(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127500
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】搬送設備
(51)【国際特許分類】
B61B 3/00 20060101AFI20240912BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B61B3/00 A
B65G1/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036688
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 茉里夏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 功一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴文
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022BB09
3F022EE05
3F022JJ13
3F022LL12
3F022MM52
(57)【要約】
【課題】防火扉の設置箇所において、搬送車を走行させる際の搬送車の振動を少なく抑えることができる搬送設備を実現する。
【解決手段】壁体20に形成された開口部21を通る走行経路Rに沿って配置され、搬送車の走行を案内する案内レール30と、開口部21を開閉する防火扉40を備え、防火扉40は、開放位置から並び方向第1側Y1へ向かって閉鎖位置まで移動するように構成され、防火扉40の切欠き部45は、走行方向Xに貫通していると共に並び方向第1側Y1が開放され、防火扉40が開放位置から閉鎖位置まで移動する間、防火扉40と第1レール体31及び第2レール体32とが干渉しないように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に形成された開口部を通る走行経路に沿って配置され、搬送車の走行を案内する案内レールと、
前記開口部を開閉する防火扉と、
を備えた搬送設備であって、
前記案内レールは、水平方向に離間して設置された第1レール体及び第2レール体を備え、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記第1レール体と前記第2レール体とが並ぶ方向を並び方向とし、前記並び方向の一方側を並び方向第1側とし、前記並び方向の他方側を並び方向第2側として、
前記防火扉は、前記開口部を開放した状態となる開放位置から、前記開口部を閉鎖する場合に、前記壁体の壁面に沿って前記並び方向第1側へ向かって閉鎖位置まで移動するように構成され、
前記防火扉は、前記閉鎖位置に配置された状態で、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して上側の領域を閉鎖する上側閉鎖部と、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して下側の領域を閉鎖する下側閉鎖部と、前記第1レール体及び前記第2レール体に対して前記並び方向第2側に配置されて前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部とを上下方向に接続する接続部と、前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部と前記接続部とに囲まれて形成された切欠き部と、を備え、
前記切欠き部は、前記走行方向に貫通していると共に前記並び方向第1側が開放され、前記防火扉が前記開放位置から前記閉鎖位置まで移動する間、前記防火扉と前記第1レール体及び前記第2レール体とが干渉しないように形成されている、搬送設備。
【請求項2】
前記第1レール体及び前記第2レール体の上面が、前記搬送車の車輪が走行する走行面とされ、
前記第1レール体及び前記第2レール体のそれぞれは、前記走行面よりも下側であって上下方向視で前記閉鎖位置の前記防火扉と重複する領域に、前記並び方向に貫通すると共に下側に開放された凹溝を備え、
前記防火扉が前記閉鎖位置に配置された状態で、前記下側閉鎖部の一部が、前記凹溝の中に配置される、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記並び方向に平行な帯状に形成され、
前記切欠き部の上下方向の幅は、前記第1レール体及び前記第2レール体の上面と前記凹溝の天面との上下方向の距離よりも大きく、前記第1レール体及び前記第2レール体の上面と前記第1レール体及び前記第2レール体の下面との上下方向の距離よりも小さく設定されている、請求項2に記載の搬送設備。
【請求項4】
