(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127614
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ガラス振動子の製造装置およびガラス振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240912BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036878
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】島岡 敬一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(57)【要約】
【課題】ガラス振動子の製造装置を提供する。
【解決手段】ガラス振動子の製造装置は、ステージ中心軸を備えるステージを備える。ステージは、振動子中心軸を中心とした曲面形状を備えるガラス振動子の振動子中心軸がステージ中心軸と一致するように、ガラス振動子を設置可能に構成されている。ガラス振動子の製造装置は、ステージの上方に配置されている光源を備える。ガラス振動子の製造装置は、ステージの上方に配置されており、光源によって光が照射されている状態のガラス振動子の画像を取得可能に構成されている撮像部を備える。光源は、ステージ中心軸に垂直な面内に位置しているとともに、ステージ中心軸を中心とした円周上に位置している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ中心軸を備えるステージであって、振動子中心軸を中心とした曲面形状を備えるガラス振動子の前記振動子中心軸が前記ステージ中心軸と一致するように、前記ガラス振動子を設置可能に構成されている前記ステージと、
前記ステージの上方に配置されている光源と、
前記ステージの上方に配置されており、前記光源によって光が照射されている状態の前記ガラス振動子の画像を取得可能に構成されている撮像部と、
を備え、
前記光源は、前記ステージ中心軸に垂直な面内に位置しているとともに、前記ステージ中心軸を中心とした円周上に位置している、
ガラス振動子の製造装置。
【請求項2】
前記光源は、前記円周上に回転対称に配置されている複数の発光部を備えており、
複数の前記発光部の各々は、前記ステージ中心軸方向における前記ステージとの距離、前記円周の径、光軸の角度、の少なくとも1つを調整可能に構成されている、請求項1に記載のガラス振動子の製造装置。
【請求項3】
前記ステージは、前記ステージ中心軸周りに回転可能に構成されている、請求項1に記載のガラス振動子の製造装置。
【請求項4】
前記ガラス振動子の製造装置は、前記ガラス振動子を保持可能な保持機構と、
前記保持機構の3次元位置を制御する制御部と、
をさらに備えており、
前記ステージは、前記ガラス振動子を所定位置に固定可能な台座電極を設置可能に構成されており、
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記画像に基づいて、前記ガラス振動子を前記所定位置に配置することが可能に構成されている、請求項1に記載のガラス振動子の製造装置。
【請求項5】
ステージ中心軸を備えるステージであって、振動子中心軸を中心とした曲面形状を備えるガラス振動子を設置可能に構成されている前記ステージと、
前記ステージの上方に配置されており、前記ステージ中心軸に垂直な面内に位置しているとともに、前記ステージ中心軸を中心とした円周上に位置している光源と、
前記ステージの上方に配置されており、前記光源によって光が照射されている状態の前記ガラス振動子の画像を取得可能に構成されている撮像部と、
を備える製造装置を用いたガラス振動子の製造方法であって、
前記振動子中心軸が前記ステージ中心軸と一致するように、前記ガラス振動子を前記ステージ上に設置する設置工程と、
前記光源から前記ガラス振動子へ光を照射する照射工程と、
前記光源によって光が照射されている状態の前記ガラス振動子の画像を、前記撮像部によって取得する画像取得工程と、
取得した前記画像における、前記光源の前記ガラス振動子への映り込み形状に基づいて、前記ガラス振動子の形状を解析する解析工程と、
を備える、ガラス振動子の製造方法。
【請求項6】
