10のみで橋脚200を構築することができる。
【0098】
したがって、橋脚200の外形状にブロック連結体10の外形状が合致するよう、ブロック体11の外形状を形成しておくことで、橋脚200を迅速に構築でき、施工性を大幅に向上することが可能となる。なお、ブロック体11は、筒形状を半割にした形状であってもよい。このように、ブロック体11は、構築を予定する水中構造物100の外形状に応じて、適宜の形状を採用すればよい。
【0099】
≪緊張材の他の事例≫
ブロック連結体10を構築する際、
図11(a)で示すように、緊張材12に突起部122を設けてもよい。
【0100】
突起部122は、先行ブロック体11aと後行ブロック体11bとの接触面Cfを挟んだ上下に配置され、上側突起部122aと下側突起部122bとにより構成されている。その形状はいずれでもよく、例えば、ナットや平鋼板ななどを採用することができる。
【0101】
このような、対をなす突起部122を緊張材12に設けることで、接触面Cfに対して、効率よく圧縮力を作用させることができる。また、
図4(c)を参照して説明したような張力導入工程時に、先行ブロック体11aで生じやすい付着切れを防止できる。
【0102】
さらに、
図11(b)で示すように、突起部122の断面を接触面Cfに向けて縮径させる形状にすると、より強力な圧縮力を接触面Cfに作用させることができる。しかし、後行ブロック体11bに対して次のブロック体11を積み上げる際、張力導入工程を実施すると、グラウト13に上側突起部122aによる押し抜き力が作用し、ブロック体11にコーン状の破壊線Bfに沿う損傷を生じる可能性がある。
【0103】
このため、
図11(c)で示すように、貫通孔111の内壁であって損傷を生じる可能性のある範囲(突起部122を設けた近傍範囲)に、補剛管9を配置し保護するとよい。補剛管9の材質や形状は、いずれでもよく何ら限定されるものはない。
【0104】
また、
図12(a)~(d)で示すように、接触面Cfを挟む対をなす突起部122を含む任意の高さ範囲L2のグラウト13を、張力導入工程、充填工程、及び除荷工程によるプレストレスが導入された範囲としてもよい。具体的には、
図12(a)で示すように、先行ブロック体11aにはグラウト13を、下側突起部122bより下方の高さ範囲L1まで充填しておく。
【0105】
次に、
図12(b)で示すように、後行ブロック体11bを積み上げ据付ける。
図12(c)で示すように、緊張材12に張力を導入し、張力を導入した状態を維持しつつ、貫通孔111にグラウト13を充填する。グラウト13は、接触面Cfを挟む対をなす突起部122を含む高さ範囲L2に充填する。
【0106】
こののち、
図12(d)で示すように、グラウト13が硬化したところで張力を除荷する。張力を除荷した状態で、後行ブロック体11bの貫通孔111にグラウト13を充填する。充填範囲は、下側突起部122bより下方の高さ範囲L1である。したがって、先行ブロック体11aにおける下側突起部122bより下方の高さ範囲L1も、緊張材12に張力が導入されていない状態で、グラウト13が充填・固化されている。
【0107】
こうすると、後行ブロック体11bに対して次のブロック体11を据え付け、張力導入工程を実施する際、下側突起部122bより下方の高さ範囲L1が緩衝部となって、対をなす突起部122を含む高さ範囲L2の圧縮力が大きくキャンセルされる現象を抑止できる。つまり、接触面Cfの圧縮力のキャンセルを防止するとともに、大きなせん断ひずみの発生を防止できる。これにより、ブロック連結体10の品質を向上させることができる。
【0108】
なお、
図11及び
図12では、突起部122を、先行ブロック体11aと後行ブロック体11bとの接触面Cfを挟んだ上下に配置したが、接触面Cfを挟んだ上下のいずれか一方側にのみ設けてもよい。また、例えば、下側に突起部122を複数設けるなどしてもよい。
【0109】
≪さや管の他の事例≫
図5を参照して説明したベース構造体3の構築工程では、埋込式型枠兼架台51にさや管52を取り付け、緊張材12をベース構造体3に定着させた。しかし、緊張材12の配置間隔で、ベース構造体3にさや管52を配置可能であれば、埋込式型枠兼架台51は省略してもよい。
【0110】
埋込式型枠兼架台51を省略する場合、さや管52は、例えばベース型枠31に直接取り付けるとよい。また、さや管52は、緊張材12をベース構造体3に定着させるための定着体として機能すれものであれば、いずれを採用してもよく、例えば、鉄筋どうしを連結する際に用いられるカプラーなどを採用することもできる。カプラーを採用すると、グラウト53を充填する工程を省略できる。
【0111】
≪張力導入工程の他の事例≫
緊張材12に張力を導入する工程は、水上に限定されるものではなく、水中で実施してもよい。
【0112】
例えば、センターホールジャッキJに替えて水中で使用可能なジャッキを採用するとともに、荷重伝達管4に替えて支圧プレートを別途準備する。そして、先行ブロック体11a上に支圧プレートを介して上記のジャッキを設置し、緊張材12に張力を導入してもよい。
【0113】
また、荷重伝達管4を使用する場合に、全長が水中に配されるものを採用してもよい。例えば、天端が水面近傍まで到達する長さの荷重伝達管4を採用すれば、緊張材12に張力を導入する工程で水中作業が発生するものの、深水で作業をする場合と比較して作業性を大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0114】
100 水中構造物
101 一区画分
1 コンクリート外壁
2 水中コンクリート(中詰め材)
21 仕切り板
3 ベース構造体
31 ベース型枠
32 ベースコンクリート
4 荷重伝達管(荷重伝達具)
41 本体部
42 底部プレート
43 支圧プレート
5 緊張材固定治具
51 埋込式型枠兼架台
52 さや管
53 グラウト
6 吊り治具
61 吊り具本体
62 ブロック保持具
63 爪部
7 噴射ノズル
8 注入ホース
9 補剛管(補剛材)
10 ブロック連結体
11 ブロック体
11a 先行ブロック体
11b 後行ブロック体
111 貫通孔
12 緊張材
121 シース管
122 突起部
123 ナット
13 グラウト(充填材)
200 橋脚
Bf 破壊線
Hf 高圧流体
Cf 接触面
S 整形面
J センターホールジャッキ
L1 下側突起部より下方の高さ範囲
L2 対をなす突起部を含む高さ範囲