(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127558
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】船舶の積み付け計画作成装置、船舶の積み付け計画作成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B63B 27/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B63B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036780
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祐一
(72)【発明者】
【氏名】伍 偉恒
(57)【要約】
【課題】固定部材の数を最適に設定した、船舶における貨物の積み付け計画を作成する。
【解決手段】船舶の積み付け計画作成装置は、積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得する貨物情報取得部と、スロットに貨物を配置する際の制約条件を取得する制約条件取得部と、制約条件を満たすように、船舶において貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの貨物について、配置するスロットを設定する最適化計算実行部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得する貨物情報取得部と、
前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得する制約条件取得部と、
前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定する最適化計算実行部と、
を含む、
船舶の積み付け計画作成装置。
【請求項2】
前記制約条件が、1つのスロットには2つ以上の貨物を配置しないことと、前記貨物のうちで予め決められた特殊貨物を、前記スロットのうちで予め決められた特殊スロットに配置することと、
を含む、
請求項1に記載の船舶の積み付け計画作成装置。
【請求項3】
前記最適化計算実行部は、前記貨物を固定する固定部材の数と、前記貨物を搭載した前記船舶の重心と、前記制約条件を満たさない前記特殊貨物の数とを目的関数として、前記最適化計算を行う、
請求項2に記載の船舶の積み付け計画作成装置。
【請求項4】
前記最適化計算実行部は、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が出来るだけ少なくなり、前記貨物を搭載した前記船舶の重心が、前記船舶の中央位置に出来るだけ近づき、かつ、前記制約条件を満たさない特殊貨物の数が出来るだけ少なくなるように、最適化計算を行う、
請求項3に記載の船舶の積み付け計画作成装置。
【請求項5】
前記最適化計算実行部は、前記目的関数としての、前記貨物を固定する固定部材の数と、前記貨物を搭載した前記船舶の重心と、前記制約条件を満たさない前記特殊貨物の数とのそれぞれに対して重み付けをしつつ、前記最適化計算を行う、
請求項3又は請求項4に記載の船舶の積み付け計画作成装置。
【請求項6】
積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得するステップと、
前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得するステップと、
前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定するステップと、
を含む、
船舶の積み付け計画作成方法。
【請求項7】
積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得するステップと、
前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得するステップと、
前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定するステップと、
をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の積み付け計画作成装置、船舶の積み付け計画作成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
