(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127597
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置及びバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/45 20220101AFI20240912BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240912BHJP
【FI】
B09B3/45 ZAB
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036848
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】516385918
【氏名又は名称】株式会社伸光テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 護
(72)【発明者】
【氏名】長澤 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA04
4D004BA03
4D004CA13
4D004CA22
4D004CA34
4D004CA39
4D004CB15
4D004CC03
4D004DA03
4D004DA07
(57)【要約】
【課題】バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物を、固形燃料として使用するのに不向きなものから効果的に使用できる固形燃料に作り変え、バイオマス発電所等のボイラーの蒸発管へのカリウムを含む灰分の付着を防止し、バイオマス発電所等のボイラーの蒸発管の伝熱効率を高めること、蒸発管の掃除等のメンテナンスの労力を低減し、洗浄工程の浸漬時間を短縮すること。
【解決手段】本発明は、有機性廃棄物を加水分解する加水分解部2と、加水分解部2から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、灰分を有機性廃棄物の細胞内からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理部と、ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分と、液体分に固液分離する固液分離部4と、を備え、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物から灰分の含量を低減することを特徴とする、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を加水分解する加水分解部と、
前記加水分解部から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、前記有機性廃棄物内の灰分を前記有機性廃棄物の細胞内からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理部と、
前記ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分と、液体分に固液分離する固液分離部と、を備え、
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物から灰分の含量を低減することを特徴とする、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項2】
前記有機性廃棄物は、エンプティ・フルーツ・バンチ(EFB)などの植物性廃棄物、食品廃棄物などの動植物系残渣、都市ごみ等である、請求項1に記載のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項3】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源が、石炭火力発電所やバイオマス発電所、製鉄会社等の固形燃料を使用しているボイラーの燃料に用いられる、請求項1に記載のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項4】
石炭火力発電所等で使用するの石炭と前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源とを混合して、ボイラーの燃料に用いられる、請求項1に記載のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項5】
前記フィルタプレスの圧力が0.3~3MPaである、請求項1~4いずれかに記載のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項6】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源は、加水分解処理で半炭化並びに滅菌され、含水率15%以下まで乾燥させた前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源を、ペレット化する請求項1~4いずれかに記載のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置。
【請求項7】
有機性廃棄物を加水分解する加水分解工程と、
前記加水分解部から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、前記有機性廃棄物内の灰分を前記有機性廃棄物の細胞からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理工程と、
前記ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源と、液体分に固液分離する固液分離工程と、を備え、
