(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127489
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 3/012 20060101AFI20240912BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20240912BHJP
H03K 3/354 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H03K3/012
H03K3/03
H03K3/354 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036676
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】山城 洋
【テーマコード(参考)】
5J300
【Fターム(参考)】
5J300AA03
5J300LL01
(57)【要約】
【課題】消費電力を低下可能な発振回路を提供する。
【解決手段】発振回路(X)は、ループ経路を形成するようにリング状に接続された複数段のインバータ(IV1、IV2)と、ループ経路上に直列に接続されたキャパシタ(C1)と、複数段のインバータ(IV1、IV2)のいずれかの出力に応じてキャパシタ(C1)の第1端の電圧レベルをパルス駆動することによりキャパシタ(C1)の充放電を行うように構成された充放電制御回路(3)と、複数段のインバータ(IV1、IV2)及び充放電制御回路(3)のそれぞれにバイアス電流(I1~I3)を供給するように構成されたバイアス電流生成回路(2b)と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ経路を形成するようにリング状に接続された複数段のインバータと、
前記ループ経路上に直列に接続されたキャパシタと、
前記複数段のインバータのいずれかの出力に応じて前記キャパシタの第1端の電圧レベルをパルス駆動することにより前記キャパシタの充放電を行うように構成された充放電制御回路と、
前記複数段のインバータ及び前記充放電制御回路のそれぞれにバイアス電流を供給するように構成されたバイアス電流生成回路と、
を備えた発振回路。
【請求項2】
前記キャパシタの前記第1端は、前記複数段のインバータのうちの第1インバータの入力端に接続され、
前記キャパシタの第2端は、前記複数段のインバータのうちの第2インバータの出力端との間に直列に接続され、
前記バイアス電流生成回路は、前記バイアス電流として、前記第1インバータに第1バイアス電流を供給し、前記第2インバータに第2バイアス電流を供給し、前記充放電制御回路に第3バイアス電流を供給し、
前記キャパシタの前記第1端の電圧レベルが、前記第1インバータの閾値以上の状態である第1相では、前記第2バイアス電流が前記キャパシタの前記第2端から前記第1端に向かう方向に流れ、
前記キャパシタの前記第1端の電圧レベルが、前記閾値未満の状態である第2相では、前記第3バイアス電流が前記キャパシタの前記第1端から前記第2端に向かう方向に流れるように構成されている請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記バイアス電流生成回路は、前記第3バイアス電流が、前記第1バイアス電流および前記第2バイアス電流よりも大きくなるように構成されている請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1インバータは、第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第2インバータは、第3トランジスタ及び第4トランジスタを含み、
前記充放電制御回路は、第5トランジスタ及び第6トランジスタを含み、
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのそれぞれの制御端は、前記キャパシタの前記第1端に接続され、
前記第3トランジスタ及び前記第4トランジスタのそれぞれの制御端は、前記第1トランジスタの第1端及び前記第2トランジスタの第1端に接続され、
前記第5トランジスタの制御端は前記キャパシタの前記第2端に接続され、前記第5トランジスタの第1端は接地端に接続され、前記第5トランジスタの第2端は、前記第6トランジスタの第1端に接続され、
前記第6トランジスタの制御端は、前記複数のインバータ段のいずれかの出力端に接続され、前記第6トランジスタの第2端は前記バイアス電流生成回路に接続されている、請求項2に記載の発振回路。
