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特開2024-127487pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127487
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/22 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N31/22 121D
G01N31/22 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036674
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】國嶋 駿
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB03
2G042CB03
2G042DA08
2G042FB05
2G042FC01
(57)【要約】
【課題】測定装置が測定対象試料に触れることがなく、測定することができ、かつ、高感度でpHを測定することができる、pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のpH測定キットは、片面に凹凸形状を有するガラス板と、前記片面上に固定されたpH指示層と、を有する。前記pH指示層が、色素化合物と、シランカップリング剤との反応物である。前記色素化合物が、エポキシ基と反応する置換基と、pH指示部位と、を有する。前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に凹凸形状を有するガラス板と、
前記片面上に固定されたpH指示層と、
を有するpH測定キットであって、
前記pH指示層が、色素化合物と、シランカップリング剤との反応物であり、
前記色素化合物が、エポキシ基と反応する置換基と、pH指示部位と、を有し、
前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有することを特徴とするpH測定キット。
【請求項2】
前記ガラス板が、フロストガラス、又はすりガラスである、請求項1に記載のpH測定キット。
【請求項3】
前記色素化合物が、アミノ基(NH)、カルボキシル基(COOH)、ヒドロキシ基(OH)からなる群から選択される少なくとも1種を有するpH指示薬である、請求項1又は2に記載のpH測定キット。
【請求項4】
前記色素化合物が、ブロモクレゾールパープル(BCP)、ブロモチモールブルー(BTB)、フェノールレッド(PR)、ブロモクロロフェノールブルー(BCPB)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のpH測定キット。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)である、請求項1又は2に記載のpH測定キット。
【請求項6】
測定対象試料を、請求項1又は2に記載のpH測定キットの前記pH指示層に接触する工程と、
前記pH測定キットの前記pH指示層の反対側から、色計測装置で前記pH指示層の色度を計測する工程と、
を有することを特徴とするpH測定方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のpH測定キットと、
色計測装置と、を有するpH測定装置であって、
前記pH測定キットは、
前記pH指示層上に、測定対象試料と接触する呈色部と、
前記ガラス板の凹凸形状を有しない片面における計測部と、
を有することを特徴するpH測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどのカメラ機能の進化により、高機能・低コストの半導体イメージセンサの発展と普及が進み、簡便操作で様々な物体の色測定が手軽に実現できるようになってきた。機器で取得した色情報から化学物質の定量にも対応できるようになり、分光学的な精密測定に並んで汎用に用いられるレベルに達している(例えば、非特許文献1)。
このような技術は、国際照明委員会(CIE)の提唱する色空間で色情報を処理する方法がとられており、化学変化によって生成したり消滅したりする物質の量を見積もる方法として、CIE xy座標上で基準点周りの偏角Dで測定する方法(特許文献1、特許文献2)が報告している。また、水中のpHに応じて可逆的に色変化する高分子色素に関する材料発明も報告されている(例えば、特許文献3、特許文献4)。また、色度座標上での定量解析による定量分析方法が開示されている(例えば、特許文献5)。特に、特許文献5において、物質との相互作用によって呈色する分析材料に対して、計測装置などの計色計を用いて色の数値情報を測定し、それらの呈色をCIE XYZ表色系の3次元色座標上の色度点に変換し、事前に得られた計測スケールを用いて、測定対象サンプルの物質(T)の含有量を算出する定量分析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5665187号公報
