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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127570
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240912BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240912BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 W
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036805
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 健二
(72)【発明者】
【氏名】田邊 勝隆
(72)【発明者】
【氏名】夏目 和樹
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB82
5H730DD03
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX16
5H730XX19
5H730XX24
5H730XX26
5H730XX35
5H730XX38
5H730XX41
5H770BA11
5H770CA05
5H770HA02W
5H770HA03W
5H770LA02W
5H770LA04W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止する技術を提供する。
【解決手段】直流電源に接続され、該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、前記直流電源から入力され、前記直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力である物理量に関する指標を取得する指標取得部とを備え、前記直流変換制御部は、前記指標の値に応じて、該物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することを特徴とする電力変換装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続され、該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、
前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、
前記直流電源から入力され、前記直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力である物理量に関する指標を取得する指標取得部と、
を備え、
前記直流変換制御部は、
前記指標の値に応じて、該物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記指標は、前記直流電源から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記指標は、前記直流電力変換部から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記指標は、前記直流電力変換部に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記直流変換制御部は、
前記指標の値に応じて、前記物理量抑制制御の速度を段階的に変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記物理量抑制制御の速度の設定を受け付ける設定受付部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記指標は、前記直流電源から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力の時間に対する変化率であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記指標は、前記直流電力変換部から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力の時間に対する変化率であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記指標は、前記直流電力変換部に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標の時間に対する変化率であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記直流電源は太陽電池を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項又は請求項7乃至9のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記直流変換制御部は、
前記指標の値に応じて、最大電力点追従制御と、前記物理量抑制制御の速度を変更する制御とを切り替えることを特徴とする請求項10に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光パネルの高電流化が進み、太陽光パネルから出力される直流電力を所望の交流電力に変換するパワーコンディショナを含むシステムとして低電圧大電流の電力を扱う構成が増えてきている。
