(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127601
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】衝突警報装置及び衝突警報方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036859
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 克仁
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】異なる方向に移動する移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知する
【解決手段】衝突警報装置は、2つの移動体の間の距離である移動体間距離を上記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を所定の時間間隔で繰り返し算出する算出部と、上記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として上記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力部と、を備え、上記相対速度は、上記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、上記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、上記衝突余裕時間は、上記2つの移動体の間の距離を上記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出部と、
前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力部と、
を備える衝突警報装置であって、
前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、
前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である、
衝突警報装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であって、且つ、前記2つの移動体のそれぞれを起点として前記2つの移動体のそれぞれの移動方向に沿って延びる2つの走行ラインの交点が、前記2つの移動体のいずれかの現在位置から予め定めた所定距離の範囲内の前方にあるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する、
請求項1に記載の衝突警報装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無くても、2つの前記走行ラインのそれぞれを中心線としてそれぞれ対応する移動体の胴体幅に等しい幅を持つ帯状領域である2つの走行領域が、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内の前方において互いに重なる領域を持つときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、
請求項2に記載の衝突警報装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において前記2つの走行領域が互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体の進行方向が対向しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、
請求項3に記載の衝突警報装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの走行領域が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体が同じ方向に移動しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、
請求項3に記載の衝突警報装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後に、前記一方の移動体の移動速度がゼロになったときは、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に、前記一方の移動体の進行方向後方から前記一方の移動体に接近する他の移動体が存在しないことを条件として、前記一方の移動体において発出した警報を停止する、
請求項1に記載の衝突警報装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後は、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に他の交通参加者が居なくなるか、又は、前記一方の移動体の移動速度がゼロになるまで、前記一方の移動体における警報の発出を持続する、
請求項1に記載の衝突警報装置。
【請求項8】
前記2つの移動体のうちの一方の移動体に搭載され、