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源から灰分の含量を低減することを特徴とする、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置及びバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス発電所等で利用されるバイオマス資源に関し、本願出願人は、特許文献1の発明を行っている。
【0003】
特許文献1の発明は、植物性廃棄物を含む原料を加水分解処理し、生成物を製造する生成物の製造方法であって、原料を蒸気により加水分解する加水分解処理工程と、加水分解処理された原料を洗浄液で洗浄する洗浄工程と、洗浄された原料を固形分と液体分とに分離する固液分離工程と、を含み、固形分又は液体分の少なくとも一方を生成物とするものである。この発明は、植物性廃棄物を含む原料を加水分解処理し、生成物を製造する生成物の製造装置であって、原料を蒸気により加水分解処理する加水分解処理装置と、加水分解処理された原料を洗浄液で洗浄する洗浄装置と、洗浄された原料を固形分と液体分とに分離する固液分離装置と、を備えるものである。本発明により、植物性廃棄物原料から生成物を短時間で製造できる生成物の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【0004】
特許文献2の発明は、有機廃棄物の大幅な減容化、有機廃棄物をより効率的に分解処理して永続的な循環型資源構築を可能とする有機廃棄物の分解処理システムを提供する。この発明の有機廃棄物の分解システムは、投入された廃棄物を細分化するとともに撹拌することにより、有機廃棄物と無機廃棄物を分離し、有機廃棄物を搬出する粉砕機兼有機無機廃棄物分離装置10と、ナノバブル液を、搬入された有機廃棄物に供給し、有機廃棄物とナノバブル液を混合させるナノバブル液供給・混合機20と、内部に亜臨界水又は超亜臨界水が噴射、供給され、回転撹拌機で撹拌しながら、有機廃棄物の生分解処理により有機廃棄物を減容させる高圧減容機30、40、50を複数段配置してなる多段高圧減容機と、搬送されてきた減容有機物残渣に対して固液分離を行い、液体と粉体状又はコロイド状の有機廃棄物に分ける固液分離機60を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6190082号公報
【特許文献2】特開2021-90915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の生成物の製造方法では、洗浄工程において、浸漬されて、洗浄され、固液分離後の、固形分内のカリウムが2Kg(0.2DM)~4Kg(0.4DM)も含まれており、バイオマス発電所等のボイラーの蒸発管にカリウムが低温で溶融し、蒸発管の内壁又は外壁に付着し、または、塩素等が蒸発管の内壁又は外壁を腐食させて、蒸発管の伝熱効率を低下させ、さらには、掃除等のメンテナンスが負担となる問題がある。また、洗浄工程の浸漬時間を要し、処理の効率化が困難である。
【0007】
特許文献2においては、ナノバブル液を使用しているが、残渣物は、肥料や飼料等に利用され、燃料としては、活用が難しく、また、特許文献1と同様の問題を有している。
【0008】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物を、固形燃料として使用するのに不向きなものから効果的に使用できる固形燃料に作り変え、バイオマス発電所等のボイラーの蒸発管へのカリウムを含む灰分の付着を防止し、バイオマス発電所等のボイラーの蒸発管の伝熱効率を高めること、蒸発管の掃除等のメンテナンスの労力を低減し、洗浄工程の浸漬時間を短縮すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機性廃棄物を加水分解する加水分解部と、前記加水分解部から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、前記有機性廃棄物内の灰分を前記有機性廃棄物の細胞内からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理部と、前記ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分と、液体分に固液分離する固液分離部と、を備え、前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物から灰分の含量を低減することを特徴とする、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置である。
【0010】
「有機性廃棄物」は、動植物系廃棄物、木質系廃棄物、食品由来廃棄物、廃材等の建築廃棄物など、有機物由来の廃棄物を指す。
【0011】
「加水分解」は、温度が180~230℃、圧力は1~3MPaである。詳細は特許文献1を参照されたい。高温、高圧の飽和水蒸気で有機物を加水分解することにより、有機性廃棄物の細胞壁が崩れる。
【0012】
「ナノバブル液」とは、ナノバブル(ウルトラファインバブル)といわれる、液体中に漂う微細な気泡を含む液体のことである。ここでは、その泡の大きさは、直径0.1μm(100nm)~1μm、好ましくは、0.1μm(100nm)~0.5μm(500nm)である。ナノバブル(ウルトラファインバブル)は、気泡の周囲にマイナス電荷を帯びており、プラス電荷を帯びたイオンを引き寄せる性質がある。このナノバブルが壊れた細胞壁から、その内部に浸透し、バブルがマイナスイオンを帯びていることから、灰分のプラスイオンと結合し、壊れた細胞壁から灰分のイオンを取り出すことに特徴がある。直径が0.1μmを下回ると、様々な不都合が生じ、直径が1μmを上回ると、様々な不都合が生じる。
