(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127550
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240912BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036766
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山川 智之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 航平
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA17
5H770AA28
5H770AA29
5H770BA12
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA23
5H770LB05
5H770LB10
(57)【要約】
【課題】より簡単に発光素子の劣化の傾向を確認できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力の変換を行う主回路部と、通信用光信号線を介して主回路部と接続され、主回路部と光信号を送受することにより、主回路部の動作を制御する制御装置と、主回路部の劣化の傾向を確認できるようにするための劣化傾向確認部と、を備え、主回路部は、光信号を送信するための通信用発光素子を有し、劣化傾向確認部は、主回路部の通信用発光素子の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子を有し、通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境において、通信用発光素子の動作に応じた動作を確認用発光素子に行わせることにより、確認用発光素子から出力される光を基に、通信用発光素子の劣化の傾向を確認できるようにする電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の変換を行う主回路部と、
通信用光信号線を介して前記主回路部と接続され、前記主回路部と光信号を送受することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
前記主回路部の劣化の傾向を確認できるようにするための劣化傾向確認部と、
を備え、
前記主回路部は、光信号を送信するための通信用発光素子を有し、
前記劣化傾向確認部は、前記主回路部の前記通信用発光素子の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子を有し、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境において、前記通信用発光素子の動作に応じた動作を前記確認用発光素子に行わせることにより、前記確認用発光素子から出力される光を基に、前記通信用発光素子の劣化の傾向を確認できるようにする電力変換装置。
【請求項2】
前記劣化傾向確認部は、前記主回路部に前記確認用発光素子を設けることにより、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境を実現する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記通信用発光素子の周囲環境を測定する環境測定部と、
前記環境測定部の測定結果を基に、前記通信用発光素子の周囲環境を再現した模擬空間を生成する模擬空間生成部と、
をさらに備え、
前記劣化傾向確認部は、前記模擬空間生成部の前記模擬空間内に前記確認用発光素子を設けることにより、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境を実現する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
確認用光信号線を介して前記確認用発光素子と接続され、前記確認用発光素子から出力される光の光量を測定する光量測定器をさらに備えた請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、確認用光信号線を介して前記確認用発光素子と接続され、前記確認用発光素子から出力される光の光量を確認する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子から出力される光の光量を確認する確認部と、前記確認部の確認結果を外部に送信する通信部と、をさらに有する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子から出力される光を外部から目視で確認できるようにする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子の動作条件を前記通信用発光素子の動作条件よりも厳しくする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子の周囲環境を前記通信用発光素子の周囲環境よりも厳しくする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記主回路部は、直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行うとともに、前記複数の変換器のそれぞれに対応して設けられた複数の前記通信用発光素子を有する請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の変換を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換装置がある。比較的大きな電力を扱う電力変換装置では、絶縁のため、主回路部と制御装置との間の信号の送受に光部品を使用している。主回路部及び制御装置は、光信号を送信するための発光素子と、光信号を受信するための受光素子と、によって、互いに通信を行う。
【0003】
発光素子の光量は、使用にともなう劣化などにより、時間の経過に応じて低下する。このため、光部品を用いた電力変換装置では、定期的に点検を行い、発光素子の光量を測定することが行われている。光量の低下した発光素子は、電力変換装置の運用に支障が出る前に、新しい用品に交換される。これにより、発光素子の光量の低下が、電力変換装置の運用に影響を与えてしまうことを抑制することができる。
【0004】
発光素子の光量の測定は、電力変換装置の点検の際に、作業員が光量測定器を発光素子の出力端に接続することによって行われる。しかしながら、点検の度に発光素子の光量を逐一測定して発光素子の劣化の傾向を確認する方法では、点検に要する時間や費用の増大を招いてしまう。また、点検を行うためには、電力変換装置の運用を停止させなければならず、電力変換装置の利用率も低下してしまう。このため、光部品を用いた電力変換装置では、より簡単に発光素子の劣化の傾向を確認できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、より簡単に発光素子の劣化の傾向を確認できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、電力の変換を行う主回路部と、通信用光信号線を介して前記主回路部と接続され、前記主回路部と光信号を送受することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、前記主回路部の劣化の傾向を確認できるようにするための劣化傾向確認部と、を備え、前記主回路部は、光信号を送信するための通信用発光素子を有し、前記劣化傾向確認部は、前記主回路部の前記通信用発光素子の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子を有し、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境において、前記通信用発光素子の動作に応じた動作を前記確認用発光素子に行わせることにより、前記確認用発光素子から出力される光を基に、前記通信用発光素子の劣化の傾向を確認できるようにする電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