前記出力部は、前記一方の移動体において警報を発出する、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の衝突警報装置。
【請求項9】
衝突警報装置のコンピュータが実行する衝突警報方法であって、
2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出ステップと、
前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力ステップと、
を有し
前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、
前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である、
衝突警報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体間の衝突リスクについての警報を出力する衝突警報装置及び衝突警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
特許文献1には、自車両が走行する道路と交叉する道路を自車両前方の交差点に向かって他車両が移動する場合に、ヘッドアップディスプレイによりフロントガラス上に、運転者から視た交差道路の位置に重畳して所定間隔で離間する複数の遮蔽画像を表示する、走行支援装置が開示されている。運転者は、上記離間した遮蔽画像を手掛かりとして、上記他車両の交差点への接近を把握し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、予防安全技術においては、自車両周囲の物体との接触リスクを適切な時点で運転者に伝えて、操縦行動に反映してもらうことが課題である。
特に、自車両が走行する道路と交叉する道路を自車両前方の交差点に向かって移動する他車両のように自車両の進行方向と異なる方向から接近する他車両や、異なる方向から接近するおそれのある他車両との衝突可能性について、運転者の感度が鈍くなり得る。
【0006】
本願は、上記課題の解決のため、異なる方向に移動する移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出部と、前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力部と、を備える衝突警報装置であって、前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であって、且つ、前記2つの移動体のそれぞれを起点として前記2つの移動体のそれぞれの移動方向に沿って延びる2つの走行ラインの交点が、前記2つの移動体のいずれかの現在位置から予め定めた所定距離の範囲内の前方にあるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無くても、2つの前記走行ラインのそれぞれを中心線としてそれぞれ対応する移動体の胴体幅に等しい幅を持つ帯状領域である2つの走行領域が、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内の前方において互いに重なる領域を持つときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において前記2つの走行領域が互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体の進行方向が対向しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの走行領域が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体が同じ方向に移動しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後に、前記一方の移動体の移動速度がゼロになったときは、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に、前記一方の移動体の進行方向後方から前記一方の移動体に接近する他の移動体が存在しないことを条件として、前記一方の移動体において発出した警報を停止する。
本発明の他の態様によると、前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後は、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に他の交通参加者が居なくなるか、又は、前記一方の移動体の移動速度がゼロになるまで、前記一方の移動体における警報の発出を持続する。
本発明の他の態様によると、前記衝突警報装置は、前記2つの移動体のうちの一方の移動体に搭載され、前記出力部は、前記一方の移動体において警報を発出する。