【特許文献2】特許第6224410号公報
【特許文献3】特許第6594279号公報
【特許文献4】特許第6594280号公報
【特許文献5】特開2022-119081号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Capitan-Vallvey, L. F., et al. (2015). “Recent developments in computer vision-based analytical chemistry: A tutorial review.” Analytica Chimica Acta 899: 23-56.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、測定する場所や環境などに応じていちいち仕様を変えた機器を用意することはハードルが高い。一般的な測定機器がどのような状況にも対応できるような環境作りが切望されている。
上記いずれの特許および非特許においても、pHを測定するために材料は測定水中に置き、その色調変化を測定する測定機器も材料と一体となって測定水に浸ける必要があった。よって、必然的に装置には電気回路が水に接触しないような防水処置をしておくことが要求される。
【0006】
本発明では、pH変化を色変化で示す色素を透明な基板の片面だけに固定させ、反対面には様々な測定機器の測定部を直接設置できるようなpH測定キットを考案した。これにより、測定対象試料が水の場合、測定部に測定水を導く必要がなくなり測定装置が測定水に触れることもなくなる。防水処置を施さずに済むため、既存の色測定装置がそのまま利用できるようになる。すなわち、本発明は、測定対象と接触して色変更する呈色部と、色測定装置で色計測する測定部と、をガラス板の異なる側にそれぞれ配置することで、測定装置が測定対象試料に触れることがなく、測定することができる、pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置を提供することを目的とする。また、前記呈色部が、カラス基板の凹凸形状を有する側に配置することで、高感度の測定ができる、pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
[1]片面に凹凸形状を有するガラス板と、
前記片面上に固定されたpH指示層と、
を有するpH測定キットであって、
前記pH指示層が、色素化合物と、シランカップリング剤との反応物であり、
前記色素化合物が、エポキシ基と反応する置換基と、pH指示部位と、を有し、
前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有することを特徴とするpH測定キット。
[2]前記ガラス板が、フロストガラス、又はすりガラスである、[1]に記載のpH測定キット。
[3]前記色素化合物が、アミノ基(NH)、カルボキシル基(COOH)、ヒドロキシ基(OH)からなる群から選択される少なくとも1種を有するpH指示薬である、[1]又は[2]に記載のpH測定キット。
[4]前記色素化合物が、ブロモクレゾールパープル(BCP)、ブロモチモールブルー(BTB)、フェノールレッド(フェノールスルホンフタレイン、PR)、ブロモクロロフェノールブルー(BCPB)からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載のpH測定キット。
[5]前記シランカップリング剤が、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)である、[1]~[4]のいずれかに記載のpH測定キット。
[6] 測定対象試料を、[1]~[5]のいずれかに記載のpH測定キットの前記pH指示層に接触する工程と、
前記pH測定キットの前記pH指示層の反対側から、色計測装置で前記pH指示層の色度を計測する工程と、
を有することを特徴とするpH測定方法。
[7][1]~[5]のいずれかに記載のpH測定キットと、
色計測装置と、を有するpH測定装置であって、
前記pH測定キットは、
前記pH指示層上に、測定対象試料と接触する呈色部と、
前記ガラス板の凹凸形状を有しない片面における計測部と、
を有することを特徴するpH測定装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定装置が測定対象試料に触れることがなく、測定することができ、かつ、高感度でpHを測定することができる、pH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のpH指示キットの一例を示す概念図である。
図2】ガラス板に固定されたブロモクレゾールパープル(BCP)が水素イオン濃度(pH)により変色する酸塩基平衡の原理図である。
図3】フロストガラス板にGPTMSを担持したG-GPTMSの作製方法を示す原理図(スキーム1)ある。
図4】G-GPTMSに色素を担持したG-GPTMS-BCPの作製方法を示す原理図(スキーム2)である。
