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特開2024-12763電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012763
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240124BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240124BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/38 120
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114481
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】522287156
【氏名又は名称】三宅 成也
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【弁理士】
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】三宅 成也
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができる電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法を提供する。
【解決手段】再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、を実行する。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、前記契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、
該権利トークン発行処理で発行する前記権利トークンを前記発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを前記需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、
を実行する電力取引管理システム。
【請求項2】
前記権利トークンの発行量から前記電力移動トークンの発行量を減じた値を差分値として該差分値が正となる場合は前記差分値に対応する電力量を換金して前記需要家に送金する送金処理を実行する、
請求項1に記載の電力取引管理システム。
【請求項3】
前記権利トークンは、
前記需要家のウォレットで管理されて資金調達を目的としてブロックチェーンを介して取引される、
請求項1または2に記載の電力取引管理システム。
【請求項4】
前記権利トークン発行処理は、
複数の前記需要者に区分所有される前記発電装置の前記発電能力に基づいた電力供給を受ける契約に対応する前記権利トークンを、前記契約を締結する複数の前記需要家に対して発行する、
請求項1または2に記載の電力取引管理システム。
【請求項5】
前記権利トークン発行処理は、
複数の前記需要家に区分所有される複数の前記発電装置の前記発電能力に基づいた電力供給を受ける契約に対応する前記権利トークンを、前記契約を締結する複数の前記需要家に対して発行する、
請求項1または2に記載の電力取引管理システム。
【請求項6】
前記権利トークン発行処理で発行する前記権利トークンを前記発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に応じた電力を蓄電池に蓄電する蓄電契約に対応する蓄電権利トークンを、前記蓄電契約を締結する前記需要家に対して発行する蓄電権利トークン発行処理と、
該蓄電権利トークン発行処理で発行する前記蓄電権利トークンを前記蓄電池の蓄電能力で除した値に単位時間あたりの前記発電量を乗じた蓄電量に対応するとともに前記蓄電池から前記需要家に対して供給される前記電力に対応する蓄電電力移動トークンを前記需要家に対して発行する蓄電電力移動トークン発行処理と、を実行する、
請求項1に記載の電力取引管理システム。
【請求項7】
再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、前記契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、
該権利トークン発行処理で発行する前記権利トークンを前記発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを前記需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、
を実行する電力取引管理装置。
【請求項8】
コンピュータによって実装される電力取引管理装置に、
再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、前記契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、
該権利トークン発行処理で発行する前記権利トークンを前記発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを前記需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
コンピュータによって実装される電力取引管理装置を用いて、
再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、前記契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、
