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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127569
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240912BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240912BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 W
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036804
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】田邊 勝隆
(72)【発明者】
【氏名】夏目 和樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 康祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 健二
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730BB82
5H730DD03
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX19
5H730XX26
5H730XX38
5H730XX42
5H770BA11
5H770CA05
5H770HA02W
5H770HA03W
5H770LA04W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止する技術を提供する。
【解決手段】直流電源に接続され、スイッチング素子をスイッチングすることにより該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、前記スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標を取得する評価指標取得部と、を備え、前記直流変換制御部は、前記評価指標が、所定のゲートブロック閾値を超えて、前記スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定された、前記スイッチングを停止させるゲートブロックを検出するための時限であるゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする電力変換装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続され、スイッチング素子をスイッチングすることにより該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、
前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、
前記スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標を取得する評価指標取得部と、
を備え、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、所定のゲートブロック閾値以上となり、前記スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定された、前記スイッチングを停止させるゲートブロックを検出するための時限であるゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記所定のゲートブロック閾値を超えて、前記ゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記評価指標は、前記直流電源から前記直流電力変換部に入力される入力電流、入力電圧又は入力電力のいずれかに基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記評価指標は、前記直流電力変換部から出力される出力電流又は出力電力のいずれかに基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記評価指標は、温度に基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記熱的指標は、前記スイッチング素子において生ずるジュール熱に基づいて設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記熱的指標は、時間に基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記熱的指標は、前記直流電源から前記直流電力変換部に入力される入力電流、入力電力又は入力電圧の少なくともいずれかに応じて変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い所定の抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、前記抑制制御の速度を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記評価指標が、前記抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標に応じて前記評価指標の増加を抑制する抑制制御速度を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の電
力変換装置。
【請求項11】
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記抑制制御閾値を低く変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光パネルの高電流化が進み、太陽光パネルから出力される直流電力を所望の交流電力に変換するパワーコンディショナを含むシステムとして低電圧大電流の電力を扱う構成が増えてきている。
従来のパワーコンディショナでは、太陽光パネルにおける照度の急変に対して、パワーコンディショナのスイッチング素子を構成する半導体デバイスに余裕があったため、破損には至らなかったが、太陽光パネルの高電流化により、半導体デバイスの余裕分がなくなるようにパワーコンディショナが使用される例もある。
【0003】
太陽光パネルを含むシステムにおいて、照度が急変した場合に半導体デバイスを保護するために、太陽光パネルの動作電圧を下げる等の種々の制御が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
従来の過電流に対する保護は、主として、(1)直流電流抑制及び(2)直流過電流保護の2つの制御が実施されていた。(1)直流電流抑制は、太陽光パネルの定常的な動作において高電流領域に動作点が行かないための保護であり、(2)直流過電流保護は、直流電流の仕様(定格)を上限とする短絡電流の保護である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6845108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の(1)と(2)の保護の間には、両者によって保護されない領域が存在する。このような領域で太陽光パネルを動作させると、パワーコンディショナ、とりわけ、太陽光パネルに接続されるDC-DCコンバータ(以下、単に「DDコンバータ」ともいう。)の温度が上昇し半導体デバイスの温度耐量を超えて破損することにより、DDコンバータが故障する可能性があった。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
