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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127537
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M50/489
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036751
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋
(72)【発明者】
【氏名】小笠 博司
(72)【発明者】
【氏名】清水 航
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE05
5H021CC02
5H021EE02
5H021HH06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029HJ12
5H029HJ14
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA08
5H050DA19
5H050FA02
5H050GA03
5H050HA12
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】リチウム金属が溶融する温度に達することによって生じる熱暴走を回避できる、安全性の高いリチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】正極集電体11と、正極集電体11の表面に配置された正極合材層12とを含む正極10と、負極集電体21と、負極集電体21の表面に配置されたリチウム金属箔22とを含む負極20と、正極10と負極20の間に配置されたセパレータ30と、を備え、正極集電体11の表面でかつ正極合材層12の近傍に配置された熱変形性セパレータ31と、リチウム金属箔22から熱変形性セパレータ31に接するように延出された延出部25と、を有し、熱変形性セパレータ31の融点は80℃以上で、リチウム金属の融点以下の温度であり、熱変形性セパレータ31が熱変形することにより、延出部25が正極集電体11に接触して、正極10と負極20とが短絡する、リチウム二次電池1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の表面に配置された正極合材層とを含む正極と、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に配置されたリチウム金属箔とを含む負極と、
前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータと、を備えるリチウム二次電池であって、
前記正極集電体の表面でかつ前記正極合材層の近傍に配置された熱変形性セパレータと、
前記リチウム金属箔から前記熱変形性セパレータに接するように延出された延出部と、を有し、
前記熱変形性セパレータの融点は80℃以上で、リチウム金属の融点以下の温度であり、
前記熱変形性セパレータが熱変形することにより、前記延出部が前記正極集電体に接触して、前記正極と前記負極とが短絡する、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記正極集電体はアルミニウム箔である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極、前記セパレータ及び前記負極を拘束する拘束荷重により、前記熱変形性セパレータの熱変形時に前記リチウム金属箔の前記延出部が前記正極集電体に接触する、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記正極、前記負極、前記セパレータを収容する外装体と、
前記外装体を介して前記負極を前記正極側に加圧する前記拘束荷重を付与する加圧板と、を備え、
前記加圧板は、前記外装体を介して前記リチウム金属箔の前記延出部を前記セパレータの外側で前記正極集電体側に加圧する突出部を有する、請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウム金属箔の前記延出部は、前記正極集電体側に湾曲又は屈曲するように構成される、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
一方の端部が前記正極集電体に接続し、他方の端部が外部に露出する正極タブを有し、
前記リチウム金属箔の前記延出部は、前記正極タブの近傍に配置されている、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献するリチウム二次電池に関する研究開発が行われている。従来、リチウム等を用いる二次電池において、充電時のジュール熱や反応熱に伴う熱問題に対処するための技術が知られている。この種の二次電池の熱問題について記載されるものとして例えば特許文献1~5がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-64549号公報
【特許文献2】特開平7-192753号公報
【特許文献3】特開平10-233237号公報
【特許文献4】特開平11-45740号公報
【特許文献5】特開平11-233150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リチウム二次電池に関する技術においては、充電時のジュール熱及び反応熱に伴う高温化に対処する必要がある一方、エネルギー密度を更に大きくする高容量化が課題である。高容量化は過充電時の温度上昇を招く。リチウム金属を負極とする二次電池では、リチウム金属が溶融する温度に到達すると反応が一斉に起こり、激しい熱暴走を起こすおそれがある。このため、リチウム金属の溶融温度に到達する前に電池を失活させる、あるいは異常検知することができれば好ましい。しかしながら、激しい熱暴走の回避という点で従来技術には改善の余地があった。
【0005】
