(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127629
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】積層シート、延伸フィルム、溶断シール袋及び多層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240912BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036924
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓明
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓治
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
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3E086DA08
4F100AJ04A
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(57)【要約】
【課題】低温での延伸性に優れ、しかも、層間強度に優れる延伸フィルムを製造するのに好適である積層シート及び該積層シートの延伸フィルム、溶断シール袋及び多層体を提供する。
【解決手段】本発明の積層シートは、第1層の片面又は両面に第2層が配置されてなる積層体を備えた積層シートであって、前記第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む層であり、前記第2層は、熱可塑性樹脂Dを含む層であり、前記第1層中の前記バイオマスプラスチックBの融点は、130℃以上、170℃以下であり、前記第1層は前記バイオマスプラスチックBを1質量%以上、25質量%以下含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層の片面又は両面に第2層が配置されてなる積層体を備えた積層シートであって、前記第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む層であり、
前記第2層は、熱可塑性樹脂Dを含む層であり、
前記第1層中の前記バイオマスプラスチックBの融点は130℃以上、170℃以下であり、
前記第1層は前記バイオマスプラスチックBを1質量%以上、25質量%以下含有する、積層シート。
【請求項2】
前記第1層は、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cをさらに含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記バイオマスプラスチックBは脂肪族系ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記第2層中の前記熱可塑性樹脂Dは、結晶性ポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項5】
前記第2層はヒートシール機能を有する、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の積層シートの延伸体である、延伸フィルム。
【請求項7】
溶断シールに用いられる、請求項6に記載の延伸フィルム。
【請求項8】
請求項6に記載の延伸フィルムを備える、溶断シール袋。
【請求項9】
請求項6に記載の延伸フィルムと、基材とを有する、多層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、延伸フィルム、溶断シール袋及び多層体に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸フィルムに代表される各種樹脂フィルムは、耐湿性、耐水性及び耐油性等の諸性能に優れると共に、良好な機械強度を有することから、食品や薬品等の包装材料、ディスプレイ等の保護フィルムなど、種々の用途に広く適用されており、利用価値の高い機能性材料である。
【0003】
一方で、近年では、プラスチック材料の廃棄量が増大していること、また、プラスチック材料の焼却処理で発生する二酸化炭素による地球温暖化をもたらす懸念がある等の様々な問題が提起されている。このため、地球環境や人体への配慮等の観点から生分解性を有するバイオマスプラスチックが大きく注目されており、従来のプラスチック材料と、バイオマスプラスチックとを組み合わせた様々な材料開発が盛んに進められている(例えば、特許文献1,2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/23758号
【特許文献2】特表2017-519863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂、特に結晶性の熱可塑性樹脂と、バイオマスプラスチックとは互いに混ざりにくい材料であるため、両者を組み合わせたフィルムを形成するにしても、互いに均一に混ざり合わない(相溶しない)ことが多い。これが原因で、低温領域において十分に延伸されたフィルムを得ることが難しい、すなわち、低温延伸性が悪化するという問題があった。加えて、結晶性熱可塑性樹脂及びバイオマスプラスチックを含むフィルム(層)と、他のフィルム(層)とを積層させた積層シートを用いて延伸フィルムを製造したとしても、層間強度が十分ではなかったため、延伸フィルムの用途が著しく制限されていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、低温での延伸性に優れ、しかも、層間強度に優れる延伸フィルムを製造するのに好適である積層シート及び該積層シートの延伸フィルム、溶断シール袋及び多層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリオレフィン系樹脂と特定のバイオプラスチックとを組み合わせることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
第1層の片面又は両面に第2層が配置されてなる積層体を備えた積層シートであって、前記第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む層であり、
前記第2層は、熱可塑性樹脂Dを含む層であり、
前記第1層中の前記バイオマスプラスチックBの融点は130℃以上、170℃以下であり、
前記第1層は前記バイオマスプラスチックBを1質量%以上、25質量%以下含有する、積層シート。
項2
前記第1層は、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cをさらに含む、項1に記載の積層シート。
項3
前記バイオマスプラスチックBは脂肪族系ポリエステル樹脂である、項1に記載の積層シート。
項4
前記第2層中の前記熱可塑性樹脂Dは、結晶性ポリオレフィン系樹脂である、項1に記載の積層シート。
項5
前記第2層はヒートシール機能を有する、項1に記載の積層シート。
項6
項1~5のいずれか1項に記載の積層シートの延伸体である、延伸フィルム。
