(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127562
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20240912BHJP
H02K 29/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036795
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直幸
(72)【発明者】
【氏名】福地 剛志
(72)【発明者】
【氏名】光山 聖
(72)【発明者】
【氏名】糸井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 啓克
【テーマコード(参考)】
5H019
5H611
【Fターム(参考)】
5H019AA10
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB15
5H019BB22
5H019CC03
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB08
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】組み立て性を低下させることなく、基板のハウジングに対する位置精度を向上させることが可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】センサ基板50は、互いに交差する方向に延びる第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを有し、ブラケット40は、第1長辺部52aに当接する2つの第1,第2位置決め突起45a,45bと、第1短辺部53aに当接する1つの第3位置決め突起45cと、を備える。これにより、組み立て性を低下させることなく、センサ基板50のブラケット40に対する位置精度を向上させることができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
前記ハウジングに収容され、多角形の平板状に形成された基板と、
を備えたモータ装置であって、
前記基板は、
互いに交差する方向に延びる第1辺部および第2辺部を有し、
前記ハウジングは、
前記第1辺部に当接する2つの第1当接突起と、
前記第2辺部に当接する1つの第2当接突起と、
を備える、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記基板は、
互いに対向配置された一対の長辺部と、
互いに対向配置された一対の短辺部と、
を有し、
前記一対の長辺部のうちの一方の長辺部が前記第1辺部であり、
前記一対の短辺部のうちの一方の短辺部が前記第2辺部である、
モータ装置。
【請求項3】
前記第1辺部の長手方向両側に、前記第1当接突起がそれぞれ配置される、
請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記基板の厚み方向と交差する方向において、前記第1当接突起および前記第2当接突起の断面形状が円形である、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記基板は、前記ロータの回転状態を検出する回転センサを備える、
モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータと、ステータに対して回転するロータと、基板とを備えたモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ステータコアと、ステータコアに対して回転するロータと、インバータ基板とを備えたモータユニットが記載されている。インバータ基板には位置決め孔部が設けられ、インバータ基板を収容するハウジングにはピン部が設けられている。そして、インバータ基板は、位置決め孔部にピン部を挿入することでハウジングの規定位置に位置決めされ、かつネジ部材によりハウジングに対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたモータユニットでは、インバータ基板のハウジングに対する位置精度の向上と、モータユニットの組み立て性の向上とを両立させることが難しかった。
【0005】
つまり、インバータ基板のハウジングに対する位置精度を向上させるには、位置決め孔部に対するピン部の遊びを少なくする必要があるが、この場合には、位置決め孔部にピン部を挿入し難くなり、モータユニットの組み立て性が低下するという問題を生じる。
【0006】
これに対し、モータユニットの組み立て性を向上させるには、位置決め孔部に対するピン部の遊びを多くする必要があるが、この場合には、インバータ基板のハウジングに対する位置精度が低下するという問題を生じる。
【0007】