直流電源に接続され、スイッチング素子をスイッチングすることにより該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、
前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、
前記スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標を取得する評価指標取得部と、
を備え、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、所定のゲートブロック閾値を以上となり、前記スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定された、前記スイッチングを停止させるゲートブロックを検出するための時限であるゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする電力変換装置である。
【0008】
これによれば、直流電源の出力が変動し、直流電源から入力される電流又は電力が流れる直流電力変換部のスイッチング素子が温度の上昇により破損する可能性がある場合に、スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標が、所定のゲートブロック閾値以上となり、スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定されたゲートブロック検出時限に達したときに、直流電力変換部がスイッチング素子のゲートブロックを指示し、直流電力変換部におけるスイッチングが停止される。このように、ゲートブロック検出時限を、スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定することにより、評価指標がゲートブロック閾値を超えてから、ゲートブロックが指示されるまでの時間が、スイッチング素子の熱的状態を反映したものとなる。このため、スイッチング素子及びスイッチング素子を含む電力変換装置の破損を防止することができ、さらに直流電力からの出力を有効に利用することができる。ここで、スイッチング素子の熱的状態とは、スイッチング素子の熱に関する状態である。
【0009】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記所定のゲートブロック閾値を超えて、前記ゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明において、
前記評価指標は、前記直流電源から前記直流電力変換部に入力される入力電流、入力電圧又は入力電力のいずれかに基づくようにしてもよい。
【0011】
このような評価指標は、直流電源から直流電力変換部に入力される入力電流、入力電圧又は入力電力のいずれかであってもよいし、入力電流、入力電圧又は入力電力の少なくともいずれかから演算等によって導出される指標や、入力電流、入力電圧又は入力電力の少なくともいずれかに応じて定まる指標であってもよい。
【0012】
また、本発明において、
前記評価指標は、前記直流電力変換部から出力される出力電流又は出力電力のいずれかに基づくようにしてもよい。
【0013】
このような評価指標は、直流電力変換部から出力される出力電流又は出力電力のいずれであってもよいし、出力電流又は出力電力の少なくともいずれかから演算等によって導出される指標や、出力電流又は出力電力の少なくともいずれかに応じて定まる指標であってもよい。
【0014】
また、本発明において、
前記評価指標は、温度に基づくようにしてもよい。
【0015】
このような評価指標は、温度であってもよいし、温度から演算等によって導出される指標や、温度に応じて定まる指標であってもよい。
【0016】
また、本発明において、
前記熱的指標は、前記スイッチング素子において生ずるジュール熱に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0017】
直流電源から入力された電流がスイッチング素子を流れることにより、ジュール熱が生じ、このジュール熱によってスイッチング素子の熱的状態が変化するので、熱的指標をス
イッチング素子において生ずるジュール熱に基づいて熱的指標を設定することにより、スイッチング素子の熱的状態に応じたゲートブロック検出時限が設定できる。このような熱的指標は、スイッチング素子に生ずるジュール熱であってもよいし、このジュール熱から演算等によって導出される指標や、このジュール熱に応じて定まる指標であってもよい。
【0018】
また、本発明において、
前記熱的指標は、時間に基づくようにしてもよい。
【0019】
このような熱的指標は、スイッチング素子の熱的状態を反映した所定の時間であってもよいし、スイッチング素子の熱的状態を反映した時間から演算等によって導出される指標であってもよいし、スイッチング素子の熱的状態を反映した時間に応じて定まる指標であってもよい。
【0020】
また、本発明において、
前記熱的指標は、前記直流電源から前記直流電力変換部に入力される入力電流、入力電力又は入力電圧の少なくともいずれかに応じて変化するようにしてもよい。
【0021】
直流電力変換部に入力される電流、電力または電圧の少なくともいずれかに応じて、スイッチング素子の熱的状態が変化し得るので、これらを熱的指標として用いることができる。
【0022】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い所定の抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、前記抑制制御の速度を増加させるようにしてもよい。
【0023】
これによれば、ゲートブロックに加え、評価指標が、ゲートブロック閾値に至る前に、評価指標の増加を抑制する抑制制御が行われるので、スイッチング素子及びこれを含む電力変換装置の破損を防止することができる。さらに、ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、この抑制制御の速度を増加させることにより、評価指標がゲートブロック閾値に至る前に、より確実に評価指標の増加を抑制することができるので、さらなるゲートブロックの繰り返しを回避することができる。
【0024】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記評価指標が、前記抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標に応じて前記評価指標の増加を抑制する抑制制御速度を変更するようにしてもよい。
【0025】
これによれば、ゲートブロックに加え、評価指標が、ゲートブロック閾値に至る前に、評価指標の増加を抑制する抑制制御が行われるので、スイッチング素子及びこれを含む電力変換装置の破損を防止することができる。さらに、ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、評価指標に応じて、評価指標の増加を抑制する制御速度を変更することにより、評価指標がゲートブロック閾値に至る前に、より確実に評価指標の増加を抑制することができるので、さらなるゲートブロックの繰り返しを回避することができる。抑制制御の速度は、評価指標に対して設定された閾値に基づいて、段階的に変更するようにし