本発明の他の態様は、衝突警報装置のコンピュータが実行する衝突警報方法であって、2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出ステップと、前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力ステップと、を有し、前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる方向に移動する移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る衝突警報装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、移動体において警報が発出されるシーンの第1の例を示す図である。
【
図3】
図3は、移動体において警報が発出されるシーンの第2の例を示す図である。
【
図4】
図4は、移動体において警報が発出されるシーンの第3の例を示す図である。
【
図5】
図5は、移動体において警報が発出されるシーンの第4の例を示す図である。
【
図6】
図6は、移動体において発出された警報が停止され得るシーンの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、警報発出装置が実行する警報発出方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る衝突警報装置1の構成を示す図である。
衝突警報装置1は、例えば、サーバ装置であり、インターネット等の通信ネットワーク3を介して、及び又は直接に、移動体2a及び2bを含む複数の移動体と互いに通信可能に接続されている。衝突警報装置1は、また、移動体2a及び2bを含む複数の移動体が移動し得る空間又は領域を撮像する一つ又は複数のカメラ4と、通信可能に接続されていてもよい。
【0011】
衝突警報装置1は、2つの移動体2a及び移動体2bの間の衝突リスクの有無を判断して、移動体2a及び又は2bに警報を出力する。
なお、衝突警報装置1は、本実施形態ではサーバ装置であるものとしたが、これに限らず、いずれかの移動体(例えば移動体2a)に備えられて、その移動体において警報を発出するものとしてもよい。
【0012】
本実施形態では、移動体2a、2bは、例えば、自動車である。また、カメラ4は、例えば、市街地や高速道路に設置された道路基盤を構成する監視カメラであり得る。
なお、移動体2a、2bは、自動車に限らず、人が搭乗して利用する任意の乗り物であり得る。例えば、移動体2a、2bは、二輪自動車及び自転車等を含む、陸上を走行するその他の陸上移動体であってもよい。あるいは、移動体2a、2bは、船舶等の海を移動する海洋移動体、航空機等の空中移動体、又は宇宙船等の宇宙移動体であってもよい。
【0013】
移動体2a、2bは、それぞれ、移動体室内に、その移動体の乗員に警報を発出するためのHMI(Human Machine Interface)装置5a及び5bを備える。HMI装置5a、5bは、例えば、移動体室内に備えられた表示装置及び又はスピーカであり得る。
【0014】
また、移動体2a、2bは、それぞれ、無線通信装置6a、6bを備える。移動体2a、2bは、それぞれ、従来技術に従い、その移動体2a、2bのそれぞれの、現在の位置、速度、及び移動方向を、所定の時間間隔で計測し、計測した現在位置、速度、及び移動方向の情報を、無線通信装置6a、6bによりその移動体の外部へ送信する。また、移動体2a、2bは、それぞれ、その移動体2a、2bの方向指示器が操作されたときは、方向指示器の動作情報を、無線通信装置6a、6bによりその移動体の外部へ送信する。また、移動体2a、2bは、それぞれ、衝突警報装置1からの要求を受信したことに応じて、移動体2a、2bの、移動方向に直交する方向の最大幅である移動体幅(例えば、車幅)の情報を、衝突警報装置1へ送信する。
【0015】
衝突警報装置1は、プロセッサ10と、メモリ11と、通信装置12と、を有する。メモリ11は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。通信装置12は、衝突警報装置1が、移動体2a、2b及びカメラ4と通信するための、無線通信及び又は有線通信を行う送受信器である。
【0016】
衝突警報装置1は、通信装置12により、移動体2a及び2bのそれぞれから所定時間間隔で送信される速度及び移動方向の情報、並びに方向指示器の動作情報を受信する。また、衝突警報装置1は、通信装置12により、カメラ4が所定時間間隔で撮影した移動体2a、2bの画像を、そのカメラ4から取得する。また、衝突警報装置1は、通信装置12により、移動体2a、2bに対して、移動体幅の情報を求める要求を送信し、これに応じて移動体2a、2bから送信される移動体幅の情報を受信する。
【0017】
プロセッサ10は、例えば、CPU等を備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとしてCTTC算出部13と、状況判断部14と、警報出力部15と、を備える。
【0018】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10が、メモリ11に保存されたプログラムを実行することにより実現される。なお、プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0019】
CTTC算出部13は、本開示における算出部に相当する。CTTC算出部13は、所定の時間間隔で、移動体2a、2bの間の距離である移動体間距離Dabを、移動体2a、2b間の相対速度で除算して、衝突余裕時間(TTC、Time-To-Collision)を繰り返し算出する。