本発明の目的は、組み立て性を低下させることなく、基板のハウジングに対する位置精度を向上させることが可能なモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様のモータ装置では、ハウジングと、前記ハウジングに収容されるステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ハウジングに収容され、多角形の平板状に形成された基板と、を備えたモータ装置であって、前記基板は、互いに交差する方向に延びる第1辺部および第2辺部を有し、前記ハウジングは、前記第1辺部に当接する2つの第1当接突起と、前記第2辺部に当接する1つの第2当接突起と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組み立て性を低下させることなく、基板のハウジングに対する位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】モータ装置をブラケット側から見た斜視図である。
【
図2】モータ装置をケース側から見た斜視図である。
【
図6】ブラケットをケース側から見た平面図である。
【
図7】ブラケットに装着されるセンサ基板の斜視図である。
【
図8】ブラケットの組み立て手順を説明する斜視図である。
【
図9】センサ基板のブラケットへの位置決め手順を説明する平面図である。
【
図10】センサ基板のブラケットへの固定手順を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1はモータ装置をブラケット側から見た斜視図を、
図2はモータ装置をケース側から見た斜視図を、
図3はモータ装置の内部構造を示す断面図を、
図4はケースの内側を覗く斜視図を、
図5はブラケットの内側を覗く斜視図を、
図6はブラケットをケース側から見た平面図を、
図7はブラケットに装着されるセンサ基板の斜視図をそれぞれ示している。
【0013】
<モータ装置>
図1ないし
図3に示されるモータ装置10は、例えば、自動車等の車両に搭載される電動ブレーキ装置の駆動源に用いられる。モータ装置10は、ブラシレスモータであり、金属製のケース20を備えている。ケース20は、金属板を深絞り加工等することで有底筒状に形成されている。ケース20は円筒部21を備え、円筒部21の軸方向一側(
図3の下側)には、底壁部22が設けられている。また、円筒部21の軸方向他側(
図3の上側)には、開口部23が設けられている。
【0014】
図4に示されるように、円筒部21の開口部23側には、径方向外側に突出したフランジ部24が設けられ、当該フランジ部24は、樹脂製のブラケット40の軸方向一側(
図3の下側)に、合計3つの第1雄ねじ部材S1により取り付けられている。なお、フランジ部24には、第1雄ねじ部材S1が挿通される第1挿通穴H1と、モータ装置10を駆動対象物(電動ブレーキ装置等)に固定するための固定ボルト(図示せず)が挿通される第2挿通穴H2が設けられている。
【0015】
このように、金属製のケース20の開口部23は、樹脂製のブラケット40によって閉塞されている。なお、第1雄ねじ部材S1は、先端側がプラス(+)のスクリュードライバー(図示せず)により締め付けられる。
【0016】
ここで、ケース20およびブラケット40は、それぞれ本発明におけるハウジングに相当する。
【0017】
<ステータ>
図3に示されるように、ケース20の内部には、ステータ(固定子)25が収容されている。具体的には、ステータ25は、円筒部21の径方向内側に圧入等により固定されている。ステータ25は、略筒状に形成されたステータコア26を備え、当該ステータコア26は、複数の薄い鋼板を積層して形成されている。ステータコア26は、略筒状に形成されたコア本体26aと、当該コア本体26aの径方向内側に突出された複数のティース26bと、を備えている。
【0018】
複数のティース26bには、樹脂製のインシュレータ27がそれぞれ装着され、当該インシュレータ27の外側には、U相,V相,W相からなるコイル28が、所定の巻き方および巻き数で巻装されている。すなわち、複数のティース26bには、絶縁体として機能するインシュレータ27を介して、三相のコイル28がそれぞれ巻装されている。そして、三相のコイル28は、ステータ25の周方向に、U相,V相,W相…となるように、交互に並んで配置されている。
【0019】
図3および
図4に示されるように、ステータ25の軸方向他側(
図3の上側)には、環状のバスバーユニット29が装着されている。バスバーユニット29は、U相,V相,W相に対応した複数の導電部材30を備え、これらの導電部材30は、環状の保持部材29aにより保持されている。なお、保持部材29aはプラスチック等の絶縁体からなり、それぞれの導電部材30が短絡することを防止している。
【0020】
