(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127546
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液および製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/46 20060101AFI20240912BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20240912BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C01B33/46
C09C1/28
C09C1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036762
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】脇田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】末益 匠
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩康
【テーマコード(参考)】
4G073
4J037
【Fターム(参考)】
4G073BA57
4G073BA63
4G073BD03
4G073BD13
4G073BD21
4G073CE01
4G073FD04
4G073GA11
4G073GA19
4G073GA33
4G073GA38
4G073UA06
4J037AA18
4J037AA25
4J037CB04
4J037EE08
4J037FF15
(57)【要約】
【課題】
本発明は、極性物質への吸着性能を保った非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含む透明で分散安定性のある有機溶媒の分散液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒を含む分散液であって、分光光度計の波長660nmにおける比吸光度が0.01~1.00であることを特徴とする分散液であり、該分散液は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータと非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータとから形成されるハンセン球径(R値)が9.2以下の有機溶媒と解砕メディアを用いて混合撹拌して得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒を含む分散液であって、当該分散液の分光光度計の波長660nmにおける比吸光度が0.01~1.00であることを特徴とする非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液。
【請求項2】
請求項1記載の分散液であって、前記有機溶媒のハンセン溶解度パラメータが非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータから形成されるハンセン球径(R値)9.2以下である非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液。
【請求項3】
請求項1記載の分散液であって、前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子を1~15重量%含む非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液。
【請求項4】
請求項1記載の分散液であって、前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D50)が50nm~1000nmである非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液。
【請求項5】
請求項1記載の分散液であって、前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子の相対湿度80%での水蒸気吸着量が40重量%以上である非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液。
【請求項6】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子を、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータと非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータとから形成されるハンセン球径(R値)9.2以下の有機溶媒と解砕メディアを用いて混合撹拌することを特徴とする非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒を含む透明性及び分散安定性のある分散液、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、鉱物名としてアロフェンと呼ばれているものに位置づけられており、細孔の分布が広いため飽和水蒸気吸着量が高いだけでなく、水蒸気吸着性能は外気の相対湿度に比例して高くなる性能を持っていることが古くから知られており、吸着剤として利用されている。
【0003】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、前述の通り優れた吸着性能を有しているが、該粒子の表面親水性のために、該粒子を有機溶媒へ分散させるのは困難であった。分散剤や表面処理剤を用いた前記粒子の分散液の作製は可能だが、水蒸気吸着サイトである細孔を塞いでしまう。そのため、前記粒子が持つ特徴を生かしたまま有機溶媒で分散安定性のある分散液を得ることが困難であった。また、塗料等へ混ぜた際、色味や特性へ影響を及ぼさないため、分散液の透明性も求められている。