【0020】
本実施形態では、特に、CTTC算出部13は、所定の時間間隔で、2つの移動体2a、2bのそれぞれの移動速度Va、Vbから、2つの移動体2a、2bの位置を結ぶ線分Labに沿った速度成分である向心速度Vca、Vcbを算出し、算出した向心速度Vca、Vcbから、移動体2a、2bの上記線分Labに沿った相対速度である向心相対速度Vcrを算出する。そして、CTTC算出部13は、上記衝突余裕時間として、下記の式(1)により、2つの移動体2a、2bの間の移動体間距離Dabを、上記向心相対速度Vcrにより除算して得られる向心衝突余裕時間CTTC(Centripetal TTC)を、所定の時間間隔で算出する。
【数1】
【0021】
なお、向心速度Vca及びVcbは、線分Labに沿って移動体2aから移動体2bへ向かう方向の速度を正の値で表し、線分Labに沿って移動体2bから移動体2aへ向かう方向の速度を負の値で表すものとする。従って、式(1)で算出されるCTTCは、移動体2a、2bが互いに接近しつつあるときに正の値となる。
図1に示す例では、Vcaは正値、Vcbは負値であり、CTTCは正値となる。
【0022】
向心速度Vca、Vcbの算出に用いられる移動速度Va、Vbは、例えば速度ベクトルであり、衝突警報装置1が移動体2a、2bから所定時間間隔で取得する移動体2a、2bのそれぞれの速度及び移動方向から算出され得る。あるいは、移動速度Va、Vbは、衝突警報装置1がカメラ4から所定時間間隔で取得する移動体2a、2bの画像から算出されるものとしてもよい。移動体2a、2bの上記画像は、また、移動体2a、2bの周囲に存在する、カメラを備えた他の移動体から取得されるものとしてもよい。
【0023】
上記の向心衝突余裕時間により、本実施形態の衝突警報装置1では、異なる方向に移動す2つの移動体2a、2b間の接近の程度を、定量的に把握することができる。
【0024】
状況判断部14は、移動体2a、2bから取得されるそれぞれの移動体の現在位置、速度、移動方向についての情報、及び又は移動体2a、2bの方向指示器の動作情報に基づいて、移動体2a、2bを含む移動体間の相対的な状況を判断する。これに加えて、又はこれに代えて状況判断部14は、カメラ4又は他の移動体から取得され得る移動体2a、2b及びその周囲の画像に基づいて、上記状況を判断してもよい。
状況判断部14により判断された上記状況は、後述する警報出力部15において用いられる。
【0025】
具体的には、状況判断部14は、
図2に示すように、2つの移動体2a、2bのそれぞれを起点としてそれぞれの移動体2a、2bの移動方向に沿って延びる2つの走行ラインLda、Ldbの交点Pabが、移動体2aの現在位置から予め定めた所定距離dr(例えば、100m)の範囲である範囲Raの範囲内の前方(図示点線で示す円弧の内側)又は移動体2dの現在位置から予め定めた所定距離drの範囲である範囲Rbの範囲内の前方(図示一点鎖線で示す円弧の内側)のいずれかにあるか否かを判断する。ここで、範囲Raの範囲内の前方とは、移動体2aの進行方向に沿って前方であって且つ範囲Raの範囲内をいう。また、範囲Rbの範囲内の前方とは、移動体2bの進行方向に沿って前方であって且つ範囲Rbの範囲内をいう。以下同じ。
【0026】
また、状況判断部14は、
図3に示すように、2つの走行ラインLda、Ldbのそれぞれを中心線としてそれぞれ対応する移動体2a、2bの胴体幅wa、wbに等しい幅を持つ帯状領域である2つの走行領域TBa、TBbが、範囲Ra又は範囲Rbの範囲内の前方において互いに重なる重なり領域ORを持つか否かを判断する。
【0027】
これにより、衝突警報装置1では、衝突リスクの評価対象となる周囲の交通参加者の数を、移動体2a、2bのそれぞれから所定距離drの範囲に絞り込むので、衝突警報装置1における計算負荷を軽減することができる。
【0028】
また、状況判断部14は、2つの移動体2a又は2bの移動速度がゼロになったか否かを判断する。また、状況判断部14は、2つの移動体2aの進行方向と移動体2bの進行方向とが対向しているか又は同方向であるかを判断する。
【0029】
また、状況判断部14は、2つの移動体2a、2bの少なくとも一方の移動体(例えば、移動体2a)の方向指示器が、他方の移動体の走行ライン(例えば、移動体2bの走行ラインLdb)に接近する方向へ移動方向を変更することを示しているか否かを判断する。
【0030】
また、状況判断部14は、2つの移動体2a、2bのそれぞれについて、その移動体(例えば、移動体2a)から所定距離dr(例えば、100m)の範囲内に、上記一方の移動体の進行方向後方から上記一方の移動体に接近する他の移動体(例えば、移動体2b又はその他の移動体)が存在するか否かを判断する。
【0031】
また、状況判断部14は、2つの移動体2a、2bのそれぞれについて、その移動体(例えば、移動体2a)から所定距離ds(例えば、5m)の範囲内に他の交通参加者(移動体2b及びその他の移動体を含み得る)が居るか否かを判断する。
【0032】
警報出力部15は、本開示における出力部に相当する。
