(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127575
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20240912BHJP
H02J 50/60 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036813
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】野村 篤司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 謙一
(57)【要約】
【課題】受電側の出力電圧を一定の範囲内に保ちつつ、電力伝送効率を向上することが可能な非接触給電装置を提供する。
【解決手段】非接触給電装置の受電装置3は、受信コイル21を含み、非接触給電装置の送電装置2の送信コイル14から電力を受電する共振回路20と、共振回路20から出力される電力を整流する整流回路23と、受信コイル21と電磁結合可能に配置される共振抑制コイル25を有する。受電装置3のスイッチ制御回路27は、整流回路23から出力される電圧に応じて共振抑制コイル25の短絡及び開放を制御する。送電装置2の制御回路19は、電流検出回路18により検出されたインバータ13の第1のスイッチング素子13-2に流れる電流に基づいて推定した、共振抑制コイル25が短絡されている期間に関するデューティ比が所定の許容範囲に収まるように電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の電圧を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置と、前記送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置であって、
前記送電装置は、
前記受電装置へ電力を供給する送信コイルと、
フルブリッジ状あるいはハーフブリッジ状に接続された複数のスイッチング素子を有するインバータを含み、交流電力を前記送信コイルへ供給する電力供給回路と、
前記複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電力供給回路から前記送信コイルに供給される交流電力の電圧を制御する制御回路と、を有し、
前記受電装置は、
受信コイルと、前記受信コイルと接続される共振コンデンサとを有し、前記送電装置の前記送信コイルを流れる電流に対して共振することで前記送信コイルから電力を受電する共振回路と、
前記共振回路を介して受電した電力を整流する整流回路と、
前記整流回路から出力される電力の出力電圧を測定する電圧検出回路と、
前記受信コイルと電磁結合可能に配置される共振抑制コイルと、
前記共振抑制コイルと接続され、前記共振抑制コイルの短絡または開放を切り替え可能なスイッチ回路と、
前記出力電圧の測定値が所定の上限閾値以上になると前記共振抑制コイルを短絡するよう前記スイッチ回路を制御し、前記出力電圧の測定値が、前記所定の上限閾値よりも低い所定の下限閾値以下になると前記共振抑制コイルを開放するよう前記スイッチ回路を制御するスイッチ制御回路と、を有し、
前記送電装置の前記制御回路は、前記電流検出回路により検出された電流に基づいて前記共振抑制コイルが短絡されている期間に関するデューティ比を推定し、推定したデューティ比が所定の許容範囲に収まるように、前記電力供給回路から前記送信コイルに供給される交流電力の電圧を制御する、
非接触給電装置。
【請求項2】
前記送電装置は、
前記電力供給回路と前記送信コイルの一端との間に接続される第1のコンデンサと、
前記電力供給回路と前記送信コイルの一端または他端と前記電力供給回路との間に接続される第1のコイルと、
前記第1のコンデンサに一端が接続され、他端が前記送信コイルの他端と接続される第2のコンデンサとをさらに有し、
前記電力供給回路から前記送信コイルへ供給される交流電力の周波数は、前記受電装置の前記共振回路の共振周波数を含む所定の周波数範囲に含まれるよう設定される、請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記送電装置の前記制御回路は、前記受電装置の前記共振抑制コイルが開放される期間が所定の閾値よりも長い場合、前記電力供給回路から前記送信コイルへ供給される交流電力の電圧を上昇させるよう前記電力供給回路を制御し、一方、前記デューティ比が前記所定の許容範囲の上限よりも大きく、かつ、前記共振抑制コイルが開放される期間が前記所定の閾値以下である場合、前記電力供給回路から前記送信コイルへ供給される交流電力の電圧を低下させるよう前記電力供給回路を制御する、請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記送電装置の前記制御回路は、前記受電装置の前記共振抑制コイルが短絡される期間における、前記第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値が所定の検出閾値よりも大きい場合、前記送信コイルから前記受信コイルへの電力伝送に影響される異物が有ると判定する、請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
前記受電装置は移動体に搭載され、前記送電装置の前記送信コイルは、前記移動体の移動経路上に設置される、請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の接点などを介さずに、空間を通じて電力を伝送する、いわゆる非接触給電(ワイヤレス給電とも呼ばれる)技術が研究されている。
【0003】
非接触給電技術を利用した給電装置(以下、単に非接触給電装置と呼ぶ)では、一次側(送電側)のコイルと二次側(受電側)のコイル間の位置関係が変動すると、その二つのコイル間の結合度が変化する。その結果として、受電側の装置から負荷回路への出力電圧も変動する。場合によっては、負荷回路への出力電圧が過剰に上昇して、受電側の装置または負荷回路などに故障を生じるおそれがある。そこで、出力電圧が過度に上昇することを抑制しつつ、エネルギー損失を抑制する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に開示された非接触電力伝送装置では、受電側の装置において、送電側の装置の送信コイルから電力を受電するための受信コイルと電磁結合可能に配置される共振抑制コイルが設けられる。そして、受信コイルを含む共振回路から出力された電力を整流回路にて整流して得られる出力電圧の測定値が所定の上限閾値以上となると共振抑制コイルが短絡されるとともに、出力電圧異常信号が送電側の装置へ送信される。そして送電側の装置では、出力電圧異常信号を受け取ると、送信コイルに供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧の少なくとも一方が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術では、受電側の装置と接続される負荷回路の抵抗値が変動しても受電側の装置からの出力電圧を略一定に保つ、いわゆる定電圧出力動作を維持するためには、送信コイルに供給される交流電力の周波数及び電圧の両方を制御することがもとめられる。