(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127490
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240912BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036677
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】野村 篤司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 謙一
(57)【要約】
【課題】送電側の装置から受電側の装置への電力伝送に影響される異物を精度良く検出することが可能な非接触給電装置を提供する。
【解決手段】非接触給電装置の受電装置3は、受信コイル21を含み、非接触給電装置の送電装置2の送信コイル14から電力を受電する共振回路20と、共振回路20から出力される電力を整流する整流回路23と、受信コイル21と電磁結合可能に配置される共振抑制コイル27と、共振抑制コイル27の短絡または開放を切り替え可能なスイッチ回路28と、共振抑制コイル27の短絡と開放とが繰り返されるようにスイッチ回路28を制御するスイッチ制御回路29とを有する。送電装置2の制御回路19は、受電装置3の共振抑制コイル27が短絡されている期間における電流検出回路18により検出されたインバータ13の第1のスイッチング素子13-2に流れる電流の平均値に基づいて異物の有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置と、前記送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置であって、
前記送電装置は、
前記受電装置へ電力を供給する送信コイルと、
フルブリッジ状あるいはハーフブリッジ状に接続された複数のスイッチング素子を有するインバータを含み、交流電力を前記送信コイルへ供給する電力供給回路と、
前記複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
検出された前記電流に基づいて前記送電装置から前記受電装置への電力伝送に影響される異物の有無を判定する制御回路と、を有し、
前記受電装置は、
受信コイルと、前記受信コイルと接続される共振コンデンサとを有し、前記送電装置の前記送信コイルを流れる電流に対して共振することで前記送信コイルから電力を受電する共振回路と、
前記共振回路を介して受電した電力を整流する整流回路と、
前記受信コイルと電磁結合可能に配置される共振抑制コイルと、
前記共振抑制コイルと接続され、前記共振抑制コイルの短絡または開放を切り替え可能なスイッチ回路と、
前記整流回路から出力される電力に応じて、前記共振抑制コイルの短絡と開放とが繰り返されるように前記スイッチ回路を制御するスイッチ制御回路と、を有し、
前記送電装置の前記制御回路は、前記受電装置の前記共振抑制コイルが短絡されている期間における前記第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値に基づいて前記異物の有無を判定する、非接触給電装置。
【請求項2】
前記送電装置の前記制御回路は、前記受電装置の前記共振抑制コイルの短絡と開放の繰返し周期の所定回数に相当する期間にわたって前記電流の平均値が所定の検出閾値よりも大きい場合、前記異物が存在すると判定する、請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記受電装置は、前記整流回路から出力される電力に基づいて前記繰返し周期を有する周期信号を生成する周期信号生成回路をさらに有し、
前記スイッチ制御回路は、前記周期信号に基づいて前記繰返し周期で前記共振抑制コイルの短絡と開放とが繰り返されるように前記スイッチ回路を制御する、請求項2に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検出することが可能な非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の接点などを介さずに、空間を通じて電力を伝送する、いわゆる非接触給電(ワイヤレス給電とも呼ばれる)技術が研究されている。このような非接触給電技術の一つとして、電磁誘導により給電する方式が知られている。電磁誘導により給電する方式では、一次側(送電側あるいは給電側)のコイル(以下、送信コイルと呼ぶ)と二次側(受電側)のコイル(以下、受信コイルと呼ぶ)とが電磁結合することにより、送信コイルから受信コイルへ電力が伝送される。
【0003】
このような非接触給電技術を利用した電力伝送システムにおいて、送信コイルと受信コイルの間に、金属などの異物が入り込んでしまうことがある。このような場合、電力伝送中にその異物が誘導加熱されて発火し、あるいは、異物の発熱に起因して装置が故障することがある。そこで、そのような異物を検出する技術が提案されている(特許文献1及び非特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に開示された非接触給電装置では、インバータから送電コイルに出力される電圧及び電流の位相を監視し、その位相の変化に基づいて、給電中に混入した金属異物を検出する。
【0005】
また、非特許文献1に開示された給電損失比較法は、伝送損失電力を定時でサンプリングし比較することで、給電中の異物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】駒崎他、「電気自動車用非接触給電装置のギャップ中の異物検知法」、電気学会産業応用部門大会講演論文集、No.4-10、p.115-120、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
送信コイルと受信コイルの間に混入した異物による危険性は高いため、そのような異物の検出精度をより向上することが求められる。
【0009】
