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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127582
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】物体監視システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/42 20060101AFI20240912BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240912BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20240912BHJP
   B61L 23/00 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S7/497
B61B1/02
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036825
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】石川 智之
(72)【発明者】
【氏名】池本 善行
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 宏明
【テーマコード(参考)】
3D101
5H161
5J084
【Fターム(参考)】
3D101AA03
3D101AA05
3D101AA12
3D101AA26
3D101AB13
3D101AB15
3D101AB18
5H161AA01
5H161MM01
5H161MM15
5H161NN12
5J084AA02
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB07
5J084AC07
5J084BA03
5J084BB28
(57)【要約】
【課題】走査させた光の反射光を測定して空間内の監視領域における物体の有無を監視するセンサの正確性を確認する。
【解決手段】測定結果取得部111は、センサ2から空間Sの測定結果を取得する。生成部112は、測定結果に基づいて距離画像を生成する。区画部113は、領域座標DB121を参照し、距離画像から、監視領域Rに由来する部分と、試験領域Tに由来する部分とを区画する。物理量取得部114は、空間Sにおける所定の物理量の情報を観測装置6から取得する。判定部115は、条件表122を参照して、取得した物理量に応じた条件を読み出し、試験領域Tに由来する部分の測定結果と比較して、この測定結果がこの条件を満たすか否かを判定する。監視部116は、試験領域Tに由来する部分の測定結果が読み出された条件を満たす、と判定した場合にのみ、監視領域Rに由来する部分を監視する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に光を走査させて反射光を測定することにより該空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部を有し、前記監視部は、前記空間内の、前記監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に前記物体の有無を監視する物体監視システム。
【請求項2】
前記測定結果は、前記反射光が示す前記試験領域までの距離、及び該反射光の光量の少なくとも一方を含む
請求項1に記載の物体監視システム。
【請求項3】
前記空間における所定の物理量を観測する観測部を有し、
前記条件は、前記観測部が観測した前記物理量に応じて変化する
請求項1に記載の物体監視システム。
【請求項4】
空間に光を走査させて反射光を測定するセンサに接続されたコンピュータを、
前記センサの測定結果により前記空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部として機能させるとともに、
前記監視部が、前記空間内の、前記監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に前記物体の有無を監視するように、前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体監視システムにおいてセンサが異常のまま監視を継続することを回避するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ある空間に人、物等を通過させる必要があるとき、その空間に物体が存在していると、それら物等の通過の妨げとなる。そこで、その空間を監視し物体(支障物ともいう)が有るか否かを確認する物体監視システムが利用される。例えば、自動運転自動車は、物体監視システムによって進行方向に歩行者等が居ないかを確認する。また、駅のホームドア装置は、ホームドアを開けて通路を開放する際に、物体監視システムによってその通路に支障物が有るか否かを確認する。この物体監視システムには、例えば、3D距離画像センサが用いられる。
【0003】
