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特開2024-127554洋上風力発電設備の検査装置、洋上風力発電設備の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127554
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】洋上風力発電設備の検査装置、洋上風力発電設備の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240912BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036772
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】生方 正志
(72)【発明者】
【氏名】小池 匠
(72)【発明者】
【氏名】小川 昇
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD07
2G024AD23
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA18
2G024CA30
2G024FA06
2G024FA11
2G024FA14
(57)【要約】
【課題】洋上風力発電設備検査における作業の容易性を向上する。
【解決手段】洋上風力発電設備10の導通検査を行う検査装置20は、受雷部41に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部54と、海水Sと通電可能な状態で海水Sと接触させる海水接触部56と、受雷部接触部54が受雷部41に接触し、かつ、海水接触部56が海水Sに接触したときに流れる電流に基づいて洋上風力発電設備10の導通検査を行う受雷部導通検査部を有する制御部55と、受雷部接触部54、海水接触部56、及び、制御部55を搭載する飛行体5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を海水に逃がす避雷装置とを備える洋上風力発電設備の導通検査を行う検査装置であって、
前記検査装置は、
前記受雷部に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部と、
前記海水と通電可能な状態で前記海水と接触させる海水接触部と、
前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記海水接触部が前記海水に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記洋上風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部と、
前記受雷部接触部、前記海水接触部、及び、前記受雷部導通検査部を搭載する飛行体と、
を備える、洋上風力発電設備の検査装置。
【請求項2】
前記海水接触部は、前記飛行体から垂下されている、
請求項1に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【請求項3】
前記海水接触部は、前記海水に対して浮遊可能に形成されている、
請求項1または2に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【請求項4】
前記検査装置は、開口部分を有し前記海水接触部を格納可能な格納部と、
前記格納部の前記開口部分に設けられている蓋部と、
を備える、
請求項1に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【請求項5】
前記避雷装置は、前記受雷部と前記海水を通電可能に接続する導体を備える、
請求項1に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【請求項6】
海水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を海水に逃がす避雷装置とを備える洋上風力発電設備の導通検査を行う検査方法であって、
前記受雷部に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部と、
前記海水と通電可能な状態で前記海水と接触させる海水接触部と、
前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記海水接触部が前記海水に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記洋上風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部と、
