(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127557
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】位置検出システム、及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240912BHJP
G01S 17/87 20200101ALI20240912BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240912BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/87
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036779
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀邦
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AB01
5J084AC10
5J084BA03
5J084DA07
5J084EA08
5J084EA21
(57)【要約】
【課題】煩雑な事前設定の必要なしに対象物の位置を共通の座標系上で検出すること。
【解決手段】位置検出システム1は、ターゲットを検出する2つの位置センサ2a,2bと、2つの位置センサ2a,2bから出力された検出データを処理する処理部3a,3bと、を備え、処理部3a,3bは、自己位置を検出可能な外部機器4から取得される自己位置の基準データを基にした基準座標と、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれから出力された検出データを基にした外部機器4の検出座標とを参照して、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれの検出座標系の検出座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれからターゲットを対象に出力された検出データを基に、変換情報を用いてターゲットの共通座標系の座標を計算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置を検出する2つのセンサと、
前記2つのセンサから出力された検出データを処理する処理部と、を備え、
前記処理部は、自己位置を検出可能な外部機器から取得される前記自己位置のデータを基にした基準座標と、前記2つのセンサのそれぞれから出力された前記検出データを基にした前記外部機器の座標とを参照して、前記2つのセンサのそれぞれの検出座標系の座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、
前記2つのセンサのそれぞれから前記対象物を対象に出力された前記検出データを基に、前記変換情報を用いて前記対象物の前記共通座標系の座標を計算する、
位置検出システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記変換情報として、前記共通座標系に対する前記検出座標系の移動量及び回転量を生成する、
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記処理部は、最小二乗法を用いて前記変換情報を生成する、
請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記基準座標と、前記検出データを基にした前記外部機器の座標とを合わせこむ合わせこみ処理を行い、合わせこまれた座標を参照して前記変換情報を生成する、
請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記合わせこみ処理は、座標軌跡に基づいたマッチング処理により行われる、
請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記合わせこみ処理は、前記自己位置のデータ及び前記検出データに結び付いた時刻情報を基に行われる、
請求項4に記載の位置検出システム。
【請求項7】
対象物の位置を検出する2つのセンサと、前記2つのセンサから出力された検出データを処理する処理部と、を用いた位置検出方法であって、
自己位置を検出可能な外部機器から取得される前記自己位置のデータを基にした基準座標と、前記2つのセンサのそれぞれから出力された前記検出データを基にした前記機器の座標とを参照して、前記2つのセンサのそれぞれの検出座標系の座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、
前記2つのセンサのそれぞれから前記対象物を対象に出力された前記検出データを基に、前記変換情報を用いて前記対象物の前記共通座標系の座標を計算する、