より簡単に発光素子の劣化の傾向を確認できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
【
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図8】模擬空間生成部の動作の一例を模式的に表すグラフである。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、劣化傾向確認部16と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統及び一対の直流送電線に接続される。
【0012】
主回路部12は、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、図示を省略した変圧器を介して交流電力系統に接続される。交流電力系統の交流電力は、例えば、三相交流電力である。より詳しくは、対称三相交流電力である。変圧器は、交流電力系統の三相交流電力を主回路部12に対応した交流電力に変換する。
【0013】
電力変換装置10は、交流電力系統から供給された三相交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換後の三相交流電力を交流電力系統に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。
【0014】
主回路部12は、交流電力系統と各直流送電線との間に設けられる。主回路部12は、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。主回路部12は、例えば、直列に接続された複数の変換器20を有するマルチレベル電力変換器である。主回路部12は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。各変換器20は、ハーフブリッジ接続又はフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部12は、複数の変換器20の動作により、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、複数の変換器20の各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0015】
制御装置14は、通信用光信号線30、31を介して主回路部12と接続される。制御装置14は、通信用光信号線30、31を介して主回路部12と光信号を送受することにより、主回路部12の動作を制御する。制御装置14は、通信用光信号線30、31を介して主回路部12と通信を行い、各変換器20の各スイッチング素子のスイッチングを制御することにより、主回路部12による三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を制御する。
【0016】
通信用光信号線30は、制御装置14から主回路部12への送信用の光信号線である。通信用光信号線31は、主回路部12から制御装置14への送信用の光信号線である。このように、制御装置14は、一対の通信用光信号線30、31を介して主回路部12と通信を行う。但し、制御装置14は、例えば、主回路部12への光信号の送信、及び主回路部12からの光信号の受信を1本の通信用光信号線で行う構成としてもよい。主回路部12と制御装置14との間の通信の構成は、上記に限ることなく、少なくとも1本の通信用光信号線を介して互いに光信号を送受可能な任意の構成でよい。
【0017】
劣化傾向確認部16は、主回路部12の劣化の傾向を確認できるようにするための用品である。
【0018】
主回路部12は、例えば、第1及び第2の一対の直流端子12p、12nと、第1~第3の3つの交流端子12a~12cと、第1~第6の6つのアーム22a~22fと、を有する。
【0019】
第1直流端子12pは、高圧側の直流送電線に接続される。第2直流端子12nは、低圧側の直流送電線に接続される。これにより、主回路部12によって変換された直流電力が直流送電線に供給されるとともに、直流送電線から供給された直流電力が主回路部12に入力される。
【0020】
第1アーム22aは、第1直流端子12pに接続される。第2アーム22bは、第1アーム22aと第2直流端子12nとの間に接続される。第1アーム22a及び第2アーム22bは、各直流端子12p、12nの間に直列に接続される。
【0021】
第3アーム22cは、第1直流端子12pに接続される。第4アーム22dは、第3アーム22cと第2直流端子12nとの間に接続される。第3アーム22c及び第4アーム22dは、第1アーム22a及び第2アーム22bに対して並列に接続される。
【0022】
第5アーム22eは、第1直流端子12pに接続される。第6アーム22fは、第5アーム22eと第2直流端子12nとの間に接続される。すなわち、第5アーム22e及び第6アーム22fは、第1アーム22a及び第2アーム22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム22c及び第4アーム22dに対して並列に接続される。
【0023】
この例において、主回路部12は、3レグ、6アームの三相インバータである。第1アーム22a、第3アーム22c及び第5アーム22eは、上側アームである。第2アーム22b、第4アーム22d及び第6アーム22fは、下側アームである。このように、主回路部12は、複数のスイッチング素子によって構成される複数のアーム及び複数のレグを有する。主回路部12は、例えば、2レグ、4アームの単相インバータなどでもよい。アーム及びレグの数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0024】
各アーム22a~22fは、直列に接続された複数の変換器20を有する。各アーム22a~22fにおいて、直列接続される変換器20の台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器20の台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0025】
各アーム22a~22fに設けられる変換器20の台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器20が直列接続される場合には、主回路部12の動作に影響のない範囲において、各アーム22a~22fに設けられる変換器20の台数が異なってもよい。例えば、1つのアームに100台の変換器20を直列に接続する場合、別のアームに設ける変換器20の台数は、1~2台異なってもよい。
【0026】
主回路部12では、第1アーム22aと第2アーム22bとの接続点、第3アーム22cと第4アーム22dとの接続点、及び、第5アーム22eと第6アーム22fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0027】
第1交流端子12aは、第1アーム22aと第2アーム22bとの接続点に接続される。第2交流端子12bは、第3アーム22cと第4アーム22dとの接続点に接続される。第3交流端子12cは、第5アーム22eと第6アーム22fとの接続点に接続される。各交流端子12a~12cは、例えば、変圧器を介して交流電力系統に接続される。