前記受雷部接触部、前記海水接触部、及び、前記受雷部導通検査部を搭載する飛行体と、
を備える、洋上風力発電設備の検査装置を用いて、
前記検査装置を前記洋上風力発電設備に接近させるステップと、
前記海水接触部を前記海水に接触させるステップと、
前記受雷部接触部を前記受雷部に接触させるステップと、
前記受雷部接触部、前記避雷装置、及び、前記海水接触部により閉回路を形成するステップと、
前記閉回路に前記電流が流れているか否かを判定するステップと、
を実行する洋上風力発電設備の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備の検査装置、洋上風力発電設備の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要が高まっている風力発電に用いられる風力発電設備は、落雷による損傷を防ぐため、落雷による電流を大地もしくは海等の水中に逃がすことができるように構成されている。風力発電設備は、定期的な検査項目の一つとして、例えば、落雷による損傷対策として、落雷により風力発電設備に流れる電流を大地もしくは水中等に流せるか否かを検査する導通検査が課されている。
【0003】
以上のような風力発電設備における検査に用いられる技術として、風力発電設備の受雷部に接触させる接触部を有する飛行体と、接触部が風力発電設備に接触して取得した情報を用いて風力発電設備の導通検査を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7021470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ドローンなどの飛行体を用いて風力発電設備の導通検査を行う場合に、風力発電設備に設けられている接地極と飛行体に取り付けられる測定用配線とを接続する必要がある。
【0006】
しかしながら、風力発電設備が洋上に設けられている場合、飛行体の測定用配線と接地極との接続を行うためには、作業員が船舶などで風力発電設備に移動して作業を行う必要がある。この場合において、洋上の波が高い場合には風力発電設備への移動ができず、導通検査が行えないおそれがある。また、この場合において、数十基程度の多数の洋上風力発電設備での導通検査を行う場合には、検査を行う個々の風力発電設備への移動、並びに接続作業に多くの時間を要する。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、洋上風力発電設備検査における作業の容易性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係る洋上風力発電設備の検査装置は、海水域に立設された支柱と、軸回りに回転する風車と、前記風車のブレードに設けられていて落雷による電流を受ける受雷部と、前記受雷部が受けた前記電流を海水に逃がす避雷装置とを備える洋上風力発電設備の導通検査を行う検査装置であって、前記検査装置は、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部と、前記海水と通電可能な状態で前記海水と接触させる海水接触部と、前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記海水接触部が前記海水に接触したときに流れる前記電流に基づいて前記洋上風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部と、前記受雷部接触部、前記海水接触部、及び、前記受雷部導通検査部を搭載する飛行体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洋上風力発電設備検査における作業の容易性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る洋上風力発電設備の検査装置及び検査対象である洋上風力発電設備の概要を示す図である。
図2】洋上風力発電設備の検査装置の概要を示す斜視図である。
図3】洋上風力発電設備の検査装置における受雷部接触部、海水接触部、及び制御部の構成と洋上風力発電設備の受雷部及びその周辺の構成とを示す模式図である。
図4】本発明の実施の形態に係る洋上風力発電設備の検査方法において、洋上風力発電設備の検査装置を洋上風力発電設備の付近に浮上させるステップを示す模式図である。
図5】洋上風力発電設備の検査方法において、洋上風力発電設備の検査装置の受雷部接触部を受雷部に接触させるステップと、海水接触部を海水に接触させるステップとを示す模式図である。
図6】洋上風力発電設備の検査方法において、受雷部接触部、避雷装置、及び、海水接触部により閉回路を形成するステップと、閉回路に電流が流れているか否かを判定するステップと、を示す模式図である。
図7】本実施の形態の変形例に係る洋上風力発電設備の検査装置の概要を示す斜視図である。
