IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転電機のコイル装置 図1
  • 特開-回転電機のコイル装置 図2
  • 特開-回転電機のコイル装置 図3
  • 特開-回転電機のコイル装置 図4
  • 特開-回転電機のコイル装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127521
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転電機のコイル装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20240912BHJP
【FI】
H02K11/25
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036721
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣見 悠太
(72)【発明者】
【氏名】納谷 健斗
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
5H611UB00
(57)【要約】
【課題】検出対象コイルの温度の検出精度を向上させることができる回転電機のコイル装置を得るを得ることを目的とする。
【解決手段】温度検出器14は、温度検出素子16と、電線17とを有している。温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面の一部に接触している。熱収縮部材15は、検出対象コイル13Aの外周面を全周に渡って覆っている。温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面と熱収縮部材15との間に挟み込まれて検出対象コイル13Aに固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象コイル、
前記検出対象コイルの外周面の一部に接触している温度検出素子と、前記温度検出素子から引き出されている電線とを有しており、前記検出対象コイルの温度を検出する温度検出器、及び
前記外周面を全周に渡って覆っている熱収縮部材
を備え、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記熱収縮部材との間に挟み込まれて前記検出対象コイルに固定されている回転電機のコイル装置。
【請求項2】
前記温度検出素子は、前記外周面において前記検出対象コイルのコイルエンド部に接触している請求項1記載の回転電機のコイル装置。
【請求項3】
前記熱収縮部材は、熱収縮チューブである請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【請求項4】
前記熱収縮部材は、加熱されることによって収縮する樹脂シートである請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【請求項5】
ティース部を有しているステータコア
をさらに備え、
前記ステータコアにおける前記ティース部の両側には、スロットが設けられており、
前記検出対象コイルは、前記ティース部に巻き付けられており、
前記熱収縮部材は、前記ティース部の両側において前記スロットに通されている請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【請求項6】
前記熱収縮部材は、
第1収縮片と、
前記第1収縮片とは独立して収縮可能な第2収縮片と
を有しており、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記第1収縮片との間に挟み込まれており、
前記電線は、前記外周面と前記第2収縮片との間に挟み込まれている請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機のコイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機のステータでは、線状の温度検出用導体がコイルに電気的に接続されている。温度検出素子は、温度検出用導体に直接接触するように装着されており、コイルの温度を検出する。温度検出素子は、保護部材によって覆われている。保護部材は、接着剤、樹脂モールド材料、又は熱収縮チューブにより構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-111833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の回転電機のステータでは、コイルの温度が温度検出用導体を介して温度検出素子によって検出されるため、コイルの温度の検出精度が低下する。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、検出対象コイルの温度の検出精度を向上させることができる回転電機のコイル装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る回転電機のコイル装置は、検出対象コイル、検出対象コイルの外周面の一部に接触している温度検出素子と、温度検出素子から引き出されている電線とを有しており、検出対象コイルの温度を検出する温度検出器、及び外周面を全周に渡って覆っている熱収縮部材を備え、温度検出素子は、外周面と熱収縮部材との間に挟み込まれて検出対象コイルに固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の回転電機のコイル装置によれば、検出対象コイルの温度の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による回転電機のステータの要部を示す斜視図である。