該権利トークン発行処理で発行する前記権利トークンを前記発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを前記需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、
を実行する電力取引管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法、特に再生可能エネルギーを用いた電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保全及び資源保護等の観点から脱炭素社会の実現が目標とされるなか、例えば太陽光や風力等といった再生可能エネルギーを利用した発電設備が電力消費地の周辺に分散配置されて電力供給を行う分散型発電源を利用することが、近年、着目されている。
【0003】
特許文献1には、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を電力系統に送電する発電装置、及びこの発電装置が発電した電力を充電するとともに充電した電力を電力系統に送電可能な蓄電池を備え、蓄電池から電力系統への送電を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-37494公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、再生可能エネルギーによる電力の利用を普及させるためには、再生可能エネルギーによる発電を主な電源として育成して、例えば原子力発電や火力発電等といった他の電源と同様に、電力の需給バランスに応じた発電を行うことができるようにする必要がある。
【0006】
電力の需給バランスに応じた発電を行うことができるようにするためには、再生可能エネルギーによって発電した電力の需要を増大させる必要があるところ、このような需要を増大させる観点からは、再生可能エネルギーによって発電した電力の取引を活性化させて、取引する市場の規模を拡大させる必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができる電力取引管理システム、電力取引管理装置、プログラム及び電力取引管理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る電力取引管理システムは、再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、を実行するものである。
【0009】
これによれば、再生可能エネルギーによる発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンが発行され、かつこの権利トークンに基づいて算出される需要家に対する電力供給量に対応する電力移動トークンが発行されて、発電装置と需要家との間の電力の取引がトークンと関連づけられることから、再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができる。
【0010】
この電力取引管理システムは、権利トークンの発行量から電力移動トークンの発行量を減じた値を差分値として差分値が正となる場合は差分値に対応する電力量を換金して需要家に送金する送金処理を実行するものである。
【0011】
この電力取引管理システムで処理される権利トークンは、需要家のウォレットで管理されて資金調達を目的としてブロックチェーンを介して取引されるものである。
【0012】
この電力取引管理システムで実行される権利トークン発行処理は、複数の需要者に区分所有される発電装置の発電能力に基づいた電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する複数の需要家に対して発行するものである。
【0013】
さらに、この電力取引管理システムで実行される権利トークン発行処理は、複数の需要家に区分所有される複数の発電装置の発電能力に基づいた電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する複数の需要家に対して発行するものである。
【0014】
この電力取引管理システムは、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に応じた電力を蓄電池に蓄電する蓄電契約に対応する蓄電権利トークンを、蓄電契約を締結する需要家に対して発行する蓄電権利トークン発行処理と、蓄電権利トークン発行処理で発行する蓄電権利トークンを蓄電池の蓄電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた蓄電量に対応するとともに蓄電池から需要家に対して供給される電力に対応する蓄電電力移動トークンを需要家に対して発行する蓄電電力移動トークン発行処理と、を実行するものであってもよい。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る電力取引管理装置は、再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、を実行するものである。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るプログラムは、コンピュータによって実装される電力取引管理装置に、再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、を実行させるものである。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る電力取引管理方法は、コンピュータによって実装される電力取引管理装置を用いて、再生可能エネルギーによって電力を発電する発電装置の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、契約を締結する需要家に対して発行する権利トークン発行処理と、権利トークン発行処理で発行する権利トークンを発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた電力供給量に対応する電力移動トークンを需要家に対して発行する電力移動トークン発行処理と、を実行するものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施の形態に係る電力取引管理システムの構成の概略を説明するブロック図である。