そして、それぞれの導電部材30の一端部には、三相のコイル28の端部が電気的に接続されている。一方、それぞれの導電部材30の他端部には、ブラケット40に設けられた電源ターミナルPT(
図5および
図6参照)の一端部が電気的に接続されている。
【0021】
ここで、電源ターミナルPTは、U相,V相,W相に対応して3つ設けられ、これらの電源ターミナルPTの他端部は、車両側のコネクタ部材(図示せず)が接続されるコネクタ接続部CNの内側に露出されている(
図5および
図6参照)。
【0022】
<ロータ>
図3に示されるように、モータ装置10は、ステータ25に対して回転するロータ(回転子)31を備えている。ロータ31は、回転軸32およびロータ本体33を有し、回転軸32は、丸綱棒を切削加工等することで段付きの棒状に形成されている。また、ロータ本体33は、複数の薄い鋼板を積層してなるロータコア34と、ロータコア34の径方向外側に装着される筒状のマグネット35と、を備えている。
【0023】
また、マグネット35の径方向外側は、ステンレス板等からなる筒状のマグネットカバー36により覆われている。マグネットカバー36は、当該マグネットカバー36の軸方向他側(
図3の上側)を径方向内側にかしめることで、マグネット35の径方向外側に取り付けられている。なお、かしめ力がマグネット35に付加されないようにすべく、マグネットカバー36の軸方向他側には、マグネット保護部材37が設けられている。これにより、ロータ本体33とステータ25との間のエアギャップAGが、精度良く確保される。
【0024】
また、回転軸32の軸方向一側(
図3の下側)が、ロータコア34の回転中心に圧入等により固定されている。これにより、回転軸32は、ロータコア34の回転に伴い回転するようになっている。
【0025】
回転軸32の軸方向における略中央部には、環状のセンサマグネットSMが設けられている。センサマグネットSMは、ホルダ部材38を介して回転軸32に固定されている。センサマグネットSMは、回転軸32の回転状態を検出するために用いられ、回転軸32の回転に伴い回転するようになっている。
【0026】
具体的には、センサマグネットSMには、その軸方向にN極およびS極が対向するように設けられ、センサマグネットSMの磁束の向きは、センサマグネットSMの軸方向となっている。これにより、センサマグネットSMの軸方向に配置された合計3つのホール素子51(
図7参照)に対し、センサマグネットSMの磁束が通過する。なお、センサマグネットSMの周方向において、磁束の向きが軸方向一側および軸方向他側に交互に切り替わり、この磁束の向きの変化をそれぞれのホール素子51が検出する。これにより、車載コントローラ(図示せず)は、ロータ31(回転軸32)の回転状態(回転方向や回転速度等)を検出する。
【0027】
ここで、回転軸32は、センサ基板50に設けられた貫通孔52を貫通し、ブラケット40を横切るようにして配置されている。また、回転軸32の軸方向一側(
図3の下側)は、ケース20の底壁部22に装着された第1軸受BR1により回転自在に支持されている。これに対し、回転軸32の軸方向他側(
図3の上側)は、ブラケット40に装着された第2軸受BR2により回転自在に支持されている。なお、第1,第2軸受BR1,BR2は、何れもボールベアリング(詳細図示せず)となっている。
【0028】
さらに、回転軸32の軸方向他端部には、ピニオンギヤ部32aが一体に設けられている。ピニオンギヤ部32aは、モータ装置10の出力部を形成している。具体的には、ピニオンギヤ部32aは、例えば、電動ブレーキ装置のピストンを進退させる送りねじ軸(図示せず)に対し、動力伝達可能に接続されている。
【0029】
ここで、モータ装置10は、上述のようにロータコア34の表面にマグネット35を装着した表面磁石型(Surface Permanent Magnet)に限らず、ロータコアの内部にマグネットを埋め込んだ埋込磁石型(Interior Permanent Magnet)であっても構わない。
【0030】
<ブラケット>
図3,
図5および
図6に示されるように、ブラケット40は、モータ装置10を駆動対象物に固定する機能を有している。ブラケット40は、溶融されたプラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで、略円板状に形成されている。つまり、ブラケット40は、射出成形品となっている。
【0031】
<挿通筒部>
ブラケット40は、略円板状に形成された仕切壁部41を備えている。仕切壁部41は、ケース20側(
図3の下側)と駆動対象物側(
図3の上側)とを仕切っており、仕切壁部41の中央部には、回転軸32の軸方向他側(
図3の上側)が挿通される挿通筒部42が一体に設けられている。
【0032】
また、挿通筒部42の径方向内側には、鋼板をプレス加工等することで、略カップ状に形成されたベアリングホルダ43が設けられている。具体的には、ベアリングホルダ43の径方向外側が、挿通筒部42の径方向内側に固定されている。
【0033】