【請求項5】
バイアス電流生成回路は、前記バイアス電流の大きさを変更可能なように構成されている請求項1に記載の発振回路。
【請求項6】
前記キャパシタは、静電容量を変更可能な可変コンデンサである請求項1から5のいずれかに記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
発振回路の一種として、リングオシレータがある(特許文献1の
図3参照)。このようなリングオシレータは、ループ経路を形成するようにリング状に形成された複数段のインバータを備えている。各段のインバータには、それぞれキャパシタが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、リングオシレータは、各段のインバータに接続されたキャパシタの容量、各段のインバータに流れるバイアス電流、及び各段のインバータの閾値で、発振周波数が決まる。換言すると、各段のインバータに流れるバイアス電流を変化させると、発振周波数もそれに連動して変化してしまう。このため、所定の発振周波数を得つつ、消費電力を低下させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中に開示されている発振回路は、複数段のインバータと、キャパシタと、充放電制御回路と、バイアス電流生成回路と、を備えている。複数段のインバータは、ループ経路を形成するようにリング状に接続されている。キャパシタは、ループ経路上に直列に接続されている。充放電制御回路は、複数段のインバータのいずれかの出力に応じてキャパシタの第1端の電圧レベルをパルス駆動することによりキャパシタの充放電を行うように構成されている。バイアス電流生成回路は、複数段のインバータ及び充放電制御回路のそれぞれにバイアス電流を供給するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本明細書中に開示されている発振回路によれば、消費電力を低下させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、比較例の発振回路の実施形態の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の発振回路の実施形態の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1相および第2相におけるインバータの出力端の電圧レベル、インバータの出力端の電圧レベル、インバータの出力端の電圧レベル、およびキャパシタの第1端(=インバータの入力端との接続端)の電圧レベルを示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、発振回路Xの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<比較例の発振回路Y>
初めに、比較例の発振回路Yについて、本開示の発振回路Xとの比較例として説明する。
図1は、比較例の発振回路Yの実施形態の概略構成を示す図である。
【0009】
図1に示すように、発振回路Yは、複数段のインバータ(ここではインバータIV1~IV3)と、キャパシタC1~C3と、バイアス電流生成回路2aと、を有する。発振回路Yは、クロック信号CKを生成し、インバータIV4に入力する。
【0010】
インバータIV1~IV3は、ループ経路を形成するようにリング状に接続されている。具体的には、インバータIV1の出力端は、キャパシタC2の一端と共に、インバータIV2の入力端に接続されている。インバータIV2の出力端は、キャパシタC3の一端と共に、インバータIV3の入力端に接続されている。インバータIV3の出力端は、キャパシタC1の一端およびインバータIV4の入力端と共に、インバータIV1の入力端に接続されている。キャパシタC1~C3のそれぞれの他端は、接地端に接続されている。
【0011】
バイアス電流生成回路2aは、電流出力回路Idと、カレントミラーCM1と、を含む。電流出力回路Idは、基準電流I0を出力する。カレントミラーCM1は、基準電流I0をミラーリングして、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3をそれぞれインバータIV1~IV3へ供給する。具体的には、第1バイアス電流I1をインバータIV1に、第2バイアス電流I2をインバータIV2に、第3バイアス電流I3をインバータIV3に供給する。
【0012】
