IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特開2024-127588液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127588
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240912BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036837
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】藤下 翔平
(72)【発明者】
【氏名】新井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓海
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA18
2H290AA33
2H290AA53
2H290AA73
2H290BD01
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF54
2H290DA01
2H290DA03
4J043PA04
4J043PB01
4J043PB02
4J043PB03
4J043PB09
4J043PB11
4J043PB13
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA34
4J043RA35
4J043RA39
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043SB03
4J043SB04
4J043SB05
4J043TA22
4J043TA70
4J043TA71
4J043TB01
4J043TB03
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA151
4J043UA171
4J043UA331
4J043UA381
4J043UA421
4J043UA632
4J043UA662
4J043UA672
4J043UB011
4J043UB121
4J043UB131
4J043UB161
4J043UB171
4J043UB211
4J043UB221
4J043UB231
4J043UB401
4J043UB402
4J043XA16
4J043YA08
4J043ZB11
4J043ZB23
(57)【要約】
【課題】液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度に優れた液晶配向膜を得ることができ、かつ信頼性に優れた液晶素子を製造することができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】(A)重合体及び(B)化合物:(A)重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基等よりなる群から選択される少なくとも1種の基Fを主鎖末端部分に有する重合体、(B)基F若しくは基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基F1Aと反応し得るか、又は脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより基F若しくは基F1Aと反応し得る基である基Fを1分子内に合計2個以上有する化合物(ただし、前記(A)重合体を除く。)を液晶配向剤に含有させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)重合体及び(B)化合物:
(A)重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種である基Fを主鎖末端部分に有する重合体、
(B)前記基F若しくは前記基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基F1Aと反応し得るか、又は脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより、前記基F若しくは前記基F1Aと反応し得る基である基Fを1分子内に合計2個以上有する化合物(ただし、前記(A)重合体を除く。)
を含有する、液晶配向剤。
【請求項2】
前記基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、求核性官能基、保護された求核性官能基、酸性官能基及び保護された酸性官能基よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記(B)化合物が有する前記基Fの少なくとも1個が、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子と脱離性基とが結合した部分構造を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記(B)化合物は、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、Xは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子又は下記式(x-1)で表される基である。Yは脱離性基である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。ただし、「-X(R(Y」で表される基は、求核性官能基又は保護された求核性官能基を有する。Rはk価の有機基である。kは2以上の整数である。Xが硫黄原子又は酸素原子である場合、m及びnのうち一方は1であり、他方は0である。Xが窒素原子又は下記式(x-1)で表される基である場合、mは0~2の整数であり、nは0~2の整数であり、かつm+n=2を満たす。式中の複数のXは互いに同一又は異なる。式中にYが複数存在する場合、複数のYは互いに同一又は異なり、式中にRが複数存在する場合、複数のRは互いに同一又は異なる。)
【化2】
(式(x-1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。「*」は結合手であることを表す。ただし、式(x-1)中の窒素原子が上記式(1)中のRに結合している。)
【請求項5】
前記Rは、k価の鎖状炭化水素基であるか、又は、鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO -O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-(ただし、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)、3級窒素原子若しくは複素環を含むk価の基である、請求項4に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記(B)化合物は、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を1分子内に合計2個以上有する化合物を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記(B)化合物は、下記式(2)で表される化合物を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化3】
(式(2)中、Xは、カルボン酸基、リン酸基、亜リン酸基又はスルホン酸基である。Xは、保護されたカルボン酸基、保護されたリン酸基、保護された亜リン酸基、又は保護されたスルホン酸基である。Rは、(i+j)価の有機基である。iは0以上の整数である。jは1以上の整数である。ただし、(i+j)≧2を満たす。iが2以上の場合、複数のXは同一又は異なる。jが2以上の場合、複数のXは同一又は異なる。)
【請求項8】
前記(A)重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリウレア及びポリアミドイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
前記基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
下記の(C)化合物を更に含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
(C)前記(A)重合体及び前記(B)化合物とは異なる化合物であって、求電子性官能基又は保護された求電子性官能基を1分子内に2個以上有する化合物
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光照射又はラビング処理により液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板のそれぞれの前記導電膜上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記液晶配向剤を塗布した一対の基板を、液晶層を挟んで前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、
前記導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、
を含む、液晶素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶テレビやインフォメーションディスプレイ等といった比較的大型の表示装置から、スマートフォンやタブレットPC等の小型の表示装置まで幅広い用途に適用されている。液晶素子の性能は、液晶の配向性やプレチルト角の大きさ、電圧保持率等の各種特性により決定される。液晶素子の性能を向上させるべく、従来、液晶材料の改良のほか、液晶を一定方向に配列させるための液晶配向膜の改良が行われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、ポリアミック酸と二炭酸ジ-tert-ブチルとを反応させることによりポリアミック酸の主鎖末端にtert-ブトキシカルボニル基(Boc基)を導入し、当該重合体を用いて液晶配向膜を形成することにより、シール剤と液晶配向膜との接着性を高めることが開示されている。また、特許文献2には、重合体と、求核性官能基又は酸性官能基を1分子内に2個以上有する化合物と、求電子官能基を1分子内に2個以上有する化合物とを含有する液晶配向剤を用いることにより、リワーク性及び液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/022215号
【特許文献2】特開2022-71804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶素子の高精細化に伴い、品質に対する要求は更に厳しくなっている。こうし
た要求を満たすべく、液晶素子には、液晶配向性や電圧保持特性を更に良化することが求められている。また、ラビング法の適用や、液晶配向性及び電圧保持率の改善、歩留まり低下の抑制等を考慮すると、液晶配向剤を用いて形成される有機膜は十分に高い強度を有することが求められる。加えて、液晶素子の特性としては、長期に亘って使用した場合にも高い電圧保持率を示し、信頼性に優れていることが求められる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度に優れた液晶配向膜を得ることができ、かつ信頼性に優れた液晶素子を製造することができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
<1> 下記の(A)重合体及び(B)化合物:
(A)重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種である基Fを主鎖末端部分に有する重合体、
(B)前記基F若しくは前記基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基F1Aと反応し得るか、又は脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより、前記基F若しくは前記基F1Aと反応し得る基である基Fを1分子内に合計2個以上有する化合物(ただし、前記(A)重合体を除く。)
を含有する、液晶配向剤。
【0009】
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<1>の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光照射又はラビング処理により液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
<4> 上記<2>の液晶配向膜を備える液晶素子。