積み荷を運搬する船舶においては、運航の安全を担保しつつ、貨物を最大限積載することが重要である。特許文献1には、航路において予想される海象から、船舶に生じる実波浪モーメントを見積り、その実波浪モーメントの予測値に基づいて貨物の積み付け計画を作成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貨物を船舶に積み付ける際には、所定の位置に貨物を配置した後、荷崩れ防止のために、ケーブルなどの固定部材により、貨物を船舶に固縛するラッシング作業が行われる。しかしながら、ラッシング作業に用いる固定部材の数が過少だと、荷崩れが起きる可能性があり、固定部材の数が過大だと、本来不要な工数が発生するおそれがある。特許文献1に記載された積み付け計画作成方法は、海象の情報と、船舶の構造に関する情報から実波浪モーメントを予測し、その予測値から船舶の貨物積載量を計画することができるが、固縛する固定部材の数については考慮できていない。従って、固定部材の数を適切に設定することが求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、固定部材の数を適切に設定可能な、船舶の積み付け計画作成装置、船舶の積み付け計画作成方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る船舶の積み付け計画作成装置は、積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得する貨物情報取得部と、前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得する制約条件取得部と、前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定する最適化計算実行部とを含むことを特徴とする。
【0007】
本開示に係る船舶の積み付け計画作成方法は、積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得するステップと、前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得するステップと、前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定するステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本開示に係るプログラムは、積み付けの対象となる複数の貨物の情報と、船舶において前記貨物を配置する複数のスロットの情報とを取得するステップと、前記スロットに前記貨物を配置する際の制約条件を取得するステップと、前記制約条件を満たすように、前記船舶において前記貨物を固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、前記最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの前記貨物について、配置する前記スロットを設定するステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、船舶の構造、及び貨物固有の制約条件を満足しながら、貨物固縛用の固定部材を適切な数に設定された貨物の積み付け計画を作成する、船舶の積み付け計画作成装置、船舶の積み付け計画作成方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、船舶の貨物室の模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る積み付け計画作成装置1の模式的なブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る積み付け計画作成のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示にかかる積み付け計画作成装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
本実施形態に係る積み付け計画作成装置1は、船舶SHにおける貨物Cの配置位置を設定する装置である。最初に、貨物C及び船舶SHについて説明する。
【0013】
(貨物)
図1は、本実施形態における貨物の模式図である。貨物Cは、船舶SHによる搬送対象物であり、積み付け計画作成装置1によって配置位置が設定される対象となる貨物である。本実施形態における貨物Cは、積載物が収納されたコンテナであるが、コンテナであることに限られず、任意の形態であってよい。
【0014】
それぞれの貨物Cには、積み付け計画に影響を及ぼす種類が設定されている。具体的には、
図1に示すように、貨物Cは、一般貨物CLと特殊貨物CSとのいずれかの種類に設定される。一般貨物CLは、一般的な貨物であり、船舶SHのいずれの貨物配置場所(後述のスロットS)にも配置が可能な貨物である。特殊貨物CSは、配置可能なスロットSが制限される、特殊な貨物である。特殊貨物CSは、更に、配置が可能なスロットSが互いに異なる複数の種類に分類されていてもよい。特殊貨物CSの種類としては、例えば、電源貨物CS1、急ぎ指定貨物CS2、背高貨物CS3、動物貨物CS4などが挙げられる。電源貨物CS1は、冷蔵・冷凍コンテナを例にする、船舶あるいは船舶に搭載した発電機等からの電源供給が必要な貨物である。急ぎ指定貨物CS2は、早期に船舶からの荷下ろしが必要な貨物である。背高貨物CS3は、天井が高い場所に配置が必要な貨物である。動物貨物CS4は、牛馬を例にする風通しのよい場所に配置が必要な貨物である。
【0015】
(船舶)
図2は、船舶の貨物室の模式的な平面図である。
図3は、
図2のA-A’断面である。以下において、船舶SHの理想重心G0から船首(