そして、ベアリングホルダ43には、回転軸32が挿通される挿通穴43aが設けられ、ベアリングホルダ43は、挿通筒部42と同軸となるように第2軸受BR2を保持している。なお、第2軸受BR2の軸方向一側(
図3の下側)には、当該第2軸受BR2のベアリングホルダ43からの脱落を防止する環状固定板44が設けられている。
【0034】
さらに、挿通筒部42の軸方向一側(
図3の下側)には、センサ基板50が設けられている。具体的には、センサ基板50は、合計3つの第2雄ねじ部材S2(
図5参照)により、合計3つの基板固定部42a(
図6参照)に固定されている。なお、基板固定部42aは雌ねじ部となっており、挿通筒部42の周囲で、かつ仕切壁部41のケース20側に一体に設けられている。
【0035】
<位置決め突起>
また、
図5および
図6に示されるように、仕切壁部41のケース20側(
図6の手前側)には、センサ基板50をブラケット40の正規の位置に位置決めする第1位置決め突起45a,第2位置決め突起45bおよび第3位置決め突起45cが一体に設けられている。合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cは、何れも同じ方向に同じ高さで突出されている。
【0036】
具体的には、これらの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cは、回転軸32の軸方向においてケース20側に突出され、その突出高さは、センサ基板50をブラケット40に固定した状態(
図5参照)において、センサ基板50よりもケース20側に突出する突出高さとなっている。
【0037】
そして、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cのうちの、2つの第1,第2位置決め突起45a,45bは、センサ基板50の第1長辺部52aに当接している。具体的には、第1,第2位置決め突起45a,45bは、センサ基板50の厚み方向と交差する方向、つまり回転軸32の軸方向と交差する方向において、第1長辺部52aにそれぞれ当接している。なお、第1,第2位置決め突起45a,45bは、本発明における第1当接突起に相当する。
【0038】
ここで、第1,第2位置決め突起45a,45bは、第1長辺部52aに対して、その長手方向中央部から長手方向両側に寄った位置に設けられている。つまり、第1,第2位置決め突起45a,45bは、第1長辺部52aの長手方向両側に当接するように、第1長辺部52aの長手方向両側にそれぞれ配置されている。
【0039】
また、第1,第2位置決め突起45a,45bは、センサ基板50の厚み方向と交差する方向(回転軸32の軸方向と交差する方向)において、断面形状が円形となっている。これにより、第1,第2位置決め突起45a,45bは、第1長辺部52aに対してそれぞれ「点」で当接される。したがって、センサ基板50の第1長辺部52aを、第1,第2位置決め突起45a,45bの双方に突き当てるだけで、センサ基板50は第1,第2位置決め突起45a,45bに対して位置決めされる。
【0040】
なお、
図6に示されるように、第1,第2位置決め突起45a,45bの基端側(仕切壁部41側)には、それぞれ合計4つの補強リブRBが設けられている。これにより、第1,第2位置決め突起45a,45bの強度が高められて、センサ基板50を突き当てた際に、第1,第2位置決め突起45a,45bが折損すること等が抑制される。
【0041】
また、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cのうちの、1つの第3位置決め突起45cは、センサ基板50の第1短辺部53aに当接している。具体的には、第3位置決め突起45cは、センサ基板50の厚み方向と交差する方向、つまり回転軸32の軸方向と交差する方向において、第1短辺部53aに当接している。なお、第3位置決め突起45cは、本発明における第2当接突起に相当する。
【0042】
ここで、第3位置決め突起45cは、第1短辺部53aに対して、その長手方向中央部よりも第1長辺部52a寄りに配置されている。さらに、第3位置決め突起45cにおいても、第1,第2位置決め突起45a,45bと同様に、センサ基板50の厚み方向と交差する方向(回転軸32の軸方向と交差する方向)の断面形状が、円形となっている。
【0043】
これにより、第3位置決め突起45cは、第1短辺部53aに対して「点」で当接される。したがって、センサ基板50の第1短辺部53aを、第3位置決め突起45cに突き当てるだけで、センサ基板50は第3位置決め突起45cに対して位置決めされる。
【0044】
なお、
図6に示されるように、第3位置決め突起45cの基端側(仕切壁部41側)にも、合計4つの補強リブRBが設けられている。これにより、第3位置決め突起45cの強度が高められて、センサ基板50を突き当てた際に、第3位置決め突起45cが折損すること等が抑制される。
