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特開2024-127547バンドパスフィルタ、共振点検出器、制御装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127547
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バンドパスフィルタ、共振点検出器、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/02 20060101AFI20240912BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H03H17/02 635Z
G05B11/36 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036763
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮介
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA30
5H004GB06
5H004HA14
5H004HB14
5H004KB01
5H004LA12
5H004LA13
5H004MA14
(57)【要約】
【課題】周波数特性を変更可能なバンドパスフィルタ、より簡単な構成で共振周波数を検出できる共振点検出器、共振周波数が不明である場合にも制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制できる制御装置、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】入力信号の入力を受ける第1入力端子と、中心周波数に関する情報の入力を受ける第2入力端子と、出力信号を出力する出力端子と、入力信号に対し、入力信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、入力信号に含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、出力信号を生成し、生成した出力信号を前記出力端子に出力するとともに、信号処理を行う際に、第2入力端子に入力された中心周波数に関する情報に応じて所定の周波数帯域の中心周波数を変更する信号処理部と、を備えたバンドパスフィルタが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の入力を受けるための第1入力端子と、
中心周波数に関する情報の入力を受けるための第2入力端子と、
前記入力信号に対して信号処理を行った後の出力信号を外部に出力するための出力端子と、
前記第1入力端子に入力された前記入力信号に対し、前記入力信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、前記入力信号に含まれる前記所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、前記出力信号を生成し、生成した前記出力信号を前記出力端子に出力するとともに、前記信号処理を行う際に、前記第2入力端子に入力された前記中心周波数に関する情報に応じて前記所定の周波数帯域の中心周波数を変更する信号処理部と、
を備えたバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記信号処理部は、
所定のゲインをKとし、
前記第2入力端子に入力された前記情報の表す前記中心周波数の中心角周波数をωとし、
前記所定の周波数帯域の帯域幅を表す減衰係数を2ζとし、
ラプラス演算子をsとする時に、
以下の数1の伝達関数に基づいて前記信号処理を行うことにより、前記第2入力端子に入力された前記情報に応じて、前記所定の周波数帯域の前記中心周波数を変更する請求項1記載のバンドパスフィルタ。
【数1】
【請求項3】
前記入力信号は、所定のサンプリング周期で取得され、
前記信号処理部は、前記入力信号に前記サンプリング周期を乗算することで面積を演算し、前記面積の演算結果に前記面積の演算結果の前回値を加算することにより、離散的に取得される前記入力信号の積分を行う積分器を有する請求項2記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
入力信号が入力されるとともに、前記入力信号の基本波周波数の情報が入力され、前記入力信号に含まれる前記基本波周波数の成分を減衰させ、前記基本波周波数以外の成分を通過させる信号処理を行うバンドリジェクトフィルタと、
バンドパスフィルタであって、
前記バンドリジェクトフィルタからの信号の入力を受けるための第1入力端子と、
中心周波数に関する情報の入力を受けるための第2入力端子と、
前記バンドリジェクトフィルタからの前記信号に対して信号処理を行った後の出力信号を外部に出力するための出力端子と、
前記第1入力端子に入力された前記信号に対し、前記信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、前記信号に含まれる前記所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、前記出力信号を生成し、生成した前記出力信号を前記出力端子に出力するとともに、前記信号処理を行う際に、前記第2入力端子に入力された前記中心周波数に関する情報に応じて前記所定の周波数帯域の中心周波数を変更する信号処理部と、
を有するバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタから入力された信号の大きさが予め設定された検出レベル以上か否かを比較する比較器と、
前記比較器の比較結果が前記検出レベル未満である場合に、前記バンドパスフィルタに入力する前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数を時間の経過に応じて変化させ、前記比較器の比較結果が前記検出レベル以上である場合に、前記バンドパスフィルタに入力する前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数の変化を停止させることにより、前記検出レベル以上となった時の前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数を共振周波数として検出し、前記入力信号に含まれる前記共振周波数の成分を前記出力信号として前記バンドパスフィルタに出力させる周波数設定回路と、