そのため、電力伝送中においても送信コイルと受信コイルの位置関係が頻繁に変動するような動作環境下では、送信コイルに供給される交流電力の周波数及び電圧の制御が追い付かず、その結果として出力電圧を一定に保てなくなるとともに十分な電力伝送効率を維持することが困難になるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、受電側の出力電圧を一定の範囲内に保ちつつ、電力伝送効率を向上することが可能な非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態として、送電装置と、送電装置から非接触で電力伝送される受電装置とを有する非接触給電装置が提供される。この非接触給電装置において、送電装置は、受電装置へ電力を供給する送信コイルと、フルブリッジ状あるいはハーフブリッジ状に接続された複数のスイッチング素子を有するインバータを含み、交流電力を送信コイルへ供給する電力供給回路と、インバータの複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、電力供給回路から送信コイルに供給される交流電力の電圧を制御する制御回路とを有する。また、受電装置は、受信コイルと、受信コイルと接続される共振コンデンサとを有し、送電装置の送信コイルを流れる電流に対して共振することで送信コイルから電力を受電する共振回路と、共振回路を介して受電した電力を整流する整流回路と、整流回路から出力される電力の出力電圧を測定する電圧検出回路と、受信コイルと電磁結合可能に配置される共振抑制コイルと、共振抑制コイルと接続され、共振抑制コイルの短絡または開放を切り替え可能なスイッチ回路と、出力電圧の測定値が所定の上限閾値以上になると共振抑制コイルを短絡するようスイッチ回路を制御し、出力電圧の測定値が、所定の上限閾値よりも低い所定の下限閾値以下になると共振抑制コイルを開放するようスイッチ回路を制御するスイッチ制御回路とを有する。そして送電装置の制御回路は、電流検出回路により検出された電流に基づいて共振抑制コイルが短絡されている期間に関するデューティ比を推定し、推定したデューティ比が所定の許容範囲に収まるように、電力供給回路から送信コイルに供給される交流電力の電圧を制御する。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、受電側の出力電圧を一定の範囲内に保つことを可能としつつ、電力伝送効率を向上することができる。
【0009】
この非接触給電装置の送電装置は、電力供給回路と送信コイルの一端との間に接続される第1のコンデンサと、電力供給回路と送信コイルの一端または他端と電力供給回路との間に接続される第1のコイルと、第1のコンデンサに一端が接続され、他端が送信コイルの他端と接続される第2のコンデンサとをさらに有することが好ましい。そして電力供給回路から送信コイルへ供給される交流電力の周波数は、受電装置の共振回路の共振周波数を含む所定の周波数範囲に含まれるように設定されることが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の結合度が変動しても、定電圧出力動作することが可能となる。
【0010】
また、送電装置の制御回路は、受電装置の共振抑制コイルが開放される期間が所定の閾値よりも長い場合、電力供給回路から送信コイルへ供給される交流電力の電圧を上昇させるよう電力供給回路を制御し、一方、デューティ比が所定の許容範囲の上限よりも大きく、かつ、共振抑制コイルが開放される期間が所定の閾値以下である場合、電力供給回路から送信コイルへ供給される交流電力の電圧を低下させるよう電力供給回路を制御する、ことが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、出力電圧を一定の範囲に維持するとともに、共振抑制コイルが短絡される際に消費される電力を低減させることができる。
【0011】
さらに、送電装置の制御回路は、受電装置の共振抑制コイルが短絡される期間における、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値が所定の検出閾値よりも大きい場合、送信コイルから受信コイルへの電力伝送に影響される異物が有ると判定することが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、電力伝送に影響される異物を精度良く検出することができる。
【0012】
さらに、受電装置は移動体に搭載され、送電装置の送信コイルは、移動体の移動経路上に設置されることが好ましい。
係る構成を有することにより、この非接触給電装置は、移動体が移動経路に沿って移動する際に移動体へ給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態による非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図3】出力電圧と、共振抑制コイルの短絡及び開放と、送信コイルに供給される交流電力の入力電圧と、スイッチ回路に流れる電流の関係の一例を示す図である。
【
図4】共振抑制コイルが短絡されているときの、インバータのスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
【
図5】(a)及び(b)は、それぞれ、共振抑制コイルが短絡されているときに送信コイルに流れる電流の波形、及び、共振抑制コイルが開放されているときにインバータのスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
【
図7】入力電圧の制御の動作フローチャートである。
【
図8】実施形態または変形例による非接触給電装置が移動体の電力供給システムとして利用される場合のシステム概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一つの実施形態による非接触給電装置を、図を参照しつつ説明する。この非接触給電装置では、受電側の装置(以下、単に受電装置と呼ぶ)が、受電用のコイル(以下、受信コイルと呼ぶ)とともに、その受信コイルと電磁結合可能なように設けられた共振抑制用のコイル(以下、単に共振抑制コイルと呼ぶ)を有する。そして受電装置に設けられる整流回路からの出力電圧が所定の上限閾値以上となると、受電装置は、共振抑制コイルを短絡して受信コイルを含む共振回路の共振条件を変化させることで出力電圧を低下させる。逆に、出力電圧が所定の下限閾値以下となると、受電装置は、共振抑制コイルを開放することで、共振回路の共振条件を元に戻して出力電圧を上昇させる。一方、送電側の装置(以下、単に送電装置と呼ぶ)は、送電用のコイル(以下、送信コイルと呼ぶ)に対して交流電力を供給するインバータの何れかのスイッチング素子に流れる電流を検出し、検出した電流に基づいて、共振抑制コイルの短絡と開放の繰返し周期に対する、共振抑制コイルが短絡されているオン期間の比であるデューティ比(以下、共振抑制コイルの短絡に関するデューティ比、あるいは、共振抑制コイルが短絡されている期間に関するデューティ比と呼ぶことがある)を推定する。そして送電装置は、推定したデューティ比が所定の許容範囲に収まるように、送信コイルに供給される交流電力の電圧を制御することで、共振抑制コイル短絡時の損失を軽減する。これにより、この非接触給電装置は、受電側の出力電圧を一定の範囲に保ちつつ、電力伝送効率を向上することを可能とする。
【0015】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。
