IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社紀文食品の特許一覧

<>
  • 特開-筋肉増量剤 図1
  • 特開-筋肉増量剤 図2
  • 特開-筋肉増量剤 図3
  • 特開-筋肉増量剤 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127598
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】筋肉増量剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240912BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240912BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240912BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240912BHJP
   A23L 17/10 20160101ALI20240912BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L29/00
A23L5/00 K
A23L17/00 Z
A23L17/10
A23L11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036849
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000141509
【氏名又は名称】株式会社紀文食品
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】駿河 康平
(72)【発明者】
【氏名】門倉 一成
【テーマコード(参考)】
4B018
4B020
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B018MD58
4B018MD74
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF06
4B020LC05
4B020LG01
4B020LK15
4B020LP08
4B020LP15
4B020LP20
4B035LC06
4B035LG33
4B035LG42
4B035LP21
4B035LP24
4B042AC04
4B042AE01
4B042AG34
4B042AH01
4B042AK13
4B042AP17
4B042AP22
(57)【要約】
【課題】安全で作用が強い筋肉増量剤を提供すること。
【解決手段】本発明の筋肉増量剤は魚肉と大豆を含む。魚肉としては、例えばタラ目に属する魚類を用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉と大豆を含むことを特徴とする筋肉増量剤。
【請求項2】
前記魚肉がタラ目に属する魚類の魚肉である、請求項1に記載の筋肉増量剤。
【請求項3】
魚肉の凍結乾燥物と大豆粉の凍結乾燥物を含む、請求項1に記載の筋肉増量剤。
【請求項4】
前記魚肉の凍結乾燥物が、凍結乾燥した魚肉の粉砕物であり、前記大豆粉の凍結乾燥物が、凍結乾燥した大豆粉の粉砕物である、請求項3に記載の筋肉増量剤。
【請求項5】
前記魚肉が魚肉のすり身である、請求項3に記載の筋肉増量剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の筋肉増量剤を含む食品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の筋肉増量剤を含むサプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト等の動物が摂取して筋肉増量作用を示す筋肉増量剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉のうち、例えば骨格筋の主たる機能は、神経系からの随意メッセージに応答して収縮し、身体を運動させることにある。そのため、老化や疾患・外傷等によってその筋肉量が減少すると、移動能力などの身体運動機能が低下し、転倒し易くなって骨折リスクが高まることや、行動範囲が制限されて生活の質が下がるなど、健康的な生活を送ることが難しくなる。また、筋肉は、グルコースや脂肪酸を取り込んで消費するエネルギー代謝器官としての機能や、グルコースをグリコーゲンとして蓄えたり、体内のアミノ酸を筋タンパク質に変えて蓄えたりする貯蔵器官としての機能、さらに、飢餓や侵襲などの非常事態においては、骨格筋を構成する蛋白質の分解によってアミノ酸を供給する機能も担っている。そのため、身体運動能力の向上、疲労軽減、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病の予防、疾患からの早期回復の点から、骨格筋等の筋肉量を適切に維持し、必要に応じて筋肉量を増加させることが重要になる。こうした点から、種々の活性成分を含有する筋肉増強剤や筋肉増加剤が提案されており、その中には、大豆を用いたものや、魚肉を含有するものも見受けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、黒大豆と玄米とを原料として、同時発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢もろみと、ホスファチジルセリンを含有する抗疲労剤が筋肉増強作用を示すことが記載されている。