インバータIV1~IV3は、カレントミラーCM1と接地端(不図示)との間に直列に接続されたPチャネル型MOSFET[Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor]とNチャネル型MOSFETを含むCMOS[Complementary MOS]インバータであってもよい(図示省略)。
【0013】
インバータIV1~IV3は、入力端の電圧レベルが閾値以上の状態で、出力端の電圧レベルがローレベル(=グランドレベル)となるように構成されている。また、インバータIV1~IV3は、入力端の電圧レベルが閾値未満の状態で、出力端の電圧がハイレベルとなるように構成されている。以下、インバータIV1の閾値を「閾値t1」とも称する。
【0014】
インバータIV4は、入力されたクロック信号CKに応じた出力信号S(=クロック信号CKの論理レベルが反転された矩形波信号)を生成する。出力信号Sの周波数を、単に「発振周波数」と称する。なお、出力信号Sが発振回路Yの最終出力であると理解した場合、インバータIV4は発振回路Yの構成要素として理解され得る。
【0015】
キャパシタC1~C3は、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3によって充電される。本図に即して述べると、キャパシタC1は、第3バイアス電流I3によって充電される。キャパシタC2は、第1バイアス電流I1によって充電される。キャパシタC3は、第2バイアス電流I2によって充電される。従って、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3の大きさに応じて、キャパシタC1~C3の充電速度は変化する。キャパシタC1~C3の充電速度に応じて、インバータIV1~IV3の出力遅延の遅延量も変化する。この遅延量が変化すると、クロック信号CKの周波数が変化する。
【0016】
例えば、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3が大きくなると、キャパシタC1~C3の充電速度が速くなり、インバータIV1~IV3の遅延量が小さくなる。すると、クロック信号CKの周波数は高くなり、発振周波数も高くなる。
【0017】
換言すると、発振回路Yは、キャパシタC1~C3の容量、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3の大きさ、及びインバータIV1~3のそれぞれの閾値によって、発振周波数が決まる。
【0018】
このように、発振回路Yは、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3と発振周波数とが互いに連動しているため、所望の発振周波数の出力信号Sを得つつ、消費電力を低下させることが困難であった。
【0019】
<本開示の発振回路X>
次に、本開示の発振回路Xについて説明する。なお、以下では、発振回路Xの構成について比較例に係る発振回路Yとの相違点を述べ、発振回路Yと同様の構成は同じ符号を付して説明を省略している。
【0020】
図2は、本開示の発振回路Xの実施形態の概略構成を示す図である。
図3は、上から順に、第1相および第2相におけるインバータIV4の出力端の電圧レベル、インバータIV2の出力端の電圧レベル、インバータIV1の出力端の電圧レベル、およびキャパシタC1の第1端(=インバータIV1の入力端との接続端)の電圧レベルを示すタイミングチャートである。
【0021】
図2に示すように、発振回路Xは、複数段のインバータ(ここではインバータIV1、IV2)と、キャパシタC1と、充放電制御回路3と、バイアス電流生成回路2bと、インバータIV4と、を有する。発振回路Xは、クロック信号CKを生成し、クロック信号CKをインバータIV4に入力する。
【0022】
インバータIV1、IV2およびキャパシタC1は、ループ経路を形成するようにリング状に接続されている。具体的には、インバータIV1の出力端は、インバータIV2の入力端に接続されている。キャパシタC1の第1端は、インバータIV1の入力端に接続されている。キャパシタC1の第2端は、インバータIV2の出力端に接続されている。
【0023】
充放電制御回路3の第1端は、バイアス電流生成回路2bの出力端(=第3バイアス電流I3の出力端)に接続されている。充放電制御回路3の第2端は、インバータIV2の出力端と共に、キャパシタC1の第2端に接続されている。充放電制御回路3の第3端は、キャパシタC1の第1端と共にインバータIV1の入力端に接続されている。充放電制御回路3の第4端は、インバータIV4の出力端(=出力信号Sの印加端)に接続されている。
【0024】
