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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127623
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A63F5/04 620
A63F5/04 651
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036904
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】503106797
【氏名又は名称】株式会社エンターライズ
(71)【出願人】
【識別番号】598098526
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサルエンターテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上垣 貴規
(72)【発明者】
【氏名】小松 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隼人
(72)【発明者】
【氏名】穐元 力
(72)【発明者】
【氏名】古田 大士
(72)【発明者】
【氏名】村上 直良
【テーマコード(参考)】
2C518
【Fターム(参考)】
2C518DA03
2C518EA01
(57)【要約】
【課題】遊技者に遊技を面白く感じさせることが可能な遊技機を提供する。
【解決手段】スロットマシン1は、恩恵の付与に利用可能な倍率を付与するか否かを決定する倍率決定処理を複数回実行する処理と、複数回の倍率決定処理の実行によって付与が決定された倍率を用いて、付与する恩恵の量を決定する処理と、を実行可能である。複数回実行される倍率決定処理は、第1決定処理と、第1決定処理よりも後で実行される第2決定処理と、を含む。各々の決定処理それぞれは、倍率の候補が複数あり、複数の候補から選択された1つの倍率を付与するか否かを決定する処理であり、第1決定処理における複数の候補の組み合わせ(3倍、4倍、4倍、5倍)または複数の候補の平均倍率(4.00倍)と、第2決定処理における複数の候補の組み合わせ(5倍、5倍、6倍)または複数の候補の平均倍率(5.33倍)とが異なる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
恩恵の付与に利用可能な倍率を付与するか否かを決定する決定処理を複数回実行する処理と、前記複数回の前記決定処理の実行によって付与が決定された前記倍率を用いて、付与する恩恵の量を決定する処理と、を実行可能な遊技制御部を備え、
前記複数回実行される前記決定処理は、第1決定処理と、前記第1決定処理よりも後で実行される第2決定処理と、を含み、
各々の前記決定処理それぞれは、前記倍率の候補が複数あり、前記複数の候補から選択された1つの倍率を付与するか否かを決定する処理であり、
前記第1決定処理における前記複数の候補の組み合わせまたは前記複数の候補の平均倍率と、前記第2決定処理における前記複数の候補の組み合わせまたは前記複数の候補の平均倍率とが異なる、遊技機。
【請求項2】
各々の前記決定処理それぞれにおいて、前記複数の候補を報知する処理と、前記複数の候補から選択された1つの倍率を報知する処理と、前記選択された1つの倍率が付与されるか否かの決定の結果を報知する処理とが実行可能である、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記複数の候補には、選択されることで倍率が100%付与される確定候補を含む、請求項1に記載の遊技機。
【請求項4】
前記第2決定処理の前記確定候補の倍率は、前記第1決定処理の前記確定候補の倍率よりも高い、請求項3に記載の遊技機。
【請求項5】
前記複数の候補にはそれぞれ倍率が付与される付与確率が紐づいており、
前記第2決定処理における前記複数の候補の平均倍率は、前記第1決定処理における前記複数の候補の平均倍率よりも高く、
前記第2決定処理における前記複数の候補に紐づく前記付与確率の平均値は、前記第1決定処理における前記複数の候補に紐づく前記付与確率の平均値よりも低い、請求項1に記載の遊技機。
【請求項6】
前記倍率を、数値が認識可能な第1態様と、数値が認識できない第2態様のいずれかの態様で報知可能な報知部を備え、
前記付与する恩恵の量に上限値があり、
前記報知部は、前記決定処理の実行により付与された倍率によって得られる恩恵の値が前記上限値を超える場合に前記倍率を前記第2態様で報知し、前記決定処理の実行により付与された倍率によって得られる前記恩恵の値が前記上限値を超えない場合に前記倍率を前記第1態様で報知することが可能に構成されている、請求項1に記載の遊技機。
【請求項7】
前記決定処理は、第1種キャラクタと、前記第1種キャラクタと対戦する第2種キャラクタとの対戦に関する処理である、請求項1~6のいずれかに記載の遊技機。
【請求項8】
前記複数の候補はそれぞれ、複数の前記第1種キャラクタ及び複数の前記第2種キャラクタから選択される1組の対戦組み合わせに紐づいている、請求項7に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機は、一般遊技状態でのゲーム(遊技)と、一般遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(ATやART等)でのゲームとが切り替え可能に構成されている。特許文献1には、特別遊技状態のゲーム数が消化されるまでに特別遊技状態のゲーム数の上乗せがなされるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-22600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、遊技者に遊技を面白く感じさせることが可能な遊技機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の側面は、恩恵の付与に利用可能な倍率を付与するか否かを決定する決定処理を複数回実行する処理と、前記複数回の前記決定処理の実行によって付与が決定された前記倍率を用いて、付与する恩恵の量を決定する処理と、を実行可能な遊技制御部を備え、前記複数回実行される前記決定処理は、第1決定処理と、前記第1決定処理よりも後で実行される第2決定処理と、を含み、各々の前記決定処理それぞれは、前記倍率の候補が複数あり、前記複数の候補から選択された1つの倍率を付与するか否かを決定する処理であり、前記第1決定処理における前記複数の候補の組み合わせまたは前記複数の候補の平均倍率と、前記第2決定処理における前記複数の候補の組み合わせまたは前記複数の候補の平均倍率とが異なる、遊技機である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、遊技者に遊技を面白く感じさせることが可能な遊技機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スロットマシンの正面図である。
図2】スロットマシンとカードユニットの各構成を模式的に示すブロック図である。
図3】回転リールの図柄の配列の一例を示す図である。
図4】第1遊技状態における状態遷移を説明する図である。
図5】第2遊技状態における状態遷移を説明する図である。
図6】遊技区間の状態遷移を説明する図である。
図7】メイン制御基板、遊技価値制御基板およびサブ制御基板の接続/通信関係を説明する図である。
図8】本実施形態のスロットマシン1の遊技フローを示す図である。
図9】上乗せ決定処理で実行される演出の一例を示す図である。
図10】倍率決定処理の演出の流れを示す図である。
図11】第1回、第2回、第3回倍率決定処理それぞれが有する複数の倍率の候補に関する説明図である。
図12】第1回、第2回、第3回倍率決定処理それぞれについて、複数の倍率の候補とその倍率が付与される付与確率に関する疑似的なテーブルを示す図である。
図13】上乗せ差枚数に上限値が存在する場合の課題の一例を示す図である。
図14】上乗せ決定処理における演出の一例を示す図である。
図15】スロットマシン1の上乗せ決定処理を示すフローチャートである。
図16】スロットマシン1の上乗せ決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
本開示の遊技機の実施形態にかかるスロットマシン1について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「接続」には、接続対象同士が直接的に接続される場合と、接続対象同士が他の基板や装置等を介して間接的に接続される場合とを含む。
【0009】
本実施形態では、スロットマシン1が、物理的に実在するメダルを用いずに、遊技価値の数量(メダル数)を電子データにて取り扱うタイプの回胴式遊技機である場合を例示する。従来のスロットマシンとは異なり、当該スロットマシン1では、実在するメダルを投入および払い出す必要がなく、電子データ化された疑似的な遊技媒体を遊技価値のデータとして用いて遊技進行が可能となっている。このようなスロットマシン1は、メダルレス機、スマスロ(登録商標)、封入式の回胴遊技機などと呼称される。
【0010】
疑似的な遊技媒体、すなわち遊技価値は、遊技の進行に応じて増減する。それ故、遊技者は、実在するメダルを手にすることなく遊技ができ、遊技中、所持中の遊技価値の数量がどの程度あるかを、スロットマシン1のクレジット表示にて確認することも可能である。
【0011】
図1は、上述したスロットマシン1の正面図である。このスロットマシン1は、図2に示すように、カードユニット9と通信可能に接続されている。以下では、まずカードユニット9について説明する。
【0012】
<カードユニットの構成>
カードユニット9(外部装置に相当)は、遊技価値のスロットマシン1への貸出しおよびスロットマシン1からの返却に関する処理を実行可能な装置である。
【0013】
図示しないが、カードユニット9の外表面には、現金投入用開口部、カードの挿入/排出用開口部の他、暗証番号の入力指示や貸出残高等を表示可能な表示パネル、遊技価値の貸出ボタン、カード排出ボタンが設けられている。カードユニット9の内部には、スロットマシン1との通信用I/Fの他、図2に示すように、現金管理機構91、カード管理機構92、カードユニット側制御部93が設けられている。
【0014】
現金管理機構91は、現金投入用開口部から投入された紙幣をカードユニット9内部に導入且つ検出したり、蓄積したりする。
【0015】
カード管理機構92は、カードの挿入/排出用開口部から挿入されたカードを導入して収容したり、カード排出ボタンが操作された場合はカードを当該挿入/排出用開口部から排出したりする。
【0016】
カードユニット側制御部93は、CPU、RAMおよびROMなどで構成されている。カードユニット側制御部93は、現金管理機構91およびカード管理機構92それぞれの動作制御、遊技価値の貸出処理、カードの認証処理、カードからのデータ読み出し処理および書き込み処理などを行う。
【0017】
現金管理機構91の動作処理には、投入された紙幣がカードユニット9内部に導入されるように現金管理機構91を動作させる処理、投入された紙幣が現金管理機構91内で詰まった場合はその旨のエラー報知を行う処理、投入された紙幣に応じた遊技価値を現在の貸出残高に加算してRAMに一時的に記憶する処理などが含まれる。
【0018】
カード管理機構92の動作処理には、挿入されたカードがカードユニット9内部に導入されるようにカード管理機構92を動作される処理、カード排出ボタンの操作に伴ってカードが排出されるようにカード管理機構92を動作される処理、などが含まれる。
【0019】
遊技価値の貸出処理には、貸出ボタンの操作に伴って貸し出す分の遊技価値のデータをスロットマシン1に送信する処理が含まれる。この送信の際、カードユニット9においてRAMに一時的に記憶された貸出残高の遊技価値のデータから、貸し出す分の遊技価値分を減算する処理も行われる。
【0020】
カードの認証処理には、挿入/排出用開口部にカードが挿入された際に表示パネルを介して暗証番号の入力がなされた場合、入力された暗証番号とカードに書きこまれている暗証番号とが一致するか否か判断する処理が含まれる。カードユニット側制御部93は、一致するとの判断を行った場合、認証対象となったカードを引き続き使用することを許容するが、不一致との判断を行った場合、認証対象となったカードを引き続き使用することを許容しない(使用を制限する)ことがある。
【0021】
カードからのデータ読み出し処理には、カードに遊技価値のデータが書きこまれている場合はこれを読み出して、貸出残高としてRAM一に時的に記憶する処理などが含まれる。
【0022】
カードへの書き込み処理には、スロットマシン1の計数ボタン46(後述)の操作に伴って遊技価値のデータがカードユニット9へと転送されてきた場合、当該データを受信してRAMに一時的に記憶しておき、その後カード排出ボタンの操作に伴ってカードに当該データを書きこむ処理、が含まれる。カード排出ボタンが操作された際に、カードに既に遊技価値のデータが書きこまれている場合、カードユニット側制御部93は、当該データに、スロットマシン1から受信した遊技価値分を加算してカードに書きこむ処理(更新処理)を行う。