【0013】
「フィルタプレス」には、処理物を加圧して送り続けることで、ろ過するタイプと、ろ過室内にダイヤフラムを有した圧搾タイプがある。このフィルタプレスでは、ろ過室が処理物で満たされた後、さらに押し込むのではなく、ダイヤフラム内に高圧の空気や水、油などを圧入して膨らませることで、処理物の両側から圧搾力を加えて脱水することにより、固液分離する。どちらのタイプのフィルタプレスでも適用可能である。
【0014】
ここでいう「灰分」とは、Fe2O3,SiO2,CaO,Al2O3,MgO,TiO2,P2O5,SO3,K2O,N2O,KCl,Cl等である。
【0015】
前記有機性廃棄物は、エンプティ・フルーツ・バンチ(EFB)などの植物性廃棄物、食品廃棄物などの動植物系残渣、都市ごみ等であることが好ましい。これにより、廃棄されていた廃棄物を有効的に活用することができる。エンプティ・フルーツ・バンチ(EFB)(EMPTY FRUITS BUNCH)は、パームの木に生るパーム椰子房から果実を取り出した後に残るパーム椰子房の残渣物である空果房のことである。
【0016】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源が、石炭火力発電所やバイオマス発電所、製鉄会社等の固形燃料を使用しているボイラーの燃料に用いられることが好ましい。これにより、石炭火力発電所等で使用している石炭の使用量低減や、バイオマス発電所で使用する燃料の安定調達並びに燃料調達コストを低減することができる。
【0017】
石炭火力発電所等で使用するの石炭と前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源とを混合して、ボイラーの燃料に用いられることが好ましい。これにより、石炭火力発電所で使用する石炭の使用量を低減することができる。
【0018】
前記フィルタプレスの圧力が0.3~3MPaであることが好ましい。
【0019】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源は、加水分解処理で半炭化並びに滅菌されている。含水率15%以下まで乾燥させた前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源を、ペレット化(固形造粒)することが好ましい。これにより、カビ等が生じにくく、運搬時等でバンドリングしやすくなる。「半炭化」とは、別名「トレファクション」とも呼ばれ、有機性廃棄物を180~230℃で加熱することで有機物を分解・揮発して炭素成分が多い物質にする。ペレットの直径は6~10mmが好ましい。このペレットは、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源にリグニンが残っているため、長期にわたりしっかりとした形状を保ち、光沢を帯びており、これを水に入れても保形性がある。
【0020】
また、本発明は、有機性廃棄物を加水分解する加水分解工程と、前記加水分解部から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、前記有機性廃棄物内の灰分を前記有機性廃棄物の細胞からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理工程と、前記ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源と、液体分に固液分離する固液分離工程と、を備え、前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源から灰分の含量を低減することを特徴とするバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源を燃焼させることで、火力発電所やバイオマス発電所等のボイラーの蒸発管を加熱する際、蒸発管への灰分の付着又は灰分による蒸発管の腐食を防止し、火力発電所やバイオマス発電所等のボイラーの蒸発管の伝熱効率を高め、蒸発管の掃除等のメンテナンスの労力を低減し、洗浄工程の浸漬時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明実施形態に係るバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明実施形態に係るバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置1の実施形態について、
図1、2を参照して詳細に説明する。
【0024】
本発明実施形態では、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化装置1は、有機性廃棄物を加水分解する加水分解部2と、加水分解部2から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、有機性廃棄物内の灰分を有機性廃棄物の細胞からナノバブル液に取り出すナノバブル水処理部3と、ナノバブル水処理部3で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源と、液体分に固液分離する固液分離部4と、を備え、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源から灰分の含量を低減することを特徴とする。
【0025】
有機性廃棄物すなわち原料をEFBとして、バイオマス燃料を生成物として製造するが、これに限られず、トウモロコシ、バナナなどでもよい。EFBは、パームヤシの実からパーム油を搾油した後の残渣であるため、安価であり、多量に入手可能である。
【0026】
EFBは、加水分解処理装置の処理容器に投入される。このとき、EFBとともに水分調整材が、同時に投入されてもよい。水分調整材としては、吸水性とともに、加水分解処理で溶出させた有害重金属イオンなどを吸着可能な吸着材を使用してもよい。吸着材は、無機系吸着材でもよいが、有機系吸着材が好ましい。