を備えた共振点検出器。
【請求項5】
制御対象から取得した信号に含まれる共振周波数の成分を検出し、検出した前記共振周波数の成分を出力信号として出力する共振点検出器と、
前記制御対象の制御の目標値と、前記共振点検出器の前記出力信号と、を基に、前記制御対象の動作を制御することにより、前記制御対象から取得した前記信号に含まれる前記共振周波数の成分を抑制した制御を行う制御部と、
を備え、
前記共振点検出器は、
前記制御対象から取得した前記信号が入力信号として入力されるとともに、前記入力信号の基本波周波数の情報が入力され、前記入力信号に含まれる前記基本波周波数の成分を減衰させ、前記基本波周波数以外の成分を通過させる信号処理を行うバンドリジェクトフィルタと、
バンドパスフィルタであって、
前記バンドリジェクトフィルタからの信号の入力を受けるための第1入力端子と、
中心周波数に関する情報の入力を受けるための第2入力端子と、
前記バンドリジェクトフィルタからの前記信号に対して信号処理を行った後の出力信号を外部に出力するための出力端子と、
前記第1入力端子に入力された前記信号に対し、前記信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、前記信号に含まれる前記所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、前記出力信号を生成し、生成した前記出力信号を前記出力端子に出力するとともに、前記信号処理を行う際に、前記第2入力端子に入力された前記中心周波数に関する情報に応じて前記所定の周波数帯域の中心周波数を変更する信号処理部と、
を有するバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタから入力された信号の大きさが予め設定された検出レベル以上か否かを比較する比較器と、
前記比較器の比較結果が前記検出レベル未満である場合に、前記バンドパスフィルタに入力する前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数を時間の経過に応じて変化させ、前記比較器の比較結果が前記検出レベル以上である場合に、前記バンドパスフィルタに入力する前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数の変化を停止させることにより、前記検出レベル以上となった時の前記中心周波数に関する情報の前記中心周波数を共振周波数として検出し、前記入力信号に含まれる前記共振周波数の成分を前記出力信号として前記バンドパスフィルタに出力させる周波数設定回路と、
を有する制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御対象の制御の前記目標値から前記共振点検出器の前記出力信号を減算し、前記目標値を補正することにより、前記共振周波数の成分を抑制した制御を行う請求項5記載の制御装置。
【請求項7】
制御対象から取得した信号に含まれる基本波周波数の成分を減衰させ、基本波周波数以外の成分を通過させる第1信号処理を行う工程と、
前記第1信号処理後の信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、前記第1信号処理後の信号に含まれる前記所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる第2信号処理を行うことにより、出力信号を生成する工程と、
前記出力信号の大きさが予め設定された検出レベル以上か否かを比較する工程と、
比較結果が前記検出レベル未満である場合に、前記第2信号処理の前記所定の周波数帯域の中心周波数を時間の経過に応じて変化させる工程と、
比較結果が前記検出レベル以上である場合に、前記第2信号処理の前記所定の周波数帯域の前記中心周波数の変化を停止させることにより、前記検出レベル以上となった時の前記中心周波数を共振周波数として検出し、前記制御対象から取得した信号に含まれる前記共振周波数の成分を前記出力信号として出力する工程と、
前記制御対象の制御の目標値と、前記出力信号と、を基に、前記制御対象の動作を制御することにより、前記制御対象から取得した前記信号に含まれる前記共振周波数の成分を抑制した制御を行う工程と、
を備えた制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バンドパスフィルタ、共振点検出器、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象から所定の周波数で振動する信号を取得し、取得した信号が目標値に追従するように、制御対象のフィードバック制御を行う制御装置がある。例えば、電力変換装置に用いられる制御装置では、制御装置が、制御対象である主回路部から所定の周波数で振動する交流電圧の電圧信号を取得し、取得した電圧信号が目標値に追従するように、主回路部による電力変換の動作をフィードバック制御する。
【0003】
こうした制御装置において、制御対象から取得する信号に制御対象の共振に起因する共振周波数の成分が重畳してしまう場合がある。このように、信号に共振周波数の成分が重畳すると、フィードバック制御を行った際にも、制御対象の信号を目標値に追従させることが難しくなってしまう可能性がある。これにより、例えば、制御対象の動作が不安定になってしまう可能性がある。
【0004】
このため、制御装置において、制御対象の共振周波数に対応するバンドパスフィルタを設け、制御対象から取得した信号に含まれる共振周波数の成分を抽出することにより、制御対象の共振の影響を抑制することが提案されている。これにより、制御対象において共振が発生した際にも、共振の影響を抑制し、より適切に制御対象の動作を制御することができる。
【0005】