そこで、本発明は、送電側の装置から受電側の装置への電力伝送に影響される異物を精度良く検出することが可能な非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの形態として、送電装置と、送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置が提供される。この非接触給電装置において、送電装置は、受電装置へ電力を供給する送信コイルと、フルブリッジ状あるいはハーフブリッジ状に接続された複数のスイッチング素子を有するインバータを含み、交流電力を送信コイルへ供給する電力供給回路と、インバータの複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、検出された電流に基づいて送電装置から受電装置への電力伝送に影響される異物の有無を判定する制御回路とを有する。また、受電装置は、受信コイルと、受信コイルと接続される共振コンデンサとを有し、送電装置の送信コイルを流れる電流に対して共振することで送信コイルから電力を受電する共振回路と、共振回路を介して受電した電力を整流する整流回路と、受信コイルと電磁結合可能に配置される共振抑制コイルと、共振抑制コイルと接続され、共振抑制コイルの短絡または開放を切り替え可能なスイッチ回路と、整流回路から出力される電力に応じて、共振抑制コイルの短絡と開放とが繰り返されるようにスイッチ回路を制御するスイッチ制御回路とを有する。そして送電装置の制御回路は、受電装置の共振抑制コイルが短絡されている期間における第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値に基づいて異物の有無を判定する。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、送電側の装置から受電側の装置への電力伝送に影響される異物を精度良く検出することができる。
【0011】
この非接触給電装置において、送電装置の制御回路は、受電装置の共振抑制コイルの短絡と開放の繰返し周期の所定回数に相当する期間にわたって第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値が所定の検出閾値よりも大きい場合、異物が存在すると判定することが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、送電側の装置から受電側の装置への電力伝送に影響される異物を精度良く検出することができる。
【0012】
また、この非接触給電装置において、受電装置は、整流回路から出力される電力に基づいて繰返し周期を有する周期信号を生成する周期信号生成回路をさらに有することが好ましい。そしてスイッチ制御回路は、周期信号に基づいて繰返し周期で共振抑制コイルの短絡と開放とが繰り返されるようにスイッチ回路を制御することが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、一定の繰返し周期で共振抑制コイルを確実に短絡できるので、異物の検出ができない期間が過度に長くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。
【
図2】(a)及び(b)は、それぞれ、共振抑制コイルが短絡されているときにインバータのスイッチング素子に流れる電流の波形、及び、共振抑制コイルが開放されているときにインバータのスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
【
図3】(a)は、異物が存在しないときの、整流平滑回路からの出力電圧と、共振抑制コイルの短絡及び開放と、インバータのスイッチング素子に流れる電流の平均値との関係の一例を示す図である。(b)は、異物が存在するときの、整流平滑回路からの出力電圧と、共振抑制コイルの短絡及び開放と、インバータのスイッチング素子に流れる電流の平均値との関係の一例を示す図である。
【
図6】実施形態または変形例による非接触給電装置が移動体の電力供給システムとして利用される場合のシステム概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一つの実施形態による非接触給電装置を、図を参照しつつ説明する。この非接触給電装置では、受電側の装置(以下、単に受電装置と呼ぶ)が、受信コイルとともに、その受信コイルと電磁結合可能なように設けられた共振抑制用のコイル(以下、単に共振抑制コイルと呼ぶ)を有する。そして受電装置は、共振抑制コイルの短絡と開放とを繰り返して出力電圧を一定の範囲に保つ。一方、送電側の装置(以下、単に送電装置と呼ぶ)は、共振抑制コイルが短絡されている期間において送信コイルに交流電力を供給するインバータの何れかのスイッチング素子に流れる電流の平均値に基づいて、送信コイルと受信コイル間の電力伝送に影響される異物の有無を判定する。
【0015】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。
図1に示されるように、非接触給電装置1は、送電装置2と、送電装置2から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置3とを有する。送電装置2は、電力供給回路10と、送信コイル14と、第1のコンデンサ15と、第2のコンデンサ16と、第1のコイル17と、電流検出回路18と、制御回路19とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20と、整流平滑回路23と、DC-DCコンバータ24と、平滑コンデンサ25と、周期信号生成回路26と、共振抑制コイル27と、スイッチ回路28と、スイッチ制御回路29とを有する。そして受電装置3は負荷回路4と接続され、受電装置3が受電して、直流に変換された電力は、負荷回路4へ出力される。
【0016】
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路10は、所定の駆動周波数、及び、調節可能な電圧を持つ交流電力を送信コイル14へ供給する。そのために、電力供給回路10は、全波整流回路11と、力率改善回路12と、インバータ13とを有する。
【0017】
全波整流回路11は、所定の脈流電圧を持つ電力を供給する。そのために、全波整流回路11は、ブリッジ型に接続された4個のダイオードを有し、商用の交流電源と接続される。そして全波整流回路11は、その交流電源から供給された交流電力を整流して脈流電圧を持つ電力に変換し、その電力を力率改善回路12へ出力する。
【0018】
力率改善回路12は、全波整流回路11から出力された電力を、制御回路19からの制御に応じた電圧を持つ直流電力に変換して出力する。したがって、交流電源、全波整流回路11及び力率改善回路12により、直流電源が構成される。
【0019】