図8】変形例に係る洋上風力発電設備の検査装置における受雷部接触部、海水接触部、及び制御部の構成と洋上風力発電設備の受雷部及びその周辺の構成とを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
[1] 海水域に立設された支柱(1)と、軸回りに回転する風車(3)と、前記風車のブレード(32)に設けられていて落雷による電流を受ける受雷部(41)と、前記受雷部が受けた前記電流を海水に逃がす避雷装置(4)とを備える洋上風力発電設備(10)の導通検査を行う検査装置(20)であって、前記検査装置は、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部(54)と、前記海水(S)と通電可能な状態で前記海水と接触させる海水接触部(56)と、前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記海水接触部が前記海水に接触したときに流れる電流に基づいて前記洋上風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部(552)と、前記受雷部接触部、前記海水接触部、及び、前記受雷部導通検査部を搭載する飛行体(5)と、を備える、洋上風力発電設備の検査装置。
【0013】
[2] 前記海水接触部は、前記飛行体から垂下されている、[1]に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【0014】
[3] 前記海水接触部は、前記海水に対して浮遊可能に形成されている、[1]または[2]に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【0015】
[4] 前記検査装置は、開口部分を有し前記海水接触部を格納可能な格納部(57)と、前記格納部の前記開口部分に設けられている蓋部(58)と、を備える、[1]に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【0016】
[5] 前記避雷装置は、前記受雷部と前記海水を通電可能に接続する導体(42)を備える、[1]に記載の洋上風力発電設備の検査装置。
【0017】
[6] 海水域に立設された支柱(1)と、軸回りに回転する風車(3)と、前記風車のブレード(32)に設けられていて落雷による電流を受ける受雷部(41)と、前記受雷部が受けた前記電流を海水に逃がす避雷装置(4)とを備える洋上風力発電設備(10)の導通検査を行う検査方法であって、前記受雷部に接触させる導電性材料からなる受雷部接触部(54)と、前記海水(S)と通電可能な状態で前記海水と接触させる海水接触部(56)と、前記受雷部接触部が前記受雷部に接触し、かつ、前記海水接触部が前記海水に接触したときに流れる電流に基づいて前記洋上風力発電設備の導通検査を行う受雷部導通検査部(552)と、前記受雷部接触部、前記海水接触部、及び、前記受雷部導通検査部を搭載する飛行体(5)と、を備える、洋上風力発電設備の検査装置(20)を用いて、前記洋上風力発電設備の検査装置を前記洋上風力発電設備に接近させるステップと、前記海水接触部を前記海水に接触させるステップと、前記受雷部接触部を前記受雷部に接触させるステップと、前記受雷部接触部、前記避雷装置、及び、前記海水接触部により閉回路を形成するステップと、前記閉回路に電流が流れているか否かを判定するステップと、を実行する洋上風力発電設備の検査方法。
【0018】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、実物と異なる場合がある。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る洋上風力発電設備10の検査装置20及び検査対象である洋上風力発電設備10の概要を示す図である。
【0020】
<洋上風力発電設備>
図1に示すように、洋上風力発電設備10は、洋上などの海水域において、周囲に高層建造物がなく、風況のよい場所に設けられている。洋上風力発電設備10は、支柱1と、ナセル2と、風車3と、避雷装置4と、を備えている。
【0021】
支柱1は、海水域の底部に設けられた基礎に立設されている。支柱1は、内部に空洞が形成されており、作業者が保守や点検のために支柱1内を移動できるようになっている。支柱1は、例えば、十分な強度を有する導電性材料から形成されており、支柱1に流れる電流を、接地線11を介して海水中(海底を含む)に逃がすことができる。支柱1の基端部には、海水中に接地する接地線11が通電可能(電気的)に接続されている。すなわち、支柱1及び接地線11は、避雷装置4の一部としても機能する。
【0022】