【0004】
よって、極性物質への吸着性能を保った非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含む透明で分散安定性のある有機溶媒の分散液は、塗料化等をはじめとした該粒子の用途展開に強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-172238号公報
【特許文献2】特開2020-55698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水蒸気に対して高吸着量の非晶質アルミノケイ酸塩粒子は提供されている。しかしながら、有機溶媒を用いた非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液から得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子において、前述の非晶質アルミノケイ酸塩粒子の性能が得られるような分散液は未だに提供されていない。また、分散安定性と透明性に優れた非晶質アルミノケイ酸塩粒子の有機溶媒の分散液は未だに提供されていない。前記諸特性を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子の有機溶媒分散液の製造方法も未だに提供されていない。
【0007】
即ち、前出特許文献1には、水スラリー(分散液)に関する記載のみであり、分散液中の非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、数時間で沈降をしてしまい分散液の透明性も得られない。
【0008】
また、前出特許文献2には、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を非極性溶媒へ分散させる技術が開示されているが、分散粒径は大きく、分散液の透明性に課題がある。また、製造方法も多段階の液置換を繰り返して行う必要があるため工業的であるとは言い難い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題は次のとおりの本発明によって解決できる。
【0010】
即ち、本発明は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒を含む分散液であって、当該分散液の分光光度計の波長660nmにおける比吸光度が0.01~1.00であることを特徴とする非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液である。(本発明1)
【0011】
また、本発明は、本発明1記載の分散液であって、前記有機溶媒のハンセン溶解度パラメータが非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータから形成されるハンセン球径(R値)9.2以下である非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液である。(本発明2)
【0012】
また、本発明は、本発明1記載の分散液であって前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子を1~15重量%含む非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液である。(本発明3)
【0013】
また、本発明は、本発明1記載の分散液であって、前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D50)が50nm~1000nmである非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液である。(本発明4)
【0014】
また、本発明は、本発明1記載の分散液であって、前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子の相対湿度80%での水蒸気吸着量が40重量%以上である非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液である。(本発明5)
【0015】
また、本発明は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータと非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータとから形成されるハンセン球径(R値)9.2以下の有機溶媒と解砕メディアを用いて混合撹拌することを特徴とする非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液の製造方法である。(本発明6)
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液は、水蒸気に対して高い吸着性能を有する親水性非晶質アルミノケイ酸塩粒子を有機溶媒中に分散させた分散液である。該分散液は、透明性及び分散安定性に優れている。また、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液から得られる非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、優れた吸着性能を維持することが可能である。
【0017】
また、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液の製造方法は、簡易で、環境への負荷も小さく、工業的な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構成を詳述すれば、次の通りである。