力率改善回路12の構成は、制御回路19からの制御によって出力電圧を調整可能な様々な力率改善回路の何れかと同様の構成とすることができる。本実施形態では、力率改善回路12は、全波整流回路11の正極側出力端子に対して一端において直列に接続されるコイルと、そのコイルの他端とインバータ13との間において、コイルからインバータ13へ向かう方向が順方向となるように接続されるダイオードを有する。力率改善回路12は、さらに、コイルとダイオードの間に一端が接続され、他端が全波整流回路11の負極側出力端子に接続されるスイッチング素子と、そのスイッチング素子とダイオードを挟んで並列に接続される平滑コンデンサを有する。そして制御回路19がスイッチング素子のオン/オフのデューティ比を制御することで、力率改善回路12から出力される電圧が制御される。
【0020】
インバータ13は、力率改善回路12から出力された直流電力を、スイッチング素子13-1~13-4のオン/オフの切替周期に相当する駆動周波数を持つ交流電力に変換する。そしてインバータ13は、その交流電力を、第1のコンデンサ15、第2のコンデンサ16及び第1のコイル17を介して送信コイル14へ出力する。
【0021】
そのために、インバータ13は、4個のスイッチング素子13-1~13-4を有する。そして4個のスイッチング素子13-1~13-4のそれぞれは、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。インバータ13は、いわゆるフルブリッジ回路として構成される。すなわち、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2は、全波整流回路11の正極側出力端子と負極側出力端子との間に、力率改善回路12を介して直列に接続される。また本実施形態では、全波整流回路11の正極側に、スイッチング素子13-1が接続され、一方、全波整流回路11の負極側に、スイッチング素子13-2が接続される。そしてスイッチング素子13-1のドレイン端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と接続され、スイッチング素子13-1のソース端子は、スイッチング素子13-2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-2のソース端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-1のソース端子、及び、スイッチング素子13-2のドレイン端子は、第1のコイル17及び第1のコンデンサ15を介して送信コイル14の一端に接続される。
【0022】
同様に、4個のスイッチング素子13-1~13-4のうち、スイッチング素子13-3とスイッチング素子13-4は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2と並列に、かつ、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と負極側出力端子との間に直列に接続される。また、全波整流回路11の正極側に、スイッチング素子13-3が接続され、一方、全波整流回路11の負極側に、スイッチング素子13-4が接続される。そしてスイッチング素子13-3のドレイン端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と接続され、スイッチング素子13-3のソース端子は、スイッチング素子13-4のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-4のソース端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-3のソース端子、及び、スイッチング素子13-4のドレイン端子は、送信コイル14の他端に接続される。
【0023】
また、スイッチング素子13-1~13-4のそれぞれのゲート端子は、制御回路19と接続される。さらに、各スイッチング素子のゲート端子は、オンとなる電圧が印加されたときにそのスイッチング素子がオンとなることを保証するために、それぞれ、抵抗を介して自素子のソース端子と接続されてもよい。そして各スイッチング素子は、制御回路19からの制御信号にしたがって交互にオン/オフが切り替えられる。本実施形態では、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオンとなっている間、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオフとなり、逆に、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオンとなっている間、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオフとなるように、交互にオン/オフが切り替えられる。これにより、力率改善回路12から供給された直流電力は、各スイッチング素子のオン/オフの切替周期に相当する駆動周波数を持つ交流電力に変換されて、送信コイル14に供給される。
【0024】
なお、インバータ13は、上記の実施形態に限られない。例えば、インバータ13は、2個のスイッチング素子がハーフブリッジ状に接続されたハーフブリッジ回路として構成されてもよい。
【0025】
第1のコイル17は、第1のコンデンサ15とともにインバータ13と送信コイル14の間に直列に接続される。すなわち、第1のコイル17の一端は、インバータ13の二つの出力端子のうちの一方、すなわち、スイッチング素子13-1のソース端子とスイッチング素子13-2のドレイン端子の間に接続に接続され、第1のコイル17の他端は第1のコンデンサ15の一端と接続される。また、第1のコンデンサ15の他端は送信コイル14の一端に接続される。なお、第1のコイル17は、送信コイル14及び受電装置3が有する各コイルと電磁結合しないように配置されることが好ましい。
【0026】
さらに、第2のコンデンサ16は、その一端が第1のコイル17の他端と第1のコンデンサ15の一端との間に接続され、他端が送信コイル14の他端、及び、インバータ13の他方の出力端子、すなわち、スイッチング素子13-3のソース端子及びスイッチング素子13-4のドレイン端子に接続される。
【0027】
第1のコンデンサ15、第2のコンデンサ16及び第1のコイル17が上記のように設けられることで、送信コイル14に供給される電圧の位相に対する、送信コイル14に流れる電流の位相の遅れが、インバータ13の各スイッチング素子におけるスイッチングロスを軽減するように調整される。さらに、送信コイル14と受信コイル21間の結合度によらず、非接触給電装置1が定電圧出力動作することが可能となる。