バイアス電流生成回路2bは、電流出力回路Idと、カレントミラーCM2と、を含む。カレントミラーCM2は、基準電流I0をミラーリングして、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3をそれぞれインバータIV1、IV2、及び充放電制御回路3へ供給する。具体的には、第1バイアス電流I1をインバータIV1に、第2バイアス電流I2をインバータIV2に、第3バイアス電流I3を充放電制御回路3に供給する。
【0025】
インバータIV4の入力端は、インバータIV1の出力端と共に、インバータIV2の入力端に接続されている。
【0026】
インバータIV4は、入力端の電圧レベル(=クロック信号CKの電圧レベル)が閾値以上になると、出力端の電圧レベル(=出力信号Sの電圧レベル)がグランドレベルとなるように構成されている。また、インバータIV4は、入力端の電圧レベルが閾値未満になると、出力端の電圧が電源電圧レベル(=Vreg)となるように構成されている。
【0027】
充放電制御回路3はインバータIV4の出力(=インバータIV4の出力端の電圧レベル、すなわち出力信号Sの電圧レベル)に応じて、キャパシタC1の第1端の電圧レベルを、第1レベルと、第2レベルとに交互に変化させるようにパルス駆動することで、キャパシタC1の充放電を行うように構成されている。
【0028】
具体的には、次の通りである。
図3に示すように、インバータIV4の出力端の電圧レベルが電源電圧レベル(=Vreg)の状態で、充放電制御回路3は、キャパシタC1の第1端の電圧レベルを、第1レベルにする。第1レベルとは、インバータIV1の閾値t1以上の値の電圧レベルである。
【0029】
また、インバータIV4の出力端の電圧レベルがグランドレベルの状態で、充放電制御回路3は、キャパシタC1の第1端の電圧レベルを、第2レベルにする。第2レベルとは、インバータIV1の閾値t1未満の値の電圧レベルである。以下、キャパシタC1の第1端の電圧レベルが第1レベルの状態を第1相、同電圧レベルが第2レベルの状態を第2相とする。
【0030】
第1相のとき、キャパシタC1には第2バイアス電流I2が供給される。このとき、第2バイアス電流I2は、インバータIV2を通り、キャパシタC1の第2端側から第1端側に向かって流れる(
図2参照)。このとき、キャパシタC1の電荷量は徐々に減少する。換言すると、このとき、キャパシタC1は放電している。
【0031】
一方、第2相のとき、キャパシタC1には第3バイアス電流I3が供給される。このとき、第3バイアス電流I3は、充放電制御回路3を通って、キャパシタC1の第1端側から第2端側に向かって流れる(
図2参照)。このとき、キャパシタC1の電荷量は徐々に増加する。換言すると、このとき、キャパシタC1は充電される。
【0032】
ここで、キャパシタC1の第1端の電圧レベルは、キャパシタC1の第2端の電圧レベル(=インバータIV2の出力端の電圧レベル)に、キャパシタC1のもつ電圧(=キャパシタC1の静電容量と電荷量との乗算値)を足し合わせた値になる。このため、第1相のとき、キャパシタC1の第1端の電圧レベルは、キャパシタC1の電荷量の減少に伴って、徐々に低下するものとなる(
図3参照)。また、第2相のとき、キャパシタC1の第1端の電圧レベルは、キャパシタC1の電荷量の増加に伴って、徐々に増加するものとなる(
図3参照)。
【0033】
第1相から第2相への切り替わりは、次の通りである。第1相において、キャパシタC1の第1端の電圧レベルが徐々に低下し、インバータIV1の閾値t1を下回ると、インバータIV1の出力端(=インバータIV2の入力端およびインバータIV4の入力端)の電圧レベルが、ローレベル(=グランドレベル、即ちインバータIV2の閾値未満の電圧レベル)から電源電圧レベル(=インバータIV2の閾値以上のレベル)に立ち上がる。
【0034】
すると、インバータIV2の出力端の電圧レベルがローレベル(=グランドレベル)に立ち下がり、かつ発振回路Xの出力信号S(=インバータIV4の出力端の電圧レベル)がローレベル(=グランドレベル)に立ち下る。これにより、キャパシタC1の第1端の電圧レベルが、上述した第2レベルになる。このように、第1相から第2相に切り替わる。
【0035】
第2相から第1相への切り替わりは、次の通りである。第2相において、キャパシタC1の第1端の電圧レベルが徐々に増加し、インバータIV1の閾値t1に到達すると、インバータIV1の出力端(=インバータIV2の入力端)の電圧レベルが、ハイレベル(=電源電圧レベル)からローレベル(=グランドレベル、即ちインバータIV2の閾値未満の電圧レベル)に立ち下がる。
【0036】