ナセル2は、支柱1の上端部に設けられている。ナセル2は、内部に空洞が形成されており、作業者が保守や点検のためにナセル2内を移動できるようになっている。ナセル2内には、風車3の軸31から伝達された回転力を電気に変換する発電機、発電機の発電効率を高めるために風車3の軸31の回転速度を増加させる増速機、強風時の風車3の回転を停止させるブレーキ装置等が設けられている。
【0023】
風車3は、回転軸となる軸31と、軸31に所定間隔をあけて設けられたブレード32と、を備えている。軸31の一部は、ナセル2内に収容されており、増速機に連結されている。ブレード32は、例えば、軸31に対して互いに等間隔となるように合計で3枚設けられている。
【0024】
避雷装置4は、落雷による電流を大地もしくは水中に逃がすものである。避雷装置4は、ブレード32に設けられている。避雷装置4は、受雷部41と、導体42と、を備えている。なお、図1及び後述する図4から図6において、避雷装置4が風車3の3枚のブレード32のうち1枚に設けられている例を示しているが、風車3に設けられている避雷装置4の数はこれに限定されない。
【0025】
受雷部41は、導電性材料から形成されており、ブレード32の先端部または先端部近傍に設けられている。受雷部41は、一端がブレード32の表面に露出するように、ブレード32に設けられている。
【0026】
導体42は、導電性材料から形成されており、ブレード32の内部に設けられている。導体42は、ブレード32の長手方向(延在方向)に沿って設けられており、一端が受雷部41に通電可能に接続され、他端が支柱1に通電可能に接続されている。導体42が支柱1に通電可能に接続されていることにより、受雷部41は、導体42、支柱1、及び接地線11とともに避雷装置4として機能する。
【0027】
<洋上風力発電設備の検査装置>
洋上風力発電設備10の検査装置20について説明する。
【0028】
図2は、検査装置20の概要を示す斜視図である。
【0029】
検査装置20は、洋上風力発電設備10の導通を検査する。洋上風力発電設備10のうち、特に、ブレード32には落雷により大きな電流が流れることがある。検査装置20は、このような落雷により洋上風力発電設備10の損傷を防止するために、洋上風力発電設備10において、その電流を大地もしくは水中へ逃がすために導通が確保されていることを検査する。
【0030】
図1及び図2に示すように、検査装置20は、飛行体5に、受雷部接触部54、制御部55、及び、海水接触部56を備えている。
【0031】
飛行体5は、遠隔操作により空中を飛行することができるものである。飛行体5は、主に、本体部51と、駆動部52と、翼部53と、を備えている。
【0032】
本体部51は、飛行体5のフレームを構成する。本体部51は、飛行体5の各部である駆動部52及び翼部53と、検査装置20を構成する受雷部接触部54、制御部55、及び、海水接触部56とを支持する。図2において、本体部51の形状は、簡略化して示したものであるため、図2の形状に限定されない。
【0033】
駆動部52は、翼部53を回転させる機能を有する。駆動部52は、具体的には、例えば、電動のモータから構成されている。駆動部52は、翼部53ごとに設けられており、例えば、図2に示すように4つ設けられている。
【0034】
翼部53は、駆動部52それぞれの駆動軸に設けられている。翼部53は、駆動部52の駆動によって回転する回転翼である。
【0035】
図3は、検査装置20における受雷部接触部54、海水接触部56、及び制御部55の構成と洋上風力発電設備10の受雷部41及びその周辺の構成とを示す模式図である。
【0036】
図2及び図3に示すように、受雷部接触部54は、導電性材料から形成されており、支持部541により本体部51から外側に突出した位置に設けられている。受雷部接触部54は、ブレード32に設けられている受雷部41に接触させることにより、制御部55により実行される洋上風力発電設備10の導通検査に用いられる。受雷部接触部54は、導電性材料から形成されているケーブル542により、制御部55と通電可能な状態で接続されている。受雷部接触部54は、検査時に多少の位置ズレがあった場合でも受雷部41に接触しやすくするため、例えば、受雷部41に対して十分な接触面を有するように形成されているのが望ましい。なお、受雷部接触部54は、1つである例に限定されず、複数であってもよい。
【0037】
海水接触部56は、導電性材料から形成されている。海水接触部56は、導電性材料から形成されているケーブル61により、制御部55と通電可能な状態で接続されている。
【0038】
海水接触部56は、ケーブル61とともに飛行体5の本体部51の適宜な箇所、例えば、蓋部58が開いた格納部57から下方に向かって垂下することができる。海水接触部56は、海水Sと通電可能な状態で海水Sと接触させることができる。海水接触部56は、海水Sに接触させることにより、制御部55により実行される洋上風力発電設備10の導通検査に用いられる。
【0039】