【0028】
なお、第1のコイル17の接続位置は上記の例に限られない。第1のコイル17は、送信コイル14とインバータ13との間において、第1のコンデンサ15が接続される側とは逆側に接続されてもよい。すなわち、第1のコイル17は、送信コイル14の第1のコンデンサ15が接続される一端とは反対側の一端と、インバータ13のスイッチング素子13-3とスイッチング素子13-4との間に接続されてもよい。
【0029】
送信コイル14は、電力供給回路10のインバータ13から、第1のコイル17及び第1のコンデンサ15を介して供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の共振回路20へ伝送する。
【0030】
電流検出回路18は、インバータ13が有する複数のスイッチング素子の何れかに流れる電流を検出する。なお、電流検出回路18が電流を検出するスイッチング素子を、説明の便宜上、第1のスイッチング素子と呼ぶことがある。本実施形態では、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-2と全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続される。そして電流検出回路18は、スイッチング素子13-2がオンとなったときに、スイッチング素子13-2を介して送信コイル14に流れる電流を検出し、検出した電流値を制御回路19へ出力する。すなわち、本実施形態では、スイッチング素子13-2が第1のスイッチング素子となる。電流検出回路18の詳細については後述する。
【0031】
なお、電流検出回路18の接続位置は上記の例に限られない。電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-4と全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-4に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-4が第1のスイッチング素子となる。あるいは、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-1と全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-1に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-1が第1のスイッチング素子となる。同様に、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-3と全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-3に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-3が第1のスイッチング素子となる。また、インバータ13が二つのスイッチング素子で構成されるハーフブリッジ回路である場合、電流検出回路18は、全波整流回路11の負極側に設けられるスイッチング素子と、全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続されればよい。この場合、負極側に設けられるスイッチング素子が第1のスイッチング素子となる。あるいは、電流検出回路18は、全波整流回路11の正極側に設けられるスイッチング素子と、全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続されればよい。この場合、正極側に設けられるスイッチング素子が第1のスイッチング素子となる。
【0032】
制御回路19は、例えば、不揮発性のメモリ回路及び揮発性のメモリ回路と、演算回路と、他の回路と接続するためのインターフェース回路と、各スイッチング素子への制御信号を出力するための駆動回路とを有する。そして制御回路19は、電流検出回路18により検出された電流値に基づいて、送信コイル14から受信コイル21への電力伝送に影響される異物の有無を判定する。なお、制御回路19による異物の有無の判定の詳細については後述する。
【0033】
さらに、制御回路19は、インバータ13から送信コイル14に供給される交流電力の周波数が所定の駆動周波数となるように、インバータ13の4個のスイッチング素子13-1~13-4のオン/オフを制御する。すなわち、制御回路19は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組と、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組とが交互にオンとなり、かつ、所定の駆動周波数に対応する1周期内でスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組がオンとなっている期間と、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組がオンとなっている期間とが等しくなるように、各スイッチング素子を制御する。なお、それぞれのスイッチング素子の組が同時にオンとなり、交流電源が短絡されることを防止するために、制御回路19は、それぞれのスイッチング素子の組のオン/オフを切り替える際に、全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムを設けてもよい。
【0034】
次に、受電装置3について説明する。
共振回路20は、受信コイル21と共振コンデンサ22とが直列に接続されるLC共振回路である。そして共振回路20が有する受信コイル21の一端が共振コンデンサ22を介して整流平滑回路23の一方の入力端子に接続される。また、受信コイル21の他端が、整流平滑回路23の他方の入力端子に接続される。
【0035】
受信コイル21は、共振コンデンサ22とともに、送電装置2の送信コイル14に流れる交流電流と共振することで、送信コイル14から電力を受電する。そして受信コイル21は、共振コンデンサ22を介して、受電した電力を整流平滑回路23へ出力する。そのために、共振回路20の共振周波数が、送信コイル14に流れる交流電流の駆動周波数と略等しくなるように、受信コイル21のインダクタンス及び共振コンデンサ22の静電容量が設定される。なお、受信コイル21の巻き数と、送電装置2の送信コイル14の巻き数は同一でもよく、あるいは、異なっていてもよい。
【0036】