てもよいし、評価指標の値に応じて、連続的に変更してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0026】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記抑制制御閾値を低く変更するようにしてもよい。
【0027】
これによれば、ゲートブロックに加え、評価指標が、ゲートブロック閾値に至る前に、評価指標の増加を抑制する抑制制御が行われるので、スイッチング素子及びこれを含む電力変換装置の破損を防止することができる。さらに、ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、抑制制御閾値を低く変更することにより、評価指標がゲートブロック閾値に至る、より前の段階から、評価指標の増加を抑制することができるので、さらなるゲートブロックの繰り返しを回避することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1に係るPV発電システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る照度変動時の動作点の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例1に係るデバイス保護制御を説明するグラフである。
図4】本発明の実施例2に係るデバイス保護制御を説明するグラフである。
図5】本発明の実施例3に係るデバイス保護制御を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本適用例に係るパワーコンディショナ100を含む太陽光(PV)発電システム1000の概略構成を示す。パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200と入力線101によって接続され、太陽光パネル200から出力された直流電力の電圧を変換する単方向DDコンバータ102a~102cと、単方向DDコンバータ102a~102cとDCバス103によって接続され、単方向DDコンバータ102a~102cによって変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ104、入力線101を流れる直流電力の直流電圧(DCV)及び直流電流(DCI)をそれぞれ検出するDCV検出部105及びDCI検出部106を含む。また、パワーコンディショナ100は、単方向DDコンバータ102a~102cを制御するDD制御部110を含む
【0031】
DD制御部110は、MPPT制御部111、加え合わせ点112、直流電流抑制制御部113、スイッチ114、加え合わせ点115、DCV制御部116、PWM生成部117、スイッチ118、単方向DDGB判定部119を含む。本適用例においてDD制御部110によって実施される、スイッチング素子の破損を防止するため半導体デバイス保護制御は、後述するDCI抑制制御とゲートブロック保護制御を含む。
【0032】
DD制御部110では、通常は、スイッチ114はMPPT制御部111側114bに接続され、MPPT制御部111から出力されたDCV指令値から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値に基づいてPWM生成部117において生成されたP
WM信号に応じて単方向DDコンバータ102a~102cが制御され、MPPT制御が実施される。
【0033】
DCIがDCI抑制制御閾値を超える場合には、スイッチ114は、直流電流抑制制御部113側114aに切り替えられ、直流電流抑制制御部113から出力されるDCV指令値から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値に基づいてPWM生成部117において生成されたPWM信号に応じて単方向DDコンバータ102a~102cが制御される。すなわち、MPPT制御が停止され、DCI抑制制御が実施される。
【0034】
単方向DDGB判定部119では、入力されたDCIに基づいて、単方向DDコンバータ102a~102cに対してゲートブロックを行うか否かを判定する。
単方向DDGB判定部119の判定結果に応じてスイッチ118が切り替えられる。単方向DDGB判定部119が、ゲートブロックを行わないと判定とした場合には、スイッチ118はPWM生成部117側118bに接続され、PWM生成部117によって生成されたPWM信号が、単方向DDコンバータ102a~102cのそれぞれのドライブ回路に出力される。
単方向DDGB判定部119が、ゲートブロックを行うと判定とした場合には、スイッチ118はゲートブロック側118aに切り替えられ、ゲートブロック(GB)信号が、単方向DDコンバータ102a~102cに出力され、ゲートブロック信号を受けた単方向DDコンバータ102a~102cのドライブ回路は直流電力変換動作を停止する。
【0035】
図3は、本実施例に係るゲートブロック保護制御を説明するグラフである。図3の上段は、横軸に時間をとり、縦軸には、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子として用いる半導体デバイス(IGBT)の温度ディレーティングをとり、DD制御部110において行われるDCI抑制制御の例を示している。
【0036】
図3の上段において破線で示す温度ディレーティングがDCI抑制制御閾値0.8を超えると、直流電流抑制制御部113が、DCI抑制ゲイン0.001V/mSの抑制ゲインによるDCI抑制制御を実施する。
【0037】
図3の上段において一点二鎖線で示す温度ディレーティング0.82は、ゲートブロック保護制御を実施するための閾値(GB閾値)である。ゲートブロック保護制御には、ゲートブロックを実施するための検出時限を設定する。温度ディレーティングがGB閾値0.82を超えると、単方向DDGB判定部119は、DCIの値をIとしたとき、ΔItの積算を開始する。図3の下段は、横軸に図3の上段と同じ時間をとり、縦軸にΔItの積算値をとったグラフである。図3の下段においてΔItにおけるtは、温度ディレーティングが0.82を超えてからの経過時間である。図3の下段に示すように、温度ディレーティングが0.82を超えた時刻t1から、ΔItを積算し、ΔItの積算値が2.083となった時刻t2において単方向DDGB判定部119は、図1に示すスイッチ118をゲートブロック側118aに切り替える。すなわち、単方向DDコンバータ102a等のドライブ回路に対して、DD制御部110がゲートブロック信号を出力し、ゲートブロック信号を受けた単方向DDコンバータ102a等がスイッチング動作を停止する。
【0038】
このように、ゲートブロックの検出時限をΔItの積算値によって規定することにより、固定された時間tによって規定する場合に比べて、DCIが小さく、温度ディレーティングの点からは半導体デバイスの破損までには余裕があるにもかかわらず、ゲートブロックしてしまうことがないので、太陽光パネル200の発電電力を有効に利用することができる。
【0039】
ゲートブロックを解除し、単方向DDGB判定部119が、スイッチ118をPWM生成部117側118bに切り替えた後には、例えば、MPPT制御により、最大電力点追従制御を行うようにすることができる。