【0023】
これにより、カードユニット9にてカード排出ボタンが操作された際、遊技者が所有している遊技価値および貸出残高のデータの少なくとも1つが書きこまれたカードが、カードの挿入/排出用開口部から排出される。
【0024】
また、カードユニット9は、スロットマシン1以外の装置である、図示しないホールコンピュータ、ユニット管理コンピュータなどとも通信可能に接続されている。ホールコンピュータおよびユニット管理コンピュータへは、例えば、有利遊技状態(AT、CZ、特別役(ボーナス)実施状態等)での遊技回数を含む有利遊技状態に関する情報、遊技価値の数量の推移、消化ゲーム数、役物比率などのスロットマシン1にかかる各種情報が、カードユニット9から送られる。
【0025】
<スロットマシンの構成>
図1に示すように、メダルレス機であるスロットマシン1は筐体10を有する。筐体10の正面には、前面扉100が設けられている。
【0026】
前面扉100のうち、正面視における前面扉100の右端部付近には、鍵穴が設けられている。鍵穴は、前面扉100と筐体10とを施錠または解錠するための鍵が差し込まれることが可能となっている。遊技中は前面扉100および筐体10の施錠状態が維持されるため、遊技者は筐体10内部にアクセスすることができない。また、スロットマシン1はメダルレス機のため、筐体10内部にはセレクタやホッパー装置を設ける必要がなく、店舗スタッフによる、実在のメダルを遊技中に補給する動作が省略されている。それ故、遊技中は、スロットマシン1でエラーが生じた場合を除き、店舗スタッフが前面扉100と筐体10を解錠する場面は原則発生し得ない。店舗スタッフが設定変更作業、設定値確認作業、メンテナンス作業等を行う場合、前面扉100および筐体10は解錠され、前面扉100は筐体10に対して回動可能となる。これにより、店舗スタッフは、筐体10内部にアクセスすることができる。
【0027】
前面扉100の中央部分には、透明性のリール窓200が設けられている。遊技者は、このリール窓200から、後述する複数の回転リール20a,20b,20cそれぞれの表面に表示された複数の図柄を視認することができる。
【0028】
リール窓200の上方には、遊技中の各種の演出を行うための液晶画面3、スピーカ102、および電飾部103が設けられている。液晶画面3、スピーカ102および電飾部103は、報知部に相当する。
【0029】
液晶画面3は、遊技者の遊技中に各種の演出動画(演出画面)を表示する。
【0030】
スピーカ102は、所定のBGM(バックグラウンドミュージック)、SE(サウンドエフェクト)および音声を出力する。
【0031】
電飾部103は、例えば期待度の高い演出画面が表示されたり、役が入賞したりした場合に、所定のパターンで点灯または消灯する。
【0032】
リール窓200の下方には、操作部4が設けられている。操作部4は、遊技者が視認可能かつ触れることができる位置に設けられている。操作部4は、複数のストップスイッチ40a,40b,40c、ベットスイッチ41、レバー42、媒体表示部43、遊技情報表示部44、キャンセルボタン45、計数ボタン46、および演出ボタン47などを含む。
【0033】
各ストップスイッチ40a,40b,40cは、各回転リール20a,20b,20cに対応して設けられている。各ストップスイッチ40a,40b,40cは、回転リール20a,20b,20cが回転している間に、各回転リール20a,20b,20cの回転を停止させるための操作を受け付ける。
【0034】
各ストップスイッチ40a,40b,40cの内部には、ランプが設けられていてもよい。ランプは、例えばレバー42が操作されてから各回転リール20a,20b,20cが定常回転状態に至るまでの間、ストップスイッチ40a,40b,40cが操作無効な状態である旨を発色で示すことができる。また、ランプは、各回転リール20a,20b,20cが定常回転状態に至ってからストップスイッチ40a,40b,40cが操作されるまでの間、ストップスイッチ40a,40b,40cが操作有効な状態である旨を、上記の発色とは異なる発色で示すことができる。
【0035】
ベットスイッチ41は、遊技価値をベットする際に用いられる。本実施形態では、ベットスイッチ41を1回押すことで、1回遊技できる遊技価値の所定数(例えば3枚分)が自動でベットされる場合を例示する。
【0036】
レバー42は、各回転リール20a,20b,20cを回転させるための操作を受け付けるスタートスイッチとして機能する。なお、回転リール20a,20b,20cの始動については、前遊技での回転リール20a,20b,20cの始動から次遊技での回転リール20a,20b,20cの始動まで、少なくとも最小遊技時間(約4.1秒)の間隔があいている“ウェイト条件”を満たす必要がある。そのため、レバー42を操作した際、このウェイト条件が満たされた以降に各回転リール20a,20b,20cは始動する。
【0037】
媒体表示部43は、スロットマシン1の媒体管理部620が管理している遊技価値の数量(以下、クレジット数ともいう)、遊技価値の払い出し数などを表示するものであって、例えば複数の7セグメントで構成される。
【0038】
本実施形態における「遊技価値の払い出し数」とは、実在のメダルがスロットマシン1の外部へ払い出される動作ではなく、内部抽せんによって成立した役に基づき、当該役に応じた分の遊技価値が増加すること、を意味する。換言すれば、遊技価値の払い出し数とは、電子データ化された疑似的な遊技媒体の数値が増加すること、である。
【0039】
なお、本実施形態の上記クレジット数には、クレジット上限値が設けられている。このクレジット上限値は、後述するコンプリート機能の作動処理とは関係がなく、管理中の遊技価値の数量が比較的多い場合に、カードユニット9への遊技価値の転送を遊技者に促すための報知処理にて用いられる。この報知処理については、“-媒体管理部-”にて後述する。
【0040】
遊技情報表示部44は、媒体表示部43に表示される情報以外の遊技に関する情報を表示するものであって、LED、ランプ、7セグメントなどで構成される。遊技情報表示部44が表示する情報には、1回の遊技における遊技価値のベット数、特別役実施状態か否か、リプレイ(再遊技)入賞の旨、ATやART中に操作態様役が当選した場合は当該操作態様役の正解操作態様に対応するコード、等が含まれる。
【0041】
キャンセルボタン45は、ベットされている状態の遊技価値を、ベットされていない状態にするための操作を受け付けることができる。例えば、ベット中の遊技価値が1以上である状態にてキャンセルボタン45が操作されると、後述の媒体管理部620は、ベット中の遊技価値を“0”に更新するとともに、“0”になる直前のベットされていた遊技価値分を、管理中の遊技価値に加算する。これにより、媒体表示部43が表示するクレジット数は、ベットされていた遊技価値の分だけ増加する。換言すると、キャンセルボタン45は、ベット状態を非ベット状態へと遷移させることでベット中の遊技価値をクレジット数に戻すベット解除処理、を媒体管理部620に実行させるためのボタンと云える。
【0042】
なお、キャンセルボタン45の操作に基づくベット解除処理は、ベットされている状態だがレバー42が未だ操作されていない状態下にて有効であって、レバー42が操作されてから当該レバー42の操作に基づく遊技が終了するまでは無効となる。本実施形態では、キャンセルボタン45は、ベットスイッチ41の近くに配置されている。
【0043】
計数ボタン46は、スロットマシン1の媒体管理部620にて管理している遊技価値のデータを、媒体管理部620からカードユニット9に転送するための操作を受け付けることができる。例えば、管理中の遊技価値が1以上である状態にて計数ボタン46が操作されると、媒体管理部620は、管理中の遊技価値を0に向けて減算する。減算分の遊技価値のデータは、カードユニット9に送信される。
【0044】
なお、計数ボタン46を1回操作した際の管理中の遊技価値の減算量は、例えば“1”や“50”のように、予め決定されていてもよい。また、計数ボタン46を連続して操作されている間は、管理中の遊技価値が減算し続けられてもよい。
【0045】
本実施形態では、計数ボタン46は、操作部4のうち、スロットマシン1の正面視においてカードユニット9に近い側に配置されている。これにより、計数ボタン46がカードユニット9に関係するボタンである旨が遊技者に伝わりやすくなるとともに、計数ボタン46を押した後にカードユニット9からカードが排出されるまでの操作の流れがスムーズになる。
【0046】
また、計数ボタン46には、当該ボタン46内部または周辺に、操作する前と後とで発光色を変化させるようなランプが設けられていてもよい。
【0047】
演出ボタン47は、遊技者が遊技を行う際に、音量設定、遊技データの確認、その他遊技に関する各種メニュー設定などを行うために用いられるボタンである。また、演出ボタン47は、遊技中、演出に応じて遊技者により押下されることがある。遊技中に演出ボタン47が押下された場合、演出に変化が生じる。
【0048】
また、演出ボタン47内部には、様々な色やパターンで発光することが可能なランプが設けられていてもよい。当該ランプは、演出ボタン47が操作有効な状態の場合は点灯し、操作無効な状態の場合には非点灯となる。また、演出ボタン47の操作を契機として特別役やATなどの有利遊技状態の当選告知演出を出力する場合、当該ランプは、赤色や虹色等の、通常点灯時とは異なる発色で高速点滅することも可能である。
【0049】
これらの操作部4の各スイッチ付近には、遊技者の操作を検知して制御部6に操作信号を出力するセンサが設けられている。
【0050】
図2に示すように、スロットマシン1は、回転リールユニット2、制御部6、リセットボタン71および設定変更ボタン72を備える。回転リールユニット2、制御部6、リセットボタン71および設定変更ボタン72は、スロットマシン1の主電源をオンおよびオフする電源装置(図示略)などとともに、筐体10の内部に配置されている。
【0051】
回転リールユニット2は、図1および図2に示すように、3つの回転リール20a,20b,20cと、3つのステッピングモータ21a,21b,21cとを備える。回転リールユニット2は、筐体10の内部において、リール窓200の位置に対応して配置されている。回転リール20a,20b,20cそれぞれには、図3に示すように、複数の図柄(シンボル)が、当該回転リール20a,20b,20cの周方向に沿って間隔を開けて配置されている。ステッピングモータ21a,21b,21cは、各回転リール20a,20b,20cに対応して設けられており、対応する回転リール20a,20b,20cを駆動させる。
【0052】
ステッピングモータ21a,21b,21cは、回転リール20a,20b,20cの回転中にストップスイッチ40a,40b,40cが操作されてから190m秒以内に、操作されたストップスイッチ40a,40b,40cに対応する回転リール20a,20b,20cの回転を停止させる。ステッピングモータ21a,21b,21cは、504ステップで1回転する。これにより、回転リール20a,20b,20cは、80回転/分の速度で回転する。すなわち、190m秒以内で進めるステップは、127ステップである。
【0053】
これらの回転リール20a,20b,20cおよびステッピングモータ21a,21b,21cは、制御部6における回転リール制御部611(後述)によって、その回転および停止が制御される。
【0054】
リセットボタン71は、各種エラーの解除や制御部6を構成するRAMの初期化の際に操作される。例えば、リセットボタン71が押されたままスロットマシン1の電源がオフからオンに切り替えられると、スロットマシン1の媒体管理部620が管理している遊技価値の数量が“0”にクリアされるとともに、スロットマシン1の第2遊技状態は“一般遊技状態”に、遊技区間は“通常区間”に設定される。
【0055】
設定変更ボタン72は、複数段階の設定値のうちのいずれか1つをスロットマシン1に設定する際に、店舗スタッフによって押下されるボタンである。例えば、スロットマシン1を設定変更モードに設定した状態でスロットマシン1の電源がオフからオンに切り替えられると、設定変更ボタン72は操作有効な状態となり、この状態で設定変更ボタン72を操作することで設定値の設定が可能となる。
【0056】
遊技進行中や遊技待機中は、筐体10と前面扉100とが施錠されているため、リセットボタン71および設定変更ボタン72への接触は、解錠する権利を有する者(例えば鍵を所有している店舗スタッフ)以外は不可能である。解錠される場面は、原則、スロットマシン1にエラーが生じた場合と限られる。それ故、遊技者は、リセットボタン71および設定変更ボタン72に接触することはできない。
【0057】
設定値とは、スロットマシン1に投入された遊技価値の投入総数に対する、払い出された遊技価値の払出総数の割合を示す出玉率、を表した値である。設定された設定値は、内部抽せんに影響を与える。設定値に応じて、当せん候補となる役のうち少なくとも一部の当せん確率が異なるからである。設定値は、店舗開店前に、店舗スタッフによって設定される。
【0058】
<遊技者による遊技の流れ>
遊技者は、必要に応じて、演出ボタン47を押下してスピーカ102から出力される音量調整、液晶画面3の光度調整を行う。
【0059】