図2】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの電力取引管理装置及び需要家端末を実装するコンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。
図3】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの電力取引管理装置の機能の概略を説明するブロック図である。
図4】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの配電設備の構成の概略を説明するブロック図である。
図5】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの需要家端末の機能の概略を説明するブロック図である。
図6】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの電力取引管理装置と需要家端末との間におけるトークンの処理の概略を説明するシーケンス図である。
図7】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの処理の概略を説明するブロック図である。
図8】本発明の第2実施の形態に係る電力取引管理システムの構成の概略を説明するブロック図である。
図9】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの電力取引管理装置の機能の概略を説明するブロック図である。
図10】同じく、本実施の形態に係る電力取引管理システムの処理の概略を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図に基づいて、本発明の実施の形態に係る電力取引管理システムについて説明する。
【0021】
(第1実施の形態)
まず、図1図7に基づいて、本発明の第1実施の形態に係る電力取引管理システムについて説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る電力取引管理システムの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、電力取引管理システム10は、発電装置20、電力取引管理装置30、配電設備40及び需要家端末50を主要構成として備え、これらが互いにインターネット網等のネットワークNを介して接続される。
【0023】
本実施の形態では、発電装置20は、電力供給事業を営む供給事業者1に管理されて電力消費地の周辺に分散配置され、電力取引管理装置30は、電力取引管理システム10を用いたサービスを提供する事業者2に管理され、配電設備40は、電力を消費する需要家3の住宅等に配備され、需要家端末50は、需要家3に保有される。
【0024】
次に、電力取引システム10の各部の具体的な構成について説明する。
【0025】
発電装置20は、本実施の形態では、太陽光発電パネルを用いた再生可能エネルギーによって発電を行う装置であって、発電した電力を、配電系統Sを介して需要家3の配電設備40に供給する。
【0026】
電力取引管理装置30及び需要家端末50は、本実施の形態では、ほぼ同様のハードウェア構成を具備するコンピュータ、例えばデスクトップ型あるいはノート型のコンピュータによって実装される。
【0027】
図2は、コンピュータの構成の概略を説明するブロック図である。
【0028】
図示のように、コンピュータは、プロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105を主要構成として備え、これらが互いにバス106を介して電気的に接続される。
【0029】
プロセッサ101は、コンピュータの動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、アプリケーションプログラムの実行に必要な処理等を行う演算装置である。
【0030】
このプロセッサ101は、本実施の形態では例えばCPU(Central Processing Unit)であり、次述するメモリ102に展開されたアプリケーションプログラムを実行して各処理を行う。
【0031】
メモリ102は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置によって実装される。
【0032】
このメモリ102は、プロセッサ101の作業領域として使用される一方、コンピュータの起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、及び各種の設定情報等が格納される。
【0033】
ストレージ103には、アプリケーションプログラム等による各種の処理に用いられるデータ等が格納されている。
【0034】