<5> 上記<1>の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板のそれぞれの前記導電膜上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記液晶配向剤を塗布した一対の基板を、液晶層を挟んで前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、前記導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、を含む、液晶素子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記の(A)重合体及び(B)化合物を含有することにより、液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度に優れた液晶配向膜を得ることができる。また、信頼性に優れた液晶素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪液晶配向剤≫
本開示の液晶配向剤は、特定の官能基(以下、「基F」ともいう)を主鎖末端部分に有する重合体(以下、「(A)重合体」ともいう)と、基F若しくは基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基と反応し得るか、又は脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより、基F若しくは基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基と反応し得る基である官能基(以下、「基F」ともいう)を有する化合物(以下、「(B)化合物」ともいう)と、を含有する。以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる成分、及び必要に応じて任意に配合される成分(以下、「その他の成分」ともいう)について説明する。なお、以下では、「基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基」を「反応性基F1A」ともいい、「基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基」を「反応性基F2B」ともいう。
【0012】
ここで、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む意味である。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。
【0013】
重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。例えば、「特定構造を主鎖に有する」とは、その特定構造が主鎖の一部分を構成することをいう。「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。「主鎖末端部分」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分の端部をいう。「テトラカルボン酸誘導体」は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む意味である。「脱離性基」とは、反応性官能基の反応性を低下させる基であり、刺激(例えば、熱や光等)の付与により脱離して反応性官能基を生じさせる基をいう。
【0014】
<(A)重合体>
(A)重合体は、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種である基Fを主鎖末端部分に有する。
【0015】
重合性炭素-炭素不飽和結合含有基は、架橋反応性が高く、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶配向膜を得ることができる点で、下記式(a1-1)~式(a1-10)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化1】
(式(a1-1)~式(a1-10)中、「*」は結合手を表す。)
【0016】
(A)重合体が有する重合性炭素-炭素不飽和結合含有基は、これらの中でも、上記式(a1-1)~式(a1-7)のいずれかで表される基が好ましく、架橋反応性が高い点及び官能基の導入しやすさの点で、上記式(a1-1)~式(a1-4)のいずれかで表される基がより好ましい。
【0017】
基Fのうち、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基は、基F若しくは反応性基F2Bに対して求電子性を示すか、又は、基F中の脱離性基が脱離することにより、基F若しくは反応性基F2Bに対して求電子性を示す基である。なお、以下では便宜上、基Fのうち、「イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種の基」を「求電子性官能基F1C」ともいう。
【0018】
環状エーテル基としては、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。環状カーボネート基としては、エチレンカーボネート基、プロピレンカーボネート基等が挙げられる。ヒドロキシアルキルアミド基は、β-ヒドロキシアルキルアミド基が好ましい。
【0019】
保護されたイソシアネート基は、熱により脱離する基(以下、「熱脱離性基」ともいう)によって保護されていることが好ましい。イソシアネート基との反応により保護されたイソシアネート基を得るための試薬(以下、「ブロック剤」ともいう)としては公知のものを使用できる。ブロック剤の具体例としては、例えば、アルコール類、フェノール類、活性メチレン類、メルカプタン類、酸アミド類、酸イミド類、イミダゾール系類、ピラゾール類、尿素類、オキシム類、アミン類、イミン類、ピリジン類等が挙げられる。膜形成時の加熱によって脱離した基に由来する成分が膜中に残存することを抑制する観点から、熱脱離性基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0020】
保護されたメチロール基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基は、熱脱離性基によって保護されていることが好ましい。熱脱離性基は、熱によって脱離して水素原子に置き換わる基であればよいが、例えば、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、トリチル基等のエーテル系脱離性基;メトキシメチル基、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基等のアセタール系脱離性基;アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基等のアシル系脱離性基;アリル基、メタリル基等のアリル系脱離性基;tert-ブトキシカルボニル基等のカルバメート系脱離性基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のシリルエーテル系脱離性基等が挙げられる。熱による脱離しやすさと保存安定性との両立を図る観点から、エーテル系脱離性基、アセタール系脱離性基、カルバメート系脱離性基又はアセチル基が好ましく、炭素数4~7のアルキル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル、アセチル基又はtert-ブトキシカルボニル基がより好ましい。
【0021】
(A)重合体が求電子性官能基F1Cを主鎖末端部分に有する場合に、(A)重合体が主鎖末端部分に有する求電子性官能基F1Cを含む部分構造の具体例としては、例えば、下記式(a2-1)~式(a2-15)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。
【化2】
(式(a2-1)~式(a2-15)中、「Me」はメチル基を表す。「Ac」はアセチル基を表す。「*」は結合手を表す。)
【0022】
(A)重合体が主鎖末端部分に有する基Fは、基F又は反応性基F1Aの架橋反応性が高く、かつ基Fを重合体の主鎖末端部分に導入しやすい点や、保存安定性が高い点において、中でも、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、メルドラム酸構造を有する基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、メチロール基、保護されたメチロール基、メルドラム酸構造を有する基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、メチロール基、保護されたメチロール基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。中でも特に、(A)重合体が主鎖末端部分に重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を有する場合、液晶配向性、電圧保持特性、膜強度及び信頼性の改善効果が高く好ましい。
【0023】
(A)重合体の主骨格は特に限定されない。(A)重合体の主骨格としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリアミン、ポリエナミン、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリマレイミド、スチレン-マレイミド系共重合体、又はポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。ポリエナミンとは、ポリアミンのアミノ基の隣接位に炭素-炭素二重結合を有する重合体であり、例えば、ポリエナミノケトン、ポリエナミノエステル、ポリエナミノニトリル、ポリエナミノスルホニル等が挙げられる。
【0024】
(A)重合体は、これらのうち、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶素子を得ることができる点、重合体の主鎖末端部分に基Fを導入しやすい点において、重合に関与する基としてアミノ基、酸無水物基又は-COR(Rは水酸基又はハロゲン原子)を有する単量体を構造単位として含む重合体であることが好ましい。具体的には、(A)重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリウレア及びポリアミドイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリウレア及びポリアミドイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。これらの中でも特に、(A)重合体は、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
(A)重合体が、ポリアミック酸及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である場合、(A)重合体は、例えば、テトラカルボン酸誘導体とジアミン化合物とを縮重合する工程を含む方法により得ることができる。また、基Fを重合体の主鎖末端部分に導入して(A)重合体を得る方法としては、例えば、重合反応中に又は重合反応後に、重合反応を停止させるための末端封止剤として、基Fを有する化合物(以下、「化合物(M)」ともいう)を用いる方法が挙げられる。具体的には、以下の方法〔1〕及び〔2〕が挙げられる。
〔1〕 化合物(M)の存在下で、テトラカルボン酸誘導体とジアミン化合物とを縮重合させる方法。
〔2〕 テトラカルボン酸誘導体とジアミン化合物とを縮重合させた後に、当該重合により得られた重合体と、化合物(M)とを反応させる方法。
【0026】
上記〔1〕及び〔2〕の方法によれば、重合体の主鎖末端部分(より詳細には、重合体の端部に存在するテトラカルボン酸誘導体に由来する構造単位中の酸無水物基又はジアミン化合物に由来する構造単位中の1級アミノ基)と、化合物(M)との反応により、(A)重合体として、化合物(M)に由来する部分構造を主鎖末端部分に有する重合体を得ることができる。中でも、上記〔1〕の方法によれば、製造工程の簡略化を図りながら(A)重合体を得ることができる点で好ましい。
【0027】
(ポリアミック酸)
(A)重合体がポリアミック酸である場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(A)」ともいう)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0028】
・テトラカルボン酸二無水物
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0029】
これらの具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等を;脂環式テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等を;芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は、重合体の溶解性を高くできる点、及び良好な電圧保持特性を示す液晶配向膜を得ることができる点で、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことがより好ましい。脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用量は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましい。
【0031】
・ジアミン化合物