項7
溶断シールに用いられる、項6に記載の延伸フィルム。
項8
項6に記載の延伸フィルムを備える、溶断シール袋。
項9
項6に記載の延伸フィルムと、基材とを有する、多層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層シートは、低温での延伸性に優れ、しかも、層間強度に優れる延伸フィルムを製造するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
1.積層シート
本発明の積層シートは、第1層の片面又は両面に第2層が配置されてなる積層体を備える。特に、前記第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む層であり、前記第2層は、熱可塑性樹脂Dを含む層であり、前記第1層中の前記バイオマスプラスチックBの融点は、130℃以上170℃以下であり、前記第1層は前記バイオマスプラスチックBを1質量%以上、25質量%以下含有するものである。
【0012】
本発明の積層シートは、バイオマスプラスチック含むにもかかわらず、低温での延伸性に優れ、しかも、層間強度にも優れる延伸フィルムを製造することができる。従って、本発明の積層シートは、延伸フィルムを製造するために好適に使用され、とりわけ、本発明の積層シートを低温で延伸したとしても、延伸性に優れ、層間強度も優れる。
【0013】
(第1層)
本発明の積層シートにおいて、第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む層である。
【0014】
[結晶性ポリオレフィン系樹脂A]
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aは、結晶性を有するポリオレフィン系樹脂である限り、特にその種類は限定されない。本明細書において、「結晶性を有する」とは、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて、窒素流下、-40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で5分間保持した後、再び20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線に、明確な溶融ピークが現れることをいう。一方、非晶性とは、DSCを用いた上記測定において明確な溶融ピークが現れないことをいう。
【0015】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aとしては、例えば、公知の結晶性ポリオレフィン系樹脂を広く挙げることができる。結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンを重合してなるポリマーであり、好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数3~6のオレフィンを重合してなるポリマーを挙げることができる。具体的には、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、結晶性であるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリ(1-ペンテン)樹脂、ポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂が挙げられる。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。
【0016】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aは、結晶性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。この場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂Aは、前記バイオマスプラスチックBと混ざりやすく、加えて、積層シートは低温での延伸性に優れやすい。
【0017】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aが結晶性ポリプロピレン系樹脂である場合、斯かる結晶性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及び、プロピレンとエチレンとの共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることがさらに好ましい。結晶性ポリオレフィン系樹脂が結晶性プロピレン単独重合体である場合は、フィルムの機械強度及び耐熱性が向上しやすい。結晶性ポリオレフィン系樹脂が結晶性プロピレン-エチレン共重合体である場合、低温での折り割れ性が良化し、かつ、表面光沢度を低くしやすい。
【0018】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aは、結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン-エチレン共重合体の2成分を含むこともできる。結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン-エチレン共重合体の好ましい質量比率は、結晶性プロピレン単独重合体(P1):結晶性プロピレン-エチレン共重合体(P2)=70:30~99:1であり、より好ましい質量比率はP1:P2=75:25~98:2であり、さらに好ましい質量比率はP1:P2=78:22~97:3である。
【0019】
前記結晶性プロピレン単独重合体は、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂が好ましい。斯かる結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度であるメソペンタッド分率([mmmm])が92%~98%であることが好ましく、93%~97%であることがさらに好ましい。メソペンタッド分率[mmmm]が92%以上であると、高い立体規則性成分により、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械強度が得られやすい。一方、メソペンタッド分率[mmmm]を98%以下とすることで、延伸性が良好となりやすい。
【0020】
上記メソペンタッド分率([mmmm])を測定するための使用できる高温NMR装置は特に制限はなく、例えば、ポリオレフィン類の立体規則性度が測定可能な一般に市販されている高温型核磁気共鳴(NMR)装置を使用することができ、例として、日本電子株式会社製高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)JNM-ECP500を挙げることができる。観測核は13C(125MHz)であり、測定温度は135℃、溶媒にはオルト-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(体積混合比=4/1))が用いられる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により行うことができる。測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準はCH3(mmmm)=21.7ppmとされる。