【0045】
このように、互いに所定角度(90度)で傾斜された第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45c(3点)に突き当てることにより、回転軸32の軸方向と交差する方向および回転軸32の回転方向に対して、センサ基板50を精度良く位置決めすることが可能となっている。
【0046】
これにより、センサ基板50の貫通孔52と回転軸32(
図3参照)の回転中心とを、互いに精度良く一致させることができ、ひいてはセンサ基板50に実装されたホール素子51とセンサマグネットSM(
図3参照)とが、回転軸32の軸方向に対して、互いに精度良く対向配置される。よって、ホール素子51によるセンシング精度を高めることができ、かつ製品毎にセンシング精度がばらつくことを効果的に抑えることができる。
【0047】
ここで、第1,第2位置決め突起45a,45bを第1長辺部52aにそれぞれ当接させ、かつ第3位置決め突起45cを第1短辺部53aに当接させた状態、つまりセンサ基板50を、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cの全てに突き当てた状態で、センサ基板50はブラケット40に対して、第2雄ねじ部材S2によりねじ止めされる。なお、センサ基板50の第2雄ねじ部材S2によるブラケット40への固定手順については、後で詳述する。
【0048】
<センサ基板>
図3に示されるように、センサ基板50は、ブラケット40のケース20側(
図3の下側)において、第2軸受BR2とセンサマグネットSMとの間に配置されている。つまり、センサ基板50は、ブラケット40およびケース20の内部に収容されている。なお、センサ基板50は、本発明における基板に相当する。
【0049】
図7に示されるように、センサ基板50は、略長方形(多角形)の平板状に形成され、当該センサ基板50のケース20側の実装面SFには、合計3つのホール素子51が実装されている。具体的には、これらのホール素子51は、センサ基板50の略中央に配置された貫通孔52の周囲に配置され、かつ回転軸32の軸方向において、センサマグネットSMと対向している。
【0050】
なお、合計3つのホール素子51は、ロータ31(回転軸32)の回転状態(回転方向や回転速度等)を検出するものであり、本発明における回転センサに相当する。
【0051】
センサ基板50は、互いに対向配置された一対の第1,第2長辺部52a,52bと、互いに対向配置された一対の第1,第2短辺部53a,53bと、を備えている。なお、第1,第2長辺部52a,52bは、それぞれ本発明における長辺部に相当し、そのうちの一方の第1長辺部52aは、本発明における第1辺部に相当する。また、第1,第2短辺部53a,53bは、それぞれ本発明における短辺部に相当し、そのうちの一方の第1短辺部53aは、本発明における第2辺部に相当する。
【0052】
そして、第1長辺部52aおよび第1短辺部53aは、互いに交差する方向に延びており、第1長辺部52aおよび第1短辺部53aの相対角度は90度(直角)となっている。
【0053】
また、第1長辺部52aと第1短辺部53aとの間には第1面取部C1が設けられ、第1短辺部53aと第2長辺部52bとの間には第2面取部C2が設けられ、第2長辺部52bと第2短辺部53bとの間には第3面取部C3が設けられ、第2短辺部53bと第1長辺部52aとの間には第4面取部C4が設けられている。
【0054】
また、センサ基板50には、第2雄ねじ部材S2(
図5参照)が挿通される合計3つのねじ挿通穴54と、合計5つのセンサターミナルST(
図6参照)の一端部がそれぞれ電気的に接続される合計5つのスルーホールTHと、が設けられている。なお、合計5つのセンサターミナルSTの他端部は、車両側のコネクタ部材(図示せず)が接続されるコネクタ接続部CNの内側に露出されている(
図5および
図6参照)。
【0055】
具体的には、合計3つのねじ挿通穴54のうちの1つは、第1短辺部53aの近傍で、かつ第1短辺部53aの延在方向における中央部に配置されている。また、合計3つのねじ挿通穴54のうちの2つは、それぞれ第3面取部C3の近傍および第4面取部C4の近傍に配置されている。さらに、合計5つのスルーホールTHは、第2短辺部53bの近傍で、かつ第2短辺部53bの延在方向に等間隔で並んでいる。
【0056】
<第1端子孔および第2端子孔>
ここで、
図6に示されるように、仕切壁部41には、合計3つの電源ターミナルPTの一端部が配置される第1端子孔41aと、合計5つのセンサターミナルSTの一端部が配置される第2端子孔41bと、が設けられている。これらの第1端子孔41aおよび第2端子孔41bは、コネクタ接続部CN寄りの部分に設けられ、互いに近接配置されている。これにより、それぞれのターミナルPT,STをそれぞれ短くして、ブラケット40が複雑化することを抑制している。なお、それぞれのターミナルPT,STは、インサート成形によりブラケット40に設けられる。