【0040】
このような半導体デバイス保護制御が行われることにより、図3に示すように、照度が急激に上昇しても、DCI抑制制御と、ゲートブロック保護制御が行われるので、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の破損を防止することができる。
【0041】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係るパワーコンディショナ100について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている装置及びシステムの構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0042】
図1に実施例1に係るパワーコンディショナ100を含むPV発電システム1000の概略構成を示す。図1では、電力が流れる電力線を太線で示し、情報が送受される信号線を細線で示している。電力線は、電力流通経路を模式的に示すものであり、実際の物理的な構成としては種々の構成が可能であり、交流電力が流通する電力線についても簡略化して1本の線で示している。なお、後述するDDコンバータ制御部の制御ブロック図において、細線は情報の流れを示しており必ずしも実際の信号線を示すものではない。
【0043】
PV発電システム1000は、パワーコンディショナ100、太陽光エネルギーによって発電する太陽電池を含む太陽光パネル200、商用電力系統300、負荷400を含む。パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200によって発電された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を供給する商用電力系統300と連系して、負荷400に交流電力を供給する。ここでは、太陽光パネル200が本発明の直流電源に相当する。
【0044】
パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200と入力線101によって接続され、スイッチング素子をスイッチングすることにより、太陽光パネル200から出力された直流電力の電圧を変換する単方向DDコンバータ102a~102cと、単方向DDコンバータ102a~102cとDCバス103によって接続され、単方向DDコンバータ102a~102cによって変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ104、入力線101を流れる直流電力の直流電圧(DCV)及び直流電流(DCI)をそれぞれ検出するDCV検出部105及びDCI検出部106を含む。DCV検出部105は例えば計器用変圧器(VT)によって構成され、DCI検出部106は例えば計器用変流器(CT)によって構成される。図1にはパワーコンディショナ100が3台の単方向DDコンバータ102a~102cを含む構成を示しているが、これは例示であり、1台の単方向DDコンバータを含む構成や、適宜の複数台の単方向DDコンバータを含む構成が可能である。ここでは、単方向DDコンバータ102a~102cが本発明の直流電力変換部に相当し、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子が本発明のスイッチング素子に相当する。また、DCIが本発明の入力電流、スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標に相当し、DCI検出部106が評価指標であるDCIを取得する評価指標取得部に相当する。また、DCVが本発明の入力電圧、入力電流、スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標に相当し、DCV検出部105が評価指標であるDCVを取得する評価指標取得部に相当する。
【0045】
図1には、パワーコンディショナ100の主要構成とともに、DD制御部110の制御ブロック図を示す。DD制御部110は、CPU等のプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、通信インタフェース、入出力インタフェースを含むMCU(Micro Controller Unit)基板によって構成される。DD制御部110は、インバータ104を含むパワーコン
ディショナ100を制御する制御部の一部を構成する。制御部も同様に、CPU等のプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、通信インタフェース、入出力インタフェースを含むコンピュータMCU(Micro Controller Unit)基板によって構成される。また、DD制
御部110を含む制御部は、パワーコンディショナ100の主要構成とともに筐体内部に収容される。ここでは、DD制御部110が、本発明の直流変換制御部に相当する。
【0046】
DD制御部110は、MPPT制御部111、加え合わせ点112、直流電流抑制制御部113、スイッチ114、加え合わせ点115、DCV制御部116、PWM生成部117、スイッチ118、単方向DDGB判定部119を含む。
【0047】
MPPT制御部111には、太陽光パネル200から入力される直流電力に対するDCV検出値がDCV検出部105から入力され、太陽光パネル200から入力される直流電力のDCI検出値がDCI検出部106から入力される。MPPT制御部111は、DCV検出値とDCI検出値に基づいて、太陽光パネル200から出力される電力が最大となるように最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking)制御を行い、DCVの指令値であるDCV指令値を生成し、加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値がDCV制御部116に入力される。MPPT制御の方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。
【0048】
加え合わせ点112には、DCI検出部106から入力されるDCI検出値から、太陽光パネル200から入力されるDCIを抑制する制御を行うための閾値であるDCI抑制制御閾値が減算され、直流電流検出値とDCI抑制制御閾値との差分が直流電流抑制制御部113に入力される。DCI抑制制御閾値は、DD制御部110の主記憶装置の所定領域に予め記憶され、又は、ユーザによる入力に基づいて記憶されている。
【0049】
直流電流抑制制御部113は、DCI抑制制御を実施するかしないかに応じて、DCV制御部116に入力されるDCV指令値の出力元を選択するスイッチ114を切り替える。直流電流抑制制御を実施しない場合には、スイッチ114は、MPPT制御部111側114bに接続され、MPPT制御部111によって生成されたDCV指令値から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値がDCV制御部116に入力されMPPT制御が実施される。直流電流抑制制御を実施する場合には、スイッチ114は、直流電流抑制制御部113側114aに接続され、直流電流抑制制御部113によって生成されたDCV指令値がDCV制御部116に入力され、後述する直流電流抑制制御が実施される。
【0050】
DCV制御部116では、入力されたDCV指令値とDCV検出値との差分に基づいて、PWM生成部117に対する指令値を生成し出力する。
