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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127540
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
E02F9/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036755
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内 大樹
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 宗
(72)【発明者】
【氏名】江田 潤一
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015AA00
(57)【要約】
【課題】ガード板のガタつきを防止すると共に、ガード板をスムーズにスライド可能にしたシリンダカバーを備える作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、車体と、車体に支持された作業装置と、シリンダチューブに対してシリンダロッドが出没することによって作業装置を動作させる油圧シリンダと、油圧シリンダを保護するシリンダカバーとを備える。シリンダカバーは、シリンダロッドの先端部に取り付けられて、シリンダロッドの出没に伴ってスライドする長尺板状のガード板と、シリンダチューブに固定されて、スライドするガード板の厚み方向の一方側の面に摺接する固定側受け部材と、ガード板を挟んで固定側受け部材と反対側において、ガード板の厚み方向に移動可能に固定側受け部材に支持されて、スライドするガード板の厚み方向の他方側の面に摺接する可動側受け部材と、可動側受け部材をガード板に付勢する付勢部材とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に支持された作業装置と、シリンダチューブに対してシリンダロッドが出没することによって前記作業装置を動作させる油圧シリンダと、前記油圧シリンダを保護するシリンダカバーとを備える作業機械において、
前記シリンダカバーは、
前記シリンダロッドの先端部に取り付けられて、前記シリンダロッドの出没に伴ってスライドする長尺板状のガード板と、
前記シリンダチューブに固定されて、スライドする前記ガード板の厚み方向の一方側の面に摺接する固定側受け部材と、
前記ガード板を挟んで前記固定側受け部材と反対側において、前記ガード板の厚み方向に移動可能に前記固定側受け部材に支持されて、スライドする前記ガード板の厚み方向の他方側の面に摺接する可動側受け部材と、
前記可動側受け部材を前記ガード板に付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記付勢部材は、前記ガード板の幅方向の両側において、自然状態より伸長した状態で前記固定側受け部材及び前記可動側受け部材に接続されて、前記自然状態に復帰しようとする力で前記可動側受け部材を前記ガード板に付勢する一対のコイルバネであることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記固定側受け部材及び前記可動側受け部材は、
前記ガード板に摺接する摺接面と、
前記ガード板のスライド方向における前記摺接面の両側において、前記摺接面から離れるほど前記ガード板との距離が増加する向きに傾斜した一対のガイド面とを有することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記固定側受け部材は、前記ガード板の幅方向の両側において、前記ガード板の厚み方向に延設された長孔が形成された一対の支持部を有し、
前記可動側受け部材は、前記ガード板の厚み方向に移動可能で且つ前記ガード板の幅方向に延びる軸線周りに回転不能な状態で、一対の前記支持部それぞれの前記長孔に挿通された被支持部材を有することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記可動側受け部材は、前記ガード板の幅方向に直交する断面が円弧形状であって、スライドする前記ガード板に摺接する摺接面を有することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記可動側受け部材は、前記ガード板の幅方向に延びる軸線周りに回転可能に前記固定側受け部材に支持されて、スライドする前記ガード板に摺接して回転する円筒部材を有することを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の作業機械において、
前記可動側受け部材は、
前記ガード板の厚み方向に移動可能に前記固定側受け部材に支持される被支持部材と、