【0028】
制御装置14は、例えば、複数の通信用光信号線30、31を介して複数の変換器20のそれぞれと接続される。制御装置14は、複数の通信用光信号線30、31を介して複数の変換器20と通信を行うことにより、複数の変換器20のそれぞれの動作を制御する。各変換器20は、例えば、変換器20の制御及び動作保護に関する制御信号や保護信号を通信用光信号線31を介して制御装置14に入力する。
【0029】
なお、制御装置14と各変換器20との間の通信方式は、上記に限定されるものではない。例えば、直列に接続された複数の変換器20をデイジーチェーン接続し、制御装置14は、デイジーチェーン接続された一端の変換器20及び他端の変換器20のみと通信を行ってもよい。制御装置14と各変換器20との間の通信方式は、制御装置14と各変換器20との間で適切に通信を行うことができる任意の通信方式でよい。
【0030】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器20は、複数のスイッチング素子41、42と、複数の整流素子43、44と、複数の駆動回路45、46と、一対の接続端子47、48と、電荷蓄積素子50と、給電回路51と、電圧検出回路52と、制御回路53と、通信用受光素子54と、通信用発光素子55と、を有する。
【0031】
各スイッチング素子41、42は、例えば、一対の主端子と、制御端子と、を有する。また、各スイッチング素子41、42は、オン状態と、オフ状態と、を有する。オン状態は、一対の主端子間に電流を流す状態である。オフ状態は、一対の主端子間の電流の流れを遮断する状態である。各スイッチング素子41、42は、一対の主端子間の電圧、及び制御端子の電圧に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。なお、オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、主回路部12の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。各スイッチング素子41、42は、例えば、IGBTやMOSFETなどの自励式の半導体素子である。但し、各スイッチング素子41、42は、これに限ることなく、オン状態及びオフ状態を任意に切り替えることが可能な任意の素子でよい。
【0032】
スイッチング素子42の一対の主端子は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して直列に接続される。この例において、変換器20は、直列に接続された2つのスイッチング素子41、42を有する。この例において、変換器20は、ハーフブリッジ構成の変換器である。
【0033】
整流素子43は、スイッチング素子41の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子43の順方向は、スイッチング素子41の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、整流素子44は、スイッチング素子42の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。整流素子43、44は、いわゆる還流ダイオードである。
【0034】
接続端子47は、スイッチング素子41とスイッチング素子42との間に接続される。接続端子48は、スイッチング素子41のスイッチング素子42に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0035】
同一アーム部内の複数の変換器20は、一対の接続端子47、48を介して直列に接続される。変換器20に対する電力の供給は、各接続端子47、48を介して行われる。スイッチング素子41は、いわゆるローサイドスイッチであり、スイッチング素子42は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0036】
制御回路53は、通信用光信号線30、31、通信用受光素子54、及び通信用発光素子55を介して制御装置14と通信を行う。制御回路53は、通信用受光素子54及び通信用発光素子55と接続されている。通信用受光素子54は、通信用光信号線30を介して制御装置14と接続されている。通信用受光素子54は、制御装置14から送信された光信号を受信し、受信した光信号を電気信号に変換して制御回路53に入力する。通信用発光素子55は、通信用光信号線31を介して制御装置14と接続されている。通信用発光素子55は、制御回路53から入力された電気信号を光信号に変換し、変換後の光信号を通信用光信号線31を介して制御装置14に送信する。これにより、制御装置14と変換器20の制御回路53との間で光信号の送受を行うことができる。
【0037】
制御装置14は、各スイッチング素子41、42のスイッチングを制御するための制御信号を光信号として通信用光信号線30を介して対応する変換器20に送信する。変換器20の通信用受光素子54は、制御装置14から送信された光信号を受信し、電気信号の制御信号に変換して制御回路53に入力する。制御回路53は、通信用受光素子54から入力された制御信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替えるための駆動信号を駆動回路45、46に入力する。
【0038】
駆動回路45は、スイッチング素子41の制御端子に接続されている。駆動回路46は、スイッチング素子42の制御端子に接続されている。駆動回路45、46は、制御回路53から入力された駆動信号に基づいて、各スイッチング素子41、42のオン・オフを切り替える。これにより、制御装置14からの制御信号に応じて、各スイッチング素子41、42のオン・オフが制御される。制御装置14は、各変換器20毎に制御信号を生成し、各変換器20のそれぞれの各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御する。これにより、制御装置14は、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0039】
なお、駆動回路45、46及び制御回路53の構成は、上記に限ることなく、各スイッチング素子41、42のオン・オフを制御可能な任意の構成でよい。例えば、制御装置14からの制御信号を駆動回路45、46に直接的に入力してもよい。この場合、制御回路53は、省略可能である。
【0040】
電荷蓄積素子50は、スイッチング素子41及びスイッチング素子42に対して並列に接続される。電荷蓄積素子50は、例えば、コンデンサである。
【0041】
スイッチング素子41がオフ状態で、スイッチング素子42がオン状態の時には、電荷蓄積素子50の電圧が各接続端子47、48間に現れる。スイッチング素子41がオン状態で、スイッチング素子42がオフ状態の時には、各接続端子47、48間が導通し、各接続端子47、48間の電圧は、実質的にゼロになる。
【0042】
このように、変換器20は、制御装置14からの制御信号に基づく各スイッチング素子41、42のスイッチングにより、電荷蓄積素子50の電圧を各接続端子47、48間に出力する出力状態と、各接続端子47、48間を導通させたバイパス状態と、各スイッチング素子41、42をオフ状態とした停止状態と、を切り替える。
【0043】
各アーム22a~22fにおいては、出力状態となった変換器20の合計の電圧が、各アーム22a~22fの電圧となる。主回路部12及び制御装置14は、出力状態とする変換器20の台数を制御することにより、マルチレベルの電力変換を行う。
【0044】
