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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127610
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】慣性力センサとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/26 20060101AFI20240912BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240912BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L23/26
H01L23/02 J
H01L23/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036873
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(57)【要約】
【課題】パッケージの封止空間に設けられているゲッター材を活性化するのに適した構造を備えた慣性力センサを提供する。
【解決手段】慣性力センサは、パッケージと、前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合している導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージと、
前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、
前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合している導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、
前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えている、慣性力センサ。
【請求項2】
前記パッケージがセラミックパッケージである、請求項1に記載の慣性力センサ。
【請求項3】
前記金属蓋は、前記外面に突起部を有しており、
前記ゲッター材は、前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも前記突起部に近接した位置に設けられている、請求項1に記載の慣性力センサ。
【請求項4】
前記金属蓋の前記突起部のレイアウトパターンと前記ゲッター材のレイアウトパターンが一致している、請求項3に記載の慣性力センサ。
【請求項5】
前記ゲッター材は、前記金属蓋の前記内面の全体に設けられている、請求項1に記載の慣性力センサ。
【請求項6】
前記センサチップは、慣性力を測定するように構成された慣性力センサチップである、請求項1に記載の慣性力センサ。
【請求項7】
パッケージと、
前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、
前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合する導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、
前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えている、慣性力センサの製造方法であって、
電源に接続された一対の接触子を前記金属蓋の前記外面に接触させ、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記ゲッター材を活性化する活性化工程、を備えている、慣性力センサの製造方法。
【請求項8】
前記パッケージがセラミックパッケージである、請求項7に記載の慣性力センサの製造方法。
【請求項9】
前記一対の接触子の少なくとも一方は、前記金属蓋の前記外面に点接触するように構成されており、
前記活性化工程では、前記ゲッター材が設けられている位置に近接した前記金属蓋の前記外面に前記一対の接触子の前記少なくとも一方を点接触させる、請求項7に記載の慣性力センサの製造方法。
【請求項10】
前記金属蓋は、前記外面に突起部を有しており、
前記一対の接触子の前記少なくとも一方は、ローラー電極であり、
前記活性化工程では、前記突起部に前記ローラー電極を点接触させる、請求項9に記載の慣性力センサの製造方法。
【請求項11】
前記活性化工程よりも前に、前記一対の接触子を前記金属蓋の前記外面に接触させ、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記金属蓋と前記パッケージを溶接する溶接工程、をさらに備えている、請求項10に記載の慣性力センサ。
【請求項12】
前記一対の接触子の前記少なくとも一方は、剣山型電極である、請求項9に記載の慣性力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、慣性力センサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センサチップを真空封止するように構成された慣性力センサが開発されている。このような慣性力センサでは、パッケージの封止空間の真空度を高めるために、ガスを吸着するゲッター材が封止空間内に設けられている。特許文献1及び特許文献2には、そのような慣性力センサの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-047595号公報