本願は上記課題の解決のため、リチウム金属が溶融する温度に達することによって生じる熱暴走を回避できる、安全性の高いリチウム二次電池を提供することを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に配置された正極合材層とを含む正極と、負極集電体と、前記負極集電体の表面に配置されたリチウム金属箔とを含む負極と、前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータと、を備えるリチウム二次電池であって、前記正極集電体の表面でかつ前記正極合材層の近傍に配置された熱変形性セパレータと、前記リチウム金属箔から前記熱変形性セパレータに接するように延出された延出部と、を有し、前記熱変形性セパレータの融点は80℃以上で、リチウム金属の融点以下の温度であり、前記熱変形性セパレータが熱変形することにより、前記延出部が前記正極集電体に接触して、前記正極と前記負極とが短絡する、リチウム二次電池である。
【0007】
(2) 上記(1)のリチウム二次電池において、前記正極集電体はアルミニウム箔であってもよい。
【0008】
(3) 上記(1)又は(2)のリチウム二次電池において、前記正極、前記セパレータ及び前記負極を拘束する拘束荷重により、前記熱変形性セパレータの熱変形時に前記リチウム金属箔の前記延出部が前記正極集電体に接触するようにされてもよい。
【0009】
(4) 上記(3)のリチウム二次電池において、前記正極、前記負極、前記セパレータを収容する外装体と、前記外装体を介して前記負極を前記正極側に加圧する前記拘束荷重を付与する加圧板と、を備え、前記加圧板は、前記外装体を介して前記リチウム金属箔の前記延出部を前記セパレータの外側で前記正極集電体側に加圧する突出部を有してもよい。
【0010】
(5) 上記(1)~(4)のいずれか1つのリチウム二次電池において、前記リチウム金属箔の前記延出部は、前記積層方向において前記正極集電体側に湾曲又は屈曲するように構成されてもよい。
【0011】
(6) 上記(1)~(5)のいずれか1つのリチウム二次電池において、一方の端部が前記正極集電体に接続し、他方の端部が外部に露出する正極タブを有し、前記リチウム金属箔の前記延出部は、前記正極タブの近傍に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リチウム金属が溶融する温度に達することによって生じる熱暴走を回避できる、安全性の高いリチウム二次電池を提供することが可能となる。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の充電時の状態を示す模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の放電時の状態を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池のリチウム金属箔の延出部の配置を示す模式平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の熱収縮セパレータの熱変形時の状態を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池のリチウム金属箔の延出部が消失した状態を示す模式図である。
図6】変形例のリチウム金属の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の充電時の状態を示す模式断面図であり、図2は、リチウム二次電池の放電時の状態を示す模式図であり、図3は、リチウム二次電池のリチウム金属箔の延出部の配置を示す模式平面図である。図1図3に示すリチウム二次電池1は、負極にリチウム金属を用いるリチウム金属電池である。リチウム二次電池1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に用いられる。
【0016】
本実施形態のリチウム二次電池1は、正極10と、負極20と、セパレータ30と、熱変形性セパレータ31、電解液(不図示)と、第1外装体51と、第2外装体52と、第1加圧板61と、第2加圧板62と、を含んで構成される。
【0017】
正極10は、正極集電体11と、正極集電体11の表面に配置された正極合材層12とを含む。正極集電体11は正極タブ71と接続している。
【0018】
正極集電体11は、特に限定されないが、リチウム二次電池の正極集電体として利用される公知の集電物質により構成される。正極集電体11としては、例えばアルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
【0019】
正極合材層12は、少なくとも一種の正極活物質を含有する。正極合材層12は特に制限はなく、一般的なリチウム二次電池の正極層で使用されているものを用いることができる。正極合材層12としては、例えばリチウムを含有する層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を用いることができる。正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2-x-yMO(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
【0020】
正極タブ71は、一方の端部が正極集電体11に接続し、他方の端部が外部に露出している。正極タブ71は、第1外装体51と第2外装体52に挟まれている。
【0021】
負極20は、負極集電体21と、負極集電体21の表面に配置されたリチウム金属箔22とを含む。図1に示すように、充電時には、リチウム金属箔22とセパレータ30の間に、正極合材層12から放出され、セパレータ30を通過して移動してきたリチウムイオンが析出してリチウム金属層23が生成して負極20の厚みが増加する。放電時には、リチウム金属層23からリチウムイオンが放出され、正極10側に移動する。このため、放電状態では、図2に示すようにリチウム金属層23が消失する。負極集電体21は負極タブ72(図1及び図2において不図示)と接続している。
【0022】
負極集電体21は、特に限定されないが、リチウム二次電池の負極集電体として利用されている公知の集電物質により構成される。負極集電体21としては、例えば銅等の金属箔等を用いることができる。
【0023】
リチウム金属箔22は、充電時には、リチウムイオンが析出してリチウム層を形成するための核として機能する。本実施形態では、リチウム金属箔22は、本体24と本体24から延出された延出部25を有する。本実施形態においては、延出部25は、正極タブ71を挟むように凸状に2箇所配置されている(図3参照)。従って、延出部25は正極タブ71の近傍に位置する。延出部25は、第1外装体51の凸部55により、湾曲する状態で保持される。本実施形態では、充電時又は放電時において、延出部25が熱変形性セパレータ31に当接している。