図1に示されるように、非接触給電装置1は、送電装置2と、送電装置2から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置3とを有する。送電装置2は、電力供給回路10と、送信コイル14と、第1のコンデンサ15と、第2のコンデンサ16と、第1のコイル17と、電流検出回路18と、制御回路19とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20と、整流平滑回路23と、電圧検出回路24と、共振抑制コイル25と、スイッチ回路26と、スイッチ制御回路27とを有する。そして受電装置3は負荷回路4と接続され、受電装置3が受電して、直流に変換された電力は、負荷回路4へ出力される。
【0016】
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路10は、所定の駆動周波数、及び、調節可能な電圧を持つ交流電力を送信コイル14へ供給する。そのために、電力供給回路10は、全波整流回路11と、力率改善回路12と、インバータ13とを有する。
【0017】
全波整流回路11は、所定の脈流電圧を持つ電力を供給する。そのために、全波整流回路11は、ブリッジ型に接続された4個のダイオードを有し、商用の交流電源と接続される。そして全波整流回路11は、その交流電源から供給された交流電力を整流して脈流電圧を持つ電力に変換し、その電力を力率改善回路12へ出力する。
【0018】
力率改善回路12は、全波整流回路11から出力された電力を、制御回路19からの制御に応じた電圧を持つ直流電力に変換して出力する。したがって、交流電源、全波整流回路11及び力率改善回路12により、直流電源が構成される。
【0019】
力率改善回路12の構成は、制御回路19からの制御によって出力電圧を調整可能な様々な力率改善回路の何れかと同様の構成とすることができる。本実施形態では、力率改善回路12は、全波整流回路11の正極側出力端子に対して一端において直列に接続されるコイルと、そのコイルの他端とインバータ13との間において、コイルからインバータ13へ向かう方向が順方向となるように接続されるダイオードを有する。力率改善回路12は、さらに、コイルとダイオードの間に一端が接続され、他端が全波整流回路11の負極側出力端子に接続されるスイッチング素子と、そのスイッチング素子とダイオードを挟んで並列に接続される平滑コンデンサを有する。そして制御回路19がスイッチング素子のオン/オフのデューティ比を制御することで、力率改善回路12から出力される電圧が制御される。
【0020】
インバータ13は、力率改善回路12から出力された直流電力を、スイッチング素子13-1~13-4のオン/オフの切替周期に相当する駆動周波数を持つ交流電力に変換する。そしてインバータ13は、その交流電力を、第1のコンデンサ15、第2のコンデンサ16及び第1のコイル17を介して送信コイル14へ出力する。
【0021】
そのために、インバータ13は、4個のスイッチング素子13-1~13-4を有する。そして4個のスイッチング素子13-1~13-4のそれぞれは、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。インバータ13は、いわゆるフルブリッジ回路として構成される。すなわち、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2は、全波整流回路11の正極側出力端子と負極側出力端子との間に、力率改善回路12を介して直列に接続される。また本実施形態では、全波整流回路11の正極側に、スイッチング素子13-1が接続され、一方、全波整流回路11の負極側に、スイッチング素子13-2が接続される。そしてスイッチング素子13-1のドレイン端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と接続され、スイッチング素子13-1のソース端子は、スイッチング素子13-2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-2のソース端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-1のソース端子、及び、スイッチング素子13-2のドレイン端子は、第1のコイル17及び第1のコンデンサ15を介して送信コイル14の一端に接続される。
【0022】
同様に、4個のスイッチング素子13-1~13-4のうち、スイッチング素子13-3とスイッチング素子13-4は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-2と並列に、かつ、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と負極側出力端子との間に直列に接続される。また、全波整流回路11の正極側に、スイッチング素子13-3が接続され、一方、全波整流回路11の負極側に、スイッチング素子13-4が接続される。そしてスイッチング素子13-3のドレイン端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の正極側出力端子と接続され、スイッチング素子13-3のソース端子は、スイッチング素子13-4のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13-4のソース端子は、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子と接続される。さらに、スイッチング素子13-3のソース端子、及び、スイッチング素子13-4のドレイン端子は、送信コイル14の他端に接続される。
【0023】
また、スイッチング素子13-1~13-4のそれぞれのゲート端子は、制御回路19と接続される。さらに、各スイッチング素子のゲート端子は、オンとなる電圧が印加されたときにそのスイッチング素子がオンとなることを保証するために、それぞれ、抵抗を介して自素子のソース端子と接続されてもよい。そして各スイッチング素子は、制御回路19からの制御信号にしたがって交互にオン/オフが切り替えられる。本実施形態では、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオンとなっている間、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオフとなり、逆に、スイッチング素子13-2とスイッチング素子13-3とがオンとなっている間、スイッチング素子13-1とスイッチング素子13-4とがオフとなるように、交互にオン/オフが切り替えられる。これにより、力率改善回路12から供給された直流電力は、各スイッチング素子のオン/オフの切替周期に相当する駆動周波数を持つ交流電力に変換されて、送信コイル14に供給される。
【0024】
なお、インバータ13は、上記の実施形態に限られない。例えば、インバータ13は、2個のスイッチング素子がハーフブリッジ状に接続されたハーフブリッジ回路として構成されてもよい。
【0025】
第1のコイル17は、第1のコンデンサ15とともにインバータ13と送信コイル14の間に直列に接続される。すなわち、第1のコイル17の一端は、インバータ13の二つの出力端子のうちの一方、すなわち、スイッチング素子13-1のソース端子とスイッチング素子13-2のドレイン端子の間に接続に接続され、第1のコイル17の他端は第1のコンデンサ15の一端と接続される。また、第1のコンデンサ15の他端は送信コイル14の一端に接続される。なお、第1のコイル17は、送信コイル14及び受電装置3が有する各コイルと電磁結合しないように配置されることが好ましい。
【0026】
さらに、第2のコンデンサ16は、その一端が第1のコイル17の他端と第1のコンデンサ15の一端との間に接続され、他端が送信コイル14の他端、及び、インバータ13の他方の出力端子、すなわち、スイッチング素子13-3のソース端子及びスイッチング素子13-4のドレイン端子に接続される。