前記第1レール体及び前記第2レール体のそれぞれにおける前記凹溝が形成された部分が、前記第1レール体及び前記第2レール体の他の部分に比べて耐熱性の高い材料により構成されている、請求項2に記載の搬送設備。
【請求項5】
前記防火扉と共に前記開口部を閉鎖する補助扉を更に備え、
前記補助扉は、前記防火扉とは異なる方向に移動することで開放姿勢から閉鎖姿勢となり、前記閉鎖姿勢で前記切欠き部における前記第1レール体と前記第2レール体との前記並び方向の間の領域を閉鎖するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送設備。
【請求項6】
前記補助扉は、前記壁体の壁面及び前記並び方向に沿うように配置された揺動軸心回りに揺動するように構成され、
前記補助扉が前記走行方向に沿う姿勢が前記開放姿勢であり、前記補助扉が前記壁体の壁面に沿う姿勢が前記閉鎖姿勢である、請求項5に記載の搬送設備。
【請求項7】
前記案内レール、前記防火扉、及び、前記補助扉の少なくともいずれかに、火災の熱により膨張する断熱材が取り付けられ、
前記断熱材は、膨張した状態で、前記防火扉と前記案内レールとの隙間、前記防火扉と前記補助扉との隙間、及び、前記補助扉と前記案内レールとの隙間の少なくともいずれかを埋めるように配置されている、請求項5に記載の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火扉と案内レールとを備えた搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
防火扉と案内レールとを備えた搬送設備が知られている。特許文献1(特開昭62-086286号公報)には、案内レールに走行経路に沿う方向における切断部が設けられ、火災の発生時に当該切断部を防火扉が通過する搬送設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
案内レールの切断部を搬送車が通過する際には、振動が発生し易いという問題がある。特許文献1の搬送設備では防火扉を2本の案内レールに対して斜めに横断するように配置することで、2本の案内レールの切断部を同時に搬送車の車輪が通過しないようにし、案内レールの切断部を搬送車が通過する際の振動を軽減している。しかし、案内レールの切断部を搬送車の車輪が通過することには変わりがないため、依然として車輪が通過する際の振動が発生する。そのため、搬送車による搬送対象物の保護や搬送車の走行の安定性の観点で改善の余地があった。
【0005】
そこで、防火扉の設置箇所において、搬送車を走行させる際の搬送車の振動を少なく抑えることができる搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る搬送設備は、壁体に形成された開口部を通る走行経路に沿って配置され、搬送車の走行を案内する案内レールと、前記開口部を開閉する防火扉と、を備えた搬送設備であって、前記案内レールは、水平方向に離間して設置された第1レール体及び第2レール体を備え、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記第1レール体と前記第2レール体とが並ぶ方向を並び方向とし、前記並び方向の一方側を並び方向第1側とし、前記並び方向の他方側を並び方向第2側として、前記防火扉は、前記開口部を開放した状態となる開放位置から、前記開口部を閉鎖する場合に、前記壁体の壁面に沿って前記並び方向第1側へ向かって閉鎖位置まで移動するように構成され、前記防火扉は、前記閉鎖位置に配置された状態で、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して上側の領域を閉鎖する上側閉鎖部と、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して下側の領域を閉鎖する下側閉鎖部と、前記第1レール体及び前記第2レール体に対して前記並び方向第2側に配置されて前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部とを上下方向に接続する接続部と、前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部と前記接続部とに囲まれて形成された切欠き部と、を備え、前記切欠き部は、前記走行方向に貫通していると共に前記並び方向第1側が開放され、前記防火扉が前記開放位置から前記閉鎖位置まで移動する間、前記防火扉と前記第1レール体及び前記第2レール体とが干渉しないように形成されている。
【0007】