遊技者は、カードユニット9の貸出ボタンを操作して遊技価値のデータをスロットマシン1に転送させた後、ベットスイッチ41を操作することにより、媒体管理部620で管理中の遊技価値を使用して、スロットマシン1に遊技価値をベットする。スロットマシン1に所定数の遊技価値がベットされると、有効ラインLが有効化される。その後、レバー42の操作、すなわち遊技開始が可能となる。
【0060】
図1では、有効ラインLが、右上がりラインの1本で構成されている場合を例示する。有効ラインLとは、役の入賞を決定するための仮想ラインである。本実施形態では、MAX BET(マックスベット)となる3枚ベット(3枚掛け)をした場合に、有効ラインLが有効化される。
【0061】
以下では、ベルやスイカなどのメダルの払い出しのある役が有効ラインL上に揃うことのみならず、特殊リプレイ、チャンス目、特別役(ボーナス)などの特定の役に対応する図柄が有効ラインL上に揃うことも、「入賞」と表現する。
【0062】
本実施形態における1ゲーム(1遊技)とは、遊技者がベットスイッチ41、レバー42およびストップスイッチ40a,40b,40cを操作して、内部抽せん、入賞判定処理、遊技価値の増減処理を含む遊技の結果を得る一連の動作を云う。
【0063】
具体的には、遊技開始可能な状態でレバー42が操作(レバーオン)されると、当せんフラグを決定する内部抽せんが行われるとともに、各回転リール20a,20b,20cの回転が開始する。この状態で、ストップスイッチ40a,40b,40cのいずれかが操作されると、その操作されたストップスイッチ40a,40b,40cに対応する回転リール20a,20b,20cが停止する。すべての回転リール20a,20b,20cが停止し、有効ラインLに揃った(入賞した)図柄の組み合わせ(役)に応じて、所定数の遊技価値の払い出し処理が行われる。これにより、1ゲームが終了する。
【0064】
遊技者は、上記ゲームを繰り返し行う。ゲームが繰り返されることに応じて遊技が進行していき、液晶画面3の表示やスピーカ102からの音の出力、電飾部203の発光は、遊技進行に応じて変化していく。
【0065】
<遊技状態について>
遊技中は、遊技区間および遊技状態の各種類が設定され、設定された遊技区間および遊技状態の各種類に基づいて内部抽せんが行われる。遊技状態には、図4および図5に示すように、第1遊技状態および第2遊技状態が含まれる。なお、第1遊技状態および第2遊技状態は、排他的に成立する遊技状態ではなく、説明の便宜上区別するために分類した状態にすぎない。
【0066】
第1遊技状態は、図4に示すように、特別役非持ち越し状態(ボーナス非内部状態)、特別役持ち越し状態(ボーナス内部中)および特別役実施状態(ボーナス中)を含む。特別役非持ち越し状態、特別役持ち越し状態および特別役実施状態は、排他的に成立する関係にある。
【0067】
特別役非持ち越し状態とは、内部抽せんにより特別役(一種 BBおよび二種 BB)が当せんしておらず、かつ、特別役の入賞が持ち越されていない状態をいう。特別役非持ち越し状態は、設定値が変更された場合、RAMが初期化された場合、特別役実施状態に移行してから遊技価値の払い出しが所定数を超えた場合などの条件Aが満たされた場合に設定される。
【0068】
特別役持ち越し状態は、内部抽せんにより特別役が当せんしてはいるものの、当該特別役の入賞が持ち越されている状態をいう。つまり、特別役持ち越し状態とは、内部抽せんによって、特別役のフラグが当せんしたが、当該特別役を示す図柄が有効ラインL上に揃っておらず、よって特別役が未だ入賞していない状態をいう。
【0069】
ここで、一種BBは、一種特別役物に係る役物連続作動装置であって、二種BBは、二種特別役物に係る役物連続作動装置である。例えば、一種BBはベット数が最大数“3”の際に当せん候補となり、二種BBはベット数が最大数よりも少ない場合に当せん候補となるように、一種BBと二種BBとで、当せん候補となる際の遊技価値のベット数が異なっていてもよい。また、特別役は一種BBのみであってもよい。また、一種BBの持ち越し中に、更に一種BBが当せんすることはない。
【0070】
第1遊技状態が特別役非持ち越し状態である場合に特別役が当せんすると、第1遊技状態は、特別役非持ち越し状態から、当せんした当該特別役の入賞が持ち越された状態(特別役持ち越し状態)に移行する。
【0071】
当せんした特別役が入賞すると(条件B)、第1遊技状態は、特別役持ち越し状態から特別役実施状態に移行する。特別役実施状態は、内部抽せんにより当選した特別役(ボーナス)が入賞した状態であって、所定数を超える遊技価値の払い出しが完了していない状態をいう。例えば、一種BBまたは二種BBが入賞したことによって第1遊技状態が特別役実施状態に移行すると、一種BBまたは二種BBによる遊技価値の払い出し枚数が所定数を超えるまで、特別役実施状態が維持される。
【0072】
更に詳細に、特別役実施状態には、一種BB実施状態、二種BB実施状態、およびRB実施状態が含まれる。一種BBが実施されている一種BB実施状態の間に、内部抽せんによってRBが当せんし入賞した場合、特別役実施状態は、一種BB実施状態からRB実施状態に移行する。RB実施状態において12ゲーム消化または特定役が8回入賞することで、特別役実施状態は、一種BB実施状態に移行する。
【0073】
第2遊技状態は、図5に示すように、一般遊技状態、チャンスゾーン(以下、CZと表記する場合がある)および特別遊技状態としてのAT状態を含む。特別遊技状態には、AT状態および特別役実施状態が含まれる。一般遊技状態とチャンスゾーンとAT状態(特別遊技状態)とは、排他的に成立する関係にある。
【0074】
一般遊技状態とは、AT状態および特別役実施状態などの特別遊技状態でない状態であって且つチャンスゾーンでもない状態、つまりアシスト機能(指示機能)が発生しない状態(または発生しにくい状態)である。例えば、RAMクリア後やAT終了後などからAT抽せんに当せんするまでの間、第2遊技状態は一般遊技状態に設定される。一例として、遊技区間が有利区間である場合に、AT抽せんは、内部抽せんにより当せんした役(レア役など)に応じて行われる。
【0075】
AT状態とは、内部抽せんにより当せんした特別役以外の役のストップスイッチ40a,40b,40cの正解となる操作態様を、液晶画面3やスピーカ102、電飾部103を介して知らせるアシスト機能(AT機能)、が働いている状態である。遊技区間が有利区間である間に、AT抽せんにてATが当せんした場合に、第2遊技状態は、一般遊技状態からAT状態へと移行する。AT状態にて遊技が開始されてから所定ゲーム数が経過した場合、AT状態にて遊技が開始されてからの遊技価値の払い出し総数が所定数に達した場合、AT状態の継続抽せんにてATを継続しない決定がされた場合、AT状態から一般遊技状態への転落抽選にて一般遊技状態に移行する旨が決定された場合などに、第2遊技状態は、AT状態から一般遊技状態へと移行する。これにより、AT状態は終了する。
【0076】
チャンスゾーンとは、AT状態(特別遊技状態)への移行期待度が一般遊技状態よりも高い第2遊技状態である。AT状態への移行期待度が高いとは、CZからのAT状態への移行抽せん確率が高いといった直接的なものや、その後のAT状態への移行抽せん確率を高めていくような間接的なものも含む。したがって、CZは、一般遊技状態よりも遊技者にとって遊技が有利となる状態、といえる。一般遊技状態よりも遊技者にとって遊技が有利な状態という点では、CZおよびAT状態は共通しているが、CZよりも、AT状態の方がさらに有利度合が大きいといえる。CZは、内部抽せんにて当せんした役に基づいて行われるCZ抽せんに当せんした場合、有利区間での消化ゲーム数が所定ゲーム数に到達した場合、遊技の進行に応じて蓄積したポイントが所定値に到達した場合などの、何らかの条件が成立したときに突入可能である。
【0077】
<遊技区間について>
上述した遊技区間とは、指示機能に係る処理が行われるか否かを決定するための区間である。図6に示すように、遊技区間は、通常区間と有利区間とを有する。通常区間と有利区間とは排他的な関係にあり、遊技区間は、通常区間または有利区間のいずれかを採り得る。
【0078】
ここで、指示機能に係る処理とは、指示機能を発揮させる(アシストを行う)処理、ATの当せん確率が定められたモードの抽せん処理、当該モードに移行させる処理、CZ抽せん処理、CZ処理、AT抽せん処理、AT継続処理、AT上乗せ処理(AT継続ゲーム数の上乗せ、差枚上乗せ、セット数上乗せを含む)、AT状態から一般遊技状態への転落処理、AT処理、有利区間から通常区間への移行処理、などを含む。
【0079】
通常区間とは、指示機能に係る処理は実行できないが、有利区間への区間移行抽せんが行われる区間である。通常区間にて、有利区間に移行するための何らかの条件が満たされると、遊技区間は通常区間から有利区間へと移行する。なお、第2遊技状態が一般遊技状態である間に、遊技区間は通常区間を採ることができる。
【0080】
有利区間は、指示機能に係る処理を実行可能な区間である。有利区間には、第2遊技状態が一般遊技状態で進行する有利区間と、チャンスゾーンで進行する有利区間と、AT状態で進行する有利区間とが含まれる。遊技区間が有利区間に移行してから所定の終了条件を満たすまでの間、遊技区間が有利区間である状態は維持される。所定の終了条件については、“―区間制御部―”にて後述する。
【0081】
ここで、上記のまとめとして、スロットマシン1にて取り得る、遊技区間と第2遊技状態との組み合わせパターンを列挙する。
・遊技区間は通常区間、第2遊技状態は一般遊技状態であるパターン 1
・遊技区間は有利区間、第2遊技状態は一般遊技状態であるパターン 2
・遊技区間は有利区間、第2遊技状態はCZであるパターン 3
・遊技区間は有利区間、第2遊技状態はAT状態であるパターン 4
上述のように、遊技区間が通常区間の場合は、指示機能に係る処理が何ら実施できないため、遊技者にとっては利点が乏しいと言える。一方、遊技区間が有利区間の場合は、指示機能に係る処理が実施可能となるため、遊技進行の幅が広がり、通常区間に比べて遊技者にとっては利点がある、と言える。
【0082】
<各制御部の構成>
図2に示すように、制御部6は、主に、メイン制御部61、遊技価値数制御部62、およびサブ制御部63を有する。メイン制御部61は、タイマ割込みなどの割込み処理や、内部抽せんや回転リール20a,20b,20cの制御など、遊技を進行させるための制御を行う。遊技価値数制御部62は、遊技価値に関する管理や処理、カードユニット9との通信制御を行う。サブ制御部63は、メイン制御部61から送信された信号や演出ボタン47が押下されたことに基づいて、演出に関する制御を行う。
【0083】
メイン制御部61、遊技価値数制御部62、サブ制御部63それぞれは、CPU、RAMおよびROMで構成される。メイン制御部61のROMには、遊技進行に必要なプログラムなどが記憶され、メイン制御部61のRAMには、遊技進行に必要な遊技データが記憶される。遊技データには、現在ゲーム数の他、各遊技状態および遊技区間がどの状態または区間であるかを示すデータ、設定値などが含まれる。遊技価値数制御部62のROMには、遊技価値の管理やカードユニット9との通信に必要なプログラムなどが記憶され、遊技価値数制御部62のRAMには、管理中の遊技価値の総数などが記憶されている。サブ制御部63のROMには、演出の制御に必要なプログラムなどが記憶され、サブ制御部63のRAMには、演出制御に関する各種データなどが記憶される。
【0084】
ここで、メイン制御部61,遊技価値数制御部62,サブ制御部63の接続関係と通信処理について、図7を用いて説明する。本実施形態では、メイン制御部61、遊技価値数制御部62およびサブ制御部63それぞれは、異なる基板上に実装されている。
【0085】
メイン制御部61が実装されたメイン制御基板P1と、遊技価値数制御部62が実装された遊技価値制御基板P2は、ハーネスによって電気的に接続されており、双方向のシリアル通信が実行可能である。メイン制御基板P1から遊技価値制御基板P2へ送信される情報およびコマンドには、外端情報、設定変更中か否か、各種エラーに関するコマンド、ベットスイッチ41が操作されたことによる遊技価値のベット要求信号、当せん役に対応した遊技価値の払い出し要求信号、キャンセルボタン45が操作されたことによるベット解除処理の要求信号、計数ボタン46が操作されたことによる遊技価値の転送要求、などがある。遊技価値制御基板P2からメイン制御基板P1へ送信される情報およびコマンドには、コンプリート機能が作動した旨の情報、クレジット数が上限値に達した旨の情報、カードユニット9とスロットマシン1間の通信異常の有無に関する情報、メイン制御部61からの要求に対する各種応答、などがある。
【0086】
メイン制御基板P1と、サブ制御部63が実装されたサブ制御基板P3は、ハーネスによって電気的に接続されているが、メイン制御基板P1からサブ制御基板P3への一方向でのシリアル通信のみが行われる。メイン制御基板P1からサブ制御基板P3へ送信される情報およびコマンドには、遊技価値に関する情報(例えば遊技価値のベット/払い出し情報、AT中の遊技価値の獲得総数)、遊技開始/終了の旨の情報、役物作動開始/終了情報、各種エラーに関する情報、などがある。
【0087】