PWM生成部117では、入力された指令値に基づいて、PWM信号を生成する。
【0051】
単方向DDGB判定部119では、入力されたDCIに基づいて、単方向DDコンバータ102a~102cに対してゲートブロックを行うか否かを判定する。単方向DDGB判定部119における処理の詳細は後述する。
単方向DDGB判定部119の判定結果に応じてスイッチ118が切り替えられる。単方向DDGB判定部119が、ゲートブロックを行わないと判定とした場合には、スイッチ118はPWM生成部117側118bに接続され、PWM生成部117によって生成されたPWM信号が、単方向DDコンバータ102a~102cのそれぞれのドライブ回路に出力される。単方向DDコンバータ102a~102cでは、入力されたPWM信号に基づいて、スイッチング素子が駆動され、太陽光パネル200から出力された直流電力の直流電圧が所望の直流電圧で発電する。
単方向DDGB判定部119が、ゲートブロックを行うと判定とした場合には、スイッ
チ118はゲートブロック側118aに切り替えられ、ゲートブロック(GB)信号が、単方向DDコンバータ102a~102cに出力され、ゲートブロック信号を受けた単方向DDコンバータ102a~102cのドライブ回路は直流電力変換動作を停止する。なお、後述するように、パワーコンディショナ100が複数の単方向DDコンバータ102a~102cを含む場合には、複数の単方向DDコンバータ102a~102cのそれぞれについてゲートブロックを行うか否かを判定し、単方向DDコンバータ102a等ごとに運転することも可能である。
【0052】
(ゲートブロック保護)
図2は、太陽光パネル200から出力される直流電圧と、直流電流及び直流電力との関係を示すグラフである。図2に示すグラフでは、横軸が直流電圧、縦軸が直流電流又は直流電力を示す。実線で示された曲線が太陽光パネル200から出力される直流電圧と直流電流との関係を示すIVカーブであり、破線で示された曲線が太陽光パネル200から出力される直流電圧と直流電力との関係を示すPVカーブである。細実線のIVカーブC1はある日射条件(「条件1」という。)におけるIVカーブを示し、細破線のPVカーブC2が同条件におけるPVカーブを示す。また、太実線のIVカーブC3はこの日射条件から日射量が急激に増大等することにより、太陽光パネル200から出力される直流電流が増加した場合(「条件2」という。)のIVカーブを示し、太破線のPVカーブC4が同条件におけるPVカーブを示す。図2における網掛けの領域Rn1は、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子を構成する半導体デバイスが、数秒程度で破損する可能性がある直流電流の範囲(「デバイス破損領域」という。)を示している。また、Th1は、直流電流抑制閾値を示し、後述するように、DD制御部110は、直流電流がTh1を超えた場合には、直流電流の増加を抑制するDCI抑制制御を実施し、直流電流がTh1以下ならMPPT制御を実施する。また、Th2は、直流過電流に対する保護のための閾値であり、直流電流がTh2を超えた場合には、ゲートブロック制御を実施する。
【0053】
例えば、条件1において、パワーコンディショナ100によってMPPT制御が実施され、太陽光パネル200の動作点がPVカーブC2における最大電力点であるP2であるとしたとき、このときIVカーブC1上の点P1で示される直流電流が入力線101を通じて単方向DDコンバータ102a~102cを流れる。このような条件1での運転時に、日射量が急激に増大する等により条件2に変化すると太陽光パネル200の特性が、IVカーブC3及びPVカーブC4に変化する。
【0054】
図2に示すように、条件2では、IVカーブC1が高電流側に変化してIVカーブC3となり、PVカーブC2が高電力側に変化してPVカーブC4となる。このとき、太陽光パネル200のIVカーブC3上の動作点P3は、直流電流抑制閾値Th1を超え、デバイス破損領域Rn1内にある。このため、スイッチング素子の破損を防止するためには、矢印Ar1に示すように、IVカーブC3上で直流電圧を増加させる方向に動作点を移動させることにより直流電流を減少させてデバイス破損領域Rn1外へと移動させるDCI抑制制御を行う。
【0055】
しかしながら、日射量が著しく増大する等により、このようなDCI抑制制御でも、動作点をデバイス破損領域Rn1外へと移動させることが難しい場合もあり得る。このような場合には、矢印Ar2に示すように、直ちに動作点の直流電圧を開放電圧とするゲートブロック保護制御を行う。本実施例において、スイッチング素子の破損を防止するための半導体デバイス保護制御は、DCI抑制制御とゲートブロック保護制御を含む。
【0056】
図3は、本実施例に係るゲートブロック保護制御を説明するグラフである。図3の上段は、横軸に時間をとり、縦軸には、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチ
ング素子として用いる半導体デバイスの温度ディレーティングをとり、DD制御部110において行われるDCI抑制制御の例を示している。図3では、例として、半導体デバイスとしてIGBTを用いる場合を示す。温度ディレーティングは、DCV検出部105及びDCI検出部106によって検出されるDCI及びDCVの波形から損失(温度)に換算することにより取得することができる。温度ディレーティングが1になると半導体デバイスが破損に至る。図3の上段の縦軸として、温度ディレーティングに代えてDCIを用いることもできる。ここでは、温度ディレーティングが、本発明の、温度に基づく、スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標に相当し、DCV検出部105及びDCI検出部106及びこれらによって検出されるDCI及びDCVから温度ディレーティングを算出するDD制御部110の演算部が、本発明の指標取得部に相当する。
【0057】
図3の上段において破線で示す温度ディレーティング0.8を、所定のDCI抑制制御を実施するためのDCI抑制制御閾値とする。例えば、温度ディレーティングが0.8を超えると、直流電流抑制制御部113が、DCI抑制ゲイン0.001V/mSの抑制ゲインによるDCI抑制制御を実施する。ここでは、DCI抑制制御閾値が本発明の抑制制御閾値に相当し、DCI抑制制御が本発明の抑制制御に相当する。
【0058】
図3の上段において一点二鎖線で示す温度ディレーティング0.82を、ゲートブロック保護制御を実施するための閾値(GB閾値)とする。このとき、ゲートブロック保護制御には、ゲートブロックを実施するための検出時限を設定する。ここでは、温度ディレーティングが0.82を超えると、単方向DDGB判定部119は、DCIの値をIとしたとき、ΔItの積算を開始する。図3の下段は、横軸に図3の上段と同じ時間をとり、縦軸にΔItの積算値をとったグラフである。図3の下段においてΔItにおけるtは、温度ディレーティングが0.82を超えてからの経過時間である。図3の下段に示すように、温度ディレーティングが0.82を超えた時刻t1から、ΔItを積算し、ΔItの積算値が2.083ASとなった時刻t2において単方向DDGB判定部119は、図1に示すスイッチ118をゲートブロック側118aに切り替える。すなわち、単方向DDコンバータ102a等のドライブ回路に対して、DD制御部110がゲートブロック信号を出力し、ゲートブロック信号を受けた単方向DDコンバータ102a等がスイッチング動作を停止する。ここでは、ΔItは本発明のスイッチング素子において生ずるジュール熱に基づいて設定される熱的指標に相当する。