本構成によれば、案内レールが水平方向に離間して設置された第1レール体及び第2レール体を備える場合において、防火扉を閉鎖位置に配置した状態で、第1レール体及び第2レール体に対して上側及び下側の領域と第1レール体及び第2レール体に対して並び方向第2側の領域とを防火扉により閉鎖することができる。また、第1レール体及び第2レール体の搬送車が走行する走行面を、走行方向に切れ目なく連続させることが可能となる。従って、搬送車を走行させる際における搬送車の振動を少なく抑え易い。また、防火扉の切欠き部は並び方向第1側が開放され、防火扉が移動中に第1レール体及び第2レール体と干渉しないように形成されているため、防火扉の閉鎖を適切に行うことができる。また、防火扉は、壁体の壁面に沿って第1レール体及び第2レール体の並び方向に移動する構成であるため、第1レール体及び第2レール体と防火扉との干渉を回避しつつ、防火扉の移動方向に直交する方向の切欠き部の幅を小さく抑え易い。よって、防火扉と案内レールとの隙間を小さく抑え易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1の搬送設備における防火扉及び補助扉が開いた状態を示す図
【
図3】
図1の搬送設備における防火扉及び補助扉が閉じた状態を示す図
【
図5】
図1の補助扉に取り付けられた断熱材の斜視拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、搬送設備10の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る搬送設備10の斜視図である。搬送設備10は、壁体20に形成された開口部21を通る走行経路Rに沿って配置された案内レール30と、壁体20に形成された開口部21を開閉する防火扉40と、を備えている。本実施形態では、搬送設備10は、防火扉40と共に開口部21を閉鎖する補助扉50を更に備えている。
【0011】
案内レール30は、走行経路Rに沿って配置され、後述する搬送車11の走行を案内する。また、案内レール30は、水平方向に離間して設置された第1レール体31及び第2レール体32を備えている。本実施形態では、第1レール体31及び第2レール体32は、防火扉40に対し走行方向Xに切れ目なく連続している。
【0012】
ここで、走行経路Rに沿う方向を走行方向Xとする。また、第1レール体31と第2レール体32とが並ぶ方向を並び方向Yとする。また、並び方向Yの一方側を並び方向第1側Y1とし、並び方向Yの他方側を並び方向第2側Y2とする。本実施形態では、並び方向Yは水平方向である。また、鉛直方向に沿う方向を上下方向Zとする。
【0013】
図2は、防火扉40が開いた状態の搬送設備10の正面図である。
図3は、防火扉40が閉じた状態の搬送設備10の正面図である。
図2に示すように、本実施形態では、搬送車11は車輪12を備える走行部13と、搬送物Wを収納する収納部15とを備えている。図示の例では、収納部15は走行部13の下側に配置されている。本実施形態では、受電部14は、走行部13と収納部15との間に配置されている。また、搬送車11は給電線18から電力を受電する受電部14を備えている。また、搬送車11は、1対の車輪12又は2対以上の車輪12を有している。
【0014】
本実施形態では、搬送車11は天井搬送車である。また、搬送車11は電動の無人搬送車である。また、搬送車11が搬送する搬送物Wは特に限定されないが、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を搬送物Wとして搬送する。本実施形態では、搬送設備10は、例えばクリーンルームに設置される。
【0015】
図4は、搬送設備10の第1レール体31と第2レール体32との間を通るX-Z平面による断面を示す図である。防火扉40は、開口部21を開放した状態となる開放位置P11から、開口部21を閉鎖する場合に、壁体20の壁面に沿って並び方向第1側Y1へ向かって閉鎖位置P12まで移動するように構成されている。
図1は防火扉40が開放位置P11と閉鎖位置P12との間にある状態を示している。
図2は、防火扉40が開放位置P11にある状態を示し、
図3は、防火扉40が閉鎖位置P12にある状態を示している。
【0016】
図2に示すように、本実施形態では、第1レール体31の上面及び第2レール体32の上面が、搬送車11の車輪12が走行する走行面35とされている。また、第1レール体31及び第2レール体32のそれぞれは、走行面35よりも下側であって上下方向視で閉鎖位置P12の防火扉40と重複する領域に、並び方向Yに貫通すると共に下側に開放された凹溝33を備えている。本実施形態では、走行面35は、走行方向Xにおける凹溝33の前後において、走行方向Xに切れ目なく連続している。
【0017】
本実施形態では、凹溝33は、凹溝33の中に閉鎖位置P12に配置された状態における防火扉40の一部が配置されるように構成されている。また、本実施形態では、搬送設備10は、防火扉40が開放位置P11から閉鎖位置P12まで移動する際に、凹溝33の中に防火扉40を案内するローラ機構37を備えている。ローラ機構37は、走行方向Xの両側から防火扉40に接触して回転する一対のローラ37aを備えている。一対のローラ37aは、上下方向Zに沿う方向に回転軸心を有し、案内レール30に固定されたローラ支持部37bにより支持される。ローラ機構37は、