また、制御対象によっては、共振周波数が不明である場合もある。この場合に、周波数特性の異なる複数のバンドパスフィルタを用いた共振点検出器を制御装置に設け、共振点検出器で共振周波数の検出を行うことが提案されている。制御装置は、共振点検出器によって検出された共振周波数を基に、共振の抑制を行う。これにより、共振周波数が不明である場合にも、制御対象の共振の影響を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、このように、複数のバンドパスフィルタを設けた場合には、共振点検出器及び制御装置の構成が複雑化してしまう。例えば、共振点検出器及び制御装置の大型化や製造コストの増加などを招いてしまうことが懸念される。
【0007】
このため、制御対象から所定の周波数で振動する信号を取得し、取得した信号が目標値に追従するように、制御対象のフィードバック制御を行う制御装置においては、共振周波数が不明である場合にも、制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制できるようにすることが望まれる。
【0008】
また、この制御装置に用いられる共振点検出器においては、より簡単な構成で共振周波数を検出できるようにすることが望まれる。そして、この共振点検出器において、より簡単な構成で共振周波数を検出できるようにするために、周波数特性を変更可能なバンドパスフィルタが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-140221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、周波数特性を変更可能なバンドパスフィルタ、より簡単な構成で共振周波数を検出できる共振点検出器、共振周波数が不明である場合にも制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制できる制御装置、及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態によれば、入力信号の入力を受けるための第1入力端子と、中心周波数に関する情報の入力を受けるための第2入力端子と、前記入力信号に対して信号処理を行った後の出力信号を外部に出力するための出力端子と、前記第1入力端子に入力された前記入力信号に対し、前記入力信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、前記入力信号に含まれる前記所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、前記出力信号を生成し、生成した前記出力信号を前記出力端子に出力するとともに、前記信号処理を行う際に、前記第2入力端子に入力された前記中心周波数に関する情報に応じて前記所定の周波数帯域の中心周波数を変更する信号処理部と、を備えたバンドパスフィルタが提供される。
【発明の効果】
【0012】
周波数特性を変更可能なバンドパスフィルタ、より簡単な構成で共振周波数を検出できる共振点検出器、共振周波数が不明である場合にも制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制できる制御装置、及びその制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るバンドパスフィルタを模式的に表すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るバンドパスフィルタの変形例を模式的に表すブロック図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第1の実施形態に係るバンドパスフィルタの特性の一例を模式的に表すグラフである。
図4】第2の実施形態に係る共振点検出器を模式的に表すブロック図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、第2の実施形態に係る共振点検出器の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図6】第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図7】第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図8】第3の実施形態に係る制御装置の制御方法の一例を模式的に表すフローチャートである。
【0014】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るバンドパスフィルタを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、バンドパスフィルタ10は、第1入力端子11と、第2入力端子12と、出力端子13と、信号処理部14と、を備える。
【0016】
第1入力端子11は、信号処理の対象となる入力信号uの入力を受けるための入力端子である。第2入力端子12は、中心周波数fに関する情報の入力を受けるための入力端子である。この例では、中心周波数fに関する情報として、中心角周波数ωの情報を入力している。中心角周波数ωは、ω=2πfで表すことができる。中心周波数fに関する情報は、例えば、中心周波数fそのものの情報でもよい。中心周波数fに関する情報は、上記に限ることなく、信号処理部14において中心周波数fを適切に認識することが可能な任意の情報でよい。
【0017】
出力端子13は、入力信号uに対して信号処理を行った後の出力信号yを外部に出力するための端子である。信号処理部14は、第1入力端子11に入力された入力信号uに対し、入力信号uに含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、入力信号uに含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、出力信号yを生成し、生成した出力信号yを出力端子13に出力する。
【0018】
信号処理部14は、上記の信号処理を行う際に、第2入力端子12に入力された情報に応じて所定の周波数帯域の中心周波数fを変更する。換言すれば、信号処理部14は、入力信号uに含まれる周波数成分のうち、第2入力端子12に入力された情報に応じた中心周波数fの所定の周波数帯域の周波数成分のみを通過させる信号処理を行う。
【0019】
信号処理部14は、例えば、演算器20と、減算器21と、積分器22と、演算器23と、乗算器24と、加算器25と、積分器26と、乗算器27、28と、を有する。
【0020】