送受信部104は、コンピュータをネットワークNに接続するものであって、本実施の形態では、送受信部104を介したネットワークNを経由して、発電装置20や配電設備20等と相互に通信可能に接続される。
【0035】
この送受信部104は、Wi-Fi等の無線通信規格に対応するものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やBLE(Bluetooth Low Energy)といった近距離通信インターフェースを具備するものであってもよい。
【0036】
入出力部105には、必要に応じて、キーボードやマウスといった情報入力機器やディスプレイ等の出力機器が接続される。本実施の形態では、キーボード、マウス及びディスプレイがそれぞれ接続される。
【0037】
バス106は、接続したプロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、送受信部104及び入出力部105の間において、例えばアドレス信号、データ信号及び各種の制御信号を伝達する。
【0038】
図3は、電力取引管理装置30の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、電力取引管理装置30は、電力情報管理部31、換算処理部32、トークン管理部33、権利トークン発行部34、電力移動トークン発行部35、トランザクション実行部36及び送金処理部37を備える。
【0039】
これら電力情報管理部31、換算処理部32、トークン管理部33、権利トークン発行部34、電力移動トークン発行部35、トランザクション実行部36及び送金処理部37は、メモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101で実行することによって実現される。
【0040】
電力情報管理部31は、本実施の形態では、発電装置20で発電した電力に関する情報を管理するものであって、例えば、発電装置20の発電能力、発電装置20の単位時間あたりの発電量、発電装置20から需要家3の配電設備40に供給した電力量、需要家3で消費された電力量(電気使用値)等といった各種の情報を管理する。
【0041】
換算処理部32は、本実施の形態では、発電装置20の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンを、任意のレートを基準として換算するものである。本実施の形態では、説明の容易化の観点から、1kWh=1トークンである場合を想定する。
【0042】
この権利トークンの基礎となる契約は、本実施の形態では、供給事業者1と需要者3との間で締結される契約であって、例えば、発電装置20の発電能力が1000kWであるとした場合、1000kW以内の任意の発電能力(例えば500kW)に基づいて電力供給を受ける契約である。
【0043】
すなわち、権利トークンは、発電装置20の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約が存在することを証明するトークンであって、金銭的な価値を発揮する可能性があるトークンである。
【0044】
なお、この電力供給を受ける契約に基づいて需要家3が供給を受ける電力量(電力供給量)は、権利トークンを発電装置20の発電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた次式、
電力供給量=単位時間あたりの発電量×権利トークン/発電装置の発電能力
によって算出され、例えば、
・単位時間あたりの発電量:800kWh
・権利トークン:500トークン
・発電装置の発電能力:1000kW
であれば、電力供給量は、
800kWh×500トークン/1000kW=400kWh
であると算出される。
【0045】
さらに、換算処理部32は、電力情報管理部31で管理する情報に基づいて、任意のレートを基準として後述する電力移動トークンを換算するものである。本実施の形態では、説明の容易化の観点から、1kWh=1トークンである場合を想定する。
【0046】
トークン管理部33は、本実施の形態では、換算処理部32で換算した権利トークン及び電力移動トークンのうち既に発行されたもの、あるいは今後発行される権利トークン及び電力移動トークンの数等を情報として管理するものである。
【0047】
権利トークン発行部34は、本実施の形態では、トークン管理部33で管理される権利トークンに関する情報に基づいて、任意の需要者3に対して権利トークンを発行するものである(権利トークン発行処理)。
【0048】
電力移動トークン発行部35は、本実施の形態では、トークン管理部33で管理される電力移動トークンに関する情報に基づいて、任意の需要者3に対して電力移動トークンを発行するものである(電力移動トークン発行処理)。
【0049】
本実施の形態では、電力移動トークン発行部35は、電力供給量に対応した数の電力移動トークンを発行するものであって、例えば、1kWh=1トークンであるとして、上記の800kWh×500トークン/1000kWで求めた電力供給量(400kWh)に対応する400トークンを発行する。
【0050】
トランザクション実行部36は、本実施の形態では、電力情報管理部31で管理する情報に基づいて、電力取引管理装置30から需要家3が受け取る権利トークン及び電力移動トークンを送信するトランザクションを実行するものである。
【0051】
送金処理部37は、本実施の形態では、単位時間あたりに供給される電力量が、電力供給を受ける契約で契約した発電能力に満たない場合、すなわち単位時間あたりで需要家3が消費した電力量が、需要家3が契約した発電能力に満たない場合に、その差分の電力量を換金して需要家3に送金する処理を実行するものである(送金処理)。この送金処理は、需要家3による売電に基づくものと把握することができる。