ポリアミック酸の合成に使用するジアミン化合物としては公知の化合物を用いることができる。当該ジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。脂肪族ジアミンは、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンを含む。
【0032】
ポリアミック酸の合成に使用するジアミン化合物としては、鎖状ジアミンとして、メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を;
脂環式ジアミンとして、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノスチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)-ピペラジン、6,6’-(ペンタメチレンジオキシ)ビス(3-アミノピリジン)、N,N’-ジ(5-アミノ-2-ピリジル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェネチルウレア、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジアミノアクリジン、ジフェニルアミン構造含有モノマー、下記式(D-1)
【化3】
(式(D-1)中、R30は、アルカンジイル基における一部のメチレン基が-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR31-、-CO-NR31-、-NR31-CO-O-、-NR31-CO-NR32-又は-CO-NR31-NR32-で置き換えられた2価の基である。R31及びR32は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は熱脱離性基である。Y及びYは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~3のアルキル基又は熱脱離性基である。r1及びr2は、互いに独立して、0~4の整数である。式中にYが複数存在する場合、複数のYは同一又は異なる。式中にYが複数存在する場合、複数のYは同一又は異なる。)
で表される化合物等の主鎖型ジアミン;
ドデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル、下記式(E-1)
【化4】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、-O-、*-COO-又は*-OCO-(ただし、「*」はジアミノフェニル基側との結合手を示す。)である。Rは、炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIは、単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIIは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、又はフルオロアルコキシ基である。aは0又は1である。bは0~3の整数である。cは0~2の整数である。dは0又は1である。ただし、1≦a+b+c≦3である。)
で表される化合物等の側鎖型ジアミン等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テ
トラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、下記式(da-1)~式(da-11)のそれぞれで表される含窒素構造を有するジアミン、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。ポリアミック酸の合成に際し、ジアミン化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
【化5】
【0034】
上記式(D-1)で表される化合物としては、例えば下記式(D-1-1)~式(D-1-8)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。上記式(E-1)で表される化合物としては、例えば下記式(E-1-1)~式(E-1-4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。ポリアミック酸(A)の合成に際し、ジアミン化合物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化6】
【0035】
・化合物(M)
化合物(M)としては、酸無水物基又は1級アミノ基と反応し得る官能基と基Fとを有する化合物を好ましく使用することができる。化合物(M)の具体例としては、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソ(チオ)シアネート化合物等が挙げられる。なお、「イソ(チオ)シアネート」は、イソシアネート及びイソチオシアネートを包含する用語である。
【0036】
化合物(M)の具体例としては、下記式(m1-1)~式(m1-23)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。化合物(M)としては1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【化7】
【0037】
・ポリアミック酸の合成
ポリアミック酸(A)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、化合物(M)とともに反応させることにより得ることが好ましい。ポリアミック酸(A)の合成反応に使用されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。
【0038】
上記合成反応において、化合物(M)の使用割合は、化合物(M)に由来する構造単位を重合体の主鎖末端部分に導入しつつ、好適な分子量範囲内の重合体を得る観点から、重合体の合成に使用する単量体(ポリアミック酸の場合、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計量)と化合物(M)との合計量に対して、0.5モル%以上とすることが好ましく、1モル%以上とすることがより好ましく、3モル%以上とすることが更に好ましい。また、化合物(M)の使用割合は、重合体の合成に使用する単量体と化合物(M)との合計量に対して、20モル%以下とすることが好ましく、15モル%以下とすることがより好ましく、10モル%以下とすることが更に好ましい。
【0039】
なお、上記合成反応に際しては、末端封止剤として化合物(M)とともに、基Fを有しない化合物を使用してもよい。当該化合物としては、例えば、無水フタル酸等の酸一無水物;アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物;フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。ただし、これらの化合物の使用割合は、上記合成反応に際して使用する末端封止剤の合計量に対して、10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましく、1モル%以下とすることが更に好ましい。
【0040】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0041】
以上のようにして、ポリアミック酸(A)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(A)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0042】
(ポリイミド)
(A)重合体がポリイミドである場合、当該ポリイミド(以下、「ポリイミド(A)」ともいう)は、例えば、上記の如くして合成されたポリアミック酸(A)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミド(A)は、その前駆体であるポリアミック酸(A)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド(A)は、そのイミド化率が20~99%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0043】
ポリアミック酸(A)の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸(A)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行うことができる。この方法において、脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸(A)のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸(A)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。上記反応により得られるポリイミド(A)を含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド(A)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリイミド(A)は、ポリアミック酸エステルのイミド化により得ることもできる。
【0044】
なお、(A)重合体としてのポリアミック酸エステル、ポリウレア及びポリアミドイミドについてもポリアミック酸(A)及びポリイミド(A)と同様に、重合反応を停止させるための末端封止剤として化合物(M)を用いることにより得ることができる。具体的には、ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸(A)とエステル化剤とを反応させる方法や、化合物(M)の存在下でテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させた後に化合物(M)を反応させる方法等によって得ることができる。また、ポリウレアは、イソシアネート化合物とポリアミン化合物とを反応させた後に化合物(M)を反応させる方法等によって得ることができる。ポリアミドイミドは、トリカルボン酸誘導体とジアミン化合物とを反応させた後に化合物(M)を反応させる方法等によって得ることができる。これらの各反応において、化合物(M)としては、ポリアミック酸(A)の説明において例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0045】
液晶配向剤に含有させる(A)重合体の溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0046】
(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000である。GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対するMwの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
【0047】
液晶配向剤中の(A)重合体の含有割合は、液晶配向性及び電圧保持特性に優れ、膜強度が高く、かつ信頼性に優れた液晶素子を得る観点から、液晶配向剤中に含有される固形分の合計質量(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量)に対して、5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、20質量%以上とすることが更に好ましい。
【0048】
<(B)化合物>
(B)化合物は、基Fを1分子内に合計2個以上有する。基Fは、(A)重合体が主鎖末端部分に有する基Fと反応し得るか、若しくは基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基(反応性基F1A)と反応し得る基、又は、脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより、基F若しくは反応性基F1Aと反応し得る基(反応性基F2B)である。基F又は反応性基F2Bは、加熱(例えば、膜形成時の加熱)により、(A)重合体が有する基F又は反応性基F1Aと反応する基であることが好ましい。なお、(B)化合物は(A)重合体とは異なる成分である。(B)化合物は、繰り返し単位を有しない成分(すなわち、重合体とは異なる成分)であることが好ましい。(B)化合物の分子量は、膜強度を高める観点から、好ましくは3,000以下であり、より好ましくは2,000以下であり、更に好ましくは1,000以下であり、より更に好ましくは800以下である。
【0049】
基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、求核性官能基、保護された求核性官能基、酸性官能基及び保護された酸性官能基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。(B)化合物としては、例えば、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を1分子内に2個以上有する化合物(以下、「化合物(B1)」ともいう)、求核性官能基又は保護された求核性官能基を1分子内に合計2個以上有する化合物(以下、「化合物(B2)」ともいう)、酸性官能基又は保護された酸性官能基を1分子内に合計2個以上有する化合物(以下、「化合物(B3)」ともいう)が挙げられる。
