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特開2024-127538農産物の鮮度劣化に起因する食品ロスと残留農薬量を減少させる出荷前処理方法
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  • 特開-農産物の鮮度劣化に起因する食品ロスと残留農薬量を減少させる出荷前処理方法 図1
  • 特開-農産物の鮮度劣化に起因する食品ロスと残留農薬量を減少させる出荷前処理方法 図2
  • 特開-農産物の鮮度劣化に起因する食品ロスと残留農薬量を減少させる出荷前処理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127538
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】農産物の鮮度劣化に起因する食品ロスと残留農薬量を減少させる出荷前処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/00 20060101AFI20240912BHJP
   A23B 7/005 20060101ALI20240912BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240912BHJP
   A23L 19/10 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
A23B7/00
A23B7/005
A23L19/00 A
A23L19/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036752
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】518149992
【氏名又は名称】金正水産有限会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 紀子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LG06
4B016LK20
4B016LP05
4B016LP08
4B016LP13
4B169AA04
4B169HA05
4B169KA01
4B169KA10
4B169KB10
4B169KC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明が解決しようとする課題は、世界的に問題となっている食品ロスの減少と残留農薬量の規制が厳しい農産物輸出の拡大である。
【解決手段】「市場に出回る前」の農産物が大量に集まる選果場等の「拠点」で50℃洗いを行うことにより「一度」に「大量」に「短時間」で、農産物の鮮度を復活させ、残留農薬を減少させる。農産物の鮮度を復活させてから市場に流通させる事により、食品ロスの減少を可能にする。残留農薬が減少する事で、輸出先国の厳しい残留農薬基準値を超えることなく農産物の輸出拡大が図れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「市場に出回る前」の農産物に対して行う鮮度復活方法であり、農産物が大量
に集まる選果場等の「拠点」で行う点に特徴がある。50℃付近の温度帯で農
産物を洗浄する事を「市場に出回る前」に「拠点」で行う事により「一度」に
「大量」に「短時間」で鮮度を復活させる事を可能にする鮮度復活方法。
【請求項2】
「市場に出回る前」の農産物に対して行う残留農薬減少方法であり、農産物が
大量に集まる選果場等の「拠点」で行う点に特徴がある。50℃付近の温度帯
で農産物を洗浄する事を「市場に出回る前」に「拠点」で行う事により「一度」
に「大量」に「短時間」で残留農薬を減少させる事を可能にする残留農薬減少
方法。























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物に行う出荷前処理方法であり、鮮度復活・保持と残留農薬量
減少に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本の農産物の輸出は好調で、特にサツマイモの輸出金額は13年間で20倍
になった。 農産物は販売単価が安いことから海上輸送することが多く、通常
1-2週間掛かる輸送中にカビが発生する事が多い。その為、ロス率減少が農
産物輸出の大きな課題になっている。
【0003】
農産物は出回りを平準化する為に、貯蔵庫に保管後、出荷時期をずらして出荷
する事が多い。また、甘味を増加させる等の目的で、貯蔵してから出荷する事
も多く、サツマイモはその代表である。
【0004】
現在、農産物の輸出拡大が大きなテーマとなっている。農産物は輸出先の残留
農薬基準値を超過すると、流通・販売ができなくなる為、残留農薬量が問題と
なる。しかし、日本は温暖で湿潤な気候の為、病気や害虫が発生しやすく、
農薬使用率は高い。農薬には水溶性と脂溶性があり、日本の農薬は水溶性が
多い。「食」の安全・安心の為にも、残留農薬量は少ない事が求められる。
【0005】
厚生労働省によると、残留農薬の検査は自治体が市場等に流通している食品を
収去して検査を行っている。つまり、収穫後であっても「市場に出回る前」は、
「残留農薬検査前」の状態にある。残留農薬に関しては「使用量を減らす研究」
や「残留しにくい農薬開発」が行われており、「家庭で行える残留農薬の落とし
方」は広く周知されている。しかし、「収穫後」から「市場に出回る前」の間に
行う残留農薬減少方法は未開発である。
【0006】
この改善策として「市場に出回る前」に50℃のお湯で洗浄処理を行う方法が
ある。鮮度が復活する事で、農産物の保存期間は飛躍的に伸びる。残留農薬量
の除去率は水洗いよりも高く、輸出検疫にも好都合である。出荷前の農作物が
大量に集まる選果場等の「拠点」においてこの処理を行えば、一度で大量の農