また、特許文献2には、小麦蛋白質の加水分解物を含有する筋肉増加作用組成物に大豆を添加してもよいことが記載されている。
一方、特許文献3には、タラ目に属する魚の魚肉タンパク質を含有する、速筋特異的な筋肉増
強剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-25092号公報
【特許文献2】特開2012-62309号公報
【特許文献3】特開2016-73292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、大豆や魚肉を用いた様々な筋肉増強剤、筋肉増加剤が提案されている。しかし、特許文献1の筋肉増強剤(抗疲労剤)は醗酵過程や醸造過程などの特殊なプロセスを用いて製造されるものであり、最終生成物の大豆由来の成分は、大豆本来の成分とは大きく異なるものと考えられる。また、特許文献2には、筋肉増加作用組成物に大豆を添加してもよいことが記載されているものの、大豆を添加した筋肉増加作用組成物について、実際の評価を行っていない。また、これらの文献には、大豆と魚肉を併用することは全く記載されていない。一方、特許文献3には、スケトウダラ由来の魚肉タンパク質をラットに与えたところ、筋肉増強作用が認められたことが記載されている。しかし、本発明者らが魚肉の筋肉増量作用を評価したところ、魚肉だけでは十分な筋肉増量作用が得られないことが判明した。
このような状況下で、本発明者らは、安全で作用が強い筋肉増量剤を提供することを課題として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、魚肉と大豆を組み合わせて用いることにより、これらが相乗的に作用して強い筋肉増量作用が発現することを見い出した。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
【0007】
[1] 魚肉と大豆を含むことを特徴とする筋肉増量剤。
[2] 前記魚肉がタラ目に属する魚類の魚肉である、[1]に記載の筋肉増量剤。
[3] 魚肉の凍結乾燥物と大豆粉の凍結乾燥物を含む、[1]または[2]に記載の筋肉増量剤。
[4] 前記魚肉の凍結乾燥物が、凍結乾燥した魚肉の粉砕物であり、前記大豆粉の凍結乾燥物が、凍結乾燥した大豆粉の粉砕物である、[3]に記載の筋肉増量剤。
[5] 前記魚肉が魚肉のすり身である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の筋肉増量剤。
[6] [1]~[5]のいずれか1つに記載の筋肉増量剤を含む食品。
[7] [1]~[5]のいずれか1つに記載の筋肉増量剤を含むサプリメント。
【発明の効果】
【0008】
本発明の筋肉増量剤は、魚肉と大豆を共に含むことにより、これらが相乗的に作用して強い筋肉増量作用を示す。また、魚肉と大豆はいずれも日常的に口にしている食品であるため、本発明の筋肉増量剤は安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】対照飼料を与えた対照群、筋肉増量剤1を含有する飼料1を与えた実施例群1、凍結乾燥魚肉粉を含有する比較飼料1を与えた比較例群1、凍結乾燥大豆粉を含有する比較飼料2を与えた比較例群2について、飼育期間経過後のヒラメ筋重量の平均値を示すグラフである。
図2】対照飼料を与えた対照群、筋肉増量剤1を含有する飼料1を与えた実施例群1、凍結乾燥魚肉粉を含有する比較飼料1を与えた比較例群1、凍結乾燥大豆粉を含有する比較飼料2を与えた比較例群2について、飼育期間経過後の腓腹筋重量の平均値を示すグラフである。
図3】対照飼料を与えた対照群、筋肉増量剤1を含有する飼料1を与えた実施例群1、凍結乾燥魚肉粉を含有する比較飼料1を与えた比較例群1、凍結乾燥大豆粉を含有する比較飼料2を与えた比較例群2について、飼育期間経過後の体重の平均値を示すグラフである。
図4】対照飼料を与えた対照群、筋肉増量剤1を含有する飼料1を与えた実施例群1、凍結乾燥魚肉粉を含有する比較飼料1を与えた比較例群1、凍結乾燥大豆粉を含有する比較飼料2を与えた比較例群2について、飼育期間中の総摂餌量の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
<筋肉増量剤>
本発明の筋肉増量剤は、魚肉と大豆を含むことを特徴とする。本発明における「筋肉増量剤」とは、筋肉量を増加させる作用を示す剤であることを意味する。
魚肉は、魚類の魚肉であればよく、赤身であっても白身であってもよく、赤身や白身以外の部分を含んでいてもよい。また、魚肉は、煮る、蒸す、焼くなどの加熱処理が施されたものであってもよい。魚肉を供する魚類の種類は特に制限されないが、タラ目に属する魚類の魚肉であることが好ましい。タラ目に属する魚類の例として、スケトウダラ、ミナミダラ、ノーザンブルーホワイティング、キングクリップ、メルルーサ、マダラおよびホキなどが挙げられる。