共振コンデンサ22は、受信コイル21と直列に接続される。すなわち、共振コンデンサ22は、その一端で受信コイル21の一端と接続され、他端で整流平滑回路23と接続される。そして共振コンデンサ22は、送信コイル14を流れる電流に対して受信コイル21とともに共振することで受電した電力を整流平滑回路23へ出力する。
【0037】
整流平滑回路23は、整流回路の一例であり、共振回路20と接続される、ブリッジ接続された4個のダイオードを有する全波整流回路と、全波整流回路の出力側に設けられる平滑コンデンサとを有する。そして整流平滑回路23は、共振回路20から出力された交流電力を整流し、かつ、平滑化して、直流電力に変換する。そして整流平滑回路23は、その直流電力を、DC-DCコンバータ24に出力する。
【0038】
DC-DCコンバータ24は、整流平滑回路23から出力された電圧を、負荷回路4を動作させるための電圧に変換して出力する。DC-DCコンバータ24は、昇圧型のDC-DCコンバータあるいは降圧型のDC-DCコンバータの何れであってもよい。ただし、DC-DCコンバータ24は、出力固定型のDC-DCコンバータであることが好ましい。これにより、安定した出力電圧が得られることになる。DC-DCコンバータ24は、電圧変換後の電力を、平滑コンデンサ25を介して負荷回路4へ出力する。
【0039】
平滑コンデンサ25は、DC-DCコンバータ24と負荷回路4との間において、DC-DCコンバータ24の正極側と負極側との間に接続される。そして平滑コンデンサ25は、DC-DCコンバータ24から出力された電圧を平滑化し、平滑化された出力電圧を負荷回路4へ出力する。
【0040】
周期信号生成回路26は、平滑コンデンサ25から出力される電圧に基づいて、所定の周期で電圧が変化する周期信号を生成する。周期信号は、矩形波の周期信号とすることができる。ただし、周期信号は、矩形波に限られず、正弦波あるいは三角波の周期信号であってもよい。また、所定の周期は、送電装置2のインバータ13の駆動周波数及び共振回路20の共振周波数に相当する周期に対して十分に長い周期、例えば、0.1秒~数秒程度の周期であることが好ましい。周期信号生成回路26は、上記のような周期信号を生成可能な公知の様々な回路の何れかとすることができる。そして周期信号生成回路26は、生成した周期信号をスイッチ制御回路29へ出力する。
【0041】
共振抑制コイル27は、共振回路20の受信コイル21と電磁結合可能に設けられる。例えば、共振抑制コイル27と受信コイル21とは、同一の芯線に対して巻き付けられる。なお、受信コイル21の巻き数と共振抑制コイル27の巻き数は等しくてもよく、あるいは、異なっていてもよい。また共振抑制コイル27の両端は、それぞれ、スイッチ回路28と接続される。そして共振抑制コイル27がスイッチ回路28により短絡されると、共振抑制コイル27は受信コイル21と電磁結合し、共振回路20の共振周波数が変化する。そのため、共振回路20からの出力電圧が過度に上昇しても、共振抑制コイル27が短絡されることで、送電装置2から受電装置3へ伝送される電力が低下するので、共振回路20からの出力電圧も低下する。
【0042】
一方、スイッチ回路28が共振抑制コイル27の両端を開放すると、共振抑制コイル27は、送信コイル14と受信コイル21間の共振に関与しなくなり、送電装置2から受電装置3への電力伝送に影響しなくなる。
【0043】
スイッチ回路28は、共振抑制コイル27の両端と接続され、スイッチ制御回路29からの制御信号に応じて共振抑制コイル27を短絡するか、開放するかを切り替える。すなわち、スイッチ回路28は、スイッチ制御回路29からオンとなる制御信号を受信している間、共振抑制コイル27を短絡する。一方、スイッチ回路28は、スイッチ制御回路29からオフとなる制御信号を受信している間、共振抑制コイル27の両端を開放する。
【0044】
スイッチ回路28は、例えば、リレー回路を有する。スイッチ制御回路29がリレー回路をオンにすると共振抑制コイル27が短絡される。一方、スイッチ制御回路29がリレー回路をオフにすると共振抑制コイル27の両端が開放される。
【0045】
また、スイッチ回路28は、共振抑制コイル27の両端間に直列に接続される、二つのnチャネル型のMOSFETを有してもよい。この場合、二つのMOSFETは、互いのソース端子同士が接続され、ドレイン端子が共振抑制コイル27の両端のそれぞれと接続されるように配置される。また二つのMOSFETのゲート端子はスイッチ制御回路29と接続される。そしてスイッチ制御回路29から、オンとなる制御信号に相当する、相対的に高い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、各MOSFETのソース-ドレイン間を電流が流れることが可能となるので、共振抑制コイル27は短絡される。一方、スイッチ制御回路29から、オフとなる制御信号に相当する、相対的に低い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、各MOSFETのソース-ドレイン間を電流が流れなくなり、かつ、二つのMOSFETのボディダイオードも互いに逆向きとなっているため、それぞれのボディダイオードを通じても電流は流れない。そのため、共振抑制コイル27の両端は開放される。
【0046】
なお、二つのMOSFETは、互いのドレイン端子同士が接続され、ソース端子が共振抑制コイル27の両端のそれぞれと接続されるように配置されてもよい。この例でも、スイッチ制御回路29から、オンとなる制御信号に相当する、相対的に高い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、共振抑制コイル27は短絡される。一方、スイッチ制御回路29から、オフとなる制御信号に相当する、相対的に低い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、共振抑制コイル27の両端は開放される。
【0047】
スイッチ制御回路29は、周期信号生成回路26から受け取った周期信号に基づいて、スイッチ回路28のオン/オフを制御する。すなわち、スイッチ制御回路29は、整流回路23から出力される電力に応じて、共振抑制コイル27の短絡と開放とが繰り返されるようにスイッチ回路28を制御する。そのために、スイッチ制御回路29は、例えば、上限閾値及び下限閾値を記憶するメモリ回路と、周期信号の電圧とそれら閾値とを比較するための演算回路と、スイッチ回路28のオン/オフを制御するための制御回路を有する。
【0048】