【0027】
ここでいう「灰分」とは、前述したとおりのものである。
【0028】
有機性廃棄物は、前述したとおりのものであるが、実施形態では、EFBが例示される。
【0029】
EFBが処理容器に投入されると、処理容器内の撹拌手段が回転されることで、EFBが撹拌されてもよい。撹拌手段の運転は、連続又は間欠のいずれでもよいが、所定時間ごとに正回転及び逆回転を繰り返すように、回転方向をタイマーで制御するとよい。
【0030】
処理容器が密閉状態にされると、蒸気源から蒸気が処理容器の内部に供給され、処理容器の内部が所定の圧力及び温度に加圧及び昇温される。このときの処理容器の内部圧力は、1.0MPaから3.0MPa程度であり、内部温度は180℃~230℃である。
【0031】
処理容器の内部が所定の圧力及び温度に維持されると、EFBは、有機物であるため、加水分解処理され始める。蒸気の供給開始から所定の時間、例えば30分が経過すると、原料の加水分解処理がほぼ完了するため、蒸気の供給を停止し、加水分解処理を終了する。この加水分解処理工程により、EFBは加水分解処理される。なお、加水分解処理の時間は、処理量などに応じて適宜変更されるが、30分から2時間程度で十分である。
【0032】
EFBが加水分解処理されることで、セルロースなどの高分子が低分子化される。すなわち、植物繊維(植物の細胞壁及び細胞膜)が、脆くなるか破壊される。また、植物細胞中のカリウム、塩素などの元素は、液体分中に溶出しやすくなる。
【0033】
原料投入のときと同じように、撹拌手段を回転させることで、EFBが撹拌されてもよい。撹拌手段の運転は、連続又は間欠のいずれでもよいが、所定時間ごとに正回転及び逆回転を繰り返すように、回転方向をタイマーで制御するとよい。
【0034】
加水分解処理の終了後は、15分から60分を掛けて、処理容器の内部の圧力が常圧(0.1MPa)程度まで解放される。
【0035】
加水分解処理部で加水分解処理されたEFBは、処理容器から排出される。なお、EFBは、多少の水分を含んでいてもよい。このとき、加水分解処理前のEFBには、約32g/Kg(3.24%DM)のカリウムが含まれている。
【0036】
排出されたEFBは、ナノバブル水処理部3に投入され、洗浄液に浸漬されて洗浄される。洗浄液は、工場用水又は水道水などの水でよく、EFBの体積の3倍以上、好ましく5倍から10倍を用いるとよい。洗浄液の温度は、常温から60℃程度であればよい。処理時間は、処理量などに応じて適宜変更されるが、30分から120分程度で十分である。
【0037】
このナノバブル水処理によっても、EFBからカリウム等が溶出するため、カリウム等は洗浄液に移行する。このとき、固形燃料として使用するためには、固形燃料がドライベースでカリウムの濃度が最高でも1000ppm以下、500ppm以下が望ましい。洗浄液には、特定量のカリウムが移行している。このように洗浄後の洗浄液も、カリウムを含むため、そのまま液体肥料とすることもできるし、また、液体肥料の成分の一原料としても用いることができる。
【0038】
「ナノバブル液」とは、ナノバブル(ウルトラファインバブル)といわれる、液体中に漂う微細な気泡を含む液体のことである。ここでは、その泡の大きさは、直径0.1μm(100nm)~1μm、好ましくは、0.1μm(100nm)~0.5μm(500nm)である。ナノバブル(ウルトラファインバブル)は、気泡の周囲にマイナス電荷を帯びており、プラス電荷を帯びたイオンを引き寄せる性質がある。このナノバブルが壊れた細胞壁から、その内部に浸透し、バブルがマイナスイオンを帯びていることから、灰分のプラスイオンと結合し、壊れた細胞壁から灰分のイオンを取り出すことに特徴がある。直径が0.1μmを下回ると、種々の不都合が生じ、直径が1μmを上回ると、種々の不都合が生じる。ここでは液体として水を用いている。
【0039】
(分離工程)
ナノバブル水処理されたEFBを含む処理物は、固液分離装置の一種である固液分離部4に送られ、固形分と液体分とに分離(脱水)される。ここでは、固形分であるEFBから液体分を押し絞る(脱水する)、固液分離部4(フィルタプレス)が用いられる。「フィルタプレス」には、処理物を加圧して送り続けることで、ろ過するタイプと、ろ過室内にダイヤフラムを有した圧搾タイプがある。このフィルタプレスでは、ろ過室が処理物で満たされた後、さらに押し込むのではなく、ダイヤフラム内に高圧の空気や水、油などを圧入して膨らませることで、処理物の両側から圧搾力を加えて脱水することにより、固液分離する。両方の方式が適用できる。固液分離部4の圧力が0.3~3MPaであることが好ましい。圧力が0.3MPaを下回ると、十分に固液分離できないという不都合が生じ、圧力が3MPaを上回ると、設備的に大変高価になるという不都合が生じる。この固液分離部4後の固形分(EFB)には、特定量以下のカリウムしか含まれていない。
【0040】
この加水分解処理及びナノバブル水処理により、処理物中、灰分が液体分中に溶出する。つまり、加水分解処後のEFBには、例えば、特定量のカリウムしか含まれていない。逆に、分離された液体分には、特定量のカリウムが移行したことになる。この液体分は、このようにカリウムを多く含むため、そのまま液体肥料とすることもできるし、また、液体肥料の成分の一原料としても用いることができる。
【0041】
(乾燥工程)
分離された固形分は、若干水分を含んでいるため、乾燥装置で乾燥される。乾燥温度は、120℃から200℃程度である。なお、場合によっては、成形を先に行い、その後に、この乾燥を行うこともある。また、自然環境に応じて、天日乾燥の方式で乾燥させてもよい。
【0042】