信号処理部14は、第1入力端子11から入力された入力信号uを演算器20に入力する。演算器20は、入力された入力信号uに対して所定のゲインKを乗算する演算を行い、演算後の信号を減算器21に入力する。
【0021】
減算器21には、演算器20の演算結果が入力されるとともに、加算器25の加算結果が入力される。減算器21は、演算器20の演算結果から加算器25の加算結果を減算し、減算後の信号を積分器22に入力する。
【0022】
積分器22は、減算器21から入力された信号の積分演算を行い、積分演算後の信号を演算器23及び積分器26に入力する。
【0023】
演算器23は、積分器22から入力された信号に対して減衰係数2ζを乗算する演算を行い、演算後の信号を乗算器24に入力する。減衰係数2ζは、周波数帯域の帯域幅を表す係数である。減衰係数2ζは、フィルタの鋭さを表すQ値の逆数によって表される。すなわち、減衰係数2ζは、2ζ=1/Qで表される。Q値は、バンドパスフィルタ10の抵抗成分をR、容量成分をC、誘導成分をLとする時、Q=R√(C/L)で表される。減衰係数2ζは、換言すれば、バンドパスフィルタ10(信号処理部14)の抵抗成分R、容量成分C、及び誘導成分Lの関係を表す係数である。
【0024】
乗算器24には、演算器23の演算結果が入力されるとともに、第2入力端子12から入力された中心角周波数ωの情報が入力される。乗算器24は、入力された演算器23の演算結果に中心角周波数ωを乗算することにより、出力信号yを演算し、出力信号yを出力端子13に出力するとともに、出力信号yを加算器25に入力する。
【0025】
積分器26は、積分器22から入力された信号の積分演算を行い、積分演算後の信号を乗算器27に入力する。
【0026】
乗算器28には、第2入力端子12から入力された中心角周波数ωの情報が入力される。乗算器28には、換言すれば、第2入力端子12に入力された情報の表す中心周波数fの中心角周波数ωが入力される。乗算器28は、入力された中心角周波数ωの二乗ω を演算し、演算した中心角周波数ωの二乗ω を乗算器27に入力する。
【0027】
乗算器27は、積分器26から入力された信号に、乗算器28から入力された中心角周波数ωの二乗ω を乗算し、乗算結果を加算器25に入力する。
【0028】
加算器25は、乗算器24から入力された出力信号yに、乗算器27の乗算結果を加算し、加算結果を減算器21に入力する。
【0029】
これにより、信号処理部14は、第2入力端子12に入力された情報に応じて周波数帯域の中心周波数fを変更し、第1入力端子11に入力された入力信号uに対し、入力信号uに含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、入力信号uに含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行う。
【0030】
上記の信号処理部14の構成は、以下の(1)式の伝達関数で表すことができる。
【数1】
換言すれば、信号処理部14は、上記(1)式の伝達関数に基づいて、上記のように信号処理を行う。なお、(1)式において、sは、ラプラス演算子である。
【0031】
このように、本実施形態に係るバンドパスフィルタ10では、第2入力端子12に入力された情報に応じて周波数帯域の中心周波数fを変更することができる。
【0032】
なお、信号処理部14の構成は、上記に限定されるものではない。信号処理部14の構成は、上記(1)式の伝達関数に基づいて、上記の信号処理を行うことが可能な任意の構成でよい。例えば、(1)式の伝達関数において、ゲインKは、「1」に設定してもよい。この場合、演算器20は、省略可能である。ゲインKは、必要な出力信号yの大きさなどに応じて適宜設定すればよい。
【0033】
バンドパスフィルタ10は、例えば、減衰係数2ζに関する情報の入力を受けることにより、周波数帯域を任意に変更できるようにしてもよい。バンドパスフィルタ10は、例えば、減衰係数2ζに関する情報を入力するための第3入力端子をさらに有してもよい。
【0034】
図2は、第1の実施形態に係るバンドパスフィルタの変形例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、バンドパスフィルタ10aでは、信号処理部14aにおいて、上記実施形態の積分器22、26をそれぞれ積分器22a、26aに置き換えている。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
積分器22aは、演算器40と、加算器41と、演算器42と、を有する。演算器40は、減算器21から入力された信号に対し、入力信号uのサンプリング周期Δtを乗算し、乗算後の信号を加算器41に入力する。加算器41は、演算器40から入力された信号に、演算器42の演算結果を加算し、加算後の信号を演算器23及び乗算器27に入力するとともに、演算器42に入力する。演算器42は、加算器41から入力された信号を前回値Z-1として記憶保持し、前回値Z-1を加算器41に入力する。
【0036】
積分器22aは、入力信号uが所定のサンプリング周期Δtで取得される場合に、減算器21から入力された信号(入力信号u)にΔtを乗算することで面積を演算し、その演算結果に前回値Z-1を順次加算することにより、離散的に取得される入力信号uの積分を行う。積分器22aは、換言すれば、デジタル積分を実現する。
【0037】
積分器26aは、演算器44と、加算器45と、演算器46と、を有する。積分器26aの構成は、積分器22aの構成と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0038】
このように、本実施形態に係るバンドパスフィルタ10aでは、1/sで表される上記実施形態の連続系の積分器22、26を離散系の積分器22a、26aに置き換えている。これにより、例えば、連続的に取得される入力信号uに限ることなく、所定のサンプリング周期Δtで離散的に取得される入力信号uに対しても、上記のバンドパスフィルタの信号処理を適切に行うことができる。
【0039】
図3(a)及び図3(b)は、第1の実施形態に係るバンドパスフィルタの特性の一例を模式的に表すグラフである。
図3(a)及び図3(b)は、図2に表したバンドパスフィルタ10aの特性の一例を模式的に表す。
【0040】