図5】本実施形態のpH測定装置の一例を示す概念図である。
図6】CIE xy色度図における色度点への変換過程を示すプロットである。
図7】CIE xy色度図において、各pHにおける色変化を偏角Dとして算出し、横軸をpH、縦軸を偏角Dとした場合で作成したグラフである。ロジスティック近似によりpKaを算出した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施形態にかかるpH測定キット、それを用いるpH測定方法、及び測定装置を実施するための形態を説明する。
【0012】
(pH指示キット)
図1は、本発明のpH指示キットの一実施形態を示す概念図である。本発明の一実施形態のpH指示キット10(本実施形態のpH指示キットということがある。)は、片面4aに凹凸形状を有するガラス板4と、前記片面上に固定されたpH指示層2と、を有する。前記pH指示層2が、色素化合物(図示なし)と、シランカップリング剤(図示なし)との反応物である。前記色素化合物が、エポキシ基と反応する置換基と、pH指示部位と、を有する。前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有する。
図1に示すpH指示層2は、表面形状が平坦で、一定の厚さを有するような層を示しているが、特に限定する意味ではない。pH指示層2が上記ガラス基板4の凹凸形状の表面に薄く形成され、一定な凹凸形状の表面形状を維持してもよい。また、例えば、ガラス基板4の凹凸形状の一部の凸部にpH指示層の厚さが0であってもよい(すなわち、pH指示層2が形成されていない箇所があってもよい)。
【0013】
上記色素化合物(図示なし)と、シランカップリング剤(図示なし)との反応物は、ガラス板4の上に、上記シランカップリング剤と、上記色素化合物と、を反応させて形成されたガラス板4と上記シランカップリング剤との結合(例えば、脱水反応による結合、以下第1結合という。);及び、上記色素化合物(図示なし)と上記シランカップリング剤とを反応させて形成された結合(例えば、エポキシ基と、エポキシ基と反応する置換基と、との反応による結合、以下第2結合という。)によって、形成された、有機・無機マトリックスであってもよい。また、上記反応物は、上記第1結合;上記第2結合;及び上記シランカップリング剤同士を反応させて形成された結合(例えば、脱水反応による結合、以下第3結合という。)、又は上記色素化合物同士を反応させて形成された結合(以下第3結合という。)によって、形成された、有機・無機マトリックスであってもよい。
【0014】
図1に示す本実施形態のpH指示キット10の一例は、平板上ガラス板4上にpH指示層2を配置して、平板形状のpH指示キットとなっている。しかし、本実施形態のpH指示キットの形状は、平板状に限らなく、例えば、球面など一定曲面のあるガラス板を用いてもよい。その場合、pH指示層が球面の内面で配置しても、外面で配置してもよい。例えば、後述のpH測定装置のその他の実施形態として、管内で色計測装置を配置した場合、管状ガラス管の底部の外側にpH指示層を配置することが好ましい。
また、必要に応じて、例えば、計測の感度を高くする観点から、図2に示すガラス板4の凹凸形状を有しない面4bにおいて、集光特性をある凸球面レンズ形状を形成してもよい。その場合、色測定装置のセンサにより多くの光を集めることができ、色測定装置の所定の感度を超える測定感度を得ることができる。
【0015】
[ガラス板]
本実施形態のpH指示キットに用いるガラス板4は、凹凸形状を有する第1面4aと凹凸形状を有する第2面4bとを有する。
本実施形態に係るガラス板4の厚さが、本発明の目的を損なわない範囲内、特に限定がない。例えば、割れにくい観点から、0.1mmであってもよく、0.5mmであってもよく、1mm以上であってもよい。また、測定感度の観点から、例えば、10mm以下であってもよく、5mm以下であってもよい。
本実施形態に係るガラス板4の凹凸形状は、規則的な凹凸形状であっても、不規則的な凹凸形状であってもよい。形成方法が簡単である観点から、不規則的な凹凸形状であることが好ましい。
本実施形態に係るガラス板4の凹凸形状を有する第1面4aの表面粗さは、例えば、最大高さ(Rmax/JIS)で0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。また、形成しやすい観点から、例えば、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
本実施形態に係るガラス板4の凹凸形状を有する第1面4aは、その実表面積(S0)が外形寸法から算出される基準表面積(St)に対して、以下式(A)で示す表面積増加率(ΔS0)が50%以上でもよく、80%以上でもよい。また、500%以下でもよい。
ΔS0={100*(S0-St)/S0(%) (A)
表面粗さ及び表面積増加率は、公知の方法で評価することができる。例えば、非接触表面形状測定機および走査型プローブ顕微鏡などが挙げられる。
【0016】
