(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127511
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】分光装置および試料分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036707
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 寛一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】河野 欣
(72)【発明者】
【氏名】石井 格
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅之
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043AA06
2G043BA16
2G043BA17
2G043EA01
2G043FA01
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA09
2G043JA01
2G043NA05
2G043NA06
(57)【要約】
【課題】励起光を試料に照射しながら励起光の波長を連続的に変化させる分光装置および試料分析システムを提供する。
【解決手段】試料分析システムは、光源32と、光源32からの光を散乱させる励起用散乱部36と、励起用散乱部36によって散乱された励起光を通過させる励起用通過部38と、励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料90に照射することで、蛍光を発生させる走査部40と、蛍光を散乱させる蛍光用散乱部48と、蛍光用散乱部48によって散乱された分析用蛍光を通過させる蛍光用通過部50と、分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する受光素子52と、励起用散乱部36を駆動させることで、励起用通過部38を通過する励起光を変更することにより、走査部40にて反射される励起光の波長を変更する励起用変更部と、を有する分光装置30と、分析用蛍光の強度に基づいて、試料の種類を識別する分析部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を有する光を発する光源(32)と、
前記光源からの光を散乱させる励起用散乱部(36)と、
前記励起用散乱部によって散乱された光のうち一部の光である励起光を通過させる励起用通過部(38)と、
前記励起用通過部を通過した前記励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料(90)に照射することで、前記試料が発する光である蛍光を発生させる走査部(40)と、
前記蛍光を散乱させる蛍光用散乱部(48)と、
前記蛍光用散乱部によって散乱された前記蛍光のうち一部である分析用蛍光を通過させる蛍光用通過部(50)と、
前記蛍光用通過部を通過した前記分析用蛍光を受光し、前記分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する受光素子(52)と、
前記励起用散乱部を駆動させることで、前記励起用通過部を通過する前記励起光を変更することにより、前記走査部にて反射される前記励起光の波長を変更する励起用変更部(S206)と、
を備える分光装置。
【請求項2】
前記走査部を駆動させることで、前記反射光の照射位置を変更する走査用変更部(S202)をさらに備える請求項1に記載の分光装置。
【請求項3】
前記走査部は、
走査用半導体基板(400)と、
前記走査用半導体基板に形成されており、前記励起光を反射するミラー(402)と、
電力が供給されると、前記走査用半導体基板を駆動させる走査用駆動部(404)と、
を有し、
前記走査用変更部は、前記走査用駆動部に供給される電力を制御することにより、前記走査部の駆動を制御する請求項2に記載の分光装置。
【請求項4】
前記蛍光用散乱部を駆動させることで、前記蛍光用通過部を通過する前記分析用蛍光を変更することにより、前記受光素子に受光される前記分析用蛍光の波長を変更する蛍光用変更部(S210)をさらに備える請求項1または2に記載の分光装置。
【請求項5】
前記蛍光用散乱部は、
蛍光用半導体基板(480)と、
前記蛍光用半導体基板に形成されており、凹凸により前記光源からの光を散乱させる蛍光用凹凸部(482)と、
電力が供給されると、前記蛍光用半導体基板を駆動させる蛍光用駆動部(484)と、
を有し、
前記蛍光用変更部は、前記蛍光用駆動部に供給される電力を制御することにより、前記蛍光用散乱部の駆動を制御する請求項4に記載の分光装置。
【請求項6】
前記励起用散乱部は、
励起用半導体基板(360)と、
前記励起用半導体基板に形成されており、凹凸により前記光源からの光を散乱させる励起用凹凸部(362)と、
電力が供給されると、前記励起用半導体基板を駆動させる励起用駆動部(364)と、
を有し、
前記励起用変更部は、前記励起用駆動部に供給される電力を制御することにより、前記励起用散乱部の駆動を制御する請求項1または2に記載の分光装置。
【請求項7】
前記分光装置は、前記光源からの光を絞り、絞った光を前記励起用散乱部に照射する励起用絞り部(34)をさらに備え、
前記励起用散乱部は、前記励起用絞り部によって絞られた光を散乱させる請求項1または2に記載の分光装置。
【請求項8】