位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物の位置を検出する位置検出システム、及び位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のセンサを用いて物体を検出する装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数のセンサから得られた位置・移動データを対象に、事前に取得されたセンサパラメータを用いて任意の座標系に変換する変換処理を実行する装置が記載されている。また、下記特許文献2には、2つのレーザセンサから対象物に関する3次元座標のデータを取得し、それぞれのデータを、事前に行われた2つのレーザセンサ間のキャリブレーション結果を用いて、座標変換する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-85602号公報
【特許文献2】特開2021-124377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、2つのセンサで検出された対象物の位置を共通の座標系における座標に変換するためには、事前にセンサの位置、方向、あるいは高さ等を取得したり、事前に2つのセンサ間のキャリブレーションを実行する必要がある。そのため、様々な環境において対象物の位置を検出する際に事前の設定が煩雑になる傾向にあった。
【0005】
そこで、本開示は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、煩雑な事前設定の必要なしに対象物の位置を共通の座標系上で検出することができる位置検出システム及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一側面に係る位置検出システムは、対象物の位置を検出する2つのセンサと、2つのセンサから出力された検出データを処理する処理部と、を備え、処理部は、自己位置を検出可能な外部機器から取得される自己位置のデータを基にした基準座標と、2つのセンサのそれぞれから出力された検出データを基にした外部機器の座標とを参照して、2つのセンサのそれぞれの検出座標系の座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、2つのセンサのそれぞれから対象物を対象に出力された検出データを基に、変換情報を用いて対象物の共通座標系の座標を計算する。
【0007】
あるいは、本開示の他側面に係る位置検出方法は、対象物の位置を検出する2つのセンサと、2つのセンサから出力された検出データを処理する処理部と、を用いた位置検出方法であって、自己位置を検出可能な外部機器から取得される自己位置のデータを基にした基準座標と、2つのセンサのそれぞれから出力された検出データを基にした機器の座標とを参照して、2つのセンサのそれぞれの検出座標系の座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、2つのセンサのそれぞれから対象物を対象に出力された検出データを基に、変換情報を用いて対象物の共通座標系の座標を計算する。
【0008】
ここで、上記の「2つのセンサ」という記載は、2以上の任意の個数のセンサを含みうるということを意味する。
【0009】
上記一側面あるいは上記他側面によれば、外部機器から取得される自己位置のデータを基にした基準座標と、2つのセンサのそれぞれの検出データを基にした外部機器の座標とを基に変換情報が取得され、変換情報を用いて、2つのセンサのそれぞれから出力された検出データを基に、対象物の共通座標系の座標が計算される。このため、道路等の公共の場所等の環境下であっても、外部機器を対象に2つのセンサによって検出させて、その結果得られた検出データ、及び、外部機器から取得される自己位置のデータを基に、2つのセンサのそれぞれの変換情報を容易に取得することができる。つまり、事前のセンサの位置等の測定が不要であり、2つのセンサ間のキャリブレーションが不要である。その結果、煩雑な事前設定の必要なしに対象物の位置を共通の座標系上で検出することができる。
【0010】
上記一側面においては、処理部は、変換情報として、共通座標系に対する検出座標系の移動量及び回転量を生成してよい。
【0011】
かかる構成を採れば、変換情報を用いて、検出データを基にした対象物の座標を共通座標系の座標に精度よく変換させることができる。
【0012】
また、上記一側面においては、処理部は、最小二乗法を用いて変換情報を生成してもよい。
【0013】
この場合も、変換情報を用いて、検出データを基にした対象物の座標を共通座標系の座標に精度よく変換させることができる。
【0014】
また、上記一側面においては、処理部は、基準座標と、検出データを基にした外部機器の座標とを合わせこむ合わせこみ処理を行い、合わせこまれた座標を参照して変換情報を生成してもよい。
【0015】
このような合わせこみ処理によって、外部機器の基準座標と検出データを基にした外部機器の座標との対応を正しく把握することができ、高精度の座標変換を実現することができる。