3D距離画像センサは、測定対象となる空間に向けて例えば、近赤外パルスレーザ等の光(電磁波)を走査照射して反射光を測定することにより2次元画像に距離情報を付加した距離画像を取得するセンサである。3D距離画像センサをホームドア装置の制御に利用する各種の技術が開発されている。
【0004】
特許文献1は、3D距離画像センサを用いて特定エリアに支障物等の測定対象物が存在するか判定し、引戸開閉装置の開閉を制御する技術を開示している。
特許文献2は、人感センサ、3次元センサ等で人の動き状況を監視し、当該動き状況に応じて、ホーム縁に沿って架け渡された少なくとも1本のロープの張力を適正値に調整することを特徴とするロープ式ホーム安全柵を開示している。
特許文献3は、検出範囲が空間である3次元センサであって、開閉方向に移動する引戸により開閉される出入口の支障物を検出する支障物検出部と、引戸の位置に応じて支障物検出部の開閉方向における検出範囲を設定する制御部とを備える支障物検出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-196962号公報
【特許文献2】特許第6460394号
【特許文献3】特許第6629044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、3D距離画像センサは、受光素子、光学系等の精密機器を有しており、経年により受光感度、及び照射パワー等が低下することがある。また、3D距離画像センサは、ホームドア周りの乗客保全に適用する場合、列車が通過する軌道付近に設置・固定する必要があり、振動に晒されやすいため、経年により取り付け位置がずれることもある。
【0007】
そして、こういった故障・不具合が生じても、3D距離画像センサは、そのまま稼働してしまうことがある。このような故障等が生じていると、3D距離画像センサが測定した対象物までの距離の情報は信用できない。特にホームドアの制御においては乗客の安全を担保しなければならないから、3D距離画像センサを利用する場合に、得られた距離画像が誤っていないことを確認する手段が求められている。
【0008】
本発明の目的の一つは、走査させた光の反射光を測定して空間内の監視領域における物体の有無を監視するセンサの正確性を確認することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、空間に光を走査させて反射光を測定することにより該空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部を有し、前記監視部は、前記空間内の、前記監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に前記物体の有無を監視する物体監視システム、を第1の態様として提供する。第1の態様の物体監視システムによれば、走査させた光の反射光を測定して空間内の監視領域における物体の有無を監視するセンサの正確性を確認することができる。
【0010】
第1の態様の物体監視システムにおいて、前記測定結果は、前記反射光が示す前記試験領域までの距離、及び該反射光の光量の少なくとも一方を含む、という構成が第2の態様として採用されてもよい。第2の態様の物体監視システムによれば、試験領域までの距離、及び反射光の光量の少なくとも一方に基づいてセンサの正確性を確認することができる。
【0011】
第1の態様の物体監視システムにおいて、前記空間における所定の物理量を観測する観測部を有し、前記条件は、前記観測部が観測した前記物理量に応じて変化する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。第3の態様の物体監視システムによれば、センサの異常を判定する条件が、空間における所定の物理量に応じて変化する場合にも、その変化に対応して異常があるか否かを確認することができる。
【0012】
本発明は、空間に光を走査させて反射光を測定するセンサに接続されたコンピュータを、前記センサの測定結果により前記空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部として機能させるとともに、前記監視部が、前記空間内の、前記監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に前記物体の有無を監視するように、前記コンピュータを機能させるためのプログラム、を第4の態様として提供する。第4の態様のプログラムによれば、走査させた光の反射光を測定して空間内の監視領域における物体の有無を監視するセンサの正確性を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る物体監視システム9の全体構成の例を示す図。
図2】物体監視システム9の各構成が備える要素の例を示すブロック図。
図3】領域座標DB121の例を示す図。
図4】条件表122の例を示す図。
図5】制御装置1の機能的構成の例を示す図。
図6】制御装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
<物体監視システムの全体構成>
以下に示す図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。図1は、本発明の実施形態に係る物体監視システム9の全体構成の例を示す図である。図2は、物体監視システム9の各構成が備える要素の例を示すブロック図である。この物体監視システム9は、ホームドアが開閉する通路を含む領域に物体があるか否かを監視するシステムである。