前記分光装置は、前記蛍光を絞り、絞った光を前記蛍光用散乱部に照射する蛍光用絞り部(46)をさらに備え、
前記蛍光用散乱部は、前記蛍光用絞り部によって絞られた光を散乱させる請求項1または2に記載の分光装置。
【請求項9】
複数の波長を有する光を発する光源(32)と、前記光源からの光を散乱させる励起用散乱部(36)と、前記励起用散乱部によって散乱された光のうち一部の光である励起光を通過させる励起用通過部(38)と、前記励起用通過部を通過した前記励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料(90)に照射することで、前記試料が発する光である蛍光を発生させる走査部(40)と、前記蛍光を散乱させる蛍光用散乱部(48)と、前記蛍光用散乱部によって散乱された前記蛍光のうち一部である分析用蛍光を通過させる蛍光用通過部(50)と、前記蛍光用通過部を通過した前記分析用蛍光を受光し、前記分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する受光素子(52)と、前記励起用散乱部を駆動させることで、前記励起用通過部を通過する前記励起光を変更することにより、前記走査部にて反射される前記励起光の波長を変更する励起用変更部(S206)と、を有する分光装置(30)と、
前記分析用蛍光の強度に基づいて、前記試料の種類を識別する分析部(84)と、
を備える試料分析システム。
【請求項10】
前記試料に前記試薬を塗布する塗布装置(20)をさらに備える請求項9に記載の試料分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分光装置および試料分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、複数の照明源と、選択可能な分割モジュールと、分割素子と、を備える光学イメージング装置が知られている。この光学イメージング装置では、第1の波長を有している照明源が使用される場合には、分割モジュールを使用して、第1の分割素子が選択される。これによって、第1の波長の励起光が試料に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された光学イメージング装置では、照明源および分割素子を選択し切り替えることで、励起光の波長が選択され切り替えられる。このため、励起光を試料に照射しながら励起光の波長を連続的に変化させることができない。
【0005】
本開示は、励起光を試料に照射しながら励起光の波長を連続的に変化させる分光装置および試料分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の波長を有する光を発する光源(32)と、光源からの光を散乱させる励起用散乱部(36)と、励起用散乱部によって散乱された光のうち一部の光である励起光を通過させる励起用通過部(38)と、励起用通過部を通過した励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料(90)に照射することで、試料が発する光である蛍光を発生させる走査部(40)と、蛍光を散乱させる蛍光用散乱部(48)と、蛍光用散乱部によって散乱された蛍光のうち一部である分析用蛍光を通過させる蛍光用通過部(50)と、蛍光用通過部を通過した分析用蛍光を受光し、分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する受光素子(52)と、励起用散乱部を駆動させることで、励起用通過部を通過する励起光を変更することにより、走査部にて反射される励起光の波長を変更する励起用変更部(S206)と、を備える分光装置である。
【0007】
また、請求項9に記載の発明は、複数の波長を有する光を発する光源(32)と、光源からの光を散乱させる励起用散乱部(36)と、励起用散乱部によって散乱された光のうち一部の光である励起光を通過させる励起用通過部(38)と、励起用通過部を通過した励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料(90)に照射することで、試料が発する光である蛍光を発生させる走査部(40)と、蛍光を散乱させる蛍光用散乱部(48)と、蛍光用散乱部によって散乱された蛍光のうち一部である分析用蛍光を通過させる蛍光用通過部(50)と、蛍光用通過部を通過した分析用蛍光を受光し、分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する受光素子(52)と、励起用散乱部を駆動させることで、励起用通過部を通過する励起光を変更することにより、走査部にて反射される励起光の波長を変更する励起用変更部(S206)と、を有する分光装置(30)と、分析用蛍光の強度に基づいて、試料の種類を識別する分析部(84)と、を備える試料分析システムである。
【0008】
励起用散乱部が駆動することで、走査部にて反射される励起光の波長が変更される。これにより、励起光が照射されながら励起光の波長が連続的に変化する。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態の分光装置が用いられる試料分析システムの構成図。
【
図6】試料分析システムの塗布制御部の処理を示すフローチャート。
【
図7】試料分析システムの分析部の処理を示すフローチャート。
【
図9】1種の試料による蛍光の波長および光の強度の関係図。
【
