(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127515
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極活物質混合体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240912BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036713
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩▲崎▼ 麻由
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】本発明は、レート特性及びサイクル特性を良好に維持したまま、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の向上を有効に図ることのできる、リチウムイオン二次電池用正極活物質混合体に関する。
【解決手段】式(A):Lif1Mng1Feh1M1
x1PO4で表されるマンガン(Mn)リッチのナノ粒子Aと、式(B):Lif2Mng2Feh2M2
x2PO4で表され、かつ平均粒径が2μm~35μmである鉄(Fe)リッチの造粒体Bとを含み、
ナノ粒子Aと造粒体Bとの質量比(A:B)が85:15~3:97であるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A):
Lif1Mng1Feh1M1
x1PO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f1、g1、h1及びx1は、0<f1≦1.2、0<g1≦1.2、0<h1≦1.2、0≦x1≦0.3、及び1≦g1/h1≦17/3を満たし、かつf1+(Mnの価数)×g1+(Feの価数)×h1+(M1の価数)×x1=3を満たす数を示す。)
で表されるナノ粒子Aと、下記式(B):
Lif2Mng2Feh2M2
x2PO4・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f2、g2、h2及びx2は、0<f2≦1.2、0<g2≦1.2、0<h2≦1.2、0≦x2≦0.3、及びg2/h2<1を満たし、かつf2+(Mnの価数)×g2+(Feの価数)×h2+(M2の価数)×x2=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が2μm~35μmである造粒体Bとを含み、
ナノ粒子Aと造粒体Bとの質量比(A:B)が85:15~3:97であるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【請求項2】
ナノ粒子Aの平均粒径が、10nm~500nmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【請求項3】
ナノ粒子Aが炭素を担持してなり、ナノ粒子A中における炭素の担持量が、0.5質量%~5.0質量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【請求項4】
造粒体Bが炭素を担持してなり、造粒体B中における炭素の担持量が、0.5質量%~5.0質量%である請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【請求項5】
ナノ粒子Aに担持されてなる炭素が、糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料が炭化してなる炭素である請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【請求項6】
造粒体Bに担持されてなる炭素が、糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料が炭化してなる炭素である請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池における優れたレート特性及びサイクル特性を保持しつつ、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度を向上させるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体に関する。
【背景技術】
【0002】
LiMnxFe1-xPO4のような、いわゆるオリビン型構造を有するリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)は、その高い電圧と優れた熱安定性を発現することから、リチウムイオン二次電池の正極材料として有力視されている。その一方、かかるリン酸マンガン鉄リチウムを用いて電極を作製した場合における電極密度や単位体積あたりのエネルギー密度は、層状型岩塩構造を有するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NMC)等の正極材料に比べて未だ不十分であるため、これを改善すべく様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、LiFePO4等のオリビン系正極材料の一次粒子と、その造粒体と、造粒体の一部が解砕された一部解砕造粒体とを含む混合体が開示されており、かかる造粒体の製造及びその造粒体の解砕状態を調製することによって、電極密度の向上を図っている。また特許文献2には、マンガンを多く含みエネルギー密度の高いマンガンリッチリン酸マンガン鉄リチウム粒子と、鉄を多く含みサイクル特性に優れる鉄リッチリン酸マンガン鉄リチウム粒子との造粒体が開示されており、高いエネルギー密度と優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池の実現を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-57034号公報