【0052】
この送金処理は、本実施の形態では、権利トークンの発行量から電力移動トークンの発行量を減じた値を差分値とし、この差分値が正となる場合は、差分値に対応する電力量を換金して需要家3に送金する。
【0053】
例えば、需要家3に発行した権利トークンが500トークンであって、単位時間あたりで需要家3が消費した電力量(電力供給量)が400kWhであり需要家3に発行した電力移動トークンが400トークンである場合、差分値は、
500トークン-400トークン=100トークン
であって、正の値となる。
【0054】
したがって、100トークン=100kWhであると想定して、任意のレートを基準として100kWhの電力量を換金する。本実施の形態では、換金するレートは固定レートであってもよいし変動レートであってもよい。
【0055】
図4は、需要家3の配電設備40の構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、配電設備40は、配電処理部41、負荷機器42及びスマートメータ43を主要構成として備える。
【0056】
配電処理部41は、本実施の形態では、パワーコンディショナや分電盤等といった配電機器によって構成され、発電装置20から電力の供給を受けるインターフェースとして機能するとともに、需要家3の住宅等に配備される負荷機器42に配電する処理を実行する。
【0057】
負荷機器42は、例えば、テレビ、エアコン等の冷暖房機器、調理器具、その他の住宅設備に関する電気機器等によって構成される。
【0058】
スマートメータ43は、本実施の形態では、配電設備40内の負荷機器42に消費された電力量を電気使用値として検知するとともに、検知した電気使用値を電力取引管理装置30に通信するものである。
【0059】
図5は、需要家3に保有される需要家端末50の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、需要家端末50は、通信処理部51及びウォレット管理部52を備える。
【0060】
これら通信処理部51及びウォレット管理部52は、メモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101で実行することによって実現される。
【0061】
通信処理部51は、本実施の形態では、電力取引管理装置30で実行されたトランザクションに基づいて発行された権利トークン及び電力移動トークンを受け取る処理を実行するものである。
【0062】
ウォレット管理部52は、本実施の形態では、通信処理部51で受け取った権利トークン及び電力移動トークンを需要家端末50で管理することによって、需要家端末50をいわゆるウォレットとして機能させるものである。
【0063】
ウォレットとしての需要家端末50に管理される権利トークンは、本実施の形態では、上記のように、金銭的な価値を発揮する可能性があるトークンであるから、例えば、ブロックチェーンを介して取引可能なデジタル証券を活用した資金調達手段であるSTO(Security Token Offering)を用いて取引される。
【0064】
図6は、電力取引管理装置30と需要家端末50との間におけるトークンの処理の概略を説明するシーケンス図である。まず、供給事業者1と需要家3との間の契約に基づいて、発電装置20の発電能力が電力取引管理装置30で管理されると、図示のように、ステップS1において、電力取引管理装置30がトランザクションを実行する。
【0065】
トランザクションの実行によって、ステップS2において、電力取引管理装置30が需要家端末50に権利トークンを送信し、ステップS3において、需要家端末50がウォレットとして機能して権利トークンを管理する。
【0066】
一方、ステップS4において、需要家3が電力を消費すると、ステップS5において、需要家3が消費した電力量を配電設備40のスマートメータが検知し、ステップS6において、需要家3が消費した電力量を発電装置20からの電力供給量であると把握して電力に関する情報の管理を実行する。
【0067】
電力に関する情報の管理に伴って、ステップS7において、電力取引管理装置30がトランザクションを実行する。
【0068】
トランザクションの実行によって、ステップS8において、電力取引管理装置30が需要家端末50に電力移動トークンを送信し、ステップS9において、需要家端末50がウォレットとして機能して電力移動トークンを管理する。
【0069】
電力取引管理装置30と需要家端末50との間における権利トークン及び電力移動トークンの処理は、本実施の形態では、ブロックチェーン上で実行される。
【0070】
次に、電力取引管理システム10の処理について説明する。
【0071】
図7は、電力取引管理システム10の処理の概略を説明するブロック図である。本実施の形態では、発電装置20aを管理する供給事業者1aと需要家3a~3cとの間の取引、及び発電装置20bを管理する供給事業者1bと需要家3cとの間の取引の場合における処理について説明する。
【0072】
図示のように、電力取引管理装置30を管理する事業者2が構成者の一部となっているバランシンググループ(Barancing Group)BGを介在して、発電装置20aを管理する供給事業者1aと需要家3a~3cとの間で電力供給を受ける契約が締結され、発電装置20bを管理する供給事業者1bと需要家3cとの間で電力供給を受ける契約が締結される。
【0073】
供給事業者1aと需要家3a~3cとの間の契約では、発電装置20aがその発電能力に応じて複数の需要家3a~3cによって区分所有されて、例えば20年間に亘って発電装置20aの発電能力に基づいて電力供給を受ける権利が複数の需要家3a~3cに付与されることが規定される。