【特許文献2】特開2021-145072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッケージの封止空間の真空度を高めるためには、真空封止した後にゲッター材を加熱して活性化しなければならない。特許文献1は、慣性力センサの全体を加熱してゲッター材を活性化させる技術を開示する。しかしながら、このような加熱方法では、慣性力センサを構成する各構成部品に熱ダメージが加わってしまう。特許文献2は、パッケージに配設された専用配線を介して通電し、ジュール熱を利用してゲッター材を選択的に活性化させる技術を開示する。しかしながら、このような加熱方法では、複雑な専用配線をパッケージに配設する必要があり、慣性力センサの微細化を困難にさせてしまう。
【0005】
本明細書は、パッケージの封止空間に設けられているゲッター材を活性化するのに適した構造を備えた慣性力センサ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する慣性力センサは、パッケージと、前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合している導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えていてもよい。この慣性力センサでは、前記金属蓋の前記内面にゲッター材が設けられているので、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記ゲッター材を活性化することができる。このように、本明細書が開示する慣性力センサは、前記封止空間に設けられている前記ゲッター材を活性化するのに適した構造を備えている。
【0007】
本明細書は、上記慣性力センサを製造する方法を開示することができる。この製造方法は、電源に接続された一対の接触子を前記金属蓋の前記外面に接触させ、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記ゲッター材を活性化する活性化工程、を備えていてもよい。この製造方法によると、前記パッケージの前記封止空間の真空度を高めることができる。このため、この製造方法は、高真空度の前記封止空間内に前記センサチップが設けられた慣性力センサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の慣性力センサの断面図であり、図2のII-II線に対応した断面図を模式的に示す。
図2】第1実施形態の慣性力センサの平面図を模式的に示す。
図3】第1実施形態の変形例の慣性力センサの平面図を模式的に示す。
図4】第1実施形態の変形例の慣性力センサの平面図を模式的に示す。
図5】第1実施形態の慣性力センサの製造方法を説明する製造過程の図を示す。
図6】第1実施形態の慣性力センサの製造方法を説明する製造過程の図を示す。
図7】第1実施形態の慣性力センサの製造方法を説明する製造過程の図を示す。
図8】第1実施形態の変形例の慣性力センサの断面図を模式的に示す。
図9】第1実施形態の変形例の慣性力センサの断面図を模式的に示す。
図10】第2実施形態の慣性力センサの断面図を模式的に示す。
図11】第2実施形態の慣性力センサの製造方法を説明する製造過程の図を示す。
図12】第3実施形態の慣性力センサの断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の慣性力センサ1を示す。慣性力センサ1は、パッケージ10と、センサチップ20と、金属蓋30と、ゲッター材40と、を備えている。
【0010】
図1に示すように、パッケージ10は、基部12と、側壁部14と、を有している。基部12は、平板状の形態を有している。基部12は、平面視したときに、例えば矩形状であってもよい(図2参照)。側壁部14は、枠状の形態を有しており、基部12の周縁において基部12から上方に延びるように配置されている。このように、パッケージ10は、上面が開口した箱形状であり、その内部に封止空間16を画定する。基部12と側壁部14が一体成型されていてもよく、別体の側壁部14が基部12の周縁に接合されていてもよい。パッケージ10は、絶縁性の材料で構成されており、例えばセラミックパッケージであってもよい。
【0011】
図1に示すように、センサチップ20は、例えば接着材を介してパッケージ10の基部12の上面に固定されている。センサチップ20は、例えば半導体基板上にセンサ部品を集積させたMEMSセンサであってもよい。具体的には、センサチップ20は、慣性力(例えば、角速度、加速度等)を測定するように構成された慣性力センサチップである。センサチップ20から伸びる金属ワイヤーは、パッケージ10に配設された配線に接続されている。パッケージ10に配設された配線は、例えばリードフレーム及び/又は貫通電極を有しており、そのリードフレーム及び/又は貫通電極を介してパッケージ10の基部12及び/又は側壁部14を通過してパッケージ10の外表面に露出している。このように、パッケージ10に配設された配線は、パッケージ10の外からセンサチップ20に対する電力及び各種電気信号を入出力することが可能に構成されている。なお、センサチップ20に対する電力及び各種電気信号を処理するためのICチップ等もパッケージ10の基部12の上面に設置されていてもよい。