図10】2種の試料による蛍光の波長および光の強度の関係図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
本実施形態の分光装置は、試薬が塗布された試料を分析する試料分析システムに用いられる。まず、この試料分析システムについて説明する。
【0013】
図1に示すように、試料分析システム10は、試薬が塗布された試料から発せられる蛍光の強度を分析することにより、試料の種類を識別する。具体的には、試料分析システム10は、塗布装置20、分光装置30および制御装置80を備える。
【0014】
塗布装置20は、
図2に示すような車内や住宅の壁および家具等に付着している試料90に試薬を塗布する。例えば、塗布装置20は、図示しないロボットおよびそのロボットに搭載されたノズルを有する。また、後述の制御装置80により、ロボットが制御される。これにより、ロボットに搭載されたノズルが試料90を含む領域の位置に移動する。さらに、ノズルが試薬を噴射する。このため、試薬が、試料90を含む領域に塗布されることから、試料90に塗布される。なお、試料90は、ウイルス、異物および汚れ等である。また、試薬は、ウイルス、異物および汚れ等を検出するための少なくとも1つのAIE試薬である。さらに、AIEは、Aggregation-Induced Emissionの略である。
【0015】
図1に戻って、分光装置30は、塗布装置20により試薬が塗布された試料90に励起光を照射し、試料90が発する光である蛍光を発生させる。また、分光装置30は、発生した蛍光を受光し、受光した蛍光の強度に応じた信号を後述の制御装置80に出力する。さらに、このとき、分光装置30は、励起光の波長を連続的に変化させる。具体的には、分光装置30は、
図2に示すように、光源32、励起用絞り部34、励起用散乱部36、励起用通過部38、走査部40および励起用集光レンズ42を有する。また、分光装置30は、蛍光用集光レンズ44、蛍光用絞り部46、蛍光用散乱部48、蛍光用通過部50および受光素子52を有する。
【0016】
光源32は、複数の波長を有する光を発し、ここでは、白色の光を発する。例えば、光源32は、重水素放電管、タングステンヨウ素ランプ、キセノンフラッシュランプ、LEDおよびLD等である。なお、LEDは、Light Emitting Diodeの略である。さらに、LDは、Laser Diodeの略である。また、
図2において、光の経路が矢印にて模式的に示されている。
【0017】
励起用絞り部34は、例えば、板状部材で形成されている。さらに、励起用絞り部34は、スリットおよびピンホール等を有する。また、励起用絞り部34のスリットおよびピンホールを、光源32からの光が通過する。これにより、励起用絞り部34は、光源32からの光を絞ることで、ビーム状にする。さらに、励起用絞り部34は、絞った光を後述の励起用散乱部36に照射する。
【0018】
励起用散乱部36は、例えば、MEMS回折格子である。具体的には、励起用散乱部36は、
図3に示すように、励起用半導体基板360、励起用凹凸部362および励起用駆動部364等を含む。なお、MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0019】
励起用半導体基板360は、例えば、シリコン基板である。また、励起用半導体基板360の長さおよび幅は、例えば、1~10mmである。さらに、励起用半導体基板360の厚さは、例えば、0.2~1.0mmである。励起用凹凸部362は、励起用半導体基板360に形成されている。また、励起用凹凸部362は、励起用絞り部34からの光を散乱させる。さらに、励起用凹凸部362の大きさは、試薬に対応する励起光の波長帯に応じて調整される。励起用駆動部364は、印加電圧によるクーロン引力を利用した静電駆動型アクチュエータやマイクロコイルおよび永久磁石の間の相互作用を利用した電磁駆動型アクチュエータ等である。また、励起用駆動部364に電力が供給されると、励起用半導体基板360が駆動する。例えば、励起用半導体基板360が、一方向に延びる軸を中心として回転駆動する。これにより、励起用散乱部36は、一方向に延びる軸を中心として回転駆動する。
【0020】
図2に戻って、励起用通過部38は、例えば、板状部材で形成されている。さらに、励起用通過部38は、スリットおよびピンホール等を有する。また、励起用通過部38のスリットおよびピンホールを、励起用散乱部36によって散乱された光のうち一部の光である励起光が通過する。さらに、励起用通過部38は、励起光を絞ることで、ビーム状にする。また、励起用通過部38は、絞った励起光を後述の走査部40に照射する。
【0021】
走査部40は、例えば、MEMSスキャナである。具体的には、走査部40は、
図4に示すように、走査用半導体基板400、ミラー402および走査用駆動部404等を含む。
【0022】
走査用半導体基板400は、例えば、シリコン基板である。また、走査用半導体基板400の長さおよび幅は、例えば、1~10mmである。さらに、走査用半導体基板400の厚さは、例えば、0.2~1.0mmである。ミラー402は、走査用半導体基板400に形成されている。また、ミラー402にて、励起用通過部38を通過した励起光が反射される。さらに、ミラー402は、反射光を、後述の励起用集光レンズ42に照射する。走査用駆動部404は、静電駆動型アクチュエータや電磁駆動型アクチュエータ等である。また、走査用駆動部404に電力が供給されると、走査用半導体基板400が駆動する。例えば、走査用半導体基板400が、一方向に延びる軸および一方向と直交する方向に延びる軸を中心として回転駆動する。これにより、走査部40は、一方向に延びる軸および一方向と直交する方向に延びる軸を中心として回転駆動する。