【特許文献2】特開2021-9838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、造粒体を一部解砕しているため比表面積が増大し、リチウムイオン二次電池に用いた際に電解液との副反応が進行しやすくなり、サイクル特性が低下してしまうおそれがある。また特許文献2に記載の技術であっても、電極密度の向上については何ら検討がなされておらず、依然として改善の余地がある。
【0006】
したがって、本発明は、レート特性及びサイクル特性を良好に維持したまま、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の向上を有効に図ることのできる、リチウムイオン二次電池用正極活物質混合体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、マンガン(Mn)リッチのLMFPナノ粒子と鉄(Fe)リッチのLMFP造粒体とが特定の質量比にて混合してなることにより、リチウム二次電池における優れたレート特性及びサイクル特性を保持しつつ、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度を向上させることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(A):
Lif1Mng1Feh1M1
x1PO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f1、g1、h1及びx1は、0<f1≦1.2、0<g1≦1.2、0<h1≦1.2、0≦x1≦0.3、及び1≦g1/h1≦17/3を満たし、かつf1+(Mnの価数)×g1+(Feの価数)×h1+(M1の価数)×x1=3を満たす数を示す。)
で表されるナノ粒子Aと、下記式(B):
Lif2Mng2Feh2M2
x2PO4・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f2、g2、h2及びx2は、0<f2≦1.2、0<g2≦1.2、0<h2≦1.2、0≦x2≦0.3、及びg2/h2<1を満たし、かつf2+(Mnの価数)×g2+(Feの価数)×h2+(M2の価数)×x2=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が2μm~35μmである造粒体Bとを含み、
ナノ粒子Aと造粒体Bとの質量比(A:B)が85:15~3:97であるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体によれば、LMFPの利点を充分に発揮させつつ、優れたレート特性及びサイクル特性を保持しながら、高い電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度を有する電極を備える、有用性の高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質混合体(以下、「本発明の混合体」とも略称する。)は、下記式(A):
Lif1Mng1Feh1M1
x1PO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f1、g1、h1及びx1は、0<f1≦1.2、0<g1≦1.2、0<h1≦1.2、0≦x1≦0.3、及び1≦g1/h1≦17/3を満たし、かつf1+(Mnの価数)×g1+(Feの価数)×h1+(M1の価数)×x1=3を満たす数を示す。)
で表されるナノ粒子Aと、下記式(B):
Lif2Mng2Feh2M2
x2PO4・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f2、g2、h2及びx2は、0<f2≦1.2、0<g2≦1.2、0<h2≦1.2、0≦x2≦0.3、及びg2/h2<1を満たし、かつf2+(Mnの価数)×g2+(Feの価数)×h2+(M2の価数)×x2=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が2μm~35μmである造粒体Bとを含み、
ナノ粒子Aと造粒体Bとの質量比(A:B)が85:15~3:97である。
【0011】
このように、本発明の混合体は、ナノスケールのMnリッチLMFP微粒子であるナノ粒子Aと、2μm~35μmもの平均粒径を有するFeリッチLMFPの造粒体Bとが、85:15~3:97なる特定の質量比(A:B)にて混在してなる、リチウムイオン二次電池用の正極活物質である。
【0012】
一般に、LMFP粒子は、微細化することにより電極密度を高めることができる一方、電解液の電極内への浸透性が減じられてレート特性が低下するおそれがある。また、微細化されるにつれ比表面積が増大し、電極全体としての比表面積も増大するため、電解液との副反応が過度に促進されてサイクル特性が低下するおそれもある。
しかしながら、本発明の混合体であれば、Feリッチ造粒体Bの間隙にMnリッチナノ粒子Aが適度に介在してなるため、電極内の空隙率を適度な状態に制御して、電解液の浸透性に優れた強固な電子導電パスを有する正極を作製することができ、レート特性及びサイクル特性の低下を有効に抑制することが可能となる。その上、本発明の混合体であれば、正極スラリー作製時における溶媒量や固形分濃度を適度に制御することもでき、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度を効果的に高めることが可能となる。
【0013】
本発明の混合体を構成するナノ粒子Aは、下記式(A):
Lif1Mng1Feh1M1
x1PO4・・・(A)
(式(A)中、M1はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f1、g1、h1及びx1は、0<f1≦1.2、0<g1≦1.2、0<h1≦1.2、0≦x1≦0.3、及び1≦g1/h1≦17/3を満たし、かつf1+(Mnの価数)×g1+(Feの価数)×h1+(M1の価数)×x1=3を満たす数を示す。)
で表される。
【0014】
上記式(A)で表されるナノ粒子Aは、少なくとも遷移金属としてマンガン(Mn)及び鉄(Fe)の双方を含むオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物であって、後述する造粒体Bとは異なり、ナノスケールのMnリッチLMFP微粒子である。