すると、インバータIV2の出力端の電圧レベルがハイレベルに立ち上がり、かつ発振出力(インバータIV4の出力端の電圧レベル)がハイレベル(=電源電圧レベル)に立ち上がる。これにより、キャパシタC1の第1端の電圧レベルが、上述した第1レベルになる。このように、第2相から第1相に切り替わる。
【0037】
上述した通り、キャパシタC1は、第3バイアス電流I3によって充電される。キャパシタC1の充電速度は、第3バイアス電流I3の大きさに応じて変化する。充電速度とは、第2相の始期(=充電開始時点)から、第1相の終期(=充電終了時点)に達するまでの速さである。換言すると、キャパシタC1の電荷量が、所定量(キャパシタC1の第1端の電圧レベルが閾値t1に達する量)に達するまでの速さである。
【0038】
インバータIV1の出力遅延の遅延量は、キャパシタC1の充電速度に応じて変化する。従って、クロック信号CKの周波数は、この遅延量、ひいては第3バイアス電流I3の大きさ応じて変化する。
【0039】
例えば、第3バイアス電流I3が大きくなると、キャパシタC1の充電速度が速くなり、インバータIV1の遅延量が小さくなる。すると、クロック信号CKの周波数は高くなる。反対に、第3バイアス電流I3が小さくなると、クロック信号CKの周波数は低くなる。
【0040】
ここで、第1バイアス電流I1および第2バイアス電流I2の大きさは、クロック信号CKの周波数の値に直接寄与していない。このため、クロック信号CKの周波数を所定の値に設定した状態で、第1バイアス電流I1および第2バイアス電流I2を、インバータIV1、IV2を駆動可能な範囲内で小さくすることができる。このため、発振回路Xは、所望の発振周波数の出力信号Sを得つつ、比較的低電力なものにすることができる。
【0041】
また、インバータIV1、IV2の閾値は、クロック信号CKの周波数、すなわち発振周波数に直接関与していない。このため、発振回路Xは、インバータIV1、IV2の製品ばらつきの影響を受けにくくなり、比較的精度よく所望の発振周波数の出力信号Sを得ることができる。
【0042】
本開示の発振回路Xの構成について、さらに詳細に説明する。
図4は、発振回路Xの構成を示すブロック図である。
【0043】
図4に示すように、カレントミラーCM2は、トランジスタTCa~TCdを含んで構成されている。トランジスタTCa~TCdは、Pチャネル型MOSFETである。
【0044】
トランジスタTCa~TCdのソースは、それぞれ電源電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタTCa~TCdのゲートは、それぞれトランジスタTCaのドレインに接続されている。トランジスタTCaのドレインは、電流出力回路Idに接続されている。
【0045】
トランジスタTCbのドレインは、インバータIV1(後述するトランジスタT1aのソース)に接続されている。トランジスタTCcのドレインは、インバータIV2(後述するトランジスタT2aのソース)に接続されている。トランジスタTCdのドレインは、充放電制御回路3の第1端(後述するトランジスタT3aのソース)に接続されている。
【0046】
インバータIV1は、トランジスタT1aと、トランジスタT1bと、を含んで構成されている。トランジスタT1aは、Pチャネル型MOSFETである。トランジスタT1bは、Nチャネル型MOSFETである。
【0047】
トランジスタT1aのゲートおよびトランジスタT1bのゲートは、インバータIV1の入力端を構成している。すなわち、トランジスタT1aのゲートは、トランジスタT1bのゲートと共に、キャパシタC1の第1端に接続されている。
【0048】
トランジスタT1aのドレインおよびトランジスタT1bのドレインは、インバータIV1の出力端を構成している。すなわち、トランジスタT1aのドレインは、トランジスタT1bのドレインと共に、インバータIV2の入力端(後述するトランジスタT2aのゲートおよびトランジスタT2bのゲート)に接続されている。トランジスタT1bのソースは、接地端に接続されている。
【0049】
インバータIV1は、入力端の電圧レベル(=トランジスタT1aのゲートおよびトランジスタT1bのゲートの電圧レベル)が閾値t1以上になると、トランジスタT1aがオフし、かつトランジスタT1bがオンするように構成されている。
【0050】
インバータIV2は、トランジスタT2aと、トランジスタT2bとを含んで構成されている。トランジスタT2aは、Pチャネル型MOSFETである。トランジスタT2bは、Nチャネル型MOSFETである。
【0051】
トランジスタT2aのゲートおよびトランジスタT2bのゲートは、インバータIV2の入力端を構成している。