各スイッチング素子41、42がともにオフ状態の時(変換器20が停止状態の時)には、アーム電流の向きによって各接続端子47、48間の電圧が決まる。例えば、接続端子48から接続端子47に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子43がオンし、各接続端子47、48間の電圧は、実質的にゼロになる。反対に、接続端子47から接続端子48に向かう向きにアーム電流が流れている時には、整流素子44がオンし、電荷蓄積素子50が充電され、各接続端子47、48間には、電荷蓄積素子50の電圧が現れる。
【0045】
給電回路51は、電荷蓄積素子50に対して並列に接続されている。給電回路51は、電荷蓄積素子50に蓄積された電荷を基に、駆動回路45、46及び制御回路53の駆動電源を生成し、生成した駆動電源を駆動回路45、46及び制御回路53に供給する。駆動回路45、46及び制御回路53は、給電回路51からの駆動電源の供給に応じて動作する。
【0046】
なお、駆動回路45、46及び制御回路53への給電方式は、上記に限定されるものではない。例えば、電荷蓄積素子50とは別の電源から駆動回路45、46及び制御回路53に対して給電を行ってもよい。駆動回路45、46及び制御回路53への給電方式は、駆動回路45、46及び制御回路53に対して適切に給電を行うことができる任意の方式でよい。
【0047】
電圧検出回路52は、電荷蓄積素子50に対して並列に接続されている。電圧検出回路52は、制御回路53と接続されている。電圧検出回路52は、電荷蓄積素子50の直流電圧を検出し、電荷蓄積素子50の直流電圧の電圧検出値を制御回路53に入力する。
【0048】
主回路部12は、通信用光信号線31を介して制御装置14に光信号を送信するための通信用発光素子55を有する。主回路部12は、複数の変換器20のそれぞれに対応して設けられた複数の通信用発光素子55を有する。
【0049】
各変換器20の制御回路53は、例えば、制御に必要な情報を通信用発光素子55及び通信用光信号線31を介して制御装置14に送信する。制御回路53は、例えば、各スイッチング素子41、42のオン・オフの状態を表す情報や、電圧検出回路52によって検出された電荷蓄積素子50の直流電圧の情報などを制御に必要な情報として制御装置14に送信する。但し、各変換器20から制御装置14に送信する情報は、上記に限ることなく、任意の情報でよい。換言すれば、各変換器20から制御装置14に送信する光信号は、任意の光信号でよい。
【0050】
劣化傾向確認部16は、主回路部12の通信用発光素子55の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子60を有する。確認用発光素子60には、例えば、通信用発光素子55と同じ型番の素子が用いられる。通信用発光素子55及び確認用発光素子60には、例えば、レーザダイオードや発光ダイオードなどが用いられる。但し、通信用発光素子55及び確認用発光素子60は、上記に限ることなく、光信号を送信可能な任意の素子でよい。確認用発光素子60は、必ずしも通信用発光素子55と同じ型番の素子でなくてもよい。確認用発光素子60は、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認することが可能な任意の素子でよい。
【0051】
劣化傾向確認部16は、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境において、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせることにより、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認できるようにする。
【0052】
劣化傾向確認部16は、主回路部12に設けられる(
図1参照)。換言すれば、劣化傾向確認部16は、主回路部12の近傍に設けられる。劣化傾向確認部16は、主回路部12に確認用発光素子60を設ける。換言すれば、劣化傾向確認部16は、主回路部12の近傍に確認用発光素子60を設ける。これにより、劣化傾向確認部16は、通信用発光素子55の周囲環境に応じた確認用発光素子60の周囲環境を実現する。
【0053】
通信用発光素子55の周囲環境は、例えば、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度を含む。通信用発光素子55及び確認用発光素子60は、例えば、周囲の温度が高くなるほど、劣化が進行し易くなる傾向にある。また、通信用発光素子55及び確認用発光素子60は、例えば、周囲の湿度が高くなるほど、劣化が進行し易くなる傾向にある。
【0054】
上記のように、主回路部12に確認用発光素子60を設けることにより、確認用発光素子60の周囲の温度及び湿度の環境を、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度の環境に近付けることができる。すなわち、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度の環境に近い環境で確認用発光素子60を動作させることができる。
【0055】
但し、通信用発光素子55の周囲環境は、温度及び湿度に限定されるものではない。通信用発光素子55の周囲環境は、例えば、振動の条件など、通信用発光素子55及び確認用発光素子60の劣化に影響を与える可能性のある他の環境条件をさらに含んでもよい。
【0056】
確認用発光素子60は、例えば、通信用発光素子55の近傍に設けることがより好ましい。これにより、確認用発光素子60の周囲の温度及び湿度の環境を、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度の環境により近付けることができる。
【0057】
劣化傾向確認部16は、例えば、確認用受光素子61と駆動回路62とをさらに有する。確認用受光素子61は、確認用光信号線32を介して制御装置14と接続されている。確認用発光素子60は、確認用光信号線33を介して制御装置14と接続されている。駆動回路62は、確認用発光素子60及び確認用受光素子61と接続されている。
【0058】
制御装置14は、確認用発光素子60の動作を制御するための制御信号を光信号として確認用光信号線32を介して劣化傾向確認部16に送信する。劣化傾向確認部16の確認用受光素子61は、制御装置14から送信された光信号を受信し、電気信号の制御信号に変換して駆動回路62に入力する。駆動回路62は、確認用受光素子61から入力された制御信号に基づいて、確認用発光素子60を動作させる。これにより、制御装置14の制御に基づいて、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせることができる。
【0059】
通信用発光素子55の動作は、例えば、通信用発光素子55の発光期間及び発光強度の動作条件を含む。駆動回路62は、例えば、制御装置14の制御に基づいて、通信用発光素子55の発光期間に近い発光期間、及び通信用発光素子55の発光強度に近い発光強度で確認用発光素子60を動作させる。これにより、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせることができる。
【0060】
このように、劣化傾向確認部16は、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境において、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせる。これにより、確認用発光素子60の劣化の傾向を、通信用発光素子55の劣化の傾向に近付けることができる。従って、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認することが可能となる。