前記被支持部材に着脱可能に支持されて、スライドする前記ガード板に摺接する摺接部材とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ガード板は、前記固定側受け部材に対面する面から前記固定側受け部材に向けて突出すると共に、前記ガード板のスライド方向に延設された補強リブを有することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダカバーを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体と、油圧シリンダの伸縮によって動作するフロント作業機とを備える作業機械が知られている。このような作業機械において、剥き出しになった油圧シリンダが作業現場の土砂、岩、その他の障害物に接触すると、油圧シリンダが変形して伸縮できなくなったり、オイルシールを傷つけてオイル漏れを生じる可能性がある。
【0003】
このような課題を解決するために、特許文献1には、シリンダロッドに取り付けられた平板状のガード部材と、シリンダチューブに取り付けられてガード部材を収納するスライドガイドとを備えるシリンダ保護装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4038197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシリンダ保護装置において、スライドガイドとガード部材との隙間を広くし過ぎると、作業機械の振動などによってガード部材がガタつく。一方、スライドガイドとガード部材との隙間を狭くし過ぎると、ガード部材のスムーズなスライドが阻害される。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガード板のガタつきを防止すると共に、ガード板をスムーズにスライド可能にしたシリンダカバーを備える作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に支持された作業装置と、シリンダチューブに対してシリンダロッドが出没することによって前記作業装置を動作させる油圧シリンダと、前記油圧シリンダを保護するシリンダカバーとを備える作業機械において、前記シリンダカバーは、前記シリンダロッドの先端部に取り付けられて、前記シリンダロッドの出没に伴ってスライドする長尺板状のガード板と、前記シリンダチューブに固定されて、スライドする前記ガード板の厚み方向の一方側の面に摺接する固定側受け部材と、前記ガード板を挟んで前記固定側受け部材と反対側において、前記ガード板の厚み方向に移動可能に前記固定側受け部材に支持されて、スライドする前記ガード板の厚み方向の他方側の面に摺接する可動側受け部材と、前記可動側受け部材を前記ガード板に付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガード板のガタつきを防止すると共に、ガード板をスムーズにスライド可能にしたシリンダカバーを備える作業機械を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機械の側面図である。
図2】アームシリンダ及びシリンダカバーの斜視図である。
図3】シリンダカバーの分解斜視図である。
図4】シリンダカバーのガード板の幅方向に直交する断面図である。
図5】シリンダカバーのガード板のスライド方向に直交する断面図である。
図6】変形例1に係る支持ピンを示す図である。
図7】変形例2に係る摺接ブロックを示す図である。
図8】変形例3に係る摺接ブロックを示す図である。
図9】変形例4に係る付勢部材を含むシリンダカバーの横断面図である。
図10】変形例4に係る付勢部材を含むシリンダカバーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業機械1の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械1は、図1の例に限定されず、油圧ショベル、ホイールローダ、クレーン車など、油圧シリンダの伸縮によって動作する作業装置を備えるものであればよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、作業機械1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、作業機械1の側面図である。図1に示すように、作業機械1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道履帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、作業機械1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回装置6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。すなわち、旋回装置6に設けられた旋回モータの駆動により、下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)8と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)と、シリンダカバー20とを主に備える。