【0021】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載が参照される。上記メソペンタッド分率([mmmm])は、ポリプロピレン樹脂の重合条件や触媒の種類、触媒量等の重合条件を、適宜調整することによってコントロールすることができる。
【0022】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aの融点は特に限定されず、例えば、135℃~175℃とすることができる。この場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオプラスチックBの相溶性が向上しやすく、低温での延伸性にも優れ、得られる延伸フィルムの層間強度も高まりやすい。
【0023】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aの融点は、好ましくは138℃~170℃、より好ましくは140℃~166℃、さらに好ましくは145℃~164℃、特に好ましくは150℃~163℃である。
【0024】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aのガラス転移温度は特に限定されず、例えば、50℃以下とすることができ、-30℃~30℃がより好ましい。
【0025】
本発明では、結晶性樹脂Aの融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0026】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aのメルトマスフローレートは特に限定されない。樹脂の流動性が適度な範囲となり、また、前記微細分散物の大きさが制御しやすくなって、所望の延伸フィルムが作製しやすいという点で、結晶性ポリオレフィン系樹脂Aのメルトマスフローレートは好ましくは0.5g/10分~8g/10分、より好ましくは1g/10分~6g/10分である。本明細書でいうメルトマスフローレートは、JIS K-7210(1999)に準拠し、230℃、21.18Nで測定した値をいう。
【0027】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aは公知の方法で製造することができる。例えば、結晶性ポリオレフィン系樹脂Aが結晶性プロピレン単独重合体である場合、チタン、アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒系を用い、炭化水素溶媒中プロピレンを重合する方法、液状プロピレン中で重合する方法(バルク重合)、気相で重合する方法等により製造することができる。結晶性プロピレン単独重合体は、市販品等から入手することができ、代表的な市販品としては、例えば、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)シリーズの単独重合体、サンアロマー株式会社製のPC412A等、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)シリーズの単独重合体、Borealis社製Daployシリーズ、大韓油化工業株式会社製5014Lシリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズの単独重合体等が挙げられる。
【0028】
結晶性ポリオレフィン系樹脂Aが結晶性プロピレン-エチレン共重合体である場合、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体のいずれであってもよい。結晶性プロピレン-エチレン共重合体におけるエチレン単位の含有割合は、50質量%以下とすることができる。結晶性プロピレン-エチレン共重合体は公知の方法で製造することができ、あるいは市販品等から入手することができる。代表的な市販品としては、例えば株式会社プライムポリマー社製プライムポリプロ(登録商標)シリーズの共重合体、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP(登録商標)シリーズの共重合体及びウインテック(登録商標)シリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズの共重合体等が挙げられる。
【0029】
[バイオマスプラスチックB]
バイオプラスチックBは、融点が130℃以上、170℃以下であるバイオマスプラスチックである限り、特にその種類は限定されず、例えば、公知のバイオマスプラスチックを広く挙げることができる。
【0030】
バイオプラスチックBは、脂肪族系ポリエステル樹脂であることが好ましく、生分解性を有する脂肪族系ポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
【0031】
生分解性を有する脂肪族系ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸(ポリ乳酸を除く)、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)等の脂肪族ポリエステル樹脂等を挙げることができる。天然高分子としては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン等を挙げることができる。バイオプラスチックBは、1種単独又は2種以上の混合物とすることができる。
【0032】
バイオプラスチックBは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、並びに、乳酸及びポリヒドロキシアルカン酸を含む混合モノマーの重合体からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂AとバイオプラスチックBとが均一に混ざりやすく、低温延伸性に優れると共に層間強度にも優れる延伸フィルムが得られやすい。
【0033】
ポリ乳酸としては、例えば、原料モノマーとして乳酸成分を縮重合させて得られるポリ乳酸等、公知のポリ乳酸を広く使用することができる。なお、ポリ乳酸は、L-乳酸(L体)及びD-乳酸(D体)のいずれかの光学異性体のみ、あるいは、双方を含有することができる。ポリ乳酸のD体量は、例えば、0.5~10質量%であることが好ましく、1~9質量%であることがより好ましい。
【0034】
ポリヒドロキシアルカン酸としては、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸グリコール酸等の少なくとも1種を含むヒドロキシカルボン酸成分の重合体が挙げられる。乳酸とポリヒドロキシアルカン酸とを含む混合モノマーの重合体としては、乳酸モノマーと前記ヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0035】