【0052】
トランジスタT2aのドレインおよびトランジスタT2bのドレインは、インバータIV2の出力端を構成している。すなわち、トランジスタT2aのドレインは、トランジスタT2bのドレインと共に、キャパシタC1の第2端と、充放電制御回路3の第2端(後述するトランジスタT3bのゲート)と、に接続されている。トランジスタT2bのソースは、接地端に接続されている。
【0053】
インバータIV2は、入力端の電圧レベル(=トランジスタT2aのゲートおよびトランジスタT2bのゲートの電圧レベル)が閾値以上になると、トランジスタT2aがオフし、かつトランジスタT2bがオンするように構成されている。
【0054】
充放電制御回路3は、トランジスタT3aと、トランジスタT3bとを含んで構成されている。トランジスタT3aのゲートは、インバータIV4の出力端に接続されている。トランジスタT3aのドレインは、トランジスタT3bのドレインと共に、キャパシタC1の第1端に接続されている。トランジスタT3bのソースは、接地端に接続されている。
【0055】
充放電制御回路3は、トランジスタT3aのゲートの電圧レベルが所定の閾値以上になると、トランジスタT3aがオフする。また、充放電制御回路3は、トランジスタT3bのゲートの電圧レベルが所定の閾値以上になると、トランジスタT3bがオンするように構成されている。また、充放電制御回路3は、トランジスタT3aのゲートの電圧レベルが閾値未満になると、トランジスタT3aがオンする。また、充放電制御回路3は、トランジスタT3bのゲートの電圧レベルが所定の閾値未満になると、トランジスタT3bがオフするように構成されている。
【0056】
上述した通り、第1相のとき、インバータIV4の発振出力(=インバータIV4の出力端の電圧レベル、すなわちトランジスタT3aのゲートの電圧レベル)は、電源電圧レベル(=Vreg,すなわち充放電制御回路3の閾値以上の電圧レベル)である。このため、トランジスタT3aはオフする。また、第1相のとき、インバータIV2の出力端の電圧レベル、すなわちトランジスタT3bのゲートの電圧レベルは、トランジスタT3bの閾値以上になる。このため、トランジスタT3bはオンしている。
【0057】
また、このとき、キャパシタC1の第1端の電圧レベル(=トランジスタT1aのゲートおよびトランジスタT1bのゲートの電圧レベル)が、インバータIV1の閾値t1以上である。このため、トランジスタT1aがオフし、かつトランジスタT1bがオンしている。
【0058】
また、このとき、インバータIV1の出力端の電圧レベル(=トランジスタT2aのゲートおよびトランジスタT2bのゲートの電圧レベル)が、ローレベル(=グランドレベル)になっている。これにより、トランジスタT2aはオンし、トランジスタT2bはオフしている。
【0059】
従って、第1相のとき、第2バイアス電流I2が、トランジスタT2aのソースからドレインに向かって流れ、キャパシタC1の第2端側から第1端側に向かって流れ、トランジスタT3bのドレインからソースに向かって流れ、接地端に流れ込む。
【0060】
一方、第2相のときに、上述した通り、インバータIV4の発振出力(=トランジスタT3aのゲートの電圧レベル)は、グランドレベル(=充放電制御回路3の閾値未満の電圧レベル)である。このため、トランジスタT3aがオンする。また、第2相のとき、インバータIV2の出力端の電圧レベル、すなわちトランジスタT3bのゲートの電圧レベルは、トランジスタT3bの閾値未満になる。このため、トランジスタT3bがオフしている。
【0061】
また、このとき、キャパシタC1の第1端の電圧レベル(=トランジスタT1aのゲートおよびトランジスタT1bのゲートの電圧レベル)は、上述した通り、インバータIV1の閾値t1未満である。このため、トランジスタT1aがオンし、かつトランジスタT1bがオフしている。
【0062】
また、このとき、インバータIV1の出力端の電圧レベル(=トランジスタT2aのゲートおよびトランジスタT2bのゲートの電圧レベル)が、ハイレベル(=電源電圧レベル)になっている。これにより、トランジスタT2aはオフし、トランジスタT2bはオンしている。
【0063】
従って、第2相のとき、第3バイアス電流I3が、トランジスタT3aのソースからドレインに向かって流れ、キャパシタC1の第1端側から第2端側に向かって流れ、トランジスタT2bのドレインからソースに向かって流れ、接地端に流れ込む。
【0064】
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0065】