【0016】
また、上記一側面においては、合わせこみ処理は、座標軌跡に基づいたマッチング処理により行われてもよいし、自己位置のデータ及び検出データに結び付いた時刻情報を基に行われてもよい。この場合、外部機器の基準座標と検出データを基にした外部機器の座標との対応をより正しく把握することができ、高精度の座標変換を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、煩雑な事前設定の必要なしに対象物の位置を共通の座標系上で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の好適な一実施形態に係る位置検出システムの構成概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の処理部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における位置検出方法に含まれる事前処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態における位置検出方法に含まれる本処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態における座標変換前のターゲットの検出結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における座標変換後のターゲットの検出結果を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第2実施形態に係る位置検出システムの構成概略図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る位置検出システムによる合わせこみ処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る位置検出システム1の構成概略図である。同図に示される位置検出システム1は、2つのセンサを用いて、車両、人間等のターゲット(対象物)の位置を検出し、検出結果のデータを生成するシステムである。本実施形態では、位置検出システム1は、道路等の所定の平面P上のターゲットの2次元位置を検出するが、ターゲットの3次元位置を検出するように機能してもよい。また、3つ以上のセンサを用いてターゲットの位置を検出するように機能してもよい。位置検出システム1の設置環境としては、道路等の公共の場所、工場等の敷地等の環境が挙げられる。位置検出システム1の利用用途としては、道路の交通信号制御用のセンシングシステム、敷地内での物体監視システム、自動運転、安全運転支援のためのシステム、交通監視、交通モニタリングのためのシステム等が挙げられる。
【0021】
位置検出システム1は、2つの位置センサ2a,2bと、2つの位置センサのそれぞれの近傍に設けられた処理部3a,3bと、を備える。処理部3aと位置センサ2aとは相互にデータを送受信可能なように有線接続され、処理部3bと位置センサ2bとは相互にデータを送受信可能なように有線接続されている。また、位置検出システム1は、後述するキャリブレーション値を取得するための事前処理時に、外部機器4からデータを受信可能なように外部機器4と無線接続される。
【0022】
2つの位置センサ2a,2bは、それぞれ、固有の3次元座標系における3次元座標(3次元位置)を検出する機器である。位置センサ2a,2bとしては、例えば、レーザ光を用いたLiDAR(light detection and ranging)、ミリ波レーダ等が用いられる。2つの位置センサ2a,2bは、それぞれ、外部機器4を含むターゲットの3次元座標を検出データとして処理部3a,3bに出力する。
【0023】
位置検出システム1の事前処理時に用いられる外部機器4は、自己の3次元座標(自己位置)を検出可能な機器、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を内蔵した機器である。外部機器4には、無線アンテナ5が電気的に接続されている。外部機器4は、事前処理時に検出した3次元座標を基準データとして、無線通信によって処理部3a,3bに送信する。このような外部機器4は、事前処理時に位置検出システム1のメンテナンスを行うユーザによって、位置検出システム1の設置環境内の平面P上の任意の位置に運搬されて用いられる。
【0024】
次に、処理部3a,3bの構成について説明する。処理部3a,3bは同様な構成を有し、それぞれ、位置センサ2a,2bから受信したターゲットの3次元座標の検出データを処理する。
【0025】
図2は、処理部3a,3bのそれぞれの機能構成を示すブロック図である。それぞれの処理部3a,3bは、物理的には、1又は複数のCPU(プロセッサ)と、RAM及びROM等の主記憶装置(メモリ)と、外部との間でデータを送受信するデータ送受信デバイスである通信モジュールと、半導体メモリ及びハードディスク装置等の補助記憶装置と、を含むデータ処理システムとして構成されている。