前記ステージは、前記ステージ中心軸周りに回転可能に構成されており、
前記画像取得工程では、前記ステージの回転角度が互いに異なっている複数の前記画像を取得する、請求項5に記載のガラス振動子の製造方法。
【請求項7】
前記光源は、前記円周上に回転対称に配置されている複数の発光部を備えており、
複数の前記発光部の各々は、前記ステージ中心軸方向における前記ステージとの距離、前記円周の径、光軸の角度、の少なくとも1つを調整可能に構成されており、
前記画像取得工程では、前記距離、前記円周の径、前記光軸の角度の少なくとも1つが異なっている複数の画像を取得する、請求項5に記載のガラス振動子の製造方法。
【請求項8】
前記解析工程は、
前記映り込み形状を含む閉じた曲線をフィッティングする工程と、
前記閉じた曲線の真円からのずれ量、および、前記閉じた曲線の重心位置の前記振動子中心軸からのずれ量、の少なくとも一方を算出する工程と、
を備えている、請求項5に記載のガラス振動子の製造方法。
【請求項9】
前記解析工程は、
前記映り込み形状の円周方向のひずみに基づいて、前記ガラス振動子表面の凹凸状態を解析し、
前記映り込み形状の径方向のひずみまたは光量に基づいて、前記ガラス振動子表面の前記振動子中心軸に対する傾きを解析する、
請求項5に記載のガラス振動子の製造方法。
【請求項10】
前記ガラス振動子の製造方法は、
溶融成形によりガラス板の一部に前記ガラス振動子を成形する成形工程と、
前記ガラス振動子が成形されていない未成形領域の前記ガラス板を除去する除去工程と、
前記未成形領域が除去された前記ガラス振動子を、台座電極に実装する工程と、
前記台座電極に実装されている前記ガラス振動子を、気密封止する工程と、
をさらに備えており、
前記設置工程、前記照射工程、前記画像取得工程、前記解析工程は、前記成形工程と前記除去工程との間に行われる、請求項5に記載のガラス振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ガラス振動子の製造装置およびガラス振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高精度化が可能であるジャイロセンサとして、溶融シリカ製のガラス振動子を用いたBird-bath Resonator Gyroscope (BRG)が開示されている。ガラス振動子は、振動子中心軸を中心とした曲面形状を備えている。そしてセンサの測定精度を高めるためには、曲面形状の形状対称性を高める必要がある。そのため、ガラス振動子の曲面形状の評価手法が必要とされている。なお、特許文献2には、光学による形状評価手法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/079129号明細書
【特許文献2】特開2014-109489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光学による形状評価手法では、ガラス振動子が備える曲面形状の形状対称性の評価が困難であった。本明細書の技術では、ガラス振動子の形状対称性を適切に評価可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するガラス振動子の製造装置は、ステージ中心軸を備えるステージを備える。ステージは、振動子中心軸を中心とした曲面形状を備えるガラス振動子の振動子中心軸がステージ中心軸と一致するように、ガラス振動子を設置可能に構成されている。ガラス振動子の製造装置は、ステージの上方に配置されている光源を備える。ガラス振動子の製造装置は、ステージの上方に配置されており、光源によって光が照射されている状態のガラス振動子の画像を取得可能に構成されている撮像部を備える。光源は、ステージ中心軸に垂直な面内に位置しているとともに、ステージ中心軸を中心とした円周上に位置している。
【0006】
上記の構造によると、ステージ中心軸を中心とした円周上に位置している光源を用いて、ガラス振動子に光を照射することができる。ガラス振動子の中心と光源の円周中心とを一致させることができるため、光源がガラス振動子の表面で反射した像によって、形状対称性を評価することが可能となる。その結果、高精度なジャイロセンサを作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】ガラス振動子30vのII-II線における断面図である。