【0014】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたアタッチメント13と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、アタッチメント13を駆動させるアタッチメントシリンダ16とを含む。なお、アタッチメントの具体例は特に限定されないが、例えば、バケット、グラップル、カッタ、破砕機、ブレーカ等でもよい。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0015】
キャブ8は、左右方向(車体の幅方向)において、フロント作業機10に隣接して配置されている。より詳細には、キャブ8は、フロント作業機10の左方(左右方向の一方側)に配置されている。但し、キャブ8の配置は前述の例に限定されず、キャブ8は、左右方向におけるフロント作業機10の一方側に配置されていればよい。
【0016】
キャブ8には、作業機械1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ8の内部には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータが操作する操作装置とが設置されている。操作装置は、作業機械1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、ペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0017】
図2は、アームシリンダ15及びシリンダカバー20の斜視図である。図2に示すように、アームシリンダ15は、円筒形状のシリンダチューブ15aと、シリンダチューブ15aに対して出没するシリンダロッド15bとを備える油圧シリンダの一例である。そして、図1に示すように、アームシリンダ15は、シリンダチューブ15aの基端がブーム11に回動可能に支持され、シリンダロッド15bの先端がアーム12に回動可能に支持されることによって、ブーム11及びアーム12の腹面側に取り付けられている。
【0018】
図2(A)及び図2(B)に示すように、アームシリンダ15に対して作動油が給排されることによって、シリンダチューブ15aに対してシリンダロッド15bが出没(すなわち、アームシリンダ15が伸縮)する。また、図2(A)に示すように、シリンダチューブ15aから突出したシリンダロッド15bは、剥き出しの状態になっている。そこで、図1に示すように、シリンダカバー20は、剥き出しのシリンダロッド15bを保護するように、アームシリンダ15を挟んでブーム11及びアーム12と反対側に配置されている。なお、シリンダカバー20によって保護される油圧シリンダは、アームシリンダ15に限定されず、ブームシリンダ14、アタッチメントシリンダ16等でもよい。
【0019】
図3は、シリンダカバー20の分解斜視図である。図4は、シリンダカバー20のガード板23の幅方向に直交する断面図である。図5は、シリンダカバー20のガード板23のスライド方向に直交する断面図である。図3に示すように、シリンダカバー20は、回動ブラケット21と、固定ブラケット22と、ガード板23と、固定側受け部材24と、可動側受け部材25と、一対のコイルバネ26L、26R(付勢部材)とを主に備える。
【0020】
回動ブラケット21は、シリンダロッド15bの先端部に回動可能に支持される。また、回動ブラケット21は、ガード板23の長手方向の一端を支持する。すなわち、ガード板23は、回動ブラケット21を介して、シリンダロッド15bの先端部に回動可能に取り付けられている。
【0021】
固定ブラケット22は、シリンダチューブ15aに支持される。また、固定ブラケット22は、固定側受け部材24を支持する。すなわち、固定側受け部材24は、固定ブラケット22を介して、シリンダチューブ15aに固定されている。固定ブラケット22は、例えば、シリンダチューブ15aの外周面を覆うように取り付けられる半円形状の第1ブラケット22a及び第2ブラケット22bを備える。
【0022】
ガード板23は、長尺板状の部材である。ガード板23の長手方向の一端は、回動ブラケット21に固定されている。また、ガード板23は、長手方向をシリンダロッド15bの出没方向(アームシリンダ15の伸縮方向)に向けて取り付けられている。さらに、ガード板23の長手方向の他端は、固定側受け部材24及び可動側受け部材25にスライド可能に支持(挟持)されている。そして、ガード板23は、シリンダロッド15bの出没に伴ってスライドする。ガード板23のスライド方向は、ガード板23の長手方向、シリンダロッド15bの出没方向、及びアームシリンダ15の伸縮方向に一致する。
【0023】
さらに、図4及び図5に示すように、ガード板23は、厚み方向の一方側の第1面23aと、厚み方向の他方側の第2面23bとを有する。そして、ガード板23は、第1面23aから突出し且つガード板23の延設方向に延びる補強リブ23cを備える。但し、補強リブ23cは、1本に限定されず、ガード板23の幅方向に離間した2箇所に設けられていてもよい。また、補強リブ23cは、省略可能である。
【0024】
