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特開2024-127608運行支援装置、運行支援方法および鉄道運行システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127608
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】運行支援装置、運行支援方法および鉄道運行システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20240912BHJP
【FI】
B61L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036870
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 聖弥
(72)【発明者】
【氏名】山形 庄平
(72)【発明者】
【氏名】島田 誠人
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ32
5H161JJ34
(57)【要約】
【課題】運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運行計画案を提示することができる運行支援装置、運行支援方法および鉄道運行システムを提供することができる。
【解決手段】列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する運行計画条件入力部211と、運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員に提示する確認処理部212と、を備える運行支援装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する運行計画条件入力部と、
前記運行計画条件を基に作成された前記運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、前記確認項目に対する回答を含めて再度作成された前記運行計画案を指令員に提示する確認処理部と、
を備える運行支援装置。
【請求項2】
前記確認処理部は、前記確認項目を提示し、前記回答を得る処理を対話形式で行う請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項3】
前記運行計画条件入力部は、前記運行計画条件を要求し、取得する処理についてさらに対話形式で行う請求項2に記載の運行支援装置。
【請求項4】
前記確認処理部は、前記運行計画案に対する確信度を基に前記不足情報を抽出する請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項5】
前記確認処理部は、共通する複数の確認内容について、1つに纏めるグループ化を行い、前記確認項目として確認先に確認する請求項4に記載の運行支援装置。
【請求項6】
前記確認処理部は、前記不足情報に前記確信度を表す確信度データが含まれないときは、運用未定である列番を抽出したデータである運用未定データに対する前記確認項目を作成する請求項4に記載の運行支援装置。
【請求項7】
前記確認処理部は、前記不足情報に前記運用未定データが含まれないときは、KPIデータに対する前記確認項目を作成する請求項6に記載の運行支援装置。
【請求項8】
前記KPIデータは、前記運行計画案の評価指標および制約条件を表す請求項7に記載の運行支援装置。
【請求項9】
前記KPIデータは、前記運行計画案および前記運行計画条件から作成される請求項8に記載の運行支援装置。
【請求項10】
前記確認処理部は、予め作成された確認条件データに含まれる条件内容に該当した場合に、前記確認項目を作成する請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項11】
前記確認条件データは、前記条件内容の他、確認先および確認内容を含む請求項10に記載の運行支援装置。
【請求項12】
前記確認先は、指令員を含む請求項11に記載の運行支援装置。
【請求項13】
前記運行計画条件は、支障に関する情報である支障情報、および指令員の運用方針を含む請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項14】
プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することにより、
列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得し
前記運行計画条件を基に作成された前記運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、前記確認項目に対する回答を含めて再度作成された前記運行計画案を指令員に提示する、
運行支援方法。
【請求項15】
列車の運行に支障が生じる事象が発生したときに、支障に対応する運行計画案を作成する列車運行管理装置と、
指令員との間で対話形式にてやりとりをすることで、前記運行計画案の作成に必要な情報を取得する運行支援装置と、
を備え、
前記運行支援装置は、
前記運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する運行計画条件入力部と、
前記運行計画条件を基に作成された前記運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、前記確認項目に対する回答を含めて再度作成された前記運行計画案を指令員に提示する確認処理部と、