【0050】
・化合物(B1)
化合物(B1)が有する重合性炭素-炭素不飽和結合含有基は、架橋反応性が良好である点で、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、アルケニル基、ビニルフェニル基、ビニルエーテル基、及び3-メチレンテトラヒドロフラン-2(3H)-オン-5-イル基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。化合物(B1)が有する重合性炭素-炭素不飽和結合含有基の数は、液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度をバランス良く改善する観点から、2~12個が好ましく、2~10個がより好ましく、2~8個が更に好ましい。
【0051】
化合物(B1)の具体例としては、下記式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【化8】
(式(3)中、Xは、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、アルケニル基、ビニルフェニル基、ビニルエーテル基又は3-メチレンテトラヒドロフラン-2(3H)-オン-5-イル基である。R10はa価の有機基である。aは2以上の整数である。式中の複数のXは同一又は異なる。)
【0052】
上記式(3)において、R10で表されるa価の有機基は、膜強度を十分に高める観点から、炭素数1~40であることが好ましい。a価の有機基の具体例としては、炭素数1~40のa価の炭化水素基、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR11-、-CO-NR11-、-NR11-CO-O-、-NR11-CO-NR12-、-CO-NR11-NR12-、3級窒素原子又は複素環を含むa価の基等が挙げられる。a価の炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。R11又はR12で表される1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基、熱脱離性基等が挙げられる。
【0053】
化合物(B1)の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、下記式(b1-1)~式(b1-7)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化9】
【0054】
(B)化合物として化合物(B1)を用いる場合、架橋反応性が高く、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶素子を得ることができる点で、(A)重合体が主鎖末端部分に有する基Fは重合性炭素-炭素不飽和結合含有基であることが好ましい。
【0055】
・化合物(B2)
(B)化合物が、求核性官能基又は保護された求核性官能基を1分子内に合計2個以上有する化合物(化合物(B2))である場合、求核性官能基は、(A)重合体が有する基F、又は基F中の脱離性基の脱離により生じた反応性基F1Aと反応して結合を形成し得る基であればよい。求核性官能基の具体例としては、1級アミノ基、2級アミノ基、チオール基、ヒドロキシ基等が挙げられる。また、保護された求核性官能基は、保護された求核性官能基中の脱離性基が脱離して水素原子に置き換わることによって、基F又は反応性基F1Aと反応して結合を形成し得る基であることが好ましい。保護された求核性官能基の具体例としては、保護された1級アミノ基、保護された2級アミノ基、保護されたチオール基、保護されたヒドロキシ基等が挙げられる。化合物(B2)が有する求核性官能基又は脱離性基が脱離することによって生じる求核性官能基は、中でも、1級アミノ基、2級アミノ基又はチオール基が好ましい。
【0056】
化合物(B2)は、液晶配向剤の保存安定性を向上させる観点から、分子内に存在する求核性官能基の少なくとも一部が保護されていることが好ましく、全部が保護されていることがより好ましい。なお、保護された1級アミノ基は、1級アミノ基における2個の水素原子のうち一方のみが脱離性基に置き換えられた基であってもよく、2個の水素原子が共に脱離性基に置き換えられた基であってもよい。すなわち、1級アミノ基における2個の水素原子の少なくとも一方が脱離性基に置き換えられた基は「保護された1級アミノ基」に含まれる。
【0057】
化合物(B2)の好ましい具体例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
(式(1)中、Xは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子又は下記式(x-1)で表される基である。Yは脱離性基である。Rは、水素原子又は1価の有機基である。ただし、「-X(R(Y」で表される基は、求核性官能基又は保護された求核性官能基を有する。Rはk価の有機基である。kは2以上の整数である。Xが硫黄原子又は酸素原子である場合、m及びnのうち一方は1であり、他方は0である。Xが窒素原子又は下記式(x-1)で表される基である場合、mは0~2の整数であり、nは0~2の整数であり、かつm+n=2を満たす。式中の複数のXは互いに同一又は異なる。式中にYが複数存在する場合、複数のYは互いに同一又は異なり、式中にRが複数存在する場合、複数のRは互いに同一又は異なる。)
【化11】
(式(x-1)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。「*」は結合手であることを表す。ただし、式(x-1)中の窒素原子が上記式(1)中のRに結合している。)
【0058】
上記式(1)において、Xが上記式(x-1)で表される基である場合、式(x-1)中のRにおける1価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基等が挙げられる。Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
は、架橋反応性が高い点で、上記のうち、窒素原子、硫黄原子又は上記式(x-1)で表される基が好ましく、窒素原子又は上記式(x-1)で表される基がより好ましい。
【0059】
は、熱により脱離する基であることが好ましい。Xが窒素原子又は上記式(x-1)で表される基である場合、Yとしては、例えば、カルバメート系脱離性基、アミド系脱離性基、イミド系脱離性基、スルホンアミド系脱離性基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性が高い点で、カルバメート系脱離性基が好ましく、その具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性に優れ、かつ脱保護した構造に由来する化合物の膜中における残存量を少なくできる点で、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が特に好ましい。
【0060】
が酸素原子又は硫黄原子である場合、Yとしては、例えば、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、トリチル基等のエーテル系脱離性基;メトキシメチル基、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基等のアセタール系脱離性基;アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基等のアシル系脱離性基;アリル基、メタリル基等のアリル系脱離性基;tert-ブトキシカルボニル基等のカルバメート系脱離性基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のシリルエーテル系脱離性基が挙げられる。熱による脱離しやすさと保存安定性との両立を図る観点から、Xが酸素原子又は硫黄原子である場合、Yは、炭素数1~7のアルキル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル基、又はアセチル基であることが好ましい。
【0061】
で表される1価の有機基は、炭素数1~12の1価の炭化水素基が好ましい。Rは、好ましくは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。
【0062】
で表されるk価の有機基は、Xの求核性を阻害しない構造が好ましい。Rで表されるk価の有機基は、膜強度を十分に高める観点から、炭素数1~40であることが好ましい。なお、上記式(1)で表される化合物は、Rに求核性官能基又は保護された求核性官能基を有していてもよい。
【0063】
k価の有機基の具体例としては、炭素数1~40のk価の炭化水素基、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-、3級窒素原子又は複素環を含むk価の基(ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。)等が挙げられる。ここで、炭素数1~40の炭化水素基としては、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのうち、架橋反応性を高くでき、また液晶配向性及び電圧保持特性が良好な膜を形成できる点で、好ましくは鎖状炭化水素基である。R又はRで表される1価の有機基は、好ましくは炭素数1~10の1価の炭化水素基又は熱脱離性基であり、より好ましくは炭素数1~6の1価の炭化水素基又は熱脱離性基であり、更に好ましくは炭素数1~6のアルキル基又はtert-ブトキシカルボニル基である。
【0064】
架橋反応性をより高め、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得ることができる点で、Rは、芳香環を有しないk価の基であることが好ましい。具体的には、Rは、k価の鎖状炭化水素基であるか、又は、当該鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-、3級窒素原子若しくは非芳香族複素環を含むk価の基であることが好ましい。ここで、k価の鎖状炭化水素基は、炭素数2~30が好ましく、炭素数3~20がより好ましい。非芳香族複素環は、窒素含有環であることが好ましく、例えば、ピペリジン環、ピロリジン環、ヘキサメチレンイミン環、モルホリン環、イソシアヌレート環等が挙げられる。Rの好ましい具体例としては、例えば、下記式(r-1)~式(r-4)のそれぞれで表される構造等が挙げられる。
【化12】
(式(r-1)~式(r-4)中、tは0~18の整数である。X及びXは、互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-又は-CO-NR-NR-である。t1、t2及びt3は、互いに独立して、1~10の整数である。uは0~3の整数である。R20は、上記式(r-1)又は上記式(r-2)で表される2価の基である。「*」は結合手を表す。)
【0065】
が窒素原子又は上記式(x-1)で表される基である場合、液晶配向性及び電圧保持特性を良好に維持しつつ、液晶配向剤の保存安定性を高くできる点で、mは1又は2が好ましい。液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度をバランス良く改善する観点から、kは2~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4が更に好ましい。
【0066】
化合物(B2)の具体例としては、下記式(b2-1)~式(b2-19)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化13】
【化14】
【化15】
【0067】
(B)化合物として化合物(B2)を用いる場合、化合物(B2)との架橋反応性を高くでき、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶素子を得ることができる点で、(A)重合体が主鎖末端部分に有する基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、ヒドロキシアルキルアミド基、及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0068】
・化合物(B3)
(B)化合物が、酸性官能基又は保護された酸性官能基を1分子内に合計2個以上有する化合物(化合物(B3))である場合、酸性官能基としては、カルボン酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。化合物(B3)は、液晶配向剤の保存安定性を向上させる観点から、分子内に存在する酸性官能基の少なくとも一部が保護されていることが好ましく、全部が保護されていることがより好ましい。
【0069】
化合物(B3)の好ましい具体例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化16】