スイッチ制御回路29は、周期信号の電圧が所定の上限閾値以上となるとスイッチ回路28をオンにして共振抑制コイル27を短絡する。これにより、スイッチ制御回路29は、共振回路20の共振周波数を変化させることで出力電圧を低下させる。一方、周期信号の電圧が所定の下限閾値以下となると、スイッチ制御回路29は、スイッチ回路28をオフにして共振抑制コイル27を開放する。これにより、スイッチ制御回路29は、共振回路20の共振周波数を元に戻すことで出力電圧を上昇させる。このようにスイッチ回路28のオン/オフが制御されることで、共振抑制コイル27の短絡と解放とが繰り返される。なお、上限閾値は、例えば、周期信号の電圧の最大値に1未満の安全係数(例えば、0.9~0.97)を乗じた値に設定される。また、下限閾値は、上限閾値よりも低い値、かつ、周期信号の電圧の最小値に1より大きい安全係数(例えば、1.03~1.1)を乗じた値に設定される。また、周期信号生成回路26により生成された周期信号に基づいてスイッチ回路28を制御することで、スイッチ制御回路29は、一定の繰返し周期で共振抑制コイルを確実に短絡することができる。その結果として、異物の検出ができない期間が過度に長くなることが防止される。
【0049】
以下、制御回路19による、異物の有無の判定の詳細について説明する。そのために、先ず、共振抑制コイル27の短絡及び開放と、消費される電力の関係について説明する。
【0050】
図2(a)及び
図2(b)は、それぞれ、共振抑制コイル27が短絡されているときにインバータ13のスイッチング素子に流れる電流の波形、及び、共振抑制コイル27が開放されているときにインバータ13のスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
図2(a)及び
図2(b)において、横軸は時間を表し、縦軸は電流値を表す。また、
図2(a)に示される波形201は、共振抑制コイル27が短絡されているときのインバータ13のスイッチング素子13-2(この例では、第1のスイッチング素子に相当)に流れる電流の波形を表し、
図2(b)に示される波形202は、共振抑制コイル27が開放されているときの第1のスイッチング素子に流れる電流の波形を表す。なお、波形201及び波形202は、第1のスイッチング素子がオンにされている期間の波形、すなわち、インバータ13の駆動周波数に相当する期間の半分に相当する波形である。
【0051】
共振抑制コイル27が短絡されている間、送電装置2から受電装置3への電力伝送は停止されている。そのため、受電側で消費される電力はほぼ0になる。したがって、送電側における有効電力もほぼ0になる。その結果として、波形201に示されるように、共振抑制コイル27が短絡されている間、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値はほぼ0になる。
【0052】
これに対して、共振抑制コイル27が開放されることで送電装置2から受電装置3への電力伝送が行われていると、受電側で電力が消費されることになる。したがって、送電側における有効電力も増加する。その結果として、波形202に示されるように、共振抑制コイル27が開放されることで電力伝送が行われている間、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値は正の値を有することになる。
【0053】
ここで、送信コイル14から受信コイル21への電力伝送に影響される位置に導電性を有する異物(例えば、金属製の小片)が存在すると、送信コイル14から生じた磁界の影響により、異物に電流が流れることで電力が消費されることになる。しかし、異物が小さいと、共振抑制コイル27が開放されている間に受電装置3が受電することで消費される電力に対して異物で消費される電力も相対的に少ない。そのために、異物の有無による、第1のスイッチング素子に流れる電流の変化も微小なものとなる。これに対して、共振抑制コイル27が短絡されているために受電装置3での電力消費がほぼ0であれば、異物の有無による第1のスイッチング素子に流れる電流の変化は相対的に大きくなる。
【0054】
例えば、送信コイル14に印加される入力電圧が200Vであり、共振抑制コイル27が開放され、受電装置3が電力を受電しているときの消費電力が200Wであるとする。この場合、第1のスイッチング素子に流れる平均電流は1Aとなる。このとき、異物が送信コイル14と受信コイル21との間に混入し、異物により電力が2W消費されたとする。この場合、全体の消費電力は202Wであるため、第1のスイッチング素子に流れる平均電流は1.01Aとなる。このように、異物の有無によって第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値は全体の1%しか変化しない。そのため、共振抑制コイル27が開放されており、受電装置3が受電しているときには、第1のスイッチング素子を流れる電流に基づいて異物の有無を精度良く判定することは困難である。
【0055】
これに対して、共振抑制コイル27が短絡され、受電装置3が電力を受電していなければ、電力消費は、送信コイル14の巻き線及びインバータ13の各スイッチング素子による損失に起因するものとなり、受電装置3による受電時の消費電力と比べて非常に小さくなる。例えば、送信コイル14に印加される入力電圧が200Vであり、送信コイル14の巻き線及びインバータ13の各スイッチング素子により、2Wの電力が消費されるものとする。この場合、異物が無ければ、第1のスイッチング素子に流れる平均電流は0.01Aとなる。ここで上記のように、異物が送信コイル14と受信コイル21との間に混入し、異物により電力が2W消費されたとする。この場合、全体の消費電力は4Wであるため、第1のスイッチング素子に流れる平均電流は0.02Aとなる。したがって、異物の有無によって第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値は2倍変化することになる。そのため、共振抑制コイル27が短絡されており、受電装置3が受電していないときには、第1のスイッチング素子を流れる電流に基づいて異物の有無を精度良く判定することが可能となる。
【0056】
図3(a)は、異物が存在しないときの、整流平滑回路23からの出力電圧と、共振抑制コイル27の短絡及び開放と、第1のスイッチング素子に流れる電流の駆動周波数に相当する期間における平均値との関係の一例を示す図である。
図3(b)は、異物が存在するときの、整流平滑回路23からの出力電圧と、共振抑制コイル27の短絡及び開放と、第1のスイッチング素子に流れる電流の駆動周波数に相当する期間における平均値との関係の一例を示す図である。