ガラス板の片面において、上記凹凸形状を形成する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、サンドブラストや、珪砂などの物理的な粗面化表面処理方法;粗面化剤などのエッチング剤を用いる化学的な表面処理方法;ケイ素アルコキシド系コーティング材を透明ガラス基材上に塗装・加水分解する成膜方法などが挙げられる。また、物理的な方法で処理した後、更に化学的な方法で処理してもよい。
【0017】
本発明の目的を損なわない範囲内、特に限定がないが、例えば、公知のガラス面の処理方法で形成されたフロストガラスのフロスト面の形状、又はすりガラスのすり面の形状などが挙げられる。また、凹凸形状を有するガラス板4としては、例えば、フロストガラス、又はすりガラスなどが挙げられる。その中、市販品から入手しやすく、また、フロスト面の反対側から観察しやすい観点から、フロストガラスが好ましい。
【0018】
本実施形態にかかる、片面4aに凹凸形状を有するガラス板4は、凹凸形状を有しないガラス板(例えば、通常のカバーガラスなどの透明ガラス板)より、単位面積でpH試薬剤を多く固定されることができる。そのことから、凹凸形状を有するガラス板4を用いた本実施形態のpH測定キットは、より優れた発色性があり、pH測定範囲と感度も高くなると考えられる。
【0019】
[pH指示層]
本実施形態のpH測定キットのpH指示層は、ガラス板4の上に、上記色素化合物と、上記シランカップリング剤と反応させて得られたものである。ガラス板4の上に、まず、上記シランカップリング剤の層を形成した後、上記シランカップリング剤の層と上記色素化合物とを反応させてもよい。また、まず、上記シランカップリング剤と上記色素化合物と反応させてから、ガラス板4の上に塗布してもよい。上記シランカップリング剤とガラス板4と、十分に接触することができる観点から、ガラス板4の上に、まず、上記シランカップリング剤の層を形成した後、上記シランカップリング剤の層と上記色素化合物とを反応させて、pH指示層を形成することが好ましい。
【0020】
例えば、先に上記シランカップリング剤の層を形成した後、上記シランカップリング剤の層と上記色素化合物とを反応させる方法の場合、pH指示層は、ガラス板4の凹凸形状を有する表面(以後、単に「凹凸面」ということがある。)から、上記シランカップリング剤由来層、上記シランカップリング剤由来層の層構成を有してもよい。後述の実施例で説明した具体例では、ガラス板4の凹凸面と上記シランカップリング剤由来層との間に、上記シランカップリング剤由来のアルコキシ基が加水分解してシラノール基が生成した後、凹凸面にある水酸基との脱水縮合反応を経て共有結合を生成していると考えられる(その一具定例は、例えば、図4に示すスキーム1に示す。)。また、上記シランカップリング剤由来層と上記色素化合物との間に、エポキシ基と水酸基と反応して共有結合を形成していると考えられる。そのことによって、上記色素化合物が、上記シランカップリング剤由来層を介して、ガラス板4の凹凸面に固定されている(例えば、その一具定例は、例えば、図4に示すスキーム2に示す。)。
【0021】
本実施形態のpH指示層は、ガラス板4の凹凸面の上に形成され、かつ、シランカップリング剤由来層を介して形成されている。その結果、後述のpH測定装置の応用では、測定部(図3、2s)において、測定対象試料と接触できる上記色素化合物が高密度で固定されることができる。そのため、優れたpH応答性が得られる。
【0022】
本実施形態のpH指示層は、ガラス板4の凹凸面の上に形成されるため、通常の方法で、層厚の評価が難しいですが、ガラス板4の単位面積で形成された質量で評価することができる。例えば、上記シランカップリング剤で処理する前後のガラス板の質量変換から、ガラス板の面積から、計算することができる。
本実施形態のpH指示層の層厚は、ガラス板4の凹凸形状にもよるが、特に限定されない。例えば、0.1kg/m以上であってもよく、0.5kg/m以上であってもよく1kg/m以上であってもよい。また、10kg/m以下であってもよく、5kg/m以下であってもよい。
【0023】
本実施形態のpH指示層の表面形状は、ガラス板4の凹凸面の上に形成されるので、凹凸形状の表面粗さ、pH指示層の膜厚(単に面積の形成量)によるが、平坦になってもよく、凹凸形状になっても良い。例えば、後述のpH測定装置に用いる場合、測定対象試料との接触面が広い観点から、凹凸形状であることが好ましい。
【0024】
本実施形態のpH指示層の表面は、特に限定されないが、例えば、後述のpH測定装置に用いる場合、測定対象試料の媒体との親和性が高いことが好ましい。例えば。測定対象試料の媒体が水性溶媒のとき、測定対象試料との接触面が広い観点から、親水性であることが好ましい。
【0025】
本実施形態のpH指示層の表面状態は、特に限定されないが、例えば、後述のpH測定装置に用いる場合、測定対象試料との接触面が広い観点から、測定対象試料を表層以下に浸透することができることが好ましい。例えば、浸透深さが、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよい。また、例えば、pH指示層の全層でもよく、100μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0026】