【0023】
図2に戻って、励起用集光レンズ42は、走査部40からの反射光、すなわち、励起光を集める。さらに、励起用集光レンズ42は、集めた励起光を、試薬が塗布された試料90に照射する。これにより、試料90が発する光であって、試料90の種類に応じた固有の波長を有する蛍光が発生する。また、励起用集光レンズ42により、走査部40にて反射された励起光が、励起用集光レンズ42がない場合と比較して、試薬が塗布された試料90にピンポイントで照射されやすくなっている。
【0024】
蛍光用集光レンズ44は、蛍光を集める。さらに、蛍光用集光レンズ44は、集めた蛍光を、後述の蛍光用絞り部46に照射する。また、蛍光用集光レンズ44により、蛍光が、蛍光用集光レンズ44がない場合と比較して、後述の蛍光用絞り部46にピンポイントで照射されやすくなっている。
【0025】
蛍光用絞り部46は、例えば、板状部材で形成されている。さらに、蛍光用絞り部46は、スリットおよびピンホール等を有する。また、蛍光用絞り部46のスリットおよびピンホールを、蛍光が通過する。これにより、蛍光用絞り部46は、蛍光を絞ることで、ビーム状にする。さらに、蛍光用絞り部46は、絞った蛍光を後述の蛍光用散乱部48に照射する。
【0026】
蛍光用散乱部48は、例えば、MEMS回折格子である。具体的には、蛍光用散乱部48は、
図5に示すように、蛍光用半導体基板480、蛍光用凹凸部482および蛍光用駆動部484等を含む。
【0027】
蛍光用半導体基板480は、例えば、シリコン基板である。また、蛍光用半導体基板480の長さおよび幅は、例えば、1~10mmである。さらに、蛍光用半導体基板480の厚さは、例えば、0.2~1.0mmである。蛍光用凹凸部482は、蛍光用半導体基板480に形成されている。また、蛍光用凹凸部482は、蛍光用絞り部46からの蛍光を散乱させる。さらに、蛍光用凹凸部482の大きさは、試薬と対応する蛍光の波長帯に応じて調整される。蛍光用駆動部484は、静電駆動型アクチュエータや電磁駆動型アクチュエータ等である。また、蛍光用駆動部484に電力が供給されると、蛍光用半導体基板480が駆動する。例えば、蛍光用半導体基板480が、一方向に延びる軸を中心として回転駆動する。これにより、蛍光用散乱部48は、一方向に延びる軸を中心として回転駆動する。
【0028】
図2に戻って、蛍光用通過部50は、例えば、板状部材で形成されている。さらに、蛍光用通過部50は、スリットおよびピンホール等を有する。また、蛍光用通過部50のスリットおよびピンホールを、蛍光用散乱部48によって散乱された蛍光のうち一部である分析用蛍光が通過する。さらに、蛍光用通過部50は、分析用蛍光を絞ることで、ビーム状にする。また、蛍光用通過部50は、絞った分析用蛍光を後述の受光素子52に照射する。
【0029】
受光素子52は、例えば、SPADである。さらに、受光素子52は、蛍光用通過部50を通過した分析用蛍光を受光する。また、受光素子52は、分析用蛍光の強度に応じた信号、例えば、電圧を後述の制御装置80に出力する。なお、SPADは、Single Photon Avalanche Diodeの略である。
【0030】
図1に戻って、制御装置80は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、フラッシュメモリ、RAM、I/O、駆動回路、A/Dコンバータおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。さらに、制御装置80は、塗布制御部82および分析部84を機能ブロックとして有する。
【0031】
塗布制御部82は、塗布制御部82のROMに記憶されているプログラムを実行することにより、図示しないカメラによって撮像された試料90の画像に基づいて、塗布装置20の図示しないロボットおよびノズルを制御する。これにより、塗布制御部82は、塗布装置20に対して、試薬を試料90に塗布させる。また、塗布制御部82は、試薬を試料90に塗布したことを示す信号を、後述の分析部84に出力する。
【0032】
分析部84は、分析部84のROMに記憶されているプログラムを実行することにより、塗布制御部82からの信号および受光素子52からの信号に基づいて、試料90の種類を識別する。
【0033】
以上のように、試料分析システム10は、構成されている。次に、塗布制御部82のプログラムの実行による塗布装置20の制御について、
図6のフローチャートを参照して説明する。なお、塗布制御部82のプログラムは、例えば、試料分析システム10のユーザによる起動操作がされると、実行される。
【0034】
ステップS100において、塗布制御部82は、試料90が撮像された図示しないカメラの画像をカメラから取得する。なお、試料90の撮像は、例えば、試料分析システム10のユーザにより行われる。
【0035】
続いて、ステップS102において、塗布制御部82は、図示しないカメラがステレオカメラであれば、ステップS100にて取得した試料90の撮像画像と三角測量とを用いることにより、カメラに対する試料90を含む領域の位置を算出する。または、塗布制御部82は、図示しないカメラが単眼カメラであれば、ステップS100にて取得した試料90の撮像画像と機械学習とを用いることにより、カメラに対する試料90を含む領域の位置を算出する。また、塗布制御部82は、この算出したカメラに対する試料90を含む領域の位置に応じた信号を分析部84に出力する。さらに、塗布制御部82は、図示しない位置センサ等により検出されたカメラに対する塗布装置20のノズルの位置を図示しない位置センサ等から取得する。また、塗布制御部82は、上記算出したカメラに対する試料90を含む領域の位置と、上記取得したカメラに対する塗布装置20のノズルの位置とに基づいて、ノズルに対する試料90を含む領域の位置を算出する。