遊技価値制御基板P2とサブ制御基板P3は、ハーネスによって電気的に接続されているが、遊技価値制御基板P2からサブ制御基板P3への一方向でのシリアル通信のみが行われる。遊技価値制御基板P2からサブ制御基板P3へ送信される情報およびコマンドには、後述するMY値、コンプリート機能の作動を示す情報、コンプリート機能作動前の事前通知に関するコマンド、遊技価値の転送に関する情報(例えば転送開始の旨、転送中、転送完了等)、クレジット数や獲得枚数などを示す情報、クレジット数が上限に到達した旨の情報、クレジット数のバックアップエラーが発生している場合はそのエラー情報、などがある。
【0088】
<メイン制御部>
図2に戻る。CPUがROM内のプログラムを読み出して実行することにより、メイン制御部61は、内部抽せん部610、回転リール制御部611、遊技結果判定部612、遊技進行制御部614、区間制御部615、遊技状態制御部616、エラー判定部617、として機能する。
【0089】
―内部抽せん部―
内部抽せん部610は、レバー42の操作に基づいて内部抽せんを行い、複数の役のフラグのうち1つのフラグを当せんフラグとして当せんさせる。具体的に、内部抽せん部610は、レバー42が操作された時、内部抽せんテーブル(図示せず)およびレバー42が操作された時に取得される乱数に従って内部抽せんを行う。内部抽せん部610は、内部抽せんの結果に基づいて、内部抽せん結果信号を生成する。内部抽せん結果信号は、内部抽せん部610から回転リール制御部611および遊技進行制御部614などに送信される。
【0090】
内部抽せんテーブルは、内部抽せんにより当せんする可能性のある役の情報を示したものである。内部抽せん部610は、内部抽せんテーブルを基に、レバー42操作時のRT状態(図示せず)、特定役実施状態(ボーナス中)であれば特別役の種類、設定値、の組み合わせに応じて内部抽せんを行う。なお、内部抽せんテーブルに示された役の情報には、図柄の組み合わせと、その組み合わせに対応する役とが、関連付けて1以上設定されている。当該役には、遊技価値の払い出しが行われないはずれ役の他、ストップスイッチ40a,40b,40cの操作態様が正解の操作態様である場合に遊技価値が払い出される操作態様役、レア役などが含まれる。
【0091】
操作態様役には、正解の操作態様がストップスイッチ40a,40b,40cの押し順のみで定められた押し順役、押し順に加えて所定図柄の停止タイミングが定められた目押しを要する押し順役、正解の操作態様が所定図柄の停止タイミングのみで定められた目押し役、が含まれる。
【0092】
例えば、押し順役が当せんし、その押し順通りにストップスイッチ40a,40b,40cが押下された場合には、当該押し順役が入賞し、その役に応じた複数(例えば8枚)の遊技価値が払い出される。押し順役が当せんしたにも関わらず、押し順通りにストップスイッチ40a,40b,40cが押下されなかった場合には、当該押し順役は入賞しないか、またはその他の役(1枚役など)が入賞する。
【0093】
なお、押し順役などの操作態様役は、AT状態のみならず、一般遊技状態中、CZ中にも当せんしている。一般遊技状態中に操作態様役が成立した場合、正解の操作態様の報知はされないため、操作態様役は取りこぼされたり払い出しが1枚となったりする。AT状態中は、正解の操作態様が報知されるため、複数(例えば8枚)の遊技価値が払い出される。
【0094】
―回転リール制御部―
回転リール制御部611は、レバー42または各ストップスイッチ40a,40b,40cの操作に基づいて、ステッピングモータ21a,21b,21cの駆動を制御し、各回転リール20a,20b,20cの回転を開始させる回転開始制御または回転を停止させる回転停止制御を行う。
【0095】
具体的には、回転リール20a,20b,20c全ての回転が停止している状態にて、レバー42が操作された場合、回転リール制御部611は、回転リール20a,20b,20c全ての回転を開始させる。少なくとも1つの回転リール20a,20b,20cの回転中に、回転中の回転リール20a,20b,20cに対応するストップスイッチ40a,40b,40cが操作された場合、回転リール制御部611は、操作されたストップスイッチ40a,40b,40cに対応する回転リール20a,20b,20cの回転を停止させる。
【0096】
回転停止制御では、回転リール制御部611は、ストップスイッチ40a,40b,40cの操作に基づいて、当せんフラグが示す役に対応する図柄の組み合わせが、回転リール20a,20b,20cの有効ラインL上に配置されることでその役が入賞するように、回転リール20a,20b,20cの回転を停止させることができる。
【0097】
また、回転停止制御では、回転リール制御部611は、当せんした役と、各ストップスイッチ40a,40b,40c操作時の回転リール20a,20b,20cの位置とに応じて、引き込み制御または蹴飛ばし制御を行う。引き込み制御とは、当せんした役に対応する図柄を有効ラインL上に引き込むようにして、回転リール20a,20b,20cの回転を停止させる制御である。蹴飛ばし制御とは、当せんしていない役に対応する図柄が有効ラインL上に揃わないように、回転リール20a,20b,20cの回転を停止させる制御である。
【0098】
なお、特別役持ち越し中(ボーナス内部中)、回転リール制御部611は、ストップスイッチ40a,40b,40cの操作に基づいて回転リール20a,20b,20cを停止はさせるものの、特別役の入賞許可条件が未成立の場合、当せんしている特別役(ボーナス)が入賞しないように制御することが可能である。
【0099】
―遊技結果判定部―
遊技結果判定部612は、内部抽せんおよび回転リール20a,20b,20cの回転停止制御の各結果に基づいて遊技結果を判定する。遊技結果とは、有効ラインL上に揃った図柄に基づいて、当せんした役が入賞したか否かが判定された結果を意味する。具体的には、有効ラインL上に停止した図柄の組み合わせと、予め定められている所定の図柄の組み合わせとが一致した場合に、遊技結果判定部612は、当せん役が入賞したと判定する。
【0100】
―遊技進行制御部―
遊技進行制御部614は、遊技者の操作に基づいて遊技進行を制御する。その際、遊技進行制御部614は、店舗スタッフにより設定された設定値に基づいて、当該遊技者による遊技進行を制御する。
【0101】
また、遊技進行制御部614は、リセットボタン71が押下された場合、メイン制御部61のRAMを初期化することで、第1および第2遊技状態や遊技区間などの遊技データをクリアする。遊技進行制御部614は、設定変更ボタン72が押下された場合、現在の設定値を他の設定値に変更する。
【0102】
―区間制御部―
区間制御部615は、遊技者による遊技の際、複数の遊技区間(通常区間および有利区間)のうちいずれかを設定する。
【0103】
具体的には、区間制御部615は、遊技区間が通常区間の際に、有利区間への移行条件が満たされると、遊技区間を通常区間から有利区間に設定(移行)する。
【0104】
また、区間制御部615は、遊技区間が有利区間である場合には、有利区間の状態を維持するか、通常区間に移行するかを決定する。例えば、区間制御部615は、遊技区間が有利区間の時に、第2遊技状態がAT状態から一般遊技状態に移行したなどの所定条件が満たされた場合、後述する強制終了条件が満たされていなくても、遊技区間を有利区間から通常区間に移行させる。
【0105】
また、区間制御部615は、有利区間の状態での消化ゲーム数が4000ゲームに達した場合、または、有利区間突入時の遊技価値の数量を基準とした当該有利区間中の遊技価値の差数が2400枚に達した場合、を含む強制終了条件が満たされた場合、遊技区間を、有利区間から通常区間に強制的に移行させる。
【0106】
また、区間制御部615は、設定値の変更がされた場合や遊技データがクリアされた場合、リセット直前の遊技区間いかんにかかわらず、遊技区間を通常区間に設定する。
【0107】
―遊技状態制御部―
遊技状態制御部616は、第1遊技状態および第2遊技状態それぞれの設定を行う。
【0108】
具体的には、遊技状態制御部616は、第1遊技状態を、特別役非持ち越し状態、特別役持ち越し状態および特別役実施状態のいずれかに設定し、第2遊技状態を、一般遊技状態、CZ、AT状態のいずれかに設定する。
【0109】
一例として、図4に示すように、遊技状態制御部616は、メイン制御部61のRAMクリアや設定変更などの所定条件が満たされた場合は、第1遊技状態を特別役非持ち越し状態に設定する。内部抽せんにより特別役が当せんした直後、遊技状態制御部616は、第1遊技状態を特別役持ち越し状態に設定する。その特別役が入賞した場合、遊技状態制御部616は、第1遊技状態を特別役実施状態に設定する。
【0110】
また、図5に示すように、遊技状態制御部616は、AT抽せんの結果に基づいて、第2遊技状態をAT状態に設定するか否か(すなわち、ATに当せんしたか否か)を判定する。有利区間の間にAT抽せんに当せんした場合、遊技状態制御部616は、第2遊技状態をAT状態に設定する。逆に、AT抽せんに当せんしなかった場合、遊技状態制御部616は、第2遊技状態を一般遊技状態やCZに設定することができる。また、ATが終了した場合、遊技状態制御部616は、第2遊技状態をAT状態から一般遊技状態やCZに移行させることができる。
【0111】
図示していないが、遊技状態制御部616は、RT状態の移行制御をすることができる。RT状態は、リプレイのフラグの当せん確率が予め定められた遊技の内部状態である。スロットマシン1には、リプレイのフラグの当せん確率が互いに異なる複数のRT状態が用意されており、任意のRT状態において、RTの移行条件が満たされると、当該RT状態から他のRT状態へと遷移される。例えば、ATが実行され得る特別役持ち越し状態中は、RT状態の移行は行われず、1つのRT状態が維持される。特別役持ち越し状態以外では、RT状態の移行が行われ得る。
【0112】
―エラー判定部―
エラー判定部617は、各種エラーの有無を判定する。各種エラーとしては、バックアップ異常、メイン制御基板P1と遊技価値制御基板P2との間の通信異常、スロットマシン1とカードユニット9との間の接続異常、クレジット数の上限値到達、などが挙げられる。
【0113】
エラー判定部617が、これらのエラーのうち少なくとも1つが発生したと判定した場合、発生したエラーを示すコマンドが、エラーに関する情報としてメイン制御部61から遊技価値数制御部62およびサブ制御部63それぞれに送信される。これにより、遊技価値数制御部62は、管理中の遊技価値のバックアップ処理などのエラーの内容に応じた処理を行い、サブ制御部63は、発生したエラーの内容を液晶画面3やスピーカ102に報知させる処理を行うことができる。
【0114】
<遊技価値数制御部>
CPUがROM内のプログラムを読み出して実行することにより、遊技価値数制御部62は、媒体管理部620、コンプリート作動制御部621として機能する。
【0115】
―媒体管理部―
媒体管理部620は、遊技価値(クレジット数)の増減処理および管理処理を行う。
例えば、媒体管理部620は、カードユニット9から遊技価値が転送されてきたことに応じて、管理中の遊技価値を増加させる。メイン制御部61から遊技価値のベット要求を受信した場合、媒体管理部620は、管理中の遊技価値とベット要求とに基づき、ベット処理が可能か否かを判断する。媒体管理部620は、管理中の遊技価値がベット数以上の場合、“ベット可能”と判断し、管理中の遊技価値からベット分を減算する。媒体管理部620は、管理中の遊技価値がベット数未満の場合、“ベット不可”と判断し、その旨をメイン制御部61に送信するための処理を行う。ベット不可の場合は、管理中の遊技価値の数量が維持される。
【0116】
内部抽せんによって払い出しのある役が当せんし、その役が入賞した場合、媒体管理部620は、管理中の遊技価値を、入賞した役の種類に応じた分だけ増加させる処理を行う。
【0117】
また、キャンセルボタン45が操作された場合、媒体管理部620は、管理中の遊技価値を、ベットされていた分だけ増加させる。計数ボタン46が操作された場合、媒体管理部620は、管理中の遊技価値のデータを、カードユニット9に転送する。
【0118】
更に、媒体管理部620は、遊技価値の払い出し数からベット数を差し引いた数の累積値である遊技価値の差数を算出する。この差数を用いて、媒体管理部620は、以下を算出する。
(A)有利区間ごとの、有利区間中における遊技価値の差数
(B)スロットマシン1の電源がオンされた状態以降の、差数の最大値と最小値との差であるレンジ(以下、MY値)
【0119】
上記(A)は、有利区間の強制終了条件の成立可否判定に用いられる。上記(A)は、遊技区間が通常区間から有利区間に移行してから再度通常区間に移行するまでの間、継続して算出される。従って、上記(A)は、通常区間に移行した際にクリアされ、再び有利区間に移行した際に算出が開始される。
【0120】
上記(B)は、以下のコンプリート機能の作動制御に用いられる。上記(B)は、遊技区間や各種遊技状態いかんにかかわらず、スロットマシン1の電源がオンである限り算出し続けられる。上記(B)は、スロットマシン1の電源がオフされた際にクリアされ、再びオンとなった際に算出が開始される。
【0121】
また、媒体管理部620は、管理中の遊技価値、つまりクレジット数がクレジット上限値に到達したか否かを判定する。クレジット数がクレジット上限値に到達した場合、その旨がメイン制御部61およびサブ制御部63に出力される。これにより、サブ制御部63では、液晶画面3、スピーカ102および電飾部103を用いて、計数ボタン46を操作してクレジット数のデータのカードユニット9への転送を促す報知処理が行われる。この報知処理が行われている間、メイン制御部61では、ベットスイッチ41やレバー42が操作無効の状態とするなどの遊技の進行を停止する遊技停止処理が行われる。この報知処理および遊技停止処理が行われている状態は、計数ボタン46の操作によりクレジット数のデータ転送が行われることで、クレジット数がクレジット上限値を下回った場合に解除され得る。