【0057】
また、
図1に示されるように、第1端子孔41aおよび第2端子孔41bには、それぞれ第1キャップCP1および第2キャップCP2が装着されている。具体的には、第1,第2キャップCP1,CP2は、いずれもプラスチック等の樹脂材料からなり、スナップフィット等により第1,第2端子孔41a,41bに固定されている。これらの第1,第2キャップCP1,CP2においても、仕切壁部41と同様に、ケース20側と駆動対象物側とを仕切っている。
【0058】
<筒状壁部>
図1,
図3,
図5および
図6に示されるように、挿通筒部42の径方向外側には、当該挿通筒部42よりも大径となった筒状壁部46が設けられている。具体的には、筒状壁部46は、仕切壁部41の径方向外側に一体に設けられている。
【0059】
筒状壁部46は、挿通筒部42に対して同軸上に配置され、回転軸32の軸方向に延びている。そして、筒状壁部46の軸方向一側(
図3の下側)には、ケース20のフランジ部24と対向するケース側面46aが設けられている。これに対し、筒状壁部46の軸方向他側(
図3の上側)には、駆動対象物と対向する駆動対象物側面46bが設けられている。
【0060】
筒状壁部46には、合計3つの駆動対象物固定部47が一体に設けられている。これらの駆動対象物固定部47には、金属製の筒状のカラーCLが設けられている。これにより、樹脂製の駆動対象物固定部47を損傷させることなく、モータ装置10を駆動対象物に確りと固定可能としている。
【0061】
なお、駆動対象物固定部47は、筒状壁部46の周方向に所定間隔で配置され、かつ、
図6に示されるように、ブラケット40を軸方向一側(ケース20側)から見たときに、筒状壁部46の径方向外側に突出している。また、駆動対象物固定部47に保持されるカラーCLには、モータ装置10を駆動対象物に固定するための固定ボルトが挿通される。
【0062】
さらに、筒状壁部46の径方向外側には、コネクタ接続部CNが一体に設けられている。コネクタ接続部CNは、略直方体形状に形成され、筒状壁部46の軸方向一側(
図3の下側)から、車両側のコネクタ部材が接続可能となっている。
【0063】
また、
図5および
図6に示されるように、筒状壁部46には、合計3つのケース固定部48が一体に設けられている。これらのケース固定部48は、ケース20のフランジ部24が固定される部分であり、鋼材製でかつ筒状の雌ねじ部材ITをそれぞれ保持している。具体的には、雌ねじ部材ITは、ブラケット40を射出成形する際に、それぞれのターミナルPT,STと同様に、インサート成形によりブラケット40に設けられる。そして、これらの雌ねじ部材ITには、ケース20をブラケット40に固定するための第1雄ねじ部材S1が、それぞれねじ止めされる。
【0064】
ここで、合計3つのケース固定部48は、筒状壁部46の周方向に所定間隔で配置され、かつケース固定部48は、隣り合う駆動対象物固定部47の間に設けられている。また、それぞれのケース固定部48は、
図6に示されるように、ブラケット40を軸方向一側(ケース20側)から見たときに、筒状壁部46の径方向外側に突出している。
【0065】
さらに、ブラケット40の軸方向一側で、かつブラケット40の径方向における挿通筒部42と筒状壁部46との間には、嵌合筒部49が一体に設けられている。嵌合筒部49は、ケース20の開口部23に嵌合される部分であり、その径方向外側には、ゴム等の弾性材料からなる環状シールSLが装着されている。環状シールSLは、ブラケット40とケース20との間を密封している。
【0066】
<ブラケットの組み立て手順>
次に、以上のように形成されたモータ装置10の組み立て手順、特に、ブラケット40に対するセンサ基板50の組み付け手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0067】
図8はブラケットの組み立て手順を説明する斜視図を、
図9はセンサ基板のブラケットへの位置決め手順を説明する平面図を、
図10はセンサ基板のブラケットへの固定手順を説明する斜視図をそれぞれ示している。
【0068】
まず、予め別の製造工程で製造されたブラケット40およびセンサ基板50を、それぞれ準備する。また、合計3つの第2雄ねじ部材S2を準備する。
【0069】
次いで、
図8の矢印M1に示されるように、センサ基板50をブラケット40に臨ませる。このとき、センサ基板50の実装面SFがケース20側(
図8の上側)を向くようにする。つまり、モータ装置10を組み立てた状態(
図3参照)において、それぞれのホール素子51がセンサマグネットSMと対向するようにする。
【0070】
また、回転軸32(
図3参照)の軸方向において、第2軸受BR2と貫通孔52とを対向させつつ、合計3つの基板固定部42aと合計3つのねじ挿通穴54とを対向させる。その後、基板固定部42aの上にセンサ基板50を載せる。これにより、合計5つのセンサターミナルSTの一端部が、合計5つのスルーホールTHに、それぞれ差し込まれる。