バイオプラスチックBは、融点が130℃以上、170℃以下である。バイオプラスチックBの融点が130℃未満である場合には、積層体の層間強度が著しく低下し、所望の延伸フィルムを製造することが難しくなる。また、バイオプラスチックBの融点が170℃を超過する場合には、積層体の低温延伸性が悪化し、所望の延伸フィルムを製造することが難しくなる。すなわち、バイオプラスチックBの融点が130℃以上、170℃以下であることで、低温延伸性に優れる延伸フィルムが得られ、また、延伸フィルムは層間強度に優れる。
【0036】
バイオプラスチックBの融点は、好ましくは133℃以上、より好ましくは135℃以上、また、好ましくは168℃以下、より好ましくは166℃以下である。
【0037】
バイオプラスチックBのガラス転移温度は特に限定されず、例えば、-40℃~70℃とすることができ、0℃~70℃がより好ましい。
【0038】
本発明では、バイオプラスチックBの融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0039】
バイオプラスチックBのメルトマスフローレートは特に限定されない。樹脂の流動性が適度な範囲となり、また、前記微細分散物の大きさが制御しやすくなって、所望の延伸フィルムが作製しやすいという点で、バイオプラスチックBのメルトマスフローレートは好ましくは0.5g/10分~15g/10分、より好ましくは1g/10分~10g/10分、さらに好ましくは2g/10分~10g/10分である。本明細書でいうメルトマスフローレートは、JIS K-7210(1999)に準拠し、230℃、21.18Nで測定した値をいう。
【0040】
バイオプラスチックBの製造方法は特に限定されず、例えば、公知のバイオマスプラスチックを製造する方法を広く採用することができる。また、バイオプラスチックBは、市販品等からも入手することができる。ポリ乳酸の代表的な市販品としては、例えば、NatureWorks社製「4032D」(融点163℃)、トタルコービオン社製「LX175」(融点155℃)、「LX575」(融点165℃)、「LX975」(融点130℃)等が挙げられる。その他の代表的なバイオプラスチックBの市販品としては、例えば、Tianan Biologic Material社製のポリヒドロキシアルカノエート「ENMAT(登録商標)Y1000P」、三菱ケミカル株式会社製のポリブチレンサクシネート「BioPBS(登録商標)FZ91」、「BioPBS(登録商標)FD82」等が挙げられる。
【0041】
[熱可塑性樹脂C]
第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを含む限り、他の成分を含むことができ、例えば、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックB以外の樹脂成分を含むことができる。斯かる樹脂成分としては、例えば、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cを挙げることができる。
【0042】
すなわち、第1層は、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cをさらに含んでもよい。この場合、本発明の積層シートから得られる延伸フィルムは、層間強度が一層向上しやすい。加えて、第1層が前記熱可塑性樹脂Cを含む場合は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオプラスチックBの相溶性が高まりやすい。
【0043】
熱可塑性樹脂Cの融点は、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下であり、また、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。熱可塑性樹脂Cの融点は、示差走査熱量計(例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSC)を用いて測定された値である。
【0044】
熱可塑性樹脂Cの具体例として、例えば、融点が150℃以下であるαオレフィンコポリマーを挙げることができる。αオレフィンコポリマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等のα-オレフィン同士の共重合体が挙げられ、中でも、αオレフィンコポリマーは少なくともポリプロピレンを含むコポリマーであることが好ましい。αオレフィンコポリマーがポリプロピレンを含むコポリマーである場合、α-オレフィンとしては、エチレンまたは炭素数が4~20のα-オレフィン等が挙げられ、エチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を用いることが好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂Cは、市販品等からも入手することができる。熱可塑性樹脂Cの代表的な市販品としては、例えば、三井化学社のタフマー(登録商標)「XM7070」、住友化学株式会社製の住友ノーブレン「FS6743」等を挙げることができる。
【0046】
[第1層の構成]
第1層は、前述のように、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBを必須の樹脂成分として含む、必要に応じて、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂C等の他の樹脂成分を含むことができる。第1層は、積層シートのコア層として機能する層である。
【0047】
本発明の積層シートにおいて、第1層は、前記バイオマスプラスチックBを(第1層の全量に対して)1質量%以上、25質量%以下含有する。第1層に含まれるバイオマスプラスチックBの含有割合が1質量%未満になると、バイオマス度の観点から望ましくなく、また、第1層に含まれるバイオマスプラスチックBの含有割合が25質量%を上回ると、低温での延伸性が悪化し、所望の延伸フィルムを製造することが難しい。
【0048】
第1層は、前記バイオマスプラスチックBを2質量%以上含むことが好ましく、3質量%以上含むことがより好ましく、4質量%以上含むことがさらに好ましく、5質量%以上含むことが特に好ましい。また、第1層は、前記バイオマスプラスチックBを23質量%以下含むことが好ましく、20質量%以下含むことがより好ましい。
【0049】
第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂Aを70質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、また、99質量%以下含むことが好ましく、97質量%以下含むことがより好ましく、96質量%以下含むことがさらに好ましく、95質量%以下含むことが特に好ましい。
【0050】
第1層が前記熱可塑性樹脂Cを含む場合、その含有割合は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