【0027】
第1のコンデンサ15、第2のコンデンサ16及び第1のコイル17が上記のように設けられることで、送信コイル14に供給される電圧の位相に対する、送信コイル14に流れる電流の位相の遅れが、インバータ13の各スイッチング素子におけるスイッチングロスを軽減するように調整される。さらに、送信コイル14と受信コイル21間の結合度によらず、非接触給電装置1が定電圧出力動作することが可能となる。
【0028】
なお、第1のコイル17の接続位置は上記の例に限られない。第1のコイル17は、送信コイル14とインバータ13との間において、第1のコンデンサ15が接続される側とは逆側に接続されてもよい。すなわち、第1のコイル17は、送信コイル14の第1のコンデンサ15が接続される一端とは反対側の一端と、インバータ13のスイッチング素子13-3とスイッチング素子13-4との間に接続されてもよい。
【0029】
送信コイル14は、電力供給回路10のインバータ13から、第1のコイル17及び第1のコンデンサ15を介して供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の共振回路20へ伝送する。
【0030】
電流検出回路18は、インバータ13が有する複数のスイッチング素子の何れかに流れる電流を検出する。なお、電流検出回路18が電流を検出するスイッチング素子を、説明の便宜上、第1のスイッチング素子と呼ぶことがある。本実施形態では、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-2と全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続される。そして電流検出回路18は、スイッチング素子13-2がオンとなったときに、スイッチング素子13-2に流れる電流を検出し、検出した電流値を制御回路19へ出力する。すなわち、本実施形態では、スイッチング素子13-2が第1のスイッチング素子となる。なお、電流検出回路18の詳細については後述する。
【0031】
なお、電流検出回路18の接続位置は上記の例に限られない。電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-4と全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-4に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-4が第1のスイッチング素子となる。あるいは、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-1と全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-1に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-1が第1のスイッチング素子となる。同様に、電流検出回路18は、インバータ13のスイッチング素子13-3と全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続され、スイッチング素子13-3に流れる電流を検出してもよい。この場合、スイッチング素子13-3が第1のスイッチング素子となる。また、インバータ13が二つのスイッチング素子で構成されるハーフブリッジ回路である場合、電流検出回路18は、全波整流回路11の負極側に設けられるスイッチング素子と、全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続されればよい。この場合、負極側に設けられるスイッチング素子が第1のスイッチング素子となる。あるいは、電流検出回路18は、全波整流回路11の正極側に設けられるスイッチング素子と、全波整流回路11の正極側出力端子との間に接続されればよい。この場合、正極側に設けられるスイッチング素子が第1のスイッチング素子となる。
【0032】
制御回路19は、例えば、不揮発性のメモリ回路及び揮発性のメモリ回路と、演算回路と、他の回路と接続するためのインターフェース回路と、各スイッチング素子への制御信号を出力するための駆動回路とを有する。そして制御回路19は、電流検出回路18により検出された電流値に基づいて、受電装置3の共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比を推定し、推定したデューティ比に応じて、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力の電圧を制御する。なお、制御回路19によるデューティ比の推定及び電圧制御の詳細については後述する。
【0033】
さらに、制御回路19は、インバータ13から送信コイル14に供給される交流電力の周波数が所定の駆動周波数となるように、インバータ13の4個のスイッチング素子13-1~13-4のオン/オフを制御する。すなわち、制御回路19は、スイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組と、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組とが交互にオンとなり、かつ、所定の駆動周波数に対応する1周期内でスイッチング素子13-1及びスイッチング素子13-4の組がオンとなっている期間と、スイッチング素子13-2及びスイッチング素子13-3の組がオンとなっている期間とが等しくなるように、各スイッチング素子を制御する。なお、それぞれのスイッチング素子の組が同時にオンとなり、交流電源が短絡されることを防止するために、制御回路19は、それぞれのスイッチング素子の組のオン/オフを切り替える際に、全てのスイッチング素子がオフとなるデッドタイムを設けてもよい。
【0034】
次に、受電装置3について説明する。
共振回路20は、受信コイル21と共振コンデンサ22とが直列に接続されるLC共振回路である。そして共振回路20が有する受信コイル21の一端が共振コンデンサ22を介して整流平滑回路23の一方の入力端子に接続される。また、受信コイル21の他端が、整流平滑回路23の他方の入力端子に接続される。
【0035】
受信コイル21は、共振コンデンサ22とともに、送電装置2の送信コイル14に流れる交流電流と共振することで、送信コイル14から電力を受電する。そして受信コイル21は、共振コンデンサ22を介して、受電した電力を整流平滑回路23へ出力する。そのために、共振回路20の共振周波数が、送信コイル14に流れる交流電流の駆動周波数と略等しくなるように、受信コイル21のインダクタンス及び共振コンデンサ22の静電容量が設定される。なお、受信コイル21の巻き数と、送電装置2の送信コイル14の巻き数は同一でもよく、あるいは、異なっていてもよい。
【0036】
共振コンデンサ22は、受信コイル21と直列に接続される。すなわち、共振コンデンサ22は、その一端で受信コイル21の一端と接続され、他端で整流平滑回路23と接続される。そして共振コンデンサ22は、送信コイル14を流れる電流に対して受信コイル21とともに共振することで受電した電力を整流平滑回路23へ出力する。
【0037】
整流平滑回路23は、整流回路の一例であり、共振回路20と接続される、ブリッジ接続された4個のダイオードを有する全波整流回路と、全波整流回路の出力側に設けられる平滑コンデンサとを有する。そして整流平滑回路23は、共振回路20から出力された交流電力を整流し、かつ、平滑化して、直流電力に変換する。そして整流平滑回路23は、その直流電力を、負荷回路4に出力する。