乾燥された固形分は、材料をペレット化するダイ型のペレタイザーなどによりペレットに成形される。このペレット化された固形分には、特定量以下のカリウムしか含まれていない。また、このペレットの発熱量は、高い発熱量となり、一般的なバイオマス燃料の発熱量が4000Kcal(16.7MJ)/Kgから4200Kcal(17.5MJ)/Kg程度であるから、発熱量も向上している。
【0043】
一般的に、バイオマス燃料にカリウムが多量に含まれていると、燃焼炉の燃焼によりスラグ化することで、燃焼炉を閉塞させ、損傷を与えることがある。そのためEFBが、バイオマス燃料に用いられることが少なかったが、本実施形態の生成物の製造方法によれば、EFBからカリウムの含有量が少ないペレットを製造することができるため、バイオマス燃料として好適に用いることができる。また、燃焼炉で、石炭とバイオマス燃料とを混ぜて燃焼させても、バイオマス燃料単独で燃焼させても、問題が起こらない。
【0044】
加水分解処理前のEFBに含まれる他の元素や成分に関しては、塩素が特定割合、硫黄が特定割合、灰分が特定割合であったが、加水分解処理後は、塩素、硫黄、灰分が低減されていることもわかった。このように、バイオマス燃料中の塩素が少なくなることで、燃焼させても、蒸気管への灰分の付着や、蒸気管の腐食が発生し難くなる。
【0045】
以上のとおり、本発明の実施形態に係る生成物の製造方法は、有機性廃棄物を含む原料を加水分解処理し、生成物を製造するものであって、原料を蒸気により加水分解処理する加水分解処理工程と、加水分解処理された原料をナノバブル水で洗浄するナノバルブ工程と、ナノバブル処理された固液を固形分と液体分とに分離するフィルタプレス工程と、を含み、固形分及び液体分を生成物とするものである。
【0046】
これにより、有機性廃棄物を含む原料を、蒸気により加水分解処理するため、非常に短時間で固形分又は液体分の生成物を製造することができる。酵素を用いて有機性廃棄物を加水分解処理するには、0.5日から5日程度必要であったが、蒸気による加水分解処理では、30分から2時間程度しか必要でなく、時間を節約することができる。
【0047】
本実施形態では、分離工程の後、ナノバブル水処理により、固形物中のカリウム等が、洗浄液に溶出しやすくするため、固形分中のカリウム等の含有量を下げることができる。
【0048】
本実施形態では、ナノバブル液は、ナノバブル水である。これにより、生成物の洗浄液に特殊な薬液を使用することがないため、安価な工場用水又は水道水が利用できる。
【0049】
本実施形態では、固形分を乾燥する乾燥工程を、含む。固形分を含水率15%以下まで乾燥させる事で、型崩れせず光沢のあるペレットを成形する事ができる。
【0050】
本実施形態では、固形分をペレット化する成形工程を、含む。これにより、固形分の輸送などの取り扱いが容易になる。
【0051】
本実施形態では、固形分から、バイオマス燃料を製造する。これにより、固形分は、カリウムをほとんど含有しないため、燃料として用いることができる。
【0052】
本実施形態では、液体分から、液体肥料を製造する。これにより、液体分は、カリウムを多く含有するため、そのまま液体肥料とすることもできるし、また、液体肥料の成分の一原料としても用いてもよい。
【0053】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源が、石炭火力発電所やバイオマス発電所、製鉄会社等の固形燃料を使用しているボイラーの燃料に用いられることが好ましい。これにより、石炭火力発電所等で使用している石炭の使用量低減や、バイオマス発電所で使用する燃料の安定調達並びに燃料調達コストを低減することができる。
【0054】
石炭火力発電所等で使用するの石炭と前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源とを混合して、ボイラーの燃料に用いられることが好ましい。これにより、石炭火力発電所で使用する石炭の使用量を低減することができる。
【0055】
前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源は、加水分解処理で半炭化並びに滅菌されている。含水率15%以下まで乾燥させた前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源を、ペレット化(固形造粒)することが好ましい。これにより、カビ等が生じにくく、運搬時等でバンドリングしやすくなる。「半炭化」とは、別名「トレファクション」とも呼ばれ、有機性廃棄物を180~230℃で加熱することで有機物を分解・揮発して炭素成分が多い物質にする。ペレットの直径は6~10mmが好ましい。このペレットは、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源にリグニンが残っているため、長期にわたりしっかりとした形状を保ち、光沢を帯びており、これを水に入れても保形性がある。
【0056】
バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法は、
図2に示すように、有機性廃棄物を加水分解する加水分解工程S1と、加水分解部から排出される加水分解物をナノバブル液で処理し、有機性廃棄物内の灰分を前記有機性廃棄物の細胞からナノバブル液に取り出すナノバブル液処理工程S2と、ナノバブル液処理部で処理された処理物をフィルタプレスで、固体分のバイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源と、液体分に固液分離する固液分離工程S3と、を備え、前記バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源から灰分の含量を低減することを特徴とする、バイオマス資源並びに他の有機性廃棄物の資源化方法である。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 資源化装置
2 加水分解部
3 ナノバブル水処理部
4 固液分離部