固定側受け部材24は、シリンダチューブ15aに固定された状態で、スライドするガード板23の第1面23aに摺接して、ガード板23のスライドをガイドする。固定側受け部材24は、ベース241と、一対の摺接プレート242L、242Rと、一対の支持ブラケット243L、243Rとを主に備える。
【0025】
ベース241は、概ね平板形状の外形を呈する。ベース241は、厚み方向の一方側の面が固定ブラケット22に固定され、厚み方向の他方側の面で一対の摺接プレート242L、242R及び一対の支持ブラケット243L、243Rを支持する。なお、本実施形態では、3種類の部品(ベース241、摺接プレート242L、242R、支持ブラケット243L、243R)で、固定側受け部材24を構成する例を説明するが、全部または一部(例えば、ベース241及び支持ブラケット243L、243R)を一体成形してもよい。
【0026】
一対の摺接プレート242L、242Rは、概ね長方形状の外形を呈する。一対の摺接プレート242L、242Rは、ベース241のガード板23に対面する面に固定される。より詳細には、一対の摺接プレート242L、242Rは、ガード板23の幅方向に離間した位置において、長手方向をガード板23のスライド方向に向けて配置される。そして、図5に示すように、一対の摺接プレート242L、242Rは、ガード板23の幅方向における補強リブ23cの両側において、スライドするガード板23の第1面23aに摺接する。一対の摺接プレート242L、242Rは、例えば、ガード板23との摺動抵抗を低減させるために、耐摩耗性樹脂などで構成される。
【0027】
また、図4に示すように、摺接プレート242Rは、摺接面244と、一対のガイド面245F、245Bとを有する。摺接面244は、ガード板23の第1面23aに摺接する平面である。一対のガイド面245F、245Bは、摺接面244の前端及び後端(すなわち、ガード板23のスライド方向における摺接面244の両側)に設けられている。一対のガイド面245F、245Bそれぞれは、摺接面244から離れるほどガード板23との距離が増加する向きに傾斜した傾斜面である。ガイド面245F、245Bは、例えば、摺接面244の両端部をC面取りまたはR面取りして形成されてもよい。
【0028】
一対の支持ブラケット243L、243Rは、ガード板23の幅方向の両側において、ベース241に固定されている。すなわち、一対の支持ブラケット243L、243Rは、ガード板23の幅方向において、ガード板23を挟んで対向配置されている。また、一対の支持ブラケット243L、243Rは、ベース241からアームシリンダ15と反対側(すなわち、ガード板23及び可動側受け部材25側)に延設されている。さらに、支持ブラケット243L、243Rには、ガード板23の厚み方向に長い長孔246L、246Rが形成されている。
【0029】
支持ブラケット243Rは、概ねクランク形状(Z形状)の外形を呈する。より詳細には、支持ブラケット243Rは、ガード板23の厚み方向に延設された支持部247Rと、支持部247Rのベース241側の端部から支持部247Rの厚み方向に屈曲された被固定部248Rと、支持部247Rのベース241と反対側の端部から被固定部248Rと逆向きに屈曲された被覆部249Rとを備える。支持部247Rには、長孔246Rが形成される。また、被固定部248Rは、ベース241に取り付けられる。さらに、被覆部249Rは、コイルバネ26L、26Rを覆う。支持ブラケット243Lの形状も同様である。
【0030】
可動側受け部材25は、ガード板23を挟んで固定側受け部材24(より詳細には、摺接プレート242L、242R)と反対側に配置されている。また、可動側受け部材25は、ガード板23の厚み方向に移動可能に固定側受け部材24(より詳細には、一対の支持ブラケット243L、243R)に支持されている。さらに、可動側受け部材25は、ガード板23の第2面23bに摺接して、ガード板23のスライドをガイドする。可動側受け部材25は、摺接ブロック251(摺接部材)と、支持ピン252(被支持部材)とを主に備える。
【0031】
摺接ブロック251は、ガード板23を挟んで摺接プレート242L、242Rと反対側に配置されている。すなわち、摺接ブロック251は、ガード板23の第2面23bに対面して配置されている。そして、摺接ブロック251は、スライドするガード板23の第2面23bに摺接する。摺接ブロック251は、例えば、ガード板23との摺動抵抗を低減させるために、耐摩耗性樹脂などで構成される。また、摺接ブロック251には、ガード板23の幅方向に貫通する貫通孔253が形成されている。
【0032】
さらに、図4に示すように、摺接ブロック251は、摺接面254と、一対のガイド面255F、255Bとを有する。摺接面254は、ガード板23の第2面23bに摺接する平面である。一対のガイド面255F、255Bは、摺接面254の前端及び後端(すなわち、ガード板23のスライド方向における摺接面254の両側)に設けられている。一対のガイド面255F、255Bそれぞれは、摺接面254から離れるほどガード板23との距離が増加する向きに傾斜した傾斜面である。ガイド面255F、255Bは、例えば、摺接面254の両端部をC面取りまたはR面取りして形成されてもよい。