【0036】
続いて、ステップS104において、塗布制御部82は、図示しないロボットを制御する。これにより、塗布制御部82は、ステップS102にて算出したノズルに対する試料90を含む領域の位置に、ノズルを移動させる。このため、ノズルが試料90を含む領域に近づく。さらに、塗布制御部82は、ノズルの図示しない電磁バルブに電力を供給することで、電磁バルブを開ける。これにより、試薬がノズルから噴射される。したがって、試薬が、試料90を含む領域に塗布されることから、試料90に塗布される。また、塗布制御部82は、塗布した試薬の情報とともに、試薬を試料90に塗布したことを示す信号を分析部84に出力する。その後、塗布制御部82の処理は、終了する。
【0037】
以上のように、塗布制御部82は、塗布装置20を制御する。次に、分析部84のプログラムの実行による試料90の種類の識別について、
図7のフローチャートを参照して説明する。なお、分析部84のプログラムは、例えば、分析部84が試薬を試料90に塗布したことを示す信号を塗布制御部82から取得したとき、実行される。
【0038】
ステップS200において、分析部84は、各種情報を取得する。具体的には、分析部84は、塗布された試薬と対応する励起光および蛍光の波長帯等の情報を塗布制御部82から取得する。また、分析部84は、試薬が塗布された試料90の撮像画像をカメラまたは塗布制御部82から取得する。さらに、分析部84は、カメラに対する試料90を含む領域の位置を、塗布制御部82から取得する。また、分析部84は、図示しない位置センサ等により検出されたカメラに対する走査部40の位置を図示しない位置センサ等から取得する。さらに、分析部84は、これらの取得したカメラに対する試料90を含む領域の位置と、カメラに対する走査部40の位置とに基づいて、走査部40に対する試料90を含む領域の位置を算出する。
【0039】
続いて、ステップS202において、分析部84は、走査部40の駆動を制御する。具体的には、分析部84は、ステップS200にて算出した走査部40に対する試料90を含む領域の位置と、マップとを用いることにより、走査部40に供給する電力を決定する。また、分析部84は、この決定した電力を走査部40に供給する。これにより、走査部40が回転駆動する。このため、
図8に示すように、走査部40にて反射される光が励起用集光レンズ42を通過して試薬が塗布された試料90に、撮像画像の1画素とその周辺画素分照射される。なお、走査部40に供給する電力を決定するためのマップは、走査部40にて反射される光が励起用集光レンズ42を通過して、試薬が塗布された試料90に照射されるように、実験やシミュレーション等によって設定される。さらに、
図8において、撮像画像がImで示されている。
【0040】
また、後述するように、撮像画像の1画素とその周辺画素分の試料90に対して蛍光分析が完了した後では、分析部84は、走査部40に供給する電力を変更する。これにより、走査部40が回転駆動する。このため、例えば、走査部40にて反射される光がX方向に1画素とその周辺画素分ずれて試料90に照射される。さらに、走査部40にて反射される光が撮像画像のX方向の一端から他端まで照射された後、走査部40にて反射される光がY方向に1画素とその周辺画素分ずれて、X方向の一端から順に、試料90に照射される。これらの処理が、スキャン数Nsが全スキャン数Ns_pとなるまで繰り返される。なお、X方向は、撮像画像の一方向である。また、Y方向は、X方向と直交する方向である。さらに、スキャン数Nsは、走査部40を駆動させた回数に対応する。また、全スキャン数Ns_pは、走査部40にて反射される光が撮像画像の全画素数分照射されるまでのスキャン数Nsである。例えば、撮像画像の全画素数が1920×1080であるとし、走査部40が駆動する毎に走査部40にて反射される光が9画素分照射されるとすると、全スキャン数Ns_pは、1920×1080÷9=230400である。
【0041】
図7のフローチャートに戻り、続いて、ステップS204において、ステップS202にて走査部40が回転駆動したことから、分析部84は、前回スキャン数Ns(n-1)に1を加算することにより、今回のスキャン数Ns(n)を算出する。なお、初期スキャン数Ns(0)は、例えば、ゼロである。
【0042】
続いて、ステップS206において、分析部84は、励起用散乱部36の駆動を制御する。具体的には、分析部84は、ステップS200にて取得した試薬と対応する励起光の波長帯と、マップとを用いることにより、励起用散乱部36に供給する電力を決定する。また、分析部84は、この決定した電力を励起用散乱部36に供給する。これにより、