単方向DDGB判定部119が、スイッチ118をPWM生成部117側118bに切り替え、ゲートブロックを解除した後には、例えば、MPPT制御により、最大電力点追従制御を行うようにすることができる。
【0059】
図3に示す例では、ΔItの積算値が2.083ASとなった時点を検出時限として、ゲートブロック信号を出力しているが、このΔItの積算値が2.083ASという値は、DCIがΔ50A/Sで変化に相当する照度変動時にDCV60Vでの温度ディレーティングが0.82から0.9に至るまでの積算値に相当する。図3の上段では、一点二鎖線で示した温度ディレーティングが0.82のレベルをGB閾値、点線で示した0.9のレベルをΔIt閾値と表記している。上述のように温度ディレーティングが1になると半導体デバイスが破損するため、ΔItの積算値による検出時限をこのように設定しているが、これは例示であり、温度ディレーティングがGB閾値を超えてからのΔItの積算値によって規定されるΔIt閾値は適宜設定することができる。また、GB閾値及びDCI抑制閾値についても、ディレーティング1を超えない範囲で、ΔIt閾値≧GB閾値≧DCI抑制閾値の関係を満たすように適宜設定することができる。ここで、ゲートブロックの検出時限をΔItの積算値によって規定しているのは、電流によって発生するジュール熱Qは、抵抗値をR、抵抗を流れる電流値をI、時間をtとしたとき、Q=IRtによって表されることから、半導体デバイスに対する熱の影響を適切に評価し得るからである。また、このように、ゲートブロックの検出時限をΔItの積算
値によって規定することにより、固定された時間tによって規定する場合に比べて、DCIが小さく、温度ディレーティングの点からは半導体デバイスの破損までには余裕があるにもかかわらず、ゲートブロックしてしまうことがないので、太陽光パネル200の発電電力を有効に利用することができる。ただし、GB閾値及びDCI抑制閾値は、ディレーティング1を超えない範囲で、ΔIt閾値>GB閾値>DCI抑制閾値の関係を満たすように設定することが、より好ましい。ここでは、GB閾値が、本発明のゲートブロック閾値に相当し、ΔItの所定の積算値に相当するΔIt閾値に対応する時限が、本発明のゲートブロック検出時限に相当する。
【0060】
上述の例では、ゲートブロックの検出時限をΔItの積算値によって規定しているが、ゲートブロックの検出時限の設定方法はこれに限らない。例えば、ゲートブロックの検出時限を、スイッチング素子の熱的状態を反映して所定の時間Tとしてもよいし、DCIに応じて変化する物理量としてもよいし、入力電力に応じて変化する物理量としてもよいし、DCVに応じて変化する物理量としてもよい。ここで、DCIによって可変な物理量は、DCIに比例する物理量でもよいし、DCIの2乗である物理量でもよく、DCIによって可変な物理量を適宜選択すればよい(入力電力に応じて変化する物理量、DCVに応じて変化する物理量についても同様である。)。このとき、時間Tが、本発明の熱的指標及びゲートブロック検出時限に相当し、また、DCIによって可変な値、入力電力によって可変な値、又はDCVによって可変な値であるゲートブロック検出時限が、本発明の熱的指標及びゲートブロック検出時限に相当する。検出計測値としては、DCI、DCV、入力線101を流れる直流電力、温度、DCバス103を流れるDCバス電流、DCバス電力を用いることができる。
【0061】
このように、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品の故障リスクを低減し、品質を高めることができる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品として耐量の低いものを使用することができるので、部品のコストダウン、ひいてはパワーコンディショナ100のコストダウンが可能となる。また、放熱器の小型によるパワーコンディショナ100のサイズダウン、ひいてはそれによるコストダウンも可能となる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、太陽光パネル200の並列数を増やすことができるので、PV発電システム1000の構成の自由度が増す。
【0062】
上述の例では、図3に示すように、温度ディレーティングを対象として、ゲートブロック閾値及びゲートブロック検出時限並びにDCI抑制制御を実施するDCI抑制制御閾値を設定しているが、DCIの値に対して設定した閾値によってDCIの抑制制御を行う。
また、太陽光パネル200から出力され入力線101を流れる直流電流であるDCI又は半導体デバイスの温度ディレーティングを、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の熱的状態を評価しているが、太陽光パネル200から出力され、単方向DDコンバータ102a~102に入力される直流電力でもよい。このとき、太陽光パネル200から出力され、単方向DDコンバータ102a~102に入力される直流電力は、DCV検出部105及びDCI検出部106によってそれぞれ検出されたDCV及びDCIに基づいて、DD制御部110の演算部において算出される。ここでは、直流電力が本発明の入力電力、評価指標に相当し、DCV検出部105、DCI検出部106及びDCV及びDCIに基づいて直流電力を算出するDD制御部110の演算部が本発明の評価指標取得部に相当する。
【0063】
また、単方向DDコンバータ102a~102cとインバータ104を接続するDCバス103を流れる直流電流であるDCバス電流又はDCバス103を流れるDCバス電力
を単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の熱的状態を評価することもできる。このときDCバス電流は、DCバス103を流れる直流電流を検出するDCバス電流検出部によって取得することができる。ここでは、DCバス電流が本発明の出力電流、評価指標に相当し、DCバス電流検出部が本発明の指標取得部に相当する。また、DCバス電力は、同様にDCバス103の直流電圧であるDCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部によって検出されたDCバス電圧とDCバス電流検出部によって検出されたDCバス電流とから、DD制御部110の演算部において算出し取得することができる。ここでは、DCバス電力が本発明の出力電力、評価指標に相当し、DCバス電圧検出部、DCバス電流検出部及びDC電圧及びDC電流に基づいてDCバス電力を算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。
【0064】
(変形例)
図1に示すように、パワーコンディショナ100が複数の単方向DDコンバータ102a~102cを含む場合に、例えば、単方向DDコンバータ102aが上述のゲートブロック保護制御の条件を満たした場合に、他の単方向DDコンバータ102bがゲートブロック保護制御によりスイッチング動作を停止している場合に、この停止している単方向DDコンバータ102bにおけるゲートブロックを解除し、直流電圧変換処理を開始させるようにしてもよい。これにより、太陽光パネル200から出力される直流電力に対する単方向DDコンバータ102aの負担が軽減され、ゲートブロック検出時限に至らず、運転を継続することができる。