<色素化合物>
本実施形態のpH指示層の1つの原料とする色素化合物(本実施形態に係る色素化合物ということがある。)は、エポキシ基と反応する置換基と、pH指示部位と、を有する色素化合物である。前記エポキシ基と反応する置換基は、アミノ基(NH)、カルボキシル基(COOH)、ヒドロキシ基(OH)からなる群がから選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヒドロキシ基(OH)であることがより好ましい。上記pH指示部位とは、上記色素化合物の上記エポキシ基と反応する置換基以外の部分を指す。そして、上記色素化合物と後述の本実施形態に係るシランカップリング剤に含まれているエポキシ基とを反応させ、上記色素化合物が、pH指示層の一構造として固定された後でも、上記pH指示部位が存在し、色変化に寄与することができる。すなわち、pH指示部位は、pH1~14の範囲において、pHが変化する際に、該色素化合物の色を変化することに寄与できる部位である。該pH指示部位は、本実施形態に係る色素化合物がpH指示層に固定されても、存在し、機能することができ、pH指示層の色を変化することができる。
前記色素化合物としては、ブロモクレゾールパープル(BCP)、ブロモチモールブルー (BTB)、フェノールレッド(PR、フェノールスルホンフタレイン)、ブロモクロロフェノールブルー(BCPB)などが挙げられる。後述実施例では、本実施形態に係る色素化合物として、ブロモクレゾールパープル(BCP)を使用した。
【0027】
例えば、実施形態に係る色素化合物の一例がブロモクレゾールパープル(BCP)である場合、後述の実施例1の手順で、例えば、図4図5に示す原理図で、ブロモクレゾールパープル(BCP)を、フロストガラスに固定することができる。すなわち、本実施形態のpH指示層を形成するための原料として、BCPが2つのヒドロキシ基(OH)を有する。その1つのOHが上記エポキシ基と反応する置換基であり、もう1つのOHを含む他のBCP構造は、BCPのpH指示部位である。図2に示すように、pH指示層中に固定されたBCPのpH指示部位は、所内環境のpHによって、黄色から紫に変化する。後の実施例1で作製したpH測定キットであるG-GPTMS-BCP層を有するガラス板(G-GPTMS-BCPと呼称する)は、緩衝液中において、以下の色調変化を示した。
pH 4.0 ~ 7.0 では黄色、
pH 7.5 ~ 9.0 では緑色、
pH 9.5 ~ 11.5 では青色
【0028】
<シランカップリング剤>
本実施形態のpH指示層の1つの原料とするシランカップリング剤(本実施形態に係るシランカップリング剤ということがある。)は、エポキシ基含有トリアルコキシシラン及び/又はその加水分解縮合物であることが好ましい。上記エポキシ基含有トリアルコキシシランは、加水分解等により失われてしまう官能基部分以外にエポキシ基が含まれているトリアルコキシシランであれば、その構造は特に制限されないが、例えば、下記式(I)で表される化合物を例示することができる。
【0029】
R-Si(OR (I)
【0030】
(式中、Rは、エポキシ基又はグリシドキシ基を有する炭化水素基を表し、Rは無置換又は置換基を有する炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【0031】
R中、エポキシ基、又はグリシドキシ基は、1個以上含まれていればよく、1~3個有するのが好ましく、エポキシ基、グリシドキシ基両方を含んでいてもよい。
Rの「エポキシ基又はグリシドキシ基を有する炭化水素基」の「炭化水素基」としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基等を例示することができ、炭素数としては、1~30個の範囲が好ましく、1~10個の範囲がさらに好ましい。
【0032】
「アルキル基」として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基等、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等を例示することができる。
「シクロアルキル基」としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を例示することができる。
「シクロアルキルアルキル基」として、具体的には、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基等を例示することができ、炭素数3~10のシクロアルキル基と炭素数1~10のアルキル基が結合しているのが好ましい。
上述した「炭化水素基」には、エポキシ基及びグリシドキシ基以外の置換基を有していてもよく、そのような置換基として、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、(メタ)アクリロキシ基等を例示することができる。