【0019】
先ず、本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子について述べる。
【0020】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末は、その名の通り非晶質であり、元素の並びにほとんど周期性はない。化学構造は一般式aNa2O・bSiO2・Al2O3・nH2Oで表わされる。ここで、一般式のAl2O3を1molとしており、aの値は非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末内に含まれるNa量により変化する値であり、bの値はケイバン比(SiO2/Al2O3のmol比)とも呼ばれており、また、前記一般式中のnは水蒸気吸着に応じて変化する係数でありH2Oは吸着水を表している。Si4+とAl3+は互いにO2-を共有する箇所が存在するため、Si4+周辺は電気的に中性であっても、Al3+周辺はマイナス1価として帯電している。そのため、Al3+周辺は電気的中性になるようM+イオンで補われる。該M+イオンは雰囲気によりイオン交換され、前記粒子の系外へ出されることもある。Mは特に限定はしないがナトリウムなどが挙げられる。
【0021】
本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、特開2018-172238号公報を参考に、既報に従い得ることができる。aの値は0.01~0.25が好ましく、bの値は0.80~1.10が好ましく、平均一次粒子径は2~50nm程度が好ましく、平均凝集粒子径は1~3000μm程度が好ましく、比表面積400~1000m2/g程度、嵩密度が0.30~0.80g/cm3程度の非晶質アルミノケイ酸塩粒子が好ましい。
【0022】
次に、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含む分散液および分散液から得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子について述べる。
【0023】
有機溶媒中へ非晶質アルミノケイ酸塩粒子を分散させた分散液は、分光光度計の波長660nmにおける比吸光度が0.01以上1.00以下である。比吸光度が低いほど透明性が高いことを意味する。分光光度計の光源波長660nmにおける比吸光度が0.01未満では10日間以上の保存安定性を得られない虞があり、1.00を超えると分散液の十分な透明性が得られない虞がある。分散液の比吸光度は0.02以上0.90以下がより好ましく、0.03以上0.85以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明に係る分散液の溶媒は、有機溶媒である。好ましい有機溶媒は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子のハンセン溶解度パラメータ(HSP)値と既知の溶媒のHSP値とを比較し選定される。
【0025】
本発明におけるHSP値は溶解性の指標であり、分子間の分散力δd、双極子間力δp、水素結合力δhの3つのパラメータから3次元的に形成・算出される。非晶質アルミノケイ酸塩粒子のHSP値を3次元パラメータとしてプロットし、既知の各種溶媒のHSP値を3次元パラメータプロットとし、両プロット間の距離をハンセン球径(R値)とした。
【0026】
本発明におけるR値は、各有機溶媒に対する非晶質アルミノケイ酸塩粒子の親和性を推算する指標である。R値が大きいほど非晶質アルミノケイ酸塩粒子と溶媒の相溶性が低く馴染みにくいことを意味し、R値が小さいほど相溶性が高く馴染みやすいことを意味する。
【0027】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子と各有機溶媒間のR値は、9.2以下が好ましく、8.5以下がより好ましく、7.5以下がさらに好ましい。R値の下限は0である。
【0028】
R値9.2以下の有機溶媒は、分子間の分散力δd、双極子間力δp、水素結合力δhの3つのパラメータから3次元的に形成・算出されるHSP値が非晶質アルミノケイ酸塩粒子のHSP値と近いため、親和性が高く、該溶媒中では十分に分散でき、凝集が生じ難い。そのため、本発明に係る分散液は、透明性および分散安定性を有する。
【0029】
R値が9.2以下の溶媒は以下に限定されないが、例えば、エタノールやN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ、ジプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジアセチン、スルホラン、プロピレングリコール(PG)、テトラヒドロフルフリルアルコール、γ-ブチロラクトン(GbI)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)、メタノール、乳酸エチル、へキシレングリコール、ジアセトンアルコール、1-プロパノール、シレン、ε-カプロラクタン、ベンジルアルコール、2-プロパノール(IPA)、グリセロールカルボナート、フェニルセロソルブ、ペンチルアルコール、1-ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE)、2-ブタノール、メトテート(PGME)などが挙げられ、極性有機溶媒が好ましい。
【0030】
本発明に係る分散液中の非晶質アルミノケイ酸塩粒子濃度は、1~15重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましく、3~8重量%がさらに好ましい。1重量%未満の場合、固形分濃度が低すぎるため生産効率の面で好ましくなく、15重量%を超えると流動性が悪くなるため、分散液の分散安定性や十分な透明性を得ることが困難である。
【0031】