【
図3】ガラス振動子30vの製造装置1の概略側面図である。
【
図6】ガラス振動子ジャイロセンサの製造工程の概略を示すフローチャートである。
【
図11】台座電極101の作製工程を説明する図である。
【
図12】実装工程に用いられる製造装置1Aの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
(ガラス振動子30vの構成)
図1に、ガラス振動子30vの斜視図を示す。
図2に、ガラス振動子30vのII-II線における断面図を示す。なお、
図1の斜視図では、ガラス振動子30vの成形部において厚みを考慮した図示になっていない。ガラス振動子30vは、石英板30を火炎と型とを用いて溶融成形することで形成されている。溶融成形の内容については、後述する。石英板30は上面視において正方形である。石英板30は、羽部30hおよびガラス振動子30vを備えている。羽部30hは、もとの石英板30の状態を保ち、溶融成形に寄与されていない箇所である。
【0009】
ガラス振動子30vは、石英板30の中央部に作製されている。ガラス振動子30vは、振動子中心軸VAを中心とした曲面形状を備えており、略半球形状を備えている。また
図2に示すように、ガラス振動子30vの断面は、M字の形状をしている。ガラス振動子30vは、石英板30の一部が溶融成形で引き伸ばされた箇所である。ガラス振動子30vはガラスであるので透明である。ガラス振動子30vは、ピラー部30pおよびリム部30rを備えている。ピラー部30pは、その中心が凹んだ形状を備えている。ピラー部30pは、振動子中心軸VA回りに形成されている柱状の部位である。ガラス振動子30vの外周部には、リム部30rが形成されている。
【0010】
(製造装置1の構成)
図3に、ガラス振動子30vの製造装置1の概略側面図を示す。
図4に、製造装置1の上面図を示す。なお
図4では、見やすさのために、光源70を点線で記載しているとともに、撮像部62および受光部63の記載を省略している。また、ステージ61、石英板30、光源70は断面図で示している。製造装置1は、ステージ61、撮像部62、受光部63、制御部64、光源70、を主に備えている。なお、本図では本装置の主要構成部のみを図示している。主要構成部以外の構成(例:装置の架台、受光部の支持機構、動作電源等)に関しては、図示を省略している。
【0011】
ステージ61は、ステージ中心軸SAを備えている。ステージ61は、ステージ中心軸SA周りに回転可能に構成されている。ステージ61は、ガラス振動子30vが形成されている石英板30を設置する部位である。具体的には、羽部30hがステージ61の表面61sに接するように、石英板30がステージ61に設置される。このとき、ガラス振動子30vの振動子中心軸VAがステージ中心軸SAと一致するように、設置する。
【0012】
光源70は、ステージ61の上方に配置されている。
図5に、光源70の下面図を示す。光源70は、複数の発光部71、取付台73、を主に備えている。なお光源70は、取付台73を製造装置1に取り付ける取付機構(不図示)、発光部71を投光させるための制御基板(不図示)、電源配線(不図示)、などをさらに備えている。
【0013】
取付台73は、ステージ中心軸SAを中心としたリング形状を備えている。複数の発光部71の各々は、ステージ中心軸SAを中心とした円周CR1およびCR2上に、回転対称に配置されている。複数の発光部71は、LEDであり、全点灯および部分点灯が可能である。取付台73は、ステージ中心軸SAに沿って±z方向に移動可能である(
図3、矢印A1参照)。これにより、複数の発光部71とステージ61との距離を調整することができる。
【0014】
撮像部62および受光部63は、ステージ61の上方に配置されている。受光部63は顕微鏡である。受光部63の鏡筒中心軸BAは、ステージ中心軸SAと一致している。撮像部62は、静止画および動画を撮影可能なカメラである。撮像部62によって、光源70によって光が照射されている状態のガラス振動子30vの画像を取得することが可能とされている。
【0015】
制御部64は、ステージ61、撮像部62、光源70に接続されており、これらの機器から各種情報を取得するとともに、これらの機器を制御する。制御部64は、例えばPCであってもよい。