図3(a)は、バンドパスフィルタ10aにおいて、外部入力の中心角周波数ωにより、中心周波数fを200Hzに設定した場合のゲイン線図GD1及び位相線図PD1の一例を模式的に表している。
【0041】
図3(b)は、バンドパスフィルタ10aにおいて、外部入力の中心角周波数ωにより、中心周波数fを1000Hzに設定した場合のゲイン線図GD2及び位相線図PD2の一例を模式的に表している。
【0042】
図3(a)に表したように、バンドパスフィルタ10aにおいて、中心周波数fを200Hzに設定した場合には、ゲイン線図GD1のピークが200Hz付近にある。従って、バンドパスフィルタ10aでは、200Hz付近における信号の減衰を抑制し、それ以外の周波数帯の信号を減衰させることができる。また、位相線図PD1は、200Hzにおいて約0度となっている。従って、バンドパスフィルタ10aでは、200Hz付近における信号の位相のずれも抑制することができる。
【0043】
図3(b)に表したように、バンドパスフィルタ10aにおいて、中心周波数fを1000Hzに設定した場合には、ゲイン線図GD2のピークが1000Hz付近にシフトしている。従って、中心周波数fを1000Hzに設定した場合には、1000Hz付近における信号の減衰を抑制し、それ以外の周波数帯の信号を減衰させることができる。また、位相線図PD2は、1000Hzにおいて約0度となっている。従って、中心周波数fを1000Hzに設定した場合には、1000Hz付近における信号の位相のずれも抑制することができる。
【0044】
このように、バンドパスフィルタ10aでは、外部入力の中心角周波数ωによって設定した中心周波数fの出力を通過させるバンドパスフィルタを実現することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る共振点検出器を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、共振点検出器60は、上記第1の実施形態において説明したバンドパスフィルタ10と、バンドリジェクトフィルタ62と、演算器64と、比較器66と、周波数設定回路68と、を備える。共振点検出器60は、入力信号uに含まれる共振周波数の検出を行い、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を出力信号yとして出力する。なお、共振点検出器60のバンドパスフィルタ10は、バンドパスフィルタ10aに置き換えてもよい。
【0046】
バンドリジェクトフィルタ62には、入力信号uが入力されるとともに、入力信号uの基本波周波数Fの情報が入力される。バンドリジェクトフィルタ62は、入力信号uに含まれる基本波周波数Fの成分を減衰させ、基本波周波数F以外の成分を通過させる信号処理を行う。換言すれば、バンドリジェクトフィルタ62は、入力信号uに含まれる基本波周波数Fの成分を除去し、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を通過させる。これにより、バンドリジェクトフィルタ62は、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を抽出する。
【0047】
バンドリジェクトフィルタ62は、バンドパスフィルタの出力を入力値より減算することで実装することができる。バンドリジェクトフィルタ62の伝達関数は、以下の(2)式で表すことができる。
【数2】
【0048】
このように、バンドパスフィルタの出力を入力値より減算することで、バンドリジェクトフィルタの特性を得ることができる。バンドリジェクトフィルタ62には、例えば、上記第1の実施形態に関して説明したバンドパスフィルタ10の構成が適用される。基本波周波数Fの情報は、バンドパスフィルタ10の第2入力端子12に入力される。これにより、入力する基本波周波数Fの情報に応じて、除去する基本波周波数Fの周波数を任意に変更することができる。但し、基本波周波数Fが固定である場合には、必ずしも基本波周波数Fを変更できるようにしなくてもよい。
【0049】
バンドリジェクトフィルタ62は、入力信号uに含まれる基本波周波数Fの成分を減衰させ、基本波周波数F以外の成分を通過させる信号処理を行った後の信号をバンドパスフィルタ10に入力する。
【0050】
バンドパスフィルタ10には、バンドリジェクトフィルタ62からの信号が入力されるとともに、周波数設定回路68からの中心周波数fに関する情報Fsweepが入力される。バンドリジェクトフィルタ62からの信号は、第1入力端子11に入力される。中心周波数fに関する情報Fsweepは、第2入力端子12に入力される。
【0051】
バンドパスフィルタ10は、周波数設定回路68からの情報Fsweepに応じて中心周波数fを設定し、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる中心周波数fの所定の周波数帯域の成分を通過させ、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行う。バンドパスフィルタ10は、信号処理後の信号を演算器64及び比較器66に入力する。
【0052】
演算器64は、バンドパスフィルタ10から入力された信号に対して所定のゲインKを乗算する演算を行い、演算後の信号を出力信号yとして出力する。ゲインKは、任意に設定可能である。ゲインKは、例えば、「1」でもよい。この場合、演算器64は、省略可能である。
【0053】
比較器66は、バンドパスフィルタ10から入力された信号の大きさが予め設定された検出レベルX以上か否かを比較し、比較結果を周波数設定回路68に入力する。
【0054】
周波数設定回路68は、比較器66の比較結果が検出レベルX未満である場合に、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて変化させる。これにより、周波数設定回路68は、バンドパスフィルタ10の周波数特性を時間の経過に応じて変化させる。
【0055】
周波数設定回路68は、比較器66の比較結果が検出レベルX以上である場合には、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fの変化を停止させる。
【0056】