を備える鉄道運行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行支援装置、運行支援方法、鉄道運行システムに関する。本発明は、特に、列車の運行に支障が生じたときに、列車の運行計画案を作成する処理を支援する運行支援装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の運行に支障を与える事象を生じたときには、鉄道のダイヤ乱れを解消するための業務として列車の運転整理が行われる。このとき、従来は、指令員の知識と経験に頼り、個々の列車に対して運転整理が行われている。
よって、近年は、過去の運転整理の履歴を教師データとして、学習モデルを作成し、この学習モデルに従い、運行計画案(運転整理案)を作成する試みがなされている。
【0003】
特許文献1には、運転整理支援装置は、少なくとも列車の種別、遅れ時間、輸送量を含む所定の複数の指標に基づいて、列車の遅延が列車運行管理会社に与える損失値を予め記憶する損失管理データベースと、現在の運行計画に基づいて少なくとも一つの運転整理案を作成するために演算する運転整理案演算部と、運転整理案演算部により作成された運転整理案の損失値を損失管理データベースに基づいて算出する運転整理案評価部と、運転整理案と損失値を対応づけて提示する運転整理案提示部と、を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-104794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、学習モデルにより運行計画案を作成する際に、必要な情報が不足する場合、不適切な運用変更を採択する可能性がある。この情報は、例えば、車両や乗務員情報、駅の情報、指令員の運用方針等が挙げられる。そこで、不足する情報を取り込み、適切な運行計画案を提示する技術が期待される。
本発明は、運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運行計画案を作成する処理を支援する運行支援装置、運行支援方法および鉄道運行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため本発明は、列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する運行計画条件入力部と、運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員に提示する確認処理部と、を備える運行支援装置を提供する。この場合、運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運転整理案を作成する処理を支援することができる。
【0007】
ここで、確認処理部は、確認項目を提示し、回答を得る処理を対話形式で行うことができる。この場合、回答する側は、入力すべき情報を明確に把握することができる。
また、運行計画条件入力部は、運行計画条件を要求し、取得する処理についてさらに対話形式で行うようにできる。この場合、回答する側は、入力すべき運行計画条件を明確に把握することができる。
さらに、確認処理部は、運行計画案に対する確信度を基に不足情報を抽出することができる。この場合、不足情報をより精度よく抽出できる。
またさらに、確認処理部は、共通する複数の確認内容について、1つに纏めるグループ化を行い、確認項目として確認先に確認することができる。この場合、確認項目の総数を削減し、回答する側の入力する手間を軽減できる。
また、確認処理部は、不足情報に確信度を表す確信度データが含まれないときは、運用未定である列番を抽出したデータである運用未定データに対する確認項目を作成することができる。この場合、運用未定データに関する不足情報について確認することができる。
さらに、確認処理部は、不足情報に運用未定データが含まれないときは、KPIデータに対する確認項目を作成することができる。この場合、KPIデータに関する不足情報について確認することができる。
またさらに、KPIデータは、混雑度および運休率等の運行計画案の評価指標および制約条件を表すようにできる。この場合、KPIデータとしてより適切なものとすることができる。
そして、KPIデータは、運行計画案および運行計画条件から作成されることができる。この場合、KPIデータをより簡単に作成できる。
また、確認処理部は、予め作成された確認条件データに含まれる条件内容に該当した場合に、確認項目を作成することができる。この場合、確認項目の作成がより容易になる。
さらに、確認条件データは、条件内容の他、確認先および確認内容を含むようにできる。この場合、確認条件データを基に確認先および確認内容が特定でき、確認項目を作成するのがより容易になる。
またさらに、確認先は、指令員を含むようにすることができる。この場合、確認項目を確認するのにより適切な回答先を含めることができる。
【0008】
また、本発明は、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することにより、列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得し運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員に提示する、運行支援方法を提供する。この場合、運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運転整理案を作成する処理を支援することができる。
【0009】