図2に示す処理部3a,3bの各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信モジュールを動作させるとともに、RAMあるいは補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0026】
2つの処理部3a,3bの機能は同一であり、それぞれの処理対象が位置センサ2a,2bから受信した検出データである点のみが異なる。ただし、処理部3aと処理部3bとは同一の処理部であってもよいし、一方の処理部の一部の機能が他方の処理部に具備されていてもよい。その場合は、2つの処理部の間でデータを送受信可能な構成とされる。以下では、処理部3aの機能について説明する。
【0027】
処理部3aは、機能的には、データ取得部101、データ処理部102、変換情報生成部103、座標変換部104,出力データ生成部105、検出座標格納部106,基準座標格納部107、及び変換情報格納部108を含んで構成される。以下、処理部3aの各機能部の機能について詳細に説明する。
【0028】
データ取得部101は、位置センサ2aからターゲットの3次元座標の検出データを取得する。すなわち、データ取得部101は、事前処理時には、位置センサ2aからターゲットである外部機器4の3次元座標の検出データを取得し、任意のターゲットの位置を検出する本処理時には、位置センサ2aから任意のターゲットの3次元座標の検出データを取得する。このとき、データ取得部101は、位置センサ2aから時系列に検出された検出データを連続的に取得し、それぞれの検出データに含まれる3次元座標の検出時刻を示す時刻データ(時刻情報)も、位置センサ2aから取得する。そして、データ取得部101は、時系列に取得した検出データと、その検出データに対応付けられた時刻データをデータ処理部102に引き渡す。
【0029】
また、データ取得部101は、事前処理時には、外部機器4から3次元座標の基準データを取得する。このとき、データ取得部101は、外部機器4から時系列に検出された基準データを連続的に取得し、それぞれの検出データに含まれる3次元座標の検出時刻を示す時刻データ(時刻情報)も、外部機器4から取得する。そして、データ取得部101は、時系列に取得した基準データと、その基準データに対応付けられた時刻データをデータ処理部102に引き渡す。
【0030】
データ処理部102は、データ取得部101から引き渡された時系列の検出データに含まれるそれぞれの3次元座標を、平面P上の検出座標系の2次元座標である検出座標(ui,vi)(iは1以上K以下の整数、Kは時系列の検出データの個数)に変換する。データ処理部102は、この座標変換を、位置センサ2aの3次元座標系に対する検出座標系(2次元座標系)のピッチ角およびロール角に基づいて実行する。このピッチ角およびロール角は、予めデータ処理部102によって、位置センサ2aから路面等の平面Pをターゲットとして取得された検出データを基に、最小二乗法あるいはRANSAC(Random Sample Consensus)等のアルゴリズムを用いて推定された平面の法線ベクトルを使用して設定されている。そして、データ処理部102は、時系列の検出データを基に得た検出座標(ui,vi)を、その検出データに対応付けられた時刻データとともに、検出座標格納部106に格納する。
【0031】
また、データ処理部102は、事前処理時には、データ取得部101から引き渡された時系列の基準データに含まれるそれぞれの3次元座標を、平面P上の共通座標系における2次元座標である基準座標(Xi,Yi)(iは1以上L以下の整数、Lは時系列の基準データの個数)に変換する。データ処理部102は、この座標変換を、外部機器4の3次元座標系に対する2次元座標系のピッチ角およびロール角に基づいて実行する。このピッチ角およびロール角は、上述した方法と同様にして予め設定されている。そして、データ処理部102は、時系列の基準データを基に得た基準座標(Xi,Yi)を、その基準データに対応付けられた時刻データとともに、基準座標格納部107に格納する。
【0032】
変換情報生成部103は、事前処理時に、位置センサ2aから取得された検出データを基にした検出座標(ui,vi)を共通座標系の座標に変換するための変換情報を生成する。まずは、変換情報生成部103は、検出座標格納部106に格納された外部機器4の検出座標(ui,vi)と、基準座標格納部107に格納された外部機器4の基準座標(Xi,Yi)との合わせこみを行う合わせこみ処理を実行する。詳細には、変換情報生成部103は、検出座標(ui,vi)のそれぞれと、基準座標(Xi,Yi)のそれぞれとの対応付けを、それぞれに結び付いた時刻データを用いて行う。このとき、変換情報生成部103は、結び付いた時刻データの示す時刻が互いに近い座標を対応付ける。
【0033】