図2の例では船舶SHの輪郭線における曲線の頂点部)に向かう軸を軸Ax1とし、軸Ax1と直交し、理想重心G0から船舶の幅方向に平行な軸を軸Ax2とし、軸Ax1と軸Ax2に直交する軸を軸Ax3と定義する。軸Ax1、軸Ax2及び軸Ax3にそれぞれ平行な方向は、それぞれ方向Dxと、方向Dyと、方向Dzとする。なお、理想重心G0とは、例えば貨物Cが搭載されていない状態での船舶SHの重心位置であり、理想重心G0の位置は、例えば船舶SHの設計情報等から、予め設定されている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、船舶SHの貨物室は、貨物Cを配置する場所の最小単位であるスロットSで区切られている。すなわち、スロットSとは、船舶SH内において貨物Cが配置される領域を指す。1つのスロットSには、1つの貨物Cを配置することができる。それぞれのスロットSには、配置可能な貨物Cを示す種類が設定されている。スロットSは、一般スロットLSと特殊スロットSSとのいずれかの種類に設定される。一般スロットLSは、一般貨物CLが配置可能であり、特殊貨物CSが配置不可能なスロットである。特殊スロットSSは、特殊貨物CSが配置可能なスロットである。特殊スロットSSには、一般貨物CLも配置可能であってよい。特殊スロットSSは、更に、配置が可能な特殊貨物CSが互いに異なる複数の種類に分類されていてもよい。特殊スロットSSの種類としては、例えば、電源貨物スロットSS1、急ぎ指定スロットSS2、背高貨物スロットSS3、動物貨物スロットSS4などが挙げられる。電源貨物スロットSS1は、例えば近くに電源PWがある領域であり、電源貨物CS1が配置可能である。急ぎ指定スロットSS2は、例えば船舶SHの出口近傍の領域であり、急ぎ指定貨物CS2が配置可能である。背高貨物スロットSS3は、例えば天井の高い場所にある領域であり、背高貨物CS3が配置可能である。動物貨物スロットSS4は、例えば風通しのよい領域であり、動物貨物CS4が配置可能である。なお、
図2及び
図3の例では、貨物室として、上層貨物室UA及び下層貨物室LAがあり、上層貨物室UAに、一般スロットLS、電源貨物スロットSS1、および急ぎ指定スロットSS2が設定され、下層貨物室LAに、背高貨物スロットSS3および動物貨物スロットSS4が設定されている。ただし、船舶SHにおける貨物室及びスロットSのレイアウトは任意であってよく、
図2及び
図3の例に限られない。すなわち、貨物室におけるスロットSのレイアウト、数、および、一般スロットLSや特殊スロットSSの位置などは、船舶SH毎に適宜設定される。
【0017】
(積み付け計画作成装置)
積み付け計画作成装置1は、積み付けの対象となる貨物Cを、対象となる船舶SHのどのスロットSに配置するかを計画する。ここで、貨物Cは、スロットSに配置されたら、固定部材により、船舶SHに固定される。固定部材は、任意の部材であってよいが、例えばラッシング作業に用いられるケーブルであってよい。積み付け計画作成装置1は、貨物Cの固定に用いる固定部材の数を最適化する最適化計算を実行して、積み付けの対象となる複数の貨物Cのそれぞれを、船舶SHのどのスロットSに配置するかを計画する。言い換えれば、積み付け計画作成装置1は、固定部材の数が最適となるような、それぞれの貨物Cが配置されるスロットSを決定する。以下、積み付け計画作成装置1について具体的に説明する。
【0018】
図4は、本実施形態に係る積み付け計画作成装置1の模式的なブロック図である。本実施形態に係る積み付け計画作成装置1は、例えばコンピュータであり、
図4に示すように、入力部10と、出力部20と、メモリ30と、制御部40とを有する。入力部10は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えばマウス、キーボード、タッチパネルなどであってよい。出力部20は、情報を出力する装置であり、例えば画像を表示するディスプレイなどであってよい。
【0019】
メモリ30は、制御部40の演算内容や、プログラム、入力部10から積み付け計画作成装置1の使用者によって入力された各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。メモリ30が保存する制御部40用のプログラムは、積み付け計画作成装置1が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0020】
制御部40は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部40は、貨物情報取得部411と、制約条件取得部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414とを含む。制御部40は、メモリ30からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、貨物情報取得部411と、制約条件取得部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部40は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、貨物情報取得部411と、制約条件取得部412と、最適化計算実行部413と、出力制御部414との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0021】