警報出力部15は、CTTC算出部13において算出された現在の向心衝突余裕時間(以下、単に「現在の向心衝突余裕時間」という)が、正の値であって且つ予め定めた閾値以下であることを条件として、状況判断部14における状況判断に基づき、2つの移動体2a、2bの少なくとも一方において警報を出力する。この警報は、例えば、移動体2a又は2bが備えるHMI装置5a又は5bにより行われるものとすることができる。
【0033】
これにより、衝突警報装置1では、移動体2a、2bがそれぞれ異なる方向に移動する場合であっても、これらの移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知することができる。
【0034】
なお、上述したように、衝突警報装置1は、本実施形態ではサーバ装置であるものとしたが、これに限らず、2つの移動体2a、2bのいずれかに備えられるものとすることができる。この場合には、警報出力部15は、少なくとも、衝突警報装置1が備えられた移動体のHMI装置(例えば、移動体2aのHMI装置5a)により、その移動体において警報を発出する。
【0035】
以下、警報出力部15が警報を発出するケースについて説明する。
図2は、移動体2a及び又は2bにおいて警報が発出されるシーンの第1の例を示している。
警報出力部15は、現在の向心衝突余裕時間が閾値以下であるときは、2つの移動体2a、2bの走行ラインLda、Ldbの交点Pabが、移動体2aの現在位置を中心とする範囲Raの範囲内の前方又は移動体2bの現在位置を中心とする範囲Rbの範囲内の前方のいずれかにあるときに、移動体2a、2bの少なくとも一方において警報を出力する。
これにより、衝突警報装置1では、移動体2a、2b間の接近の程度を定量的に把握しつつ、移動体2a、2bのそれぞれから所定距離drの範囲内において衝突する可能性を的確に判断して警報を発出することができる。また、衝突警報装置1では、衝突リスクの評価対象を範囲Ra及び範囲Rbの範囲内に絞り込むので、計算負荷を軽減することができる。
これにより、衝突警報装置1では、衝突リスクの評価対象を範囲Ra及び範囲Rbの範囲内に絞り込んで計算負荷を軽減しつつ、移動体2a、2b間の接近の程度を定量的に把握して、移動体2a、2bのそれぞれから所定距離drの範囲内において衝突する可能性を的確に判断して警報を発出することができる。
【0036】
図3は、移動体2a及び又は2bにおいて警報が発出されるシーンの第2の例を示す図である。
図3のシーンでは、移動体2a及び2bが、道路20の対向する2車線のそれぞれを、互いに対向する方向へ移動している。
警報出力部15は、現在の向心衝突余裕時間が閾値以下であるときは、
図3に示すシーンのように交点Pabが範囲Ra及びRbのいずれの範囲内にないときでも、2つの移動体2a、2bの走行領域TBa、TBbが、範囲Ra又は範囲Rbの範囲内の前方において互いに重なる重なり領域ORを持つときは、移動体2a、2bの少なくとも一方において警報を出力する。
これにより、衝突警報装置1では、上記と同様に、衝突リスクの評価対象を範囲Ra及び範囲Rbの範囲内に絞り込んで計算負荷を軽減しつつ、2つの移動体2a、2bの走行ラインLda、Ldbが所定距離drの範囲内において交差しない場合でも、それら2つの移動体2a、2bの接触の可能性を的確に判断して警報を発出することができる。
【0037】
図4は、移動体2a及び又は2bにおいて警報が発出されるシーンの第3の例を示す図である。
図4のシーンでは、移動体2a及び2bが、交差点21を挟んで、互いに対向する方向へ移動している。
警報出力部15は、現在の向心衝突余裕時間が閾値以下であるときは、範囲Ra及びRbの範囲内に交点Pab及び重なり領域ORがないときでも、2つの移動体2aの進行方向と移動体2bの進行方向とが対向しており、且つ、2つの移動体2a、2bの少なくとも一方の移動体の方向指示器(例えば、移動体2aの方向指示器7a又は移動体2bの方向指示器7b)が、他方の移動体の走行ライン(例えば、移動体2bの走行ラインLdb又は移動体2aの走行ラインLda)に接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、移動体2a、2bの少なくとも一方において警報を出力する。
これにより、例えば、移動体2a、2bが車両である場合に、交差点において対向する方向へ移動する2つの車両について、少なくとも一方の車両が他方の車両の進行方向前方に接近する可能性を的確に判断して、警報を発出することができる。
【0038】
図5は、移動体2a及び又は2bにおいて警報が発出されるシーンの第4の例を示す図である。
図5のシーンでは、複数の同じ走行方向の車線を有する道路22において、一の車線を走行する一方の移動体2aが、他の車線を走行する他方の移動体2bの前方にある。
警報出力部15は、現在の向心衝突余裕時間が閾値以下であるときは、範囲Ra及びRbの範囲内に交点Pab及び重なり領域ORがないときでも、例えば走行方向が同一である複数の車線において、2つの移動体2a、2bが同じ方向に移動しており、且つ、2つの移動体2a、2bの少なくとも一方の移動体の方向指示器(例えば、移動体2aの方向指示器7a又は移動体2bの方向指示器7b)が、他方の移動体の走行ライン(例えば、移動体2bの走行ラインLdb又は移動体2aの走行ラインLda)に接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、移動体2a、2bの少なくとも一方において警報を出力する。