【0061】
なお、
図1に表した例では、劣化傾向確認部16を主回路部12に設けている。例えば、確認用受光素子61及び駆動回路62は、主回路部12から離れた位置に設けてもよい。劣化傾向確認部16においては、少なくとも確認用発光素子60が、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境となるように、主回路部12の近傍に設けられていればよい。
【0062】
また、この例では、制御装置14の制御に基づいて、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせている。これに限ることなく、例えば、通信用発光素子55の動作に応じた動作を駆動回路62に記憶させておくことにより、駆動回路62の駆動に基づいて、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせてもよい。この場合には、確認用光信号線32及び確認用受光素子61は省略可能である。確認用光信号線32及び確認用受光素子61は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0063】
制御装置14は、確認用光信号線33を介して確認用発光素子60と接続され、確認用発光素子60から出力される光の光量を確認する。制御装置14は、例えば、図示を省略した受光素子を有し、確認用発光素子60から出力された光を受光素子によって電気信号に変換することにより、確認用発光素子60から出力される光の光量を確認する。
【0064】
また、制御装置14は、例えば、受光素子から出力された電気信号に対して所定の閾値を設定することにより、確認用発光素子60が劣化しているか否かの判定を行う。制御装置14は、例えば、電気信号が閾値以上の時に、確認用発光素子60を正常と判定し、電気信号が閾値未満の時に、確認用発光素子60の劣化を判定する。
【0065】
制御装置14は、例えば、確認用発光素子60の光量の確認結果を電力変換装置10の管理者などに対して報知するための報知部を有し、確認結果を報知部によって報知する。制御装置14は、例えば、確認用発光素子60が劣化しているか否かの判定結果を確認結果として報知する。これにより、確認用発光素子60が劣化しているか否かを電力変換装置10の管理者などに対して容易に認識させることができる。
【0066】
報知部は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置である。報知部は、例えば、点灯及び消灯により、確認用発光素子60が劣化した状態を管理者などに報知するランプなどでもよい。報知部の報知の態様は、確認用発光素子60の光量の確認結果を適切に報知可能な任意の態様でよい。報知部は、適切に報知を行うことができる任意の部材でよい。
【0067】
なお、制御装置14は、必ずしも確認用発光素子60が劣化しているか否かの判定を行わなくてもよい。制御装置14は、例えば、確認用発光素子60の光量の大きさ(受光素子から出力された電気信号の大きさ)をそのまま報知し、劣化しているか否かの判定は、管理者などに委ねてもよい。また、制御装置14は、例えば、確認用発光素子60の光量の確認結果を上位のコントローラなどの外部の機器に出力する構成としてもよい。制御装置14は、必ずしも報知部を有しなくてもよい。
【0068】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10は、劣化傾向確認部16を有し、劣化傾向確認部16は、主回路部12の通信用発光素子55の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子60を有し、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境において、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせることにより、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認できるようにする。
【0069】
このように、電力変換装置10では、確認用発光素子60から出力される光の光量を基に、確認用発光素子60及び通信用発光素子55の劣化の傾向を容易に確認することができる。これにより、例えば、点検の度に通信用発光素子55の光量を逐一測定して通信用発光素子55の劣化の傾向を確認する必要がなく、確認用発光素子60の光量を基に、通信用発光素子55の劣化が確認された場合にのみ、通信用発光素子55の光量の測定を行えばよい。
【0070】
従って、本実施形態に係る電力変換装置10では、より簡単に通信用発光素子55の劣化の傾向を確認することができる。例えば、電力変換装置10の点検に要する時間や費用の増大を抑制することができる。また、例えば、点検にともなう電力変換装置10の運用の停止時間を短くし、電力変換装置10の利用率の向上も図ることができる。
【0071】
電力変換装置10では、劣化傾向確認部16が、主回路部12に確認用発光素子60を設けることにより、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境を実現する。これにより、電力変換装置10では、周囲環境の実現のために特別な機器などを必要とすることなく、通信用発光素子55の周囲環境に応じた確認用発光素子60の周囲環境を容易に実現することができる。
【0072】
電力変換装置10では、制御装置14が、確認用光信号線33を介して確認用発光素子60と接続され、確認用発光素子60から出力される光の光量を確認する。これにより、確認用発光素子60及び通信用発光素子55の劣化の傾向を制御装置14によって、より容易に確認することができる。
【0073】
なお、MMC型の主回路部12において、変換器20の構成は、ハーフブリッジ回路の構成に限ることなく、フルブリッジ接続された4つのスイッチング素子を有するフルブリッジ回路の構成としてもよい。
【0074】
上記実施形態では、主回路部12にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部12は、MMC型に限ることなく、例えば、複数の変換器20を直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。
【0075】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。主回路部12による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。また、主回路部12は、例えば、交流交流直接変換回路などでもよい。主回路部12による電力の変換は、直流電力から別の直流電力への変換などでもよい。主回路部12による電力の変換は、電力を別の電力に変換する任意の変換でよい。
【0076】
主回路部12の構成は、例えば、複数のアームをスター結線、デルタ結線、あるいはマトリックス結線した構成などでもよい。主回路部12は、例えば、モジュラーマトリックスコンバータなどでもよい。主回路部12は、必ずしも複数のレグを有しなくてもよい。主回路部12は、少なくとも複数のアームを有していればよい。主回路部12の構成は、電力の変換が可能な任意の構成でよい。電力変換装置は、例えば、周波数変換装置、直流送電装置、無効電力補償装置、あるいは電力潮流制御装置などでもよい。
【0077】
主回路部12の構成は、複数の変換器20を直列に接続した構成に限ることなく、三相2レベルインバータの構成などでもよい。主回路部12の構成は、例えば、単相2レベルインバータ、単相3レベルインバータ、三相3レベルインバータなどでもよい。主回路部12の構成は、上記に限ることなく、電力の変換を行うことが可能な任意の構成でよい。