【0016】
(ガラス振動子ジャイロセンサの製造方法)
図6に、ガラス振動子ジャイロセンサの製造工程の概略を示すフローチャートを示す。ステップS1のガラス成形工程では、火炎と型とを用いて、石英板30にガラス振動子30vを成形する。ステップS2の検査工程では、上述した製造装置1を用いて、成形したガラス振動子30vの形状対称性を検査する。検査工程によって、形状対称性が高いガラス振動子30vを選定することができる。ステップS3の分割工程では、ガラス振動子30vを石英板30から切り出す。
【0017】
ステップS4の台座作製工程では、ガラス基板とシリコン基板とが接合されて構成された台座電極が作製される。ステップS5の実装工程では、パッケージに配置された台座電極に、ガラス振動子30vが実装される。そして、台座電極とパッケージとがワイヤボンディングされ、電気的接続が成される。ステップS6の封止工程では、ガラス振動子30vおよび台座電極が実装されたパッケージを、真空中で気密封止する。本工程により、セラミックパッケージの内圧が真空に保たれる。
【0018】
以上の6工程を経て、ガラス振動子ジャイロセンサが製造される。各工程について、以下に詳しく説明する。
【0019】
(ガラス成形工程(ステップS1))
図7に、溶融成形装置301の断面概略図を示す。溶融成形装置301は、ガラス成形工程(ステップS1)を行うための装置である。溶融成形装置301は、プレート10、成形型20、石英板30、ヒートシンク40、電動ステージ45、穴部負圧発生手段46、制御部47、バーナ50、を主に備える。成形型20は、石英板30を溶融変形させて半球形状のガラス振動子30vを成形するための型である。成形型20の一部には、石英板30が溶融変形するための穴部20hが形成されている。穴部20hの中央には、中心軸CAを有する支柱20pが配置されている。プレート10は、成形型20を設置するためのステンレス製の台である。ヒートシンク40は、プレート10の下面10rと接触している。ヒートシンク40の内部には、循環配管41が配置されている。循環配管41は、チラー設備42に接続されている。循環配管41には、チラー設備42によって恒温化された冷媒が循環している。これによりヒートシンク40は、工程中に一定の温度を保ち続ける。電動ステージ45は、x,y方向(水平方向)に移動可能に構成されている。
【0020】
ガラス成形工程を説明する。成形型20の上に石英板30を置き、穴部負圧発生手段46で穴部20hを負圧にする。その結果、石英板30が成形型20に吸着される。そしてガス流量調整器52で燃料と酸素とを流し、予混合室50cでこれらのガスを混ぜて着火する。その後、可動機構53により火炎が出ているバーナ50を下降させて石英板30を加熱する。
【0021】
穴部20h上に位置する石英板30のガラス成形部が軟化温度に達すると、穴部負圧発生手段46によって印加された大気との差圧によって石英板30が溶融成形される。成形型20の支柱20pが転写されることにより、ピラー部30p(
図1、
図2参照)が成形される。所定の時間経過後、バーナ50を可動機構53によって上昇させ消火する。石英板30を冷却し、穴部負圧発生手段46を停止する。最後に、ガラス振動子30vが形成された石英板30を成形型20から取り外す。
【0022】
(検査工程(ステップS2))
製造装置1(
図3、
図4)を用いた検査工程を説明する。検査工程は、設置工程、照射工程、画像取得工程、解析工程をさらに備えている。以下に順番に説明する。設置工程では、ガラス振動子30vをステージ61上に設置する。このとき、振動子中心軸VAがステージ中心軸SAと一致するように設置する。
【0023】
照射工程では、光源70からガラス振動子30vへ光を照射する。
図3に示すように、光源70から発せられた投光光FL1およびFL2は、ガラス振動子30vの曲面上の反射点RP1およびRP2で反射する。反射した反射光RL1およびRL2は、受光部63である実体顕微鏡に入射される。なお、
図3における反射点の数や反射位置は一例である。実際には、ガラス振動子30vの形状や光源70のz方向位置によって、反射点の発生状態を様々に変化させることができる。
【0024】
画像取得工程では、光源70によって光が照射されている状態のガラス振動子30vの画像を、撮像部62によって取得する。撮像された画像は、制御部64に送られる。