【0071】
これに引き続き、
図9に示されるように、センサ基板50の第1長辺部52aを、第1位置決め突起45aおよび第2位置決め突起45bに突き当て、かつセンサ基板50の第1短辺部53aを、第3位置決め突起45cに突き当てる。このとき、第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを、回転軸32の軸方向と交差する方向において、それぞれ第1,第2位置決め突起45a,45bおよび第3位置決め突起45cに向けて押圧力F(網掛矢印参照)で押し付ける。
【0072】
これにより、センサ基板50は、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45c(3点)にそれぞれ当接される。よって、センサ基板50は、ブラケット40の正規の位置に位置決めされる。
【0073】
このように、本実施の形態では、第1長辺部52aを第1,第2位置決め突起45a,45bに突き当て、かつ第1短辺部53aを第3位置決め突起45cに突き当てるだけで、センサ基板50をブラケット40の正規の位置に位置決めすることができる。
【0074】
したがって、従前のように、基板に位置決めのために穴を開け、当該穴にピンを差し込んで固定する仕様に比して、センサ基板50をブラケット40に対して、容易にかつ精度良く位置決め可能となっている。具体的には、穴とピンに依る位置決め構造においては、基板に穴を開ける作業が追加で必要となる。そして、その穴開けの作業の際に、穴の位置や大きさが製品毎にばらつく虞があった。本実施の形態では、当該「穴開け作業」を省略しており、その分、製品毎のばらつきを少なくすることを可能としている。
【0075】
その後、
図10に示されるように、合計3本の脚部FTを備えた基板押さえ治具TLを用い、位置決めされたセンサ基板50をずれないように押さえ付ける。ここで、基板押さえ治具TLの脚部FTは、センサ基板50の実装面SFに実装された素子(ホール素子51等)やプリント配線(図示せず)を避けた位置を押圧する。
【0076】
次いで、
図10の矢印M2に示されるように、合計3つの第2雄ねじ部材S2を、それぞれ合計3つのねじ挿通穴54に差し込む。そして、基板押さえ治具TLによりセンサ基板50を押圧した状態で、3つの第2雄ねじ部材S2を、締結治具(図示せず)を用いてそれぞれの基板固定部42a(
図8参照)に対し、所定の締め付けトルクで同時に締め付ける。
【0077】
このように、締結治具により合計3つの第2雄ねじ部材S2を同時に締め付けることで、センサ基板50に歪み等が発生することを抑制している。これによっても、センサ基板50のブラケット40に対する位置決めを、精度良く行うことができる。これにより、ブラケット40の組み立て(センサ基板50の取り付け)が、最終的に完了する。
【0078】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、センサ基板50は、互いに交差する方向に延びる第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを有し、ブラケット40は、第1長辺部52aに当接する2つの第1,第2位置決め突起45a,45bと、第1短辺部53aに当接する1つの第3位置決め突起45cと、を備える。
【0079】
これにより、組み立て性を低下させることなく、センサ基板50のブラケット40に対する位置精度を向上させることができる。
【0080】
具体的には、センサ基板50に位置決めのために穴を開ける必要がなくなるので、製品毎に穴の位置や大きさがばらついてしまうことを気にせずに済む。そして、第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを、それぞれ合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45c(3点)に当接させるだけで、回転軸32の軸方向と交差する方向および回転軸32の回転方向に対して、センサ基板50を精度良く位置決めすることができる。
【0081】
また、センサ基板50の貫通孔52と回転軸32の回転中心とを、互いに精度良く一致させることができ、ひいてはセンサ基板50に実装されたホール素子51とセンサマグネットSMとを、回転軸32の軸方向に対して、互いに精度良く対向配置させることができる。よって、ホール素子51によるセンシング精度を高めることができ、かつ製品毎にセンシング精度にばらつきが生じることを効果的に抑えることが可能となる。
【0082】
さらに、本実施の形態によれば、センサ基板50は、互いに対向配置された一対の第1,第2長辺部52a,52bと、互いに対向配置された一対の第1,第2短辺部53a,53bと、を有する略長方形(多角形)の平板状に形成され、第1長辺部52aの長手方向両側に、第1,第2位置決め突起45a,45bをそれぞれ配置している。