これにより、例えば、移動体2a、2bが車両である場合に、複数の車線を同じ方向に走行する先行車と後続車において、先行車及び又は後続車が、後続車及び又は先行車の車線へ接近する可能性を的確に判断して、警報を発出することができる。
【0039】
図6は、移動体2a及び又は2bにおいて発出された警報が停止され得るシーンの一例を示す図である。
図6に示すシーンでは、警報が出力された移動体2aが走行を停止しており、移動体2aの後方に、移動体2aに接近中の他の移動体2cが存在する。
警報出力部15は、2つの移動体2a、2bの一方の移動体(例えば、移動体2a)において警報を発出した後に、上記一方の移動体の移動速度がゼロになったときは、上記一方の移動体から所定距離dr(例えば、100m)の範囲内に、上記一方の移動体の進行方向後方から上記一方の移動体に接近する他の移動体(例えば、移動体2a、2b以外の他の移動体2c)が存在しないことを条件として、上記一方の移動体において発出した警報を停止する。
これにより、移動体室内において警報が発出されたことにより停止操作が行われた移動体(
図6に示すシーンでは、移動体2a)の乗員に、後続の移動体(
図6に示す移動体2c)が追突する可能性についての注意を喚起することができる。
【0040】
また、警報出力部15は、2つの移動体2a、2bの一方の移動体(例えば、移動体2a)において警報を発出した後は、上記一方の移動体から所定距離dsの範囲内に他の交通参加者が居なくなるか、又は、上記一方の移動体の移動速度がゼロになるまで、上記一方の移動体における警報の発出を持続する。
これにより、例えば、移動体2a、2bが車両である場合に、車両の周囲に交通参加者が密集していて、それらの交通参加者を避けるために車両の進行方向が頻繁に変更される場合でも、短い警報が何度も繰り返されて運転者を煩わせてしまう、という事態を避けることができる。
【0041】
次に、衝突警報装置1が実行する衝突警報方法について説明する。
図7は、衝突警報装置1のコンピュータであるプロセッサ10が実行する衝突警報方法の処理の手順を示すフロー図である。
図7に示す処理は、繰り返し実行される。
【0042】
なお、
図7に示す処理と並行して、衝突警報装置1のプロセッサ10は、通信装置12により、移動体2a及び2bのそれぞれから所定時間間隔で送信される速度及び移動方向の情報、並びに方向指示器の動作情報を受信する。また、
図6に示す処理と並行して、衝突警報装置1のプロセッサ10は、通信装置12により、カメラ4が所定時間間隔で撮影した移動体2a、2bの画像を、そのカメラ4から取得する。また、
図6に示す処理と並行して、衝突警報装置1は、通信装置12により、移動体2a、2bに対して、移動体幅の情報を求める要求を送信し、これに応じて移動体2a、2bから送信される移動体幅の情報を受信する。また、状況判断部14は、
図6に示す処理と並行して、上記受信された各情報に基づき、上述したように移動体2a、2bを含む移動体間の相対的な状況を判断する。
【0043】
図7の処理を開始すると、まず、CTTC算出部13は、所定の時間間隔で、移動体2a、2bの間の向心衝突余裕時間(CTTC)を算出する(S100)。次に、警報出力部15は、現在のCTTCが所定の閾値以下であるか否かを判断する(S102)。そして、現在のCTTCが所定値より大きいときは(S102、NO)、警報出力部15は、警報を発出することなく、本処理を終了する。
【0044】
一方、CTTCが所定閾値以下であるときは(S102、YES)、警報出力部15は、状況判断部14における判断に基づき、移動体2aを中心とする範囲Ra又は移動体2bを中心とする範囲Rbのいずれかの範囲内の前方に、移動体2a、2bの走行ラインLda、Ldbの交点Pabが存在するか否かを判断する(S104)。
【0045】
そして、交点Pabが範囲Ra及び範囲Rbのいずれの範囲内の前方にもないときは(S104、NO)、警報出力部15は、状況判断部14における判断に基づき、移動体2aを中心とする範囲Ra又は移動体2bを中心とする範囲Rbのいずれかの範囲内の前方に、移動体2a、2bの走行領域TBa、TBbの重なり領域ORが存在するか否かを判断する(S106)。
【0046】
そして、重なり領域ORが範囲Ra及び範囲Rbのいずれの範囲内の前方にもないときは(S106、NO)、警報出力部15は、状況判断部14における判断に基づき、少なくとも一方の移動体2a又は2bの方向指示器が、他方の移動体2b又は2aの走行ラインLdb又はLdaに接近する方向への移動方向の変更を示しているか否かを判断する(S108)。
【0047】