図5(a)及び図5(b)は、第2の実施形態に係る共振点検出器の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図5(a)は、周波数設定回路68からバンドパスフィルタ10に入力される中心周波数fに関する情報Fsweepの一例を模式的に表す。図5(b)は、バンドパスフィルタ10から出力される信号BPFoutの一例を模式的に表す。
【0057】
図5(a)に表したように、周波数設定回路68は、比較器66の比較結果が検出レベルX未満である場合に、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて変化させる。周波数設定回路68は、例えば、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて徐々に増加させる。
【0058】
図5(b)に表したように、情報Fsweepによって設定された中心周波数fが、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる共振周波数と異なる場合には、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号が、バンドパスフィルタ10によって減衰されるため、バンドパスフィルタ10から出力される信号BPFoutの大きさ(振幅)は、小さくなる。
【0059】
バンドパスフィルタ10から出力される信号BPFoutの大きさは、情報Fsweepによって設定された中心周波数fが、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる共振周波数に近付くに従って大きくなる。比較器66の検出レベルXは、中心周波数fが、共振周波数と一致したと考えられる値に予め設定される。なお、検出レベルXは、中心周波数fが共振周波数に十分に近付いたと考えられる任意の値に設定すればよい。
【0060】
周波数設定回路68は、比較器66の比較結果が検出レベルX以上となった場合に、中心周波数fが、共振周波数と一致したと判断し、情報Fsweepの中心周波数fの変化を停止させる。これにより、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を出力信号yとして共振点検出器60から出力することができる。
【0061】
周波数設定回路68は、比較器66の比較結果が検出レベルX以上である場合に、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fの変化を停止させることにより、検出レベルX以上となった時の中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを共振周波数として検出し、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を出力信号yとしてバンドパスフィルタ10に出力させる。
【0062】
このように、本実施形態に係る共振点検出器60によれば、予め設定した検出レベルX以上となった時の情報Fsweepの中心周波数fを共振周波数として検出することができる。共振点検出器60では、入力信号uに含まれる共振周波数の成分を適切に抽出し、出力信号yとして出力することができる。本実施形態に係る共振点検出器60では、例えば、周波数特性の異なる複数のバンドパスフィルタを用いる構成などと比べて、より簡単な構成で共振周波数を検出することができる。
【0063】
図5(b)に表した例では、周波数設定回路68は、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて徐々に増加させている。換言すれば、周波数設定回路68は、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて段階的に増加させている。中心周波数fの時間的な変化は、これに限定されるものではない。周波数設定回路68は、例えば、中心周波数fを時間の経過に応じて連続的に増加させてもよい。また、周波数設定回路68は、例えば、中心周波数fを時間の経過に応じて減少させてもよい。
【0064】
周波数設定回路68は、例えば、比較器66の比較結果が検出レベルX未満である場合に、1Hz~10000Hzなどの所定の範囲において、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて変化させる。
【0065】
共振点検出器60は、中心周波数fを所定の範囲で変化させても比較器66の比較結果が検出レベルX以上とならなかった場合には、例えば、入力信号uが共振周波数の成分を含まないと判断し、「0」を出力信号yとして出力してもよい。あるいは、中心周波数fを所定の範囲で変化させても比較器66の比較結果が検出レベルX以上とならなかった場合には、例えば、所定の範囲の中で出力信号yの大きさの最も大きい周波数を共振周波数と判断し、その周波数を中心周波数fに設定してもよい。
【0066】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、電力変換装置100は、主回路部110と、制御装置120と、を備える。
【0067】
主回路部110は、直流電源102と接続されるとともに、交流負荷104と接続される。主回路部110は、直流電源102から供給された直流電力を交流負荷104に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を交流負荷104に供給する。
【0068】
主回路部110は、例えば、交流負荷104側の交流電力を直流電力に変換して直流電源102側に供給する機能をさらに有してもよい。但し、主回路部110の構成は、少なくとも直流電力から交流電力への変換が可能な任意の構成でよい。
【0069】
主回路部110は、電力変換器112と、フィルタ回路114と、電流検出器116と、電圧検出器118と、を有する。
【0070】
電力変換器112は、直流電源102から供給された直流電力から交流負荷104に応じた交流電力への変換を行う。電力変換器112は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う。
【0071】