筋肉増量剤に用いる魚肉は、魚肉そのものであってもよいが、大豆等と混合し易い形状に加工したものであることが好ましい。こうした加工品として、魚肉のすり身や、乾燥させた魚肉(乾燥魚肉)を粉砕して得た粉砕物を挙げることができる。乾燥に供する魚肉は、魚肉を適当な大きさに切断して得た小片であってもよいし、魚肉のすり身であってもよい。魚肉のすり身は、例えば魚肉をすり潰して練ることにより得ることができる。また、乾燥魚肉は、魚肉の凍結乾燥物であることが好ましい。魚肉の凍結乾燥は常法に従って行うことができる。
【0012】
筋肉増量剤に用いる大豆の種類は特に制限されない。例えば、黄大豆、白大豆、青大豆、黒大豆、鞍掛豆などを使用することができる。また、大豆は、未加工の丸大豆であってもよいし、脱皮大豆、脱脂大豆、大豆粉などの加工品であってもよいし、煮る、蒸すなどの加熱処理が施されたものであってもよい。中でも、魚肉等と混合し易いことから大豆粉を用いることが好ましい。大豆粉は、通常、生の大豆を粉末状に挽いた粉であるが、煎る、焙じるなどの処理を行った大豆を粉末状に挽いた粉であってもよい。また、筋肉増量剤に用いる大豆は、丸大豆や大豆の加工品(例えば大豆粉)、加熱処理が施された大豆の凍結乾燥物を粉砕した粉砕物であってもよい。
【0013】
本発明の筋肉増量剤の好ましい態様として、(A)魚肉のすり身と大豆粉を含む組成物、(B)魚肉のすり身と大豆粉の混合物を凍結乾燥させた凍結乾燥物を含む組成物、(C)この凍結乾燥物を粉砕して得た粉砕物を含む組成物、(D)乾燥魚肉の粉砕物と大豆粉の混合物を含む組成物、(E)凍結乾燥した魚肉のすり身を粉砕して得た粉砕物と、凍結乾燥した大豆粉を粉砕して得た粉砕物を含む組成物を挙げることができる。ここで、各粉砕物は、所定のメッシュの篩にかけ、篩を通過した粉砕物を筋肉増量剤に用いることが好ましい。篩のメッシュは、例えば10~100の範囲から選択することができる。
【0014】
本発明の筋肉増量剤において、魚肉と大豆の配合比(重量比)は、通常9:1~1:9、好ましくは7:3~3:7、さらに好ましくは6:4~4:6である。
【0015】
また、本発明の筋肉増量剤は、魚肉と大豆のみで構成してもよいし、必要に応じて、魚肉と大豆以外の成分(第3成分)を添加してもよい。第3成分としては、筋肉増量剤の効果を過度に阻害しないものであれば、如何なるものを添加してもよい。筋肉増量剤が第3成分を含む場合、筋肉増量剤における魚肉と大豆の総量は、全体の0.5重量%以上5重量%未満であってもよいし、全体の5重量%以上30重量%未満であってもよいし、全体の30重量%以上60重量%未満であってもよいし、全体の60重量%以上であってもよい。
【0016】
本発明の筋肉増量剤は、魚肉と大豆を含むことにより、これらが相乗的に作用して強い筋肉増量作用を示す。また、本発明で用いる魚肉と大豆は、いずれも日常的に口にしている食品であるため、安全性が高い。そのため、本発明の筋肉増量剤は、プロテインバーやドリンクなどの栄養補助食品、練り製品などの食品、サプリメントへの展開など、さまざまな分野への応用が可能である。これらの応用に際して、本発明の筋肉増量剤は、粉末等の固体状で用いてもよいし、所望の溶媒または分散媒を添加して液状としてもよく、粘性が高くて流動性がある状態としてもよい。
【0017】
本発明の筋肉増量剤をプロテインバーやドリンクに応用する場合、これらのものには、本発明の筋肉増量剤に加えて、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、澱粉、油脂、甘味料、香料、着色剤、増粘剤などの第3成分を必要に応じて含有させることができる。
【0018】
本発明の筋肉増量剤を練り製品に応用する場合、その練り製品としては、蒲鉾類、つみれ、竹輪、薩摩揚、はんぺん、鳴門巻き、魚肉ソーセージ、かに風味かまぼこ、魚肉団子等が挙げられる。この場合、本発明の筋肉増量剤は、練り製品の原料となる魚肉のすり身として用いてもよいし、他の魚肉のすり身に添加するかたちで使用してもよい。
【0019】
本発明の筋肉増量剤を製剤化してサプリメントとして使用する場合、その製剤として、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などを挙げることができる。この場合、筋肉増量剤には、例えば、賦形剤、崩壊剤または崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤または溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、粘着剤、湿潤剤などを使用することができる。
【0020】
上記賦形剤としては、デンプン、コーンスターチ、白糖、乳糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、無機塩類等が具体例として挙げられる。
【0021】
上記崩壊剤または崩壊補助剤としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガント、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウムが具体例として挙げられる。