【0122】
なお、クレジット数がクレジット上限よりも低く且つクレジット上限値に近い値に到達した場合から、遊技進行停止処理は行われずに計数ボタン46の操作を促す報知処理が行われてもよい。
【0123】
―コンプリート作動制御部―
コンプリート作動制御部621は、上述したMY値がMY上限値以上(例えば19000以上)となった場合、コンプリート機能の作動制御を行う。
【0124】
コンプリート機能とは、打ち止め機能であって、スロットマシン1を遊技不可な状態にする機能である。コンプリート機能が作動中のスロットマシン1では、ベットスイッチ41、レバー42、ストップスイッチ40a,40b,40cなどの遊技を消化するのに必要な操作部分は、操作の受け付け不可の状態となる。それ故、例えばコンプリート機能の作動中のスロットマシン1においていくらベットスイッチ41が操作されたとしても、ベット処理はなされない。このコンプリート機能の作動は、店舗スタッフによってスロットマシン1の電源が一度オンからオフにされない限り、維持される。スロットマシン1の電源が再びオンにされた後は、コンプリート機能の作動は解除された状態(コンプリート機能は非作動の状態)となっている。
【0125】
また、コンプリート作動制御部621は、MY値がMY上限値よりも低いがMY値に近い値以上(例えば18500以上)となった場合、コンプリート機能の作動が近い旨を示す事前通知のコマンドを、サブ制御部63に送信するための処理を行う。
【0126】
<サブ制御部>
CPUがROM内のプログラムを読み出して実行することにより、サブ制御部63は、演出制御部630(報知制御部に相当)として機能する。
【0127】
―演出制御部―
演出制御部630は、遊技進行に基づいて、複数種類の演出映像の中から選択された演出映像を液晶画面3に表示させるとともに、その演出映像に応じた効果音やBGMなどをスピーカ102から出力させ、その演出映像に応じた発光パターンで電飾部103を発行させる。例えば、演出制御部630は、ATやボーナスが当せんした場合、その旨を液晶画面3に表示させるための演出パターンを選択し、当該演出パターンに従って液晶画面3の表示制御、スピーカ102の音声出力制御、および電飾部103の発光制御を行う。
【0128】
演出制御部630は、AT中、逐次当せんする操作態様役の正解操作態様の報知を、液晶画面3およびスピーカ102の少なくとも1つに行わせる(アシスト機能、即ち指示機能)。
【0129】
また、遊技中に、設定値を示唆する演出の報知条件が満たされた場合、演出制御部630は、当該演出の報知を、液晶画面3、スピーカ102および電飾部103の少なくとも1つに行わせる。この演出を、遊技者は、現在遊技中のスロットマシン1がどのような設定値なのかを、把握する材料の1つとすることができる。報知条件としては、レア役当せん時、特別役(ボーナス)実施状態の終了時、AT終了時、などが挙げられる。
【0130】
―遊技フロー(ゲームフロー)―
図8は、本実施形態のスロットマシン1の遊技フローを示す図である。本実施形態では、通常区間における一般遊技状態、有利区間における一般遊技状態、有利区間におけるチャンスゾーン(CZ)、および有利区間におけるAT状態での遊技が実行可能に構成されている。通常区間における一般遊技状態において有利区間への移行条件が成立すれば、遊技区間は通常区間から有利区間に移行して、スロットマシン1は、有利区間における一般遊技状態となる。有利区間における一般遊技状態において、CZへの移行条件が成立すれば、有利区間におけるCZへ移行する。CZにおいてAT状態への移行条件が成立すれば、AT状態へ移行する。また、有利区間における一般遊技状態においてAT状態への移行条件が成立すれば、CZを経ずにAT状態へ移行する場合がある。
【0131】
本実施形態のAT状態は、AT状態において獲得可能な遊技価値の残り差枚数の初期値を決定する初期差枚数決定処理、残り差枚数を消化する間、差枚数管理型で遊技が進行するAT実行処理、更に、AT実行処理における遊技価値の残り差枚数に追加する上乗せ差枚数を決定する上乗せ決定処理を含んだ構成となっている。
【0132】
なお、本明細書において、遊技価値の数量(例えば、メダル数)を「枚数」と表記する場合があり、また、ベットした遊技価値の数量と遊技の結果得られた遊技価値の数量との差数を「差枚数」と表記する場合があるが、これらの表記は、メダル等の遊技媒体を使用する遊技機に限定される意味ではなく、電子データ化された疑似的な遊技媒体の数量を遊技価値の数量として用いる遊技機においても、説明の便宜上、「枚数」と表記している。
【0133】
―上乗せ決定処理―
図9は、上乗せ決定処理で実行される演出の一例を示す図である。図8及び図9に示すように、上乗せ決定処理では、基準枚数に対して倍率を1回又は複数回乗算することで、AT実行処理の残り差枚数へ追加する上乗せ差枚数を決定する処理である。本実施形態では、1回の上乗せ決定処理において、倍率の付与を決定する倍率決定処理(以下、単に決定処理と表記する場合がある)を3回実行する。1回目の倍率決定処理を第1回倍率決定処理と表記し、2回目の倍率決定処理を第2回倍率決定処理と表記し、3回目の倍率決定処理を第3回倍率決定処理と表記している。図9に示すように、上乗せ決定処理の倍率決定処理において、複数の味方キャラクタ(A~C)と、複数の敵キャラクタ(A~D)との対戦の演出に関する処理が演出制御部630によって実行される。図9は、液晶画面3に表示される演出の一例を示している。1つの倍率決定処理で1つの倍率を付与するか否かが決定される。よって、倍率決定処理の3回の実行の結果、1つも倍率の付与が決定されずに基準枚数がそのまま上乗せ差枚数に決定される場合や、1つの倍率の付与が決定される場合、2つの倍率の付与が決定される場合、3つの倍率の付与が決定される場合が生じ得る。1つの倍率決定処理が1つの対戦演出に対応しており、3回の倍率決定処理の実行に伴って対戦演出が3回実行される。すなわち、1ゲームごとに1回の対戦演出が報知され、1ゲームごとに1回の対戦演出が報知されることが3ゲームにわたって連続して行われる。3回の対戦演出の総合結果は、3ゲーム目の対戦演出の後または3ゲーム目よりも後のゲームにおいて報知される。
【0134】
具体例として、図9に示すように、基準枚数が30枚であり、1回目の対戦において勝利することで2倍の倍率が付与され、2回目の対戦において敗北して倍率が付与されず、3回目の対戦において勝利することで4倍の倍率が付与されている。その結果、3回の倍率決定処理で2倍、4倍が決定され、30×2×4=240枚が上乗せ差枚数として決定され、上乗せ差枚数として240枚が付与された旨の演出が実行される。
別の例として、3回の倍率決定処理の結果、2倍、5倍、6倍が決定された場合には、30×2×5×6=1800枚が上乗せ差枚数として決定される。更に別の例として、3回の倍率決定処理の結果、倍率が付与されなかった場合には、基準枚数の30枚が上乗せ差枚数として決定される。
上記処理を実現するために、図8に示す上乗せ決定処理は、基準枚数決定処理、第1回倍率決定処理、第2回倍率決定処理、第3回倍率決定処理、付与枚数表示処理を含んでいる。上乗せ決定処理のうちの、基準枚数決定処理、第1回倍率決定処理、第2回倍率決定処理、および第3回倍率決定処理はメイン制御部61が実行する。上乗せ決定処理のうちの、付与枚数表示処理はサブ制御部63が実行する。
【0135】
基準枚数決定処理は、AT実行処理における内部モードに応じて複数の所定数から1つの所定数を選択して決定する。複数の所定数としては、20枚、30枚、50枚というように異なる枚数が挙げられる。これらの枚数は一例であり、限定されない。内部モードは複数種類あり、一例として、第1内部モードは、60%の確率で20枚に当せんし、30%の確率で30枚に当せんし、10%の確率で50枚に当せんするモードである。第2内部モードは、第1内部モードよりも遊技者に有利なモードであり、第1内部モードに比べて基準枚数が相対的に大きくなるように設定されている。例えば、第2内部モードは、60%の確率で30枚に当せんし、30%の確率で50枚に当せんし、10%の確率で20枚に当せんすることが挙げられる。
内部モードは、通常区間から有利区間に移行することを契機として決定される。内部モードは、AT実行処理においてレア役に当せんするなどの所定条件の成立により、複数種類の内部モードから1つの内部モードに適宜変更される。内部モードは、有利区間から通常区間に移行する際にリセットされる。なお、ここで述べた確率や枚数は理解を容易にするための一例であり、限定されない。
【0136】
付与枚数表示処理は、図9に示すように、基準枚数と付与された倍率とに基づいて決定された上乗せ差枚数を報知する処理であり、演出制御部630が実行する。上乗せ差枚数の報知処理は、例えば、第3回倍率決定処理を実行した次のゲームを開始するためのベットスイッチ41の操作を契機としてフリーズ処理を発生させつつ報知しており、これにより、上乗せ差枚数の報知を的確に遊技者に伝えることが可能となる。フリーズ処理は、例えば、ベットスイッチ41の操作の後にレバー42を操作したが回転リール20a,20b,20cが回転しないことや、ベットスイッチ41の操作の後のレバー42の操作で回転リール20a,20b,20cが回転するものの、ストップスイッチ40a,40b,40cの操作で回転リール20a,20b,20cが停止しない等の処理が挙げられる。
【0137】
図10は、倍率決定処理の演出の流れを示す図である。第1回、第2回、第3回倍率決定処理はそれぞれ順番に実行されるが、各倍率決定処理の演出の基本的な流れは同じである。各々の倍率決定処理は、倍率の候補を複数有しており、複数の候補から選択された1つの倍率を付与するか否かを決定する処理である。演出制御部630は、倍率決定処理を対戦演出で報知する。倍率決定処理において、図10に示すように、まず、複数の倍率の候補を報知する処理がなされ、次に、複数の候補から選択された1つの倍率を報知する処理がなされ、選択された1つの倍率が付与されるか否かの決定の結果を報知する処理がなされる。図10の例では、複数の倍率の候補(敵キャラクタAの2倍、敵キャラクタBの3倍、敵キャラクタCの5倍、敵キャラクタDの3倍)が報知される。次に、複数の倍率の候補から1つの倍率が選択され、選択された倍率が報知される。図10の例では、敵キャラクタC(5倍)が選択されたことが報知される。次に、選択された倍率(5倍)を付与するか否かが決定され、倍率(5倍)を付与すると決定された場合には、勝利演出を行って、5倍が付与されたことを表す演出が実行される。一方、倍率(5倍)を付与しないと決定された場合には、敗北演出を行って、5倍が付与されなかったことを表す演出が実行される。
【0138】
上記倍率決定処理における演出を実現するためのメイン制御部61およびサブ制御部63の処理の一例を説明する。メイン制御部61は、複数の倍率の候補を決定して、その結果をサブ制御部63に送信する。メイン制御部61は、決定した複数の倍率の候補のうち1つの倍率を選択して、その結果をサブ制御部63に送信する。メイン制御部61は、選択した1つの倍率を付与するか否かを決定し、その結果をサブ制御部63に送信する。サブ制御部63は、メイン制御部61が決定しうる複数の倍率の候補それぞれの画像を記憶している。サブ制御部63は、メイン制御部61から複数の倍率の候補の情報を受信した際に、各々の倍率の候補に対応する画像を液晶画面3に表示する。サブ制御部63は、メイン制御部61から選択された1つの倍率の情報を受信した際に、当該倍率が選択されたことを表す画像を液晶画面3に表示する。サブ制御部63は、メイン制御部61から選択された倍率を付与するか否かの決定結果を受信した際に、決定結果に応じた画像を表示する(例えば、選択された倍率に紐づく敵キャラクタの勝利演出の画像や敗北演出の画像を表示する)。
【0139】
図11は、第1回、第2回、第3回倍率決定処理それぞれが有する複数の倍率の候補に関する説明図である。第1回、第2回、第3回倍率決定処理での対戦(試合)は、一体の味方キャラクタと一体の敵キャラクタとで行う一騎打ちであり、一体の味方キャラクタと1体の敵キャラクタとで構成される1つ(1組)の対戦組み合わせが1つの倍率の候補に紐づいている。
第1回倍率決定処理(一試合目)は、味方キャラクタAと、複数の敵キャラクタ(A~D)から選択される複数(4組)の対戦組み合わせを有する。複数(4組)の対戦組み合わせ(味方キャラクタAと敵キャラクタA、味方キャラクタAと敵キャラクタB、味方キャラクタAと敵キャラクタC、味方キャラクタAと敵キャラクタD)がそれぞれ複数(4つ)の倍率の候補となっている。
第2回倍率決定処理(二試合目)は、味方キャラクタBと、複数の敵キャラクタ(A~D)から選択される複数(4組)の対戦組み合わせを有する。複数(4組)の対戦組み合わせ(味方キャラクタBと敵キャラクタA、味方キャラクタBと敵キャラクタB、味方キャラクタBと敵キャラクタC、味方キャラクタBと敵キャラクタD)がそれぞれ複数(4つ)の倍率の候補となっている。