さらに、変換情報生成部103は、合わせこみ処理によって合わせこまれた外部機器4の検出座標(ui,vi)及び外部機器4の基準座標(Xi,Yi)(iは1以上N以下の整数、Nは、N≦KおよびN≦Lを満たす整数)を参照して、変換情報を生成する。生成される変換情報には、共通座標系に対する検出座標系の移動量XC,YC、及び共通座標系に対する検出座標系の回転量θCが含まれる。変換情報生成部103は、X軸に沿った移動量XC、Y軸に沿った移動量YC、及びXY平面に沿った回転量θCを、外部機器4の検出座標(ui,vi)を外部機器4の基準座標(Xi,Yi)に近づけるキャリブレーション値として求める。
【0034】
具体的には、変換情報生成部103は、キャリブレーション値X
C,Y
C,θ
Cを、最小二乗法を用いて生成する。最初に、変換情報生成部103は、キャリブレーション値X
C,Y
C,θ
Cの初期値X
Initial,Y
Initial,θ
Initialを下記式(1),(2),(3)によって計算する。
【数1】
【数2】
【数3】
【0035】
そして、変換情報生成部103は、最小二乗法により、行列T=[ΔX,ΔY,Δθ]
Tを下記の計算式(4),(5),(6)により計算する。
T=F
-1・G (4)
【数4】
【数5】
ここで、値F13,F23,F33は、下記式(7),(8),(9)により計算される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0036】
さらに、変換情報生成部103は、キャリブレーション値X
C,Y
C,θ
Cを下記式(10),(11),(12)により計算し、計算したキャリブレーション値X
C,Y
C,θ
Cを、位置センサ2aから取得される検出データに使用する変換情報として変換情報格納部108に格納し、位置センサ2aに関する事前処理を終了する。
【数9】
【数10】
【数11】
【0037】
座標変換部104は、任意のターゲットの位置を検出する本処理時に、検出座標格納部106に時系列に格納された、位置センサ2aの検出データを基にした検出座標(u
i,v
i)を対象に、変換情報格納部108に格納された変換情報を用いて座標変換処理を施し、共通座標系の座標(X
i,Y
i)を計算する。この座標変換処理は、下記式(13),(14)を用いて行われる。
【数12】
【数13】
【0038】
出力データ生成部105は、座標変換部104により任意のターゲットを対象に時系列に計算された共通座標系の座標(Xi,Yi)を基に、出力データを生成および記憶する。ここでは、出力データ生成部105は、生成した出力データを外部の装置に送信してもよい。出力データは、道路の交通信号制御、物体監視、自動運転、安全運転支援、交通監視、あるいは、交通モニタリング等を目的に使用されうる。
【0039】
以下、位置検出システム1における事前処理及び本処理の動作手順について説明するとともに、本実施形態にかかる位置検出方法の流れについて詳述する。
【0040】
まず、
図3を参照しながら、位置検出システム1による事前処理の手順について説明する。ユーザによって外部機器4が位置検出システム1の設置環境内の平面P上に運搬された状態で事前処理が開始される。事前処理は、位置センサ2aあるいは位置センサ2bが外部機器4を検出したことを契機に自動で開始されてもよいし、処理部3a,3bあるいは外部機器4がユーザからの指示を受けたことを契機に開始されてもよい。
【0041】
最初に、処理部3a,3bのデータ取得部101が、位置センサ2a,2bから外部機器4の検出データを連続して取得し、外部機器4から自己位置のデータである基準データを連続して取得する(ステップS01)。次に、処理部3a,3bのデータ処理部102は、時系列の検出データを基に、時系列の外部機器4の検出座標(ui,vi)を取得し、時系列の基準データを基に、時系列の外部機器4の基準座標(Xi,Yi)を取得する(ステップS02)。そして、処理部3a,3bの変換情報生成部103は、時系列の検出座標(ui,vi)と時系列の基準座標(Xi,Yi)とを対象に、合わせこみ処理を実行する(ステップS03)。最後に、処理部3a,3bの変換情報生成部103が、合わせこまれた検出座標(ui,vi)及び基準座標(Xi,Yi)を参照して、キャリブレーション値XC,YC,θCを計算および記憶する(ステップS04)。
【0042】
次に、
図4を参照しながら、位置検出システム1による本処理の手順について説明する。本処理は、事前処理が完了した後の任意のタイミング(定期的なタイミング、あるいはユーザから指示されたタイミング)で起動される。
【0043】
最初に、処理部3a,3bのデータ取得部101が、位置センサ2a,2bから任意のターゲットの検出データを連続して取得する(ステップS101)。次に、処理部3a,3bのデータ処理部102が、時系列の検出データを基に、時系列のターゲットの検出座標(ui,vi)を取得する(ステップS102)。その後、処理部3a,3bの座標変換部104は、時系列の検出座標(ui,vi)を、記憶してあったキャリブレーション値XC,YC,θCを用いて座標変換することによって、時系列の共通座標系の座標(Xi,Yi)を計算する(ステップS103)。最後に、処理部3a,3bの出力データ生成部105は、時系列の共通座標系の座標(Xi,Yi)を基に出力データを生成及び記憶する(ステップS104)。