フィルタ回路114は、電力変換器112から出力される交流電力に重畳する高調波成分を減衰させることにより、交流負荷104に供給する交流電力を正弦波に近付ける。フィルタ回路114は、例えば、リアクトル114aと、コンデンサ114bと、を有する。リアクトル114aは、電力変換器112の交流出力端子と交流負荷104の入力端子との間に設けられる。コンデンサ114bは、交流負荷104の一対の入力端子の間に設けられる。換言すれば、コンデンサ114bは、交流負荷104の入力側に対して並列に設けられる。フィルタ回路114は、例えば、LCフィルタである。但し、フィルタ回路114の構成は、これに限ることなく、交流電力に重畳する高調波成分を抑制可能な任意の構成でよい。
【0072】
電流検出器116は、電力変換器112から交流負荷104に供給される交流電流の大きさを検出し、検出結果を制御装置120に入力する。
【0073】
電圧検出器118は、電力変換器112から交流負荷104に供給される交流電圧の大きさを検出し、検出結果を制御装置120に入力する。
【0074】
制御装置120は、主回路部110による電力の変換を制御する。制御装置120には、電流検出器116の検出結果及び電圧検出器118の検出結果が入力されるとともに、交流負荷104に供給する交流電圧の電圧目標値が入力される。この例では、主回路部110が、制御装置120の制御対象である。そして、電流検出器116の検出結果及び電圧検出器118の検出結果が、制御対象から取得した信号として制御装置120に入力される。
【0075】
電圧目標値は、例えば、図示を省略した上位のコントローラなどから制御装置120に入力される。電圧目標値は、例えば、操作部の操作に基づいて制御装置120に設定される構成などとしてもよい。制御装置120に電圧目標値を設定する方法は、制御装置120に対して電圧目標値を適切に設定可能な任意の方法でよい。
【0076】
制御装置120は、例えば、入力された電流検出器116の検出結果、電圧検出器118の検出結果、及び電圧目標値を基に、電圧目標値に応じた交流電圧が交流負荷104に供給されるように、主回路部110の動作を制御する。制御装置120は、例えば、電流検出器116の検出結果、電圧検出器118の検出結果、及び電圧目標値を基に、電力変換器112の複数のスイッチング素子のそれぞれに対応した複数の制御信号を生成し、生成した複数の制御信号を電力変換器112に入力することにより、主回路部110(電力変換器112)による電力の変換を制御する。
【0077】
図7は、第3の実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、制御装置120は、上記第2の実施形態に関して説明した共振点検出器60と、制御部130と、を備える。
【0078】
電力変換装置100の制御装置120に用いられる共振点検出器60では、制御対象である主回路部110の電流検出器116によって検出された電力変換器112の出力電流が、入力信号uとしてバンドリジェクトフィルタ62に入力される。この場合、基本波周波数Fの情報は、交流負荷104に供給する交流電力の周波数に設定される。基本波周波数Fの情報は、例えば、50Hz又は60Hzに設定される。
【0079】
これにより、共振点検出器60は、電力変換器112の出力電流に含まれる共振周波数の成分を検出し、検出した共振周波数の成分を出力信号yとして出力する。
【0080】
制御部130は、交流負荷104に供給する交流電圧の電圧目標値(制御対象の制御の目標値)と、共振点検出器60の出力信号yと、を基に、制御対象である主回路部110(電力変換器112)の動作を制御することにより、主回路部110から取得した電力変換器112の出力電流の信号に含まれる共振周波数の成分を抑制した制御を行う。
【0081】
制御部130は、例えば、減算器132と、減算器134と、演算器136、138と、を有する。共振点検出器60は、出力信号yを減算器132に入力する。減算器132には、共振点検出器60から出力信号yが入力されるとともに、設定された電圧目標値が入力される。減算器132は、電圧目標値から共振点検出器60の出力信号yを減算する。換言すれば、減算器132は、電圧目標値から出力電流の共振周波数の成分を減算することにより、電圧目標値を補正する。制御部130は、電圧目標値から共振点検出器60の出力信号yを減算し、電圧目標値を補正することにより、共振周波数の成分を抑制した制御を行う。
【0082】
この例では、共振成分に対して仮想的にインピーダンスを付与し、電力変換器112の出力から共振成分を減衰させることができる。この場合、共振点検出器60の演算器64に設定されたゲインKが、仮想的に付与するインピーダンスの大きさとなる。出力電流の共振周波数の成分にゲインKを乗算することにより、インピーダンスによる電圧降下分を演算する。この電圧降下分を電圧目標値から減算することで、インピーダンスを模擬する。
【0083】
減算器132は、補正後の電圧目標値を減算器134に入力する。減算器134には、補正後の電圧目標値が入力されるとともに、電圧検出器118によって検出された電力変換器112の出力電圧が入力される。減算器134は、補正後の電圧目標値から出力電圧を減算することにより、電圧目標値と出力電圧との差分を演算する。減算器134は、演算した差分を演算器136に入力する。
【0084】
演算器136は、入力された差分を基に、電力変換器112の出力電圧を電圧目標値に追従させるための電力変換器112の電圧指令値を演算する。演算器136は、例えば、PI制御によって、差分から電圧指令値を演算する。但し、電圧指令値の演算方法は、これに限ることなく、比例制御やPID制御などでもよい。電圧指令値の演算方法は、電圧指令値を適切に演算することができる任意の演算方法でよい。演算器136は、演算した電圧指令値を演算器138に入力する。
【0085】
演算器138は、入力された電圧指令値を基に、電圧指令値に応じた電圧を電力変換器112に出力させるための制御信号を生成する。演算器138は、例えば、電圧指令値を基に、電力変換器112の複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する複数の制御信号を生成する。演算器138は、例えば、PWM演算により、複数の制御信号を生成する。但し、複数の制御信号の生成方法は、これに限ることなく、複数の制御信号を適切に生成可能な任意の方法でよい。
【0086】