図3(a)及び
図3(b)において、横軸は時間を表す。また、
図3(a)において、波形301及び波形302は、それぞれ、出力電圧の時間変化と、共振抑制コイル27の短絡及び開放の状態の時間変化を表す。さらに、波形303は、平均電流の時間変化を表す。同様に、
図3(b)において、波形311及び波形312は、それぞれ、出力電圧の時間変化と、共振抑制コイル27の短絡及び開放の状態の時間変化を表す。さらに、波形313は、平均電流の時間変化を表す。
【0057】
異物が存在しない場合、波形301及び波形302に示されるように、共振抑制コイル27が開放されているオフ期間Toffでは、受電装置3は送電装置2から電力を受電しているため、出力電圧は徐々に上昇する。そして波形303に示されるように、平均電流は相対的に大きい値となる。一方、共振抑制コイル27が短絡されているオン期間Tonでは、受電装置3は電力を受電しなくなるので、出力電圧は徐々に低下する。そして平均電流はほぼ0になる。
【0058】
異物が存在する場合も、波形311及び波形312に示されるように、共振抑制コイル27が開放されているオフ期間Toffでは、受電装置3は送電装置2から電力を受電しているため、出力電圧は徐々に上昇する。そして波形313に示されるように、平均電流は相対的に大きい値となる。一方、共振抑制コイル27が短絡されているオン期間Tonでは、受電装置3は電力を受電しなくなるので、出力電圧は徐々に低下するものの、異物で電力が消費されるため、平均電流は完全には下がりきらず、ある程度の大きさを有するものになる。
【0059】
このことから、制御回路19は、電流検出回路18により検出された、共振抑制コイル27が短絡されている間に第1のスイッチング素子を流れる電流の平均値に基づいて、異物の有無を判定できることが分かる。
【0060】
図4は、電流検出回路18の回路図である。電流検出回路18は、4個の抵抗R1~R4と、コンデンサC1と、オペアンプAMPとを有する。抵抗R1は、インバータ13のスイッチング素子13-2と、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続される。また、抵抗R2は、抵抗R1とスイッチング素子13-2の間にその一端が接続され、他端がオペアンプAMPの正極側入力端子に接続される。さらに、コンデンサC1は、その一端が抵抗R2の他端とオペアンプAMPの正極側入力端子との間に接続され、他端が力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子に接続される。さらに、抵抗R3は、その一端がオペアンプAMPの負極側入力端子に接続され、他端が力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子に接続される。さらにまた、抵抗R4は、抵抗R3の一端とオペアンプAMPの負極側入力端子との間に接続され、他端がオペアンプAMPの出力側端子に接続される。そしてオペアンプAMPの出力側端子は、制御回路19に接続される。
【0061】
スイッチング素子13-2がオンとなっている間、送信コイル14に流れる電流は抵抗R1により電圧に変換される。そして変換された電圧は、抵抗R2及びコンデンサC1により構成される積分回路により、高周波がフィルタリングされ、かつ、所定のサンプリング期間にわたって積分された値となってオペアンプAMPの正極側入力端子に入力される。オペアンプAMP、抵抗R3及び抵抗R4は、非反転増幅回路を構成し、抵抗R3と抵抗R4とに応じた増幅率で入力された電圧を増幅する。そしてオペアンプAMPの出力側端子から、入力された電圧を増幅して得られた電圧が制御回路19へ出力される。このように、電流検出回路18は、送信コイル14に流れる電流に応じた電圧値を出力する。したがって、電流検出回路18から出力された電圧値のサンプリング期間にわたる平均値は、そのサンプリング期間にわたる、送信コイル14に流れる電流の平均値に対応する。なお、サンプリング期間は、インバータ13の駆動周波数に相当する周期の半分以上の長さを持つように設定される。さらに、サンプリング期間は、共振抑制コイル27の開放と短絡の繰返し周期(すなわち、周期信号生成回路26により生成される周期信号の1周期)よりも十分に短い期間、例えば、繰返し周期の1/100~1/1000以下の長さに設定されることが好ましい。制御回路19は、個々のサンプリング期間について、そのサンプリング期間における、電流検出回路18から出力された電圧値の平均値をもとめる。そして制御回路19は、サンプリング期間ごとに、そのサンプリング期間における電圧の平均値を所定の検出閾値と比較する。検出閾値は、共振抑制コイル27が開放されているオフ期間について想定される電圧の平均値よりも小さく、かつ、共振抑制コイル27が短絡されているオン期間における電圧の平均値よりも大きい値に設定される。より具体的に、検出閾値は、オン期間における電圧の平均値に、異物による電力消費に伴う、想定される電圧の増加量未満のオフセット値を加算した値に設定される。
【0062】
図3(a)及び
図3(b)を再度参照すると、異物が存在しない場合には、波形303に示されるように、オン期間になる度に、平均電流は、上記の検出閾値に相当する電流値Thよりも小さくなる。これに対して、異物が存在する場合には、波形313に示されるように、オン期間であっても、平均電流は、電流値Thを下回らない。
【0063】
そこで、制御回路19は、所定回数(例えば、1~5回)の繰返し周期に相当する期間にわたって電圧の平均値が一度も検出閾値を下回らなければ、異物が存在すると判定する。そして制御回路19は、インバータ13の各スイッチング素子をオフに保つことで電力供給回路10から送信コイル14への電力供給を停止する。さらに、制御回路19は、他の機器(図示せず)へ、異物が検出されたことを示す異常信号を通知してもよい。一方、その期間中において電圧の平均値が一度でも検出閾値未満になれば、制御回路19は、異物を検出しない。
【0064】
図5は、制御回路19による異物検出処理の動作フローチャートである。
【0065】
制御回路19は、サンプリング期間Pにおける、インバータ13の第1のスイッチング素子を流れる電流の平均値に相当する、電流検出回路18から出力された電圧の平均値が検出閾値Thv未満であるか否か判定する(ステップS101)。なお、上記のように、電力伝送中において、共振抑制コイル27が開放されているオフ期間では、電圧の平均値が検出閾値Thv未満となることは無いので、ステップS101において実質的に判定対象となるのは、共振抑制コイル27が短絡されているオン期間における、電圧の平均値である。