図2に示すように、励起用散乱部36が回転駆動する。このため、励起用通過部38を通過する励起光の波長が変更される。また、励起用通過部38を通過した励起光は、走査部40にて反射される。さらに、走査部40にて反射された光は、励起用集光レンズ42を通過して、試薬が塗布された試料90に照射される。このとき、試料90の種類に応じた固有の波長を有する蛍光が発生する。また、この発生した蛍光が、蛍光用集光レンズ44および蛍光用絞り部46を通過する。さらに、蛍光用集光レンズ44および蛍光用絞り部46を通過した蛍光は、蛍光用散乱部48にて散乱される。また、これらの処理が、励起回数Neが全励起回数Ne_pとなるまで繰り返される。これにより、試薬が塗布された試料90には、各試薬と対応する各波長の励起光が照射される。なお、励起用散乱部36に供給する電力を決定するためのマップは、励起用散乱部36によって散乱された光のうち一部の光であるとともに試薬と対応する波長を有する励起光が励起用通過部38を通過するように、実験やシミュレーション等によって設定される。また、励起回数Neは、励起用散乱部36を駆動させた回数に対応する。さらに、全励起回数Ne_pは、試薬と対応する波長の数に相当する。
【0043】
図7のフローチャートに戻り、続いて、ステップS208において、ステップS206にて励起用散乱部36が駆動したことから、分析部84は、前回励起回数Ne(n-1)に1を加算することにより、今回の励起回数Ne(n)を算出する。なお、初期励起回数Ne(0)は、例えば、ゼロである。
【0044】
続いて、ステップS210において、分析部84は、蛍光用散乱部48の駆動を制御する。具体的には、分析部84は、ステップS200にて取得した試薬と対応する蛍光の波長帯と、マップとを用いることにより、蛍光用散乱部48に供給する電力を決定する。また、分析部84は、この決定した電力を蛍光用散乱部48に供給する。これにより、
図2に示すように、蛍光用散乱部48が回転駆動する。このため、蛍光用通過部50を通過する分析用蛍光の波長が変更される。また、蛍光用通過部50を通過した分析用蛍光は、受光素子52にて受光される。さらに、受光素子52は、受光した分析用蛍光の強度に応じた信号を分析部84に出力する。また、分析部84は、分析用蛍光の強度に応じた信号を受光素子52から取得する。
【0045】
続いて、ステップS212において、分析部84は、ステップS210にて取得した分析用蛍光の強度を分析することにより、試料90の種類を識別する。具体的には、分析部84は、ステップS210にて取得した分析用蛍光の強度がピーク値であるか否かを判定する。分析用蛍光の強度がピーク値でないとき、試料90を特定できないため、分析部84の処理は、ステップS214に移行する。また、分析用蛍光の強度がピーク値であるとき、このときの波長が試料90による固有の蛍光の波長である。このため、このとき、分析部84は、ピーク値に対応する波長と、マップとを用いることにより、試料90の種類を識別する。さらに、ステップS210からステップS212までの処理が、蛍光回数Nfが全蛍光回数Nf_pとなるまで繰り返されることで、
図9および
図10に示すような分析用波長に対する光の強度の波形が生成される。なお、試料90の種類を識別するためのマップは、分析用蛍光の強度のピーク値から試料90の種類が識別されるように、実験やシミュレーション等によって設定される。また、蛍光回数Nfは、蛍光用散乱部48を駆動させた回数に対応する。さらに、全蛍光回数Nf_pは、試薬と対応する蛍光の波長帯を、蛍光用通過部50を通過する分析用蛍光の波長帯で除算した値に対応する。また、試薬と対応する蛍光の波長帯は、
図7ではEmで表されており、例えば、400~600nmである。さらに、蛍光用通過部50を通過する分析用蛍光の波長帯は、分析用蛍光の強度を検出する分解能Rに対応しており、例えば、1nmである。また、
図9は、1画素とその周辺画素中に1種類の試料90が識別された場合である。さらに、
図9では、1種類の試料90に対応するピーク値となるときの波長がλとして示されている。また、
図10は、1画素とその周辺画素中に2種類の試料90が識別された場合である。さらに、
図10では、1種類の試料90に対応するピーク値となるときの波長がλ1として示されている。また、もう1種類の試料90に対応するピーク値となるときの波長がλ2として示されている。
【0046】
続いて、ステップS214において、ステップS210にて蛍光用散乱部48が回転駆動したことから、分析部84は、前回蛍光回数Nf(n-1)に1を加算することにより、今回の蛍光回数Nf(n)を算出する。なお、初期蛍光回数Nf(0)は、例えば、ゼロである。
【0047】
続いて、ステップS216において、分析部84は、ステップS214にて算出した今回の蛍光回数Nf(n)が全蛍光回数Nf_pであるか否かを判定する。これにより、分析部84は、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された1つの試薬に対して蛍光分析が完了したか否かを判定する。
【0048】
そして、今回の蛍光回数Nf(n)が全蛍光回数Nf_pでないとき、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された1つの試薬に対して蛍光分析が完了していないため、分析部84の処理は、ステップS210に戻る。分析部84の処理がステップS210に戻ると、今回の蛍光回数Nf(n)が全蛍光回数Nf_pとなるまで、ステップS210からステップS212までの処理が繰り返される。さらに、今回の蛍光回数Nf(n)が全蛍光回数Nf_pであるとき、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された1つの試薬に対して蛍光分析が完了したため、分析部84の処理は、ステップS218に移行する。
【0049】
ステップS216に続くステップS218において、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された1つの試薬に対して蛍光分析が完了したため、分析部84は、今回の蛍光回数Nf(n)をリセットする。例えば、分析部84は、今回の蛍光回数Nf(n)をゼロにする。これにより、その画素の試料90に塗布された別種の試薬に対して蛍光分析を行うことができる。