図1及び
図4では省略されている。
【0018】
本実施形態では、第1レール体31及び第2レール体32のそれぞれにおける凹溝33が形成された部分が、第1レール体31及び第2レール体32の他の部分に比べて耐熱性の高い材料により構成されている。凹溝33が形成された部分を構成する材料としては、融点を高くした鋼材等が挙げられる。例えば、第1レール体31及び第2レール体32のそれぞれが、複数のレール部を走行方向Xに連結した構造を有する場合に、開口部21を貫通するように配置されるレール部(言い換えれば、凹溝33が形成されるレール部)を構成する材料を、他のレール部を構成する材料よりも融点の高い材料とすることで、上記の構成を実現できる。また、本実施形態では、第1レール体31及び第2レール体32のそれぞれの下部に給電線18と給電線18を支持する給電線支持部31a、32aとが設けられている。給電線18は、搬送車11が備える受電部14に非接触で電力を供給する。
【0019】
防火扉40は、上側閉鎖部41と下側閉鎖部42とを備えている。上側閉鎖部41は、防火扉40が閉鎖位置P12に配置された状態で、開口部21における第1レール体31及び第2レール体32に対して上側の領域を閉鎖する。下側閉鎖部42は、防火扉40が閉鎖位置P12に配置された状態で、開口部21における第1レール体31及び第2レール体32に対して下側の領域を閉鎖する。本実施形態では、防火扉40が閉鎖位置P12に配置された状態で、下側閉鎖部42の一部が、凹溝33の中に配置される。
【0020】
本実施形態では、防火扉40は、第1レール体31及び第2レール体32に対して並び方向第2側Y2に配置されて上側閉鎖部41と下側閉鎖部42とを上下方向Zに接続する接続部43を備えている。また、防火扉40は、上側閉鎖部41と下側閉鎖部42と接続部43とに囲まれて形成された切欠き部45を備えている。本実施形態では、上側閉鎖部41と下側閉鎖部42と接続部43とが一体的に構成されている。
【0021】
本実施形態では、切欠き部45は、走行方向Xに貫通していると共に並び方向第1側Y1が開放され、防火扉40が開放位置P11から閉鎖位置P12まで移動する間、防火扉40と第1レール体31及び第2レール体32とが干渉しないように形成されている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、防火扉40は、開放位置P11及び閉鎖位置P12の両方の位置で、壁体20に固定されたプランジャ機構47により、走行方向Xの両側から押圧されている。プランジャ機構47は、壁体20に固定されたプランジャ支持部47bにより支持されたプランジャ47aと、壁体20に設けられたプランジャ(不図示)と、により、走行方向Xの両側から防火扉40を押圧している。このようにすれば、防火扉40の走行方向Xのがたつきが少なくなり、凹溝33の中に防火扉40を入れ易くなる。また、本実施形態では、防火扉40は、壁体20により支持されている。また、防火扉40の上下方向Zの寸法は、開口部21の上下方向Zの寸法より大きい。また、防火扉40の及び並び方向Yの寸法は、開口部21の及び並び方向Yの寸法より大きい。プランジャ機構47は、
図1及び
図4では省略されている。
【0023】
本実施形態では、切欠き部45は、並び方向Yに平行な帯状に形成されている。
図2に示すように、切欠き部45の上下方向Zの幅D2は、第1レール体31及び第2レール体32の上面と凹溝33の天面との上下方向Zの距離D1よりも大きく設定されている。また、切欠き部45の上下方向Zの幅D2は、第1レール体31及び第2レール体32の上面と第1レール体31及び第2レール体32の下面との上下方向Zの距離D3よりも小さく設定されている。また、凹溝33の天面は、水平方向視で給電線18よりも上側に位置している。
【0024】
図4に示すように、本実施形態では、補助扉50は、防火扉40とは異なる方向に移動することで開放姿勢P21から閉鎖姿勢P22となるように構成されている。また、補助扉50は、閉鎖姿勢P22で切欠き部45における第1レール体31と第2レール体32との並び方向Yの間の領域を閉鎖するように構成されている。
図2は、補助扉50が開放姿勢P21の状態を示し、
図3は、補助扉50が閉鎖姿勢P22の状態を示している。
図4は、開放姿勢P21の補助扉50を実線で示し、閉鎖姿勢P22の補助扉50を二点鎖線で示している。
【0025】
本実施形態では、補助扉50は、壁体20の壁面及び並び方向Yに沿うように配置された揺動軸心C1回りに揺動するように構成されている。また、補助扉50が走行方向Xに沿う姿勢が開放姿勢P21であり、補助扉50が壁体20の壁面に沿う姿勢が閉鎖姿勢P22である。本実施形態では、補助扉50は、壁体20により支持されている。
【0026】