【0066】
電圧の平均値が検出閾値Thv以上である場合(ステップS101-No)、制御回路19は、電圧の平均値が検出閾値Thv以上となっている継続期間Cが所定の時間閾値Thp以上か否か判定する(ステップS102)。その継続期間Cが時間閾値Thp以上であれば(ステップS102-Yes)、制御回路19は、送信コイル14から受信コイル21への電力伝送に影響される異物が存在すると判定する(ステップS103)。そして制御回路19は、電力供給回路10から送信コイル14への電力供給を停止する(ステップS104)。そして制御回路19は、異物検出処理を終了する。
【0067】
一方、その継続期間Cが時間閾値Thp未満であれば(ステップS102-No)、制御回路19は、継続期間Cにサンプリング期間Sを加算することで継続期間Cを更新する(ステップS105)。その後、制御回路19は、次のサンプリング期間においてステップS101以降の処理を繰り返す。
【0068】
また、ステップS101において、電圧の平均値が検出閾値Thv未満である場合(ステップS101-Yes)、制御回路19は、継続期間Cを0にリセットする(ステップS106)。その後、制御回路19は、次のサンプリング期間においてステップS101以降の処理を繰り返す。
【0069】
以上に説明してきたように、この非接触給電装置では、受電装置において共振回路の共振を抑制するための共振抑制コイルが設けられ、その共振抑制コイルの短絡及び開放を切り替えることで、出力電圧を一定の範囲内に保つことができる。さらに、この非接触給電装置は、共振抑制コイルが短絡されているオン期間における、送電用のコイルに交流電力を供給するインバータの第1のスイッチング素子に流れる電流に基づいて異物の有無を判定する。オン期間では、異物の有無による、第1のスイッチング素子に流れる電流の変動が相対的に大きくなるので、この非接触給電装置は、異物の有無を精度良く判定することができる。
【0070】
なお、受電装置3の共振回路20は、受信コイル21と共振コンデンサ22とが並列共振するように互いに並列に接続されてもよい。さらに、受電装置3において、共振回路20と整流平滑回路23の間に、受信コイル21と直列に接続される別のコイルが設けられてもよい。また、電力伝送中において、送電装置2と受電装置3間の位置関係の変動が無視できる程度の場合には、送電装置2において、第1のコイル17及び第2のコンデンサ16は省略されてもよい。
【0071】
また、スイッチ制御回路29は、整流平滑回路23からの出力電圧に応じて、スイッチ回路28のオン/オフを制御してもよい。この場合、整流平滑回路23の出力側に、出力電圧を測定するための電圧検出回路が設けられる。そしてスイッチ制御回路29は、電圧検出回路により測定された電圧が上限閾値以上になると、スイッチ回路28をオンにし、一方、電圧検出回路により測定された電圧が下限閾値以下になると、スイッチ回路28をオフにすればよい。なお、上限閾値は、例えば、負荷回路4の動作に支障を生じない出力電圧の上限値に1未満の安全係数(例えば、0.9~0.97)を乗じた値に設定される。また、下限閾値は、上限閾値よりも低い値、かつ、負荷回路4の動作に支障を生じない出力電圧の下限値に1より大きい安全係数(例えば、1.03~1.1)を乗じた値に設定される。またこの変形例では、DC-DCコンバータ24、平滑コンデンサ25及び周期信号生成回路26は省略されてもよい。
【0072】
さらに、送電装置2の電力供給回路10は、力率改善回路12の代わりに、DC-DCコンバータを有していてもよい。また、DC-DCコンバータに、直流電力が直接入力されてもよい。
【0073】
上記の実施形態または変形例による非接触給電装置は、Automatic Guided Vehicle(AGV)といった移動体への電力供給において好適に利用される。
【0074】
図6は、上記の実施形態または変形例による非接触給電装置が移動体の電力供給システムとして利用される場合の概要図である。受電装置3は、移動体600に搭載される。一方、送電装置2は、移動体600の移動経路に沿って配置される。例えば、送信コイル14は、移動体600の移動経路610上の床面に設置される。なお、送信コイル14は、移動体600が一時停止する位置、あるいは、移動体600の移動速度が所定速度以下となる位置に設けられることが好ましい。一方、受信コイル21は、移動体の下部において床面と対向するように搭載される。送電装置2は一つに限られず、複数の送電装置2が、移動経路610上の互いに異なる位置に設置されてもよい。
図6に示される例では、3個の送電装置2が図示されており、各送電装置2の送信コイル14は、移動経路610の延伸方向に沿って一列に並べられている。なお、複数の送電装置2が設置される場合、各送電装置2の送信コイル14は、移動経路610の延伸方向と直交する方向に並べられてもよく、格子状あるいは千鳥足状に並べられてもよい。
【0075】
移動体600が何れかの送電装置2の送信コイル14が設けられた位置を通過する際に、送信コイル14と受信コイル21とが電磁結合可能となり、送電装置2から受電装置3へ電力伝送される。そして受電装置3にて受電された電力は、移動体600に搭載された各種の機器を動作させるため、あるいは、移動体600自体を動作させるために利用される。その際、制御回路19は、上記の実施形態または変形例にしたがって異物を検出すればよい。そして異物が検出されると、制御回路19は、移動体600が設置される設備の管理装置といった外部の機器へ異物が検出されたことを通知する。そして管理者により異物が除去され、外部の機器から給電を再開する信号を受信すると、制御回路19は、電力供給回路10から送信コイル14への電力供給を再開すればよい。
【0076】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 非接触給電装置
2 送電装置
10 電力供給回路
11 全波整流回路
12 力率改善回路
13 インバータ
13-1~13-4 スイッチング素子
14 送信コイル
15 第1のコンデンサ
16 第2のコンデンサ
17 第1のコイル
18 電流検出回路
19 制御回路
3 受電装置
20 共振回路
21 受信コイル
22 共振コンデンサ
23 整流平滑回路
24 DC-DCコンバータ
25 平滑コンデンサ
26 周期信号生成回路
27 共振抑制コイル
28 スイッチ回路
29 スイッチ制御回路
4 負荷回路
600 移動体