【0083】
これにより、第1,第2位置決め突起45a,45bを互いに近付けたものに比して、センサ基板50の貫通孔52を中心とした回転方向への位置ずれを、効果的に抑制することができる。これによっても、センサ基板50のブラケット40に対する位置決め精度を向上させることが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、センサ基板50の厚み方向と交差する方向において、合計3つの第1,第2,第3位置決め突起45a,45b,45cの断面形状が円形となっている。
【0085】
これにより、センサ基板50の第1長辺部52aおよび第1短辺部53aを、3点に突き当てる(当接させる)だけで、センサ基板50をブラケット40に対して容易に位置決めすることが可能となる。また、例えば、モータ装置10の組み立て作業者等は、センサ基板50がブラケット40に対して正規の位置に位置決めされたことを容易に把握することができ、これによっても組み立て性を向上させることができる。
【0086】
さらに、本実施の形態によれば、センサ基板50は、ロータ31(回転軸32)の回転状態を検出する合計3つのホール素子51を備えている。すなわち、センサ基板50の位置決め精度を高めることは重要な課題である。本実施の形態では、このような課題を解決して、製品毎にモータ装置10の性能(特性)がばらつくことを、効果的に抑えることが可能となる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、モータ装置10の性能(特性)が製品毎にばらつくことが抑えられ、ひいては不良品の発生等を抑えることができる。よって、モータ装置10の製造エネルギーの省力化を図ることが可能となる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することができる。
【0088】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述の実施の形態では、センサ基板50が略長方形(四角形)であるものを示したが、本発明はこれに限らず、三角形や五角形等、互いに所定角度で傾斜されかつ交差する方向に延びる一対の辺(第1辺部および第2辺部)を有する多角形の平板状であれば、他の形状の基板にも適用することができる。
【0089】
また、上述の実施の形態では、基板がセンサ基板50であるものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ステータ25に巻装されたコイル28への駆動電流の大きさを制御するコントローラを実装した基板(制御基板)にも適用することができる。
【0090】
さらに、上述の実施の形態では、モータ装置10が、自動車等の車両に搭載される電動ブレーキ装置の駆動源であるものを示したが、本発明はこれに限らず、その他の車載機器の駆動源等(電動パワーステアリングの駆動減等)にも適用することができる。
【0091】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0092】
10:モータ装置,20:ケース(ハウジング),21:円筒部,22:底壁部,23:開口部,24:フランジ部,25:ステータ,26:ステータコア,26a:コア本体,26b:ティース,27:インシュレータ,28:コイル,29:バスバーユニット,29a:保持部材,30:導電部材,31:ロータ,32:回転軸,32a:ピニオンギヤ部,33:ロータ本体,34:ロータコア,35:マグネット,36:マグネットカバー,37:マグネット保護部材,38:ホルダ部材,40:ブラケット(ハウジング),41:仕切壁部,41a:第1端子孔,41b:第2端子孔,42:挿通筒部,42a:基板固定部,43:ベアリングホルダ,43a:挿通穴,44:環状固定板,45a:第1位置決め突起(第1当接突起),45b:第2位置決め突起(第1当接突起),45c:第3位置決め突起(第2当接突起),46:筒状壁部,46a:ケース側面,46b:駆動対象物側面,47:駆動対象物固定部,48:ケース固定部,49:嵌合筒部,50:センサ基板(基板),51:ホール素子(回転センサ),52:貫通孔,52a:第1長辺部(第1辺部,長辺部),52b:第2長辺部(長辺部),53a:第1短辺部(第2辺部,短辺部),53b:第2短辺部(短辺部),54:ねじ挿通穴,AG:エアギャップ,BR1:第1軸受,BR2:第2軸受,C1:第1面取部,C2:第2面取部,C3:第3面取部,C4:第4面取部,CL:カラー,CN:コネクタ接続部,CP1:第1キャップ,CP2:第2キャップ,F:押圧力,FT:脚部,H1:第1挿通穴,H2:第2挿通穴,IT:雌ねじ部材,PT:電源ターミナル,RB:補強リブ,S1:第1雄ねじ部材,S2:第2雄ねじ部材,SF:実装面,SL:環状シール,SM:センサマグネット,ST:センサターミナル,TH:スルーホール,TL:基板押さえ治具