【0050】
続いて、ステップS220において、分析部84は、ステップS208にて算出した今回励起回数Ne(n)が全励起回数Ne_pであるか否かを判定する。これにより、分析部84は、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された試薬の全種に対して蛍光分析が完了したか否かを判定する。
【0051】
そして、今回励起回数Ne(n)が全励起回数Ne_pでないとき、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された試薬の全種に対して蛍光分析が完了していないため、分析部84の処理は、ステップS206に戻る。分析部84の処理がステップS206に戻ると、今回励起回数Ne(n)が全励起回数Ne_pとなるまで、ステップS206からステップS218までの処理が繰り返される。さらに、今回励起回数Ne(n)が全励起回数Ne_pであるとき、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された試薬の全種に対して蛍光分析が完了したため、分析部84の処理は、ステップS222に移行する。
【0052】
ステップS220に続くステップS222において、1画素とその周辺画素分の試料90に塗布された試薬の全種に対して蛍光分析が完了したため、分析部84は、今回励起回数Ne(n)をリセットする。例えば、分析部84は、今回励起回数Ne(n)をゼロにする。これにより、蛍光分析を行っていない画素の試料90に対して上記蛍光分析を行うことができる。
【0053】
続いて、ステップS224において、分析部84は、ステップS204にて算出した今回スキャン数Ns(n)が全スキャン数Ns_pであるか否かを判定する。これにより、分析部84は、全画素分の試料90に対して蛍光分析が完了したか否かを判定する。
【0054】
そして、今回スキャン数Ns(n)が全スキャン数Ns_pでないとき、全画素分の試料90に対して蛍光分析が完了していないため、分析部84の処理は、ステップS202に戻る。このとき、上記したように、ステップS202において、分析部84は、走査部40に供給する電力を変更する。これにより、走査部40が回転駆動する。このため、走査部40にて反射される光が、蛍光分析を行っていない画素の試料90に照射される。また、分析部84の処理がステップS202に戻ると、今回スキャン数Ns(n)が全スキャン数Ns_pとなるまで、ステップS202からステップS222までの処理が繰り返される。
【0055】
さらに、今回スキャン数Ns(n)が全スキャン数Ns_pであるとき、全画素分の試料90に対して蛍光分析が完了したため、分析部84の処理は、終了する。なお、このとき、分析部84は、今回スキャン数Ns(n)をリセットする。例えば、分析部84は、今回スキャン数Ns(n)をゼロにする。これにより、初期化されることから、次回も上記と同様に、分析部84は、試料90の種類の識別をすることができる。
【0056】
以上のように、分析部84は、試料90の種類の識別をする。次に、本実施形態の分光装置30が用いられる試料分析システム10では、励起光が照射されながら励起光の波長が連続的に変化することについて説明する。
【0057】
分光装置30は、光源32と、励起用散乱部36と、励起用通過部38と、走査部40と、蛍光用散乱部48と、蛍光用通過部50と、受光素子52と、を備える。また、試料分析システム10は、分析部84を備える。光源32は、複数の波長を有する光を発する。励起用散乱部36は、光源32からの光を散乱させる。励起用通過部38は、励起用散乱部36によって散乱された光のうち一部の光である励起光を通過させる。走査部40は、励起用通過部38を通過した励起光を反射し、反射光を、試薬が塗布された試料90に照射することで、試料90が発する光である蛍光を発生させる。蛍光用散乱部48は、蛍光を散乱させる。蛍光用通過部50は、蛍光用散乱部48によって散乱された蛍光のうち一部である分析用蛍光を通過させる。受光素子52は、蛍光用通過部50を通過した分析用蛍光を受光し、分析用蛍光の強度に応じた信号を出力する。分析部84は、ステップS206にて、励起用散乱部36を駆動させることで、励起用通過部38を通過する励起光を変更することにより、走査部40にて反射される励起光の波長を変更する励起用変更部としての役割を果たす。
【0058】
励起用散乱部36が駆動することで、走査部40にて反射される励起光の波長が変更される。これにより、励起光が照射されながら励起光の波長が連続的に変化する。
【0059】
また、本実施形態の分光装置30が用いられる試料分析システム10では、以下に記載する効果も奏する。
【0060】
[1]分析部84は、ステップS202にて、走査部40を駆動させることで、反射光の照射位置を変更する走査用変更部としての役割を果たす。
【0061】
これにより、反射光が、試料90に照射されやすくなる。また、試料90以外、例えば、試料90が付着している車内や住宅の壁および家具等に照射することを抑制できる。
【0062】
[2]分析部84は、ステップS210にて、蛍光用散乱部48を駆動させることで、蛍光用通過部50を通過する分析用蛍光を変更することにより、受光素子52にて受光される分析用蛍光の波長を変更する蛍光用変更部としての役割を果たす。
【0063】