例えば、上記実施形態に係る発振回路Xの複数段のインバータは、2つのインバータ(インバータIV1、IV2)から構成されるものを例示しているが、3つ以上(好ましくは、偶数個)のインバータから構成されているものとすることができる。
【0066】
また、上記実施形態に係る発振回路Xの電流出力回路Idは、基準電流I0を変更可能なように構成することができる。基準電流I0を変更することで、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3の大きさを変更し、キャパシタC1の充電速度を調整可能となっている。これにより、発振回路Xは、発振周波数を適宜調整可能なものとなる。
【0067】
図3を用いてより詳細に説明すると、第3バイアス電流I3を大きくすると、キャパシタC1の第1端の電圧レベルを示すグラフの傾きが大きくなる。このため、第1相では、同電圧レベルが閾値t1を下回るまでの時間が短くなり、第2相では、同電圧レベルが閾値t1に達するまでの時間が短くなる。
【0068】
反対に、第3バイアス電流I3を小さくすると、キャパシタC1の第1端の電圧レベルを示すグラフの傾きが小さくなる。このため、第1相では、同電圧レベルが閾値t1を下回るまでの時間が長くなり、第2相では、同電圧レベルが閾値t1に達するまでの時間が長くなる。
【0069】
上述した通り、キャパシタC1の充電速度に応じてインバータIV1の出力遅延の遅延量も変化し、クロック信号CKの周波数も変化する。従って、電流出力回路Idによって基準電流I0を変更してキャパシタC1の充電速度を調整することで、発振回路Xの発振周波数を適宜調整可能となる。
【0070】
また、上記実施形態に係る発振回路Xは、キャパシタC1として、静電容量を変更可能な、可変コンデンサ(いわゆるトリミングコンデンサ)を採用することができる。静電容量を変更すると、キャパシタC1の充電速度も変化する。この静電容量とキャパシタC1の充電速度の関係により、キャパシタC1を可変コンデンサとすることで、発振回路Xは、発振周波数を適宜調整可能なものとなる。
【0071】
図3を用いて具体的に説明すると、キャパシタC1の静電容量を増加させると、キャパシタC1の第1端の電圧レベルの振幅(=最大電圧と最小電圧との幅)が大きくなる。すると、第1相においては、同電圧レベルが閾値を下回るまでの時間が長くなり、第2相においては、同電圧レベルが閾値に達するまでの時間が長くなる。
【0072】
このように、キャパシタC1を可変コンデンサとすることで、静電容量を変更して発振回路Xの発振周波数を調整可能となる。
【0073】
上記実施形態に係る発振回路Xは、上述したように電流出力回路Idを基準電流I0を変更可能なように構成し、かつキャパシタC1として可変コンデンサを採用した構成が好ましい。
【0074】
この場合、基準電流I0を小さくし過ぎると、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3によってインバータIV1、IV2および充放電制御回路3を駆動できなくなるおそれがある。
【0075】
そこで、この構成を採用する場合、基準電流I0を、第1バイアス電流I1~第3バイアス電流I3によってインバータIV1、IV2および充放電制御回路3を駆動可能となる範囲内で変更して発振周波数を大まかに変更し、キャパシタC1(=可変コンデンサ)の静電容量を変更することで発振周波数をさらに微調整することが可能になる。
【0076】
明細書中に開示されている発振回路(X)は、ループ経路を形成するようにリング状に接続された複数段のインバータ(IV1、IV2)と、ループ経路上に直列に接続されたキャパシタ(C1)と、複数段のインバータ(IV1、IV2)のいずれかの出力に応じてキャパシタ(C1)の第1端の電圧レベルをパルス駆動することによりキャパシタ(C1)の充放電を行うように構成された充放電制御回路(3)と、複数段のインバータ(IV1、IV2)及び充放電制御回路(3)のそれぞれにバイアス電流(I1~I3)を供給するように構成されたバイアス電流生成回路(2b)と、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0077】