【0044】
以上説明した位置検出システム1によれば、外部機器4から取得される自己位置の基準データを基にした基準座標(Xi,Yi)と、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれの検出データを基にした外部機器4の検出座標(ui,vi)とを基に変換情報が取得され、変換情報を用いて、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれから出力された検出データを基に、ターゲットの共通座標系の座標(Xi,Yi)が計算される。このため、道路等の公共の場所等の環境下であっても、歩行者あるいは車両等の妨げとなることなく、外部機器4を対象に2つの位置センサ2a,2bによって検出させて、その結果得られた検出データ、及び、外部機器4から取得される自己位置の基準データを基に、2つの位置センサ2a,2bのそれぞれのキャリブレーション値を容易に取得することができる。つまり、事前の位置センサ2a,2bの位置等の測定が不要であり、2つの位置センサ2a,2b間のキャリブレーションが不要である。その結果、煩雑な事前設定の必要なしにターゲットの位置を共通の座標系上で検出することができる。
【0045】
例えば、位置センサにおけるキャリブレーション値の取得のためには、平面P上に反射テープ等を貼付して位置センサで反射テープ等を計測させることも考えられる。しかし、この場合、設置環境が公共の場所の場合にキャリブレーション作業が交通等の障害となる。本実施形態では、設置環境が公共の場所の場合に障害を生じさせることなくキャリブレーション値を取得することができる。
【0046】
また、本実施形態では、最小二乗法を用いて、変換情報として、共通座標系に対する検出座標系の移動量XC,YC及び回転量θCが生成されている。このような変換情報を用いることにより、検出データを基にしたターゲットの検出座標を共通座標系の座標に精度よく変換させることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、基準データ及び検出データに結び付いた時刻情報を基に基準座標(Xi,Yi)と検出座標(ui,vi)とを合わせこむ合わせこみ処理が行われている。このような合わせこみ処理によって、外部機器4の基準座標(Xi,Yi)と外部機器4の検出座標(ui,vi)との対応を正しく把握することができ、高精度の座標変換を実現することができる。
【0048】
次に、本実施形態にかかる位置検出システム1による計算例を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
表1には、位置センサ2aの検出データに基づく時系列の検出座標(u
i,v
i)、表2には、位置センサ2bの検出データに基づく時系列の検出座標(u
i,v
i)、表3には、外部機器4の基準データに基づく時系列の基準座標(X
i,Y
i)であって、表1及び表2に示す検出座標(u
i,v
i)に合わせこまれた基準座標(X
i,Y
i)を示している。さらに、表4には、表1及び表3に示す座標を基に計算された位置センサ2a用のキャリブレーション値を示し、表5には、表2及び表3に示す座標を基に計算された位置センサ2b用のキャリブレーション値を示している。
【0049】
図5には、位置センサ2a,2bのそれぞれの検出座標系における座標変換前のターゲットの検出座標の検出結果を重ねて示している。また、
図6には、位置センサ2a,2bによる検出座標を座標変換した後の検出結果を重ねて示している。これらの図においては、位置センサ2aによる検出座標を白色で示し、位置センサ2bによる検出座標を黒色で示している。この結果より、座標変換後では2つの位置センサ2a、2bによって検出される座標が重なっており、位置検出システム1により精度よく共通座標系に変換されていることが分かる。
【0050】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0051】
上記実施形態では、ターゲットの座標として2次元座標を取得し、その2次元座標を2次元座標系上で座標変換していた。他の実施形態として、ターゲットの3次元座標を取得し、その3次元座標を3次元座標系上で座標変換するように構成されてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、外部機器4における基準座標(Xi,Yi)の座標系を共通座標系として、位置センサ2a,2bによって検出された検出座標(ui,vi)をその共通座標系の座標に変換している。他の実施形態として、位置センサ2a,2bの一方によって検出された検出座標(ui,vi)の座標系を共通座標系として、位置センサ2a,2bの他方によって検出された検出座標(ui,vi)をその共通座標系の座標に変換してもよい。また、位置センサ2a,2bによって検出された検出座標(ui,vi)を、固定の他の共通座標系の座標に変換してもよい。
【0053】