従来のパワーコンディショナでは、太陽光パネルにおける照度の急変に対して、パワーコンディショナのスイッチング素子を構成する半導体デバイスに余裕があったため、破損には至らなかったが、太陽光パネルの高電流化により、半導体デバイスの余裕分がなくなるようにパワーコンディショナが使用される例もある。
【0003】
太陽光パネルを含むシステムにおいて、照度が急変した場合に半導体デバイスを保護するために、太陽光パネルの動作電圧を下げる等の種々の制御が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
従来の過電流に対する保護は、主として、(1)直流電流抑制及び(2)直流過電流保護の2つの制御が実施されていた。(1)直流電流抑制は、太陽光パネルの定常的な動作において高電流領域に動作点が行かないための保護であり、(2)直流過電流保護は、直流電流の仕様(定格)を上限とする短絡電流の保護である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6845108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の(1)と(2)の保護の間には、両者によって保護されない領域が存在する。このような領域で太陽光パネルを動作させると、パワーコンディショナ、とりわけ、太陽光パネルに接続されるDC-DCコンバータ(以下、単に「DDコンバータ」ともいう。)の温度が上昇し半導体デバイスの温度耐量を超えて破損することにより、DDコンバータが故障する可能性があった。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
直流電源に接続され、該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部と、
前記直流電力変換部を制御する直流変換制御部と、
前記直流電源から入力され、前記直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力である物理量に関する指標を取得する指標取得部と、
を備え、
前記直流変換制御部は、
前記指標の値に応じて、該物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することを特徴とする電力変換装置である。
【0008】
これによれば、直流電源の出力が変動し、直流電源から入力され、直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力である物理量が変動する場合に、この物理量に関する指標の値に応じて、物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することにより、直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力によって直流電力変換部が破損することを防止することができる。また、指標の値に応じて、物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することにより、物理量を過剰に抑制することによる弊害を回避することもできる。物理量抑制制御の速度は、指標に対して設定された閾値に基づいて、段階的に変更するようにしてもよいし、指標の値に応じて、連続的に変更してもよいし、これらを組み合わせてもよい。指標の値の増加に応じて、物理量を抑制する物理用抑制制御の速度を大きくすることにより、速く物理量を抑制することができるので、より効果的に直流電力変換部を含む電力変換装置の破損を防止することができる。また、指標の値は、直流電力変換部を流れる直流電流又は直流電力である物理量であってもよいし、この物理量から所定の演算等によって導出することができるものであってもよい。
【0009】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電源から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力であるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電力変換部から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力であるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電力変換部に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標であるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記指標に応じて、前記物理量抑制制御の速度を段階的に変更するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明において
前記物理量抑制制御の速度の設定を受け付ける設定受付部を備えるようにしてもよい。
【0014】
これによれば、直流電源及び電力変換装置のそれぞれの仕様に応じて、適切な物理量抑制制御の速度を設定することができる。
【0015】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電源から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力の時間に対する変化率であるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電力変換部から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力の時間に対する変化率であるようにしてもよい。