そして、移動体2a及び2bの方向指示器が、いずれも、他方の移動体2b及び2aの走行ラインLdb又はLdaへの移動方向の変更を示していないときは(S108、NO)、警報出力部15は、本処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS104において交点Pabが範囲Ra及び範囲Rbのいずれかの範囲内にあるとき(S104、YES)、ステップS106において重なり領域ORが範囲Ra及び範囲Rbのいずれかの範囲内にあるとき(S106、YES)、又は、ステップS108において移動体2a及び2bの方向指示器が、他方の移動体2b及び2aの走行ラインLdb又はLdaへの移動方向の変更を示しているときは(S108、NO)、警報出力部15は、移動体2a及び2bの少なくとも一方において警報を発出する(S110)。なお、上述したように、衝突警報装置1が移動体2a又は2bに搭載されている場合には、警報出力部15は、少なくともその衝突警報装置1が搭載されている移動体2a又は2bにおいて警報を発出する。
【0049】
続いて、警報出力部15は、状況判断部14における判断に基づき、警報を発出した移動体2a又は2bから所定距離dsの範囲内に交通参加者が居るか否かを判断する(S112)。そして、警報を発出した移動体2a又は2bから所定距離dsの範囲内に交通参加者が居るときは(S112、YES)、警報出力部15は、状況判断部14における判断に基づき、ステップS110において警報を発出した移動体2a又は2b(以下、警報中移動体という)が停止した(例えば、速度がゼロになった)か否かを判断する(S114)。そして、警報中移動体が停止していないときは(S114、NO)、警報出力部15は、ステップS110に戻って警報の発出を継続する。
【0050】
一方、警報中移動体が停止したときは(S114、YES)、警報出力部15は、警報中移動体に後方から接近する他の移動体が居るか否かを判断する(S116)。そして、警報中移動体に後方から接近する他の移動体が居るときは(S116、YES)、警報出力部15は、ステップS110に戻って警報の発出を継続する。一方、警報中移動体に後方から接近する他の移動体がいないときは(S116、YES)、警報出力部15は、警報中移動体における警報を停止して(S118)、本処理を終了する。
【0051】
ここで、
図7において、ステップS100及びS110は、それぞれ、本開示における算出ステップ及び出力ステップに相当する。
【0052】
[その他の実施形態]
衝突警報装置1は、本実施形態ではサーバ装置であるものとしたが、上述したように、いずれかの移動体(例えば移動体2a)に備えられて、その移動体において警報を発出するものとしてもよい。
【0053】
本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0054】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0055】
(構成1)2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出部と、前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力部と、を備える衝突警報装置であって、前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である、衝突警報装置。
構成1の衝突警報装置によれば、2つの移動体がそれぞれ異なる方向に移動する場合であっても、これら2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った相対速度である向心相対速度に基づいて算出される向心衝突余裕時間により、これらの移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知することができる。
【0056】
(構成2)前記出力部は、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であって、且つ、前記2つの移動体のそれぞれを起点として前記2つの移動体のそれぞれの移動方向に沿って延びる2つの走行ラインの交点が、前記2つの移動体のいずれかの現在位置から予め定めた所定距離の範囲内の前方にあるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する、構成1に記載の衝突警報装置。
構成2の衝突警報装置によれば、衝突リスクの評価対象を所定距離の範囲内に絞り込んで計算負荷を軽減しつつ、移動体間の接近の程度を定量的に把握して、2つの移動体のそれぞれから所定距離の範囲内において衝突する可能性を的確に判断して、警報を発出することができる。
【0057】
(構成3)前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無くても、2つの前記走行ラインのそれぞれを中心線としてそれぞれ対応する移動体の胴体幅に等しい幅を持つ帯状領域である2つの走行領域が、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内の前方において互いに重なる領域を持つときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であるときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、構成2に記載の衝突警報装置。
構成3の衝突警報装置によれば、2つの移動体の走行ラインが所定距離の範囲内において交差しない場合でも、それら2つの移動体の接触の可能性を的確に判断して警報を発出することができる。
【0058】