【0038】
電圧検出回路24は、整流平滑回路23の出力側の両端子間の電圧、すなわち、受電装置3から負荷回路4への出力電圧を所定の周期ごとに測定する。電圧検出回路24は、例えば、直流電圧を検出できる公知の様々な電圧検出回路の何れかとすることができる。そして電圧検出回路24は、その出力電圧の測定値を表す電圧検出信号をスイッチ制御回路27へ出力する。
【0039】
共振抑制コイル25は、共振回路20の受信コイル21と電磁結合可能に設けられる。例えば、共振抑制コイル25と受信コイル21とは、同一の芯線に対して巻き付けられる。なお、受信コイル21の巻き数と共振抑制コイル25の巻き数は等しくてもよく、あるいは、異なっていてもよい。また共振抑制コイル25の両端は、それぞれ、スイッチ回路26と接続される。そして共振抑制コイル25がスイッチ回路26により短絡されると、共振抑制コイル25は受信コイル21と電磁結合し、共振回路20の共振周波数が変化する。そのため、共振回路20からの出力電圧が過度に上昇しても、共振抑制コイル25が短絡されることで、送電装置2から受電装置3へ伝送される電力が低下するので、共振回路20からの出力電圧も低下する。
【0040】
一方、スイッチ回路26が共振抑制コイル25の両端を開放すると、共振抑制コイル25は、送信コイル14と受信コイル21間の共振に関与しなくなり、送電装置2から受電装置3への電力伝送に影響しなくなる。
【0041】
スイッチ回路26は、共振抑制コイル25の両端と接続され、スイッチ制御回路27からの制御信号に応じて共振抑制コイル25を短絡するか、開放するかを切り替える。すなわち、スイッチ回路26は、スイッチ制御回路27からオンとなる制御信号を受信している間、共振抑制コイル25を短絡する。一方、スイッチ回路26は、スイッチ制御回路27からオフとなる制御信号を受信している間、共振抑制コイル25の両端を開放する。
【0042】
スイッチ回路26は、例えば、リレー回路を有する。スイッチ制御回路27がリレー回路をオンにすると共振抑制コイル25が短絡される。一方、スイッチ制御回路27がリレー回路をオフにすると共振抑制コイル25の両端が開放される。
【0043】
また、スイッチ回路26は、共振抑制コイル25の両端間に直列に接続される、二つのnチャネル型のMOSFETを有してもよい。この場合、二つのMOSFETは、互いのソース端子同士が接続され、ドレイン端子が共振抑制コイル25の両端のそれぞれと接続されるように配置される。また二つのMOSFETのゲート端子はスイッチ制御回路27と接続される。そしてスイッチ制御回路27から、オンとなる制御信号に相当する、相対的に高い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、各MOSFETのソース-ドレイン間を電流が流れることが可能となるので、共振抑制コイル25は短絡される。一方、スイッチ制御回路27から、オフとなる制御信号に相当する、相対的に低い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、各MOSFETのソース-ドレイン間を電流が流れなくなり、かつ、二つのMOSFETのボディダイオードも互いに逆向きとなっているため、それぞれのボディダイオードを通じても電流は流れない。そのため、共振抑制コイル25の両端は開放される。
【0044】
なお、二つのMOSFETは、互いのドレイン端子同士が接続され、ソース端子が共振抑制コイル25の両端のそれぞれと接続されるように配置されてもよい。この例でも、スイッチ制御回路27から、オンとなる制御信号に相当する、相対的に高い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、共振抑制コイル25は短絡される。一方、スイッチ制御回路27から、オフとなる制御信号に相当する、相対的に低い電圧が二つのMOSFETのゲート端子に印加されると、共振抑制コイル25の両端は開放される。
【0045】
スイッチ制御回路27は、所定の周期ごとに、電圧検出回路24から受け取った出力電圧の測定値に基づいて、スイッチ回路26のオン/オフを制御する。そのために、スイッチ制御回路27は、例えば、出力電圧の上限閾値及び下限閾値を記憶するメモリ回路と、出力電圧の測定値とそれら閾値とを比較するための演算回路と、スイッチ回路26のオン/オフを制御するための制御回路を有する。
【0046】
スイッチ制御回路27は、出力電圧の測定値が所定の上限閾値以上となるとスイッチ回路26をオンにして共振抑制コイル25を短絡する。これにより、スイッチ制御回路27は、共振回路20の共振周波数を変化させることで出力電圧を低下させる。一方、出力電圧の測定値が所定の下限閾値以下となると、スイッチ制御回路27は、スイッチ回路26をオフにして共振抑制コイル25を開放する。これにより、スイッチ制御回路27は、共振回路20の共振周波数を元に戻すことで出力電圧を上昇させる。このようにスイッチ回路26のオン/オフが制御されることで、共振抑制コイル25の短絡と解放とが繰り返されるとともに、出力電圧は、下限閾値と上限閾値とで規定される許容範囲に収まるように調整される。なお、上限閾値は、例えば、負荷回路4の動作に支障を生じない出力電圧の上限値に1未満の安全係数(例えば、0.9~0.97)を乗じた値に設定される。また、下限閾値は、上限閾値よりも低い値、かつ、負荷回路4の動作に支障を生じない出力電圧の下限値に1より大きい安全係数(例えば、1.03~1.1)を乗じた値に設定される。
【0047】
以下、非接触給電装置1の出力電圧特性について説明する。
【0048】
図2は、非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図2において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。また、このシミュレーションにおいて、受電装置3の共振抑制コイル25は開放され、電力伝送に影響しないものとした。そして第1のコンデンサ15の静電容量を40.0nFとし、第2のコンデンサ16の静電容量を45.6nFとした。また、第1のコイル17のインダクタンスを70.0μHとした。さらに、送信コイル14のインダクタンスを160μHとし、受信コイル21のインダクタンスを80.0μHとした。さらにまた、共振コンデンサ22の静電容量を44.8nFとした。また、送電側の巻き線抵抗値及び受電側の巻き線抵抗値を0.13Ωとした。さらにまた、インバータ13が出力し、かつ、送信コイル14に印加される交流電力の電圧Vinを310Vとした。グラフ201は、送信コイル14と受信コイル21の結合度k=0.11、負荷回路4の出力負荷抵抗値を20Ωとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ202は、結合度k=0.11、負荷回路4の出力負荷抵抗値を2kΩとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ203は、結合度k=0.22、負荷回路4の出力負荷抵抗値を20Ωとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ204は、結合度k=0.22、負荷回路4の出力負荷抵抗値を2kΩとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。グラフ201~グラフ204に示されるように、受電装置3の共振回路20の共振周波数f1(=84.6kHz)において、負荷回路4の出力負荷抵抗値が変化しても、出力電圧が一定に保たれていることが分かる。さらに、結合度kが変化しても、共振周波数f1において、出力電圧の周波数特性は極大値を有し、かつ、他の極値となる周波数よりも、周波数変動に対する出力電圧の変動が緩やかとなっていることが分かる。そのため、インバータ13の駆動周波数を共振回路20の共振周波数f1を含む所定の周波数範囲(例えば、0.97*f1~1.03*f1の範囲)内の周波数に設定することで、非接触給電装置1は、定電圧出力動作することができる。また、電力伝送中において送信コイル14と受信コイル21間の相対的な位置関係が変動してそれらコイル間の結合度が変化しても、非接触給電装置1は、駆動周波数を上記の所定の周波数範囲内の周波数に設定することで、電力伝送効率をある程度維持することができる。さらに、送信コイル14と受信コイル21間の結合度が変化しても、非接触給電装置1は、駆動周波数を変更することなく、送信コイル14に供給される交流電力の電圧を調整するだけで出力電圧を一定の範囲に維持することができる。