図2図1の検出対象コイルに熱収縮部材を装着する前の状態を示す斜視図である。
図3図1の熱収縮部材の収縮前の状態を示す斜視図である。
図4】実施の形態2による回転電機のステータの要部を示す斜視図である。
図5図4の検出対象コイルに第1収縮片を装着する前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による回転電機のステータの要部を示す斜視図である。図1において、回転電機は、コイル装置としての円環状のステータ11と、図示しないロータとを有している。ステータ11の内周面は、ロータの外周面に隙間を介して対向している。ロータは、ステータ11に対して回転する。
【0010】
ステータ11は、ステータコア12と、複数のコイル13と、温度検出器14と、環状の熱収縮部材15とを有している。
【0011】
ステータコア12は、円環状のヨーク部12aと、複数のティース部12bとを有している。複数のティース部12bは、ヨーク部12aから、それぞれステータコア12の径方向内側へ突出している。ステータコア12の径方向は、ステータコア12の軸心に直交する方向である。
【0012】
ステータコア12の周方向において互いに隣り合う2つのティース部12b間には、スロット12cが設けられている。即ち、ステータコア12における各ティース部12bの両側には、スロット12cが設けられている。ステータコア12の周方向は、ステータコア12の軸心を中心とする円周に沿う方向である。
【0013】
各コイル13は、対応するティース部12bに巻き付けられてステータコア12に装着されている。複数のコイル13のうちの1つは、温度検出の対象となる検出対象コイル13Aである。
【0014】
温度検出器14は、検出対象コイル13Aの温度を検出する。即ち、温度検出器14は、検出対象コイル13Aの温度に応じた電気信号を出力する。
【0015】
また、温度検出器14は、温度検出素子16と、電線17とを有している。温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面の一部に接触している。電線17は、温度検出素子16からステータ11の外部に引き出されている。
【0016】
熱収縮部材15は、検出対象コイル13Aの外周面を全周に渡って覆っている。熱収縮部材15は、加熱されることによって収縮する部材である。熱収縮部材15としては、熱収縮チューブを用いることができる。また、熱収縮部材15としては、加熱されることによって収縮する樹脂シートを環状に曲げて用いることもできる。
【0017】
温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面と熱収縮部材15との間に挟み込まれて検出対象コイル13Aに固定されている。熱収縮部材15は、検出対象コイル13Aが巻き付けられているティース部12bの両側においてスロット12cに通されている。
【0018】
次に、温度検出器14の検出対象コイル13Aへの取り付け手順について説明する。温度検出器14を検出対象コイル13Aに取り付ける場合、まず図2に示すように、検出対象コイル13Aの外周面上に温度検出素子16を置く。
【0019】
この後、図3に示すように、検出対象コイル13Aの周囲に熱収縮部材15を配置する。このとき、検出対象コイル13Aが巻き付けられているティース部12bの両側のスロット12cに熱収縮部材15を通す。
【0020】
そして、例えば図示しないドライヤーによって、熱収縮部材15を加熱し収縮させる。これにより、図1に示すように、温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面と熱収縮部材15との間に挟み込まれて検出対象コイル13Aに固定される。
【0021】
このようなステータ11では、温度検出素子16が検出対象コイル13Aの外周面に直接接触しているため、検出対象コイル13Aの温度の検出精度を向上させることができる。また、温度追従性を高め、回転電機の発熱の状態を精度良く確認することができ、回転電機が過熱状態になることを抑制することができる。
【0022】
また、モールド、接着剤等による固定方法では、温度検出素子16と検出対象コイル13Aとの間に、樹脂、空気等が入る可能性が高い。しかし、実施の形態1では、熱収縮部材15と検出対象コイル13Aとの間に、樹脂、空気等が入りにくく、検出精度の低下を抑制することができる。
【0023】
また、熱収縮部材15を加熱するだけで、温度検出素子16を検出対象コイル13Aに速やかに固定することができ、作業性を向上させることができる。
【0024】
また、熱収縮部材15として熱収縮チューブを用いることにより、熱収縮部材15を検出対象コイル13Aの全周に渡って容易に配置することができる。
【0025】
また、熱収縮部材15として樹脂シートを用いることにより、熱収縮部材15を検出対象コイル13Aのサイズに容易に合わせることができる。
【0026】
また、熱収縮部材15は、検出対象コイル13Aが巻き付けられているティース部12bの両側においてスロット12cに通されている。このため、熱収縮部材15を検出対象コイル13Aに、より強固に固定することができる。
【0027】
なお、温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面においてコイルエンド部に接触させてもよい。これにより、検出対象コイル13Aに対する温度検出素子16の取り付け作業の作業性を向上させることができる。コイルエンド部は、ステータコア12の軸方向におけるステータコア12の端面から突出している部分である。ステータコア12の軸方向は、ステータコア12の軸心に平行な方向である。
【0028】
実施の形態2.