【0012】
図1に示すように、金属蓋30は、センサチップ20が設けられているパッケージ10の封止空間16を封止するように、パッケージ10の側壁部14に接合している。金属蓋30は、例えばAu-Si、Au-Sn、もしくはCu-Snの金属合金接合、はんだを用いた半田接合、又はシーム溶接によってパッケージ10に接合されてもよい。この例では、後述の製造方法で説明するように、シーム溶接を利用して金属蓋30がパッケージ10に接合されている。金属蓋30は、導電性の材料で構成されており、例えばニッケルメッキされたコバールで構成されていてもよい。
【0013】
金属蓋30は、パッケージ10の封止空間16に露出する内面30aと外部に露出する外面30bを有している。金属蓋30は、外面30bに複数の突起部32を有している。複数の突起部32の各々は、金属蓋30がパッケージ10の側壁部14に接合する箇所から離れた内側に配置されている。複数の突起部32の各々は、後述の製造方法で説明するように、ローラー電極が点接触するための角部、即ち、頂面と側面で構成された角部を有している。金属蓋30を平面視したときの複数の突起部32のレイアウトパターンは、特に限定されるものではないが、例えば突起部32が少なくとも2方向に相互に間隔を開けて配置された島状のレイアウトパターンであってもよく(図2参照)、直線状の突起部32が一方向に相互に間隔を開けて繰り返し配置されたレイアウトパターンであってもよく(図3参照)、環状の突起部32が同心円状に配置されたレイアウトパターンであってもよい(図4参照)。
【0014】
図1に示すように、ゲッター材40は、金属蓋30の内面30aに設けられている。ゲッター材40は、例えば接着材を介して金属蓋30の内面30aに固定されてもよく、成膜技術を利用して金属蓋30の内面30aに成膜されてもよい。ゲッター材40は、ガスを吸着可能な材料で構成されており、特に限定されるものではないが、例えばZr、V、Fe、Ti、SnもしくはHf等の金属、又はこれら金属を含む合金であってもよい。
【0015】
ゲッター材40は、金属蓋30の内面30aのうち少なくとも突起部32に近接した位置に配置されている。ここで、突起部32に近接した位置とは、後述の製造方法で説明するように、活性化工程において突起部32とローラー電極の点接触箇所で発生する熱が及ぶ範囲内の位置である。具体的には、突起部32に近接した位置は、突起部32の角部から1mm以下の範囲内の位置であってもよい。また、ゲッター材40は、慣性力センサ1を平面視したときに、突起部32と重複する位置及び/又はその重複する位置から所定距離の範囲内の位置に形成されてもよい。ゲッター材40は、慣性力センサ1を平面視したときに、突起部32のレイアウトパターンと同一のレイアウトパターンで配置されていてもよい。例えば、突起部32のレイアウトパターンが島状(図2参照)であれば、ゲッター材40も島状のレイアウトパターンであってもよい。
【0016】
次に、図5~7を参照し、慣性力センサ1の製造方法について説明する。まず、センサチップ20が設けられたパッケージ10と、ゲッター材40が設けられた金属蓋30と、がそれぞれ準備される。
【0017】
パッケージ10については、まず、パッケージ10の側壁部14の上面のうち金属蓋30と接合する部分に、後述のシーム溶接のための金属薄膜(例えば、タングステンとニッケルと金の積層体)が成膜される。次に、パッケージ10の基部12の上面に、例えば接着材を介してセンサチップ20が接合される。次に、センサチップ20とパッケージ10の配線の間に金属ワイヤーがボンディングされる。このようにしてセンサチップ20が設けられたパッケージ10が準備される。
【0018】
金属蓋30については、まず、コバールで構成された構造体の両面にニッケルメッキが施されて金属蓋30が形成される。次に、金属蓋30の内面30aにゲッター材40が設けられる。ゲッター材40は、例えば接着材を介して金属蓋30の内面30aに固定される。このようにして、ゲッター材40が設けられた金属蓋30が準備される。
【0019】
図5に示すように、準備されたパッケージ10と金属蓋30は、真空チャンバー50内に搬送される。真空チャンバー50の内部は、例えばセンサチップ20、パッケージ10の配線及び接着剤等にダメージを与えない範囲内の温度(例えば、約200℃)に加熱された状態で内部ガスが排気される。真空チャンバー50の内部の加熱及び排気を継続した状態で、金属蓋30がパッケージ10の側壁部14の上面に載置され、金属蓋30が接合規定位置に位置決めされる。
【0020】
次に、図6に示すように、真空チャンバー50の内部の加熱及び排気を継続した状態で、金属蓋30を下向きに加圧し、パッケージ10と金属蓋30を密着させる。さらに、交流電源52に接続された一対の接触子、この例では一対のローラー電極54の各々を金属蓋30の上面30bの端部にある角部に点接触させ、金属蓋30を介して通電する。ローラー電極54と金属蓋30が点接触しているので、高い電気抵抗に起因して点接触箇所で発熱する。これにより金属蓋30とパッケージ10の側壁部14の間にある金属薄膜が溶融し、金属蓋30とパッケージ10の側壁部14がシーム溶接される(溶接工程)。一対のローラー電極54の各々を金属蓋30の角部に点接触させながら一対のローラー電極54の各々を金属蓋30の周縁に沿って移動させ、パッケージ10の封止空間16を真空封止する。このように、金属蓋30とパッケージ10はシーム溶接によって接合されており、金属蓋30の周縁には溶接跡が形成される。