本発明に係る分散液中に分散した非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D50)は、50nm~1000nmが好ましい。分散粒子径(D50)が50nmより小さい、あるいは1000nmよりも大きい場合、10日間以上の分散安定性に優れる分散液を作製することが困難な虞がある。分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D50)は70nm~800nmがより好ましく、さらに好ましくは80nm~650nmである。
【0032】
本発明に係る分散液中に分散した非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径のうち、D10、D90についても、それぞれ、50nm~1000nmが好ましい。分散粒子径D10、D90が前記範囲にあることによって、10日間以上の分散安定性に優れる分散液を作製することが容易になる。分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D10)は、60nm~600nmがより好ましく、さらに好ましくは70nm~500nmである。分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径(D90)は、100nm~900nmがより好ましく、さらに好ましくは200nm~800nmである。
【0033】
本発明に係る分散液の粘度は、1~200mPa・sであることが好ましい。粘度が1mPa・s未満の分散液は非晶質アルミノケイ酸塩粒子の濃度が低すぎる場合になるため好ましくない。粘度が200mPa・sより大きい分散液はハンドリング性が悪くなるため好ましくない。より好ましくは2~180mPa・sであり、更により好ましくは2.5~160mPa・sである。
【0034】
本発明に係る分散液から得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子の平均一次粒子径は、2~50nmが好ましい。平均一次粒子径が2nm未満の粒子を製造することは工業的に困難であり、また、平均一次粒子径が50nmを超えた粒子は比表面積が小さく、ガス吸着性能が劣る。より好ましくは3~30nmである。
【0035】
本発明に係る分散液に分散した非晶質アルミノケイ酸塩粒子のBET比表面積は、500~700m2/gが好ましい。BET比表面積が500m2/g未満の場合には水蒸気の吸着性能が下がるため好ましくない。700m2/gを超えると分散液の透明性が得られない虞がある。より好ましいBET比表面積は550~670m2/gである。
【0036】
本発明に係る分散液に分散した非晶質アルミノケイ酸塩粒子の相対湿度80%における水蒸気吸着量は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子に対して40重量%以上が好ましい。水蒸気吸着量が40重量%より小さい場合、吸着材として使用する際に十分な効果を発揮しない虞があるため、43重量%以上がより好ましく、47重量%以上がさらに好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液および分散液から得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子の製造方法について述べる。
【0038】
本発明に係る分散液の製造方法は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を、有機溶媒と解砕メディアとを用いて混合撹拌することを特徴とする。
【0039】
解砕メディアを用いた分散液、及び混合分散液への有機溶媒の添加、及び濃縮については、湿式アトライタ、ロータリーエバポレーター、湿式ビーズミル、湿式ハンディミル、湿式ボールミル、湿式横型連続式解砕機等を用いるのが好ましい。解砕メディアは、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を解砕および攪拌できる方法であれば特に限定はせず、湿式で行うことが好ましい。
【0040】
前述の解砕メディアについては、ガラス、スチール、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、窒化ケイ素製を用いるのが好ましい。一方、ナイロン等の樹脂球は比重が軽く、懸濁液や混合分散液の濃縮時にそれらが流動しなくなり、混合解砕ができなくなる。そのため、樹脂球の使用は好ましくない
【0041】
解砕メディアの形状は真球状が好ましい。メディアの直径は0.1mm~20.0mmが好ましい。0.1mm未満ではメディアが軽く、懸濁液及び混合分散液が増粘した時に、メディアが流動しなくなるので好ましくない。20.0mmより大きいと、効率的な解砕が困難となり、生産性の高い製造方法とはなり難く、好ましくない。より好ましいメディアの直径は0.3mm~15.0mm、更により好ましくは0.4mm~10.0mmである。
【0042】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の有機溶媒への混合攪拌時間は、十分に攪拌および有機溶媒中へ均一に分散できればよく、特に限定しないが、12~24時間程度が好ましい。解砕メディアによる処理を十分に行うことで該粒子の凝集が解砕され、分散が進行する。
【0043】
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液は、分散剤や界面活性剤等の添加剤を含むことができ、攪拌前または攪拌中に添加することが好ましい。
【0044】