【0015】
上記ナノ粒子Aとしては、平均放電電圧の観点から、f1については、0.6≦f1≦1.2が好ましく、0.65≦f1≦1.15がより好ましく、0.7≦f1≦1.1がさらに好ましい。g1については、0.5≦g1<0.9が好ましく、0.55≦g1≦0.85がより好ましく、0.6≦g1≦0.8がさらに好ましい。h1については、0.1<h1<0.5が好ましく、0.15≦h1≦0.45がより好ましく、0.2≦h1≦0.45がさらに好ましい。x1については、0≦x1≦0.2が好ましく、0≦x1≦0.15がより好ましく、0≦x1≦0.1がさらに好ましい。そして、g1/h1は、いわゆるナノ粒子Aを構成するMnとFeとのモル比であり、1<g1/h1≦5が好ましく、1.1≦g1/h1≦4.5がより好ましく、1.2≦g1/h1≦4がさらに好ましい。
【0016】
具体的には、例えばLiMn0.6Fe0.4PO4、LiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.75Fe0.15Mg0.1PO4、LiMn0.75Fe0.19Zr0.03PO4、LiMn0.85Fe0.15PO4、LiMn0.5Fe0.5PO4、Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4、Li0.6Mn0.84Fe0.36PO4等が挙げられる。なかでもLiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.75Fe0.25PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4が好ましい。
【0017】
ナノ粒子Aの平均粒径は、リチウムイオンの挿入及び脱離を有効に促進する観点、造粒体Bの間隙に効率的に介在させる観点、及びハンドリングの観点から、好ましくは10nm~500nmであり、より好ましくは50nm~400nmであり、さらに好ましくは160nm~350nmである。
ここで、ナノ粒子Aにおける「平均粒径」とは、SEMにおいて観察した粒子50個以上の長軸の長さを測定した平均値を意味する。
【0018】
ナノ粒子Aは、良好なレート特性及びサイクル特性を確保しつつ、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の向上を図る観点から、炭素を担持してなるのが好ましい。かかる炭素としては、糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料由来の炭素が挙げられる。すなわち、これら糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料が炭化されて炭素となりつつ、ナノ粒子Aの表面に担持してなるのが好ましい。
【0019】
糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料としては、具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン、セルロース等の多糖類;セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー等の多糖類のナノファイバーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、電子導電パスの低下を有効に抑制して、レート特性及びサイクル特性の向上に寄与する観点から、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、又はキトサンナノファイバーが好ましく、セルロースナノファイバーがより好ましい。
【0020】
ナノ粒子Aにおける炭素の担持量は、上記炭素材料が炭化されてなる炭素の含有量に相当するものであり、ナノ粒子A中に、好ましくは0.5質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.6質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.7質量%~3.0質量%である。
【0021】
なお、ナノ粒子A中に含有される炭素は、ナノ粒子A表面に存在する上記炭素材料が炭化されてなる炭素、すなわち上記炭素材料の炭素原子換算量に相当するものであり、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる。
また、表面に炭素が担持されてなるナノ粒子Aの量は、上記炭素材料が炭化されてなる炭素も含めた量とする。
【0022】
ナノ粒子Aは、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、
(Ia)リチウム化合物、少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を添加してスラリー水iを得た後、水熱反応に付して、複合体aを得る工程
(IIa)得られた複合体aを還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程
を備える製造方法である。
【0023】
上記工程(Ia)は、リチウム化合物、少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水を添加してスラリー水iを得た後、水熱反応に付して、複合体aを得る工程である。
用いるリチウム化合物としては、水酸化物(例えばLiOH・H2O、LiOH)、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩等が挙げられる。なかでも、水酸化物が好ましい。
マンガン化合物としては、硫酸マンガン、酢酸マンガン、硝酸マンガン、酸化マンガン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸マンガンが好ましい。
鉄化合物としては、硫酸鉄、酢酸鉄、硝酸鉄等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池特性を高める観点から、硫酸鉄が好ましい。