【0021】
次に、図7に示すように、真空チャンバー50の内部の加熱及び排気を継続した状態で、一対のローラー電極54の各々を金属蓋30の突起部32の角部に点接触させ、金属蓋30を介して通電する。ローラー電極54と金属蓋30が点接触しているので、高い電気抵抗に起因して発熱する。ゲッター材40は、突起部32に近接した位置に設けられているので、発生する熱を利用して加熱され、活性化される(活性化工程)。一対のローラー電極54の各々を突起部32の角部に点接触させながら一対のローラー電極54の各々を突起部32の角部に沿って移動させ、突起部32に近接した位置に配置されたゲッター材40を活性化させる。突起部32の角部には、ローラー電極54の接触による接触跡が残る。点接触による通電加熱は、点接触の箇所近傍の領域、具体的には点接触の箇所から1mm以下の範囲内を局所的に加熱する。このため、点接触による通電加熱は、例えばセンサチップ20、パッケージ10の配線及び接着剤等に熱ダメージを与えるのを抑えながら、ゲッター材40を選択的に加熱し、ゲッター材40を活性化することができる。このように、この製造方法では、ローラー電極54を金属蓋30の突起部32に点接触させることで、ゲッター材40を選択的に加熱することができる。したがって、慣性力センサ1は、複雑な専用配線を用いることなくゲッター材40を選択的に加熱するのに適した構造を有している。また、この製造方法では、金属蓋30とパッケージ10をシーム溶接するために用いたローラー電極54を利用してゲッター材40の活性化を行うことができるので、活性化のための専用の設備を必要としない。この製造方法では、低コストでゲッター材40を活性化させることができる。
【0022】
以下、慣性力センサ1の変形例について説明する。図8に示すように、ゲッター材40は、例えば成膜技術を利用して金属蓋30の内面30aの全体に設けられていてもよい。また、図9に示すように、金属蓋30の内面30aには、突起部32に対応して窪み34が設けられていてもよい。このような突起部32と窪み34の組み合わせは、金属蓋30の構造体をプレス加工するときに形成することができる。ゲッター材40は、窪み34に隣接する位置に設けられている。ゲッター材40はさらに、窪み34の内部に設けられていてもよい。ゲッター材40が窪み34の内部に設けられていると、突起部32に近接した位置に配置されるゲッター材40の面積を大きくすることができる。このため、より効果的にゲッター材40を活性化することができる。いずれの変形例も、上記実施形態と同様に、複雑な専用配線を用いることなくゲッター材40を選択的に加熱するのに適した構造を有している。
【0023】
(第2実施形態)
図10に、第2実施形態の慣性力センサ2を示す。第1実施形態の慣性力センサ1と共通する構成要素に共通の符号を付し、その説明を省略する。慣性力センサ2は、慣性力センサ1の金属蓋30に形成されていた突起部32が設けられていない。また、慣性力センサ2では、ゲッター材42が金属蓋30の内面30aの一部に配置されている。図1に示す慣性力センサ1では、ゲッター材40が突起部32に近接した位置に配置されていたが、図10に示す慣性力センサ2では、突起部32が設けられていないので、ゲッター材42は金属蓋30の内面30aの任意の位置に配置されている。なお、慣性力センサ2も、図8に示す慣性力センサ1と同様に、金属蓋30の内面30aの全体にゲッター材40が設けられていてもよい。慣性力センサ2は、突起部32が設けられていない点及びゲッター材42の配置を除いて慣性力センサ1と実質的に同一の構成を有している。
【0024】
次に、慣性力センサ2の製造方法について説明する。金属蓋30とパッケージ10をシーム溶接するまでの工程は、慣性力センサ1の製造方法と同一である。次に、図11に示すように、真空チャンバー50の内部の加熱及び排気を継続した状態で、2本を一組とする一対の剣山電極56の各々を金属蓋30の外面30bに点接触させ、金属蓋30を介して通電する。一対の剣山電極56の各々は、ゲッター材40が設けられている位置に近接した金属蓋30の外面30bに点接触される。剣山電極56と金属蓋30が点接触しているので、高い電気抵抗に起因して発熱する。剣山電極56がゲッター材40に近接した位置に点接触させられるので、ゲッター材40は、発生する熱を利用して加熱され、活性化される(活性化工程)。一対の剣山電極56の各々を金属蓋30の外面30bに点接触させながら一対の剣山電極56の各々をゲッター材40に近接した位置に沿って移動させ、ゲッター材40に近接した位置に配置されたゲッター材40を活性化させる。ゲッター材40に近接した位置には、剣山電極56の接触による接触跡が残る。点接触による通電加熱は、点接触の箇所近傍の領域、具体的には点接触の箇所から1mm以下の範囲内を局所的に加熱する。このため、点接触による通電加熱は、例えばセンサチップ20、パッケージ10の配線及び接着剤等に熱ダメージを与えるのを抑えながら、ゲッター材40を選択的に加熱し、ゲッター材40を活性化することができる。慣性力センサ2は、複雑な専用配線を用いることなくゲッター材42を選択的に加熱するのに適した構造を有している。また、この製造方法では、金属蓋30の内面30aの任意の位置にゲッター材40を設けることができる。このため、この製造方法で製造される慣性力センサ2は、高い設計自由度を有している。