海水接触部56は、海水Sに対して浮遊可能に形成されていてもよい。このように形成されていることにより、海水接触部56は、海水Sに接続している状態において、海水Sに対して浮遊しない場合と比較して飛行体5の姿勢を安定的に保つことができる。
【0040】
格納部57は、本体部51の底部511に設けられている。格納部57は、底部511に開口部分を有し、海水接触部56及びケーブル61が、洋上風力発電設備10までの移動時に飛行の妨げとならないように、海水接触部56及びケーブル61を格納可能な空間を有する構造となっている。
【0041】
格納部57は、開口部分に対して開閉可能な蓋部58が設けられている。図1に示すように、飛行体5は、測定対象の洋上風力発電設備10に接近した際に、蓋部58をケーブル61に接続されている海水接触部56を格納部57から海水Sまで降下・接触させて矢印L(図3,6参照)で示す導通検査の測定用の回路を構成する。
【0042】
制御部55は、本体部51内に設けられている。制御部55は、検査装置20における飛行体5の機能を制御するとともに、受雷部導通検査部552の機能を実現する。これらの機能部を実現するために、制御部55には、上述したようにケーブル542を介して受雷部接触部54が通電可能に接続しているとともに、ケーブル61を介して海水接触部56が通電可能に接続している。
【0043】
飛行体5の機能を制御する機能を含めて、上述した制御部55における機能部は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現されている。
【0044】
受雷部導通検査部552は、洋上風力発電設備10に電流を流して避雷装置4の導通の状態を検査する導通テスターとしての機能部である。受雷部導通検査部552は、受雷部接触部54及び海水接触部56と通電可能に接続されている。受雷部接触部54が受雷部41に通電可能に接続するとともに、海水接触部56が海水Sに接触することで、受雷部導通検査部552は、図3において矢印Lで示す閉回路を形成することができる。具体的には、洋上においては、洋上風力発電設備10の接地極Gは、海水Sが電気的に等価である。すなわち、洋上風力発電設備10において、海水Sを大地とみなすことができることが、例えば、風力発電規程に定められている。そこで、検査装置20における受雷部導通検査部552では、接地極Gへの配線接続に代えて、ケーブル61に接続されている海水接触部56を、海水Sに接触させることで図3において矢印Lで示す閉回路を形成し、作業員による配線接続作業を不要とする。
【0045】
受雷部導通検査部552は、受雷部接触部54が受雷部41に接触し海水接触部56が海水Sに接触することで、閉回路Lが形成されて電流が流れるので、電流が流れるか否かの情報に基づいて洋上風力発電設備10の導通検査の判定を行うことができる。
【0046】
制御部55は、飛行体5における各駆動部52の駆動を独立して制御する。制御部55は、各駆動部52の駆動を独立して制御することで、各翼部53の回転速度を調節することができる。すなわち、制御部55は、各翼部53の回転速度に差をつけることによって、飛行体5の上昇、下降、前進、後退、水平方向への回転を自在に行わせることができる。また、制御部55は、飛行体5の動作を操作用のリモートコントローラなどの外部機器との通信機能を有している。このため、制御部55は、外部機器から受け付けた飛行体5の操作に応じて上述した駆動部52の駆動制御を行うことができる。飛行体5は、制御部55及び駆動部52に電力を供給する電源を有している。
【0047】
<洋上風力発電設備の検査方法>
検査装置20を用いた洋上風力発電設備の検査方法について説明する。以下では、洋上風力発電設備10の導通検査方法について説明する。
【0048】
図1に示すように、洋上風力発電設備の検査方法において、検査装置20の作業者は、洋上の船舶や陸上等から検査装置20を操縦する。作業者は、ブレード32の先端部近傍まで検査装置20を移動させる。作業者は、検査装置20が洋上風力発電設備10に近づくと、蓋部58を開く操作を行い、格納部57から海水接触部56及びケーブル61を海水Sに向かって降下させる。
【0049】
図4は、洋上風力発電設備の検査方法において、検査装置20を洋上風力発電設備10に接近させるステップを示す模式図である。図4に示すように、作業者は、例えば、検査装置20に備え付けられたカメラで撮像した映像や、船舶や陸上等からの望遠鏡での確認により、受雷部接触部54が受雷部41に対向するように検査装置20の位置を調節して接近する。
【0050】
図5は、洋上風力発電設備の検査方法において、検査装置20の海水接触部56を海水Sに接触させるステップと、受雷部接触部54を受雷部41に接触させるステップと、を示す模式図である。
【0051】
図5に示すように、検査装置20の位置を決めた後、作業者は、検査装置20をブレード32に接近させる際に、海水接触部56が海水Sに接触させる。また、作業者は、受雷部接触部54を受雷部41に接触させる。海水接触部56を海水Sに接触させるステップと、受雷部接触部54を受雷部41に接触させるステップとは、順番が前後しても、また、同時にないしはほぼ同時に行ってもよい。