【0033】
支持ピン252は、断面形状が真円の丸棒である。支持ピン252は、摺接ブロック251の貫通孔253に挿通されて、両端が摺接ブロック251から突出する。また、摺接ブロック251から突出した支持ピン252の両端それぞれは、一対の長孔246L、246Rに挿入されることによって、一対の支持ブラケット243L、243Rに支持される。これにより、支持ピン252は、摺接ブロック251を支持した状態で、長孔246L、246Rに沿ってガード板23の厚み方向に移動する。換言すれば、摺接ブロック251は、ガード板23の厚み方向に移動可能な状態で、支持ピン252を介して一対の支持ブラケット243L、243Rに支持されている。
【0034】
一対のコイルバネ26L、26Rは、可動側受け部材25(より詳細には、摺接ブロック251)をガード板23の第2面23bに向けて付勢する。これにより、固定側受け部材24及び可動側受け部材25(より詳細には、摺接プレート242L、242R及び摺接ブロック251)が適切な押圧力でガード板23を挟持する。
【0035】
一対のコイルバネ26L、26Rそれぞれは、自然状態より伸長した状態で、固定側受け部材24及び可動側受け部材25に接続されている。そして、一対のコイルバネ26L、26Rは、自然状態に復帰しようとする力(すなわち、収縮力)で可動側受け部材25をガード板23に付勢する。
【0036】
より詳細には、一対のコイルバネ26L、26Rは、ガード板23の幅方向の両側に配置されている。また、一対のコイルバネ26L、26Rは、一端がベース241に固定され、他端が支持ピン252に取り付けられている。これにより、一対のコイルバネ26L、26Rは、ガード板23の幅方向の両側において、互いに独立して摺接ブロック251をガード板23に付勢する。
【0037】
なお、シリンダカバー20の各構成部品は、ボルト等によって着脱可能に取り付けられている。すなわち、摺接プレート242L、242Rは、ベース241に着脱可能に支持されている。同様に、摺接ブロック251は、支持ピン252に着脱可能に支持されている。換言すれば、摺接プレート242L、242R及び摺接ブロック251は、交換可能に構成されている。但し、シリンダカバー20の各構成部品の取付方法は、ボルトに限定されず、溶接、リベットなどでもよい。
【0038】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0039】
上記の実施形態によれば、可動側受け部材25をガード板23に付勢することによって、固定側受け部材24及び可動側受け部材25でガード板23を適切な押圧力で挟持することができる。これにより、作業機械1の駆動時の振動などによってガード板23がガタつくのを防止できる。一方、ガード板23が外力によって塑性変形した場合でも、コイルバネ26L、26Rによって固定側受け部材24及び可動側受け部材25による押圧力が調整されるので、ガード板23をスムーズにスライドさせることができる。
【0040】
なお、ガード板23の塑性変形の具体例としては、長手方向に反り返る形態の他に、長手方向の軸線周りに捩じれる形態もある。そこで上記の実施形態によれば、ガード板23の幅方向の両側で独立して伸縮する一対のコイルバネ26L、26Rによって、可動側受け部材25をガード板23に付勢するので、ガード板23が捩じれた場合でも、固定側受け部材24及び可動側受け部材25による押圧力を適切に調整できる。
【0041】
また、上記の実施形態によれば、摺接面244、254の両側にガイド面245F、245B、255F、255Bを設けたことによって、スライドするガード板23が摺接プレート242L、242Rまたは摺接ブロック251に引っ掛かるのを防止できる。その結果、ガード板23のスライドがさらにスムーズになる。
【0042】
また、上記の実施形態によれば、摺接プレート242L、242R及び摺接ブロック251を着脱可能に構成することによって、ガード板23と摺接して摩耗した摺接プレート242L、242R及び摺接ブロック251を容易に交換することができる。これにより、シリンダカバー20全体を交換する場合と比較して、作業機械1のダウンタイムを削減できると共に、廃棄物の削減にも寄与する。
【0043】
さらに、上記の実施形態によれば、ガード板23に補強リブ23cを設けることによって、ガード板23の強度が向上する。これにより、コイルバネ26L、26Rによる調整能力を超えるガード板23の塑性変形を防止することができる。
【0044】
なお、シリンダカバー20の具体的な構成は、前述の例に限定されない。以下、図6図10を参照して、上記の実施形態に係るシリンダカバー20の変形例1~4を説明する。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。また、上記の実施形態及び以下の変形例1~4は、本発明の趣旨に反しない範囲で全部または一部を組み合わせることができる。
【0045】
[変形例1]
図6は、変形例1に係る支持ピン252aを示す図である。図6に示すように、変形例1に係る支持ピン252aは、ガード板23の幅方向に直交する断面において、互いに平行な一対の平行部256a、256bと、一対の平行部256a、256bの端部同士を接続する一対の円弧部257a、257bとで構成される。すなわち、変形例3に係る支持ピン252aは、丸棒の中心から等距離の2箇所を軸方向に沿って平行に切断した形状に相当する。