(式(2)中、Xは、カルボン酸基、リン酸基、亜リン酸基又はスルホン酸基である。Xは、保護されたカルボン酸基、保護されたリン酸基、保護された亜リン酸基、又は保護されたスルホン酸基である。Rは、(i+j)価の有機基である。iは0以上の整数である。jは1以上の整数である。ただし、(i+j)≧2を満たす。iが2以上の場合、複数のXは同一又は異なる。jが2以上の場合、複数のXは同一又は異なる。)
【0070】
上記式(2)において、Xは、カルボン酸基、リン酸基、亜リン酸基又はスルホン酸基に含まれるOH基が有する水素原子を脱離性基で置き換えてなる基であり、「*-O-L」(ただし、Lは脱離性基であり、「*」は結合手を表す。)で表される基を有する。Lは、熱により脱離して水素原子に置き換わる基であることが好ましい。「*-O-L」で表される基の具体例としては、下記式(L1-1)~式(L1-8)のそれぞれで表される基等が挙げられる。
【化17】
(式(L1-1)~式(L1-8)中、「*」は結合手を表す。)
【0071】
で表される(i+j)価の有機基は、X及びXの求核性を阻害しない構造であることが好ましい。(i+j)価の有機基は、膜強度を十分に高める観点から、炭素数1~40であることが好ましい。(i+j)価の有機基の具体例としては、炭素数1~40の(i+j)価の炭化水素基、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-、3級窒素原子又は複素環を含む(i+j)価の基等が挙げられる。R又はRで表される1価の有機基は、好ましくは炭素数1~10の1価の炭化水素基又は熱脱離性基であり、より好ましくは炭素数1~6の1価の炭化水素基又は熱脱離性基であり、更に好ましくは炭素数1~6のアルキル基又はtert-ブトキシカルボニル基である。
【0072】
架橋反応性をより高め、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶配向膜を得ることができる点で、Rは、芳香環を有しない(i+j)価の基であることが好ましい。具体的には、Rは、(i+j)価の鎖状炭化水素基であるか、当該鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-、3級窒素原子若しくは非芳香族複素環を含む(i+j)価の基であるか、又は(i+j)価の脂環式炭化水素基であることが好ましい。ここで、(i+j)価の鎖状炭化水素基は、炭素数2~30が好ましく、炭素数3~20がより好ましい。非芳香族複素環は窒素含有環であることが好ましく、例えば、ピペリジン環、ピロリジン環、ヘキサメチレンイミン環、モルホリン環、イソシアヌレート環等が挙げられる。
【0073】
液晶配向膜の密着性の観点から、Rは、(i+j)価の鎖状炭化水素基であるか、又は、鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-、3級窒素原子若しくは非芳香族複素環を含む(i+j)価の基であることが好ましい。
【0074】
化合物(B3)の具体例としては、多官能カルボン酸、多官能リン酸、多官能亜リン酸及び多官能スルホン酸、並びに、多官能カルボン酸、多官能リン酸、多官能亜リン酸及び多官能スルホン酸が有する酸性基のうち少なくとも1個が保護された化合物が挙げられる。これらのうち、(A)重合体が有する基F又は基F中の脱離性基の脱離により生じた反応性基F1Aとの反応性を高める観点から、化合物(B3)としては、多価カルボン酸、又は多官能カルボン酸が有するカルボキシ基のうち少なくとも1個が保護された化合物を好ましく使用でき、多官能カルボン酸が有するカルボキシ基のうち少なくとも1個が保護された化合物を特に好ましく使用することができる。
【0075】
化合物(B3)の更なる具体例としては、例えば、フマル酸、マロン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸等の等のジカルボン酸が有するカルボキシ基のうち少なくとも1個が保護された化合物;1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等のトリカルボン酸が有するカルボキシ基のうち少なくとも1個が保護された化合物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸が有するカルボキシ基のうち少なくとも1個が保護された化合物;下記式(b3-1)~式(b3-3)のそれぞれで表される化合物;等が挙げられる。
【化18】
(式(b2-1)~式(b2-3)中、複数のLは、それぞれ独立に、水素原子又は熱脱離性基である。)
【0076】
(B)化合物として化合物(B3)を用いる場合、化合物(B3)との架橋反応性を高くでき、液晶配向性及び電圧保持特性に優れた液晶素子を得ることができる点で、(A)重合体が主鎖末端部分に有する基Fは、環状エーテル基、環状カーボネート基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0077】
液晶配向性及び電圧保持特性を良好としながら、膜強度がより高い液晶配向膜を得ることができる点において、上記の中でも、(A)重合体が主鎖末端部分に重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を有し、(B)化合物が(B1)化合物及び(B2)化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、(A)重合体が主鎖末端部分に重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を有し、(B)化合物が(B2)化合物を含むことがより好ましい。
【0078】
本開示の液晶配向剤における(B)化合物の含有量は、電圧保持特性に優れた液晶素子を得る観点、並びに液晶配向膜の膜強度を十分に高くする観点から、液晶配向剤に含まれる(A)重合体100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましい。(B)化合物の含有量は、(A)重合体100質量部に対して、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、液晶配向性の低下を抑制する観点から、(B)化合物の含有量は、(A)重合体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
【0079】
液晶配向剤に含まれる重合体成分の合計100質量部に対する(B)化合物の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましい。また、(B)化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分の合計100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。(B)化合物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
<その他の成分>
液晶配向剤は、(A)重合体及び(B)化合物のほか、必要に応じて、(A)重合体及び(B)化合物とは異なる成分(その他の成分)を更に含有していてもよい。
【0081】
・(C)化合物
本開示の液晶配向剤は、求電子性官能基又は保護された求電子性官能基を1分子内に合計2個以上有する化合物(以下、「(C)化合物」ともいう)を更に含有していてもよい。(C)化合物は(B)化合物とは異なる架橋剤であり、(A)重合体又は(B)化合物が有する官能基に対して求電子性を示すことが好ましい。具体的には、(C)化合物は、(A)重合体が有する基Fとは異なる反応部位(例えば、重合体の側鎖の官能基やベンゼン環等)、あるいは(B)化合物中の重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、求核性官能基又は酸性官能基と、(C)化合物中の求電子性官能基との反応により架橋構造を形成し得ることが好ましい。なお、(C)化合物中の求電子性官能基と反応する(B)化合物中の求核性官能基は、保護された求核性官能基中の脱離性基が脱離することにより生じた基であってもよい。また、(C)化合物中の求電子性官能基と反応する(B)化合物中の酸性官能基は、保護された酸性官能基中の脱離性基が脱離することにより生じた基であってもよい。また同様に、(B)化合物中の求核性官能基又は酸性官能基と反応する(C)化合物中の求電子性官能基は、保護された求電子性官能基中の脱離性基が脱離することにより生じた基であってもよい。こうした(C)化合物を(A)重合体及び(B)化合物と共に配合して液晶配向剤を調製することにより、液晶配向膜における膜強度を更に高めることができる。
【0082】
(C)化合物において、求電子性官能基又は保護された求電子性官能基は、環状エーテル基、環状チオエーテル基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、環状カーボネート基、基「-CR20=CR21-R22-」(ただし、R20は、アミノ基との反応により脱離する1価の有機基である。R21は水素原子又はアルキル基、R22は電子求引性基である。)、シラノール基及びアルコキシシリル基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0083】
上記の求電子性官能基又は保護された求電子性官能基のうち、基「-CR20=CR21-R22-」において、R20で表される1価の有機基としては、例えば炭素数1~5のアルコキシ基、ピロリドン-1-イル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。R22の電子求引性基としては、カルボニル基、スルホニル基等が挙げられる。
保護されたイソシアネート基、保護されたメチロール基において、水素原子を置換する置換基(脱離性基)の具体例としては、(A)重合体が有する基Fの説明で例示した基と同様の基が挙げられる。
【0084】
(C)化合物が1分子内に有する求電子性官能基及び保護された求電子性官能基の合計の数は、液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度をバランス良く改善する観点から、2~12個が好ましく、2~10個がより好ましい。(C)化合物の分子量は、膜強度が十分に高い液晶配向膜を得る観点から、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下である。
【0085】
(C)化合物の具体例としては、環状(チオ)エーテル基を有する化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ジグリシジル-ベンジルアミン、N,N-ジグリシジル-アミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-シクロヘキシルアミン等を;イソシアネート基又は保護されたイソシアネート基を有する化合物として、下記式(c1-1)~式(c1-5)のそれぞれで表される化合物等を;メチロール基又は保護されたメチロール基を有する化合物として、下記式(c2-1)~式(c2-6)のそれぞれで表される化合物等を;環状カーボネート基を有する化合物として、下記式(c3-1)又は式(c3-2)で表される化合物等を;基「-CR20=CR21-R22-」を有する化合物として、下記式(c4-1)~式(c4-7)のそれぞれで表される化合物等を;アルコキシシリル基又はシラノール基を有する化合物として、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(タ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等を、それぞれ挙げることができる。
【化19】
(式(c1-1)及び式(c1-2)中、R23は熱脱離性基である。)
【化20】
(式(c2-5)中、Acはアセチル基である。)
【化21】
【化22】
【0086】
本開示の液晶配向剤に(C)化合物を含有させる場合、その含有量は、液晶配向膜の膜強度をより高め、液晶素子の信頼性をより向上させる観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましい。(C)化合物の含有量は、重合体成分の全量100質量部に対して、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、液晶配向性、電圧保持特性及び膜強度をバランス良く改善する観点から、(C)化合物の含有量は、重合体成分の全量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。(C)化合物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
・(D)重合体
本開示の液晶配向剤は、重合体成分として、(A)重合体とは異なる重合体(以下、「(D)重合体」ともいう)を更に含有していてもよい。(D)重合体は、主鎖末端部分に基Fを有しない重合体であればよく、その主骨格は特に限定されない。(D)重合体としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリエナミン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、マレイミド系重合体、スチレン-マレイミド系共重合体等が挙げられる。信頼性の高い液晶素子を得る観点から、(D)重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。付加重合体としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、マレイミド系重合体、及びスチレン-マレイミド系共重合体等が挙げられる。(D)重合体は、これらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0088】