なお、これらマンガン化合物及び鉄化合物とともに、これらの化合物以外の金属(M1)化合物を用いてもよい。
【0024】
リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70質量%~90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
【0025】
なお、ナノ粒子Aの表面に、上記糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料由来の炭素を担持させる場合、上記化合物とともに、かかる糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料を添加すればよい。
上記糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料のなかでも、電子導電パスの低下を有効に抑制して、得られる電池におけるレート特性の向上に寄与する観点から、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、又はキトサンナノファイバーを用いるのが好ましく、セルロースナノファイバーを用いるのがより好ましい。
【0026】
リチウム化合物、少なくともマンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、リン酸化合物、並びに水、或いはさらに必要に応じて用いる上記炭素材料の添加順序は、特に制限されず、一括して添加してもよく、金属化合物、リン酸化合物及び水を先に混合した後、必要に応じて炭素材料を添加してもよく、また、金属化合物、リン酸化合物及び水とを先に混合し、その後必要に応じて上記炭素材料を添加してもよいが、一括して添加するのが好ましい。
【0027】
なお、スラリー水iにおけるリチウム化合物、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、並びにリン酸化合物の使用量は、適宜目的とするナノ粒子Aの組成に応じて決定し、通常の方法にしたがって調製すればよい。
また、上記炭素材料の添加量は、炭素材料の炭素原子換算量を加味しつつ、ナノ粒子A中における炭素の担持量が上記範囲となる量に適宜調整すればよい。
【0028】
スラリー水iの固形分濃度は、好ましくは20質量部~80質量部であり、より好ましくは30質量部~70質量部であり、さらに好ましくは40質量部~60質量部である。
【0029】
水を添加した後、工程(IIa)へ移行する前にスラリー水iを予め撹拌するのが好ましい。かかるスラリー水iの撹拌時間は、好ましくは1分~30分であり、より好ましくは5分~20分である。また、スラリー水iiの温度は、好ましくは10℃~50℃であり、より好ましくは15℃~35℃である。
【0030】
次いで、得られたスラリー水iを水熱反応に付して、複合体aを得る。
水熱反応に付する際に用いる水の使用量は、金属化合物の溶解性、撹拌の容易性、及び合成の効率等の観点から、スラリー水i中に含有されるリン酸イオン1モルに対し、好ましくは10モル~50モルであり、より好ましくは12.5モル~45モルである。
【0031】
水熱反応は、ナノ粒子Aの粒径をナノスケールに制御する観点から、100℃~300℃が好ましく、120℃~250℃がより好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、100℃~300℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.1MPa~10MPaであるのが好ましく、130℃~250℃で反応を行う場合の圧力は0.2MPa~4.0MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は、ナノ粒子Aの粒径をナノスケールに制御する観点から、0.2時間~30時間が好ましく、さらに0.5時間~10時間が好ましい。
得られた複合体aは、ろ過後、水で洗浄するのがよい。
【0032】
上記工程(IIa)は、工程(Ia)で得られた複合体aを還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程である。これにより、上記炭素材料を用いた場合には、複合体aの表面に炭素材料を存在させつつ、炭素が担持されてなるナノ粒子Aを形成することが可能となる。
【0033】
焼成温度は、ナノ粒子Aの粒径をナノスケールに制御する観点、及び上記炭素材料を用いた場合には、かかる炭素材料の炭化を良好に行う観点から、400℃~1100℃であって、500℃~900℃が好ましく、600℃~800℃がより好ましい。焼成時間は、0.5時間~30時間が好ましく、0.5時間~20時間がより好ましく、さらに0.7時間~10時間が好ましい。
【0034】
本発明の混合体を構成する造粒体Bは、下記式(B):
Lif2Mng2Feh2M2
x2PO4・・・(B)
(式(B)中、M2はMg、Al、Ti、Cu、Zn、Nb、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd及びGdから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。f2、g2、h2及びx2は、0<f2≦1.2、0<g2≦1.2、0<h2≦1.2、0≦x2≦0.3、及びg2/h2<1を満たし、かつf2+(Mnの価数)×g2+(Feの価数)×h2+(M2の価数)×x2=3を満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が2μm~35μmである。
【0035】
上記式(B)で表される造粒体Bは、少なくとも遷移金属としてマンガン(Mn)及び鉄(Fe)の双方を含むオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物であって、上記微細なナノ粒子Aとは異なり、2μm~35μmもの平均粒径を有するFeリッチLMFP造粒体である。
【0036】