第1層は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A、バイオマスプラスチックB及び熱可塑性樹脂C以外の他の樹脂成分を含むこともできる。他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1-ペンテン)、ポリメチルペンテン(例えばポリ(4-メチル-1-ペンテン))等のポリオレフィン系樹脂等が例示できる。これらのポリオレフィン系樹脂は、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されたものでも良い。また、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂やそれらの共重合体、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体等のビニル単量体-ジエン単量体共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体等のビニル単量体-ジエン単量体-ビニル単量体共重合体等が挙げられる。
【0052】
第1層が他の樹脂成分を含む場合、その含有割合は、第1層の全質量を基準に15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。他の樹脂成分の含有割合の下限値は、特に限定されないが、例えば0質量%、1質量%などである。
【0053】
第1層に含まれる樹脂成分は、結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオマスプラスチックBのみであってもよいし、あるいは、結晶性ポリオレフィン系樹脂A、バイオマスプラスチックB及び熱可塑性樹脂Cのみからなるものであっても良い。
【0054】
第1層は、本発明の効果が阻害されない限り、樹脂成分以外に必要に応じて他の添加剤を含むこともできる。添加剤は、例えば、延伸フィルムに適用される公知の添加剤を広く挙げることができ、例として、熱安定剤、酸化防止剤、有機及び無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、防曇剤、加水分解抑制剤等が挙げられる。
【0055】
第1層は、単層構造であることが好ましい。すなわち、第1層は、二つの層以上が積層された積層構造ではなく、ただ一つの層のみで形成された層であることが好ましい。
【0056】
第1層の厚みは特に限定されず、その使用用途に応じて適宜設定することができる。第1層の厚みは、例えば、400~1600μmであることが好ましく、より好ましくは600~1400μm、さらに好ましくは800~1200μmである。
【0057】
(第2層)
本発明の積層シートにおいて、第2層は、熱可塑性樹脂Dを含む。第2層を形成するための熱可塑性樹脂Dは、公知の熱可塑性樹脂を種々適用することができる。
【0058】
熱可塑性樹脂Dの一態様として、前述の結晶性ポリオレフィン系樹脂Aを挙げることができる。従って、熱可塑性樹脂Dとしては、結晶性ポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂Dが結晶性ポリオレフィン系樹脂Aである場合、積層シートは低温での延伸性に優れ、また、延伸フィルムは層間強度が高まりやすい。熱可塑性樹脂Dが結晶性ポリオレフィン系樹脂である場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及び、プロピレンとエチレンとの共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0059】
熱可塑性樹脂Dが結晶性ポリオレフィン系樹脂である場合、例えば、積層シートにおいて、第1層に含まれる結晶性ポリオレフィン系樹脂Aと、第2層に含まれる熱可塑性樹脂Dとは同一であっても異なっていてもよく、層間強度が高まりやすい点では、同一であることが好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂Dの他の態様として、第1層にも含まれ得る「融点が150℃以下である熱可塑性樹脂C」を挙げることもできる。この場合、層間強度が特に高まりやすい。
【0061】
熱可塑性樹脂Dが熱可塑性樹脂Cである場合、融点は、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下であり、また、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。
【0062】
熱可塑性樹脂Dが熱可塑性樹脂Cである場合、熱可塑性樹脂Dの具体例としては、先と同様、融点が150℃以下であるαオレフィンコポリマーを挙げることができる。αオレフィンコポリマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等のα-オレフィン同士の共重合体が挙げられ、中でも、αオレフィンコポリマーは少なくともポリプロピレンを含むコポリマーであることが好ましい。
【0063】
本発明の積層シートにおいて、第2層は、ヒートシール機能を有することも好ましい。この場合、本発明の積層シートから得られる延伸フィルムはヒートシール性を有することができる。
【0064】
第2層にヒートシール機能を付与する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く適用することができる。中でも、第2層を形成する熱可塑性樹脂Dが、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cである場合、第2層はヒートシール機能を有することができる。すなわち、「第2層がヒートシール機能を有する」の一態様として、「第2層は、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂を含有する」態様を挙げることができる。
【0065】
熱可塑性樹脂Dが、融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cであって、積層シートの第1層にも融点が150℃以下である熱可塑性樹脂Cが含まれ得る場合、両者は同一であっても異なっていてもよく、層間強度が高まりやすい点では、同一であることが好ましい。
【0066】
第2層は、熱可塑性樹脂Dのみで形成されていてもよく、あるいは、熱可塑性樹脂D以外の他の樹脂成分や添加剤を含むこともできる。添加剤は、例えば、延伸フィルムに適用される公知の添加剤を広く挙げることができ、例として、熱安定剤、酸化防止剤、有機及び無機滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤、防曇剤、加水分解抑制剤等が挙げられる。
【0067】
第2層は、単層構造であることが好ましい。すなわち、第2層は、二つの層以上が積層された積層構造ではなく、ただ一つの層のみで形成された層であることが好ましい。
【0068】
第2層の厚みは特に限定されず、その使用用途に応じて適宜設定することができる。第2層の厚みは、例えば、10~220μmであることが好ましく、より好ましくは30~200μm、さらに好ましくは50~180μmである。
【0069】
(積層シート)