【0025】
(第3実施形態)
図12に、第3実施形態の慣性力センサ3を示す。第1及び第2実施形態の慣性力センサ1,2と共通する構成要素に共通の符号を付し、その説明を省略する。慣性力センサ3は、金属蓋30の外面30bに複数の突起部32を有しており、金属蓋30の内面30aであって突起部32に近接した位置にゲッター材40が設けられている。ゲッター材40は、慣性力センサ1と同様に(図7参照)、一対のローラー電極54を用いて活性化される。慣性力センサ3はさらに、金属蓋30の内面30aであって突起部32に近接した位置とは別の任意の位置にゲッター材42が設けられている。ゲッター材42は、慣性力センサ2と同様に(図11参照)、一対の剣山電極56を用いて活性化される。このように、慣性力センサ3は、慣性力センサ1と慣性力センサ2を組み合わせた構造を備えている。慣性力センサ3も、複雑な専用配線を用いることなくゲッター材40,42を選択的に加熱するのに適した構造を有している。
【0026】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0027】
(特徴1)
パッケージと、
前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、
前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合している導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、
前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えている、慣性力センサ。
【0028】
(特徴2)
前記パッケージがセラミックパッケージである、特徴1に記載の慣性力センサ。
【0029】
(特徴3)
前記金属蓋は、前記外面に突起部を有しており、
前記ゲッター材は、前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも前記突起部に近接した位置に設けられている、特徴1又は2に記載の慣性力センサ。
【0030】
(特徴4)
前記金属蓋の前記突起部のレイアウトパターンと前記ゲッター材のレイアウトパターンが一致している、特徴3に記載の慣性力センサ。
【0031】
(特徴5)
前記ゲッター材は、前記金属蓋の前記内面の全体に設けられている、特徴1~3のいずれか1つに記載の慣性力センサ。
【0032】
(特徴6)
前記センサチップは、慣性力を測定するように構成された慣性力センサチップである、特徴1~5のいずれか1つに記載の慣性力センサ。
【0033】
(特徴7)
パッケージと、
前記パッケージの封止空間に設けられているセンサチップと、
前記パッケージの前記封止空間を封止するように前記パッケージに接合する導電性の金属蓋であって、前記封止空間に露出する内面と外部に露出する外面を有している、金属蓋と、
前記金属蓋の前記内面のうち少なくとも一部に設けられているゲッター材と、を備えている、慣性力センサの製造方法であって、
電源に接続された一対の接触子を前記金属蓋の前記外面に接触させ、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記ゲッター材を活性化する活性化工程、を備えている、慣性力センサの製造方法。
【0034】
(特徴8)
前記パッケージがセラミックパッケージである、特徴7に記載の慣性力センサの製造方法。
【0035】
(特徴9)
前記一対の接触子の少なくとも一方は、前記金属蓋の前記外面に点接触するように構成されており、
前記活性化工程では、前記ゲッター材が設けられている位置に近接した前記金属蓋の前記外面に前記一対の接触子の前記少なくとも一方を点接触させる、特徴7又は8に記載の慣性力センサの製造方法。
【0036】
(特徴10)
前記金属蓋は、前記外面に突起部を有しており、
前記一対の接触子の前記少なくとも一方は、ローラー電極であり、
前記活性化工程では、前記突起部に前記ローラー電極を点接触させる、特徴9に記載の慣性力センサの製造方法。
【0037】
(特徴11)
前記活性化工程よりも前に、前記一対の接触子を前記金属蓋の前記外面に接触させ、前記金属蓋を介して通電することによって発生する熱を利用して前記金属蓋と前記パッケージを溶接する溶接工程、をさらに備えている、特徴10に記載の慣性力センサ。
【0038】
(特徴12)
前記一対の接触子の前記少なくとも一方は、剣山型電極である、特徴9に記載の慣性力センサの製造方法。
【0039】
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書又は図面に記載された技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載された組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示された技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
1,2,3:慣性力センサ、 10:パッケージ、 12:基部、 14:側壁部、 16:封止空間、 20:センサチップ、 30:金属蓋、 32:突起部、 40:ゲッター材、
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