上記造粒体Bとしては、優れたレート特性及びサイクル特性を確保する観点から、f2については、0.6≦f2≦1.2が好ましく、0.65≦f2≦1.15がより好ましく、0.7≦f2≦1.1がさらに好ましい。g2については、0.1≦g2<0.5が好ましく、0.2≦g2≦0.48がより好ましく、0.3≦g2≦0.45がさらに好ましい。h2については、0.5≦h2<0.9が好ましく、0.52≦h2≦0.8がより好ましく、0.55≦h2≦0.7がさらに好ましい。x2については、0≦x2≦0.2が好ましく、0≦x2≦0.15がより好ましく、0≦x2≦0.1がさらに好ましい。そして、g2/h2は、いわゆる造粒体Bを構成するMnとFeとのモル比であり、0.12≦g2/h2<1が好ましく、0.2≦g2/h2≦0.95がより好ましく、0.25≦g2/h2≦0.9がさらに好ましい。
【0037】
具体的には、例えばLiMn0.2Fe0.8PO4、LiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.4Fe0.6PO4、LiMn0.45Fe0.55PO4等が挙げられる。なかでもLiMn0.45Fe0.55PO4、LiMn0.3Fe0.7PO4が好ましい。
【0038】
造粒体Bの平均粒径は、優れたレート特性及びサイクル特性を確保する観点、及びハンドリングの観点から、2μm~35μmであって、好ましくは5μm~30μmであり、より好ましくは10μm~25μmである。
ここで、造粒体Bにおける「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られるD50値(累積50%での粒径(メジアン径))を意味する。
【0039】
造粒体Bは、良好なレート特性及びサイクル特性を確保しつつ、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の向上をさらに有効に図る観点から、炭素を担持してなるのが好ましい。かかる炭素としては、ナノ粒子Aの表面に担持してなる炭素と同様、上記糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料由来の炭素が挙げられる。すなわち、これら糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料が炭化されて炭素となりつつ、造粒体Bの表面及び/又は造粒体Bを形成する一次粒子の表面に担持してなるのが好ましい。
【0040】
糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料としては、具体的には、ナノ粒子Aの表面に担持してなる上記炭素材料と同様のものが挙げられる。
なかでも、電子導電パスの低下を有効に抑制して、レート特性及びサイクル特性の向上に寄与する観点から、セルロースナノファイバー、リグノセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、又はキトサンナノファイバーが好ましく、セルロースナノファイバーがより好ましい。
【0041】
造粒体Bにおける炭素の担持量は、上記炭素材料が炭化されてなる炭素の含有量に相当するものであり、造粒体B中に、好ましくは0.5質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.6質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0.7質量%~3.0質量%である。
【0042】
なお、造粒体B中に含有される炭素は、造粒体Bの表面及び/又は造粒体Bを形成する一次粒子の表面に担持されてなる炭素、すなわち上記炭素材料の原子換算量に相当するものであり、ナノ粒子A中に含有される炭素と同様、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる。
また、炭素が担持されてなる造粒体Bの量は、上記炭素材料が炭化されてなる炭素も含めた量とする。
【0043】
造粒体Bは、例えば、以下の製造方法により得ることができる。具体的には、
ナノ粒子Aの製造方法と同様、上記(Ia)と同様の工程により複合体aを得る工程を備え、得られた複合体aを用い、さらに次の工程:
(IIb)得られた複合体a、及び水を添加して、スラリー水iiを得る工程
(IIIb)スラリー水iiを噴霧乾燥に付して、予備造粒体bを得る工程
(IVb)得られた予備造粒体bを還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程
を備える製造方法である。
【0044】
なお、上記(Ia)と同様の工程により複合体aを得るにあたり、リチウム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、及びリン酸化合物も上記(Ia)と同様のものを用いることができ、金属(M1)化合物と同様、マンガン化合物及び鉄化合物とともに、これらの化合物以外の金属(M2)化合物を用いてもよい。
また、スラリー水iにおけるリチウム化合物、マンガン化合物及び鉄化合物を含む金属化合物、並びにリン酸化合物の使用量は、適宜目的とする造粒体Bの組成に応じて決定し、通常の方法にしたがって調製すればよい。
【0045】
上記(IIb)は、上記(Ia)と同様の工程により得られた複合体a、及び水を添加して、スラリー水iiを得る工程である。
なお、造粒体Bの表面に、上記糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料由来の炭素を担持させる場合、複合体aとともに、かかる糖類から選ばれる1種又は2種以上の炭素材料を添加すればよい。
【0046】
複合体a、及び水、或いはさらに必要に応じて用いる上記炭素材料の添加順序は、特に制限されず、一括して添加してもよく、複合体aと水を先に混合した後に、必要に応じて炭素材料を添加してもよいが、一括して添加するのが好ましい。
なお、上記炭素材料の添加量は、炭素材料の炭素原子換算量を加味しつつ、造粒体B中における炭素の担持量が上記範囲となる量に適宜調整すればよい。
【0047】
得られるスラリー水iiの固形分濃度は、好ましくは30質量%~70質量%であり、より好ましくは35質量%~65質量%であり、さらに好ましくは40質量%~60質量%である。
【0048】