本発明の積層シートは、第1層の片面又は両面に第2層が配置されてなる積層体を備える。本発明の積層シートにおいて、第1層はコア層、第2層はスキン層の役割を果たし得る。これにより、積層シートから得られる延伸フィルムは、平滑性が向上しやすい。
【0070】
本発明の積層シートは、第2層は、第1層の片面又は両面に直接貼り合わされて積層されることが好ましく、第2層は、第1層の両面に直接貼り合わされて積層されることがより好ましい。第2層が両面に形成されている場合、互いの第2層は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0071】
本発明の積層シートは、第1層及び第2層以外の他の層を備えることもできる。例えば、第2層がヒートシール機能を有していない場合、第2層の第1層とは逆側の面にヒートシール層を有することもできる。斯かるヒートシール層の種類は特に限定されず、例えば、延伸フィルムに適用される公知のヒートシール層を広く適用することができる。
【0072】
前記他の層は、ヒートシール層以外に、例えば、防曇性、帯電防止性、粘着性、非粘着性、平滑性、光沢性、印刷適性、耐ブロッキング性、滑り性、強度付与性、柔軟性付与、酸素ガス、エチレンガス等のガスバリア性、水蒸気バリア性、匂い成分のバリア性、包装内容物の成分移行の防止性、抗菌性、抗カビ性等の各種機能を一つ以上有する層、これら各種機能を一つ以上とヒートシール性を有する層等が挙げられる。
【0073】
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の積層シートを製造する方法を広く挙げることができる。例えば、第1層の片面又は両面に第2層を積層させて積層体を得る積層工程を備える方法によって、本発明の積層シートを製造することができる。以下、斯かる積層工程を備える方法を「製造方法A」と略記する。
【0074】
製造方法Aにおいて、第1層は、樹脂原料1を押出成形することで形成することができる。従って、樹脂原料1は、前記結晶性ポリオレフィン系樹脂A及び前記バイオプラスチックBを少なくとも含む原料である。樹脂原料1は、必要に応じて、融点が150℃以下である前記熱可塑性樹脂Cを含むことができる。樹脂原料1中の各樹脂の含有割合は、目的とする積層シートに応じて設定することができる。従って、少なくとも樹脂原料1は、バイオプラスチックBを1質量%以上、25質量%以下含有する。
【0075】
樹脂原料1の調製方法は、例えば、公知の調製方法と同様とすることができ、樹脂のペレットや粉体等を、タンブラーやミキサー等のバッチ式混合装置や、あるいは連続計量式混合装置を用いてドライブレンドする方法;もしくは、樹脂のペレットや粉体等を、必要に応じて他の樹脂のペレットや粉体及び/又は添加剤と共に混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る方法;等が挙げられる。
【0076】
溶融混練に用いる混練機としては公知の混錬機を使用でき、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いてよく、さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のいずれの混練タイプを用いてよい。前記結晶性ポリオレフィン系樹脂A及び前記バイオプラスチックBが均一に混ざりやすい点で、同方向回転の2軸スクリュータイプの混錬機が好ましい。
【0077】
溶融混錬の混練温度は、160℃~320℃の範囲が好ましく、180℃~300℃がより好ましい。上記温度範囲とすることで、前記結晶性ポリオレフィン系樹脂A及び前記バイオプラスチックBがより均一に混ざり合うことができる。溶融混錬の際の樹脂の劣化防止のため、窒素等の不活性ガスをパージすることもできる。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによってメルトブレンド樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0078】
第1層は、樹脂原料1を押出機に供給し、加熱溶融して、必要に応じて、フィルター等により微小異物等を除去した後、Tダイよりシート状に溶融押出することで得られる。溶融押出された樹脂は、例えば、25~120℃の温度に設定した少なくとも1個以上の金属ドラム上にエアナイフや他のロール、又は静電気等により密着させるといった公知の方法により、シート状に成形される。
【0079】
製造方法Aにおいて、第2層は、樹脂原料2を押出成形することで形成することができる。従って、樹脂原料2は、熱可塑性樹脂Dを含む。樹脂原料2の調製方法は、例えば、樹脂原料1と同様の方法で調製できる。樹脂原料2の溶融混練に用いる混練機も樹脂原料1の溶融混練に用いる混練機を挙げることができ、混練条件も同様とすることができる。
【0080】
第2層は、樹脂原料2を押出機に供給し、加熱溶融して、必要に応じて、フィルター等により微小異物等を除去した後、Tダイよりシート状に溶融押出することで得られる。溶融押出された樹脂は、例えば、25~120℃の温度に設定した少なくとも1個以上の金属ドラム上にエアナイフや他のロール、又は静電気等により密着させるといった公知の方法により、シート状に成形される。
【0081】
第1層及び第2層を得るために使用する押出機は、例えば、公知の押出機を広く使用することができる。押出機のスクリュータイプに制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いて良く、樹脂原料を前記ドライブレンドで調製した場合は、2軸スクリュータイプ、又はそれ以上の多軸スクリュータイプを用いると混合及び分散性に優れやすい。押出温度は、160℃~320℃の範囲が好ましく、180℃~300℃がより好ましい。押出の際の樹脂の熱劣化防止のため、窒素等の不活性ガスパージをすることができる。
【0082】
製造方法Aでは、積層工程において第1層の片面又は両面に第2層を積層させて積層体を形成させる。積層体を形成させる方法は、例えば、共押出法、ラミネート法、ヒートシール法等を用いることができる。製造方法Aでは、上記の積層方法を単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
【0083】
前記共押出法としては、溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型、例えばマルチマニホールドダイの内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法等が挙げられる。例えばダイ内積層法の場合には、3層マルチマニホールドダイ等の多層ダイを用いて、第2層/第1層/第2層の3層の積層体を得ることができる。
【0084】
ラミネート法としては、Tダイ法に用いる溶融押出成型法の設備を使用し、溶融樹脂のフィルムを別のフィルム上に直接押し出して積層シートを成型する押出ラミネート法等が挙げられる。ヒートシール法としては、貼り合わせた複数のフィルムに加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する外部加熱法、及び高周波の電波や超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する内部発熱法等が挙げられる。