【0015】
この物体監視システム9は、制御装置1、センサ2、ホームドア装置3、通信回線4、及びサーバ装置5を有する。また、図1に示すこの物体監視システム9は、さらに観測装置6を有する。
【0016】
図1に示すホームHは、いわゆる鉄道駅のプラットホームである。ホームHは、y軸に沿って伸びる軌道に面した縁端部としてホーム縁Eを有する。このホーム縁Eより+x側がホームHであり、-x側が軌道である。
【0017】
ホームドア装置3は、ホームHの上でホーム縁Eに沿って設置される。ホームドア装置3は、筐体31及びドア32を有する。図1に示すドア32は、左右一組で設けられる。一組のドア32は、それぞれがy軸に沿って移動することで開閉する。
【0018】
図1に示す筐体31は、左右一組で設けられる。一組の筐体31は、左右のドア32をそれぞれ収容する箱状の部材であり、ドア32をy軸方向に沿って移動させる図示しない駆動装置等を内蔵する。
【0019】
図1に示すセンサ2は、ホームH上の空間のうちドア32よりも軌道側、つまり-x方向の少なくとも一部の空間Sを監視するセンサである。例えば、図2に示すセンサ2は、走査部21、及び測定部22を有する。
【0020】
走査部21は、例えば、レーザスキャナであり、上記の空間Sに近赤外光等の光を発生させ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を用いて走査照射する。空間Sに物体が存在する場合、走査照射された光はその物体に反射し反射光がセンサ2に戻る。
【0021】
測定部22は、受光素子を有し、この受光素子によって戻ってきた反射光を受光することで空間Sに存在する物体を測定する。受光素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等である。
【0022】
上記の空間Sは、監視領域Rを有する。監視領域Rは、一組のドア32によって開閉される通路に重なる領域である。この監視領域Rに支障物が存在したままドア32を閉鎖すると、その支障物とドア32とが衝突し、人損・物損を惹き起こすことがある。そこで、物体監視システム9は、センサ2が正常で、かつ、監視領域Rに物体を検知している場合に、ドア32を開放させたままにする。
【0023】
一方、空間Sは、監視領域Rと異なる領域も含んでおり、その中には試験領域Tが含まれる。例えば、図1に示す試験領域Tは、監視領域Rの手前側、すなわち-y方向であって、ホーム縁Eから筐体31までの間のホームH上の領域である。センサ2は、この試験領域Tに対しても光を走査照射して、その反射光を測定する。
【0024】
観測装置6は、空間Sの状態を示す物理量を観測する装置である。すなわち、この観測装置6は、空間における所定の物理量を観測する観測部の例である。以下の説明において、観測装置6は照度計である。つまり、観測装置6が観測する物理量は空間Sの照度である。
【0025】
なお、物理量は、照度に限らず温度、湿度等でもよい。また、観測装置6は、これらの物理量を一つだけ観測してもよいが、複数の物理量をそれぞれ観測してもよい。
【0026】
制御装置1は、ホームドア装置3を制御する装置であり、例えばコンピュータである。この制御装置1は、例えば、駅の中央監視室等に設置される。なお、制御装置1は、物体監視システム9の他の構成と別体であってもよいが、他の構成に含まれてもよい。例えば、制御装置1は、センサ2、又はホームドア装置3に内蔵されたコンピュータであってもよい。
【0027】
制御装置1は、センサ2に接続されている。この制御装置1は、センサ2から空間Sを三次元空間における点群で表した測定結果(点群データともいう)を取得し、この測定結果から空間Sにおける距離画像を生成する。この距離画像は、センサ2から空間Sに存在する物体までの距離と方向とを対応付けた点群データを二次元画像にしたものである。
【0028】
ここで点群データのうち方向の情報は、走査部21の走査照射のタイミングにより決まる。点群データにおける方向の情報は、この点群データから生成された距離画像において、画素の座標に反映される。
【0029】
また、点群データのうち距離の情報は、例えば、ToF(Time of Flight)方式を用いて特定される。ToF方式は、走査照射された光が反射光として戻るまでの時間に基づいて物体までの距離を特定する方式である。つまり、制御装置1は、センサ2の走査部21によって走査照射された光が物体に当たり、反射光としてセンサ2の測定部22に測定されるまでの時間を用いてその物体までの距離を測定する。
【0030】
なお、点群データは、距離、方向に加えて、さらに反射光の光量の情報を有してもよい。ここでは、点群データから生成される距離画像には、画素ごとに、光が照射された方向、その方向に存在する物体までの距離、及びその物体で反射した反射光の光量(光の強さ)の情報が対応付けられる。
【0031】
そして、制御装置1は、生成した距離画像に基づいて、空間Sのうち、監視領域Rに物体が有るか否かを判断(監視)する。ただし、制御装置1は、試験領域Tについて測定された測定結果が所定の条件を満たさない場合、センサ2に異常が発生したと判断し、監視領域Rの監視を中止する。