図7は、第2実施形態に係る位置検出システム1Aの構成概略図である。同図に示される位置検出システム1Aは、位置検出システム1と異なり、処理部3a,3bの代わりに、位置センサ2a,2b及び外部機器4と、無線通信を使用してデータを送受信することが可能なサーバ装置(コンピュータ装置)7を備える。サーバ装置7は、処理部3a,3bの代わりに、
図2に図示した機能部の機能を有する。かかる構成の位置検出システム1Aは、位置検出システム1と同様の作用効果を奏する。
【0054】
上記実施形態の位置検出システム1においては、外部機器4の検出座標(u
i,v
i)と外部機器4の基準座標(X
i,Y
i)とを合わせこむ合わせこみ処理を、以下のように実行してもよい。
図8は、変形例に係る位置検出システム1による合わせこみ処理を説明するための図である。この変形例においては、処理部3aの変換情報生成部103は、検出座標系X1-Y1上での時系列の外部機器4の検出座標(u
i,v
i)の座標軌跡P1と、共通座標系X-Y上での時系列の外部機器4の基準座標(X
i,Y
i)の座標軌跡P0との間で、形状を利用したマッチング処理を実行し、そのマッチング処理の結果を利用して検出座標(u
i,v
i)と基準座標(X
i,Y
i)との間での対応付けを行う。マッチング処理のアルゴリズムとしては、例えば、ICP(Iterative Closest Point)、NDT(Normal Distributions Transform)Scan Matching等のアルゴリズムが用いられる。その後、合わせこまれた検出座標(u
i,v
i)及び基準座標(X
i,Y
i)を参照して、処理部3aの変換情報生成部103は、座標軌跡P1を座標軌跡P0に近づけるように変換情報を生成する。同様に、処理部3bの変換情報生成部103は、検出座標系X2-Y2上での時系列の外部機器4の検出座標(u
i,v
i)の座標軌跡P2と、共通座標系X-Y上での時系列の外部機器4の基準座標(X
i,Y
i)の座標軌跡P0との間で、形状を利用したマッチング処理を実行する。このような変形例によっても、外部機器4の基準座標(X
i,Y
i)と外部機器4の検出座標(u
i,v
i)との対応を正しく把握することができ、高精度の座標変換を実現することができる。特に、合わせこみ処理に時刻データが不要となり、データ通信量及び演算量を削減することができる。また、障害物等によって2つの位置センサ2a,2bによって外部機器4が同時に検出できないような環境下であって、2つの位置センサ2a,2b間でのキャリブレーション処理が困難な場合であっても、2つの位置センサ2a,2b毎に合わせこみ処理及びキャリブレーションを行うことができる。
【0055】
本発明の位置検出システムは、[1]「対象物の位置を検出する2つのセンサと、前記2つのセンサから出力された検出データを処理する処理部と、を備え、前記処理部は、自己位置を検出可能な外部機器から取得される前記自己位置のデータを基にした基準座標と、前記2つのセンサのそれぞれから出力された前記検出データを基にした前記外部機器の座標とを参照して、前記2つのセンサのそれぞれの検出座標系の座標を、共通座標系の座標に変換する変換情報を生成し、前記2つのセンサのそれぞれから前記対象物を対象に出力された前記検出データを基に、前記変換情報を用いて前記対象物の前記共通座標系の座標を計算する、位置検出システム」である。
【0056】
本発明の位置検出システムは、[2]「前記処理部は、前記変換情報として、前記共通座標系に対する前記検出座標系の移動量及び回転量を生成する、上記[1]に記載の位置検出システム」であってもよい。
【0057】
本発明の位置検出システムは、[3]「前記処理部は、最小二乗法を用いて前記変換情報を生成する、上記[1]又は[2]に記載の位置検出システム」であってもよい。
【0058】
本発明の位置検出システムは、[4]「 前記処理部は、前記基準座標と、前記検出データを基にした前記外部機器の座標とを合わせこむ合わせこみ処理を行い、合わせこまれた座標を参照して前記変換情報を生成する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の位置検出システム」であってもよい。
【0059】
本発明の位置検出システムは、[5]「前記合わせこみ処理は、座標軌跡に基づいたマッチング処理により行われる、上記[4]に記載の位置検出システム」であってもよい。
【0060】
本発明の位置検出システムは、[6]「前記合わせこみ処理は、前記自己位置のデータ及び前記検出データに結び付いた時刻情報を基に行われる、上記[4]に記載の位置検出システム」であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 位置検出システム
3a,3b 処理部
2a,2b 位置センサ
4 外部機器
5 無線アンテナ
7 サーバ装置(コンピュータ装置)
101 データ取得部
102 データ処理部
103 変換情報生成部
104 座標変換部
105 出力データ生成部
106 検出座標格納部
107 基準座標格納部
108 変換情報格納部
P0,P1,P2 座標軌跡