(D)重合体を液晶配向剤に含有させる場合、(D)重合体の含有量は、(A)重合体と(D)重合体との合計量に対して、例えば1質量%以上であり、2質量%以上としてもよい。また、(D)重合体の含有量は、(A)重合体と(D)重合体との合計量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。(D)重合体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
・溶剤
本開示の液晶配向剤は、(A)重合体、(B)化合物、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
【0090】
溶剤としては有機溶媒が好ましく使用される。その具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、フェノール、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジアセトンアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、プロパン-1,2-ジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールジアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。溶剤としては、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0091】
液晶配向剤に含有されるその他の成分としては、上記のほか、例えば、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0092】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択される。液晶配向剤の固形分濃度は、好ましくは1~10質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%以上であると、塗膜の膜厚を十分に確保でき、より良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を得ることができる点で好適である。一方、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜を適度な厚みとすることができ、良好な液晶配向性を示す液晶配向膜が得られやすく、また、液晶配向剤の粘性が適度となり塗布性を良好にできる傾向がある。
【0093】
≪液晶配向膜及びその製造方法≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。液晶配向膜は、以下の塗膜形成工程を含む方法により製造することができる。また、本開示の液晶配向膜は、塗膜形成工程により得られた有機膜に対し、以下の配向処理工程により液晶配向処理を行い、液晶配向能を付与してもよい。
【0094】
・塗膜形成工程
液晶配向膜の製造に際しては、まず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
【0095】
基板への液晶配向剤の塗布方法は特に限定されない。基板への液晶配向剤の塗布は、例えば、スピンコート方式、印刷方式(例えば、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式等)、インクジェット方式、スリットコート方式、バーコーター方式、エクストリューションダイ方式、ダイレクトグラビアコーター方式、チャンバードクターコーター方式、オフセットグラビアコーター方式、含浸コーター方式、MBコーター方式等により行うことができる。
【0096】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~280℃であり、より好ましくは80~250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。
【0097】
・配向処理工程
配向処理工程では、液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に好ましくは加熱処理を行った後、光照射又はラビング処理により液晶配向能を付与することが好ましい。ラビング処理では、基板上に形成した塗膜に対し、例えばナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより、塗膜に液晶配向能を付与する。光配向処理では、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する。
【0098】
光配向処理において、光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線の場合の照射方向は斜め方向とする。
【0099】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは400~50,000J/mであり、より好ましくは1,000~20,000J/mである。配向能付与のための光照射後において、基板表面を、例えば水、有機溶媒(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。なお、(A)重合体と(B)化合物とを含む液晶配向剤を用いて光配向法により液晶配向膜を形成した場合、配向処理のための光照射に伴い生じる(A)重合体の分解生成物と、(B)化合物とが反応することによって、液晶素子における輝点の発生を抑制できることが考えられる。
【0100】
≪液晶素子≫
本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を備える。液晶素子における液晶の駆動方式は特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA(Polymer Sustained Alignment)型等の種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば、上述した塗膜形成工程及び配向処理工程、並びに以下のセル構築工程を含む方法により製造することができる。
【0101】
塗膜形成工程において使用する基板は、所望の動作モードによって異なる。例えば、TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を用いる。IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜等を用いることができる。
【0102】
なお、TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、塗膜形成工程により得られた塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。一方、垂直配向(VA)型の液晶素子を製造する場合には、塗膜形成工程により得られた塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができる。また、液晶配向能を更に高めるために、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。垂直配向型の液晶素子に好適な液晶配向膜はPSA型の液晶素子にも好適である。
【0103】
・セル構築工程
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、2枚の基板間に液晶配向膜に隣接して液晶が配置されるように液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤により貼り合わせ、基板表面とシール剤で囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。シール剤としては、例えば、硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。PSAモードでは、液晶セルの構築後に、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。
【0104】
PSA型の液晶素子は、以下の工程を含む方法により製造することができる。
・本開示の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に塗布して塗膜を形成する工程。
・液晶配向剤を塗布した一対の基板を、液晶層を挟んで塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程。
・導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程。
【0105】
具体的には、まず、導電膜を有する一対の基板間に、液晶と共に光重合性モノマーを注入又は滴下する点以外は上記工程1~工程3と同様にして液晶セルを構築する。液晶と共に注入又は滴下する光重合性モノマーとしては、従来公知の化合物を用いることができる。好ましくは、多官能性(メタ)アクリルモノマーである。
【0106】
PSA型液晶素子の製造においては、液晶セルの構築後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。これらのうち、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000~200,000J/mであり、より好ましくは1,000~100,000J/mである。
【0107】
各モードの液晶セルにつき、続いて、必要に応じて、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせ、液晶素子とする。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
【0108】
液晶としては、ポジ型及びネガ型のいずれを用いてもよい。IPS型及びFFS型の液晶素子においてネガ型液晶を用いた場合、電極上部での透過損失を小さくでき、コントラスト向上を図ることができる点で好ましい。液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、中でもネマチック液晶が好ましい。
【0109】
本開示の液晶素子は、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光装置、位相差フィルム等として用いることができる。
【0110】
以上説明した本開示によれば、次の手段が提供される。
〔手段1〕 下記の(A)重合体及び(B)化合物:
(A)重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、イソシアネート基、保護されたイソシアネート基、環状カーボネート基、メチロール基、保護されたメチロール基、ケテン構造を有する基、メルドラム酸構造を有する基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、オキサゾリン基、ヒドロキシアルキルアミド基及び保護されたヒドロキシアルキルアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種である基Fを主鎖末端部分に有する重合体、
(B)前記基F若しくは前記基F中の脱離性基が脱離することによって生じた基F1Aと反応し得るか、又は脱離性基を有し当該脱離性基が脱離することにより、前記基F若しくは前記基F1Aと反応し得る基である基Fを1分子内に合計2個以上有する化合物(ただし、前記(A)重合体を除く。)
を含有する、液晶配向剤。
〔手段2〕 前記基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基、求核性官能基、保護された求核性官能基、酸性官能基及び保護された酸性官能基よりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕に記載の液晶配向剤。
〔手段3〕 前記(B)化合物が有する前記基Fの少なくとも1個が、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子と脱離性基とが結合した部分構造を有する、〔手段1〕又は〔手段2〕に記載の液晶配向剤。
〔手段4〕 前記(B)化合物は、上記式(1)で表される化合物を含む、〔手段1〕~〔手段3〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段5〕 前記Rは、k価の鎖状炭化水素基であるか、又は、鎖状炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NR-、-CO-NR-、-NR-CO -O-、-NR-CO-NR-、-CO-NR-NR-(ただし、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)、3級窒素原子若しくは複素環を含むk価の基である、〔手段4〕に記載の液晶配向剤。