【0025】
解析工程は、制御部64によって行われる。解析工程では、取得した画像における、光源70のガラス振動子30vへの映り込み形状に基づいて、ガラス振動子30vの形状を解析する。具体的に説明する。
図8および
図9に、
図3における反射状態における取得画像例を示す。
図8は形状対称性が良い例であり、
図9は形状対称性が悪い例である。
図8および
図9では、反射像RI1およびRI2が観察できる。反射像RI1およびRI2は、複数の発光部71が映り込んだ像である。反射像RI1では、ひずんだ明点(反射光RL1)が略円形に並んでいる。反射像RI2では、ひずんだ明点(反射光RL2)が略円形に並んでいる。反射像RI2は、反射像RI1の外周を取り囲んでいる。なお、反射像RI1およびRI2の明点の数は、発光部71の数と同一になる。しかし
図8および
図9では、分かりやすさのために、明点の数を実際の数よりは少なく記載している。
【0026】
解析工程では、(1)真円からのずれ量、(2)振動子中心軸VAからのずれ量、(3)表面の凹凸状態、(4)振動子中心軸VAに対する傾き、を解析することができる。以下に説明する。
【0027】
まず、画像処理により、反射像RI1およびRI2に、閉じた曲線をフィッティングする工程が行われる。本実施例では、反射像RI1およびRI2の各々が備えている、略円形に並んでいる明点に重複するように、点線で示されるフィッティング円EL1およびEL2をフィッティングしている。曲線のフィッティング方法は様々であってよい。本実施例では、楕円近似によるフィッティング方法を用いている。これにより、ガラス振動子30vの反射点RP1およびRP2が位置する高さにおける、真円からのずれ量(真円度)を、数値化することができる。(上記(1))。
図8および
図9の例では、
図9のフィッティング円EL2の真円度が低いため、このフィッティング円EL2の真円度を数値化することができる。
【0028】
また、フィッティング円EL1およびEL2の重心CG1およびCG2を算出する。
図8および
図9では、重心CG1およびCG2をバツ印で示している。そして、重心CG1およびCG2の、振動子中心軸VAからのずれ量を算出する。これにより、ガラス振動子30vの反射点RP1およびRP2が位置する高さにおける円周の中心の、振動子中心軸VAからのずれ量を数値化することができる。(上記(2))。
図8および
図9の例では、
図9のフィッティング円EL1の真円度が低いため、このフィッティング円EL1の重心CG1のずれ量を数値化することができる。
【0029】
また、映り込み形状の円周方向のひずみに基づいて、ガラス振動子30v表面の凹凸状態を解析する。具体的には、明点の周方向の幅Wを測定する。
図9に示すように、標準幅より広い幅W1の明点が観察される領域は、周囲よりも上方へ突出している領域である。また、標準幅より狭い幅W2の明点が観察される領域は、周囲よりも下方へ窪んでいる領域である。幅Wが円周の全体に亘って一定になるほど、ガラス振動子30vの対称性が高いことを示している。これにより、ガラス振動子30vの反射点RP1およびRP2が位置する高さにおける、表面の凹凸状態を数値化することができる。(上記(3))。
【0030】
また、映り込み形状の径方向のひずみまたは光量に基づいて、ガラス振動子表面の振動子中心軸VAに対する傾きを解析する。具体的には、明点の径方向の高さHを測定する。
図8に示すように、標準幅より狭い高さH1の明点が観察される領域は、振動子中心軸VAに対する角度が小さい(すなわち垂直に近い)領域である。また標準幅より広い高さH2の明点が観察される領域は、振動子中心軸VAに対する角度が大きい(すなわち水平に近い)領域である。また、明点の光量が大きい領域ほど、振動子中心軸VAに対する角度が大きい(すなわち水平に近い)領域であると判断できる。これは、反射点におけるガラス振動子30v表面が水平に近いほど、反射光の受光部への入光量が増加するためである。これにより、ガラス振動子30vの反射点RP1およびRP2が位置する高さにおける、振動子中心軸VAに対する傾きを数値化することができる。(上記(4))。
【0031】
最後に、数値化した指標を、合格基準となる既定値と比較して、ガラス振動子30vの合否を求める。このように本実施例の検査工程を用いることによって、溶融成形されたガラス振動子30vの対称性や出来栄えを、簡便かつ短時間に評価することが可能となる。