産物の鮮度を復活・保持出来る為、食品ロスを減少出来る。
【0007】
特許文献1に記載されている様に、サツマイモに2回に渡りキュアリング工程
を行う事で、輸送中の腐敗を防ぐ方法もある。しかし、これはサツマイモに限
定される鮮度保持方法であり、他の農作物には通用しない。また、残留農薬に
関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2021-19522号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】平山政二著 「50℃洗い」 (株)小学館 2012年
【0010】
【非特許文献2】タカコ・ナカムラ著 「だれでも簡単、すぐできる! 50℃洗い 驚異の調理法とおいしいレシピ」 実業之日本社 2012年
【0011】
【非特許文献3】愛知県衛生研究所 上野英二文責 「市販農作物に残留する農薬の調理による減少について」 愛知衛研技術情報 第28巻 第2号 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、世界的に問題となっている食品ロスの減少
と、残留農薬量の規制が厳しい農産物輸出の拡大である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために行う農産物の鮮度復活・保持と残留農薬
量減少の方法であり、この方法を行う場所とタイミングに特徴がある。
【0014】
本発明は、家庭でも行える50℃洗いを「市場に出回る前」に農産物が大量に
集まる選果場等の「拠点」で行うことで、「一度」に「大量」に「短時間」で
鮮度を復活し、保存性を高める事を可能にし、結果として食品ロスを減少させ
る。同時に、残留農薬を減少する事で、残留農薬量規制が厳しい農産物輸出の
拡大を可能にする。
【0015】
非特許文献1及び非特許文献2に記載されている様に、推奨されている洗浄時
間は、農作物の種類や大きさ、文献等によっても異なるが、概ね1-5分間と
ある。雑菌が増えるので42-43℃以下にならない様に注意する必要がある。
【0016】
農作物は収穫時に表面の気孔を閉じるが、50℃のお湯でヒートショックを与
えると気孔が開き水分を吸収する為、鮮度が復活すると考えられている。同時
に、耐熱タンパクが野菜表面に生成する事で、防御効果が生じる。腐敗菌を抑
える効果も確認されており、その為、保存性が高まると考えられているが、ま
だ研究の途中であり、はっきりした理由はわかっていない。
【0017】
50℃洗いの農産物への効果としては、下記の事がわかっている。
・野菜がイキイキ蘇る
・食材の旨味が引き出される
・野菜はみずみずしさやハリを取り戻す
・汚れがスッキリ取れる
・渋みや苦み、えぐみの原因となるアクが取れる
・野菜の鮮度が長持ちする
【発明の効果】
【0018】
本発明は農作物の鮮度を復活し、保存性を高める事で食品ロスを減少させる。
また、残留農薬が減少する事で農産物輸出の拡大を可能にする。同時に、農作
物自体の旨味が増し、食感も良くなる。お湯で洗浄する事で残留農薬の他に汚
れもよく落ち、見た目も綺麗になる。結果的に農産物自体の商品価値が向上す
る。農産物表面には菌が付着している事が多い為、輸出検疫にも好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】50℃洗いを行うタイミングが市場に与える範囲の図である。
図2】本発明の一実施例であるサツマイモの選果場における出荷前処理 方法のフローチャートである。
図3】公表されている50℃洗いの種類別洗浄時間の抜粋表である。
図4】50℃洗いの有無による鮮度保持の差に関する実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
農産物が大量に集まる選果場等の拠点で50℃洗いを行う。洗浄時間は図3
表を参考にはするが、個体差や品種によっても差がある為、数回テストしてか
ら全体の洗浄時間を決める事を推奨する。洗浄後の梱包は確実に乾燥してから
行う事で腐敗を防ぐ。
【実施例0021】
選別・キュアリング貯蔵後のサツマイモに対し、実験直前に50℃の温度で洗
浄を行う。全体の流れは図2に示した通りであり、本発明はこの第1工程に当
たる。尚、洗浄時間は図3を参考に5-6分間を予定。3回テストした結果、
一番効果があった時間帯が5分間だった為、洗浄時間は5分間とした。
【0022】
50℃洗いを行ったサツマイモ(A)と行わないサツマイモ(B)を、温度
13℃・湿度90%の庫内で10日間保管し、鮮度保持状態の差を調べた。
すると、Bに比べAのサツマイモ表面の皮色は濃くピンとハリがあり、鮮度の
違いを感じた。切った際もAの方が瑞々しく、焼き芋にした際の糖度はAの方
が6%程度高く、しっとりしており黄色が鮮やかであった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
2015年の国連サミットの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
において、SDGsのターゲット12.3は「小売・消費レベルにおける世界
全体の一人当たりの食品の廃棄を半減させ、収穫後損失等の生産・サプライチ
ェーンにおける食品ロスを減少させる」とある。これは世界規模の目標であり、
この目標を達成させる為に、本発明は非常に有効的である。世界中で輸出する
前に50℃洗いを実践すれば、海上輸送時の食品ロスは大幅に減少するだろう。
残留農薬問題や検疫にも好都合である。50℃洗いを輸出入の条件にする国が
出現する可能性もある。
【0024】
農産物の出回りの平準化目的から、長期保存技術が進歩している。本発明を利
用する事で、長期保存後の農産物の鮮度を復活出来る。
【0025】
50℃洗いを行うと、農産物の鮮度は復活し、汚れが落ちる事で旨味が増加す
る。鮮度は長持ちし、残留農薬は減少する等、メリットが大きい。「50℃洗
い処理済」という付加価値を付けて販売する事で、収益アップが狙える。





図1
図2
図3
図4