水を添加した後、工程(IIIb)へ移行する前にスラリー水iiを予め攪拌するのが好ましい。かかるスラリー水iiの撹拌時間は、好ましくは1分~30分であり、より好ましくは5分~20分である。また、スラリー水iiの温度は、好ましくは10℃~50℃であり、より好ましくは15℃~35℃である。
【0049】
上記工程(IIIb)は、工程(IIb)で得られたスラリー水iiを噴霧乾燥に付して、予備造粒体bを得る工程である。噴霧乾燥では、用いる装置に応じて適宜運転条件を設定すればよい。これにより、複合体aが凝集して予備造粒体bを構成することとなり、上記炭素材料を用いた場合には、複合体aが凝集して予備造粒体bを構成しつつ続く工程(IVb)を経るにつれ、複合体aの表面及び/又は予備造粒体bの表面に炭素材料を存在させつつ、炭素が担持されてなる造粒体Bを形成することが可能となる。
【0050】
工程(IIIb)では、噴霧乾燥において、造粒体Bの平均粒径が上記範囲となるよう、用いる装置に応じて適宜運転条件を設定すればよい。例えば、4流体ノズルを備えたマイクロミストドライヤー(MDL-050M、藤崎電気(株)製)での処理条件としては、熱風温度が110℃~300℃であるのが好ましく、150℃~250℃であるのがより好ましい。また、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)が、500~10000であるのが好ましく、1000~9000であるのがより好ましい。
【0051】
上記(IVb)は、工程(IIIb)で得られた予備造粒体bを還元雰囲気又は不活性雰囲気中において焼成する工程である。
焼成温度は、好ましくは500℃~1000℃であり、より好ましくは550℃~900℃であり、焼成時間は、好ましくは0.5時間~12時間であり、より好ましくは1時間~6時間である。
【0052】
本発明の混合体は、ナノ粒子A及び造粒体Bが混合されてなる混合体である。
本発明の混合体において、ナノ粒子Aと造粒体Bとの質量比(A:B)は、ナノ粒子Aと造粒体Bとが均一に交じり合い、造粒体Bの間隙においてナノ粒子Aを適度に偏在又は散在させて、効果的に電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度を高める観点から、85:15~3:97であって、好ましくは75:25~10:90であり、より好ましくは50:50~20:80である。
【0053】
本発明の混合体は、上記ナノ粒子A及び造粒体Bのほか、本発明の効果を阻害しない範囲内でその他の粒子を含有してもよい。
かかる粒子としては、例えば、層状型岩塩構造を有するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NMC)やリチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物(NCA)、スピネル構造のLi(Mn,Ni)2O4等が挙げられる。
本発明の混合体中における上記ナノ粒子A及び造粒体Bの合計含有量は、好ましくは60質量%~100質量%であり、より好ましくは80質量%~100質量%であり、100質量%であるのがさらに好ましい。
【0054】
なお、本発明の混合体を製造するにあたり、通常の混合方法によりナノ粒子A及び造粒体Bを混合すればよく、例えばヘンシェルミキサーを用い、上記所定の質量比(A:B)を満たす量に調整したナノ粒子Aと造粒体Bとを添加し、必要に応じてその他の粒子を添加して混合することができる。
またその他、ヘンシェルミキサー以外の乾式混合装置を用いて混合してもよく、乳棒と乳鉢を用いた手動法により混合してもよい。
なかでも、適宜諸条件を設定することによってナノ粒子A及び造粒体Bの不要な粉砕を回避する制御が可能である観点から、ヘンシェルミキサーを用いてナノ粒子A及び造粒体Bを混合するのが好ましい。
【0055】
なお、導電助剤及び結着剤を配合し、さらに溶媒等を添加、混合して正極ペーストを調製する際に、導電助剤及び結着剤とともに、上記所定の質量比(A:B)となる量のナノ粒子A及び造粒体Bを配合してもよい。
【0056】
本発明の混合体を用いて調製した正極ペーストは、次いでアルミニウム箔等の集電体上に塗布し、次いでローラープレス等によるプレス成形した後、乾燥して正極を得る。かかる正極は、ナノ粒子Aと造粒体Bとが限られた質量比を適切に保持しながら混在してなることから、効果的に良好なレート特性及びサイクル特性を保持しつつ、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度が有効に高められた有用性の高い正極を得ることができる。
【0057】
得られた正極は、さらに負極と電解液とセパレータ、又は負極と固体電解質を必須構成とすることにより、リチウムイオン二次電池を構築することができる。
【0058】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、2種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
【0059】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0060】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)2及びLiN(SO3CF3)2、LiN(SO2C2F5)2及びLiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0061】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【0062】
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li7La3Zr2O12、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.3N0.46、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5、50Li2S・50GeS2、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4を用いればよい。