第3回倍率決定処理(三試合目)は、味方キャラクタCと、複数の敵キャラクタ(B~D)から選択される複数(3組)の対戦組み合わせを有する。複数(3組)の対戦組み合わせ(味方キャラクタCと敵キャラクタB、味方キャラクタCと敵キャラクタC、味方キャラクタCと敵キャラクタD)がそれぞれ複数(3つ)の倍率の候補となっている。
すなわち、複数回実行される決定処理(倍率決定処理)には、第1決定処理と、第1決定処理よりも後で実行される第2決定処理が含まれる。第1決定処理における倍率の候補の数と第2決定処理における倍率の候補の数が、一試合目と二試合目のように同一でもよいし、二試合目と三試合目のように異なっていてもよい。
第1回~第3回倍率決定処理において味方キャラクタの対戦順は、味方キャラクタA,B,Cの順に固定されている。本実施形態では、味方キャラクタは1対戦につき1人となっており、3回の倍率決定処理ごとに対戦する味方キャラクタが変化している。
敵キャラクタは、第1回~第3回倍率決定処理における少なくとも2つの倍率決定処理において共通している場合がある。例えば、敵キャラクタBは、第1回~第3回倍率決定処理において出現する。この場合、共通して出現する敵キャラクタとの対戦組み合わせに紐づく倍率は異なる場合がある。図11では、例えば敵キャラクタBは、全ての倍率決定処理にて候補として出現しているが、この敵キャラクタBの各倍率決定処理での倍率に注目すると、第1回倍率決定処理では“3倍”であるのに対し、第2回倍率決定処理および第3回倍率決定処理では“5倍”となっている。これは、共通して出現する敵キャラクタと対戦する味方キャラクタとの組み合わせが変わるため、共通の敵キャラクタに対する味方キャラクタの得意不得意を表現している。
【0140】
1つの倍率決定処理における複数の倍率の候補には、倍率が異なる少なくとも2つの候補を含んでもよい。図11に示す第1回倍率決定処理(一試合目)では、敵キャラクタAとの対戦に紐づく倍率(2倍)と、敵キャラクタBとの対戦に紐づく倍率(3倍)とが異なることが挙げられる。また、1つの倍率決定処理における複数の倍率の候補には、倍率が同一の少なくとも2つの候補を含んでもよい。図11に示す第1回倍率決定処理(一試合目)では、敵キャラクタBとの対戦に紐づく倍率(3倍)と、敵キャラクタDとの対戦に紐づく倍率(3倍)とが同一であることが挙げられる。
【0141】
図11に示すように、第1回倍率決定処理(一試合目)の複数の倍率の候補の組み合わせ(2倍、3倍、3倍、5倍)は、第2回倍率決定処理(二試合目)の複数の倍率の候補の組み合わせ(3倍、4倍、4倍、5倍)と異なっている。第3回倍率決定処理(三試合目)の複数の倍率の候補の組み合わせ(5倍、5倍、6倍)は、第1回および第2回倍率決定処理の複数の倍率の候補の組み合わせと異なっている。これにより、倍率決定処理ごとに複数の倍率の候補の組み合わせが異なるので、複数の倍率の候補の組み合わせが変わらない場合に比べて、倍率決定処理が連続して進むにつれてどの程度上乗せ可能かについての期待感が変更され、遊技をより面白くすることが可能となる。
図11に示すように、第1回倍率決定処理(一試合目)および第2回倍率決定処理(二試合目)の候補数は4つで同一であるのに対し、第3回倍率決定処理(三試合目)の候補数は3つで異なっている。すなわち、複数回の倍率決定処理は、候補数が同一の少なくとも2つの倍率決定処理が含まれていてもよいし、候補数が異なる少なくとも2つの倍率決定処理を含んでいてもよい。
図11に示す例のように、倍率決定処理の実行回数が進むにつれて候補数が減少し且つ平均倍率が高くなっているので、倍率決定処理(試合;対戦)が進むにつれて、試合に勝つこと(倍率が付与されること)への期待感を高めることが可能となる。
【0142】
図11に示すように、第1回倍率決定処理(一試合目)の複数の倍率の候補の平均倍率は、(2+3+3+5)/4=3.25倍である。第2回倍率決定処理(二試合目)の複数の倍率の候補の平均倍率は、(3+4+4+5)/4=4倍である。第3回倍率決定処理(三試合目)の複数の倍率の候補の平均倍率は、(5+5+6)/3=5.33倍である。すなわち、第1回倍率決定処理(一試合目)における複数の候補の平均倍率は、その後の第2回倍率決定処理(二試合目)および第3回倍率決定処理(三試合目)における複数の候補の平均倍率と異なっている。これにより、倍率決定処理を実行するタイミングによって複数の候補の平均倍率が異なるので、複数の候補の平均倍率が変わらない場合に比べて、試合に勝利して倍率が付与されることへの期待感が変更され、遊技をより面白くすることが可能となる。
図11の例では、第1時点で実行される第1決定処理と、第1時点よりも後で実行される第2決定処理とがあり、第2決定処理における複数の候補の平均倍率は、第1決定処理における複数の候補の平均倍率よりも高い。これにより、決定処理を実行するにつれて、平均倍率が高くなるようにでき、遊技を進める期待度(具体的には、試合に勝てばより多い上乗せ差枚数を得られることへの期待感ならびにAT状態でより多い遊技価値を得られることへの期待感)を向上させることが可能となる。
【0143】
図12は、第1回、第2回、第3回倍率決定処理それぞれについて、複数の倍率の候補とその倍率が付与される付与確率に関する疑似的なテーブルを示す図である。この疑似的なテーブルは、倍率決定処理においてメイン制御部61が用いるテーブルと、サブ制御部63が用いるテーブルとを、発明の理解を容易にするために統合した疑似的なテーブルである。よって、メイン制御部61が倍率付与の可否を決定するため、メイン制御部61が用いるテーブルは、図12に示す「倍率決定処理」の欄、「倍率」の欄、および「付与確率」の欄を有する。サブ制御部63が用いるテーブルは、図12に示す「倍率決定処理」の欄、「味方キャラクタ」の欄、および「敵キャラクタ」の欄を有する。
第1回倍率決定処理には、倍率の候補として、2倍、3倍、5倍、3倍を有している。これらの複数の倍率の選択候補のうち、いずれかの倍率が選択されると、その選択された倍率に紐づく敵キャラクタが対戦相手となる。各々の候補には、その倍率が選択された際に倍率が付与される付与確率が設定されている。倍率決定処理において選択された倍率が付与されるか否かを対戦演出で報知するため、付与確率は対戦の勝率ともいえる。具体的な一例として、味方キャラクタAと敵キャラクタAとの対戦組み合わせに倍率(2倍)が紐づいており、その倍率(2倍)が選択された際に倍率(2倍)が付与される付与確率が80%となっている。味方キャラクタAと敵キャラクタBとの対戦組み合わせに倍率(3倍)が紐づいており、その倍率(3倍)が選択された際に倍率(3倍)が付与される付与確率が70%となっている。味方キャラクタAと敵キャラクタCとの対戦組み合わせに倍率(5倍)が紐づいており、その倍率(5倍)が選択された際に倍率(5倍)が付与される付与確率が60%となっている。第2回倍率決定処理および第3回倍率決定処理にも同様に複数の倍率の候補が各々の付与確率と共に紐づけてある。
原則として、付与される倍率が高ければ、その倍率が付与される付与確率が低くなり、逆に付与される倍率が低ければ、その倍率が付与される付与確率が高くなるように設定されており、ゲームバランスが保たれている。
【0144】
また、1つの倍率決定処理における複数の倍率の候補には、選択されることで倍率が100%付与される確定候補を含んでもよい。図11及び図12に示す第1回(一試合目)の倍率決定処理には、味方キャラクタAと敵キャラクタDとの対戦組み合わせに倍率(3倍)の確定候補があり、この確定候補の付与確率(勝率)が100%である。換言すれば、確定候補は、選択された時点で、当該候補と味方キャラクタとの組み合わせに紐づけられている倍率の付与がメイン制御部61における内部処理で確定し、サブ制御部63において味方キャラクタが確実に勝利する試合の演出の報知制御が行われるキャラクタである。確定候補は、図10及び図11に示すように、確定候補であることを示す情報が報知される(図中では「確定」という文字を表示している)。図11及び図12に示すように、第2回倍率決定処理には、味方キャラクタBと敵キャラクタAとの対戦組み合わせに倍率(3倍)の確定候補があり、この確定候補における倍率の付与確率は100%である。第3回倍率決定処理には、味方キャラクタCと敵キャラクタCとの対戦組み合わせに倍率(5倍)の確定候補があり、この確定候補における倍率の付与確率は100%である。第2決定処理(第3回倍率決定処理)の確定候補(敵キャラクタC)の倍率(5倍)は、第1決定処理(第1回倍率処理または第2決定処理)の確定候補(敵キャラクタD、敵キャラクタA)の倍率(3倍)よりも高い。これにより、遊技が進行するに伴って確定候補の倍率が高くなるので、遊技を進める期待度(具体的には、試合に勝てばより多い上乗せ差枚数を得られることへの期待感ならびにATでより多い遊技価値を得られることへの期待感)を向上させることが可能となる。
1つの倍率決定処理における倍率候補には、確定候補の倍率と同一の倍率の他の候補が含まれてもよい。例えば、第1回倍率決定処理(一試合目)において、敵キャラクタBの倍率(3倍)と、敵キャラクタDの確定候補の倍率(3倍)とが同一である。もちろん、確定候補の倍率と同一の他の候補がない、すなわち確定候補の倍率と他の候補の倍率とが異なっていてもよい。
【0145】
図12に示すように、第1回倍率決定処理における複数の候補に紐づく付与確率の平均値は、(80+70+60+100)/4=77.5%である。第2回倍率決定処理における複数の候補に紐づく付与確率の平均値は、(100+50+70+60)/4=70%である。第3回倍率決定処理における複数の候補に紐づく付与確率の平均値は、(20+100+30)/3=50%である。第2決定処理における複数の候補に紐づく付与確率の平均値は、第1決定処理における複数の候補に紐づく付与確率の平均値よりも低い。つまり、対戦が進むほど、複数候補の平均倍率が高くなって上乗せ差枚数の大量獲得への期待値が高まっていくが、逆に付与確率の平均値が低くなっており、勝利しにくくなる。これにより、ゲームバランスを保つことが可能になっている。
【0146】
図13は、上乗せ差枚数に上限値が存在する場合の課題の一例を示す図である。図14は、上乗せ決定処理における演出の一例を示す図である。本実施形態では、1回のATにおける上乗せ差枚数の上限値が予め設定されており、上限値を超える上乗せ差枚数を付与することができない。例えば、上限値が2000枚であり、図13に示すように、基準枚数が100枚で、第1回倍率決定処理(一試合目)で3倍が付与され、第2回倍率決定処理(二試合目)で5倍が付与された場合、第2回倍率決定処理の実行が完了した時点で、100枚×3×5=1500枚の付与が確定している。この状態で、第3回倍率決定処理で5倍か6倍が付与されると、上限値の2000枚を超えることになり、実際に付与される枚数が上限値の2000枚となる。そうすると、演出で付与が期待される枚数(7500枚、9000枚)と実際に付与される枚数とに相違が生じることになり、遊技者に不信感を招来してしまうおそれがある。
【0147】
そこで、図14に示すように、倍率決定処理の実行により付与された倍率によって得らえる上乗せ差枚数が上限値の2000枚を超える場合(7500枚、9000枚)には、第3回倍率決定処理(三試合目)の倍率を、数値が認識できない第2態様で報知している。図14の例では、「5倍」や「6倍」の数値が認識可能な第1態様ではなく、「Max倍」という数値が認識できない第2態様で報知している。そして、第3回倍率決定処理(三試合目)でいずれかの倍率が付与された場合には、「100枚×3倍×5倍×Max倍=2000枚」と上乗せ差枚数を報知する。一方、図9に示すように、倍率決定処理の実行により付与された倍率によって得られる上乗せ差枚数が上限値の2000枚を超えない場合には、各々の倍率決定処理の倍率を、数値が認識可能な第1態様で報知している。
【0148】
<スロットマシン1の動作処理の流れ>
図15及び図16を用いて、本実施形態にかかるスロットマシン1の上乗せ決定処理の流れを説明する。図15及び図16は、スロットマシン1の上乗せ決定処理を示すフローチャートである。
【0149】
上乗せ決定処理は主に3ゲームで構成される。上乗せ決定処理に移行すると、ステップST1において、遊技制御部(メイン制御部61の総称)は、基準枚数を決定する。ベットスイッチ41が操作されてベットされて1ゲーム目がスタートすると、次のステップST2において、演出制御部630は、第1回倍率決定処理の複数の候補を報知する。レバー42が操作されると、次のステップST3において、遊技制御部は、第1回倍率決定処理の複数の候補から1つの倍率を選択し、演出制御部630が、選択された倍率を報知する。候補の選択はランダムで決定される。次のステップST4において、遊技制御部は、選択された倍率を付与するかの決定処理を実行する。決定処理において、図12に示すテーブルを用いて抽せん処理で倍率を付与するか否かを決定する。次のステップST5において、演出制御部630は、3つのストップスイッチ40a,40b,40cが押下されるたびに対戦の演出を報知し、3つ目のストップスイッチが押下されることで、選択された倍率が付与されるか否かの決定結果を報知する。ここで、倍率を付与すると決定された場合には、勝利演出が報知され、選択された倍率が付与される。一方、倍率を付与しないと決定された場合には、敗北演出が報知される。
【0150】