本発明における分散剤は、特に限定せずポリエーテル系、ポリエステル系、カルボン酸系、リン酸エステルなどが挙げられ、界面活性剤は、特に限定せずカルボン酸塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系などが挙げられ、1種または2種以上を混合して用いても良い。分散剤の添加量は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子表面の細孔を過度に塞がない程度に含有あるいは表面付着していればよく、非晶質アルミノケイ酸塩に対する重量%で0.1~5.0重量%程度が好ましい。分散剤を加えることで該粒子の比表面積が減少し、分散液の透明性の向上や粒子の微粒子化が進行する。
【0045】
本発明に係る分散液は、CDドライヤ、スプレードライヤなどによって溶媒除去することで分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子を得ることができる。
【0046】
本発明に係る分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、出発原料としては、親水性粒子である。R値9.2以下の有機溶媒へ前記粒子を含み、透明性が高く分散安定性のある分散液とできる理由は未だ明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。本発明に係る分散液は、該粒子の分子間の分散力δd、双極子間力δp、水素結合力δhの3つのパラメータを総合的に考慮し、該粒子と前記3つの物性の近い有機溶媒を媒質に使うことで、溶媒と粒子間で静電相互作用が取れて安定になる。そのため、溶媒と粒子は相溶性を示し、該粒子の凝集が生じず有機溶媒中へ安定的に分散した透明性のある分散液とできると発明者は解釈している。また、解砕メディアによる外部応力を加えることでより凝集の少ない微粒子の状態となり、分散液の透明性が得られたと考える。事実として、R値9.2以下の溶媒に対して一定の分散粒子径で安定した分散状態の透明性が高い分散液とできている。
【0047】
また、本発明に係る分散液から得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、相対湿度80%のような高湿度帯域における水蒸気吸着が優れている。高湿度帯における吸着には該粒子表面の細孔サイズの大きい部分が関わっていることが知られている。分散溶媒に応じて、分散過程による微粒子化に伴う粒子表面の細孔構造の割合やサイズが異なることが推察されるが、本発明における非晶質アルミノケイ酸塩粒子は比較的大きい細孔サイズを有していることが推察される。
【実施例0048】
本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子の比表面積値は、BET法により測定した。測定装置は、マルチソーブ(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン製)を使用して測定した。前処理条件は窒素ガスを通気しつつ120℃、2hの条件で脱気をした。
【0050】
分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径は、大塚電子(株)製FPAR1000およびセイシン企業(株)製LMS-2000eを用いて測定した。FPAR1000は測定原理として動的光散乱を用いており、後述する分散安定性評価結果が〇のサンプルの粒子径の測定を行っている。一方で、分散安定性評価結果×のサンプルは、動的光散乱を用いた測定ができないので、測定原理としてレーザー回折を用いたLMS-2000eで粒子径を測定している。いずれも、測定した体積からD10、D50、D90を評価した。
【0051】
分散液から得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子の水蒸気吸着量は、マイクロトラック・ベル(株)製ベルソープaqua3を用いて測定した。測定サンプルを試料フォルダーに充填後、予め真空ポンプで減圧した。同時に、該フォルダーを温度120℃で2.5h加熱をし、フォルダー内圧が10-2kPaまで減圧したことを確認した。その後、窒素置換を行ったもの用い、相対湿度1~90%をパラメータとして、温度25℃にて水蒸気吸着量を測定した。
【0052】
比吸光度は、日立分光光度計UH5300を用いて光源の波長380~850nmにて測定し、660nmにおける比吸光度を表2へ記載した。測定に使用したセル長は1mmであり、blankとして測定する分散液に用いた各種溶媒を使用しており、これを基準とした比吸光度(セル長1cm、濃度1重量/体積%溶液に換算した場合の吸光度)(測定値―blank測定値)を評価した。
【0053】
分散安定性の評価は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液を10日間静置し、目視にて、沈降が生じないものを○、沈降が生じるものを×とした。
【0054】
ハンセン溶解度パラメータは、xigononotools社製acornareaを用いてパルスNMR測定にて25℃で測定した。測定は、28種類の溶媒に非晶質アルミノケイ酸塩粒子を分散した分散液(濃度5重量%)を直径5mmガラス製マイクロチューブに充填して行った。各溶媒に対し非晶質アルミノケイ酸塩粒子が安定の状態になるまでの緩和時間を測定し、分子間の分散力δd、双極子間力δp、水素結合力δhの3つのパラメータ(ハンセン溶解度パラメータ(HSP))を評価した。
【0055】
パルスNMR測定に使用した28種類の溶媒は、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール(IPA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、N-メチルピロリドン(NMP)、ジオキサン、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトニトリル、アセトン、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルエーテル、エチレングリコール、エタノールアミン、炭酸プロピレンである。
【0056】