このように、複数の単方向DDコンバータ102a~102cのうち、少なくともいずれかの単方向DDコンバータ102a等がゲートブロック検出時限に至っているときに、ゲートブロック保護制御によってゲートブロックされ、スイッチング動作を停止している単方向DDコンバータがある場合には、停止している単方向DDコンバータ102b等の少なくともいずれかのゲートブロックを解除することにより、ゲートブロック検出時限に至っている単方向DDコンバータ102a等のゲートブロックを回避することができる。
ゲートブロックにより、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子を構成する半導体デバイスの破損を防止することができるが、一方で、ゲートブロックにより太陽光パネル200によって発電された電力の利用機会の損失となり、ユーザにとって好ましいものではない。このため、上述のような制御により、半導体デバイスの破損を防止しつつ、ゲートブロックを回避することができる。
【0065】
〔実施例2〕
図4を参照して、実施例2に係るゲートブロック保護制御を説明する。図4は、図3上段と同様に横軸に時間、縦軸にIGBT温度ディレーティングをとったグラフである。
【0066】
実施例1では、温度ディレーティングが0.8を超えると、直流電流抑制制御部113がスイッチ114を切り替えて、MPPT制御を停止し、DC抑制ゲインを0.001V/mSとするDCI抑制制御を行う。GB閾値を超えて、ΔItの積算値によって規定されるΔIt閾値が所定値に達することを検出時限として、単方向DDコンバータ102a等をゲートブロックするゲートブロック保護制御について説明した。
【0067】
実施例1のようにゲートブロック保護制御を実施する場合に、ゲートブロックを行うためのゲートブロック検出条件を固定すると、ゲートブロック検出条件が成就するたびにゲートブロックが繰り返される可能性がある。ユーザにとっては、単方向DDコンバータ102a等がゲートブロックによって繰り返し停止することにより、太陽光パネル200によって発電された電力の利用機会の損失となり、装置の停止が繰り返されることは好ましいことではない。このため、実施例2におけるゲートブロック保護制御では、ゲートブロックをなるべく繰り返さないようにゲートブロック保護制御の内容を、ゲートブロックが実施された状況に応じて変更する。
【0068】
実施例2では、DD制御部110が、ゲートブロックを実施した回数を主記憶装置の所定領域に記憶しておき、1日のゲートブロックの回数が5回目になったときに、DCIの増加をさらに抑制する制御を行う。すなわち、図4に示すように、温度ディレーティングが破線で示す第1DCI抑制制御閾値を超えると、第1DCI抑制制御を行い、さらに一点鎖線で示す第2DCI抑制制御閾値を超えると第2DCI抑制制御を行うというように、温度ディレーティングに応じてDCI抑制制御の抑制スピードを2段階で切り替えている。例えば、直流電流抑制制御部113におけるDCI抑制ゲインを、第1DCI抑制制御では実施例1と同様に0.001V/mSとし、第2DCI抑制制御では0.1V/mSとする。ここでは、実施例1と同様に、一点二鎖線で示すGB閾値を超えて、ΔItの積算値によって規定されるΔIt閾値が所定値に達することを検出時限として、単方向DDコンバータ102a等をゲートブロックする。ここでは、1日に5回目のゲートブロックとなることが、本発明のゲートブロックの回数に関する所定条件に相当する。また、第1DCI制御に加え、第1DCI抑制制御閾値よりも高い温度ディレーティングに第2DCI抑制制御閾値を設定し、第2抑制制御のDCI抑制ゲインを、第1DCI抑制制御の0.001V/mSより大きい0.1V/mSに設定することにより、本発明の、評価指標に応じて評価指標の増加を抑制する抑制速度を変更する制御を実現している。
【0069】
ここでは、ΔIt閾値は、ゲートブロックの回数によっては変更せず、4回目までのゲートブロックが実施された際の値と同じとする。このように、ΔIt閾値は変更しない場合には、GB閾値はDCVによって昇圧比が変わるため、単方向DDコンバータ102a等のスイッチング素子の損失と発熱量も変動するので、DCVによってGB閾値を調整してもよい。
【0070】
1日当たりのゲートブロック回数のカウントは、例えば、夜間にパワーコンディショナ100が停止する際の制御電源断によりリセットし、翌日は、ゲートブロックがなかったものとして、ゲートブロック回数を0からカウントする。
【0071】
このように、ゲートブロックが所定回数繰り返された場合には、DCIをより抑制する制御を実施することにより、ゲートブロックが実施される可能性が低くなる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品の故障リスクを低減し、品質を高めることができる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品として耐量の低いものを使用することができるので、部品のコストダウン、ひいてはパワーコンディショナ100のコストダウンが可能となる。また、放熱器の小型によるパワーコンディショナ100のサイズダウン、ひいてはそれによるコストダウンも可能となる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、太陽光パネル200の並列数を増やすことができるので、PV発電システム1000の構成の自由度が増す。
【0072】
ここでは、1日当たりのゲートブロック回数が5回以上となった段階から、半導体デバイス保護処理の内容を変更して、ゲートブロックの繰り返しを抑制する制御を行っているが、ゲートブロックの繰り返しを抑制する制御を行う条件は、これに限定されない。
【0073】
(変形例)
図4に示す実施例2では、ゲートブロックが1日に4回を超えて繰り返された場合に、DCI抑制制御閾値を多段階化し、より確実にDCIを抑制しているが、図3において、温度ディレーティングがDCI抑制制御閾値0.8を超えた場合のDCI抑制ゲインの値を0.001V/mSから0.1V/mSに増加させ、DCI抑制スピードを増加される
ようにしてもよい。ここでは、DCI抑制ゲインが、本発明の抑制制御の速度に相当する。
このようにしても、ゲートブロックが所定回数繰り返された場合には、DCIを抑制するスピードが増加する制御を実施することにより、ゲートブロックが実施される可能性が低くなる。
【0074】
〔実施例3〕
図5を参照して、実施例3に係るゲートブロック保護制御を説明する。図5は、図3上段及び図4と同様に軸に時間、縦軸にIGBT温度ディレーティングをとったグラフである。実施例3においても、実施例2と同様に、ゲートブロックの繰り返しを回避するための制御を行う。
【0075】
実施例3では、DD制御部110が、ゲートブロックを実施した回数を主記憶装置の所定領域に記憶しておき、1日のゲートブロックの回数が5回目になったときに、DCI抑制制御を、温度ディレーティングに応じて多段階で実施するとともに、DCI抑制制御を開始する閾値、すなわち最も低いDCI抑制制御閾値(低速DCI抑制制御閾値)を下げ、より低い温度ディレーティングからDCI抑制制御を開始し、DCI抑制制御の範囲を拡大している。ここでは、温度ディレーティングが破線で示す低速DCI抑制制御閾値を超えると、低速DCI抑制制御を行い、一点鎖線で示す中速DCI抑制制御閾値を超えると中速DCI抑制制御を行い、二点鎖線で示す高速DCI抑制制御閾値を超えると高速DCI抑制制御を行うというように、温度ディレーティングに応じてDCI抑制制御の抑制スピードを3段階(多段階)で切り替えている。例えば、直流電流抑制制御部113におけるDCI抑制ゲインを、低速DCI抑制制御では0.001V/mSとし、中速DCI抑制制御では0.1V/mSとし、高速DCI抑制制御では8V/mSとする。ここでは、実施例1と同様に、一点二鎖線で示すGB閾値を超えて、ΔItの積算値によって規定されるΔIt閾値が所定値に達することを検出時限として、単方向DDコンバータ102a等をゲートブロックする。