【0017】
また、本発明において、
前記指標は、前記直流電力変換部に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標の時間に対する変化率であるようにしてもよい。
【0018】
また、本発明において、前記直流電源は太陽電池を含むようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、太陽電池に対する日照が変動することにより、太陽電池から入力され、電力変換装置を流れる電流又は電力が急激に増加する場合に、電力変換装置の破損を防止することができる。
【0020】
また、本発明において、
前記直流変換制御部は、
前記指標の値に応じて、最大電力点追従制御と、前記物理量抑制制御の速度を変更する制御とを切り替えるようにしてもよい。
【0021】
これによれば、太陽電池を含む直流電源の出力によって電力変換装置が破損しない場合には、直流電源から最大の電力を出力させるように最大電力点追従制御を行うことにより、直流電源の出力を活用し、日照が急増する等の変動により、直流電源の出力によって電力変換装置が破損する可能性がある場合には、指標の値に応じて歩率量抑制制御の速度を変更する制御が行われるので、電力変換装置の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、直流電源の出力の変動による電力変換装置の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1に係るPV発電システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る照度変動時の動作点の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施例1に係る直流電流抑制制御を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、本適用例に係るパワーコンディショナ100を含む太陽光(PV)発電システム1000の概略構成を示す。パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200と入力線101によって接続され、太陽光パネル200から出力された直流電力の電圧を変換する単方向DDコンバータ102a~102cと、単方向DDコンバータ102a~102cとDCバス103によって接続され、単方向DDコンバータ102a~102cによって変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ104、入力線101を流れる直流電力の直流電圧(DCV)及び直流電流(DCI)をそれぞれ検出するDCV検出部105及びDCI検出部106を含む。また、パワーコンディショナ100は、単方向DDコンバータ102a~102cを制御するDD制御部110を含む
【0026】
DD制御部110は、MPPT制御部111、加え合わせ点112、直流電流抑制制御部113、スイッチ114、加え合わせ点115、DCV制御部116、PWM生成部117を含む。
【0027】
DD制御部110では、通常は、スイッチ114はMPPT制御部111側114bに接続され、MPPT制御部111から出力されたDCV指令値から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値に基づいてPWM生成部117において生成されたPWM信号に応じて単方向DDコンバータ102a~102cが制御され、MPPT制御が実施される。
【0028】
DCIがDCI抑制閾値を超える場合には、スイッチ114は、直流電流抑制制御部113側114aに切り替えられ、直流電流抑制制御部113から出力されるDCV指令値
から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値に基づいてPWM生成部117において生成されたPWM信号に応じて単方向DDコンバータ102a~102cが制御される。すなわち、MPPT制御が停止され、直流電流抑制制御が実施される。
【0029】
図3は、横軸に時間をとり、縦軸には、スイッチング素子として用いる半導体デバイスの温度ディレーティングをとり、DCI抑制制御の例を示している。温度ディレーティングが1になると半導体デバイスが破損に至る。図3では、縦軸に半導体デバイスの温度ディレーティングをとっているが、半導体デバイスの温度ディレーティングに代えて、DCIの値としても同様の関係が成り立つ。温度ディレーティングが破線で示す閾値0.8を超えると、低速DCI抑制制御を行い、一点鎖線で示す閾値0,815を超えると中速DCI抑制制御を行い、二点鎖線で示す閾値0.82を超えると高速DCI抑制制御を行うというように、温度ディレーティングに応じてDCI抑制制御の抑制スピードを3段階で切り替えている。例えば、直流電流抑制制御部113におけるDCI抑制ゲインを、低速DCI抑制制御では0.001V/mSとし、中速DCI抑制制御では0.1V/mSとし、高速4V/mSとする。
【0030】
このようなDCI抑制制御が行われることにより、図3に示すように、照度が急激に上昇しても、DCIの大きさに応じてDCI抑制スピードが段階的に増加するようにしてDCIの増加が抑制されるので、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の破損を防止することができる。