【0032】
また、図1に示す制御装置1は、観測装置6に接続されている。この制御装置1は、観測装置6が観測した空間Sにおける所定の物理量を取得し、この物理量に基づいて、上述した所定の条件を決定する。つまり、制御装置1がセンサ2に異常が発生したか否かを判断する際に、試験領域Tの測定結果と照合する上記の条件は、観測部が観測した物理量に応じて変化する条件の例である。
【0033】
制御装置1は、通信回線4を経由してサーバ装置5と接続している。通信回線4は、無線又は有線により制御装置1とサーバ装置5とを通信可能に接続する回線である。通信回線4は、例えばLAN(Local Area Network)のほか、WAN(Wide Area Network)であってもよいし、イントラネット、インターネットであってもよいし、これらの組合せであってもよい。また、通信回線4は、公衆交換通信網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)、サービス統合デジタル網(ISDN:Integrated Services Digital Network)等を含むものでもよい。
【0034】
サーバ装置5は、一以上の駅にそれぞれ備えられた制御装置1と通信回線4経由で接続し、これら制御装置1と情報のやり取りをする情報処理装置である。サーバ装置5は、例えば、制御装置1からそれぞれデータを収集して各駅におけるホームドア装置3の状況を把握し、それぞれの制御装置1に向けて指示を出す。
【0035】
<制御装置の構成>
図2に示す制御装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信部13、操作部14、及び表示部15を有する。これらは、バスにより相互に通信可能に接続されている。
【0036】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、制御装置プログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。また、図2に示すメモリ12は、領域座標DB121、及び条件表122を記憶する。
【0037】
プロセッサ11は、メモリ12からプログラムを読出して実行することにより制御装置1を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、プロセッサ11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0038】
通信部13は、有線又は無線により制御装置1を外部装置等に接続する通信回路である。この通信部13は、センサ2、ホームドア装置3、及び観測装置6と直接接続する。また、この通信部13は、上述した通信回線4を経由してサーバ装置5と接続する。
【0039】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。
【0040】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0041】
なお、制御装置1は、操作部14及び表示部15を有しなくてもよい。制御装置1は、通信部13を介して外部の装置から操作され、又は外部の装置に情報を提示してもよい。制御装置1は、通信部13を介して例えば、サーバ装置5から制御信号を受取り、これによって制御されてもよい。
【0042】
<領域座標DBの構成>
図3は、領域座標DB121の例を示す図である。領域座標DB121は、空間Sのうちの監視領域Rと試験領域Tとを区画するためのデータを記述したデータベースである。
【0043】
領域座標DB121は、領域種別、及び座標の項目を対応付けて記憶する。領域種別の項目は、対象とする領域の種別が、監視領域であるか、試験領域であるかを識別するための識別情報が記述された項目である。座標の項目は、対象とする領域種別で識別される領域を示す座標が記述された項目である。
【0044】
例えば、図3に示す領域座標DB121において、監視領域Rは、(x1,y1,z1)-(x2,y2,z2)である。これは例えば、監視領域Rが、三次元座標で示される点(x1,y1,z1)と点(x2,y2,z2)とをそれぞれ端点とする対角線を有した直方体であることを示す。
【0045】
<条件表の構成>
図4は、条件表122の例を示す図である。条件表122は、観測装置6が観測した空間Sの物理量と、その物理量が観測された場合にセンサ2の異常の判定に用いる条件と、を対応付ける表である。
【0046】
図4に示す条件表122は、照度レベルと反射光条件とを対応付ける。この条件表122における照度レベルは、観測装置6が空間Sで観測した照度の程度であり、例えばL0、L1、L2、…等に等級分けされている。反射光条件は、対応する照度レベルのときにセンサ2が試験領域Tからの反射光を測定したときの測定結果が異常であるか否かを判断する閾値等の条件である。
【0047】
ここで反射光条件は、例えば、座標情報、物体までの距離、及び物体で反射した反射光の光量値についての条件である。座標情報は、センサ2の測定結果から生成される距離画像における座標である。座標情報は、光の走査照射の方向、及びその反射光の入射方向に対応する。光量値は、測定された反射光の強さである。