ここで、ハロゲン原子として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示することができる。
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基等を例示することができる。
アルキル基、アルケニル基としては、上記Rにおけるアルキル基、アルケニル基と同じ具体例を例示することができる。
【0033】
の「無置換または置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の「炭素数1~10のアルキル基」としては、上記Rにおけるアルキル基と同じものを例示することができる。
「置換基を有する」の置換基として具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、(メタ)アクリロキシ基等を例示することができる。ハロゲン原子、アルコキシ基として具体的には、上記Rにおけるエポキシ基及びグリシドキシ基以外の置換として例示されたハロゲン原子、アルコキシ基と同じ具体例を例示することができる。
原料であるエポキシ基含有トリアルコキシシラン又はその加水分解縮合物として具体的には、次の化合物を例示することができるが、これに限られるものではない。また、これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
の「無置換または置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の「炭素数1~10のアルキル基」としては、上記Rにおけるアルキル基と同じものを例示することができる。
「置換基を有する」の置換基として具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、(メタ)アクリロキシ基等を例示することができる。ハロゲン原子、アルコキシ基として具体的には、上記Rにおけるエポキシ基及びグリシドキシ基以外の置換として例示されたハロゲン原子、アルコキシ基と同じ具体例を例示することができる。
原料であるエポキシ基含有トリアルコキシシラン又はその加水分解縮合物として具体的には、次の化合物を例示することができるが、これに限られるものではない。また、これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
中でも、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、またはグリシドキシアルケニルアルコキシシランが好ましく、グリシドキシアルキルトリアルコキシシランがより好ましい。具体的には、下記式に示す化合物を例示することができる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)
3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)
【0034】
また、本実施形態に係るシランカップリング剤は、下記式(II)で表される化合物をさらに含んでもよい。
【0035】
-Si(OR (II)
【0036】
(式中、Rは、エポキシ基又はグリシドキシ基を有しない炭化水素基を表し、Rの前記炭化水素基は、上記式(I)のRの炭化水素基と同じ意味であり、上記Rは、式(I)中のRと同じ意味である。)
上記式(II)で表される化合物としては、例えば、トリメトキメチルシラン(MeSi)などのシランカップリング剤が挙げられる。
本実施形態に係るシランカップリング剤は、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)とトリメトキメチルシラン(MeSi)との混合物を用いることができる。
【0037】
(pH測定方法)
本発明の一実施形態のpH測定方法(本実施形態のpH測定方法)は、測定対象試料を、上記本実施形態のpH測定キットの前記pH指示層に接触する工程と、前記pH測定キットの前記pH指示層の反対側から、計色計などの色計測装置で前記pH指示層の色度を計測する工程と、を有する。
【0038】
本実施形態のpH測定方法は、必要に応じて、上記接触工程の前に、pH指示層を前処理する工程を含んでもよい。前処理としては、例えば、pH指示層の表面をイオン交換水で洗浄してもよく、あるいは、一定のpH値を有する緩衝液で洗浄してもよい。本実施形態のpH測定方法は、必要に応じて、上記計測工程と同時に、またはその後に、色計測装置で得られた色の数値結果から、測定対象試料のpHを得る計算工程を含んでも良い。
【0039】
上記計算工程としては、例えば、特許文献5に開示されているような定量分析法を用いることができる。測定対象試料とpH測定層の色素化合物由来の構造との相互作用によって呈色し、pH測定層の呈色に対して、色計測装置などの計色計を用いて色の数値情報を測定し、それらの呈色をCIE XYZ表色系の3次元色座標上の色度点に変換する。そして、計測スケールを用いて、測定対象試料のpHを算出する。前記測定スケールは、特許文献5に開示されている方法で事前に作成することができる。