(構成4)前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において前記2つの走行領域が互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体の進行方向が対向しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、構成3に記載の衝突警報装置。
構成4の衝突警報装置によれば、例えば、交差点において対向する方向へ移動する2つの車両について、少なくとも一方の車両が他方の車両の進行方向前方に接近して来る可能性を的確に判断して、警報を発出することができる。
【0059】
(構成5)前記出力部は、前記交点が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内に無く、且つ、前記2つの走行領域が前記2つの移動体の現在位置から前記所定距離の範囲内において互いに重なる領域を持たないときでも、前記2つの移動体が同じ方向に移動しており、且つ、前記2つの移動体の少なくとも一方の移動体の方向指示器が、他方の移動体の前記走行ラインに接近する方向へ移動方向を変更することを示しているときは、前記向心衝突余裕時間が予め定めた閾値以下となったときに、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を発出する、構成3又は4に記載の衝突警報装置。
構成5の衝突警報装置によれば、例えば、複数の車線を同じ方向に走行する先行車と後続車において、先行車及び又は後続車が、後続車及び又は先行車の車線へ接近する可能性を的確に判断して、警報を発出することができる。
【0060】
(構成6)前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後に、前記一方の移動体の移動速度がゼロになったときは、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に、前記一方の移動体の進行方向後方から前記一方の移動体に接近する他の移動体が存在しないことを条件として、前記一方の移動体において発出した警報を停止する、構成1ないし5のいずれかに記載の衝突警報装置。
構成6の衝突警報装置によれば、移動体室内において警報が発出されたことにより停止操作が行われた移動体の乗員に、後続の移動体が追突する可能性についての注意を喚起することができる。
【0061】
(構成7)前記出力部は、前記2つの移動体の一方の移動体において警報を発出した後は、前記一方の移動体から所定の距離範囲内に他の交通参加者が居なくなるか、又は、前記一方の移動体の移動速度がゼロになるまで、前記一方の移動体における警報の発出を持続する、構成1ないし6のいずれかに記載の衝突警報装置。
構成7の衝突警報装置によれば、例えば車両の周囲に交通参加者が密集している場合に、交通参加者を避けるために車両の進行方向が頻繁に変更され、短い警報が何度も繰り返されて運転者を煩わせてしまう、という事態を避けることができる。
【0062】
(構成8)前記2つの移動体のうちの一方の移動体に搭載され、前記出力部は、前記一方の移動体において警報を発出する、構成1ないし7のいずれかに記載の衝突警報装置。
構成8の衝突警報装置によれば、例えば、車両に搭載された車載装置としての衝突警報装置により、その車両についての衝突リスクを運転者に迅速に警告することができる。
【0063】
(構成9)衝突警報装置のコンピュータが実行する衝突警報方法であって、2つの移動体の間の距離である移動体間距離を前記2つの移動体の相対速度で除算して得られる衝突余裕時間を、所定の時間間隔で繰り返し算出する算出ステップと、前記衝突余裕時間が予め定めた閾値以下であることを条件として、前記2つの移動体の少なくとも一方において警報を出力する出力ステップと、を有し前記相対速度は、前記2つの移動体のそれぞれの移動速度の、前記2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った成分である向心速度から算出される向心相対速度であり、前記衝突余裕時間は、前記2つの移動体の間の距離を前記向心相対速度により除算して得られる向心衝突余裕時間である、衝突警報方法。
構成9の衝突警報方法によれば、2つの移動体がそれぞれ異なる方向に移動する場合であっても、これら2つの移動体の位置を結ぶ線分に沿った相対速度である向心相対速度に基づいて算出される向心衝突余裕時間により、これらの移動体間の接近の程度を定量的に把握して、それら移動体間の衝突リスクを運転者に適切に通知することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…衝突警報装置、2a、2b、2c…移動体、3…通信ネットワーク、4…カメラ、5a、5b…HMI装置、6a、6b…無線通信装置、7a、7b…方向指示器、10…プロセッサ、11…メモリ、12…通信装置、13…CTTC算出部、14…状況判断部、15…警報出力部、20、22…道路、21…交差点、Dab…移動体間距離、dr、ds…所定距離、Lab…線分、Lda、Ldb…走行ライン、Pab…交点、Ra、Rb…範囲、TBa、TBb…走行領域、Va、Vb…移動速度、Vca、Vcb…向心速度、wa、wb…胴体幅。