【0078】
例えば、主回路部12が、6つのスイッチング素子をフルブリッジ接続した三相2レベルインバータである場合、主回路部12は、6つのスイッチング素子のそれぞれに対応した6つの通信用受光素子54及び通信用発光素子55を有する。あるいは、1つの通信用発光素子55のみで6つのスイッチング素子の制御に必要な情報を制御装置14に送信する構成としてもよい。このように、主回路部12に設けられる通信用発光素子55の数は、主回路部12の構成に応じた任意の数でよい。主回路部12に設けられる通信用発光素子55の数は、1つでもよい。
【0079】
一方で、主回路部12が、直列に接続された複数の変換器20を有するとともに、複数の変換器20のそれぞれに対応して設けられた複数の通信用発光素子55を有する場合には、複数の通信用発光素子55の点検に膨大な期間や費用が必要となる可能性がある。このため、本願のように、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認できるようにする構成は、複数の通信用発光素子55を有する主回路部12の構成において、特に有用であると考えられる。例えば、電力変換装置10の点検に要する時間や費用の増大をより適切に抑制することができるとともに、電力変換装置10の利用率をより向上させることができる。
【0080】
また、例えば、洋上など、アクセスが困難な場所に主回路部12が設置される場合もある。本願のように、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用発光素子55の劣化の傾向を確認できるようにする構成は、このような場合にも、特に有用であると考えられる。電力変換装置10の点検に要する時間や費用の抑制効果が特に大きいと考えられる。
【0081】
図3(a)及び
図3(b)は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図3(a)は、通信用発光素子55の動作の一例を模式的に表す。
図3(b)は、確認用発光素子60の動作の一例を模式的に表す。
【0082】
図3(a)及び
図3(b)に表したように、劣化傾向確認部16は、確認用発光素子60の発光期間を通信用発光素子55の発光期間よりも長くする。これにより、劣化傾向確認部16は、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくする。
【0083】
このように、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくすることにより、確認用発光素子60の劣化を通信用発光素子55の劣化よりも早めることができる。これにより、例えば、確認用発光素子60よりも早く通信用発光素子55の劣化が進んでしまい、意図せず主回路部12の動作不良などが発生してしまうことを抑制することができる。通信用発光素子55の劣化の傾向をより適切に確認できるようにし、通信用発光素子55の点検のタイミングや通信用発光素子55の部品交換のタイミングなどをより適切に把握することができる。
【0084】
主回路部12が複数の通信用発光素子55を有する場合、確認用発光素子60の動作条件は、例えば、複数の通信用発光素子55の動作条件のうちの最も厳しい動作条件よりも厳しくする。例えば、確認用発光素子60の発光期間は、複数の通信用発光素子55の発光期間のうちの最も長い発光期間よりも長くする。これにより、複数の通信用発光素子55の劣化の傾向をより適切に確認することができる。
【0085】
但し、確認用発光素子60の動作条件は、必ずしも通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくなくてもよい。確認用発光素子60の動作条件は、通信用発光素子55の動作条件と同じでもよい。
【0086】
劣化傾向確認部16は、発光期間に限ることなく、例えば、確認用発光素子60の光量を通信用発光素子55の光量よりも大きくすることにより、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくしてもよい。劣化傾向確認部16は、例えば、発光期間及び光量の少なくとも一方を調整することにより、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくする。但し、確認用発光素子60の動作条件は、上記に限ることなく、通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくすることが可能な任意の条件でよい。
【0087】
劣化傾向確認部16は、例えば、制御装置14から送信される制御信号を基に、確認用発光素子60の動作条件を設定することにより、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくする。換言すれば、この例では、制御装置14が、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくする。これに限ることなく、例えば、通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくなるように、確認用発光素子60の動作条件を予め駆動回路62などに設定してもよい。
【0088】
図4は、第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、電力変換装置10aは、光量測定器70をさらに備える。なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。また、
図4では、
図2に相当する電力変換装置10aの一部のみを図示している。
【0089】
電力変換装置10aでは、制御装置14ではなく、光量測定器70が、確認用光信号線33を介して確認用発光素子60と接続されている。光量測定器70は、確認用光信号線33を介して確認用発光素子60と接続され、確認用発光素子60から出力される光の光量を測定する。
【0090】
光量測定器70は、例えば、表示部72を有する。光量測定器70は、確認用発光素子60から出力される光の光量を測定し、測定結果を表示部72に表示する。
【0091】
これにより、電力変換装置10aでは、確認用発光素子60及び通信用発光素子55の劣化の傾向を光量測定器70によって、より容易に確認することができる。このように、確認用発光素子60の光量の確認は、制御装置14に限ることなく、光量測定器70で行ってもよい。
【0092】
光量測定器70は、確認用発光素子60の光量の測定結果を表示する構成に限ることなく、例えば、確認用発光素子60の光量が閾値以上か否かの判定を行い、その判定結果を報知する構成などとしてもよい。光量測定器70は、表示部72に代えて報知部を有する構成としてもよい。光量測定器70は、例えば、確認用発光素子60の光量の測定結果、あるいは閾値以上か否かの判定結果を上位のコントローラなどの外部の機器に出力する構成としてもよい。光量測定器70は、必ずしも表示部72を有しなくてもよい。
【0093】
図5は、第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図5に表したように、電力変換装置10bでは、劣化傾向確認部16が、確認部63と、通信部64と、をさらに有する。なお、
図4と同様に、
図5では、
図2に相当する電力変換装置10bの一部のみを図示している。
【0094】
確認部63は、確認用発光素子60から出力される光の光量を確認する。確認部63は、例えば、確認用発光素子60の光量が閾値以上か否かの判定を行い、その判定の結果を確認結果として通信部64に入力する。確認結果は、例えば、確認用発光素子60の光量が閾値未満の状態を「0」、確認用発光素子60の光量が閾値未満の状態を「1」とするデジタル信号である。