ここでは、低速DCI抑制制御閾値を下げることにより、本発明の、評価指標閾値を低く変更する制御を実現している。また、低速DCI制御に加え、低速DCI抑制制御閾値よりも高い温度ディレーティングに中速DCI抑制制御閾値を設定し、中速DCI抑制制御のDCI抑制ゲインを、低速DCI抑制制御の0.001V/mSより大きい0.1V/mSに設定し、中速DCI抑制制御閾値よりも高い温度ディレーティングに高速DCI抑制制御閾値を設定し、高速DCI抑制制御のDCI抑制ゲインを、中速DCI抑制制御の0.1V/mSより大きい8V/mSに設定することにより、本発明の、評価指標に応じて評価指標の増加を抑制する抑制速度を変更する制御を実現している。
【0076】
このように、DCI抑制制御を実施する温度ディレーティングの範囲を拡大することより、より強力にDCIを抑制することができる。また、DCI抑制制御閾値を、温度ディレーティングが高くなるほど、DCIの抑制スピードが速くなるように多段階でDCI抑制制御を実施することにより、上の段階に割り当てられる温度ディレーティングでは、DCI抑制制御における抑制スピードが増加するので、より強力にDCIを抑制することができる。このように、ゲートブロックが所定回数繰り返された場合に、より強力にDCIを抑制するように、半導体デバイス保護制御の内容を変更することにより、ゲートブロックを繰り返す回数抑えつつ、半導体デバイスの破損を防止することができる。
【0077】
ここでは、ΔIt閾値は、ゲートブロックの回数によっては変更せず、4回目までのゲートブロックが実施された際の値と同じとする。
【0078】
1日当たりのゲートブロック回数のカウントは、例えば、夜間にパワーコンディショナ100が停止する際の制御電源断によりリセットし、翌日は、ゲートブロックがなかった
ものとして、ゲートブロック回数を0からカウントする。
【0079】
このように、ゲートブロックが所定回数繰り返された場合には、DCIをより抑制する制御を実施することにより、ゲートブロックが実施される可能性が低くなる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品の故障リスクを低減し、品質を高めることができる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品として耐量の低いものを使用することができるので、部品のコストダウン、ひいてはパワーコンディショナ100のコストダウンが可能となる。また、放熱器の小型によるパワーコンディショナ100のサイズダウン、ひいてはそれによるコストダウンも可能となる。また、本実施例における半導体デバイス保護制御によれば、太陽光パネル200の並列数を増やすことができるので、PV発電システム1000の構成の自由度が増す。
【0080】
ここでは、1日当たりのゲートブロック回数が5回以上となった段階から、半導体デバイス保護処理の内容を変更して、ゲートブロックの繰り返しを抑制する制御を行っているが、ゲートブロックの繰り返しを抑制する制御を行う条件は、これに限定されない。
【0081】
<付記1>
直流電源(200)に接続され、スイッチング素子をスイッチングすることにより該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部(102a~102c)と、
前記直流電力変換部(102a~102c)を制御する直流変換制御部(110)と、
前記スイッチング素子の熱的状態を評価する評価指標を取得する評価指標取得部(105、106、110)と、
を備え、
前記直流変換制御部(110)は、
前記評価指標が、所定のゲートブロック閾値を超えて、前記スイッチング素子の熱的状態を反映した熱的指標に基づいて設定された、前記スイッチングを停止させるゲートブロックを検出するための時限であるゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする電力変換装置(100)。
<付記2>
前記直流変換制御部(110)は、
前記評価指標が、前記所定のゲートブロック閾値を超えて、前記ゲートブロック検出時限に達したときに、前記スイッチング素子のゲートブロックを指示することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置(100)。
<付記3>
前記評価指標は、前記直流電源(200)から前記直流電力変換部(102a~102c)に入力される入力電流、入力電圧又は入力電力のいずれかに基づくことを特徴とする付記1又は2に記載の電力変換装置(100)。
<付記4>
前記評価指標は、前記直流電力変換部(102a~102c)から出力される出力電流又は出力電力のいずれかに基づくことを特徴とする付記1又は2に記載の電力変換装置(100)。
<付記5>
前記評価指標は、温度に基づくことを特徴とする付記1又は2に記載の電力変換装置(100)。
<付記6>
前記熱的指標は、前記スイッチング素子において生ずるジュール熱に基づいて設定され
ることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記7>
前記熱的指標は、時間に基づくことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記8>
前記熱的指標は、前記直流電源(200)から前記直流電力変換部(102a~102c)に入力される入力電流、入力電力又は入力電圧の少なくともいずれかに応じて変化することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記9>
前記直流変換制御部(110)は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い所定の抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、前記抑制制御の速度を増加させることを特徴とする付記1乃至8のいずれに記載の電力変換装置(100)。
<付記10>
前記直流変換制御部(110)は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記評価指標が、前記抑制制御閾値を超えた場合に、前記評価指標に応じて前記評価指標の増加を抑制する抑制制御速度を変更することを特徴とする付記1乃至9のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記11>
前記直流変換制御部(110)は、
前記評価指標が、前記ゲートブロック閾値より低い抑制制御閾値を超えた場合に、抑制制御速度で前記評価指標の増加を抑制する抑制制御を行い、
前記ゲートブロックの回数が所定条件を満たした場合に、
前記抑制制御閾値を低く変更することを特徴とする付記1乃至10のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
【符号の説明】
【0082】
100 :パワーコンディショナ
102a :単方向DDコンバータ
102b :単方向DDコンバータ
102c :単方向DDコンバータ
105 :DCV検出部
106 :DCI検出部
110 :DD制御部
図1
図2
図3
図4
図5