(積み付け計画作成装置の処理)
以下で、積み付け計画作成装置1の処理内容を説明する。
【0022】
(貨物情報とスロット情報の取得)
貨物情報取得部411は、積み付け対象となる貨物Cの情報である貨物情報と、積み付けられる船舶SHにおけるスロットSの情報であるスロット情報とを取得する。貨物情報は、積み付け対象となるそれぞれの貨物Cについての、貨物Cの種類の情報と、重量の情報とを含む。スロット情報は、船舶SHに設定されているそれぞれのスロットSについての、スロットSの種類と、船舶SHにおけるスロットSの位置情報と、貨物積み付け前の船舶SHの理想重心G0の位置情報とを含む。貨物情報の入手方法は任意でよい。例えば、運搬する貨物Cのオーダー情報が予め設定され、そのオーダー情報に貨物情報が含まれており、貨物情報取得部411が、図示しない通信部を介して、外部サーバなどからそのオーダー情報を取得してよい。同様に、スロット情報の取得方法も任意でよい。例えば、搬送する船舶SHを示す情報があらかじめ設定され、その情報にその船舶SHについてのスロット情報が含まれており、貨物情報取得部411が、図示しない通信部を介して、外部サーバなどからそのオーダー情報を取得してよい。また、貨物情報やスロット情報は、予めメモリ30に記憶されていてもよいし、使用者によって入力部10を介して入力されてもよい。貨物情報取得部411が取得した貨物情報及びスロット情報は、メモリ30に記憶される。
【0023】
(制約条件の取得)
制約条件取得部412は、最適化計算に用いる制約条件を取得する。制約条件とは、スロットSに貨物Cを配置する際に守るべき制約条件である。本実施形態では、制約条件取得部412は、1つのスロットSには2つ以上の貨物Cを配置しないことを制約とする第1制約条件と、特殊貨物CSを、その特殊貨物CSに対応する種類の特殊スロットSSに配置することを制約とする第2制約条件とを、制約条件として取得する。さらに言えば、制約条件取得部412は、全ての貨物Cを搭載した後の船舶SHの重心位置と、理想重心G0の位置とのずれ量が所定範囲に収まることを制約とする第3制約条件も、制約条件として取得することが好ましい。制約条件取得部412は、任意の方法で制約条件を設定してよく、例えば予め設定された制約条件を、外部サーバから取得してもよいし、メモリ30から読み出してもよい。
【0024】
本実施形態においては、制約条件取得部412は、制約条件を、線形不等式として設定する。以下で、本実施形態において制約条件に含まれる変数Vcs及び定数を説明する。
【0025】
(変数)
変数Vcsは、最適化計算における変数であり、スロットSと、そのスロットSに配置される貨物Cとの関係を示す指標といえる。具体的には、変数VcsにおけるC(C=1…n;nは運搬対象の貨物Cの数)は、積み付けの対象となる貨物Cの識別子であり、S(S=1…m;mは船舶SHのスロットSの数)は、船舶SHにおけるスロットSの識別子である。すなわち、変数Vcsは、各貨物と各スロットとの組合せに対して、スロットSに貨物Cを置くか否かを0-1変数で表現するように設定される。具体的にはあるスロットSにある貨物Cを置く場合、Vcs=1に設定され、そのスロットSにその貨物Cを置かない場合はVcs=0に設定される。すなわち、全ての貨物Cに1からnまでの数で採番し、同様に全てのスロットSにも1からmまでの数で採番後、採番した貨物CとスロットSのペアごとに、最適化計算により変数Vcsを決めることで、全ての貨物Cを、どのスロットSに配置するかを決めることになる。
【0026】
(定数)
定数としては、貨物の重量と、積み付け対象となる貨物Cの集合と、船舶SHにおけるスロットSの集合と、貨物Cのうちの特殊貨物CSの集合と、スロットSのうちの特殊スロットSSの集合とが、設定される。定数は、貨物情報取得部411によって取得された貨物情報及びスロット情報に基づき設定される。より具体的には、定数としては、貨物の重量を示すCWc(実数)と、貨物Cの集合を示すCcと、スロットSの集合を示すCs、電源貨物CS1の集合を示すCcrと、急ぎ指定貨物CS2の集合を示すCcuと、動物貨物CS4の集合を示すCcaと、背高貨物CS3の集合を示すCcdと、電源貨物スロットSS1の集合を示すCsrと、急ぎ指定スロットSS2の集合を示すCsuと、動物貨物スロットSS4の集合を示すCsaと、背高貨物スロットSS3の集合を示すCsdと、を設定する。
【0027】
(制約条件)
本実施形態における制約条件は、例えば以下の式(1)から式(10)に示したものとなる。ただし、以下に示す制約条件は一例であり、制約条件はそれに限定されない。
【0028】
【0029】
式(1)および式(2)は、1つのスロットSには2つ以上の貨物Cを配置しないことを制約とする第1制約条件に対応する制約条件である。式(1)は、全ての貨物Cを必ずいずれかのスロットSに配置することを意味する。式(2)は、1スロットSに、必ず1つ以下の貨物Cを配置すること(2以上の貨物Cを配置しないこと)を意味する。