【0063】
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型、角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
【実施例0064】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、各物性の測定については、以下の方法にしたがった。
【0065】
《ナノ粒子Aの平均粒径》
ナノ粒子A100粒子分について、SEM(FIB-SEМ、(株)日立ハイテクサイエンス製SМF-1000)により粒子径を測定し、その平均値を求めて平均粒径の値とした。
【0066】
《造粒体Bの平均粒径》
レーザー回折装置(マイクロトラックMT3000II、MicrotracBEL社製)を用いて粒度分布を求め、D50値(μm)を測定して平均粒径の値とした(粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.52、溶媒:エタノール、溶媒屈折率:1.36)
【0067】
《炭素の担持量》
炭素・硫黄分析装置(EMIA-220V2、堀場製作所社製)を用い、炭素の担持量を測定した。
【0068】
[製造例A1:ナノ粒子A1(LiMn0.7Fe0.3PO4)の製造]
LiOH・H2Oを1272g、及び水4Lを混合してスラリー水i1Aを得た。次いで、得られたスラリー水i1Aを、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4~20nm)5892gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌し、Li3PO4を含むスラリー水i2Aを得た。
得られたスラリー水i2Aに窒素パージして、スラリー水i2Aの溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリー水i2A全量に対し、MnSO4・5H2Oを1688g、FeSO4・7H2Oを834g添加してスラリー水i3Aを得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
次いで、得られたスラリー水i3Aをオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して複合体aAを得た。
得られた複合体aAをアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、ナノ粒子A1(LiMn0.7Fe0.3PO4、平均粒径:210nm、炭素の担持量:1.0質量%)を得た。
【0069】
[製造例A2:ナノ粒子A2(LiMn0.7Fe0.3PO4)の製造]
得られたスラリー水i3Aをオートクレーブに投入し、170℃で5時間水熱反応を行った以外、製造例A1と同様にして、ナノ粒子A2(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:320nm、炭素の担持量:1.0質量%)を得た。
【0070】
[製造例A3:ナノ粒子A3(LiMn0.85Fe0.15PO4)の製造]
スラリー水i2A全量に対して添加するMnSO4・5H2Oを2050g、FeSO4・7H2Oを417g(MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)=85:15)としてスラリー水i3Aを調製し、得られたスラリー水i3Aをオートクレーブに投入して、170℃で0.5時間水熱反応を行った以外、製造例A1と同様にして、ナノ粒子A3(LiMn0.85Fe0.15PO4、平均粒径:100nm、炭素の担持量:1.1質量%)を得た。
【0071】
[製造例A4:ナノ粒子A4(LiMn0.9Fe0.1PO4)の製造]
スラリー水i2A全量に対して添加するMnSO4・5H2Oを2170g、FeSO4・7H2Oを278g(MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)=90:10)としてスラリー水i3Aを調製した以外、製造例A1と同様にして、ナノ粒子A4(LiMn0.9Fe0.1PO4、平均粒径:150nm、炭素の担持量:1.2質量%)を得た。
【0072】
[製造例A5:ナノ粒子A5(LiMn0.45Fe0.55PO4)の製造]
スラリー水i2A全量に対して添加するMnSO4・5H2Oを1085g、FeSO4・7H2Oを1529g(MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)=45:55)としてスラリー水i3Aを調製した以外、製造例A1と同様にして、ナノ粒子A5(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:180nm、炭素の担持量:1.0質量%)を得た。
【0073】
[製造例B1:造粒体B1(LiMn0.45Fe0.55PO4)の製造]
LiOH・H2Oを1272g、及び水4Lを混合してスラリー水i1Bを得た。次いで、得られたスラリー水i1Bを、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4~20nm)5892gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌し、Li3PO4を含むスラリー水i2Bを得た。
得られたスラリー水i2Bに窒素パージして、スラリー水i2Bの溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリー水i2B全量に対し、MnSO4・5H2Oを1085g、FeSO4・7H2Oを1529g添加してスラリー水i3Bを得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、45:55であった。
次いで、得られたスラリー水i3Bをオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して複合体aBを得た。