図4に示すように、本実施形態では、補助扉50は、基端部51に揺動軸心C1が配置され、閉鎖姿勢P22において基端部51よりも先端部53が防火扉40に近くなるように基端部51と先端部53との間に屈曲部52を有している。また、補助扉50の先端部53が、閉鎖姿勢P22で切欠き部45における第1レール体31と第2レール体32との並び方向Yの間の領域を閉鎖するように構成されている。このようにすれば、揺動軸心C1が防火扉40から離れていても防火扉40と案内レール30との隙間を少なくすることができる。
【0027】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、搬送設備10は防火扉40を少なくとも閉じる第1駆動装置61と、補助扉50を少なくとも閉じる第2駆動装置62を備えている。第2駆動装置62は、第1駆動装置61が防火扉40を閉鎖位置P12とすると同時に、又は、閉鎖位置P12とした後に補助扉50を閉鎖姿勢P22とする。第1駆動装置61及び第2駆動装置62は、それぞれ蓄電池を備えていてもよい。第1駆動装置61及び第2駆動装置62の例としては、電動機、エアシリンダ、油圧装置等が挙げられる。第1駆動装置61及び第2駆動装置62は、
図1及び
図4では省略されている。
【0028】
図5は、補助扉50の下部の斜視拡大図である。本実施形態では、案内レール30、防火扉40、及び、補助扉50の少なくともいずれかに、火災の熱により膨張する断熱材70が取り付けられている。断熱材70は、膨張した状態で、防火扉40と案内レール30との隙間、防火扉40と補助扉50との隙間、及び、補助扉50と案内レール30との隙間の少なくともいずれかを埋めるように配置されている。例えば、断熱材70は、防火扉40及び補助扉50に取り付けられ、防火扉40と案内レール30との隙間、防火扉40と補助扉50との隙間、及び、補助扉50と案内レール30との隙間を埋めるように配置される。断熱材70の材料の例としては、エポキシ系、ブチル系、シリコーン系等の合成樹脂やゴム等が挙げられる。断熱材70は、例えば温度200℃以上で上記の隙間を埋めるように構成されている。また、断熱材70は、例えば温度100℃以下では上記の隙間を埋めないように構成されている。
【0029】
本実施形態では、補助扉50は、第1レール体31の上面と防火扉40との隙間、及び、第2レール体32の上面と防火扉40との隙間を埋めるように配置された断熱材70を支持する支持部材55を備えている。支持部材55は、閉鎖姿勢P22における補助扉50の基端部51に対し上下方向Zの位置を変更できるように構成されている。図示の例では、支持部材55の上下方向Zの位置は、ボルト66と長穴67とにより調整される。
【0030】
本実施形態では、補助扉50には、第1レール体31における並び方向Yの第2レール体32側の側面と補助扉50との隙間、を埋めるように配置された断熱材70が取り付けられている。また、補助扉50には、第2レール体32における並び方向Yの第1レール体31側の側面と補助扉50との隙間を埋めるように配置された断熱材70が取り付けられている。
図5に示す例では、これらの断熱材70は、補助扉50の先端部53に取り付けられている。
【0031】
上述の搬送設備10によれば、第1レール体31及び第2レール体32の搬送車11が走行する走行面35を、走行方向Xに切れ目なく連続させることが可能となる。このため、振動を少なく搬送する必要がある搬送物W、例えば精密部品等を搬送する搬送設備10に好適に用いることができる。また、走行面35が連続することにより搬送車11の摩耗を少なく抑えられるので、例えば、搬送設備10が設置された施設内の環境が摩耗粉により悪化することを抑制できる。
【0032】
〔その他の実施形態〕
次に、搬送設備10のその他の実施形態について説明する。
【0033】
(1)上記の実施形態では、第1レール体31と第2レール体32とが水平方向に並ぶ構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、第1レール体31と第2レール体32とが水平方向に対して傾斜して並んでいてもよい。
【0034】
(2)上記の実施形態では、防火扉40及び補助扉50が壁体20により支持されている構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、防火扉40が案内レール30により支持されていてもよい。また、例えば、補助扉50が案内レール30又は防火扉40により支持されていてもよい。
【0035】
(3)上記の実施形態では、搬送設備10が防火扉40と共に開口部21を閉鎖する補助扉50を備える構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、搬送設備10が補助扉50を備えていなくてもよい。また、補助扉50が、上下方向Zに沿うように配置された揺動軸心C1回りに揺動するように構成されていてもよいし、壁体20の壁面に沿って下側に移動することで開放姿勢P21から閉鎖姿勢P22となるように構成されていてもよい。