【0030】
【0031】
式(3)および式(4)は、第3制約条件に対応する制約条件である。式(3)は、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの左右中心(理想重心G0の位置)から左へずれる距離が目的関数Oyを超えないことを意味する。式(4)は、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの左右中心(理想重心G0の位置)から右へずれる距離が目的関数Oyを超えないことを意味する。
【0032】
【0033】
式(5)および式(6)は、第3制約条件に対応する制約条件である。式(5)は、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの理想重心G0から上へずれる距離が目的関数Ozを超えないことを意味する。式(6)は、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの理想重心G0から下へずれる距離が目的関数Ozを超えないことを意味する。
【0034】
【0035】
式(7)から式(10)は、特殊貨物CSを、その特殊貨物CSに対応する種類の特殊スロットSSに配置することを制約とする第2制約条件に対応する。式(7)は、電源貨物CS1を電源貨物スロットSS1に配置することを意味する。式(8)は、背高貨物CS3を必ず背高貨物スロットSS3に配置することを意味する。式(9)は、動物貨物CS4を動物貨物スロットSS4に配置することを意味する。式(10)は、急ぎ指定貨物CS2を急ぎ指定スロットSS2に配置することを意味する。より詳しくは、本実施形態では、式(7)から式(9)の制約条件については、その制約条件を守ることが必須な必須制約条件とし、急ぎ指定貨物CS2を急ぎ指定スロットSS2に配置する制約条件は、その制約条件を守ることが必須とされない。具体的には、式(10)においては、急ぎ指定スロットSS2以外のスロットSに配置される急ぎ指定貨物CS2が目的関数Ouを超えない旨の制約がなされている。ただし、必須とする制約条件及び必須としない制約条件はこれに限られず任意であってよく、例えば、式(7)から(10)の全てが必須の制約条件でもよいし、式(7)から(10)の全てが必須でない制約条件でもよい。
【0036】
(目的変数の取得)
制約条件取得部412は、最適化計算に用いる目的変数を取得する。制約条件取得部412は、貨物Cを固定する固定部材の数(それぞれの貨物Cを固定するために用いる固定部材の総数)を、目的変数(第1目的変数)として取得する。さらに言えば、本実施形態では、制約条件取得部412は、用いる固定部材の数を示す第1目的変数と、第2制約条件を満たさない特殊貨物CSの数を示す第2目的変数と、全ての貨物Cを搭載した後の船舶SHの重心位置と理想重心G0の位置とのずれ量を示す第3目的変数とを、目的変数として取得することが好ましい。制約条件取得部412は、任意の方法で目的変数を設定してよく、例えば予め設定された目的変数を、外部サーバから取得してもよいし、メモリ30から読み出してもよい。
【0037】
本実施形態における目的変数は、例えば次の式(11)~(14)に示したものとなる。ただし、以下に示す目的変数は一例であり、目的変数はそれに限定されない。
【0038】
【0039】
式(11)は、第1目的変数に対応する。式(11)のOLn(CWc,s)は、計算対象となる貨物Cに必要な固定部材の数を示す項であり、固定部材の長さと、貨物Cの転倒モーメントとから算出される。固定部材の長さは、貨物の形状と、固縛位置とにより算出され、例えば貨物情報に基づき算出される。貨物の転倒モーメントは、貨物の重量と、貨物の重心高さと、貨物にかかる外力とに基づき算出され、例えば貨物情報及びスロットSの位置情報に基づき算出される。また、Wlは、重み付け係数である。
【0040】
【0041】
式(12)及び式(13)は、第3目的変数に対応する。式(12)の目的関数Oyは、上述の第3制約条件に含まれる目的関数であり、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの左右中心(理想重心G0の位置)から左右にずれる距離である。式(13)の目的関数Oyは、上述の第3制約条件に含まれる目的関数であり、積み付け後の船舶SHの重心が、船舶SHの上下中心(理想重心G0の位置)から上下にずれる距離である。また、Wy、Wzは、重み付け係数である。
【0042】
【0043】
式(14)は、第2目的変数に対応する。式(14)の目的関数Ouは、上述の第2制約条件に含まれる目的関数であり、特殊貨物CSのうちで、その特殊貨物CSに対応する種類の特殊スロットSSに配置されていない特殊貨物CSの数を指す。本実施形態では、目的関数Ouは、式(10)に示された値であり、急ぎ指定スロットSS2以外のスロットSに配置される急ぎ指定貨物CS2の数である。なお、第2制約条件において、式(10)以外の制約条件が必須でない場合には、その必須でない制約条件に示す値を目的関数としてよい。すなわち例えば、式(7)が必須でない制約条件である場合、電源貨物スロットSS1以外のスロットSに配置される電源貨物CS1の数が目的関数であってよい。なお、Wuは、重み付け係数である。