さらに、本発明は、列車の運行に支障が生じる事象が発生したときに、支障に対応する運行計画案を作成する列車運行管理装置と、指令員との間で対話形式にてやりとりをすることで、運行計画案の作成に必要な情報を取得する運行支援装置と、を備え、運行支援装置は、運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する運行計画条件入力部と、運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員に提示する確認処理部と、を備える鉄道運行システムを提供する。この場合、運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運転整理案を作成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運行計画案を作成する際に不足する情報を判断し、取り込むことで、より適切な運転整理案を作成する処理を支援する運行支援装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態が適用される鉄道運行システムの全体構成を示したブロック図である。
図2】対話装置の詳細な構成について示したブロック図である。
図3】運行計画案データについて示した図である。
図4】運行計画条件データについて示した図である。
図5】確信度データについて示した図である。
図6】運用未定データについて示した図である。
図7】KPIデータについて示した図である。
図8】確認条件データについて示した図である。
図9】確認項目データについて示した図である。
図10】回答データについて示した図である。
図11】鉄道運行システムの動作について説明したシーケンス図である。
図12図11のS105~S106の処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。
図13図11のS107~S112の処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。
図14図13のS302の確認項目を作成する処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。
図15】(a)~(d)は、確認項目を作成する処理で扱うデータの変遷を示した図である。
図16】(a)~(b)は、図11のS105で、運行計画条件を指令員が入力するときに端末装置で表示される画面を示した図である。
図17】(a)~(d)は、図11のS105で、運行計画条件を指令員が入力するときに端末装置で表示される画面を示した図である。
図18】(a)は、運行計画条件の設定完了画面を示した図である。(b)は、指令員が回答を入力する画面を示した図である。
図19】(a)~(d)は、運行管理装置でなされる処理を視覚化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
<鉄道運行システム1の全体説明>
図1は、本実施の形態が適用される鉄道運行システム1の全体構成を示したブロック図である。
図1に示すように、鉄道運行システム1は、列車運行管理装置10と、対話装置20と、外部システム30と、指令所41と、車両基地42と、乗務員区43と、信号機50と、列車60と、駅設備70とを備える。これらは、ネットワーク80を介し接続されている。
【0014】
列車運行管理装置10は、転轍機(ポイント)等の駅設備70の状態、在線している列車60の位置の情報、およびダイヤグラムの情報を参照する。そして、列車60毎に在線している位置と時刻に応じ、信号機50や駅設備70の設定を行う。
また、列車運行管理装置10は、詳しくは後述するが、輸送障害等の列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案(運転整理案)を作成する。そして、指令員41aの承諾が得られると、支障に対応する運行計画として実行される。
【0015】
列車運行管理装置10は、運行計画生成部11と、運行計画指示部12と、記憶部13とを備える。
運行計画生成部11は、支障が生じたときに列車の運行計画案を作成する。
運行計画指示部12は、運行計画に基づいた運行計画情報を信号制御装置31に送信して制御を指示する。運行計画情報は、輸送計画情報、車両運用情報、乗務員運用情報等を含む。
記憶部13は、運行計画情報を格納する。
【0016】
対話装置20は、運行支援装置の一例である。詳しくは後述するが、対話装置20は、指令員との間で対話形式にてやりとりをすることで、運行計画案の作成に必要な情報を取得する。
対話装置20は、処理部21と、記憶部22とを備える。処理部21および記憶部22の構成については後で詳細に説明する。
【0017】
外部システム30は、信号制御装置31と、構内作業管理装置32と、乗務員運用管理装置33と、車両運用管理装置34とを備える。
信号制御装置31は、運行計画情報に基づき、信号機50、列車60、駅設備70などを制御する装置である。
構内作業管理装置32は、駅構内や車両基地構内における、番線入換、増解結、車両の検査等の構内作業に関する計画の管理を行う。
乗務員運用管理装置33は、運転士や車掌などの列車の乗務員を何れの列車に何れの順番で乗務させるかの計画の管理を行う。
車両運用管理装置34は、列車運行管理装置10によって作成された運行計画に基づき、車両を何れの列車に割り当てるかの計画の管理を行う。
【0018】
指令所41では、指令員41aが指令業務を行い、これにより列車の運行を管理する。指令員41aは、端末装置41bを使用して、列車の運行の状態を見ることができ、また、指令の入力を行うことができる。また、支障が生じたときは、この後説明するように、指令員41aは、端末装置41bを使用して、対話装置20との間で対話を行う。
【0019】
車両基地42では、担当者42aが車両の管理業務を行い、車両の収容、車両の入換、車両の検査・修理を管理する。担当者42aは、端末装置42bを使用して、車両の管理業務を行う。また、支障が生じたときは、この後説明するように、担当者42aは、端末装置42bを使用して、対話装置20との間で対話を行う。
【0020】
乗務員区43では、担当者43aが乗務員の管理業務を行い、乗務員の勤務管理を行う。担当者43aは、端末装置43bを使用して、乗務員の管理業務を行う。また、支障が生じたときは、この後説明するように、担当者43aは、端末装置43bを使用して、対話装置20との間で対話を行う。
【0021】