各溶媒から得られたHSP値をもとに、映像工房クエスチョン製のハンセン溶解度パラメータ推算プログラム(HSPiP)を用いて非晶質アルミノケイ酸塩粒子のHSP値を推算し、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と各有機溶媒のHSP値を3次元パラメータとしてプロットした際の距離をハンセン球径(R値)とした。得られた非晶質アルミノケイ酸塩粒子のHSP値を既知の溶媒HSP値と比較することで各種溶媒に対する非晶質アルミノケイ酸塩粒子の親和性を推定した。非晶質アルミノケイ酸塩粒子ならびに本発明において選択した既知の有機溶媒のHSP値とハンセン球径(R値)を表1に示す。
【0057】
【0058】
実施例1
既報(特開2018-172238号公報)に従い、組成aの値が0.04、bの値は1.02、平均一次粒子径10nm、平均凝集粒子径147μm、比表面積742m2/g、嵩密度:0.55g/cm3の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を得た。
【0059】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒の混合攪拌は、内容積250mLの容器中に、ジルコニア球(0.4mm)を350g加えた後、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を5g、溶媒としてエタノールを95g追加した。解砕メディアとしてボールミルを用い、攪拌(250rpm)を24時間(h)行い、非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液を作製した。
【0060】
実施例2~4
溶媒を表2の通り種々変更し、実施例1と同様の手段で非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液を作製した。
【0061】
実施例5
実施例1と同様の手段で得た非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒の混合攪拌は、内容積250mLの容器中に、ジルコニア球(0.4mm)を350g加えた後、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を5g、溶媒としてエタノールを95g追加した。さらに分散剤としてポリエーテル系分散剤(BYK-LPC22092)を1.0重量%加え、ボールミルを用い、攪拌(250rpm)を24h行い、非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液を作製した。
【0062】
実施例6~12、比較例1、2
分散条件を表2の通り種々変更し、実施例5と同様の手段で非晶質アルミノケイ酸塩の分散液を作製した。
【0063】
得られた各非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液を用いて分散液の特性(分散粒子径、比吸光度、分散安定性)を評価し、表2へ記載した。
【0064】
また、得られた各非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液10gを容器へ入れ、乾燥機を用いて90分乾燥させ非晶質アルミノケイ酸塩粒子粉末を得た。該粒子粉末を用いて、分散液から得た粒子の特性(比表面積(m2/g)および相対湿度80RH%水蒸気吸着量(重量%))を評価し、表2へ記載した。
【0065】
【0066】
非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒のR値9.2以下、すなわち非晶質アルミノケイ酸塩粒子と親和性の高い有機溶媒の分散液は、比吸光度が低く透明性があった。また、分散粒子径はD10、D50、D90のいずれも1000nm以下であり、また、10日間静置しても沈降が生じておらず、分散安定性に優れることが確認された。
【0067】
既報の非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、凝集力の強い素材であり、粉末あるいは溶媒中では粒子同士が凝集した状態をとっている。この状態における分散粒子径は1~200μmと幅広い分布を示し、分散液をしばらく静置しておくと、大きい粒子が沈降する。非晶質アルミノケイ酸塩粒子と親和性の高い有機溶媒の該分散液に解砕メディアによる攪拌を行うことで、機械的圧力や物理的衝撃により、凝集状態が緩和されるとともに微粒子化および分散が進行することで分散安定性および透明性を示す。分散液の微粒子化および分散の進行度は、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と有機溶媒の親和性が非常に重要となっており、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と親和性の低い有機溶媒はボールミル攪拌を行っても微粒子化がほとんど進行せず、沈降が発生する(比較例1、2)。
本発明に係る非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散液は、従来では困難であった親水性多孔質物質である非晶質アルミノケイ酸塩粒子を有機溶媒中へ分散させた分散液である。該分散液に含まれる非晶質アルミノケイ酸塩粒子の分散粒子径が小さいため、該分散液は透明性を有し、沈降性が低く分散安定性に優れる。また、非晶質アルミノケイ酸塩粒子と親和性のある溶媒を選定したことで分散安定性のある分散液にできた。さらに、該分散液を乾燥して得られた粒子粉末は、高比表面積と高水蒸気吸着性能を持つため、極性ガス吸着材として有用である。即ち、高親水性を保持した多孔質物質の分散液をその性能を損なわずに有機溶媒に安定して分散させることが本発明により可能となった。該分散液によって、これまでに困難であった塗料化等が可能となり新規用途展開が見込まれる。