【0085】
以上の製造方法Aによって、本発明の積層シートを製造することができる。製造方法Aは、積層工程以外の工程を必要に応じて備えることができ、積層工程のみからなるものであっても良い。
【0086】
2.延伸フィルム
本発明の延伸フィルムは、本発明の積層シートの延伸体である。より具体的には、本発明の延伸フィルムは、本発明の積層シートを延伸することで得られるものである。
【0087】
従って、本発明の延伸フィルムは、延伸された第1層の片面又は両面に、延伸された第2層が積層されてなるものである。本発明の延伸フィルムは、低温での延伸処理によって得らえるものであり、また、層間強度にも優れるものである。
【0088】
本発明の延伸フィルムの厚みは特に限定されず、その使用用途に応じて適宜設定することができる。延伸フィルムの厚みは、例えば、10~150μmであることが好ましく、より好ましくは15~100μm、さらに好ましくは20~60μmである。
【0089】
本発明の延伸フィルムは、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることが、つまり、透明性延伸フィルムであることが好ましい。
【0090】
本発明の延伸フィルムは、溶断シール袋用、包装用、食品包装用、薬品包装用、装飾用(ファッション用含む)、ラベル用、テープ用基材、印刷用基材、文具用、家電用、ポスター用紙、感熱紙基材、記録用紙基材、住宅の内装用及び外装用、自動車用、容器等に好適に用いることができる。
【0091】
本発明の延伸フィルムが溶断シールに用いられる場合、延伸フィルムを溶断する方法は特に限定されず、公知の方法を広く採用することができ、例えば、各種の溶断シール袋を得ることができる。前述の延伸フィルムを溶断して形成される溶断シール袋は、高い透明性を有するものであり、また、溶断シール強度も高いものである。従って、本発明の延伸フィルムが溶断シール袋への使用に特に好適である。
【0092】
本発明の延伸フィルムは、延伸フィルムと、基材とを有する多層体として使用されることが好ましい。すなわち、本発明は、当該多層体も包含する。
【0093】
延伸フィルムと基材とは、これらの間に接着剤層または接着樹脂層を備えて、ドライラミネーション法、溶融押出しラミネーション法といった公知のラミネート加工によって、必要によりコロナ処理等の表面処理を施して、貼合することがきる。
【0094】
多層体中の前記基材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタラートやポリエチレンナフタラート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムまたはシート、紙等が挙げられる。これらのなかでも、柔軟性、ヒートシール性の観点から、基材としてポリエチレンフィルム、一軸延伸ポリプロピレン(CPP)を使用することが好ましい。基材にはバイオマスプラスチックが含有されることが好ましい。
【0095】
本発明の積層シートを用いて延伸フィルムを製造するにあたって、延伸方法は特に限定されない。延伸方法としては、周速差を設けたロール間で延伸する方法、テンター法、チューブラー法等公知の方法を用いることができる。延伸方向としては、一軸延伸、二軸延伸、斜め方向への二軸延伸等が可能であり、二軸以上の延伸では、逐次延伸及び同時延伸がいずれも適用可能である。これらのうち所望の延伸フィルムが得られ易い点から、テンター法による同時二軸延伸法、テンター法による逐次二軸延伸法、及び周速差を設けたロール間で縦(流れ、MD)延伸した後テンター法にて横(巾、TD)延伸する逐次二軸延伸法が好ましい。
【0096】
逐次二軸延伸方法では、使用する樹脂の融点及びガラス転移温度により延伸温度や延伸倍率を調整することが好ましい。まず、積層シート(原反シート)を好ましくは100~180℃、より好ましくは120~170℃の温度に保ち、周速差を設けたロール間に通して、あるいはテンター法にて、縦方向に好ましくは2~10倍、より好ましくは2.5~8倍、さらに好ましくは3~6倍に延伸する。引き続き、当該延伸フィルムをテンター法にて、好ましくは100~180℃、より好ましくは120~175℃の温度で、横方向に好ましくは2~12倍、より好ましくは2.5~11.5倍、さらに好ましくは3~11倍に延伸した後、緩和、熱セットを施し巻き取る。
【0097】
巻き取られたフィルムは、好ましくは20~45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。こうして延伸性、透明性、機械的強度等に優れた延伸フィルムが得られる。
【実施例0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0099】
実施例及び比較例で用いた樹脂は、以下の通りである。
【0100】
(結晶性ポリオレフィン系樹脂A;A成分)
・A-1:サンアロマー(登録商標)「PC412A」(融点162℃、サンアロマー社)
【0101】
(バイオプラスチックB;B成分)
・B-1:Luminy(登録商標)LX175(Total Corbion PLA社製、ポリ乳酸、融点155℃)
・B-2:Luminy(登録商標)LX575(Total Corbion PLA社製、ポリ乳酸、融点165℃)
・B-3:Luminy(登録商標)L175(Total Corbion PLA社製、ポリ乳酸、融点175℃)
・B-4:Luminy(登録商標)LX975(Total Corbion PLA社製、ポリ乳酸、融点125℃)
・B-5:Luminy(登録商標)LX175とLuminy(登録商標)LX975の混合物(質量比40:60)
【0102】
(熱可塑性樹脂C;C成分)
・C-1:タフマー(登録商標)「XM7070」(三井化学社製、融点75℃)
・C-2:住友ノーブレン(登録商標)「FS6743」(住友化学社製、融点130℃)
【0103】
[樹脂の融点]
実施例及び比較例で使用した樹脂の融点は、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用い、以下の手順により算出した。各樹脂を5mg量り取り、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、-40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で-40℃まで冷却し、-40℃で5分間保持した。その後再び20℃/分で300℃まで昇温する際のDSC曲線より、融点およびガラス転移温度を求めた。JIS-K7121の9.1(1)に定める溶融ピーク(複数の溶融ピークを示す場合は最大の溶融ピーク)を融点とし、JIS-K7121の9.3(1)に定める中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
【0104】
[フィルムの厚み]
積層シート及び延伸フィルムの厚みは、シチズンセイミツ株式会社製紙厚測定器MEI-11を用いて、JIS-C2330に準拠して測定した。
【0105】
[低温延伸性]