次のステップST6において、遊技制御部(メイン制御部61)は、基準枚数と第1回倍率決定処理で得られた倍率と、第2回倍率決定処理及び第3倍率決定処理によって得られる可能性の枚数を全パターン算出する。遊技制御部(メイン制御部61)は、算出した枚数が上乗せ決定処理の上限値を超える場合には、当該パターンにかかる倍率は以後、数値が認識できない第2態様で報知すると決定し、その決定結果をサブ制御部63に送信する。遊技制御部は、算出した枚数が上乗せ決定処理の上限値を超えない場合には、数値が認識可能な第1態様での報知を続行すると決定し、その決定結果をサブ制御部63に送信する。
【0151】
ベットスイッチ41が操作されてベットされて2ゲーム目がスタートすると、次のステップST7において、演出制御部630は、第2回倍率決定処理の複数の候補を報知する。倍率の報知は、ステップST6で決定した態様で報知される。レバー42が操作されると、次のステップST8において、遊技制御部は、第2回倍率決定処理の複数の候補から1つの倍率を選択し、演出制御部630が、選択された倍率を報知する。候補の選択はランダムで決定される。次のステップST9において、遊技制御部は、選択された倍率を付与するかの決定処理を実行する。次のステップST10において、演出制御部630は、3つのストップスイッチ40a,40b,40cが押下されるたびに対戦の演出を報知し、3つ目のストップスイッチが押下されることで、選択された倍率が付与されるか否かの決定結果を報知する。ここで、倍率を付与すると決定された場合には、勝利演出が報知され、選択された倍率が付与される。一方、倍率を付与しないと決定された場合には、敗北演出が報知される。
【0152】
次のステップST11において、遊技制御部(メイン制御部61)は、基準枚数と第1回倍率決定処理および第2倍率決定処理で得られた倍率と、第3倍率決定処理によって得られる可能性の枚数を全パターン算出する。遊技制御部(メイン制御部61)は、算出した枚数が上乗せ決定処理の上限値を超える場合には、当該パターンにかかる倍率は以後、数値が認識できない第2態様で報知すると決定し、その決定結果をサブ制御部63に送信する。遊技制御部は、算出した枚数が上乗せ決定処理の上限値を超えない場合には、数値が認識可能な第1態様での報知を続行すると決定し、その決定結果をサブ制御部63に送信する。
【0153】
ベットスイッチ41が操作されてベットされて3ゲーム目がスタートすると、次のステップST12において、演出制御部630は、第3回倍率決定処理の複数の候補を報知する。倍率の報知は、ステップST11で決定した態様で報知される。レバー42が操作されると、次のステップST13において、遊技制御部は、第3回倍率決定処理の複数の候補から1つの倍率を選択し、演出制御部630が、選択された倍率を報知する。候補の選択はランダムで決定される。次のステップST14において、遊技制御部は、選択された倍率を付与するかの決定処理を実行する。次のステップST15において、演出制御部630は、3つのストップスイッチ40a,40b,40cが押下されるたびに対戦の演出を報知し、3つ目のストップスイッチが押下されることで、選択された倍率が付与されるか否かの決定結果を報知する。ここで、倍率を付与すると決定された場合には、勝利演出が報知され、選択された倍率が付与される。一方、倍率を付与しないと決定された場合には、敗北演出が報知される。
【0154】
ステップST16において、遊技制御部は、基準枚数と、第1回~第3回倍率決定処理で得られた倍率に基づいて上乗せ差枚数を算出し、上乗せ差枚数を付与する。演出制御部630は、算出された上乗せ差枚数が付与される旨を演出する。ただし、上乗せ差枚数は上記の通り、上限値は超えないように算出される。
【0155】
[1]
以上をまとめると、本実施形態のように、スロットマシン1(遊技機)は、恩恵(上乗せ差枚数)の付与に利用可能な倍率を付与するか否かを決定する決定処理(倍率決定処理)を複数回実行する処理(第1回~第3回倍率決定処理)と、複数回の決定処理の実行によって付与が決定された倍率を用いて、付与する恩恵の量を決定する処理(上乗せ決定処理)と、を実行可能な遊技制御部(メイン制御部61)を備え、複数回実行される決定処理(倍率決定処理)は、第1決定処理(第2回倍率決定処理)と、第1決定処理よりも後で実行される第2決定処理(第3回倍率決定処理)と、を含み、各々の決定処理それぞれは、倍率の候補が複数あり、複数の候補から選択された1つの倍率を付与するか否かを決定する処理であり、第1決定処理(第2倍率決定処理)における複数の候補の組み合わせ(3倍、4倍、4倍、5倍)または複数の候補の平均倍率(4.00倍)と、第2決定処理(第3回倍率決定処理)における複数の候補の組み合わせ(5倍、5倍、6倍)または複数の候補の平均倍率(5.33倍)とが異なる、としてもよい。
【0156】
<発明の効果>
本実施形態によれば、複数の倍率の候補の組み合わせまたは複数の倍率の候補の平均倍率が変わらない場合に比べて、試合に勝利して倍率が付与されることへの期待感が変更され、遊技をより面白くすることが可能となる。
【0157】
[2]
上記[1]に記載の遊技機において、各々の決定処理(倍率決定処理)それぞれにおいて、複数の候補を報知する処理と、複数の候補から選択された1つの倍率を報知する処理と、選択された1つの倍率が付与されるか否かの決定の結果を報知する処理とが実行可能である、としてもよい。
この構成にすれば、複数の倍率の候補からいきなり1つの倍率の付与が決定されるのではなく、複数の倍率の候補からどの倍率が選択されるかという第1の期待を伴うゲーム性と、更に、選択された1つの倍率が付与されるかという第2の期待を伴うゲーム性とを提供でき、遊技をより面白くすることが可能となる。
【0158】
[3]
上記[1]または[2]に記載の遊技機において、複数の候補には、選択されることで倍率が100%付与される確定候補を含む、としてもよい。
この構成によれば、確定候補が選択されることを期待するゲーム性を提供でき、遊技をより面白くすることが可能となる。
【0159】
[4]
上記[3]に記載の遊技機において、第2決定処理(第3回倍率決定処理)の確定候補の倍率(5倍)は、第1決定処理(第2回倍率決定処理)の確定候補の倍率(4倍)よりも高い、としてもよい。
この構成によれば、遊技が進行するに伴って確定候補の倍率が高くなるので、遊技を進める期待度(具体的には、試合に勝てばより多い上乗せ差枚数を得られることへの期待感ならびにATでより多い遊技価値を得られることへの期待感)を向上させることが可能となる。
【0160】
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載の遊技機において、複数の候補にはそれぞれ倍率が付与される付与確率が紐づいており、第2決定処理(第3回倍率決定処理)における複数の候補の平均倍率(5.33倍)は、第1決定処理(第2回倍率決定処理)における複数の候補の平均倍率(4.00倍)よりも高く、第2決定処理(第3回倍率決定処理)における複数の候補に紐づく付与確率の平均値(50%)は、第1決定処理(第2回倍率決定処理)における複数の候補に紐づく前記付与確率の平均値(70%)よりも低い、としてもよい。
この構成によれば、遊技が進むほど、複数候補の平均倍率が高くなって上乗せ差枚数の大量獲得への期待値が高まっていくが、付与確率の平均値が低くなっており、勝利しにくくなる。これにより、ゲームバランスを保つことが可能になっている。
【0161】
[6]
上記[1]~[5]のいずれかに記載の遊技機において、倍率を、数値が認識可能な第1態様と、数値が認識できない第2態様のいずれかの態様で報知可能な報知部(液晶画面3等)を備え、付与する恩恵の量に上限値があり、報知部は、決定処理(倍率決定処理)の実行により付与された倍率によって得られる恩恵の値が上限値を超える場合に倍率を第2態様で報知し、決定処理(倍率決定処理)の実行により付与された倍率によって得られる恩恵の値が上限値を超えない場合に倍率を第1態様で報知することが可能に構成されている、としてもよい。
この構成によれば、演出で付与が期待される枚数(7500枚、9000枚)と実際に付与される枚数とに相違が生じることを避け、遊技者に不信感を招来することを回避しつつ、遊技者に適切な期待感を付与可能となる。
【0162】
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載の遊技機において、決定処理(倍率決定処理)は、第1種キャラクタ(味方キャラクタ)と、第1種キャラクタ(味方キャラクタ)と対戦する第2種キャラクタ(敵キャラクタ)との対戦に関する処理である、としてもよい。
この構成によれば、決定処理を対戦演出で報知可能となり、遊技をより面白くすることが可能となる。
【0163】
[8]
上記[7]に記載の遊技機において、複数の候補はそれぞれ、複数の第1種キャラクタ(味方キャラクタ)及び複数の第2種キャラクタ(敵キャラクタ)から選択される1組の対戦組み合わせに紐づいている、としてもよい。
この構成によれば、多種の対戦組み合わせを生成でき、味方キャラクタの対戦組み合わせによって得意不得意があることを、対戦組み合わせに応じて倍率を異ならせることで表現可能となる。
【0164】
[他の実施形態]
前記実施形態において説明した各種制御手段および処理手順は一例であって、本発明、その適用物、またはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。各種制御手段および処理手順は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0165】
(A)前記実施形態において、AT実行処理は、差枚数管理型であるが、これに限定されない。例えば、ゲーム数管理型であってもよく、その場合には、上乗せ決定処理は、上乗せゲーム数を決定する。また、指示機能を実行できる回数を管理する指示機能管理型であってもよく、その場合には、上乗せ決定処理は、指示機能を実行できる回数の上乗せ量を決定する。もちろん、AT実行処理におけるATの状態(場面)に応じて、ゲーム数管理型、差枚数管理型、指示機能管理型のうちの少なくとも2つが組み合わさったAT実行処理(特別遊技状態)にも適用可能である。
【0166】
(B)前記実施形態において、倍率は、特別遊技状態の遊技の長さに関するパラメータの一つである上乗せ差枚数という恩恵の付与に利用可能であるが、恩恵は、特別遊技状態の遊技の長さに関するパラメータに限定されない。例えば、特別遊技状態への移行期待度を増加させる量(特別遊技状態への移行期待度に関するパラメータ)を決定するために倍率を利用してもよい。また、一般遊技状態からCZへの移行期待度に関するパラメータの量という恩恵の付与に倍率が利用されてもよいし、遊技に関するポイント等の遊技パラメータの量を決定する際に倍率を利用してもよい。遊技に関するポイント(遊技パラメータ)の利用の例としては、ポイント(遊技パラメータ)の量がある量まで溜まると、CZに移行する処理をメイン制御部61が実行することが挙げられる。また、ポイント(遊技パラメータ)の量がある量まで溜まると、AT当せんへの期待度が向上するアイコンやアイテム(ゲーム媒体)を付与する処理をメイン制御部61で実行することが挙げられる。すなわち、前記実施形態では、遊技の期間に関するパラメータ(差枚数)を上乗せする処理に本発明を適用する例で説明しているが、これに限定されず、遊技に関する恩恵の量を決定する処理であれば、種々の処理に提供可能である。例えば、AT状態の初期遊技期間(初期のゲーム数、初期差枚数など)を決定する処理に適用してもよいし、一般遊技状態、CZ、AT状態においてポイントを蓄積するゲームにおいてよりポイントを多く獲得するためのポイント付与処理に対して適用することも可能である。
【0167】
(C)前記実施形態において、倍率決定処理は3回実行されるが、倍率決定処理の実行回数は、1回又は複数回であれば、適宜変更可能である。
【0168】
(D)前記実施形態において、第1回~第3回倍率決定処理において味方キャラクタの対戦順は、味方キャラクタA,B,Cに順に固定されているが、これに限定されない。例えば、味方キャラクタの対戦順を抽せんで決定してもよい。
また、味方キャラクタの対戦順が設定値を示唆する演出を兼ねていてもよい。例えば、通常は、味方キャラクタA→味方キャラクタB→味方キャラクタCの順で対戦が行われるものの、味方キャラクタC→味方キャラクタB→味方キャラクタAの順で対戦が行われれば、設定値が出玉期待度の比較的高い値(高設定)であることを示唆することが可能となる。
また、同一の味方キャラクタが一連(3回)の倍率決定処理において2回以上出現してもよい。この場合、同一の味方キャラクタが2回以上出現する際には、同一の味方キャラクタが2回以上出現した際の倍率決定処理において倍率が付与されることが確定してもよい。そうすると、通常であれば、異なる味方キャラクタが出現するものの、同一の味方キャラクタが2回以上出現するという違和感によって、試合に勝利すること(倍率が付与されること)に期待を持たせることができるゲーム性を提供可能となる。また、同一の味方キャラクタが複数回出現する確率は、設定値によって差があってもよい。設定値が出玉期待度の比較的高い値(高設定)の場合には、同一の味方キャラクタが複数回出現しやすい。これにより、設定値が出玉期待度の比較的高い値(高設定)であることを示唆することが可能となる。
また、味方キャラクタに、通常出現する味方キャラクタよりも出現率の低いレア味方キャラクタが含まれていてもよい。レア味方キャラクタが出現すると、その倍率決定処理においてはどの敵キャラクタとの対戦でも勝利が確定(倍率付与が確定)するか、対戦に勝利できれば、複数の候補の中で最も高い倍率が付与されるとしてもよい。