なお、第1の構成からなる発振回路(X)は、キャパシタ(C1)の第1端は、複数段のインバータ(IV1、IV2)のうちの第1インバータ(IV1)の入力端に接続され、キャパシタ(C1)の第2端は、複数段のインバータ(IV1、IV2)のうちの第2インバータ(IV2)の出力端との間に直列に接続され、バイアス電流生成回路(2b)は、バイアス電流(I1~I3)として、第1インバータ(IV1)に第1バイアス電流(I1)を供給し、第2インバータ(IV2)に第2バイアス電流(I2)を供給し、充放電制御回路(3)に第3バイアス電流(I2)を供給し、キャパシタ(C1)の第1端の電圧レベルが、第1インバータ(IV1)の閾値(t1)以上の状態である第1相では、第2バイアス電流(I2)がキャパシタ(C1)の第2端から第1端に向かう方向に流れ、キャパシタ(C1)の第1端の電圧レベルが、閾値(t1)未満の状態である第2相では、第3バイアス電流(I2)がキャパシタ(C1)の第1端から第2端に向かう方向に流れる構成(第2の構成)とするとよい。
【0078】
また、第2の構成からなる発振回路(X)は、バイアス電流生成回路(2b)は、第3バイアス電流(I3)が、第1バイアス電流(I1)および第2バイアス電流(I2)よりも大きくなる構成(第3の構成)とするとよい。
【0079】
また、第2の構成または第3の構成からなる発振回路(X)は、第1インバータ(IV1)は、第1トランジスタ(T1a)及び第2トランジスタ(T1b)を含み、第2インバータ(IV2)は、第3トランジスタ(T2a)及び第4トランジスタ(T2b)を含み、充放電制御回路(3)は、第5トランジスタ(T3a)及び第6トランジスタ(T3b)を含み、第1トランジスタ(T1a)及び第2トランジスタ(T1b)のそれぞれの制御端は、キャパシタ(C1)の第1端に接続され、第3トランジスタ(T2a)及び第4トランジスタ(T2b)のそれぞれの制御端は、第1トランジスタ(T1a)の第1端及び第2トランジスタ(T1b)の第1端に接続され、第5トランジスタ(T3a)の制御端はキャパシタ(C1)の第2端に接続され、第5トランジスタ(T3a)の第1端は接地端に接続され、第5トランジスタ(T3a)の第2端は、第6トランジスタ(T3b)の第1端に接続され、第6トランジスタ(T3b)の制御端は、複数のインバータ段のいずれかの出力端に接続され、第6トランジスタ(T3b)の第2端はバイアス電流生成回路(2b)に接続されている構成(第4の構成)とするとよい。
【0080】
また、第1の構成から第4の構成のいずれかの構成からなる発振回路(X)は、バイアス電流生成回路(2b)は、バイアス電流(I1~I3)の大きさを変更可能な構成(第5の構成)とするとよい。
【0081】
また、第1の構成から第5の構成のいずれかの構成からなる発振回路(X)は、キャパシタ(C1)は、静電容量を変更可能な可変コンデンサである構成(第6の構成)とするとよい。
【0082】
第1の構成に係る発振回路(X)によれば、充放電制御回路(3)によってキャパシタ(C1)を充放電することで、各インバータ(IV1、IV2)に供給されるバイアス電流(I1、I2)を小さくしつつ、所望の発振周波数を得ることが可能になる。これにより、消費電力を低下させることが可能になる。
【0083】
第2の構成に係る発振回路(X)によれば、所望の発振周波数を得つつ、第1バイアス電流(I1)および第2バイアス電流(I2)を小さくすることが可能になる。従って、より好適に消費電力を低減可能となっている。
【0084】
第3の構成に係る発振回路(X)によれば、所望の発振周波数を得つつ、第1バイアス電流(I1)および第2バイアス電流(I2)を小さくすることが可能になる。
【0085】
第4の構成に係る発振回路(X)によれば、所望の発振周波数を得つつ、第1バイアス電流(I1)および第2バイアス電流(I2)を小さくすることが可能な発振回路を提供することが可能になる。
【0086】
第5の構成に係る発振回路(X)によれば、所望の発振周波数を得つつ、消費電力を低減可能な発振回路において、発振回路の発振周波数を変更可能になる。
【0087】
第6の構成に係る発振回路(X)によれば、所望の発振周波数を得つつ、消費電力を低減可能な発振回路において、発振回路の発振周波数を変更可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示に係る発振回路は、スイッチング電源等に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
2a、2b バイアス電流生成回路
3 充放電制御回路
C1~C3 キャパシタ
CK クロック信号
CM1、CM2 カレントミラー
I0 基準電流
I1~I3 第1バイアス電流
IV1~IV4 インバータ
Id 電流出力回路
T1a トランジスタ
T1b トランジスタ
T2a トランジスタ
T2b トランジスタ
T3a トランジスタ
T3b トランジスタ
TCa トランジスタ
TCb トランジスタ
TCc トランジスタ
TCd トランジスタ
Vreg 電源電圧
X、Y 発振回路
t1 閾値