ネットワーク80は、列車運行管理装置10、対話装置20、外部システム30、指令所41、車両基地42、乗務員区43、信号機50、列車60、駅設備70の間の情報通信に用いられる通信手段であり、例えば、情報の送受信や制御を行うための専用回線、信号線等から構成される。ネットワーク80は、有線か無線かを問わず、これらを併用してもよい。また、ネットワーク80は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)であってもよい。さらに、ネットワーク80は、セキュリティ面を考慮して複数のネットワークにより構成されていてもよい。例えば、信号機50と外部システム30との間を接続するネットワーク、列車運行管理装置10と指令所41、車両基地、乗務員区との間を接続するネットワークを分けることが考えられる。
【0022】
列車運行管理装置10、対話装置20、端末装置41b、42b、43bは、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレットなどのコンピュータ装置である列車運行管理装置10、対話装置20、端末装置41b、42b、43bは、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、記憶手段であるメインメモリ及びHDD(Hard Disk Drive)等のストレージとを備える。ここで、プロセッサは、OS(基本ソフトウェア)やアプリケーションプログラム(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアを実行する。また、メインメモリは、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域である、さらに、ストレージは、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
また、列車運行管理装置10、対話装置20、端末装置41b、42b、43bは、外部との通信を行うための通信インタフェースと、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構と、キーボート、マウス、タッチパネル、マイク等の入力機構とを備える。
【0023】
<対話装置20の説明>
図2は、対話装置20の詳細な構成について示したブロック図である。
図1で説明したように、対話装置20は、処理部21と、記憶部22とを備える。
このうち、処理部21は、運行計画条件入力部211と、確認処理部212とを備える。
【0024】
運行計画条件入力部211は、列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得する。運行計画条件は、指令員41aが、運行計画条件入力部211を介して入力する。
【0025】
確認処理部212は、運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員41aに提示する。
より具体的には、確認処理部212は、運行計画条件を基に列車運行管理装置10が作成した運行計画案について、不足する情報である不足情報を抽出する。そして、不足情報について確認する確認項目を作成して確認先に確認する。さらにその回答を確認先から取得する。実際には、確認項目は、確認先が備える表示機構に表示され、確認先は、入力機構を用いてその回答を入力する。確認先は、不足情報の内容によって予め定められている。確認先は、例えば、指令員41a、車両基地42の担当者42a、乗務員区43の担当者43aである。
【0026】
また、回答の情報である回答情報を取得すると、列車運行管理装置10の運行計画生成部11は、その回答情報をさらに加えて運行計画案を再度作成する。確認処理部212は、再度作成された運行計画案を指令員41aに対し確認し、承認を得る。実際には、再度作成された運行計画は、対話装置20が備える表示機構に表示され、指令員41aは、入力機構を用いて、これを承認する旨の指示を入力する。
【0027】
記憶部22は、運行計画案データ221と、運行計画条件データ222と、確信度データ223と、運用未定データ224と、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)データ225と、確認条件データ226と、確認項目データ227と、回答データ228とを格納する。
【0028】
運行計画案データ221は、列車運行管理装置10の運行計画生成部11が作成した運行計画案についてのデータである。
図3は、運行計画案データ221について示した図である。
運行計画案データ221の各レコードは、輸送ダイヤにおける駅間の走行を表すスジ毎の輸送情報である。
図示する運行計画案データ221は、各列車についての、列車番号、停車する駅名、走行順序、1つ前に運用される列車番号である前運用列番、1つ後に運用される列車の列車番号である後運用列番の各項目を含む。また、運行計画案データ221は、元計画(支障が生じる前の運行計画)における各駅の到着時刻、元計画における各駅の出発時刻、運行計画案における駅の到着時刻、運行計画案における駅の出発時刻、元計画における車両数、運行計画案における車両数、元計画における通過停車情報、この運行計画案における通過停車情報、確信度の各項目を含む。
図示する例では、列車番号が「aレ」および「eレ」の列車についての運行計画案を表す運行計画案データ221が、テーブルの形で作成されている。この運行計画案では、列車番号が「aレ」の列車は、元計画と同様に運行される。また、この運行計画案では、列車番号が「eレ」の列車は、運休になる。
なお、前運用列番、後運用列番の値が「-」の場合は運用未定であることを表す。
【0029】
運行計画条件データ222は、運行計画条件入力部211で指令員41aが入力し、運行計画案を作成する際の前提条件である運行計画条件についてのデータである。
図4は、運行計画条件データ222について示した図である。