【0024】
負極タブ72は、一方の端部が負極集電体21に接続し、他方の端部が外部に露出している(図4参照)。負極タブ72は、第1外装体51と第2外装体52に挟まれている。
【0025】
セパレータ30の材料は、特に限定されないが、例えば多孔体シート、不織布シートを用いることができる。多孔体シートの材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド、ポリイミド、フッ素樹脂等が挙げられる。不織布シートの材料の例としては、グラスファイバー、セルロースファイバー等が挙げられる。
【0026】
熱変形性セパレータ31は、正極集電体11の表面でかつ正極合材層12の近傍に配置されている。熱変形性セパレータ31の融点は80℃以上で、リチウム金属の融点以下の温度とされている。すなわち、熱変形性セパレータ31は、リチウム金属よりも低い融点で収縮する熱収縮性を有する熱変形が可能な材料によって構成される。熱変形性セパレータ31の材料としては、例えば、セロハンテープ等が挙げられる。
【0027】
電解液は、有機溶媒と電解質とを含む。有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エーテル、鎖状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、芳香族エーテル、スルホン、環状エステル、鎖状カルボン酸エステル、ニトリルを用いることができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル1,3-ジオキソラン等が挙げられる。鎖状エーテルの例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルの例としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、1,2-ビス(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。芳香族エーテルの例としては、アニソールが挙げられる。スルホンの例としては、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。環状エステルの例としては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。鎖状カルボン酸エステルの例としては、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。ニトリルの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。有機溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
電解質は、電荷移動媒体であるリチウムイオンの供給源であり、リチウム塩を含む。リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO(LiTFSI)、LiN(FSO(LiFSI)、及びLiBC等が挙げられる。リチウム塩は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
第1外装体51は負極20側に位置し、第2外装体52は正極10側に位置する。第1外装体51と第2外装体52とを封止することによって、正極10、負極20、セパレータ30、熱変形性セパレータ31及び電解液が密閉状態で外装体に収容される。第1外装体51と第2外装体52の材料としては、ラミネートフィルムを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、内側から内側樹脂層、金属層、外側樹脂層の順で積層された3層構造の積層フィルムを用いることができる。内側樹脂層は例えばポリアミド(ナイロン)層、ポリエチレンテレフタレート(PET)層であり、金属層は例えばアルミニウム層であり、外側樹脂層は例えばポリエチレン層、ポリプロピレン層であってもよい。
【0030】
第1加圧板61は負極側に位置し、第2加圧板62は正極側に位置する。第1加圧板61と第2加圧板62は、リチウム二次電池1の各構成を積層方向で挟み込むように配置される。第1加圧板61と第2加圧板62により、各層間の界面の接触面積を十分に確保するための積層方向の拘束荷重が加えられる。
【0031】
本実施形態の第1加圧板61は、内側に屈曲する突出部65を有する。この突出部65によって第1外装体51に凸部55が形成される。
【0032】
以上、充電及び放電におけるリチウム二次電池1の構成の一例について説明した。次に、熱変形性セパレータ31が熱収縮する高温状態におけるリチウム二次電池1の挙動を説明する。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池1の熱変形性セパレータ31の熱収縮(熱変形)時の状態を示す模式図である。図4に示すように、短絡等に起因する大電流印加時では正極タブ71が最も熱が発生する部分となり、発生した熱によって熱変形性セパレータ31が正極合材層12側に収縮する。リチウム金属箔22の延出部25は、第1加圧板61の突出部65による拘束加重による第1外装体51の凸部55によって正極集電体11側に押圧されている。そのため、リチウム金属箔22の延出部25が接触していた熱変形性セパレータ31が熱収縮により消失すると、リチウム金属箔22の延出部25が正極側に押し込まれ、熱変形性セパレータ31が消失して露出した正極集電体11の表面に接触する。正極集電体11とリチウム金属箔22の延出部25とが接触することによって、正極10と負極20とが短絡した状態となる。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池1のリチウム金属箔22の延出部25が消失した状態を示す模式図である。図5や下記の式(1)に示すように、リチウム金属箔22の延出部25と正極集電体11とが接触することにより、リチウム金属箔22の延出部25のリチウムが正極集電体11に取り込まれ、延出部25が消失する。なお、式(1)中のAlは、正極集電体11である。