【0169】
(E)前記実施形態において、上乗せ決定処理において各々の倍率決定処理の倍率の付与の決定は、各ゲームの開始を契機として実行されるが、これに限定されない。例えば、上乗せ決定処理に移行したことを契機として、全ての倍率決定処理における倍率の選択および倍率の付与の決定を一括で実行してもよい。
サブ制御部63が複数の倍率の候補を報知する前に、メイン制御部61が、複数の倍率の候補から1つの倍率を選択する処理と、選択した1つの倍率を付与するかを決定する処理を実行してもよい。このようにすれば、各々の複数の倍率の候補の報知態様を第1態様にするか第2態様にするかについて、全ての候補を含む全てのパターンを算出する必要を無くすことが可能となる。すなわち、倍率の候補数が4つの場合には、4パターンの計算が必要であったところ、1つのパターンの計算で済むことになり、計算コストを低減可能となる。
【0170】
(F)前記実施形態において、各々の倍率決定処理で倍率の付与を決定し、基準枚数と付与された倍率に基づいて上乗せ差枚数が決定されるが、これに限定されない。例えば、上乗せ決定処理に移行することを契機として、まず、上乗せ差枚数を先に決定し、決定した上乗せ差枚数に辻褄があるように、基準枚数と付与される倍率とを決定してもよい。
【0171】
(G)前記実施形態において、確定候補となる対戦組み合わせに関する敵キャラクタは、第1回、第2回、第3回倍率決定処理において全て異なっている(順に、敵キャラクタD、A、C)であるが、これに限定されない。例えば、確定候補となる対戦組み合わせに関する敵キャラクタが、全ての倍率決定処理で同一であってもよし、少なくとも2つの倍率決定処理で同一であってもよい。
複数の倍率決定処理のうち少なくとも2つの倍率決定処理で同一の敵キャラクタに係る対戦組み合わせが確定候補である場合には、各々の倍率決定処理において確定候補の倍率がその都度設定されてもよいし、各々の倍率決定処理において確定候補の倍率が同一であってもよい。
【0172】
(H)前記実施形態において、各々の倍率決定処理が有する倍率の候補には、確定候補と、付与確率が100%ではない通常候補があるが、これに限定されない。例えば、強敵キャラクタ、リベンジキャラクタ、倍キャラクタなどの確定候補以外の意味を有する候補が含まれていてもよい。
強敵キャラクタに係る候補は、その倍率の付与と共に倍率以外の恩恵が付与される候補である。倍率以外の恩恵とは、例えば、上乗せ決定処理が終了した後で再度上乗せ決定処理に移行することが確定する恩恵、上乗せ決定処理に移行する際に基準枚数を決定する際に用いられるAT実行処理における内部モードをより有利な内部モードに変更する恩恵、本件で説明した倍率を用いた上乗せ決定処理以外の別の上乗せ決定処理に移行する恩恵、本件で説明した上乗せ決定処理に複数種類の有利度を設け、より有利な有利度の上乗せ決定処理に移行または変更する恩恵、などが挙げられる。
リベンジキャラクタに係る候補は、前回の倍率決定処理において敗北した敵キャラクタであり、前回の倍率決定処理における倍率をそのまま引き継いだ候補である。例えば、第1回倍率決定処理において敵キャラクタA(2倍)に敗北した場合、第2回倍率決定処理において敵キャラクタAが出現し、その倍率が同一の倍率(2倍)となる。
倍キャラクタに係る候補は、当該候補の倍率と同じ倍率の他の敵キャラクタ(候補)よりも付与確率が低い候補であるが、倍キャラクタに係る候補の倍率が付与され場合には、更にその倍率を倍にするかの抽せん処理があり、その抽せん処理に当せんすれば、倍率が更に増加し、抽せん処理で当せんしなければ、倍率がそのまま付与される。例えば、倍キャラクタの倍率が3倍であり、倍キャラクタ以外に3倍の通常キャラクタがおり、倍キャラクタの付与確率は、通常キャラクタの付与確率よりも低い。倍キャラクタに勝利して、3倍が付与された場合、抽せん処理に当せんすれば6倍が付与される、一方で抽せん処理に当せんしなければ3倍が付与される。
【0173】
(I)前記実施形態において、基準枚数が複数の所定値から選択されるが、これに限定されず、固定値であってもよい。また、基準枚数の決定及び報知は、倍率決定処理の前にしてもよいし、全ての倍率決定処理が終了した後にしてもよい。
また、設定値によって基準枚数の選択傾向が異なっていてもよい。例えば、1~6のいずれかの数値が設定される設定値が偶数であれば、基準枚数に20枚が選択されやすく、設定値が奇数であれば、基準枚数に30枚が選択されやすいとすることが挙げられる。
基準枚数として決定された数値自体が、設定値を示唆していてもよい。例えば、基準枚数が33枚であれば、設定値が「3」等の特定の設定値でないことを示唆し、基準枚数が66枚であれば、設定値が「6」等の特定の設定値であることを示唆することが挙げられる。
【0174】
(J)前記実施形態において、平均倍率について、第1回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率 < 第2回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率 < 第3回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率であるが、これに限定されない。例えば、第1回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率 > 第2回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率 > 第3回倍率決定処理における複数の倍率の候補の平均倍率としてもよい。
前記実施形態において、付与確率の平均値について、第1回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値 > 第2回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値 > 第3回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値であるが、これに限定されない。例えば、第1回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値 < 第2回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値 < 第3回倍率決定処理における複数の倍率の候補の付与確率の平均値としてもよい。
【0175】
(K)前記実施形態において、複数のゲームにわたって複数の対戦がなされ、1ゲームで1対戦であるが、これに限定されない。1対戦(1つの倍率決定処理)が複数ゲームにわたってもよい。
また、1対戦(1つの倍率決定処理)が原則として1ゲームであるが、所定条件成立時に複数ゲームにわたって1対戦(1つの倍率決定処理)が実行されてもよい。例えば、或る対戦(或る倍率決定処理)において或るゲームで敗北演出を実行し、その次のゲームを開始するベットスイッチ41の操作を契機として敗北した味方キャラクタが立ち上がって復活して勝利する演出にしてもよい。この場合、付与される倍率が元の倍率よりも増加するようにしてもよい。具体的には、3倍の対戦組み合わせの場合に、通常勝利であれば3倍が付与されるが、復活勝利の場合には3倍+1倍=4倍が付与されるとしてもよい。
【0176】
(L)前記実施形態において、各々の倍率決定処理における複数の候補の倍率および付与確率は図12に示すように固定されているが、これに限定されず、可変としてもよい。例えば、ベットスイッチ41等の操作部4の操作を契機として、レア役に内部当せんすることや内部モードによって変更してもよい。倍率や付与期待度が変更された場合には、変更された旨を報知してもよいし、報知しなくてもよい。
【0177】
(M)前記実施形態において、基準枚数決定処理は、AT実行処理における内部モードに応じて決定しているが、これに限定されない。例えば、基準枚数決定処理は、AT実行処理における内部モードと、基準枚数決定処理を実行するゲームにおいて内部当せんした役または入賞役に応じて、基準枚数を決定してもよい。例えば、基準枚数決定処理を実行する処理において、押し順ベル等の第1役に当せんした場合に、60%の確率で20枚に当せんし、40%の確率で30枚に当せんするとし、スイカ等の第1役とは異なる第2役に当せんした場合に、30%の確率で20枚に当せんし、40%の確率で30枚に当せんし、30%の確率で50枚に当せんすることが挙げられる。基準枚数決定処理を実行するゲームにおいて内部当せんした役または入賞役に応じて、基準枚数の複数の候補組み合わせまたは各候補の当せん確率を異ならせてもよい。
【0178】
(N)前記実施形態において、メイン制御部61は、サブ制御部63に対して、決定した複数の倍率候補、選択した1つの倍率、選択した1つの倍率を付与するか否かに関する情報を送信しているが、これに限定されない。例えば、メイン制御部61は、倍率を付与するか否か、付与するのであればどの倍率を付与するかを、抽せんで決定し、その決定結果をサブ制御部63に送信するようにしてもよい。
この場合、第1例として、サブ制御部63は、メイン制御部61から受信した結果に基づいて、複数の倍率の候補の組み合わせを演出として報知するかを決定してもよい。例えば、サブ制御部63は、倍率(5倍)が付与されると決定された情報を受信した場合には、倍率(5倍)を含む複数の倍率の候補の組み合わせを決定して液晶画面3に表示するとしてもよい。
その他の第2例として、サブ制御部63は、複数の倍率の候補で構成される組み合わせパターンを種々(複数)、テーブルなどのデータに記憶しており、そのデータの中から、メイン制御部61から受信した決定の結果(例えば倍率(3倍)を付与する決定)に応じた組み合わせを選択して、複数の倍率の候補を表示してもよい。メイン制御部61から倍率(3倍)の付与が確定した結果を受信した際に、倍率(3倍)に紐づく敵キャラクタが選出される演出を報知してもよい。
その他の第3例として、サブ制御部63は、複数の倍率の候補で構成される組み合わせパターンに係るデータを有しておらず、複数の倍率の候補それぞれ単体の画像データを記憶しており、そのデータの中から、メイン制御部61から受信した付与される倍率(3倍)に係る画像と、付与される倍率以外の倍率(3倍以外の倍率)に係る画像とを選択して、液晶画面3に表示されるとしてもよい。
【0179】
ベットスイッチ41には、上記所定枚数(例えば3枚)の遊技価値を自動でベットするためのMAXベットスイッチと、上記所定枚数未満の遊技価値(例えば1枚または2枚)をベットするためのベットスイッチとが、別々に設けられていてもよい。
【0180】
前記実施形態では、ベットスイッチ41とレバー42が別々に設けられている場合を例示したが、レバー42がベットスイッチ41の機能を兼ねていてもよい。
【0181】
前記実施形態では、有利遊技状態として、ATやボーナスを例示したが、有利遊技状態には、ARTが含まれてもよい。CZとは、ATへの突入確率やリプレイ確率がCZでない場合よりも高い遊技状態である。ARTは、リプレイ確率が一般遊技状態時よりも高く、かつ、操作態様役の正解操作態様を報知する遊技状態である。そして、設定値に応じて、AT、CZおよびARTの少なくとも1つへの突入確率が変化してもよい。設定値に応じて、AT、CZおよびARTの性能が変化してもよい。
【0182】
設定値を示唆する演出には、画像によるものの他、回転リール20a,20b,20cの回転を停止した際に、リール窓200を介して視認できる図柄が特殊な図柄となることなどが、更に含まれてもよい。
【0183】
前記実施形態では、遊技機がATタイプのスロットマシンである場合を例示した。しかし、遊技機は、ARTタイプのスロットマシンなど、AT機以外であっても実現できる。また、遊技機は、スロットマシンに限定されることはなく、パチンコであっても実現可能である。
例えば、演出上のポイントの量をためて、ためたポイントを用いて新たな演出を解放するようなゲーム性の場合に、ポイントをためる場面として、通常場面と、通常場面よりも多く獲得可能な特別場面があり、この特別場面において、本発明を適用可能である。この場合には、ポイントは演出にしか用いられないので、本願に関する全ての処理(例えば、基準枚数決定処理、第1回~第3回倍率決定処理、付与枚数表示処理)を演出制御部630で実行可能となる。
【0184】
前記実施形態では、遊技機がメダルレス機である場合を例示した。しかし、遊技機は、メダルレス機に限定されることなく、実在のメダルを用いて遊技される従来のスロットマシンであっても実現可能である。
【0185】
前記実施形態では、カードユニット9とスロットマシン1が別々である場合を例示した。しかし、カードユニット9の機能の少なくとも一部がスロットマシン1に搭載されてもよい。
【0186】
これらの他の実施形態を採用した場合においても、本実施形態の作用効果は発揮される。また、本実施形態と他の実施形態、および他の実施形態同士を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0187】
1 スロットマシン(遊技機)
612 遊技結果判定部(遊技制御部)
614 遊技進行制御部(遊技制御部)
630 演出制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図16