図示する運行計画条件データ222は、運用方針のデータであり、優先度および内容の各項目を含む。
図示する例では、優先度が必須の運用方針として、「総遅延時間の軽減を最優先にする」、および混雑度が激しいため、「cレのB駅~C駅は運休しない」が、入力されたことを示す。また、優先度が任意の運用方針として、「B駅~C駅の16:00~17:00が混雑度200%」までにするが、入力されたことを示す。
なお、優先度は、数値であってもよい。
【0030】
確信度データ223は、運行計画条件や支障情報を基に運行計画生成部11がまず作成した運行計画案に対し、その内容の確信度を含むデータである。ここで、「確信度」は、1つの問いに対して複数の正解の候補がある場合、その中からどれだけの確信をもって正解を選んでいるかを示す指標である。確信度は、例えば、0%以上100%以下の数値にて表すことできる。この数値が大きいほど、信頼度が高く、小さいほど信頼度が低いことを意味する。確信度は、既知の方法を使用して求めることができる。
図5は、確信度データ223について示した図である。
図示する確信度データ223は、列車番号、時刻、場所、変更内容、確信度の各項目を含む。
図示する例では、列車番号が「eレ」の列車は、時刻が23:50-23:51にD駅に停車するという元計画に対し、運行計画案では運休する、というレコードについて、その確信度が50%であることを示している。また、同列車について、時刻が23:55-23:55にE駅に停車するという元計画に対し、運行計画案では運休する、というレコードについて、その確信度が40%であることを示している。
【0031】
運用未定データ224は、運行計画案データ221の前運用列番、後運用列番から前後運用未定である列番を抽出したデータである。
図6は、運用未定データ224について示した図である。
図示する運用未定データ224は、列車番号、時刻、場所、未定の各項目を含む。
図示する例では、列車番号が、「bレ」の列車は、16:35の時刻において、A駅~B駅の区間に在線するが、この後の運用が未定であることを示している。
【0032】
KPIデータ225は、混雑度や運休率等の運行計画案の評価指標および制約条件を数値化したデータである。
図7は、KPIデータ225について示した図である。
図示するKPIデータ225は、KPI、列車番号、時刻、場所、値の各項目を含む。
図示する例では、KPIが混雑度であり、16:00~17:00の時間帯におけるB駅~C駅の混雑度の値が、200%であることを示している。また、図示する例では、KPIが運休率であり、A駅~B駅の運休率の値が、0%であることを示している。なお、これらのデータは、列車とは関係がないため、列車番号は、該当しないことを示す「-」となっている。
【0033】
確認条件データ226は、不足情報として指令員41aに確認するか否かを判断する条件についてのデータである。確認条件は、例えば、確信度により定義される。
図8は、確認条件データ226について示した図である。
図示する確認条件データ226は、カテゴリ、条件項目、条件内容、確認先、確認内容の各項目を含む。
運行計画案が、条件内容に該当した場合、確認処理部212は、対応する確認先に確認内容を問い合わせる確認項目を作成することになる。
図示する例では、カテゴリや条件項目が確信度であり、条件内容として運休の確信度が50%以下のときに、指令員41aを確認先として、「運休しますか?」の確認内容で確認を行うことが決められている。また、図示する例では、カテゴリや条件項目が運用未定であり、条件内容として後運用未定のときに、指令員41aを確認先として、「後運用を設定しますか?」の確認内容で確認を行うことが決められている。さらに、図示する例では、カテゴリがKPIで条件項目が混雑度であり、条件内容として混雑度が150%以上のときに、車両基地Aを確認先として、「列車を出区できますか?」の確認内容で確認を行うことが決められている。
なお、ここで示す確認内容は、あくまでベースであり、文章は変更することもできる。ここで示すレコードは、予め設定されてもよいし、運行計画条件の設定の際に設定する仕様にしてもよい。また、カテゴリが「確信度」、「運用未定」に対する条件項目は1つであるが、カテゴリがKPIに対する条件項目は複数である。
【0034】
確認項目データ227は、確認項目の、確認先および確認項目の内容についてのデータである。
図9は、確認項目データ227について示した図である。
図示する確認項目データ227は、確認先、内容の各項目を含む。
図示する例では、確認先が指令員41aであり、確認項目の内容が、「eレのC駅~D駅を運休しますか?」の確認項目が作成されたことを示している。また、確認先が指令員41aであり、確認項目の内容が、「eレのD駅~E駅を運休しますか?」の確認項目が作成されたことを示している。さらに、確認先が車両基地Aであり、確認項目の内容が、「5両編成の車両を15:30に出区できますか?」の確認項目が作成されたことを示している。またさらに、確認先が乗務員区Xであり、確認項目の内容が、「B駅~C駅(16:00-17:20)で1人手配できますか?」の確認項目が作成されたことを示している。
なお、確認先は、電話番号やメールアドレス等であってもよい。
【0035】
回答データ228は、確認先から確認項目について回答された回答情報のデータである。
図10は、回答データ228について示した図である。
図示する回答データ228は、回答元、内容の各項目を含む。
図示する例では、図9の確認項目に対する回答を示している。つまり、確認項目の内容が、「eレのC駅~D駅を運休しますか?」、「eレのD駅~E駅を運休しますか?」の確認項目に対し、回答元である指令員41aが、「eレのC駅~E駅を運休する」の内容の回答をしたことを示している。また、確認項目の内容が、「5両編成の車両を15:30に出区できますか?」の確認項目に対し、回答元である車両基地Aが、「5両編成の車両を15:40であれば出区可能」の内容の回答をしたことを示している。さらに、確認項目の内容が、「B駅~C駅(16:00-17:20)で1人手配できますか?」の確認項目に対し、回答元である乗務員区Xが、「B駅~C駅(16:00-17:20)で1人(乗務員名ZZZZ)手配可能」の内容の回答をしたことを示している。