得られた複合体aBを1000g分取し、水1Lを添加してスラリー水ii1Bを得た。得られたスラリー水ii1Bを超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機(株)製)を用いて噴霧乾燥に付して予備造粒体b1を得た。なお、噴霧乾燥の際の熱風温度を200℃とし、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)を2500とした。
得られた予備造粒体b1をアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、造粒体B1(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:15μm、炭素の担持量:1.6質量%)を得た。
【0074】
[製造例B2:造粒体B2(LiMn0.45Fe0.55PO4)の製造]
スラリー水ii1Bを噴霧乾燥に付する際に、熱風温度を200℃とし、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)を7500とした以外、製造例B1と同様にして、造粒体B2(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:5μm、炭素の担持量:1.6質量%)を得た。
【0075】
[製造例B3:造粒体B3(LiMn0.45Fe0.55PO4)の製造]
スラリー水ii1Bを噴霧乾燥に付する際に、熱風温度を250℃とし、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)を1000とした以外、製造例B1と同様にして、造粒体B3(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:26μm、炭素の担持量:1.5質量%)を得た。
【0076】
[製造例B4:造粒体B4(LiMn0.2Fe0.8PO4)の製造]
スラリー水i2B全量に対して添加するMnSO4・5H2Oを482g、FeSO4・7H2Oを2224g(MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)=20:80)としてスラリー水i3Bを調製したこと以外、製造例B1と同様にして、造粒体B4(LiMn0.2Fe0.8PO4、平均粒径:13μm、炭素の担持量:1.6質量%)を得た。
【0077】
[製造例B5:造粒体B5(LiMn0.55Fe0.45PO4)の製造]
スラリー水i2B全量に対して添加するMnSO4・5H2Oを1326g、FeSO4・7H2Oを1251g(MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)=55:45)としてスラリー水i3Bを調製したこと、及びスラリー水ii1Bを噴霧乾燥に付する際に、熱風温度を200℃とし、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)を2000としたこと以外、製造例B1と同様にして、造粒体B5(LiMn0.55Fe0.45PO4、平均粒径:18μm、炭素の担持量:1.6質量%)を得た。
【0078】
[製造例B6:造粒体B6(LiMn0.45Fe0.55PO4)の製造]
スラリー水ii1Bを噴霧乾燥に付する際に、熱風温度を250℃とし、熱風の供給量とスラリー水の供給量の比(熱風の供給量/スラリー水の供給量)を300とした以外、製造例B1と同様にして、造粒体B6(LiMn0.45Fe0.55PO4、平均粒径:37μm、炭素の担持量:1.5質量%)を得た。
【0079】
[実施例1~6、比較例1~5]
表1に記載の配合にしたがい、製造例A1~A5で得られたナノ粒子A、及び製造例B1~B6で得られた造粒体Bを適宜用いて混合し、各混合体を得た。
得られた各混合体を正極材料として用い、下記方法にしたがって二次電池を作製した後、各測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0080】
《二次電池の作製》
得られた各混合体、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
なお、得られた正極は、電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の算出にも使用した。
【0081】
次いで、上記正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、高分子多孔フィルムを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を得た。
【0082】
《電極密度及び単位体積あたりのエネルギー密度の算出》
上記正極を用い、下記式(x1)にしたがって電極密度を算出した。次いで、これを下記式(x2)に導入して単位体積あたりのエネルギー密度を算出した。
電極密度(g/cm3)=
正極中の正極活物質質量(g)/電極体積(cm3)(φ14mm×厚さ(μm))
・・・(x1)
30℃環境での正極の単位体積あたりのエネルギー密度(Wh/L)=
30℃における放電容量(mAh/g)×平均電圧(V)×電極密度(g/cm3) ・・・(x2)
【0083】
《レート特性の評価》
上記コイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での、0.2C、及び5Cでの放電容量(mAh/g)を測定し、5Cでの放電容量を0.2Cでの放電容量にて除することよって、これらの放電容量比の値(5Cでの放電容量/0.2Cでの放電容量)を求め、レート特性の評価の指標とした。
【0084】
《サイクル特性》
上記コイン型二次電池を用い、放電容量測定装置(HJ-1001SD8、北斗電工社製)にて気温30℃環境での1Cにて充放電を500回繰り返して放電容量(500サイクル目の放電容量、mAh/g)を求め、1サイクル後の放電容量(1サイクル目の放電容量)にて除することによって、これらの放電容量比の値(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)を求め、サイクル特性の評価の指標とした。
【0085】