Al+xLi+xe→LiAl (1)
【0035】
以上説明したように、本実施形態のリチウム二次電池1では、正極集電体11の表面でかつ正極合材層12の近傍に配置された熱変形性セパレータ31と、リチウム金属箔22から熱変形性セパレータ31に接するように延出された延出部25と、を有し、熱変形性セパレータ31が熱変形(熱収縮)することにより、延出部25が正極集電体11に接触して、正極10と負極20とが短絡する。本実施形態のリチウム二次電池1では、熱変形性セパレータ31の融点は80℃以上で、リチウム金属の融点以下の温度であり、リチウム金属の融点以下の温度で正極10と負極20とを短絡させることができる。このため、本実施形態のリチウム二次電池1によれば、リチウム金属が溶融する温度に達することによって生じる熱暴走を回避できる。
【0036】
また、本実施形態のリチウム二次電池1では、リチウム金属箔22の延出部25が、正極タブ71を挟むように凸状に2箇所配置されているだけである。従って、リチウム金属22の延出部25が本体24の端面の全域に形成される構成に比べ、正極タブ71の近傍におけるリチウム金属22の量を少なくすることができる。短絡するリチウム金属22の量が少ないので、リチウム二次電池1での短絡自体は小規模で終了させることができる。
【0037】
また、本実施形態のリチウム二次電池1において、正極集電体11がアルミニウム箔とされている。これによって、リチウム金属箔22の延出部25のリチウムを正極集電体11に取り込ませて、延出部25を消失させることができるので、正極10と負極20との短絡状態をより小規模で終了させることができる。
【0038】
また、本実施形態のリチウム二次電池1においては、正極10、負極20及びセパレータ30を拘束する拘束荷重により、熱変形性セパレータ31の熱変形時にリチウム金属箔22の延出部25が正極集電体11に接触するように構成されている。これによって、延出部25と正極集電体11の接触を、拘束荷重を利用して確実に発生させることができる。
【0039】
また、本実施形態のリチウム二次電池1においては、正極10、負極20、セパレータ30を収容する第1外装体51及び第2外装体52と、第1外装体51及び第2外装体52を介して、負極20を正極10側に加圧して拘束荷重を付与する第1加圧板61及び第2加圧板62と、を備え、第1加圧板61は、第1外装体51を介してリチウム金属箔22の延出部25をセパレータ30の外側で正極集電体11側に加圧する突出部65を有する構成とされている。これにより、突出部65によって延出部25がセパレータ30の外側で正極集電体11側に加圧されるので、熱変形時の延出部25と正極集電体11の間の短絡をより確実かつ適切な位置で実現できる。
【0040】
また、本実施形態のリチウム二次電池1においては、リチウム金属箔の延出部25は、正極タブ71の近傍に配置された構成とされている。短絡等に起因する大電流印加時などの異常時において最も発熱量が多い正極タブ71の近傍に延出部25を配置することによって、異常時において速やかに正極10と負極20とを短絡させることができる。
【0041】
また、本実施形態のリチウム二次電池1においては、リチウム金属箔22の延出部25は、積層方向において正極集電体11側に湾曲するように構成されている。これにより、リチウム金属箔22の延出部25は湾曲によって撓みが生じる。熱変形性セパレータ31の熱変形時には、この撓みを利用してより一層確実に延出部25と正極集電体11の間の短絡を実現することができる。
【0042】
上記実施形態では、リチウム金属箔22の延出部25は、湾曲する構成であるが、この構成に限定される訳ではない。次に、図6を参照し、上記実施形態とは異なる構成のリチウム金属箔122について説明する。図6は、変形例のリチウム金属箔122の構成を示す模式図である。図6に示すように、変形例のリチウム金属箔122の延出部125は、積層方向において正極集電体11側に屈曲するように構成される。また、延出部125は、本体124から凸状に突出している。この構成によっても、熱変形性セパレータ31が熱収縮して消失するとともに、熱によってリチウム金属箔122の延出部125が延びて正極集電体11に当接する。延出部125が屈曲しているので、屈曲していない場合に比べて延出部125が正極集電体11に当接するまでの移動量を少なくすることができ、より容易に短絡を実現できる。
【0043】
上記実施形態では、熱変形性セパレータ31は熱収縮性を有するものとして説明したが、熱変形性セパレータ31の熱変形はこれに限定される訳ではない。収縮以外にも、熱によって消失するような材料も熱変形性セパレータとして用いることができる。
【0044】
上記実施形態では、電解質が電解液の場合のリチウム二次電池1を説明したが、この構成に限定される訳ではない。例えば、電解質が固体である固体電解質にも本発明を適用することができる。固体電解質としては、例えば硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質等を用いることができる。硫化物固体電解質の例としては、LiS-P、LiS-P-LiI等が挙げられる。酸化物固体電解質の例としては、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。NASICON型酸化物の例としては、Li、Al、Ti、P及びOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO)が挙げられる。ガーネット型酸化物の例としては、Li、La、Zr及びOを含有する酸化物(例えばLiLaZr12)が挙げられる。ペロブスカイト型酸化物の例としては、Li、La、Ti及びOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO)が挙げられる。
【0045】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 リチウム二次電池
10 正極
11 正極集電体
12 正極合材層
20 負極
21 負極集電体
22 リチウム金属箔
24 本体
25 延出部
30 セパレータ
31 熱変形性セパレータ
51 第1外装体
52 第2外装体
55 凸部
61 第1加圧板
62 第2加圧板
65 突出部
71 正極タブ
72 負極タブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6