【0049】
次に、制御回路19による、共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比の推定及び電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力の電圧制御の詳細について説明する。そのために、先ず、共振抑制コイル25の短絡及び開放と、電力の損失の関係について説明する。
【0050】
図3は、出力電圧と、共振抑制コイル25の短絡及び開放と、送信コイル14に供給される交流電力の電圧(以下、入力電圧と呼ぶことがある)と、スイッチ回路26に流れる電流の関係の一例を示す図である。
図3において、横軸は時間を表す。また、波形301及び波形302は、それぞれ、出力電圧の時間変化と、共振抑制コイル25の短絡及び開放の状態の時間変化を表す。さらに、波形303は、入力電圧の時間変化を表し、波形304は、スイッチ回路26に流れる電流の時間変化を表す。
【0051】
波形301~波形303に示されるように、入力電圧が低下するほど、出力電圧が下限閾値ThLから上限閾値ThUまで上昇するのに要する時間、すなわち、共振抑制コイル25が開放されているオフ期間Toffは長くなる。また、負荷回路4の負荷が一定であれば、出力電圧が上限閾値ThUから下限閾値ThLまで低下するのに要する時間、すなわち、共振抑制コイル25が短絡されているオン期間Tonは一定である。したがって、入力電圧が低下するほど、繰返し周期T(=Toff+Ton)は長くなり、その結果として、共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比D(=Ton/T)も小さくなる。そして波形304に示されるように、デューティ比Dが小さいほど、繰返し周期T中においてスイッチ回路26に電流が流れる期間の比も短くなる。さらに、入力電圧の低下に伴って、スイッチ回路26に流れる電流値も小さくなる。したがって、入力電圧が低下するほど、共振抑制コイル25が短絡されている間に共振抑制コイル25及びスイッチ回路26に流れる電流による損失が軽減される。このことから、デューティ比Dが小さくなるように入力電圧が制御されることが好ましい。ただし、入力電圧を低下させ過ぎると、出力電圧が下限閾値ThLを超えることができなくなり、負荷回路4の動作に支障が生じるおそれがある。さらに、繰返し周期Tが長くなり過ぎると、送信コイル14と受信コイル21間の位置関係に変動が生じたときに入力電圧を適切に追従させることが困難となる。そこで、デューティ比Dはある程度以上の大きさを有するように入力電圧は制御されることが好ましい。
【0052】
さらに、制御回路19は、オフ期間Toffの長さが一定の長さ以下となるように入力電圧Vinを制御することが好ましい。これにより、電力伝送中に送信コイル14と受信コイル21間の位置関係に変動が生じるといった理由により出力電圧が許容範囲から外れた状態となっても、そのような状態が継続する時間が過度に長くなることが防止される。
【0053】
図4は、共振抑制コイル25が短絡されているときの、インバータ13のスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
図4において、横軸は時間を表し、縦軸は電流値を表す。そして波形400は、スイッチング素子に流れる電流の時間変化を表す。
【0054】
本実施形態では、送電装置2は、電力供給回路10と送信コイル14との間に、第1のコイル17、第1のコンデンサ15及び第2のコンデンサ16が設けられることで、波形400は、電流波形の繰返し周期中に2回の極点を有するものとなっている。その結果として、電流波形の波高値を低くすることが可能となり、送電側での電力損失が軽減される。
【0055】
以上により、制御回路19は、デューティ比Dに基づいて電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の入力電圧を制御することで、出力電圧を一定の範囲に保つことができるとともに、電力の損失を軽減することができる。
【0056】
次に、デューティ比Dの推定について説明する。
【0057】
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、共振抑制コイル25が短絡されているときにインバータ13のスイッチング素子に流れる電流の波形、及び、共振抑制コイル25が開放されているときにインバータ13のスイッチング素子に流れる電流の波形の一例を示す図である。
図5(a)及び
図5(b)において、横軸は時間を表し、縦軸は電流値を表す。また、
図5(a)に示される波形501は、共振抑制コイル25が短絡されているときのインバータ13のスイッチング素子13-2(この例では、第1のスイッチング素子に相当)に流れる電流の波形を表し、
図5(b)に示される波形502は、共振抑制コイル25が開放されているときの第1のスイッチング素子に流れる電流の波形を表す。なお、波形501及び波形502は、第1のスイッチング素子がオンにされている期間の波形、すなわち、インバータ13の駆動周波数に相当する期間の半分に相当する波形である。
【0058】
共振抑制コイル25が短絡されている間、送電装置2から受電装置3への電力伝送は停止されている。そのため、受電側で消費される電力はほぼ0になる。したがって、送電側における有効電力もほぼ0になる。その結果として、波形501に示されるように、共振抑制コイル25が短絡されている間、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値はほぼ0になる。
【0059】
これに対して、共振抑制コイル25が開放されることで送電装置2から受電装置3への電力伝送が行われていると、受電側で電力が消費されることになる。したがって、送電側における有効電力も増加する。その結果として、波形502に示されるように、共振抑制コイル25が開放されることで電力伝送が行われている間、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値は正の値を有することになる。
【0060】
このことから、制御回路19は、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値が所定の閾値未満となっている期間を、共振抑制コイル25が短絡されているオン期間Tonとして計時する。さらに、制御回路19は、第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値がその所定の閾値以上となっている期間を、共振抑制コイル25が開放されているオフ期間Toffとして計時する。そして制御回路19は、計時したオフ期間Tonとオフ期間Toffとに基づいて、共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比D(=Ton/(Ton+Toff))を推定すればよい。