【0048】
例えば、試験領域Tには、決められた範囲の反射率で光を反射させる物体で構成された試験パターン(固定物体ともいう)が印刷されている。しかし、センサ2がこの試験パターンに光を照射すると、周囲の照度レベルに応じて反射率が変化することがある。
【0049】
そこで、条件表122は、照射レベルに応じた反射光条件を定める。これにより制御装置1は、周囲の照度レベルの高低に影響されずに、反射光の光量に基づいて測定結果が異常であるか否かを判断する。
【0050】
<制御装置の機能的構成>
図5は、制御装置1の機能的構成の例を示す図である。制御装置1のプロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、測定結果取得部111、生成部112、区画部113、物理量取得部114、判定部115、監視部116、及び指示部117として機能する。なお、図5において、通信部13、操作部14、及び表示部15は図示されていない。
【0051】
測定結果取得部111は、センサ2から空間S全体の測定結果を取得する。この測定結果は、光の照射方向に対応した座標情報、その方向に存在する物体までの距離、及びその物体で反射した反射光の光量値の情報を含んでいる。つまり、この測定結果は、反射光が示す試験領域までの距離、及びこの反射光の光量の少なくとも一方を含む測定結果の例である。
【0052】
生成部112は、測定結果取得部111が取得した測定結果に基づいて距離画像を生成する。
【0053】
区画部113は、領域座標DB121を参照し、生成部112が生成した距離画像から、監視領域Rに由来する部分と、試験領域Tに由来する部分とを区画してそれぞれ抽出する。
【0054】
物理量取得部114は、観測装置6が観測した空間Sにおける所定の物理量(ここでは照度)の情報を取得する。物理量取得部114が取得した物理量は、判定部115に伝えられる。
【0055】
判定部115は、条件表122を参照して、物理量取得部114が取得した物理量に応じた条件(反射光条件)を読み出し、この条件と区画部113により区画、抽出された試験領域Tに由来する部分の測定結果とを比較する。そして、この測定結果がこの条件を満たすか否かを判定する。
【0056】
監視部116は、距離画像から区画部113により区画、抽出された監視領域Rに由来する部分に基づいて、空間S内の監視領域Rに物体が有るか否かを判断する。すなわち、この監視部116は、空間に光を走査させて反射光を測定することによりこの空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部の例である。
【0057】
ただし、監視部116は、試験領域Tに由来する部分の測定結果が上述した条件を満たす、と判定部115が判定した場合にのみ、上述した監視領域Rに由来する部分を監視する。すなわち、この監視部116は、空間内の、監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に物体の有無を監視する監視部の例である。
【0058】
指示部117は、監視部116が監視領域Rに物体が存在していることを見つけた場合に、ホームドア装置3にドア32の開放状態を維持するよう指示を出す。なお、試験領域Tに由来する部分の測定結果が上述した条件を満たさない、と判定部115が判定した場合、指示部117は、ドア32に対してセンサ2の測定結果によるドア制御の中止を指示する。そして、指示部117は、この場合、通信回線4を経由してサーバ装置5に異常を通知する。
【0059】
<表示装置の動作>
図6は、制御装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。図6に示す通り、制御装置1のプロセッサ11は、観測装置6から空間Sにおいて観測された物理量(ここでは照度)の情報を取得する(ステップS101)。そして、プロセッサ11は、メモリ12に記憶されている条件表122を参照して、その物理量に応じた条件を決定する(ステップS102)。
【0060】
次に、プロセッサ11は、ホームドア装置3の図示しないプロセッサによって並行して実行されているドア32の制御を監視し、ドア閉鎖の指示があったか否かを判断する(ステップS103)。ドア閉鎖の指示がない、と判断する間(ステップS103;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS101に戻す。
【0061】
一方、ドア32の制御においてドア閉鎖の指示があった、と判断すると(ステップS103;YES)、プロセッサ11は、センサ2から測定結果を取得して距離画像を生成し(ステップS104)、メモリ12に記憶されている領域座標DB121を参照して生成した距離画像を区画して、監視領域Rに由来する部分と、試験領域Tに由来する部分とをそれぞれ抽出する(ステップS105)。
【0062】
そして、プロセッサ11は、試験領域Tに由来する部分の測定結果をステップS102で決定した条件に当てはめて、試験領域Tにおける測定が正常であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0063】