【0040】
本実施形態のpH測定方法は、pH測定キットのpH指示層(今後、pH測定キットの表面ということがある)上から、色計測装置などの計色計で測定してもよく、pH測定キットのpH指示層の反対側(今後、pH測定キットの裏面ということがある)、すなわち、ガラス板を通して、pH指示層の呈色を測定してもよい。本実施形態のpH測定方法は、測定する場所や環境などが変更に適応しやすく、一般的な測定機器がどのような状況にも対応できる観点から、pH指示層の反対側(pH測定キットの裏面)から、ガラス板を通して、pH指示層の呈色を測定することが好ましい。
【0041】
本実施形態のpH測定方法は、本実施形態のpH測定キットを用いることで、pHを広い範囲で測定することができる。測定範囲は特に限定されない。例えば、pH1.5以上pH12.5以下の範囲で測定してもよく、pH2.5以上pH11.5以下の範囲で測定してもよく、pH3.0以上pH11.0以下の範囲で測定してもよい。例えば、pH3.0~6.0(黄色)、pH6.5~8.0(緑色)、pH8.5~11.0(青色)の範囲で計測することができる。
【0042】
(pH測定装置)
図3に示すように、本発明の一実施形態のpH測定装置(本実施形態のpH測定装置)20は、上記本実施形態のpH測定キット10と色計測装置14とを有することを特徴とする。前記pH測定キット20は、そのpH指示層2上に、測定対象試料12と接触する呈色部2sと、前記ガラス板4の凹凸形状を有しない片面4bに計測部4sと、を有する。本実施形態のpH測定装置は、必要に応じて、色度情報からpHを算出する計算部を有しても良い。
【0043】
上記計算部は、入力した色度情報から、pH値を出力することができれば、特に限定されない。例えば、特許文献5に開示されているような定量分析法を参考して、作成することができる。例えば、必要に応じて、色計測装置などの計色計を用いて測定した色の数値情報をCIE XYZ表色系の3次元色座標上の色度点に変換するサブ計算部と、計測スケールを用いて、特許文献5に開示されている定量分析方法で測定対象試料のpHを算出するpH算出部を含んでもよい。上記計算部は、標準試料の色度情報から、特許文献5に開示されている方法を用いて、測定スケールを、事前に作成する測定スケール算出部を含んでもよい。
【0044】
上記計算部は、上記特許文献5の方法以外の公知の方法を用いて、入力した色度情報から、pH値を出力するものであってもよい。例えば、色情報を扱う色空間の例として、L*a*b*以外に、RGB、CMYK、HSV、CIE 1931などが挙げられる。それらの色空間内で、上記同様に、検量線を引いて相関関係からpHを見積もることができる。
【0045】
本実施形態のpH測定装置20は、測定面(測定部4s)に測定水などの測定媒体を導く必要がなくなり、pH測定装置20が測定媒体に触れることもなくなる。例えば、測定媒体が、酸性水性溶液の場合、防酸処置や防水処置を施さずに済むため、既存の色測定装置がそのまま利用できるようになる。
【0046】
[pH測定装置のその他の実施態様]
本実施形態のpH測定装置のその他の実施形態(図示なし)は、例えば、防酸処置や防水処置を施さずに済む特徴と利用して、ガラス管の底部の先端の管外に、本実施形態のpH指示層を形成することができる。すなわち、ガラス管の底部において、本実施形態のpH測定キットを配置し、その呈色部が管外に配置し、その測定部が管内に配置することができる。その場合、ガラス管の中において、色測定装置を配置することができる。そして、例えば、測定対象試料が流動性の液体、経時的に変化する液体、あるいは、部品の内部の液体などである場合、そのpHを計測(モニター)する際に、上記管状pH測定キットを用いたpH測定装置を好適に使用することができる。
さらに、他の実施態様(図示なし)としては、中空のガラス容器の外部にpH指示層を形成して呈色部を配置し、その内部に測定部を配置するpH測定装置が挙げられる。該pH測定装置の色測定装置は、例えば、省電力化、小型化したものであり、更に出力結果を保存したデータ保存部若しくはデータを外部送信できる送信部を有する。該実施態様のpH測定装置は、例えば、測定対象の液体中に深く設置し、測定対象液体のpHについて、経時変化や、位置依存性などを測定することができる。
【実施例0047】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
(評価方法)
「比色測定」
高分子色素の色情報をColor Munki Photo測色計(X-Rite GmbH)で測定した。
【0049】
(原材料)
酢酸:TCI(東京化成工業株式会社)製、純度など
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:TCI製、GPTMS
フロストガラス板:松浪ガラス工業社製、MICRO SLIDE GLASS、水緑磨全面フロスト t1.3、サイズ:76×26mm,厚み:1.2~1.5mm,Frosted:76×26mm,Pre-Cleaned:100Pcs.