〔手段6〕 前記(B)化合物は、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基を1分子内に合計2個以上有する化合物を含む、〔手段1〕~〔手段5〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段7〕 前記(B)化合物は、上記式(2)で表される化合物を含む、〔手段1〕~〔手段6〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段8〕 前記(A)重合体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリウレア及びポリアミドイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕~〔手段7〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段9〕 前記基Fは、重合性炭素-炭素不飽和結合含有基である、〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段10〕 下記の(C)化合物を更に含有する、〔手段1〕~〔手段9〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
(C)前記(A)重合体及び前記(B)化合物とは異なる化合物であって、求電子性官能基又は保護された求電子性官能基を1分子内に2個以上有する化合物
〔手段11〕 〔手段1〕~〔手段10〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔手段12〕 〔手段1〕~〔手段10〕のいずれかに記載の液晶配向剤を基板上に塗布し、該塗布した後に光照射又はラビング処理により液晶配向能を付与する、液晶配向膜の製造方法。
〔手段13〕 〔手段11〕に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔手段14〕 〔手段1〕~〔手段10〕のいずれかに記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板のそれぞれの前記導電膜上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記液晶配向剤を塗布した一対の基板を、液晶層を挟んで前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、前記導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、を含む、液晶素子の製造方法。
【実施例0111】
以下、実施例に基づき実施形態をより詳しく説明するが、以下の実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0112】
以下の例において、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMR測定を行った。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(I)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(A/(A×α)))×100 …(I)
(数式(I)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0113】
化合物の略号は以下の通りである。なお、以下では、式(X)で表される化合物(Xは記号)を単に「化合物(X)」と示すことがある。
【0114】
(テトラカルボン酸二無水物)
【化23】
【0115】
(ジアミン化合物)
【化24】
【化25】
【0116】
(末端封止剤)
【化26】
【0117】
(添加剤)
【化27】
【化28】
【0118】
<重合体の合成>
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-5)100モル部、ジアミン化合物として化合物(D-6)100モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、40℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PA-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0119】
[合成例2]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)100モル部、ジアミン化合物として化合物(D-4)65モル部及び化合物(D-7)30モル部、末端封止剤として化合物(EC-8)5モル部をNMPに溶解し、40℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PA-2)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0120】
[合成例3]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-2)47.5モル部及び化合物(TA-5)47.5モル部、ジアミン化合物として化合物(D-4)80モル部、及び化合物(D-8)20モル部をNMPに溶解し、40℃で6時間反応を行った。このポリアミック酸溶液に末端封止剤(EC-9)10モル部を加え、更に40℃で1時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PA-3)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0121】
[合成例4~7、16~18]
使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物及び末端封止剤の種類及び量を表1に記載のとおり変更し、合成例3と同様の方法により重合することで、ポリアミック酸(重合体(PA-4)~(PA-7)、(PA-16)~(PA-18))を15質量%含有する溶液を得た。
【0122】
[合成例8]
使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物及び末端封止剤の種類及び量を表1に記載のとおり変更し、合成例2と同様の方法により重合することで、ポリアミック酸(重合体(PA-8))を15質量%含有する溶液を得た。
【0123】
[合成例9~15]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更し、合成例1と同様の方法により重合することで、ポリアミック酸(重合体(PA-9)~(PA-15))を15質量%含有する溶液を得た。
【表1】
【0124】
2.ポリイミドの合成
[合成例19]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)100モル部、ジアミン化合物として化合物(D-1)50モル部及び化合物(D-12)50モル部をNMPに溶解し、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して60℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約42%のポリイミド(これを重合体(PI-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0125】
[合成例20]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)67モル部及び化合物(TA-2)28モル部、ジアミン化合物として化合物(D-12)55モル部、化合物(D-15)30モル部及び化合物(D-16)15モル部をNMPに溶解し、40℃で6時間反応を行った。このポリアミック酸溶液に末端封止剤(EC-10)10モル部を加え、更に40℃で1時間反応を行い、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して60℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約75%のポリイミド(これを重合体(PI-2)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0126】
[合成例21~24]
使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物及び末端封止剤の種類及び量を表2に記載のとおり変更し、ピリジン及び無水酢酸の量を調整してイミド化率を表2に記載の値としたこと以外は合成例20と同様の方法により合成することで、ポリイミド(重合体(PI-3)~(PI-6))を15質量%含有する溶液を得た。
【0127】
[合成例25]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(TA-1)100モル部、ジアミン化合物として化合物(D-4)30モル部、化合物(D-7)35モル部及び化合物(D-3)30モル部、末端封止剤として化合物(EC-5)10モル部をNMPに溶解し、40℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して60℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約82%のポリイミド(これを重合体(PI-7)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0128】
[合成例26、27]
使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物及び末端封止剤の種類及び量を表2に記載のとおり変更し、ピリジン及び無水酢酸の量を調整してイミド化率を表2に記載の値としたこと以外は合成例23と同様の方法により合成することで、ポリイミド(重合体(PI-8)、(PI-9))を15質量%含有する溶液を得た。
【0129】
【表2】
【0130】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1:ラビングFFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例4で得た重合体(PA-4)100質量部を含む溶液に、化合物(AD-1)5質量部を添加し、NMP及びブチルセロソルブ(BC)により希釈して、溶媒組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0131】
2.ラビング法を用いたFFS型液晶表示素子の製造
平板電極(ボトム電極)、絶縁層及び櫛歯状電極(トップ電極)がこの順で片面に積層されたガラス基板(第1基板とする)、並びに電極が設けられていないガラス基板(第2基板とする)を準備した。次いで、第1基板の電極形成面及び第2基板の片面のそれぞれに、液晶配向剤(AL-1)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜表面に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する一対の基板を得た。
次いで、液晶配向膜を有する一対の基板につき、液晶配向膜を形成した面の縁に液晶注入口を残して、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した。その後、基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より、一対の基板間の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを120℃で加熱してから室温まで徐冷し、液晶セルを製造した。なお、一対の基板を重ね合わせる際には、それぞれの基板のラビング方法が反平行となるようにした。次に、液晶セルにおける基板の外側両面に偏光板を貼り合わせ、FFS型液晶表示素子を得た。
【0132】
3.液晶配向性の評価
上記2.で製造した液晶表示素子を、27,000cd/mの高輝度バックライト上で500時間静置し、バックライトの照射前後におけるリタデーションの変化率αにより液晶配向性を評価した。リタデーションの測定は、オプトサイエンス社製Axoscanにより行い、下記数式(II)によりバックライト照射前後のリタデーションの変化率αを算出した。変化率αが小さいほど、液晶配向性が良好であるといえる。変化率αが0.5%以下であった場合を「優良(◎)」、0.5%よりも大きく1%以下であった場合を「良好(○)」、1%よりも大きく2%以下であった場合を「可(△)」、2%よりも大きかった場合を「不良(×)」とした。
α=Δθ/θ1 …(II)
(数式(II)中、Δθは照射前後のリタデーション差を表し、θ1は照射前のリタデーション値を表す。)
その結果、この実施例では、液晶配向性は「優良(◎)」の評価であった。
【0133】
4.電圧保持率(VHR)による電気特性の評価