なお、回答は、確認項目に対するYes/Noでもよいし、代案を入力してもよい。
【0036】
<鉄道運行システム1の動作の説明>
次に、鉄道運行システム1の動作の説明を行う。
図11は、鉄道運行システム1の動作について説明したシーケンス図である。
ここでは、指令員41a、対話装置20、列車運行管理装置10および外部関係者(外部装置)との間のやりとりを図示している。なお、外部関係者(外部装置)は、外部システム30、車両基地42の担当者42aや乗務員区43の担当者43a等の現場担当者が該当する。
まず、支障が発生する前に、外部関係者(外部装置)から列車運行管理装置10に運用情報が入力される(S101)。運用情報は、例えば、車両の状態、駅の混雑度などの情報である。この運用情報は、支障が生じる前の現状取得できる情報である。
次に、対話装置20が運行計画作成時の条件を要求する(S102)。この条件は、例えば、利用者が多い駅や複数の鉄道事業者が共用する駅は運休を最小限に抑える、貨物列車を優先して輸送するなどの支障状況に関わらず設定できる条件である。
このとき、設定された条件は運行計画条件として入力する。運行計画作成時の条件は、図4で示したようなものとなる。
【0037】
そして、列車の運行に支障が生じる事象が発生した場合(S103)、外部関係者(外部装置)から、支障が発生した旨の通知が指令員41aに対しなされる(S104)。
このとき、指令員41aは、対話装置20の運行計画条件入力部211に対し、支障が生じた箇所、発生時刻、復旧時間などの支障に関する情報である支障情報や、混雑が激しいため所定の駅間は運休しないなどの指令員41aの運用方針を、運行計画条件として入力する(S105)。運用方針は、図4で示したようなものとなる。
運行計画条件入力部211は、列車運行管理装置10に対し、運行計画条件を送信し、運行計画の生成を要求する(S106)。
【0038】
列車運行管理装置10の運行計画生成部11は、運行計画案を作成し、対話装置20の確認処理部212に対し、この運行計画案、運用変更内容、確信度等を含む運用情報を送信する(S107)。なお、運用情報は、運行計画生成部11が一通り運行計画案を演算し終えた後に行ってもよいし、運行計画案の演算段階で途中結果を送信してもよい。
確認処理部212は、確信度を基に不足情報を抽出し、不足情報について確認する確認項目を作成して、指令員41aに確認する(S108)。これにより輸送計画に関する指令員41aの判断を確認することができる。
これに対し、指令員41aは、回答を確認処理部212に入力する(S109)。
一方、確認処理部212は、不足情報について確認する確認項目を作成して、外部関係者(外部装置)に対し確認する(S110)。これにより、車両情報、乗務員情報について確認することができる。
これに対し、外部関係者(外部装置)は、回答を確認処理部212に入力する(S111)。
【0039】
確認処理部212は、得られた回答を、回答情報として列車運行管理装置10に対し送信する(S112)。
列車運行管理装置10の運行計画生成部11は、回答情報を加味して運行計画案を再度作成し、確認処理部212に対し、この運行計画案を送信する(S113)。
確認処理部212は、再度作成された運行計画案を指令員41aに対し表示する(S114)。なおここで、さらに不足情報があれば、再度確認処理を行ってもよい。
指令員41aは、再度作成された運行計画案を、確認処理部212に対し承認する(S115)。
そして、確認処理部212は、列車運行管理装置10に対し、運行計画案の実行を要求する(S116)。
なおここでは、指令員41aおよび外部関係者(外部装置)の双方に確認項目を確認し、回答を得ていたが、運転計画案の内容によっては、何れか一方である場合がある。
【0040】
図12は、図11のS105~S106の処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。
まず、運行計画条件入力部211は、指令員41aに対し、運行計画条件(支障情報・運用方針)の入力を要求する(S201)。
この要求に対し指令員41aは、運行計画条件を入力する。これにより、運行計画条件入力部211は、指令員41aから運行計画条件を取得する(S202)。
そして、運行計画条件入力部211は、取得した運行計画条件を列車運行管理装置10に送信する(S203)。
さらに、運行計画条件入力部211は、運行計画案および運行計画条件からKPIデータ225を作成する(S204)。
【0041】
図13は、図11のS107~S112の処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。
まず、確認処理部212は、列車運行管理装置10から運用計画案を受信する(S301)。
次に、確認処理部212は、確認項目を作成する(S302)。確認項目を作成するさらに具体的な処理は、図14にて説明する。
そして、確認処理部212は、確認項目が1つ以上存在するか否かを判断する(S303)。
【0042】
その結果、確認項目が存在しない場合(S303でNo)、確認処理部212は、指令員41aの画面に運行計画案を表示し、運用変更の実行可否を確認する(S304)。
さらに、確認処理部212は、実行可否の結果を列車運行管理装置10に送信する(S305)。
この後、前提条件入力部に戻る(S306)。前提条件入力部は、例えば、図12のS202で説明した、運行計画条件を入力する画面である。
【0043】
対して、S303で確認項目が1つ以上存在する場合(S303でYes)、確認処理部212は、確認項目を指令員41aや外部関係者(外部装置)に問い合わせる(S307)。