【0095】
通信部64は、確認部63の確認結果を外部に送信する。通信部64は、例えば、確認部63の確認結果を無線通信によって外部に送信する。通信部64は、例えば、確認結果を制御装置14に送信する。この場合、通信部64は、光信号線を用いた光通信によって確認結果を制御装置14に送信してもよい。通信部64は、制御装置14に限ることなく、例えば、上位のコントローラや電力変換装置10bの管理者の所有する携帯端末などの外部機器に確認結果を送信してもよい。通信部64が確認結果を送信する外部機器は、上記に限ることなく、確認用発光素子60の光量の確認結果を必要とする任意の機器でよい。通信部64と外部機器との間の通信の形態は、確認結果を適切に外部機器に送信可能な任意の形態でよい。
【0096】
このように、確認用発光素子60の光量の確認は、制御装置14や光量測定器70などの外部機器に限ることなく、劣化傾向確認部16で行ってもよい。この場合にも、確認用発光素子60の光量の確認結果を外部機器で参照することにより、確認用発光素子60及び通信用発光素子55の劣化の傾向を、より容易に確認することができる。
【0097】
図6は、第1の実施形態に係る電力変換装置の変形例を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、電力変換装置10cでは、劣化傾向確認部16が、確認用発光素子60から出力される光を外部から目視で確認できるようにする。このように、確認用発光素子60の光量は、電力変換装置10cの管理者などが主回路部12及び劣化傾向確認部16の外部から目視で確認できるようにしてもよい。この場合にも、確認用発光素子60の光量を目視で確認することにより、確認用発光素子60及び通信用発光素子55の劣化の傾向を、より容易に確認することができる。なお、
図4、
図5と同様に、
図6では、
図2に相当する電力変換装置10cの一部のみを図示している。
【0098】
このように、確認用発光素子60の光量の確認は、制御装置14で行ってもよいし、劣化傾向確認部16で行ってもよいし、光量測定器70で行ってもよいし、目視で行えるようにしてもよい。確認用発光素子60の光量の確認方法は、上記に限ることなく、確認用発光素子60の光量を適切に確認することが可能な任意の方法でよい。
【0099】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、電力変換装置10dは、環境測定部80と、模擬空間生成部82と、をさらに備える。
【0100】
環境測定部80は、通信用発光素子55の周囲環境を測定する。環境測定部80は、例えば、主回路部12に設けられ、所定の変換器20の通信用発光素子55の近傍に配置されることにより、通信用発光素子55の周囲環境を測定する。環境測定部80は、例えば、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度を測定する。但し、環境測定部80の測定対象は、温度及び湿度に限ることなく、通信用発光素子55の劣化に影響を与える可能性のある他の環境条件をさらに含んでもよい。
【0101】
環境測定部80は、通信用発光素子55の周囲環境の測定結果を模擬空間生成部82に送信する。模擬空間生成部82は、例えば、主回路部12の外部に配置される。模擬空間生成部82を配置する場所は、任意の場所でよい。環境測定部80は、例えば、無線通信又は光通信により、主回路部12の外部に配置された模擬空間生成部82に測定結果を送信する。但し、環境測定部80と模擬空間生成部82との間の通信の形態は、上記に限ることなく、任意の形態でよい。
【0102】
模擬空間生成部82は、環境測定部80の測定結果を基に、通信用発光素子55の周囲環境を再現した模擬空間を生成する。模擬空間生成部82は、例えば、環境測定部80の測定結果を基に、通信用発光素子55の周囲の温度及び湿度の環境を再現した模擬空間を生成する。模擬空間生成部82は、例えば、槽内の温度及び湿度を調整可能な恒温槽である。但し、模擬空間生成部82は、これに限ることなく、通信用発光素子55の周囲環境を再現可能な任意の装置でよい。模擬空間生成部82は、例えば、温度を調整するヒータと、湿度を調整する加湿器といったように、複数の機器で構成してもよい。
【0103】
模擬空間生成部82は、環境測定部80と通信を行い、環境測定部80の測定結果を環境測定部80から受信することにより、環境測定部80の測定結果に応じた模擬空間を生成する。これに限ることなく、例えば、環境測定部80は、測定結果を制御装置14に送信し、模擬空間生成部82は、制御装置14と通信を行い、制御装置14の制御に基づいて、環境測定部80の測定結果に応じた模擬空間を生成してもよい。模擬空間生成部82において環境測定部80の測定結果に応じた模擬空間を生成する方法は、上記に限ることなく、模擬空間を適切に生成可能な任意の方法でよい。
【0104】
劣化傾向確認部16は、模擬空間生成部82の模擬空間内に確認用発光素子60を設けることにより、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境を実現する。劣化傾向確認部16は、例えば、模擬空間生成部82の模擬空間内に設けられる。但し、必ずしも劣化傾向確認部16の全体が模擬空間内に配置されている必要はなく、少なくとも確認用発光素子60が模擬空間内に配置されていればよい。
【0105】
劣化傾向確認部16は、例えば、制御装置14と通信を行い、制御装置14の制御に基づいて、通信用発光素子55の動作に応じた動作を確認用発光素子60に行わせる。これに限ることなく、確認用発光素子60は、通信用発光素子55の動作に応じた動作を予め記憶させて動作させてもよい。
【0106】
電力変換装置10dでは、例えば、制御装置14が、確認用光信号線33を介して確認用発光素子60と接続され、確認用発光素子60から出力される光の光量を確認する。但し、上記第1の実施形態と同様に、確認用発光素子60の光量の確認は、この例においても、制御装置14で行ってもよいし、劣化傾向確認部16で行ってもよいし、光量測定器70で行ってもよいし、目視で行えるようにしてもよい。
【0107】
以上、説明したように、電力変換装置10dでは、模擬空間生成部82の模擬空間内に確認用発光素子60を設けることにより、通信用発光素子55の周囲環境に応じた周囲環境を実現する。この場合にも、上記第1の実施形態と同様に、通信用発光素子55の周囲環境に応じた確認用発光素子60の周囲環境を適切に実現することができる。
【0108】
このように、確認用発光素子60は、必ずしも主回路部12に設けなくてもよい。確認用発光素子60を配置する場所は、通信用発光素子55の周囲環境を再現可能な任意の場所でよい。なお、この例においても、主回路部12の構成は、上記第1の実施形態において説明したように、電力の変換を行う任意の構成でよい。
【0109】
図8は、模擬空間生成部の動作の一例を模式的に表すグラフである。
図8に表したように、模擬空間生成部82は、確認用発光素子60の周囲環境の温度を通信用発光素子55の周囲環境の温度よりも高くする。換言すれば、模擬空間生成部82は、模擬空間内の温度を通信用発光素子55の周囲環境の温度よりも高くする。これにより、模擬空間生成部82は、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくする。
【0110】
劣化傾向確認部16は、模擬空間内に確認用発光素子60を設けることにより、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくする。劣化傾向確認部16は、例えば、確認用発光素子60の周囲環境の温度を通信用発光素子55の周囲環境の温度よりも高くする。
【0111】