【0032】
(検査工程の変形例)
画像取得工程では、ステージ中心軸SA回りの回転角度が互いに異なっている複数の画像を取得してもよい。このとき、ステージ61を360°回転させ、所定角度ごとに画像を取得してもよい。なお、所定角度は任意に設定できる。例えば、90°ごとに4枚の画像を取得してもよいし、30°ごとに12枚の画像を取得してもよい。また、動画で画像を取得してもよい。これにより、ガラス振動子30vの曲面の同一高さにおいて、反射点を周方向に移動させることができる。
【0033】
解析工程では、回転角度が異なる複数の画像や動画に基づいて、ガラス振動子30vの対称性を評価してもよい。具体的には、複数の画像間における、フィッティング円EL1およびEL2の真円度の変化量や、重心CG1およびCG2の移動量を算出する。そして、変化量や移動量が小さいほど、ガラス振動子30vの形状対称性が高いと評価することが可能である。
【0034】
(分割工程(ステップS3))
図10の断面概略図を用いて、分割工程を説明する。まず、サポート治具80を準備する。サポート治具80の孔部80hに、ガラス振動子30vが形成された石英板30を裏返して嵌め込む。そして孔部80hに樹脂材81を充填することで、ガラス振動子30vを固定する。
【0035】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)によって、羽部30hを含んだ領域R1を研磨し除去する。その後、残存する樹脂材81を溶剤で除去する。これにより、ガラス振動子30vのみを取り出すことができる。
【0036】
さらに、ALD(Atomic Layer Deposition)により、ガラス振動子30vの表面に薄い電極膜を形成する。
【0037】
(台座作製工程(ステップS4))
図11を用いて、台座電極101の作製工程を説明する。
図11(A)は、台座電極101の上面図である。
図11(B)は、
図11(A)のB-B線断面図である。
図11(C)は、
図11(A)のC-C線断面図である。
【0038】
まず、ボロシリケートガラス基板102の一部に、ウエットエッチングによりエッチング溝TRを形成する。その後、アルミニウム薄膜を成膜してパターニングすることにより、ブリッジ配線103を形成する。
【0039】
加工済みのボロシリケートガラス基板102上に、シリコン基板104を陽極接合する。シリコン基板104上にアルミニウム薄膜を成膜してパターニングすることにより、複数の第1電極パッド105および第2電極パッド106を形成する。次に、シリコン基板104をDRIE(Deep Reactive Ion Etching)することにより、トレンチエッチングする。これにより、シリコン基板104に、シリコン枠体107、シリコン分割電極108、固定溝109、などを形成することができる。固定溝109は、ガラス振動子30vのピラー部30pを固定する部位である。またDRIEによって、あらかじめボロシリケートガラス基板102に作製していたエッチング溝TRやブリッジ配線103を露出させることができる。以上により、台座電極101が完成する。
【0040】
(実装工程(ステップS5))
図12に、実装工程に用いられる製造装置1Aの概略側面図を示す。製造装置1Aは、ステージ61、撮像部62、受光部63、制御部64、光源70を備えている。これらの内容は、
図3の製造装置1と同様であるため説明を省略する。また製造装置1Aは、ガラス振動子30vを保持可能な保持機構65をさらに備えている。保持機構65は、不図示の可動機構によって、3次元方向に移動可能とされている(矢印A3参照)。保持機構65の3次元位置は、制御部64によって制御することができる。保持機構65は、吸着機構66およびコレット67を備えている。コレット67には中空部が形成されている。
【0041】
まず、ステージ61に、セラミック製のパッケージ120を配置する。パッケージ120の内部には、
図11で説明した台座電極101が、不図示の銀ペーストによって固定されている。次に、台座電極101の中央部にある固定溝109に、導電性ペースト121を塗布する。
【0042】