蛍光用散乱部48が駆動することで、受光素子52が受光する分析用蛍光の波長が変更される。よって、蛍光が照射されながら蛍光の波長が連続的に変化する。このため、受光素子52は、蛍光の各波長に対応する強度に応じた信号を出力する。したがって、蛍光が有する波長の分析がしやすくなる。
【0064】
[3]励起用散乱部36は、MEMS回折格子であって、励起用半導体基板360と、励起用凹凸部362と、励起用駆動部364とを有する。
【0065】
これにより、励起用散乱部36を、MEMS技術によって形成することができる。このため、励起用散乱部36を小型化することができる。したがって、分光装置30および試料分析システム10を小型化することができる。
【0066】
[4]蛍光用散乱部48は、MEMS回折格子であって、蛍光用半導体基板480と、蛍光用凹凸部482と、蛍光用駆動部484とを有する。
【0067】
これにより、蛍光用散乱部48を、MEMS技術によって形成することができる。このため、蛍光用散乱部48を小型化することができる。よって、分光装置30および試料分析システム10を小型化することができる。
【0068】
[5]走査部40は、MEMSスキャナであって、走査用半導体基板400と、ミラー402と、走査用駆動部404とを有する。
【0069】
これにより、走査部40を、MEMS技術によって形成することができる。このため、走査部40を小型化することができる。したがって、分光装置30および試料分析システム10を小型化することができる。
【0070】
[6]ここで、
図2に示すように、走査部40からの反射光が、試料90が付着している車内や住宅の壁および家具等に照射されると、車内や住宅の壁および家具等による反射光や蛍光が受光素子52にて受光される。このとき、試料90による蛍光が受光素子52にて受光されるため、車内や住宅の壁および家具等による反射光や蛍光は、ノイズとなる。このため、受光素子52から出力される信号の精度が低下する。したがって、分析部84による識別の正確度が低下する。なお、
図2において、試料90が付着している車内や住宅の壁および家具等によるノイズがNbとして示されている。
【0071】
これに対して、本実施形態では、励起用絞り部34が、光源32からの光を絞り、絞った光を励起用散乱部36に照射する。また、励起用散乱部36は、励起用絞り部34によって絞られた光を散乱させる。
【0072】
励起用絞り部34によって、光源32からの光がビーム状になりやすい。これにより、ビーム状の光が励起用散乱部36で散乱される。このため、散乱されたビーム状の励起光が励起用通過部38を通過する。また、励起用通過部38を通過したビーム状の励起光が走査部40にて反射される。さらに、ビーム状の反射光が、試料90に照射される。したがって、励起光が試料90にピンポイントで照射されやすくなる。よって、励起光が車内や住宅の壁および家具等に照射されることが抑制されるため、ノイズが低減する。これにより、受光素子52から出力される信号の精度低下が抑制される。このため、分析部84による識別の正確度低下が抑制される。
【0073】
[7]蛍光用絞り部46は、蛍光を絞り、絞った光を蛍光用散乱部48に照射する。また、蛍光用散乱部48は、蛍光用絞り部46によって絞られた光を散乱させる。
【0074】
蛍光用絞り部46によって、蛍光が蛍光用散乱部48にピンポイントで照射されやすくなる。これにより、蛍光が蛍光用散乱部48以外に照射されることで発生するノイズが抑制される。このため、蛍光用散乱部48から蛍光用通過部50を介して受光素子52にて受光される分析用蛍光の精度低下が抑制される。したがって、受光素子52から出力される信号の精度低下が抑制される。よって、分析部84による識別の正確度低下が抑制される。
【0075】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0076】
本開示に記載の変更部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の変更部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の変更部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0077】
上記実施形態では、励起用散乱部36および蛍光用散乱部48は、MEMS回折格子であるところ、これに限定されない。例えば、励起用散乱部36および蛍光用散乱部48は、光学フィルタ、MEMS技術を用いていない回折格子およびプリズム等であってもよい。なお、これらの場合、モータ等により、励起用散乱部36および蛍光用散乱部48が、一方向に延びる軸を中心として回転駆動する。
【0078】
上記実施形態では、走査部40は、MEMSスキャナであるところ、これに限定されない。例えば、走査部40は、ガルバノミラー等であってもよい。なお、この場合、モータ等により、走査部40が一方向に延びる軸および一方向と直交する方向に延びる軸を中心として回転駆動する。
【0079】
上記実施形態では、励起用散乱部36、走査部40および蛍光用散乱部48は、回転駆動するところ、これに限定されない。例えば、励起用散乱部36、走査部40および蛍光用散乱部48は、揺動駆動等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
32 光源
34 励起用絞り部
36 励起用散乱部
38 励起用通過部
40 走査部
46 蛍光用絞り部
48 蛍光用散乱部
50 蛍光用通過部
52 受光素子
84 分析部