【0061】
図6は、電流検出回路18の回路図である。電流検出回路18は、4個の抵抗R1~R4と、コンデンサC1と、オペアンプAMPとを有する。抵抗R1は、インバータ13のスイッチング素子13-2と、力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子との間に接続される。また、抵抗R2は、抵抗R1とスイッチング素子13-2の間にその一端が接続され、他端がオペアンプAMPの正極側入力端子に接続される。さらに、コンデンサC1は、その一端が抵抗R2の他端とオペアンプAMPの正極側入力端子との間に接続され、他端が力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子に接続される。さらに、抵抗R3は、その一端がオペアンプAMPの負極側入力端子に接続され、他端が力率改善回路12を介して全波整流回路11の負極側出力端子に接続される。さらにまた、抵抗R4は、抵抗R3の一端とオペアンプAMPの負極側入力端子との間に接続され、他端がオペアンプAMPの出力側端子に接続される。そしてオペアンプAMPの出力側端子は、制御回路19に接続される。
【0062】
スイッチング素子13-2がオンとなっている間、送信コイル14に流れる電流は抵抗R1により電圧に変換される。そして変換された電圧は、抵抗R2及びコンデンサC1により構成される積分回路により、高周波がフィルタリングされ、かつ、所定のサンプリング期間にわたって積分された値となってオペアンプAMPの正極側入力端子に入力される。オペアンプAMP、抵抗R3及び抵抗R4は、非反転増幅回路を構成し、抵抗R3と抵抗R4とに応じた増幅率で入力された電圧を増幅する。そしてオペアンプAMPの出力側端子から、入力された電圧を増幅して得られた電圧が制御回路19へ出力される。このように、電流検出回路18は、送信コイル14に流れる電流に応じた電圧値を出力する。したがって、電流検出回路18から出力された電圧値のサンプリング期間にわたる平均値は、そのサンプリング期間にわたる、送信コイル14に流れる電流の平均値に対応する。なお、サンプリング期間は、インバータ13の駆動周波数に相当する周期の半分以上の長さを持つように設定される。さらに、サンプリング期間は、共振抑制コイル25の繰返し周期よりも十分に短い期間、例えば、想定される繰返し周期の最小値の1/100~1/1000以下の長さに設定されることが好ましい。制御回路19は、個々のサンプリング期間について、そのサンプリング期間における、電流検出回路18から出力された電圧値の平均値をもとめる。そして制御回路19は、その平均値が所定の閾値以上であるサンプリング期間について、共振抑制コイル25が開放されていると推定し、一方、その平均値が所定の閾値未満であるサンプリング期間について、共振抑制コイル25が短絡されていると推定すればよい。制御回路19は、共振抑制コイル25が開放されていると推定したサンプリング期間が連続する期間をオフ期間とし、共振抑制コイル25が短絡されていると推定したサンプリング期間が連続する期間をオン期間とすればよい。これにより、制御回路19は、オン期間Ton及びオフ期間Toffを精度良く計測することが可能となり、その結果として、共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比を精度良く推定することが可能となる。
【0063】
図7は、制御回路19による入力電圧の制御の動作フローチャートである。制御回路19は、下記の動作フローチャートに従って電力供給回路10を制御すればよい。
【0064】
制御回路19は、電流検出回路18により検出された、インバータ13の第1のスイッチング素子を流れる電流に基づいて共振抑制コイル25が開放されているオフ期間Toff及び共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比Dを推定する(ステップS101)。そして制御回路19は、推定した共振抑制コイル25が開放されているオフ期間Toffの長さが所定の閾値Th(例えば、1sec)よりも長いか否か判定する(ステップS102)。オフ期間Toffの長さが閾値Thよりも長い場合(ステップS102-Yes)、制御回路19は、入力電圧Vinを上昇させるように電力供給回路10を制御する(ステップS103)。本実施形態では、制御回路19は、力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比を大きくする。これにより、オフ期間Toffが短くなること、及び、オフ期間Toffの短縮によりデューティ比Dは大きくなることが予想される。そして制御回路19は、所定時間(例えば、1秒~数秒)経過後にステップS101以降の処理を繰り返す。
【0065】
一方、オフ期間Toffの長さが閾値Th以下である場合(ステップS102-No)、制御回路19は、推定した共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比Dが予め設定された許容上限値以下か否か判定する(ステップS104)。上記のように、デューティ比Dは小さい方が好ましいので、デューティ比Dに対する許容上限値は、0.3以下、好ましくは、0.2もしくは0.15に設定されることが好ましい。
【0066】
デューティ比Dが許容上限値以下である場合(ステップS104-Yes)、制御回路19は、力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比を変更しない。すなわち、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力の入力電圧Vinはそのまま維持される。そして制御回路19は、所定時間経過後にステップS101以降の処理を繰り返す。一方、デューティ比Dが許容上限値よりも大きい場合(ステップS104-No)、制御回路19は、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力の入力電圧Vinを低下させるように電力供給回路10を制御する(ステップS105)。本実施形態では、制御回路19は、力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比を小さくする。これにより、オフ期間Toffが長くなることでデューティ比Dは小さくなることが予想される。そして制御回路19は、所定時間経過後にステップS101以降の処理を繰り返す。
【0067】
なお、入力電圧Vinを電力供給回路10から供給可能な交流電力の電圧の最大値に設定しても、電流検出回路18により検出された電流の平均値が略0となる期間が所定時間以上継続する場合、受電装置3は、送電装置2からの電力を受電しない位置へ移動したと想定される。そこで制御回路19は、入力電圧Vinを所定の待機電圧値まで低下させてもよい。なお、待機電圧値は、通常の電力伝送時における入力電圧よりも低い値に設定される。
【0068】
以上に説明してきたように、この非接触給電装置では、受電装置において共振回路の共振を抑制するための共振抑制コイルが設けられ、その共振抑制コイルの短絡及び開放を切り替えることで、電力伝送中に送電側のコイルと受電側のコイル間の結合度が変動しても、出力電圧を一定の範囲内に保つことができる。さらに、この非接触給電装置は、送電用のコイルに交流電力を供給するインバータが有する何れかのスイッチング素子に流れる電流に基づいて共振抑制コイルの短絡に関するデューティ比を送信コイルに流れる電流に基づいて推定する。そしてこの非接触給電装置は、推定したデューティ比に基づいて、送電用のコイルに供給される交流電力の入力電圧を制御することで、共振抑制コイルが短絡されているときの電力損失を軽減することができる。その結果として、この非接触給電装置は、送電装置と受電装置間の通信を利用せずに、電力伝送効率を向上することができる。