【0031】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係るパワーコンディショナ100について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている装置及びシステムの構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0032】
図1に実施例1に係るパワーコンディショナ100を含むPV発電システム1000の概略構成を示す。図1では、電力が流れる電力線を太線で示し、情報が送受される信号線を細線で示している。電力線は、電力流通経路を模式的に示すものであり、実際の物理的な構成としては種々の構成が可能であり、交流電力が流通する電力線についても簡略化して1本の線で示している。なお、後述するDDコンバータ制御部の制御ブロック図において、細線は情報の流れを示しており必ずしも実際の信号線を示すものではない。
【0033】
PV発電システム1000は、パワーコンディショナ100、太陽光エネルギーによって発電する太陽電池を含む太陽光パネル200、商用電力系統300、負荷400を含む。パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200によって発電された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を供給する商用電力系統300と連系して、負荷400に交流電力を供給する。
【0034】
パワーコンディショナ100は、太陽光パネル200と入力線101によって接続され、太陽光パネル200から出力された直流電力の電圧を変換する単方向DDコンバータ102a~102cと、単方向DDコンバータ102a~102cとDCバス103によって接続され、単方向DDコンバータ102a~102cによって変換された直流電力を交流電力に変換するインバータ104、入力線101を流れる直流電力の直流電圧(DCV)及び直流電流(DCI)をそれぞれ検出するDCV検出部105及びDCI検出部106を含む。DCV検出部105は例えば計器用変圧器(VT)によって構成され、DCI検出部106は例えば計器用変流器(CT)によって構成される。図1にはパワーコンディショナ100が3台の単方向DDコンバータ102a~102cを含む構成を示しているが、これは例示であり、1台の単方向DDコンバータを含む構成や、適宜の複数台の単
方向DDコンバータを含む構成が可能である。ここでは、単方向DDコンバータ102a~102cが本発明の直流電力変換部に相当する。また、DCIが本発明の入力電流、物理量及び指標に相当し、DCI検出部106が指標であるDCIを取得する指標取得部に相当する。
【0035】
図1には、パワーコンディショナ100の主要構成とともに、DD制御部110の制御ブロック図を示す。DD制御部110は、CPU等のプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、通信インタフェース、入出力インタフェースを含むMCU(Micro Controller Unit)基板によって構成される。DD制御部110は、インバータ104を含むパワーコン
ディショナ100を制御する制御部の一部を構成する。制御部も同様に、CPU等のプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、通信インタフェース、入出力インタフェースを含むMCU(Micro Controller Unit)基板によって構成される。また、DD制御部110を
含む制御部は、パワーコンディショナ100の主要構成とともに筐体内部に収容される。ここでは、DD制御部110が、本発明の直流変換制御部に相当する。
【0036】
DD制御部110は、MPPT制御部111、加え合わせ点112、直流電流抑制制御部113、スイッチ114、加え合わせ点115、DCV制御部116、PWM生成部117を含む。
【0037】
MPPT制御部111には、太陽光パネル200から入力される直流電力に対するDCV検出値がDCV検出部105から入力され、太陽光パネル200から入力される直流電力のDCI検出値がDCI検出部106から入力される。MPPT制御部111は、DCV検出値とDCI検出値に基づいて、太陽光パネル200から出力される電力が最大となるように最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking)制御を行い、DCVの指令値であるDCV指令値を生成し、加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値がDCV制御部116に入力される。MPPT制御の方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。
【0038】
加え合わせ点112には、DCI検出部106から入力されるDCI検出値から、太陽光パネル200から入力されるDCIを抑制する制御を行うための閾値であるDCI抑制制御閾値が減算され、直流電流検出値とDCI抑制閾値との差分が直流電流抑制制御部113に入力される。DCI抑制制御閾値は、DD制御部110の主記憶装置の所定領域に予め記憶され、又は、ユーザによる入力に基づいて記憶されている。
【0039】