【0046】
また、一対の平行部256a、256bの距離D1は、長孔246L,246R(図6では、長孔246Rのみを図示)の短手方向の幅Wより小さい。一方、一対の円弧部257a、257bを含む仮想円の直径D2は、長孔246L,246Rの短手方向の幅Wより大きい。これにより、支持ピン252aは、ガード板23の厚み方向に移動可能で且つガード板23の幅方向に延びる軸線周りに回転不能な状態で、一対の支持ブラケット243L、243R部それぞれの長孔246L、246Rに挿通される。
【0047】
変形例1によれば、スライドするガード板23との摺接によって、摺接ブロック251が回転するのを防止できる。その結果、ガード板23の第2面23bに摺接面254を安定して面接触させることができる。
【0048】
[変形例2]
図7は、変形例2に係る摺接ブロック251aを示す図である。図7に示すように、変形例2に係る摺接ブロック251aは、摺接ブロック251の摺接面254及びガイド面255F、255Bに代えて、ガード板23の幅方向に直交する断面が円弧形状の摺接面254aを備える。すなわち、変形例2に係る摺接面254aは、円柱の外周面の周方向の一部に相当する。
【0049】
変形例2によれば、ガード板23と摺接ブロック251aとの接触面積が削減される。その結果、ガード板23をさらにスムーズにスライドさせることができる。
【0050】
[変形例3]
図8は、変形例3に係る摺接ブロック251bを示す図である。図8に示すように、変形例3に係る摺接ブロック251bは、支持ピン252に外挿された円筒部材である。また、摺接ブロック251bは、ガード板23の幅方向に延びる軸線周りに回転可能に固定側受け部材24に支持されている。一例として、摺接ブロック251bは、支持ピン252に対して回転してもよい。他の例として、摺接ブロック251bを支持する支持ピン252は、支持ブラケット243L、243Rに対して回転してもよい。
【0051】
変形例3によれば、ガード板23のスライドに伴って摺接ブロック251bが回転する。これにより、ガード板23と摺接ブロック251bとの接触面積及び摺接抵抗が削減される。その結果、ガード板23をさらにスムーズにスライドさせることができる。
【0052】
[変形例4]
図9は、変形例4に係る付勢部材を含むシリンダカバー20の横断面図である。図10は、変形例4に係る付勢部材を含むシリンダカバー20の縦断面図である。図9に示すように、変形例4に係るシリンダカバー20は、一対のコイルバネ26L、26Rに代えて、板バネ26(付勢部材)を備える。また、変形例4に係る支持ブラケット243は、ガード板23の摺接プレート242L、242Rと反対側の面を覆う一体構成である。また、ガード板23は、可動側受け部材25に代えて、ガード板23の第2面23b側に、例えば耐摩耗樹脂からなる摺動プレート23d(可動側受け部材の他の例)を備える。そして、板バネ26は、支持ブラケット243と摺動プレート23dとの間に、自然状態より収縮された状態で配置されている。これにより、板バネ26は、自然状態に復帰しようとする力によって、摺接プレート242L、242Rをガード板23に付勢する。
【0053】
変形例4のように、付勢部材として板バネ26を用いることによって、一対のコイルバネ26L、26Rを用いた場合と比較して、ガード板23の厚み方向及び幅方向の両方において、シリンダカバー20を小型化することができる。
【0054】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 作業機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラ
5 走行モータ
6 旋回装置
7 旋回フレーム
8 キャブ
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 アタッチメント
14 ブームシリンダ
15 アームシリンダ
15a シリンダチューブ
15b シリンダロッド
16 アタッチメントシリンダ
20 シリンダカバー
21 回動ブラケット
22 固定ブラケット
22a 第1ブラケット
22b 第2ブラケット
23 ガード板
23a 第1面
23b 第2面
23c 補強リブ
23d 摺動プレート(可動側受け部材)
24 固定側受け部材
25 可動側受け部材
26 板バネ
26L,26R コイルバネ
241 ベース
242L,242R 摺接プレート
243,243L,243R 支持ブラケット
244,254,254a 摺接面
245B,245F,255B,255F ガイド面
246L,246R 長孔
247R 支持部
248R 被固定部
249R 被覆部
251,251a,251b 摺接ブロック
252,252a 支持ピン
253 貫通孔
256a,256b 平行部
257a,257b 円弧部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10