前述の分割工程で作製されたガラス振動子30vのピラー部30pの内部に、コレット67を挿入する。コレット67の下端によって、ピラー底面30bを吸着する。これにより、ガラス振動子30vが保持機構65に保持される。制御部64は、撮像部62が取得した画像に基づいて、保持機構65の3次元位置を制御する。これにより、ピラー部30pを正確に固定溝109に入れ込むことができる。導電性ペースト121によって、ガラス振動子30vのピラー底面30bと台座電極101とが機械的および電気的に接続される。吸着機構66の吸着を止め、コレット67を上方に移動させる。その後、加熱により導電性ペースト121を焼き固める。ガラス振動子30vの表面に形成されている電極膜(不図示)とシリコン枠体107とは、導電性ペースト121およびブリッジ配線103(
図11(C)参照)とを介して、電気的に接続される。
【0043】
その後、Auのワイヤ122によって、第1電極パッド105とパッケージ120の電極パッド123との間を電気接続する(
図13参照)。
【0044】
(封止工程(ステップS6))
図13の断面概略図を用いて、封止工程を説明する。まず、ガラスリッド130に、矩形枠形状を有する電極枠131を形成する。電極枠131は、パッケージ120の電極枠124と対応する形状を有している。次に、前述の実装工程で形成されたパッケージ120を真空中に配置する。電極枠124の上に、電極枠124と同一の枠形状を有するシールリング132を設置する。シールリング132の材料は様々であってよく、本実施例ではAuSnとした。シールリング132の上に、ガラスリッド130を設置する。このとき、電極枠124とシールリング132と電極枠131とが互いに重なるように位置を調整する。
【0045】
その後、加熱してガス出し処理を行うと共に、共晶接合にてガラス振動子30vを真空気密封止する。このとき、必要に応じてガラスリッド130に荷重をかけ押圧して良い。このようにしてパッケージ120の内圧を所望の真空度にすることができる。以上により、ガラス振動子ジャイロセンサ2が完成する。
【0046】
(効果)
従来の光学による形状評価手法では、ガラス振動子30vの曲面形状の形状対称性を評価することが困難であった。本実施例の製造装置1によると、ステージ中心軸SAを中心とした円周上に位置している複数の発光部71を用いて、ガラス振動子30vに光を照射することができる。ガラス振動子30vの振動子中心軸VAと光源70の円周中心とを一致させることができるため、ガラス振動子30vの表面で反射した反射像RI1およびRI2に、曲面状態を転写することができる。すなわち、光源70の映り込み形状に基づいて、ガラス振動子30vの曲面形状を測定することが可能になる。これにより、ガラス振動子30vの対称性や出来栄えを評価することができるため、対称性が高い形状を持つガラス振動子30vを選別することが可能となる。その結果、高精度なジャイロセンサを作製することが可能となる。
【0047】
光源70をステージ中心軸SAに沿って±z方向に移動させることにより、複数の発光部71とステージ61との距離を調整することができる(
図3、矢印A1参照)。これにより、高アスペクト比の曲面形状を有するガラス振動子30vにおいて、反射点が位置する高さ(すなわち解析工程で形状評価する高さ)を変化させることが可能となる。
【0048】
本実施例の製造装置1は、円環形状の光源70を用いた光学的な非接触検査であるため、ガラス振動子30vを検査中に傷つけるおそれがない。高い歩留まりの検査工程を得ることができる。
【0049】
本実施例の製造装置1では、光源70の反射像を撮像するというシンプルな操作により、形状評価を行うことができる。検査時間の短縮化を図ることができるため、ジャイロセンサの検査コストや製造コストを低減することが可能となる。また製造ラインに負荷なく組み込むことができるため、インラインでの検査が可能となる。
またリング272は、不図示の可動機構によって、円形を維持したまま径を増減させることが可能に構成されている。これにより、円周CR201の径を制御可能である。
なお、本実施例では、光軸の角度や円周CR201の径を可変にすることが可能な光源270の技術思想を記載しており、詳細な駆動機構等は説明を省略している。しかし、これらの機構は、当業者であれば一般的な技術を用いて実現可能である。また、光軸の角度を変える手段は、マニュアル方式でも良い。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。