次に、図4は、実施の形態2による回転電機のステータ11の要部を示す斜視図である。実施の形態2の熱収縮部材15は、環状の第1収縮片15aと、環状の第2収縮片15bとを有している。即ち、熱収縮部材15は、ステータコア12の径方向に2つに分割されている。第2収縮片15bは、第1収縮片15aとは独立して収縮可能である。
【0029】
温度検出素子16は、検出対象コイル13Aの外周面と第1収縮片15aとの間に挟み込まれて検出対象コイル13Aに固定されている。電線17における温度検出素子16側の端部は、検出対象コイル13Aの外周面と第2収縮片15bとの間に挟み込まれて検出対象コイル13Aに固定されている。
【0030】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0031】
温度検出器14を検出対象コイル13Aに取り付ける場合、図2に示すように、検出対象コイル13Aの外周面上に温度検出素子16を置く。この後、収縮前の第2収縮片15bを検出対象コイル13Aの周囲に配置し、図5に示すように、第2収縮片15bを収縮させる。これにより、電線17が検出対象コイル13Aに固定される。
【0032】
この後、収縮前の第1収縮片15aを検出対象コイル13Aの周囲に配置し、図4に示すように、第1収縮片15aを収縮させる。これにより、温度検出素子16が検出対象コイル13Aに固定される。
【0033】
このような構成によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、検出対象コイル13Aに対して、電線17を固定してから温度検出素子16を固定することができ、温度検出器14の検出対象コイル13Aへの取り付け作業の作業性をさらに向上させることができる。これにより、作業者による品質ばらつきを抑制することができる。
【0035】
また、熱収縮部材15が検出対象コイル13Aの外周面を覆う面積を減らすことができる。これにより、検出対象コイル13Aの放熱に対する熱収縮部材15の影響を小さくすることができる。
【0036】
なお、ステータ11における温度検出器14の数は、2つ以上であってもよい。例えば、ステータ11の軸方向の両端のコイルエンド部にそれぞれ温度検出素子16を接触させてもよい。
【0037】
また、1つのコイル装置に2つ以上の検出対象コイル13Aが含まれてもよい。
【0038】
また、ステータ11における巻線形態は、集中巻きでも分布巻きでもよい。
【0039】
また、回転電機は、アウタロータタイプの回転電機であってもよい。
【0040】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0041】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0042】
(付記1)
検出対象コイル、
前記検出対象コイルの外周面の一部に接触している温度検出素子と、前記温度検出素子から引き出されている電線とを有しており、前記検出対象コイルの温度を検出する温度検出器、及び
前記外周面を全周に渡って覆っている熱収縮部材
を備え、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記熱収縮部材との間に挟み込まれて前記検出対象コイルに固定されている回転電機のコイル装置。
(付記2)
前記温度検出素子は、前記外周面において前記検出対象コイルのコイルエンド部に接触している付記1記載の回転電機のコイル装置。
(付記3)
前記熱収縮部材は、熱収縮チューブである付記1又は付記2に記載の回転電機のコイル装置。
(付記4)
前記熱収縮部材は、加熱されることによって収縮する樹脂シートである付記1又は付記2に記載の回転電機のコイル装置。
(付記5)
ティース部を有しているステータコア
をさらに備え、
前記ステータコアにおける前記ティース部の両側には、スロットが設けられており、
前記検出対象コイルは、前記ティース部に巻き付けられており、
前記熱収縮部材は、前記ティース部の両側において前記スロットに通されている付記1から付記4までのいずれか1項に記載の回転電機のコイル装置。
(付記6)
前記熱収縮部材は、
第1収縮片と、
前記第1収縮片とは独立して収縮可能な第2収縮片と
を有しており、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記第1収縮片との間に挟み込まれており、
前記電線は、前記外周面と前記第2収縮片との間に挟み込まれている付記1から付記5までのいずれか1項に記載の回転電機のコイル装置。
【符号の説明】
【0043】
11 ステータ(コイル装置)、12 ステータコア、12b ティース部、12c スロット、13A 検出対象コイル、14 温度検出器、15 熱収縮部材、15a 第1収縮片、15b 第2収縮片、16 温度検出素子、17 電線。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象コイル、
前記検出対象コイルの外周面の一部に接触している温度検出素子と、前記温度検出素子から引き出されている電線とを有しており、前記検出対象コイルの温度を検出する温度検出器
前記外周面を全周に渡って覆っている熱収縮部材、及び
ティース部を有しているステータコア
を備え、
前記ステータコアにおける前記ティース部の両側には、スロットが設けられており、
前記検出対象コイルは、前記ティース部に巻き付けられており、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記熱収縮部材との間に挟み込まれて前記検出対象コイルに固定されており、
前記熱収縮部材は、前記ティース部の両側において前記スロットに通されている回転電機のコイル装置。
【請求項2】
検出対象コイル、
前記検出対象コイルの外周面の一部に接触している温度検出素子と、前記温度検出素子から引き出されている電線とを有しており、前記検出対象コイルの温度を検出する温度検出器、及び
前記外周面を全周に渡って覆っている熱収縮部材
を備え、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記熱収縮部材との間に挟み込まれて前記検出対象コイルに固定されており、
前記熱収縮部材は、
第1収縮片と、
前記第1収縮片とは独立して収縮可能な第2収縮片と
を有しており、
前記温度検出素子は、前記外周面と前記第1収縮片との間に挟み込まれており、
前記電線は、前記外周面と前記第2収縮片との間に挟み込まれている回転電機のコイル装置。
【請求項3】
前記温度検出素子は、前記外周面において前記検出対象コイルのコイルエンド部に接触している請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【請求項4】
前記熱収縮部材は、熱収縮チューブである請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。
【請求項5】
前記熱収縮部材は、加熱されることによって収縮する樹脂シートである請求項1又は請求項2に記載の回転電機のコイル装置。