【0052】
図6は、洋上風力発電設備の検査方法において、受雷部接触部54、避雷装置4、及び、海水接触部56により閉回路を形成するステップと、閉回路Lに電流が流れているか否かを判定するステップと、を示す模式図である。図6に示すように、受雷部41及び導体42が断線していなければ、受雷部導通検査部552から出力された電流は、ケーブル61、海水接触部56、海水S、接地線11、支柱1、導体42、受雷部41、受雷部接触部54、ケーブル542によって形成される閉回路L内を流れ続ける。この閉回路L内に電流が流れるか否かを判定することにより、受雷部導通検査部552は、洋上風力発電設備10の導通検査を行うことができる。
なお、導通が確認された場合には、作業者が操作する外部機器からブザー音が鳴る等の報知部を設けておくことで、作業者は容易に導通の判定結果を知ることができる。
【0053】
[実施の形態の作用効果]
以上のように、検査装置20及び洋上風力発電設備10の検査方法によれば、飛行体5に受雷部導通検査部552、受雷部接触部54、及び、海水接触部56を設け、受雷部接触部54と受雷部41とを通電可能に接続し、海水接触部56を海水Sに接触させる。これにより、洋上風力発電設備10の避雷装置4と検査装置20とが海水Sを介して閉回路を形成するので、この閉回路内に受雷部導通検査部552から供給される電流が流れるか否かの情報に基づいて導通を判定することにより、導通検査を行うことができる。
【0054】
したがって、作業者は、洋上風力発電設備10が設置されている洋上において洋上風力発電設備10に近づくことなく、例えば、船舶や陸上等から検査装置20を遠隔操作し、洋上風力発電設備10の導通検査を行うことができる。よって、作業者の安全確保のための措置を必要とせず、従来よりも安全に検査を行うことができ、検査にかかるコストを低減することができる。
【0055】
[実施の形態の拡張]
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではない。
【0056】
図7は、本実施の形態の変形例に係る検査装置220の概要を示す斜視図である。図8は、変形例に係る検査装置220における受雷部接触部254、海水接触部56、及び制御部55の構成と洋上風力発電設備10の受雷部41及びその周辺の構成とを示す模式図である。
【0057】
検査装置220は、以上説明した例に限定されず、例えば、図7及び図8に示すような構成であってもよい。検査装置220は、主に受雷部接触部254の構成が、先に説明した検査装置20と異なる。検査装置220において、受雷部接触部254は、本体部51の側面1つにおいて、水平方向に延びるローラー状のものが設けられている。このような受雷部接触部254を有する検査装置220によれば、受雷部接触部254の水平方向における受雷部41に対する接触面積を広く確保することができるため、受雷部41に対して容易に接触させることができる。
【0058】
例えば、受雷部41は、ブレード32の先端部に一端が露出するように設けられるものに限らず、ブレード32の先端部を受雷部41で構成してもよい。この場合、受雷部41がブレード32の一部となる。
【0059】
また、導体42は、支柱1の上端部に接続される場合に限らず、支柱1の基端部まで延ばし、水中に接地させてもよい。この場合には、支柱1は、導電性材料から形成されていなくてもよい。
【0060】
また、図2図7において、本体部51は、箱状に形成されているが、このような形状に限定されることはなく、飛行体5の各機能を実現できるようであれば自由に変更可能である。また、翼部53の形状、数量、配置についても、飛行体5としての機能を実現できる範囲内で自由に変更可能である。
また、受雷部接触部54は、検査装置20をブレード32に接近させた後、静電吸着の原理を利用して、受雷部41に接触させてもよい。
【0061】
また、受雷部41が磁性体で構成されている場合、あるいは、受雷部41近傍のブレード32に磁性体を設けた場合には、電磁石を利用して受雷部接触部54を受雷部41に接触させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…支柱、2…ナセル、3…風車、4…避雷装置、5…飛行体、11…接地線、20,220…検査装置、31…軸、32…ブレード、41…受雷部、42…導体、51…本体部、52…駆動部、53…翼部、54,254…受雷部接触部、55…制御部、56…海水接触部、57…格納部、58…蓋部、61,542…ケーブル、511…底部、541…支持部、552…受雷部導通検査部、G…接地極、S…海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8