上記2.で製造したFFS型液晶表示素子につき、1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(これを初期VHRとする)を測定した。測定装置には(株)東陽テクニカ製VHR-1を使用した。このとき、電圧保持率が98%以上の場合に「優良(◎)」、96%以上98%未満の場合に「良好(○)」、92%以上96%未満の場合に「可(△)」、92%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例では、初期VHRは「優良(◎)」の評価であった。
【0134】
5.VHR信頼性の評価
上記2.で製造したFFS型液晶表示素子に対して、CCFLを光源とするバックライト上で168時間の光照射を行った。光照射後の液晶表示素子につき、70℃において1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。このとき、電圧保持率が95%以上の場合に「優良(◎)」、90%以上95%未満の場合に「良好(○)」、80%以上90%未満の場合に「可(△)」、80%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例では、VHR信頼性は「優良(◎)」の評価であった。
【0135】
6.膜強度(ラビング耐性)の評価
上記1.で調製した液晶配向剤(AL-1)をガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、110℃のホットプレートで3分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜につき、ヘイズメーター(hazemeter)を用いて塗膜のヘイズ値を測定した。次いで、塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmでラビング処理を5回実施した。その後、ヘイズメーターを用いて液晶配向膜のヘイズ値を測定し、ラビング処理前のヘイズ値との差(ヘイズ変化値)を計算した。ラビング処理前の膜のヘイズ値をHz1(%)、ラビング処理後の膜のヘイズ値をHz2(%)とした場合、ヘイズ変化値は下記数式(III)で表される。
ヘイズ変化値(%)=Hz2-Hz1 …(III)
液晶配向膜におけるヘイズ変化値が0.5未満であった場合を「優良(◎)」、0.5以上1.0未満であった場合を「良好(○)」、ヘイズ変化値が1.0以上1.5未満であった場合を「可(△)」、1.5以上であった場合を「不良(×)」と評価した。その結果、この実施例では膜強度「良好(○)」の評価であった。
【0136】
[実施例2~10及び比較例1~7]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にしてラビング配向法によりFFS型液晶表示素子を製造し、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度の評価を行った。それらの結果を表3に示した。なお、実施例2、3、5、7、8及び比較例1、4、7では重合体成分として2種類の重合体を使用し、実施例6及び10では重合体成分として3種類の重合体を使用した。また、実施例2、4、6~8、10及び比較例2では添加剤を2種類使用し、比較例6では添加剤を使用しなかった。表3中、重合体欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各重合体の固形分での配合割合(質量部)を表し、添加剤欄の数値は、重合体成分の全量100質量部に対する添加量(質量部)を表す(表4、表5についても同じ)。
【0137】
【表3】
【0138】
表3に示すように、(A)重合体及び(B)化合物を含む液晶配向剤を用いた実施例1~10は、(A)重合体及び(B)化合物を含まない液晶配向剤を用いた比較例1及び比較例6、(A)重合体を含まない液晶配向剤を用いた比較例2~5、並びに、(B)化合物を含まない液晶配向剤を用いた比較例7に比べて、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度のバランスが取れており、良好な結果であった。
【0139】
[実施例11:光FFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例5で得た重合体(PA-5)100質量部を含む溶液に、化合物(AD-7)10質量部を添加し、NMP及びブチルセロソルブ(BC)により希釈して、溶媒組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-11)を調製した。
【0140】
2.光配向法を用いたFFS型液晶表示素子の製造
実施例1と同様の第1基板及び第2基板を準備し、第1基板の電極形成面及び第2基板の片面のそれぞれに、液晶配向剤(AL-18)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間加熱(プレベーク)した。その後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥(ポストベーク)を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、直線偏光された254nmの輝線を含む紫外線1,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長254nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。次いで、光配向処理が施された塗膜を、230℃のクリーンオーブンで30分加熱して熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
次に、液晶配向膜を形成した一対の基板のうちの一方の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した。その後、光照射時の偏光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、液晶セルを得た。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを120℃で加熱してから室温まで徐冷した。その後、液晶セルにおける基板の外側両面に偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子を得た。また、上記の一連の操作を、ポストベーク後の紫外線照射量を100~10,000J/mの範囲でそれぞれ変更して実施することにより、紫外線照射量が異なる3個以上の液晶表示素子を製造し、最も良好な配向特性を示した露光量(最適露光量)の液晶表示素子を、以下の評価に用いた。
【0141】
3.評価
上記2.で製造した液晶表示素子につき、実施例1と同様の方法により液晶配向性、初期VHR及びVHR信頼性を評価した。また、液晶配向剤(AL-18)を用いて、実施例1と同様にして膜強度を評価した。評価結果を表4に示す。
【0142】
[実施例12~20及び比較例8]
液晶配向剤の組成を表4のとおりに変更した以外は実施例11と同様にして液晶配向剤を調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例11と同様にして光配向法によりFFS型液晶表示素子を製造し、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度の評価を行った。それらの結果を表4に示した。なお、実施例12~14、18~20及び比較例8では重合体成分として2種類の重合体を使用し、実施例16では重合体成分として3種類の重合体を使用した。また、実施例12、14、16、18、20では添加剤を2種類使用した。
【0143】
【表4】
【0144】
表4に示すように、重合体(A)及び化合物(B)を含む液晶配向剤を用いた実施例11~20は、(A)重合体を含まない液晶配向剤を用いた比較例8に比べて、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度のバランスが取れており、良好な結果であった。
【0145】
[実施例21:PSA型液晶表示素子]
1.液晶配向剤(AL-21)の調製
合成例17で得た重合体(PA-17)30質量部を含む溶液に、合成例18で得た重合体(PA-18)70質量部を含む溶液、化合物(AD-2)5質量部、及び、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶剤組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-21)を調製した。
【0146】
2.液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC-6608)10gに対し、下記式(L1-1) で表される液晶性化合物を5質量%、及び下記式(L2-1)で表される光重合性化合物 を0.3質量%添加して混合し、液晶組成物LC1を得た。
【化29】
【0147】
3.PSA型液晶表示素子の製造
上記1.で調製した液晶配向剤(AL-21)を、スリット状にパターニングされたITO電極からなる導電膜をそれぞれ有するガラス基板2枚の各電極面上に、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で2分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、230℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.06μmの塗膜を形成した。これら塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行った後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、使用した電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
次いで、上記一対の基板のうち一方の基板の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、上記で調製した液晶組成物LC1を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。その後、液晶セルの導電膜間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、100,000J/mの照射量にて紫外線を照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて測定した値である。その後、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、PSA型液晶表示素子を製造した。
【0148】
4.液晶配向性の評価
上記3.で製造したPSA型液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を光学顕微鏡により観察し、液晶配向性を評価した。評価は、異常ドメインがない場合を「良好(○)」、一部に異常ドメインがある場合を「可(△)」、全体的に異常ドメインがある場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例では、液晶配向性は「良好(○)」の評価であった。
【0149】
5.電圧保持率(VHR)による電気特性の評価
上記3.で製造したPSA型液晶表示素子につき、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(初期VHR)を測定した。測定装置には(株)東陽テクニカ製VHR-1を使用した。このとき、電圧保持率が98%以上の場合に「優良(◎)」、95%以上98%未満の場合に「良好(○)」、80%以上95%未満の場合に「可(△)」、80%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例では、初期VHRは「優良(◎)」の評価であった。
【0150】
6.VHR信頼性の評価
上記3.で製造したPSA型液晶表示素子に対して、CCFLを光源とするバックライト上で168時間の光照射を行った。光照射後の液晶表示素子につき、70℃において1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。このとき、電圧保持率が95%以上の場合に「優良(◎)」、90%以上95%未満の場合に「良好(○)」、80%以上90%未満の場合に「可(△)」、80%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例では、VHR信頼性は「優良(◎)」の評価であった。
【0151】
7.膜強度(ラビング耐性)の評価
上記1.で調製した液晶配向剤(AL-21)を用いて、実施例1と同様にして膜強度を測定した。その結果、この実施例では膜強度「良好(○)」の評価であった。
【0152】
【表5】
【0153】
表5に示すように、重合体(A)及び化合物(B)を含む液晶配向剤を用いた実施例21は、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度のバランスが取れており、良好な結果であった。
【0154】
以上の結果から、(A)重合体及び(B)化合物を含む液晶配向剤によれば、液晶配向性、初期VHR、VHR信頼性及び膜強度に優れた液晶素子を得ることができることが明らかになった。