【0022】
上記結合剤としては、寒天、ゼラチン、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが具体例として挙げられる。
【0023】
上記滑沢剤としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ロウ類、水素添加油、ポリエチレングリコールが具体例として挙げられる。
【0024】
上記界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが具体例として挙げられる。
【0025】
本発明の筋肉増量剤の使用量は、患者の性別、体重、年齢、通常の食事で摂取する蛋白質量などの種々の条件に応じて適宜決定する。例えば、0.1g~30g(魚肉と大豆の乾燥総重量)/kg体重/日であることが好ましく、一日一回から数回に分けて摂取することが適当である。
【実施例0026】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0027】
(実施例1)筋肉増量剤1を含む飼料1の調製
助宗タラ(スケトウダラ)のすり身(原産地;アメリカ、加工元;アメリカントライアンフ)と大豆粉(種類;米国産白目大豆、製造元;株式会社マエダ・スーパー・テクノ)を、それぞれ凍結乾燥させて粉砕した後、24メッシュスクリーンにかけ、スクリーンを通過した粉末(凍結乾燥魚肉粉、凍結乾燥大豆粉)を回収した。この凍結乾燥魚肉粉と凍結乾燥大豆粉の組成物を筋肉増量剤1として、表1に示す配合比で飼料の原料と混合し、ペレット化することにより、固形飼料(飼料1)を得た。
【0028】
(比較例1)凍結乾燥魚肉粉を含む比較飼料1の調製
実施例1と同様にして得た凍結乾燥魚肉粉を筋肉増量剤1の代わりに用い、表1に示す配合比で固形飼料(比較飼料1)を調製した。
【0029】
(比較例2)凍結乾燥大豆粉を含む比較飼料2の調製
実施例1と同様にして得た凍結乾燥大豆粉を筋肉増量剤1の代わりに用い、表1に示す配合比で固形飼料(比較飼料2)を調製した。
【0030】
また、表1に示す配合比で対照用の固形飼料(対照試料)を調製した。表1中、「AIN-93Gミネラル混合」、「AIN-93ビタミン混合」は、AIN(米国栄養研究所)で規定されたミネラル混合物、ビタミン混合物である。飼料1、比較試料1、2については、スケトウダラのすり身が塩分を含んでいたり、大豆粉が油分を含んでいたりするため、対照飼料と成分量が揃うように、ミネラル分や大豆油の配合比を調整した。また、表中の「-」は、その成分を添加していないことを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
各飼料の成分分析結果を表2に示す。表2中、成分量は飼料100g中に含まれる各成分の重量で表した。「総カロリー」は飼料100g当たりのカロリーであり、「蛋白カロリー比」、「脂質カロリー比」および「NFEカロリー比」は、総カロリーに占める各成分のカロリーの割合である。
【0033】
【表2】
【0034】
[筋肉増量作用の評価]
実験動物であるSD系雄ラット(6週齢)を1群8匹で4つの群に群分けし、それぞれ、対照群、実施例群1、比較例群1、比較例群2とした。各群のラットを一匹ずつケージに入れ、対照群のラットには対照飼料、実施例群1のラットには飼料1、比較例群1のラットには比較飼料1、比較例群2のラットには比較飼料2を与えて84日間飼育した。飼育環境を以下に示す。
飼育環境
温度:23±5℃
相対湿度:55±25%
明暗サイクル:
点灯時間:7~19時の12時間
消灯時間;19~7時の12時間
飼育期間の間、飼料はケージ上方の給餌器から自由に摂取させ、水(流水殺菌装置を通した水道水)は給水瓶から自由に摂取させた。また、給餌は週3回行い、その際に給餌量と残餌量を測定した。
飼育開始から84日間経過後、各ラットの体重を測定した後、ヒラメ筋と腓腹筋を摘出して重量を測定した。各群について求めたヒラメ筋重量の平均値を図1に示し、腓腹筋重量の平均値を図2に示し、体重の平均値を図3に示し、総摂餌量の平均値を図4に示す。各図において、エラーバーは標準誤差を表し、「**」は対照群と実施例群1でp値が0.01未満であることを示し、「*」は対照群と実施例群1でp値が0.05未満であることを示す。
図1、2に示すように、筋肉増量剤1を含有する飼料1を与えた実施例群1は、対照群に比べて、ヒラメ筋および腓腹筋の重量が有意に増加した。また、実施例群1のヒラメ筋量の増加分および腓腹筋量の増加分は、それぞれ、凍結乾燥魚肉粉および凍結乾燥大豆粉の一方のみを含有する飼料を与えた比較例群1と比較例群2のヒラメ筋量の増加分の合計、腓腹筋量の増加分の合計を上回っていた。このことから、魚肉と大豆を組み合わせて用いることにより、その相乗効果で高い筋肉増量作用が発現することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の筋肉増量剤は、筋肉増量作用が強く、且つ、安全性が高いため、プロテインバー、ドリンク、練り製品、サプリメントなど、さまざまな分野へ応用することが可能である。このため、本発明は、産業上の利用可能性が高い。
図1
図2
図3
図4