問い合わせに対し、確認処理部212は、指令員41aや外部関係者(外部装置)から回答情報を受信する(S308)。
そして、確認処理部212は、回答情報を列車運行管理装置10に送信する(S309)。
【0044】
図14は、図13のS302の確認項目を作成する処理についてさらに詳しく説明したフローチャートである。また、図15(a)~(d)は、確認項目を作成する処理で扱うデータの変遷を示した図である。
まず、確認処理部212は、運行計画案データ221から確信度データ223を作成する(S401)。この確信度データ223を、図15(a)に示す。
次に、確認処理部212は、確信度データ223から、確認条件データ226の確認条件の内容に該当しないレコードを削除する(S402)。確認条件データ226の例を、図15(b)に示す。このとき、確認処理部212は、確認条件データ226の確認条件を参照し、図15(c)のテーブルを作成する。つまり、確認処理部212は、確認条件に合致した確信度データ223のレコードについて、確認内容を付与したテーブルを作成する。
そして、確認処理部212は、確信度データ223の有無を判断する(S403)。
【0045】
その結果、確信度データ223がある場合(S403で有)、確認処理部212は、確信度データをグループ化して確認内容を作成する(S404)。ここで、「グループ化」は、共通する複数の確認内容について、1つに纏めることである。例えば、各項目の駅名が隣駅であれば1つに纏める。図15(d)は、グループ化した例を示している。この場合、D駅とE駅とは隣駅であり、D駅とE駅とをD-E駅としてグループ化している。
【0046】
対して、S403で確信度データ223がない場合(S403で無)、確認処理部212は、運行計画案データ221から運用未定データ224を作成する(S405)。
そして、確認処理部212は、運用未定データ224の有無を判断する(S406)。
その結果、運用未定データ224がある場合(S406で有)、確認処理部212は、運用未定データ224をグループ化して確認内容を作成する(S407)。即ち、確認処理部212は、不足情報に確信度を表す確信度データが含まれないときは、運用未定である列番を抽出したデータである運用未定データ224に対する確認項目を作成する。
対して、運用未定データ224がない場合(S406で無)、確認処理部212は、KPIデータ225の有無を判断する(S408)。
そして、KPIデータ225がある場合(S408で有)、確認処理部212は、KPIデータ225をグループ化して確認内容を作成する(S409)。即ち、確認処理部212は、不足情報に運用未定データ224が含まれないときは、KPIデータ225に対する確認項目を作成する。
対して、KPIデータ225がない場合(S408で無)、一連の処理を終了する。
【0047】
S404、S407、S409の後は、確認処理部212は、確認条件データ226から確認先を取得する(S410)。
そして、確認処理部212は、確認項目データ227を作成する(S411)。
【0048】
図16(a)~(b)、図17(a)~(d)は、図11のS105で、運行計画条件を指令員41aが入力するときに端末装置41bで表示される画面を示した図である。
このうち、図16(a)~(b)は、指令員41aが対話装置20と対話をするためのチャットボックスを表示し、チャットボックスを使用して、指令員41aが、支障情報を入力する支障情報設定を行う場合について示している。
図16(a)の画面で、「bot」は、対話装置20を意味し、botから、「支障区間を設定して下さい。」のメッセージMe1が通知されている。このとき、指令員41aが、設定ボタンBt1を押下すると、図16(b)に示す画面に遷移する。そして、指令員41aは、支障区間として、運行障害設定、時間帯、運行区間、方向、線路の入力を行う。そして、設定後、指令員41aが設定ボタンBt2を押下すると、図16(a)の画面に戻る。そして、設定完了のメッセージMe2が表示される。
【0049】
また、図17(a)~(d)も、チャットボックスを使用して、指令員41aが、運行計画条件を入力する運行計画条件設定を行う場合について示している。
ここでは、図17(a)の画面で、botから、「運行計画条件を設定して下さい。」のメッセージMe3が通知されている。このとき、指令員41aが設定ボタンBt3を押下すると、図17(b)~(d)に示す画面が表示される。図17(b)~(d)に示す画面は、例えば、スクロールすることで順に表示することができる。図17(b)~(c)の画面では、指令員41aは、運行計画条件として、復旧目標時刻、運休方針、駅制約設定、車両制約設定、確認項目の表示条件の入力を行う。そして、設定後、指令員41aが設定ボタンBt4を押下すると、設定が完了し、図18(a)の画面に遷移する。
【0050】
図18(a)は、運行計画条件の設定完了画面を示した図である。この場合、設定完了のメッセージMe4が表示される。なお、このとき再設定ボタンBt5を押下することで、運行計画条件の再設定を行うことができる。そして、運行計画条件の設定が完了すると、botから、「運行計画を生成します。」のメッセージMe5が通知される。
このとき、指令員41aが設定ボタンBt6を押下すると、図11のS106の処理がなされ、対話装置20は、列車運行管理装置10に運行計画の生成を要求する。そして、botから、「運行計画生成を開始しました。」のメッセージMe6が通知される。
この後、図11のS107の処理がなされ、列車運行管理装置10が、運行計画案を作成すると、図11のS108の処理がなされ、対話装置20が確認項目を作成するとともに、指令員41aに対し確認する。このとき、botから、「確認項目に回答して下さい。「eレのC駅~E駅間を運休しますか?」」のメッセージMe7が通知される。
そして、指令員41aが、設定ボタンBt7を押下すると、図18(b)の画面に遷移する。
【0051】