【0036】
(4)上記の実施形態では、第1レール体31及び第2レール体32のそれぞれにおける凹溝33が形成された部分が、第1レール体31及び第2レール体32の他の部分に比べて耐熱性の高い材料である構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、凹溝33が形成された部分が他の部分と同じ耐熱性の材料であってもよい。また、第1レール体31及び第2レール体32が、凹溝33を備えていなくてもよい。また、第1レール体31及び第2レール体32が上下方向Zに沿う断面で切断され、走行面35が走行方向Xにおける凹溝33又は防火扉40の前後において不連続となる構成であってもよい。
【0037】
(5)上記の実施形態では、切欠き部45が並び方向Yに平行な帯状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、切欠き部45が楕円の半円形状に形成されていてもよい。また、切欠き部45の上下方向Zの幅が案内レール30の上下方向Zの幅よりも大きく設定されていてもよい。
【0038】
(6)上記の実施形態では、案内レール30、防火扉40、及び、補助扉50の少なくともいずれかに、火災の熱により膨張する断熱材70が取り付けられている構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、断熱材70が案内レール30、防火扉40、又は、補助扉50に取り付けられていなくてもよい。
【0039】
(7)上記の実施形態では、搬送設備10がローラ機構37及びプランジャ機構47を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、搬送設備10がローラ機構37及びプランジャ機構47を備えていなくてもよい。また、例えば、プランジャ機構47が走行方向Xのいずれか一方からプランジャ47aにより防火扉40を押圧する構成であってもよい。
【0040】
(8)上記の実施形態では、搬送設備10が第1駆動装置61と第2駆動装置62とを備えている構成を例として説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、例えば、搬送設備10が第1駆動装置61と第2駆動装置62を備えず、停電時に重力等で防火扉40及び補助扉50が閉じる構成であってもよい。また、第1駆動装置61が防火扉40を開閉する装置であり、第2駆動装置62が補助扉50を開閉する装置であってもよい。
【0041】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0042】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した搬送設備について説明する。
【0043】
本開示に係る搬送設備は、壁体に形成された開口部を通る走行経路に沿って配置され、搬送車の走行を案内する案内レールと、前記開口部を開閉する防火扉と、を備えた搬送設備であって、前記案内レールは、水平方向に離間して設置された第1レール体及び第2レール体を備え、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、前記第1レール体と前記第2レール体とが並ぶ方向を並び方向とし、前記並び方向の一方側を並び方向第1側とし、前記並び方向の他方側を並び方向第2側として、前記防火扉は、前記開口部を開放した状態となる開放位置から、前記開口部を閉鎖する場合に、前記壁体の壁面に沿って前記並び方向第1側へ向かって閉鎖位置まで移動するように構成され、前記防火扉は、前記閉鎖位置に配置された状態で、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して上側の領域を閉鎖する上側閉鎖部と、前記開口部における前記第1レール体及び前記第2レール体に対して下側の領域を閉鎖する下側閉鎖部と、前記第1レール体及び前記第2レール体に対して前記並び方向第2側に配置されて前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部とを上下方向に接続する接続部と、前記上側閉鎖部と前記下側閉鎖部と前記接続部とに囲まれて形成された切欠き部と、を備え、前記切欠き部は、前記走行方向に貫通していると共に前記並び方向第1側が開放され、前記防火扉が前記開放位置から前記閉鎖位置まで移動する間、前記防火扉と前記第1レール体及び前記第2レール体とが干渉しないように形成されている。
【0044】