直流電流抑制制御部113における処理の詳細は後述する。直流電流抑制制御部113は、直流電流抑制制御を実施するかしないかに応じて、DCV制御部116に入力されるDCV指令値の出力元を選択するスイッチ114を切り替える。直流電流抑制制御を実施しない場合には、スイッチ114は、MPPT制御部111側114bに接続され、MPPT制御部111によって生成されたDCV指令値から加え合わせ点115においてDCV検出値が減算された値がDCV制御部116に入力されMPPT制御が実施される。直流電流抑制制御を実施する場合には、スイッチ114は、直流電流抑制制御部113側114aに接続され、直流電流抑制制御部113によって生成されたDCV指令値がDCV制御部116に入力され、後述する直流電流抑制制御が実施される。
【0040】
DCV制御部116では、入力されたDCV指令値とDCV検出値との差分に基づいて、PWM生成部117に対する指令値を生成し出力する。
PWM生成部117では、入力された指令値に基づいて、PWM信号を生成し、単方向DDコンバータ102a~102cのそれぞれのドライブ回路に出力する。
単方向DDコンバータ102a~102cでは、入力されたPWM信号に基づいて、スイッチング素子が駆動され、太陽光パネル200から出力された直流電力の直流電圧が所
望の直流電圧で発電する。
【0041】
(直流電流抑制制御)
図2は、太陽光パネル200から出力される直流電圧と、直流電流及び直流電力との関係を示すグラフである。図2に示すグラフでは、横軸が直流電圧、縦軸が直流電流又は直流電力を示す。実線で示された曲線が太陽光パネル200から出力される直流電圧と直流電流との関係を示すIVカーブであり、破線で示された曲線が太陽光パネル200から出力される直流電圧と直流電力との関係を示すPVカーブである。細実線のIVカーブC1はある日射条件(「条件1」という。)におけるIVカーブを示し、細破線のPVカーブC2が同条件におけるPVカーブを示す。また、太実線のIVカーブC3はこの日射条件から日射量が急激に増大等することにより、太陽光パネル200から出力される直流電流が増加した場合(「条件2」という。)のIVカーブを示し、太破線のPVカーブC4が同条件におけるPVカーブを示す。図2における網掛けの領域Rn1は、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子を構成する半導体デバイスが、数秒程度で破損する可能性がある直流電流の範囲(「デバイス破損領域」という。)を示している。また、Th1は、直流電流抑制閾値を示し、後述するように、DD制御部110は、直流電流がTh1を超えた場合には、直流電流の抑制制御を実施し、直流電流がTh1以下ならMPPT制御を実施する。また、Th2は、直流過電流に対する保護のための閾値であり、直流電流がTh2を超えた場合には、例えば、ゲートブロックを実施する。
【0042】
例えば、条件1において、パワーコンディショナ100によってMPPT制御が実施され、太陽光パネル200の動作点がPVカーブC2における最大電力点であるP2であるとしたとき、このときIVカーブC1上の点P1で示される直流電流が入力線101を通じて単方向DDコンバータ102a~102cを流れる。このような条件1での運転時に、日射量が急激に増大する等により条件2に変化すると太陽光パネル200の特性が、IVカーブC3及びPVカーブC4に変化する。
【0043】
図2に示すように、条件2では、IVカーブC1が高電流側に変化してIVカーブC3となり、PVカーブC2が高電力側に変化してPVカーブC4となる。このとき、太陽光パネル200のIVカーブC3上の動作点P3は、直流電流抑制閾値Th1を超え、デバイス破損領域Rn1内にある。このため、スイッチング素子の破損を防止するためには、直流電流を減少させてデバイス破損領域Rn1外へと移動させる必要がある。
【0044】
DD制御部110では、矢印Ar1に示すように、動作点P3の電圧を増加させることにより、直流電流を抑制、減少させる。このとき、直流電流を抑制、減少させるスピードを一定とするのではなく、種々の条件に応じて変更する。
【0045】
図3は、横軸に時間をとり、縦軸には、スイッチング素子として用いる半導体デバイスの温度ディレーティングをとり、DD制御部110において行われるDCI抑制制御の例を示している。図3では、例として、半導体デバイスとしてIGBTを用いる場合を示す。温度ディレーティングは、DCV検出部105及びDCI検出部106によって検出されるDCI及びDCVの波形から損失(温度)に換算することにより取得することができる。温度ディレーティングが1になると半導体デバイスが破損に至る。温度ディレーティングが破線で示すDCI抑制制御閾値0.8を超えると、低速DCI抑制制御を行い、一点鎖線で示すDCI抑制制御閾値0,815を超えると中速DCI抑制制御を行い、二点鎖線で示すDCI抑制制御閾値0.82を超えると高速DCI抑制制御を行うというように、温度ディレーティングに応じてDCI抑制制御の抑制スピードを多段階(ここでは3段階)で切り替えている。例えば、直流電流抑制制御部113におけるDCI抑制ゲインを、低速DCI抑制制御では0.001V/mSとし、中速DCI抑制制御では0.1V/mSとし、高速DCI抑制制御では4V/mSとする。図3において破線で示す閾値が
図2に示す直流電流抑制閾値Th1に対応する。図3において、破線で示す低速DCI抑制制御の閾値と、一点鎖線で示す中速DCI抑制制御の閾値との差を電流値で表すと、ΔI=0.3Aであり、一点鎖線で示す中速DCI抑制制御の閾値と、二点鎖線で示す高速DCI抑制制御の閾値との差を電流値で表すと、ΔI=0.4Aである。ここでは、温度ディレーティングが本発明の指標及び温度指標に相当し、DCV検出部105及びDCI検出部106及びこれらによって検出されるDCI及びDCVから温度ディレーティングを算出するDD制御部110の演算部が、本発明の指標取得部に相当する。