図18(b)は、指令員41aが回答を入力する画面を示した図である。この場合、指令員41aは、メッセージMe7である「確認項目に回答して下さい。「eレのC駅~E駅間を運休しますか?」」の確認項目に対する回答を入力する。ここでは、指令員41aは、「運休する」を選択したことを示している。そして、指令員41aが、設定ボタンBt8を押下すると、対話装置20に回答が送信される。これは、図11のS109の処理になる。また、プレビューボタンBt9を押下すると、選択している回答情報(「運休する」)を適用した運行計画案が列車運行管理装置10にて表示される。ここでは、回答情報の対象となるスジをブリンクさせて目立たせても良い。この場合、指令員41aは変更内容が分かり易くなる。
【0052】
図16、17に示した処理は、運行計画条件入力部211が行う。このとき、図16、17に示したように、運行計画条件入力部211は、運行計画条件を要求し、取得する処理についてさらに対話形式で行う、と言うことができる。また、図18に示した処理は、確認処理部212が行う。このとき、図18に示したように、確認処理部212は、確認項目を提示し、回答を得る処理を対話形式で行う、と言うことができる。
このように指令員41aと列車運行管理装置10との間に対話装置20を組み込み、対話方式で処理を行うことで、対話装置20は、確認項目を指令員に提示し、指令員41aは、入力すべき情報を明確に把握することができる。そして、対話装置20は、不足情報があっても、これを充足するための必要な情報を取り込むことができ、列車運行管理装置10は、この必要な情報を加味して、より適切な運転整理案を作成できる。
【0053】
図19(a)~(d)は、列車運行管理装置10でなされる処理を視覚化した図である。
なお、ここで示す図を実際に列車運行管理装置10で表示することもできる。
図19(a)は、支障が生じる前の元計画のダイヤグラムである。ここでは、A駅からE駅間を、本来は、列車がこのダイヤグラムに従い運行されることを示している。
図19(b)は、図11のS106の処理に対応し、支障区間が設定された場合を示す。ここでは、D駅とE駅との間で支障が発生し、支障が生じた時刻と区間が矩形Sの範囲として設定されたことを示す。
図19(c)も、図11のS106の処理に対応し、列車運行管理装置10が運行計画案を演算している画面である。
図19(d)は、図11のS113の処理に対応し、回答情報を加味して運行計画案を再度作成した場合を示している。
【0054】
なお、上述した形態では、列車運行管理装置10と対話装置20とは、別装置として記載しているが、一体的に構成されていてもよい。
また、列車運行管理装置10や対話装置20の一部の機能を別装置として設けてもよい。
【0055】
列車の運転整理業務では、列車の運行に支障が生じた時に、運行計画の調整等を行う。この運転整理業務は、列車走行速度や駅での退避設備等の物理条件の判断だけでなく、車両・乗務員の運用率や旅客サービスなど、輸送システム全体を考えた、多目的・大局的な判断を要する、非常に複雑な計画業務である。
上記運転整理業務を司る者(指令員41a)の負担を軽減し、技量の高度化を推進するための技術が必要とされ、近年、開発(システム化)が進んできている。例えば、現時点までに取得した列車の運行実績情報に基づき、AI技術を活用して未来の列車運行の予測シミュレーションを行う技術(言い換えれば列車運行計画情報を作成・調整等する技術)が開発されつつある。
なお、上記運転整理業務を行う指令員41aは、例えば、鉄道運行システム1等の管制室などに存在し、運行計画情報等を画面で参照する。例えば、上記運行計画情報に基づき列車や駅設備等へ指示・制御がなされることにより適切な運行が実現される。
列車の運転整理業務に係わる運行計画の調整の処理(演算)は、処理対象とする情報データ量や計算パラメータの増大や、指令員41aの運用方針などの未だデータ化されていない情報があるため、従来技術では、高速化及び高精度化が難しく、今後一層難しくなると予想される。
上述した形態による対話装置20によれば、例えば、AI活用型の列車運行管理装置10が運行計画案を作成する際に、不足情報を指令員41aに問い合わせることで、運行計画案の実現性向上を支援することができる。そして、対話装置20は、不足情報を取り込むことで、より適切な運転整理案を作成する処理を支援する。
【0056】
<運行支援方法の説明>
以上説明を行った対話装置20が行う処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、対話装置20に設けられたコンピュータ内部のプロセッサが、上述した各機能を実現するソフトウェアをメモリにロードして実行し、これらの各機能を実現させる。
よって、対話装置20が行う処理は、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することにより、列車の運行に支障が生じる事象が生じたときに、支障に対応する運行計画案を作成する条件である運行計画条件を取得し運行計画条件を基に作成された運行計画案に対し、不足する情報である不足情報について確認するための確認項目を作成し、確認項目に対する回答を含めて再度作成された運行計画案を指令員41aに提示する、運行支援方法と捉えることができる。
【0057】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0058】
1…鉄道運行システム、10…列車運行管理装置、20…対話装置、21…処理部、22…記憶部、30…外部システム、41…指令所、42…車両基地、43…乗務員区、50…信号機、60…列車、70…駅設備、211…運行計画条件入力部、212…確認処理部、221…運行計画案データ、222…運行計画条件データ、223…確信度データ、224…運用未定データ、225…KPIデータ、226…確認条件データ、227…確認項目データ、228…回答データ
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