【0069】
なお、負荷回路4の負荷が軽減されると、共振抑制コイル25が短絡されたときの出力電圧の低下が緩やかとなり、オン期間Tonが長くなる。その結果として、スイッチ回路26に電流が流れる期間が長くなり、スイッチ回路26の発熱量が過度に増大してしまう可能性がある。
【0070】
そこで変形例によれば、制御回路19は、計時したオン期間が所定の許容上限長よりも長い場合、電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の入力電圧が所定の待機電圧値まで低下するように、電力供給回路10の力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比を制御してもよい。
【0071】
制御回路19は、入力電圧を待機電圧値まで低下させた後、計時したオン期間が所定の許容上限長以下にまで短くなると、再度
図7に示される動作フローチャートに従って電力供給回路10及び入力電圧を制御すればよい。
【0072】
また、計時したオン期間が所定の許容上限長よりも長い場合、制御回路19は、オフ期間Toffの長さが一定長以下という制限を解除して、入力電圧Vinを低下させるよう、電力供給回路10を制御してもよい。すなわち、制御回路19は、計時したオン期間が所定の許容上限長以下になるまで、入力電圧Vinを低下させてもよい。
【0073】
この変形例によれば、非接触給電装置は、スイッチ回路26の発熱を抑制できるので、負荷回路4の負荷が軽減しても安全に電力伝送を継続することができる。
【0074】
また、送信コイル14と受信コイル21の電力伝送に影響される、導電性を有する異物(例えば、金属製の小片)が存在する場合、共振抑制コイル25が短絡されていても、その異物により電力が消費されることになる。そのため、オン期間においても、インバータ13の各スイッチング素子を流れる電流による有効電力が増加することになる。そこで他の変形例によれば、制御回路19は、オン期間に含まれる各サンプリング期間についての電流検出回路18から出力された電圧の平均値を所定の検出閾値と比較する。この電圧の平均値は、オン期間においてインバータ13の第1のスイッチング素子に流れる電流の平均値に相当する。検出閾値は、オン期間/オフ期間の判定に利用される上記の閾値よりも小さい値に設定される。そしてその電圧の平均値が検出閾値よりも大きい場合、制御回路19は、異物が存在すると判定し、インバータ13の各スイッチング素子をオフに保つことで電力供給回路10から送信コイル14への電力供給を停止する。さらに、制御回路19は、他の機器(図示せず)へ、異物が検出されたことを示す異常信号を通知してもよい。この変形例によれば、制御回路19は、電力伝送に影響される異物を精度良く検出できるとともに、その異物により非接触給電装置に異常が生じることを防止できる。なお、検出閾値は、電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の入力電圧が高くなるほど、大きい値に設定されることが好ましい。そのために、例えば、力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比と第2の閾値との関係を表す参照テーブルが、制御回路19が有するメモリに予め記憶される。そして制御回路19は、その参照テーブルと、力率改善回路12のスイッチング素子のデューティ比とを参照することで、第2の閾値を決定すればよい。これにより、制御回路19は、異物の検出精度をより向上することができる。
【0075】
また、受電装置3の共振回路20は、受信コイル21と共振コンデンサ22とが並列共振するように互いに並列に接続されてもよい。さらに、受電装置3において、共振回路20と整流平滑回路23の間に、受信コイル21と直列に接続される別のコイルが設けられてもよい。また、電力伝送中において、送電装置2と受電装置3間の位置関係の変動が無視できる程度の場合には、送電装置2において、第1のコイル17及び第2のコンデンサ16は省略されてもよい。
【0076】
さらに、送電装置2の電力供給回路10は、力率改善回路12の代わりに、昇降圧比が可変なDC-DCコンバータを有していてもよい。また、DC-DCコンバータに、直流電力が直接入力されてもよい。そして制御回路19は、上記の実施形態と同様に、共振抑制コイル25の短絡に関するデューティ比に応じてDC-DCコンバータの昇降圧比を制御することで、電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の入力電圧を制御してもよい。
【0077】
上記の実施形態または変形例による非接触給電装置は、Automatic Guided Vehicle(AGV)といった移動体への電力供給において好適に利用される。
【0078】
図8は、上記の実施形態または変形例による非接触給電装置が移動体の電力供給システムとして利用される場合の概要図である。受電装置3は、移動体800に搭載される。一方、送電装置2は、移動体800の移動経路に沿って配置される。例えば、送信コイル14は、移動体800の移動経路810上の床面に設置される。なお、送信コイル14は、移動体800が一時停止する位置、あるいは、移動体800の移動速度が所定速度以下となる位置に設けられることが好ましい。一方、受信コイル21は、移動体の下部において床面と対向するように搭載される。送電装置2は一つに限られず、複数の送電装置2が、移動経路810上の互いに異なる位置に設置されてもよい。
図8に示される例では、3個の送電装置2が図示されており、各送電装置2の送信コイル14は、移動経路810の延伸方向に沿って一列に並べられている。なお、複数の送電装置2が設置される場合、各送電装置2の送信コイル14は、移動経路810の延伸方向と直交する方向に並べられてもよく、格子状あるいは千鳥足状に並べられてもよい。
【0079】
移動体800が何れかの送電装置2の送信コイル14が設けられた位置を通過する際に、送信コイル14と受信コイル21とが電磁結合可能となり、送電装置2から受電装置3へ電力伝送される。そして受電装置3にて受電された電力は、移動体800に搭載された各種の機器を動作させるため、あるいは、移動体800自体を動作させるために利用される。その際、制御回路19は、上記の実施形態または変形例にしたがって電力供給回路10から送信コイル14へ供給される交流電力の入力電圧を制御すればよい。これにより、電力伝送中において移動体800が移動していても、送電装置2は、高い電力伝送効率にて移動体800に搭載された受電装置3へ電力を伝送することができる。
【0080】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 非接触給電装置
2 送電装置
10 電力供給回路
11 全波整流回路
12 力率改善回路
13 インバータ
13-1~13-4 スイッチング素子
14 送信コイル
15 第1のコンデンサ
16 第2のコンデンサ
17 第1のコイル
18 電流検出回路
19 制御回路
3 受電装置
20 共振回路
21 受信コイル
22 共振コンデンサ
23 整流平滑回路
24 電圧検出回路
25 共振抑制コイル
26 スイッチ回路
27 スイッチ制御回路
4 負荷回路
800 移動体