【0046】
温度ディレーティングが破線で示す閾値0.8を超えると低速DCI抑制制御が行われ、温度ディレーティングが減少するというように、破線で示す閾値0.8を挟んで変動するが、照度変動により直流電流が急激に増加することにより温度ディレーティングが急激に増加し、二点鎖線で示す高速DCI抑制制御の閾値0.82を超える。ここで、高速DCI抑制制御が行われる。DCI抑制制御により、IVカーブ上での動作点を高電圧側に移動させることによりDCIの増加が抑制され、温度ディレーティングが減少するが、照度変動が継続し、さらに照度が増加する場合にはIVカーブがさらに高電流側へ移動することにより、動作点におけるDCIが増加し、再び温度ディレーティングが閾値0.82を超える。照度変動中には、このような変化が繰り返される。照度の変動が終了すると、照度の減少に伴いDCIが減少することにより、温度ディレーティングが減少する。このような制御が行われることにより、照度が急激に上昇しても、DCIの増加が抑制されるので、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の破損を防止することができる。このように、DCI又は温度ディレーティングが高くなるほど、DCI抑制スピードを増加させる多段階のDCI抑制制御を行うことにより、高電流化する太陽光パネル200に対しても、単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子を構成する半導体デバイスの破損を防止することができる。また、DCI抑制制御において、DCI抑制スピードを単に高速化するのではなく、DCI抑制スピードが低速及び中速のDCI抑制制御を組み合わせ、DCI抑制スピードを多段階化することにより、動作点がIVカーブ上で高電圧側に行き過ぎてハンチングが生じることを抑制することができる。
【0047】
このように、本実施例におけるDCI抑制制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品の故障リスクを低減し、品質を高めることができる。また、本実施例におけるDCI抑制制御によれば、単方向DDコンバータ102a~102cを含むパワーコンディショナ100のスイッチング素子等の部品として耐量の低いものを使用することができるので、部品のコストダウン、ひいてはパワーコンディショナ100のコストダウンが可能となる。また、放熱器の小型によるパワーコンディショナ100のサイズダウン、ひいてはそれによるコストダウンも可能となる。また、本実施例におけるDCI抑制制御によれば、太陽光パネル200の並列数を増やすことができるので、PV発電システム1000の構成の自由度が増す。
【0048】
上述の実施例では、DCI抑制スピードを、DCI又は温度ディレーティングに応じて3段階に切り替えているが、2段階でもよいし、4段階以上の適宜の段階で切り替えるようにしてもよい。また、DCI又は温度ディレーティングに応じてDCI抑制スピードを段階的に切り替えるのではなく、連続的に変更するようにしてもよい。
【0049】
上述の例では、図2に示すように、温度ディレーティングを対象としてDCIの抑制スピードを切り替える閾値を設定しているが、DCIの値に対して設定した閾値によってDCIの抑制スピードを切り替えるようにしてもよい。
また、太陽光パネル200から出力され入力線101を流れる直流電流であるDCI又は半導体デバイスの温度ディレーティングを、単方向DDコンバータ102a~102c
のスイッチング素子の破損を防止するための抑制対象としているが、太陽光パネル200から出力され、単方向DDコンバータ102a~102に入力される直流電力でもよい。このとき、太陽光パネル200から出力され、単方向DDコンバータ102a~102に入力される直流電力は、DCV検出部105及びDCI検出部106によってそれぞれ検出されたDCV及びDCIに基づいて、DD制御部110の演算部において算出される。ここでは、直流電力が本発明の入力電力、物理量及び指標に相当し、DCV検出部105、DCI検出部106及びDCV及びDCIに基づいて直流電力を算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。
【0050】
また、単方向DDコンバータ102a~102cとインバータ104を接続するDCバス103を流れる直流電流であるDCバス電流又はDCバス103を流れるDCバス電力を単方向DDコンバータ102a~102cのスイッチング素子の破損防止するための抑制対象として選択することもできる。このときDCバス電流は、DCバス103を流れる直流電流を検出するDCバス電流検出部によって取得することができる。ここでは、DCバス電流が本発明の出力電流、物理量及び指標に相当し、DCバス電流検出部が本発明の指標取得部に相当する。また、DCバス電力は、同様にDCバス103の直流電圧であるDCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部によって検出されたDCバス電圧とDCバス電流検出部によって検出されたDCバス電流とから、DD制御部110の演算部において算出し取得することができる。ここでは、DCバス電力が本発明の出力電力、物理量及び指標に相当し、DCバス電圧検出部、DCバス電流検出部及びDC電圧及びDC電流に基づいてDCバス電力を算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。
【0051】