このように、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくすることにより、確認用発光素子60の劣化を通信用発光素子55の劣化よりも早めることができる。これにより、例えば、確認用発光素子60よりも早く通信用発光素子55の劣化が進んでしまい、意図せず主回路部12の動作不良などが発生してしまうことを抑制することができる。通信用発光素子55の劣化の傾向をより適切に確認できるようにし、通信用発光素子55の点検のタイミングや通信用発光素子55の部品交換のタイミングなどをより適切に把握することができる。
【0112】
なお、模擬空間生成部82は、例えば、確認用発光素子60の周囲環境の湿度を通信用発光素子55の周囲環境の湿度よりも高くすることにより、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくしてもよい。
【0113】
確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくする方法は、上記に限ることなく、任意の方法でよい。例えば、確認用発光素子60の周囲にヒータを設け、確認用発光素子60の周囲環境の温度を通信用発光素子55の周囲環境の温度よりも高くすることによって、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくしてもよい。このように、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくする方法は、模擬空間生成部82の動作に限定されるものではない。
【0114】
例えば、確認用発光素子60の周囲にヒータを設けることによって確認用発光素子60の周囲環境を調整する場合などには、上記第1の実施形態において説明したように、主回路部12に確認用発光素子60を設ける構成において、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくしてもよい。
【0115】
また、劣化傾向確認部16は、確認用発光素子60の周囲環境を通信用発光素子55の周囲環境よりも厳しくするとともに、さらに、
図3に関して説明したように、確認用発光素子60の動作条件を通信用発光素子55の動作条件よりも厳しくしてもよい。
【0116】
上記各実施形態では、確認用発光素子60から出力される光を基に、通信用光信号線31を介して制御装置14に光信号を送信するための通信用発光素子55の劣化の傾向を確認する例を示している。確認用発光素子60によって劣化の傾向を確認する対象は、制御装置14との通信用の通信用発光素子55に限定されるものではない。例えば、主回路部12の複数の変換器20の間で光通信を行うなど、主回路部12内の通信に通信用発光素子が用いられる場合がある。このような場合には、主回路部12内の通信に用いられる通信用発光素子の劣化の傾向を確認用発光素子60から出力される光によって確認してもよい。確認用発光素子60によって劣化の傾向を確認する対象は、上記に限ることなく、主回路部12に設けられ、光信号の送信を行う任意の通信用発光素子でよい。
【0117】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
電力の変換を行う主回路部と、
通信用光信号線を介して前記主回路部と接続され、前記主回路部と光信号を送受することにより、前記主回路部の動作を制御する制御装置と、
前記主回路部の劣化の傾向を確認できるようにするための劣化傾向確認部と、
を備え、
前記主回路部は、光信号を送信するための通信用発光素子を有し、
前記劣化傾向確認部は、前記主回路部の前記通信用発光素子の劣化の傾向の確認を行うための確認用発光素子を有し、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境において、前記通信用発光素子の動作に応じた動作を前記確認用発光素子に行わせることにより、前記確認用発光素子から出力される光を基に、前記通信用発光素子の劣化の傾向を確認できるようにする電力変換装置。
【0118】
(付記2)
前記劣化傾向確認部は、前記主回路部に前記確認用発光素子を設けることにより、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境を実現する付記1記載の電力変換装置。
【0119】
(付記3)
前記通信用発光素子の周囲環境を測定する環境測定部と、
前記環境測定部の測定結果を基に、前記通信用発光素子の周囲環境を再現した模擬空間を生成する模擬空間生成部と、
をさらに備え、
前記劣化傾向確認部は、前記模擬空間生成部の前記模擬空間内に前記確認用発光素子を設けることにより、前記通信用発光素子の周囲環境に応じた周囲環境を実現する付記1記載の電力変換装置。
【0120】
(付記4)
確認用光信号線を介して前記確認用発光素子と接続され、前記確認用発光素子から出力される光の光量を測定する光量測定器をさらに備えた付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0121】
(付記5)
前記制御装置は、確認用光信号線を介して前記確認用発光素子と接続され、前記確認用発光素子から出力される光の光量を確認する付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0122】
(付記6)
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子から出力される光の光量を確認する確認部と、前記確認部の確認結果を外部に送信する通信部と、をさらに有する付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0123】
(付記7)
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子から出力される光を外部から目視で確認できるようにする付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0124】
(付記8)
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子の動作条件を前記通信用発光素子の動作条件よりも厳しくする付記1~7のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0125】
(付記9)
前記劣化傾向確認部は、前記確認用発光素子の周囲環境を前記通信用発光素子の周囲環境よりも厳しくする付記1~8のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0126】
(付記10)
前記主回路部は、直列に接続された複数の変換器を有し、前記複数の変換器の動作により、電力の変換を行うとともに、前記複数の変換器のそれぞれに対応して設けられた複数の前記通信用発光素子を有する付記1~9のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
10、10a~10d…電力変換装置、 12…主回路部、 12p、12n…直流端子、 12a~12c…交流端子、 14…制御装置、 16…劣化傾向確認部、 20…変換器、 22a~22f…アーム、 30、31…通信用光信号線、 32、33…確認用光信号線、 41、42…スイッチング素子、 43、44…整流素子、 45、46…駆動回路、 47、48…接続端子、 50…電荷蓄積素子、 51…給電回路、 52…電圧検出回路、 53…制御回路、 54…通信用受光素子、 55…通信用発光素子、 60…確認用発光素子、 61…確認用受光素子、 62…駆動回路、 63…確認部、 64…通信部、 70…光量測定器、 72…表示部、 80…環境測定部、 82…模擬空間生成部