本構成によれば、案内レールが水平方向に離間して設置された第1レール体及び第2レール体を備える場合において、防火扉を閉鎖位置に配置した状態で、第1レール体及び第2レール体に対して上側及び下側の領域と第1レール体及び第2レール体に対して並び方向第2側の領域とを防火扉により閉鎖することができる。また、第1レール体及び第2レール体の搬送車が走行する走行面を、走行方向に切れ目なく連続させることが可能となる。従って、搬送車を走行させる際における搬送車の振動を少なく抑え易い。また、防火扉の切欠き部は並び方向第1側が開放され、防火扉が移動中に第1レール体及び第2レール体と干渉しないように形成されているため、防火扉の閉鎖を適切に行うことができる。また、防火扉は、壁体の壁面に沿って第1レール体及び第2レール体の並び方向に移動する構成であるため、第1レール体及び第2レール体と防火扉との干渉を回避しつつ、防火扉の移動方向に直交する方向の切欠き部の幅を小さく抑え易い。よって、防火扉と案内レールとの隙間を小さく抑え易い。
【0045】
一態様として、前記第1レール体及び前記第2レール体の上面が、前記搬送車の車輪が走行する走行面とされ、前記第1レール体及び前記第2レール体のそれぞれは、前記走行面よりも下側であって上下方向視で前記閉鎖位置の前記防火扉と重複する領域に、前記並び方向に貫通すると共に下側に開放された凹溝を備え、前記防火扉が前記閉鎖位置に配置された状態で、前記下側閉鎖部の一部が、前記凹溝の中に配置される、と好適である。
【0046】
本構成によれば、下側閉鎖部の一部を走行方向視で第1レール体及び第2レール体と重複する位置に配置することができるため、防火扉の切欠き部の上下方向の幅を小さく抑え易い。よって、防火扉と案内レールとの隙間を更に小さく抑え易い。
【0047】
一態様として、前記切欠き部は、前記並び方向に平行な帯状に形成され、前記切欠き部の上下方向の幅は、前記第1レール体及び前記第2レール体の上面と前記凹溝の天面との上下方向の距離よりも大きく、前記第1レール体及び前記第2レール体の上面と前記第1レール体及び前記第2レール体の下面との上下方向の距離よりも小さく設定されている、と好適である。
【0048】
本構成によれば、防火扉の切欠き部の上下方向の幅を最小限に抑え易い。よって、防火扉と案内レールとの隙間を小さく抑え易い。
【0049】
一態様として、前記第1レール体及び前記第2レール体のそれぞれにおける前記凹溝が形成された部分が、前記第1レール体及び前記第2レール体の他の部分に比べて耐熱性の高い材料により構成されている、と好適である。
【0050】
第1レール体及び第2レール体における凹溝が形成された部分は上下方向の肉厚が小さくなっているため、レール体の全体を同じ材料で構成した場合、凹溝が形成された部分において火災の熱による融解が早く生じやすい。本構成によれば、凹溝が形成された部分が、他の部分に比べて耐熱性の高い材料により構成されているため、凹溝が形成された部分において火災の熱による融解が早く生じることを回避しやすい。
【0051】
一態様として、前記防火扉と共に前記開口部を閉鎖する補助扉を更に備え、前記補助扉は、前記防火扉とは異なる方向に移動することで開放姿勢から閉鎖姿勢となり、前記閉鎖姿勢で前記切欠き部における前記第1レール体と前記第2レール体との前記並び方向の間の領域を閉鎖するように構成されている、と好適である。
【0052】
本構成によれば、補助扉により、防火扉の切欠き部における第1レール体と第2レール体との並び方向の間の領域を閉鎖することができるため、防火扉と案内レールとの隙間を少なくすることができる。
【0053】
一態様として、前記補助扉は、前記壁体の壁面及び前記並び方向に沿うように配置された揺動軸心回りに揺動するように構成され、前記補助扉が前記走行方向に沿う姿勢が前記開放姿勢であり、前記補助扉が前記壁体の壁面に沿う姿勢が前記閉鎖姿勢である、と好適である。
【0054】
本構成によれば、開放姿勢では搬送車の走行の妨げになり難く、閉鎖姿勢では防火扉の切欠き部における第1レール体と第2レール体との並び方向の間の領域を閉鎖できるような補助扉の構成を、適切に実現することができる。
【0055】
一態様として、前記案内レール、前記防火扉、及び、前記補助扉の少なくともいずれかに、火災の熱により膨張する断熱材が取り付けられ、前記断熱材は、膨張した状態で、前記防火扉と前記案内レールとの隙間、前記防火扉と前記補助扉との隙間、及び、前記補助扉と前記案内レールとの隙間の少なくともいずれかを埋めるように配置されている、と好適である。
【0056】
本構成によれば、防火扉と案内レールとの間、及び、防火扉と補助扉との間、及び、補助扉と案内レールとの間に隙間が生じる場合であっても、これらの隙間の少なくとも一部を、火災の熱により膨張する断熱材により埋めることができる。従って、防火機能を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 :搬送設備
11 :搬送車
12 :車輪
20 :壁体
21 :開口部
30 :案内レール
31 :第1レール体
32 :第2レール体
33 :凹溝
35 :走行面
40 :防火扉
41 :上側閉鎖部
42 :下側閉鎖部
43 :接続部
45 :切欠き部
50 :補助扉
70 :断熱材