また、上述の例では、DCI又は温度ディレーティングに応じて、DCI抑制スピードを変更しているが、DCI又は温度ディレーティングの傾き(時間に対する変化率)の大きさに応じて、段階的に切り替え、又は連続的変更するというように、DCI抑制スピードを動的に変更するようにしてもよい。例えば、DCI又は温度ディレーティングの傾きが大きい場合には、DCI抑制スピードを大きくし、DCI又は温度ディレーティングの傾きが小さい場合には、DCI抑制スピードを小さくするといようにDCI抑制スピードを変更することができる。DCIの傾きは、DCI検知部によって検知されたDCIに基づいて、DCIの傾きをDD制御部110の演算部において算出することができる。ここでは、DCIの傾きが、本発明の指標に相当し、DD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。温度ディレーティングについても同様であるから、温度ディレーティングの傾きが本発明の指標に相当し、DCV検知部、DCI検知部及びDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。
【0052】
また、直流電力、DCバス電流、DCバス電力を抑制対象とし、これらの傾き(時間に対する変化率)の大きさに応じて、それぞれの抑制スピードを段階的に切り替え、又は連続的に変更するようにしてもよい。このとき直流電力の傾きが本発明の指標に相当し、DCV検知部、DCI検知部及び、直流電力の傾きを算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。また、DCバス電流の傾きが本発明の指標に相当し、DCバス電流検出部及び、DDバス電流の傾きを算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。また、DCバス電力の傾きが本発明の指標に相当し、DCバス電圧検出部、DCバス電流検出部及びDC電圧及びDC電流に基づいてDCバス電力の傾きを算出するDD制御部110の演算部が本発明の指標取得部に相当する。
【0053】
また、各抑制スピード(DCI抑制ゲイン)は、予め設定してもよいし、ユーザが設定できるようにしてもよい。これにより、太陽光パネル200の容量、単方向DDコンバータ102a~102cの容量や並列数等の仕様に応じて適切な抑制スピードを設定することができる。このとき、DD制御部110の入出力インタフェースが本発明の設定受付部
に相当する。
【0054】
<付記1>
直流電源(200)に接続され、該直流電源から入力された直流電圧を変換して出力する直流電力変換部(102a~102c)と、
前記直流電力変換部(102a~102c)を制御する直流変換制御部(110)と、
前記直流電源(200)から入力され、前記直流電力変換部(102a~102c)を流れる直流電流又は直流電力である物理量に関する指標を取得する指標取得部(105、106、110)と、
を備え、
前記直流変換制御部(110)は、
前記指標の値に応じて、該物理量を抑制する物理量抑制制御の速度を変更することを特徴とする電力変換装置(100)。
<付記2>
前記指標は、前記直流電源(200)から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記3>
前記指標は、前記直流電力変換部(102a~102c)から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記4>
前記指標は、前記直流電力変換部(102a~102c)に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記5>
前記直流変換制御部(110)は、
前記指標の値に応じて、前記物理量抑制制御の速度を段階的に変更することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記6>
前記物理量抑制制御の速度の設定を受け付ける設定受付部を備えたことを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記7>
前記指標は、前記直流電源(200)から入力される直流電流又は直流電力である入力電流又は入力電力の時間に対する変化率であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記8>
前記指標は、直流電力変換部(102a~102c)から出力される直流電流又は直流電力である出力電流又は出力電力の時間に対する変化率であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記9>
前記指標は、前記直流電力変換部(102a~102c)に含まれるスイッチング素子の温度に関する温度指標の時間に対する変化率であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(100)。
<付記10>
前記直流電源(200)は太陽電池(200)を含むことを特徴とする付記1乃至9のいずれかに記載の電力変換装置(100)。
<付記11>
前記直流変換制御部(110)は、
前記指標の値に応じて、最大電力点追従制御と、前記物理量抑制制御の速度を変更する制御とを切り替えることを特徴とする付記10に記載の電力変換装置(100)。
【符号の説明】
【0055】
100 :パワーコンディショナ
102a :単方向DDコンバータ
102b :単方向DDコンバータ
102c :単方向DDコンバータ
105 :DCV検出部
106 :DCI検出部
110 :DD制御部
図1
図2
図3