延伸性はテンター式逐次二軸延伸機を用いて評価した。延伸方法は、縦方向に延伸した後横方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用した。設定温度120℃の縦延伸ロールにて、原反シートを予熱してフィルム温度(Ts)が120℃に達してから、延伸倍率4.7倍に延伸した。次いで設定温度160℃の横延伸ゾーン内にてフィルム温度(Ts)が145℃に達してから、延伸倍率9.5倍に延伸した。得られた延伸フィルムの延伸性を下記判定基準で評価した。
<延伸性の判定基準>
◎:延伸フィルムが均一に延伸され、かつ、厚み変動が小さく、延伸性に特に優れていた。
〇:延伸フィルムが均一に延伸されており、延伸性に優れていた。
△:延伸フィルムの一部に延伸ムラが見られ、及び/又は亀裂が生じ、延伸性に劣っていた。
×:延伸できずに破断した。
【0106】
[層間強度]
サンプル作製
各実施例及び比較例で製造した延伸フィルムをA4サイズ(MD/TD=297/210mm)にカットした。次いで、接着剤(東洋モートン社製TM-550/CAT―RT37/酢酸エチル=36/4/43の質量比率で混合した接着剤)を延伸フィルムの一方の面に滴下し、#16のマイヤーバーを用いて塗工し、110℃で60秒乾燥させて塗膜を得た。この塗膜上からカバーフィルム(75μm厚PET)を貼り合わせた。次いで、延伸フィルムの他方の面にも同操作を行うことで、延伸フィルムの両面に接着剤及びカバーフィルムを貼り合わせたサンプルを作製した。このサンプルをMD/TD=200/25mmのサイズにカットした。
層間強度測定
次に、室温の環境下で、引張試験機(ミネベア株式会社製 テクノグラフTGI-1kN)を用いて、延伸フィルム両面のカバーフィルムをチャッキングし、300mm/minの速度で引張試験を行った。この試験によって、延伸フィルムの第1層で破壊が生じるので、この破壊時の破壊強度を計測し、この測定を計3回行って平均値を算出した。この値から、下記判定基準に基づいて層間強度を判定した。
≪層間強度の判定基準≫
◎:4N/25mm以上であり、極めて優れた層間強度を有していた。
〇:3N/25mm以上、4N/25mm未満であり、優れた層間強度を有していた。
△:2N/25mm以上、3N/25mm未満であり、層間強度が小さかった。
×:2N/25mm未満であり、層間強度が極めて劣るものであった。
【0107】
[ヒートシール性評価法]
ヒートシール機能又はヒートシール層を有する延伸フィルム2枚をそれぞれ、MD方向250mm、TD方向50mmにカットして、測定用サンプルを準備した。この2枚の測定用サンプルを、23℃、50%RHの環境下で、互いのヒートシール面どうしを重ね合わせた。この状態で、熱傾斜式ヒートシーラー HG-100-2(株式会社東洋精機製作所製)を用い、シール温度110℃、シール圧力200KPa、シール時間2秒、ヒートシール部の幅(フィルムのMD方向に相当)1cmの条件でヒートシール処理を行い、下記判定基準でヒートシール性を評価した。
<ヒートシール性の判定基準>
◎:ヒートシール部が融着し、かつ、剥がしにくいものであり、ヒートシール性に特に優れていた。
〇:ヒートシール部が融着しており、ヒートシール性に優れていた。
×:ヒートシール部が融着せず簡単に剥がれ、ヒートシール性に劣っていた。
【0108】
(実施例1)
後掲の表1に示すように、第1層を形成するための原料として、A-1及びB-1のペレット混合物を準備した。表1に示すように、ペレット混合物中のA-1は85質量%、B-1は15質量%とした。ペレット混合物をミキサーにてドライブレンドすることで、第1層用の樹脂原料1を調製した。また、第2層を形成するための原料として、A-1のペレットを樹脂原料2とした。
【0109】
次いで、テンター式逐次二軸延伸機を用いて製膜した。まず、ペレット1を、一軸スクリュータイプ押出機aにホッパーから投入し、また、ペレット2を、押出機aとは別の一軸スクリュータイプ押出機bにホッパーから投入した。上記ペレット1及び上記ペレット2をそれぞれ溶融させ、これらを3層マルチマニホールドダイ内部にて3層構成に積層し、第1層の両面に第2層が配置されてなる積層体を備えた積層体を得た。一軸スクリュータイプ押出機aと一軸スクリュータイプ押出機bの押出樹脂量の比率は3:1とした。押し出された積層体を、70℃に制御した冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却固化して、厚さ1070μmの原反シート(積層シート)を得た。
【0110】
延伸方法は、縦方向に延伸した後横方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用した。設定温度120℃の縦延伸ロールにて、原反シートを予熱してフィルム温度(Ts)が120℃に達してから、延伸倍率4.7倍に延伸した。次いで設定温度160℃の横延伸ゾーン内にてフィルム温度(Ts)が145℃に達してから、延伸倍率10.3倍に延伸した。横方向を9.5倍まで緩和し、厚さ24μmの延伸フィルムを得た。
【0111】
(実施例2~5及び実施例8)
第1層を形成するための結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオプラスチックBの種類及び配合量、並びに第2層を形成するための熱可塑性樹脂の種類を、後掲の表1に示すように設定して樹脂原料1及び2を調製したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを得た。
【0112】
(実施例6~7)
後掲の表1に示すように、第1層を形成するための樹脂原料1を結晶性ポリオレフィン系樹脂A、バイオプラスチックB及び熱可塑性樹脂Cの混合物として表1に示す配合割合で使用したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを得た。
【0113】
(実施例9)
後掲の表1に示すように、第1層を形成するための樹脂原料1を結晶性ポリオレフィン系樹脂A、バイオプラスチックB及び熱可塑性樹脂Cの混合物として表1に示す配合割合で使用し、また、第2層を形成するための熱可塑性樹脂の種類を後掲の表1に示すように設定して樹脂原料1及び2を調製したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを得た。
【0114】
(比較例1~4)
第1層を形成するための結晶性ポリオレフィン系樹脂A及びバイオプラスチックBの種類及び配合量を、後掲の表1に示すように設定して樹脂原料1を調製したこと以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを得た。
【0115】
【0116】
表1には、各実施例及び比較例で得た延伸フィルムの作製条件と、評価結果を示している。表1から、実施例で得られた延伸フィルムは、低温でも均一に延伸されており、低温延伸性に優れ、また、得られた延伸フィルムは、層間強度にも優れていた。従って、特定の融点を有するバイオプラスチックBを所定量含む第1層を備える積層シートから形成される延伸フィルムは、低温延伸性及び層間強度に優れることが実証された。
【0117】
これに対し、比較例1~3は、特定の融点を有するバイオプラスチックBを所定量含む第1層を備えるものではないので、低温延伸性及び/又は層間強度が劣るものであった。