例えば、図1に示すセンサ2は、決められた位置に設置・固定されており、ホームHも移動しない。そのため、センサ2から試験領域Tに固定された固定物体(例えば、印刷された試験パターン)までの距離は変動しないので、センサ2に故障等の異常が発生していない限り、共通の環境下で試験領域Tに向けて照射された光の反射光は、共通の測定結果を示すはずである。
【0064】
制御装置1のプロセッサ11は、試験領域Tにおける測定結果と、以前に共通の環境下で測定された測定結果とを比較し、これらに閾値を超える変動が生じていない場合、試験領域Tにおける測定が正常であると判断する。なお、試験領域Tにおける測定結果とは、例えば、試験領域Tの固定物体までの距離、その固定物体からの反射光の光量等である。
【0065】
試験領域Tにおける測定が正常でない、と判断する場合(ステップS106;NO)、プロセッサ11は、ホームドア装置3に向けて、センサ2の測定結果によるドア制御を中止するよう指示を出し(ステップS107)、さらに、通信回線4を経由してサーバ装置5に対し、異常の発生を通知する(ステップS108)。
【0066】
一方、試験領域Tにおける測定が正常である、と判断する場合(ステップS106;YES)、プロセッサ11は、距離画像から抽出された、監視領域Rに由来する部分の測定結果を基に、この監視領域Rに通行の妨げになる物体が有るか否かを判断する(ステップS109)。監視領域Rに物体が有る、と判断する場合(ステップS109;YES)、プロセッサ11は、ホームドア装置3に対してドア32の開放状態を維持するよう指示を出し(ステップS110)、処理をステップS104に戻す。
【0067】
一方、監視領域Rに物体が無い、と判断する場合(ステップS109;NO)、プロセッサ11は、ホームドア装置3に対してドア32の閉鎖を許可し(ステップS111)、処理を終了する。
【0068】
以上の動作により、物体監視システム9は、監視領域Rの外に試験領域Tを設置することで、監視領域Rにおける物体の有無を監視するセンサ2の正確性を確認することができる。また、この物体監視システム9は、センサ2に異常が発生したことを確認すると、その旨を上位装置であるサーバ装置5に通達することができる。そのため、この物体監視システム9は、異常が発生したセンサ2の利用をホームドア装置3の制御から除外できる。また、この物体監視システム9において、試験領域Tは、センサ2から上下左右のあらゆる方向に設定することができる。
【0069】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0070】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0071】
<1>
上述した実施形態において、試験領域Tは、ホームHの上に設定されていたが、センサ2が光を走査照射する空間Sのうち監視領域Rと異なる領域であれば他の場所であってもよい。例えば、試験領域Tは、ホームドア装置3の構成要素である筐体31の軌道側の面に設定されてもよい。また、試験領域Tは、軌道を挟んだ反対側にあるホーム、又は天井等に設定されてもよい。すなわち、試験領域Tは、x方向、y方向、z方向のどの方向に設定されてもよい。
【0072】
また、試験領域Tに印刷(固定)された試験パターン(固定物体)は、一つに限らず、複数でもよい。そして、これら複数の固定物体は、目的に応じてそれぞれ異なる場所に、異なるサイズで設置されてもよい。また、一つの固定物体のうち、センサ2の正常判断に利用する部分は、目的に応じて異なってもよい。
【0073】
<2>
上述した実施形態において、物体監視システム9は空間Sにおける物理量を観測する観測装置6を有していたが、観測装置6はなくてもよい。制御装置1は、空間Sにおける物理量は観測装置6以外から取得してもよい。例えば、制御装置1は、地域気象観測システム等の行政機関、公的機関等から空間Sを含む地域の気象に関する物理量を取得してもよい。
【0074】
また、観測装置6を有しない場合、制御装置1のメモリ12は、条件表122において、空間Sの物理量に応じて変化する条件を記憶しなくてもよい。また、この場合、プロセッサ11は、図6に示すステップS101の処理を行わなくてよい。
【0075】
<3>
本発明は、図6に示す各ステップを制御装置に実行させるように記述されたプログラムとしても観念され得る。すなわち、このプログラムは、空間に光を走査させて反射光を測定するセンサに接続されたコンピュータを、センサの測定結果により空間内の監視領域における物体の有無を監視する監視部として機能させるとともに、監視部が、空間内の、監視領域と異なる試験領域からの反射光の測定結果が所定の条件を満たした場合に物体の有無を監視するように、コンピュータを機能させるためのプログラムの例である。
【符号の説明】
【0076】
1…制御装置、11…プロセッサ、111…測定結果取得部、112…生成部、113…区画部、114…物理量取得部、115…判定部、116…監視部、117…指示部、12…メモリ、121…領域座標DB、122…条件表、13…通信部、14…操作部、15…表示部、2…センサ、21…走査部、22…測定部、3…ホームドア装置、31…筐体、32…ドア、4…通信回線、5…サーバ装置、6…観測装置、9…物体監視システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6