【0044】
ここで、重み付け係数(本例ではWl、Wy、Wz、Wu)は、目的変数が最適化計算の結果に及ぼす影響度合いを示す値であり、言い換えれば、最適化計算を実施する際に、どの目的変数を優先して最適化するかを表す指標である。すなわち、重み付け係数が高い程、その目的変数が最適化計算に及ぼす影響が高くなる。重み付け係数は、任意に設定されてよいが、目的変数毎に設定されることが好ましい。例えば、重み付け係数は、使用者により設定されてよい。この場合、積み付け計画作成装置1は、使用者によって入力部10を介して入力された値を、重み付け係数として取得してよい。また、重み付け係数は、積み付け計画作成装置1により自動で設定されてよい。この場合例えば、制約条件取得部412は、貨物情報及びスロット情報に基づき、目的変数毎に重み付け係数を設定してよい。例えば、貨物情報及びスロット情報において、貨物Cの総重量が所定値を超える場合には、重心のずれ抑制が重要として、第3目的変数の重み付け係数を高く設定してよい。なお、重みづけを実施するか否かは、積み付け計画作成装置1の使用者が任意で決めることができ、実施されなくてもよい(すなわち全ての重み付け係数が1であってもよい)。
【0045】
(最適化計算)
最適化計算実行部413は、制約条件取得部412が取得した制約条件を満たすように、固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの貨物Cについて、配置するスロットSを設定する。言い換えれば、最適化計算実行部413は、制約条件を満たしつつ固定部材が最適となるような変数VCSを、それぞれの貨物C及びスロットSのペアについて設定する。
【0046】
より詳しくは、本実施形態においては、最適化計算実行部413は、上述の第1制約条件、第2制約条件、および第3制約条件を満たしつつ、第1目的変数、第2目的変数、および第3目的変数を目的変数として、最適化計算を実行する。最適化計算実行部413は、上述の第1制約条件、第2制約条件、および第3制約条件を満たしつつ、固定部材の数が出来るだけ少なくなり、貨物を搭載した船舶SHの重心が船舶の中央位置に出来るだけ近づき(全ての貨物Cを搭載した後の船舶SHの重心位置と、理想重心G0の位置とのずれ量が出来るだけ小さくなり)、かつ、第2制約条件を満たさない特殊貨物CSの数が出来るだけ少なくなるように、最適化計算を行うことが好ましい。
【0047】
具体的には、本実施形態では、最適化計算実行部413は、制約条件となる式(1)から式(10)を満足しながら、式(11)から式(14)の総和が最小となる、それぞれの貨物C及びスロットSのペアについての変数VCSを、最適化計算の結果として算出する。
【0048】
出力制御部414は、最適化計算実行部413が算出した最適化計算の結果を、出力する。最適化計算の結果とは、どのスロットSにどの貨物Cを配置するかを示す情報であり、さらに、用いる固定部材の本数の情報も含んでよい。また、最適化計算の結果の出力方法も任意であってよく、例えば外部の装置に最適化計算の結果を送信してもよいし、出力部20に最適化計算の結果を表示してよい。
【0049】
例えば、出力制御部414は、最適化計算の結果(Vcs)を基に、船舶に固縛する固定部材の数が適正に設定された貨物Cを、どのスロットSに配置するかを設定した積み付け計画作成結果となる出力ファイルを作成する。出力ファイルは、船舶SHのスロット配置図に対して、どの積み荷がどのスロットに設定されたかを図示したファイルでもよいし、あるいは、全スロットSに船舶SHにおける位置情報を示すスロット番号を採番し、運搬対象の貨物と、配置先のスロット番号が紐づいた貨物リストのファイルでもよい。作成された出力ファイルは、出力部20を介して、積み付け計画作成装置1の使用者に出力される。
【0050】
(処理フロー)
次に、本実施形態の処理フローを説明する。
図5は、本実施形態に係る積み付け計画作成のフローチャートである。積み付け計画を作成する場合、貨物情報取得部411は、積み付け対象となる貨物Cの貨物情報と、船舶SHにおけるスロット情報とを取得する(ステップS1)。制約条件取得部412は、制約条件および目的変数を取得する(ステップS2)。目的変数を重みづけする場合、制約条件取得部412は、メモリ30より重みづけに関する情報を取得する。取得した重みづけに関する情報が手入力された重み係数の場合、制約条件取得部412は、設定した目的変数の重み係数に取得した重み係数を代入し、その結果を重みづけした目的変数式として設定する。重みづけに関する情報が手入力された重み係数ではない場合は、取得した重みづけに関する情報(どの目的変数の重みづけ係数を大きくするか)を基に、制約条件取得部412が自動入力した重み係数を目的変数の重み係数に代入してもよい。最適化計算実行部413は、制約条件および重みづけした目的関数式に基づき、最適化計算を実行する(ステップS3)。出力制御部414は、最適化計算によって得られた解(V