【0050】
(調製例1)
「加水分解済GPTMSの調製」
サンプル瓶に酢酸水溶液(1.0mL、0.0349mol/L)と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS,1.0ml)を入れ、常温、1時間攪拌し加水分解を行った。加水分解済GPTMSをいう水溶液を調製整した。
【0051】
(準備例1)
「フロストガラス板の準備」
市販したフロストガラス板1枚を半分に切断し、38×26mmのフロストガラス板を2枚作製した。
あすみ技研社製の卓上型UVオゾン洗浄改質装置 ASM401Nを用いて2枚のフロストガラス板のフロスト面を10分間オゾン洗浄した。その後、オゾン洗浄したフロストガラス板を沸騰した2-プロパノールに1分間浸漬させ、不純物を取り除いたフロストガラス板を準備した。
【0052】
(実施例1)
「pH測定キットの作製」
以下の手順で、本実施例のpH指示キットを作成した。
(I)フロストガラス板に、GPTMS層の形成
準備例1で準備したフロストガラス板のフロスト面を上にして置き、120℃に設定した電気炉内に入れた後、フロストガラス板上に、調製例1で調整した加水分解済GPTMSを1mL滴下し、6時間加熱した。その後冷却した。フロストガラス板のフロスト面に、本実施形態のpH指示層として、GPTMS層を形成した。GPTMS層を有するガラス板(G-GPTMSと呼称する)を作製した。
上記(I)の反応の一部は、例えば、原理的に、図4に示すような反応で示すと考えられる。
【0053】
(II)pH指示薬の固定
ビーカーに酢酸水溶液(100mL,0.0349mol/L)を入れ、ブロモクレゾールパープル(BCP)20mgを溶解させた。この水溶液に作製したG-GPTMSをビーカーに12時間浸漬させた。
浸漬した材料をGPTMS面が上になるように置き、120℃に設定した電気炉内で2時間加熱した。その後、室温に戻るまで一晩冷却した。
冷却し終えた材料をメタノール及び純水で洗浄した後、フロストガラス板にBCPを固定した、本実施形態のpH指示キットとして、G-GPTMS-BCP層を有するガラス板(G-GPTMS-BCPと呼称する)を作製した。
上記(II)の反応の一部は、例えば、原理的に、図5に示すような反応で示すと考えられる。
実施例で得た、pH指示キットとしてのG-GPTMS-BCPは、緩衝液中において、以下の色調変化を示したことが分かった。
pH 4.0 ~ 7.0 では黄色、
pH 7.5 ~ 9.0 では緑色、
pH 9.5 ~ 11.5 では青色
【0054】
「pH指示キットの評価」
(1)評価装置の準備
各pHに調製した緩衝液に十分浸漬させ、そのpHにおける色変化が終了したG-GPTMS-BCPを2枚のスライドガラスで挟み込み、白色バッキング材の上にスライドガラスで挟み込んだG-GPTMS-BCPを置き、測色器(株式会社x-rite製ColorMunki)を用いて色変化測定を行った。
【0055】
評価手順は以下である。
(I)超純水、HCl、NaOH、NaHPO、NaHPOを用いてpH3.0~12.5の緩衝液を調製し、窒素雰囲気下で保存した。
(II)実施例で作製したpH指示キットを(I)で調製した各pHの緩衝液に約1時間浸漬させた。十分に平衡に達した後、材料の色変化を測色器により測定し、測色値をL*a*b*形式で得た。得られた値をXYZ形式に変換し、CIExy色度図にプロットし変色挙動を観測した。その結果を図5に示す。
(III)(II)で作成した色度図上の変色域全体における測定点の両端を結ぶ正三角形を作図し、その頂点を基準点とした。色度図上の始点と基準点を結ぶ線を基線とし、各pHにおける色変化を偏角Dとして算出した。次に、横軸をpH、縦軸を偏角Dとしたグラフを作成し、ロジスティック近似によりpKa(酸塩基解離定数-logKa)を算出した。その結果を図6に示す。
また、上記pHキットでの測定できるpH範囲4~11であった。
【符号の説明】
【0056】
2:pH指示層
4:片面に凹凸形状を有するガラス板
4a:凹凸形状を有する面
4b:凹凸形状を有しない面
10:pH指示キット
2s:接触部
4s:測定部
12:測定対象試料
14:色計測装置、測色計
20:pH測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7