演算器138は、生成した制御信号を電力変換器112に入力する。これにより、演算器136で演算した電圧指令値に応じた電圧を電力変換器112に出力させ、電力変換器112の出力電圧を電圧目標値に追従させることができる。これにより、電力変換装置100において、電力変換器112の出力電流に含まれる共振周波数の成分を抑制した制御を実現することができる。例えば、電力変換装置100において、フィルタ回路114に起因する共振現象を抑制し、交流負荷104に供給する交流電力の波形に歪みが生じてしまうことなどを抑制することができる。
【0087】
このように、電力変換装置100の制御装置120では、共振周波数が不明な場合でも、出力電流の共振周波数を適切に検出し、制御対象の共振を抑制することができる。制御装置120では、共振周波数が不明な場合でも、周波数特性の異なる複数のバンドパスフィルタを用いる構成などと比べて、より簡単な構成で共振周波数を検出し、制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制することができる。
【0088】
図8は、第3の実施形態に係る制御装置の制御方法の一例を模式的に表すフローチャートである。
図8に表したように、制御装置120の制御方法は、制御対象から取得した信号に含まれる基本波周波数の成分を減衰させ、基本波周波数以外の成分を通過させる第1信号処理を行う工程を有する(図8のステップS101)。第1信号処理を行う工程は、例えば、バンドリジェクトフィルタ62によって、電力変換器112の出力電流に含まれる基本波周波数Fの成分を減衰させ、基本波周波数F以外の成分を通過させる工程である。
【0089】
制御装置120の制御方法は、第1信号処理後の信号に含まれる所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、第1信号処理後の信号に含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる第2信号処理を行うことにより、出力信号を生成する工程を有する(図8のステップS102)。第2信号処理を行う工程は、例えば、バンドパスフィルタ10によって、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる中心周波数fの所定の周波数帯域の成分を通過させ、バンドリジェクトフィルタ62から入力された信号に含まれる所定の周波数帯域以外の周波数成分を減衰させる信号処理を行うことにより、出力信号を生成する工程である。
【0090】
制御装置120の制御方法は、出力信号の大きさが予め設定された検出レベル以上か否かを比較する工程を有する(図8のステップS103)。検出レベル以上か否かを比較する工程は、例えば、比較器66によって、バンドパスフィルタ10から入力された信号の大きさが予め設定された検出レベルX以上か否かを比較する工程である。
【0091】
制御装置120の制御方法は、比較結果が検出レベル未満である場合に、第2信号処理の所定の周波数帯域の中心周波数を時間の経過に応じて変化させる工程を有する(図8のステップS104)。中心周波数を変化させる工程は、例えば、周波数設定回路68が、比較器66の比較結果が検出レベルX未満である場合に、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fを時間の経過に応じて変化させる工程である。
【0092】
制御装置120の制御方法は、比較結果が検出レベル以上である場合に、第2信号処理の所定の周波数帯域の中心周波数の変化を停止させることにより、検出レベル以上となった時の中心周波数を共振周波数として検出し、制御対象から取得した信号に含まれる共振周波数の成分を出力信号として出力する工程を有する(図8のステップS105)。中心周波数の変化を停止させる工程は、例えば、周波数設定回路68が、比較器66の比較結果が検出レベルX以上である場合に、バンドパスフィルタ10に入力する中心周波数fに関する情報Fsweepの中心周波数fの変化を停止させる工程である。
【0093】
そして、制御装置120の制御方法は、制御対象の制御の目標値と、出力信号と、を基に、制御対象の動作を制御することにより、制御対象から取得した信号に含まれる共振周波数の成分を抑制した制御を行う工程を有する(図8のステップS106)。制御対象の動作を制御する工程は、例えば、制御部130が、交流負荷104に供給する交流電圧の電圧目標値と、共振点検出器60の出力信号yと、を基に、制御対象である主回路部110の動作を制御することにより、主回路部110から取得した電力変換器112の出力電流の信号に含まれる共振周波数の成分を抑制した制御を行う工程である。
【0094】
これにより、本実施形態に係る制御方法では、共振周波数が不明な場合でも、周波数特性の異なる複数のバンドパスフィルタを用いる構成などと比べて、より簡単な構成で共振周波数を検出し、制御対象の共振の影響をより簡単な構成で抑制することができる。
【0095】
なお、上記実施形態では、制御装置の一例として、電力変換装置100に用いられる制御装置120を表している。制御装置は、これに限ることなく、任意の制御対象の制御を行う任意の制御装置でよい。制御装置の制御対象は、主回路部110に限ることなく、任意の機器でよい。制御対象から取得する信号は、出力電流の信号に限ることなく、制御対象の制御に必要な任意の信号でよい。本実施形態に係る制御方法は、少なくとも上記の各工程を有する任意の制御方法でよい。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10、10a…バンドパスフィルタ、 11…第1入力端子、 12…第2入力端子、 13…出力端子、 14、14a…信号処理部、 20…演算器、 21…減算器、 22、22a…積分器、 23…演算器、 24…乗算器、 25…加算器、 26、26a…積分器、 27、28…乗算器、 40…演算器、 41…加算器、 42…演算器、 44…演算器、 45…加算器、 46…演算器、 60…共振点検出器、 62…バンドリジェクトフィルタ、 64…演算器、 66…比較器、 68…周波数設定回路、 100…電力変換装置、 102…直流電源、 104…交流負荷、 110…主回路部、 112…電力変換器、 114…フィルタ回路、 116…電流検出器、 118…電圧検出器、 120…制御装置、 130…制御部、 132…減算器、 134…減算器、 136、138…演算器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8