cs)を基に、船舶に固縛する固定部材の数が適正に設定された貨物Cを、どのスロットSに配置するかを設定した積み付け計画作成結果の出力ファイルを作成する(ステップS4)。
【0051】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係る積み付け計画作成装置1は、貨物情報取得部411と、制約条件取得部412と、最適化計算実行部413とを含む。貨物情報取得部411は、積みつけ対象となる複数の貨物Cに関する情報と、船舶SHにおけるスロットSに関する情報とを取得する。制約条件取得部412は、スロットSに貨物Cを配置する際の制約条件を取得する。最適化計算実行部413は、制約条件を満たすように、船舶SHにおいて貨物Cを固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの貨物Cについて、配置するスロットSを設定する。本開示によると、固定部材の数を最適に設定した、船舶における貨物の積み付け計画を作成することができる。
【0052】
本開示の第2態様に係る積み付け計画作成装置1は、第1態様に係る積み付け計画作成装置1であって、制約条件に、1つのスロットSには2つ以上の貨物Cを配置しないことと、貨物Cのうちで予め決められた特殊貨物CSを、スロットSのうちで予め決められた特殊スロットSSに配置することとを含む。本開示によると、スロットSに配置できる貨物の個数と、特殊スロットSSに配置できる特殊貨物CSに関する制約を考慮し、固定部材の数を最適に設定した、船舶における貨物の積み付け計画を作成することができる。
【0053】
本開示の第3態様に係る積み付け計画作成装置1は、第2態様に係る積み付け計画作成装置1であって、最適化計算実行部413は、貨物Cを固定する固定部材の数と、貨物Cを搭載した船舶SHの重心と、制約条件を満たさない特殊貨物LCの数とを目的関数として、最適化計算を実行する。本開示によると、貨物Cを固定する固定部材の数と、貨物Cを搭載した船舶SHの重心と、制約条件を満たさない特殊貨物LCの数とを考慮した最適化計算を実行することができる。
【0054】
本開示の第4態様に係る積み付け計画作成装置1は、第3態様に係る積み付け計画作成装置1であって、最適化計算実行部413は、船舶SHにおいて貨物Cを固定する固定部材の数が出来るだけ少なくなり、貨物Cを搭載した船舶SHの重心が、船舶SHの中央位置に出来るだけ近づき、かつ、制約条件を満たさない貨物Cの数が出来るだけ少なくなるように、最適化計算を実行する。本開示によると、貨物Cを固定する固定部材の数が出来を出来るだけ小さく、貨物Cを搭載した船舶SHの重心の、船舶SHの中央位置からのズレが出来るだけ小さくなり、かつ、制約条件を満たさない貨物Cの数が出来るだけ少なくなるように最適化計算を実行することができる。
【0055】
本開示の第5態様に係る積み付け計画作成装置1は、第3態様又は第4態様に係る積み付け計画作成装置1であって、最適化計算実行部413は、目的関数としての貨物Cを固定する固定部材の数と、貨物Cを搭載した船舶SHの重心と、制約条件を満たさない特殊貨物CSの数とのそれぞれに対して重み付けをしつつ、前記最適化計算を実行する。本開示によると、任意の目的関数に重みづけして最適化計算を実行できるため、積み付け計画作成装置1の使用者の、要求により適した最適化計算を実行することができる。
【0056】
本開示の第6態様に係る積み付け計画作成方法は、積み付けの対象となる複数の貨物Cの情報と、船舶において貨物Cを配置する複数のスロットSの情報とを取得するステップと、スロットSに貨物Cを配置する際の制約条件を取得するステップと、制約条件を満たすように、船舶において貨物Cを固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの貨物Cについて、配置するスロットSを設定するステップとを含む。本開示によると、固定部材の数を最適に設定した、船舶における貨物の積み付け計画を作成することができる。
【0057】
本開示の第7態様に係るプログラムは、積み付けの対象となる複数の貨物Cの情報と、船舶において貨物Cを配置する複数のスロットSの情報とを取得するステップと、スロットSに貨物Cを配置する際の制約条件を取得するステップと、制約条件を満たすように、船舶において貨物Cを固定する固定部材の数が最適となる最適化計算を行って、最適化計算の結果が最適となる際の、それぞれの貨物Cについて、配置するスロットSを設定するステップとをコンピュータに実行させる。本開示によると、固定部材の数を最適に設定した、船舶における貨物の積み付け計画を作成することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 積み付け計画作成装置
40 制御部
411 貨物情報取得部
412 制約条件取得部
413 最適化計算実行部
414 出力制御部
SH 船舶
UA 上層貨物室
LA 下層貨物室
PW 電源
G0 理想重心
CL 一般貨物
CS 特殊貨物
CS1 電源貨物
CS2 急ぎ指定貨物
CS3 背高貨物
CS4 動物貨物
LS 一般スロット
SS 特殊スロット
SS1 電源貨物スロット
SS2 急ぎ指定スロット
SS3 背高貨物スロット
SS4 動物貨物スロット