【0074】
本実施の形態では、1000kWの発電能力を有する発電装置20aに関して、供給事業者1aと需要家3aとの間で500kWの電力供給を受ける契約が締結され、供給事業者1aと需要家3bとの間で300kWの電力供給を受ける契約が締結され、供給事業者1aと需要家3cとの間で200kWの電力供給を受ける契約が締結される。
【0075】
これらの契約に基づいて、バランシンググループBGが需要家3aの需要家端末50aに権利トークン(500トークン)を送信し、需要家3bの需要家端末50bに権利トークン(300トークン)を送信し、需要家3cの需要家端末50cに権利トークン(200トークン)を送信する。
【0076】
需要家端末50a~50cに管理される権利トークンは、本実施の形態では、STOを用いて取引することが可能である。
【0077】
一方、供給事業者1bと需要家3cとの間の契約では、発電装置20bがその発電能力に応じて需要家3cによって区分所有されて、例えば20年間に亘って発電装置20bの発電能力に基づいて電力供給を受ける権利が需要家3cに付与されることが規定される。
【0078】
本実施の形態では、1000kWの発電能力を有する発電装置20bに関して、供給事業者1bと需要家3cとの間で200kWの電力供給を受ける契約が締結され、この契約に基づいて、バランシンググループBGが需要家3cの需要家端末50cに権利トークン(200トークン)を送信する。
【0079】
需要家端末50cに管理される権利トークンは、本実施の形態では、STOを用いて取引することが可能である。
【0080】
なお、供給事業者1aと需要家3cとの間の契約と、供給事業者1bと需要家3cとの間の契約とでは、例えば供給事業者1aと需要家3cとの間の契約が優先されて、発電装置20aからの電力が需要家3cに優先的に供給される。
【0081】
このような場合において、例えば午後12時の電力取引の状況を想定すると、発電装置20aの単位時間あたりの発電量が800kWhであるから、需要家3aの消費電力(400kWh)に応じて発電装置20aから供給される電力は、
800kWh×500トークン/1000kW=400kWh
となり、この電力供給量に対応する電力移動トークン(400トークン)を需要家端末50aに送信する。
【0082】
このとき、需要家3aの権利トークン(500トークン)から電力移動トークン(400トークン)を減じた差分値は100トークンであって正であるから、差分値に対応する電力量(100kWh)を換金して需要家3aに送金する。
【0083】
一方、需要家3bの消費電力(240kWh)に応じて発電装置20aから供給される電力は、
800kWh×300トークン/1000kW=240kWh
となり、この電力供給量に対応する電力移動トークン(240トークン)を需要家端末50bに送信する。
【0084】
このとき、需要家3bの権利トークン(300トークン)から電力移動トークン(240トークン)を減じた差分値は60トークンであって正であるから、差分値に対応する電力量(60kWh)を換金して需要家3bに送金する。
【0085】
需要家3cの消費電力(250kWh)に応じて発電装置20aから供給される電力は、
800kWh×200トークン/1000kW=160kWh
となり、この電力供給量に対応する電力移動トークン(160トークン)を需要家端末50cに送信する。
【0086】
ここで、発電装置20aから需要家3cに供給される電力の電力量(160kWh)は、需要家3cの消費電力(250kWh)に満たないから、供給事業者1bと需要家3cとの契約に基づいて発電装置20bから需要家3cに供給されるべき電力の電力量は、発電装置20bの単位時間あたりの発電量が600kWhであるから、
600kWh×200トークン/1000kW=120kWh
となり、この電力供給量に対応する電力移動トークン(120トークン)を需要家端末50aに送信する。
【0087】
ところが、実際には、需要家3cの消費電力(250kWh)のうち160kWhは発電装置20aから供給される電力によって処理されるから、発電装置20bから需要家3cに供給される電力量は、250kWhと160kWhとの差分である90kWhとなる。
【0088】
したがって、需要家3cに供給されるべき電力量(120kWh)と実際に需要家3cに供給される電力量(90kWh)との差分である余剰の電力量(30kWh)を換金して需要家3cに送金する。
【0089】
この場合、需要家端末50cに送信した電力移動トークン(120トークン)は、本実施の形態では、バランシンググループBGによって90トークンへと減じるように処理される。
【0090】
一方、需要家3cの権利トークン(200トークン)から電力移動トークン(120トークン)を減じた差分値は80トークンであって正であるから、差分値に対応する電力量(80kWh)を換金して需要家3cに送金する。
【0091】
このように、再生可能エネルギーによる発電装置20の発電能力に基づいて電力供給を受ける契約に対応する権利トークンが発行され、この権利トークンに基づいて算出される需要家3に対する電力供給量に対応する電力移動トークンが発行されることから、発電装置20と需要家3との間の電力の取引がトークンと関連づけられる。
【0092】
したがって、再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができることから、このような取引が活性化されて取引の市場の規模が拡大されることが期待される。
【0093】
(第2実施の形態)
次に、図8図10に基づいて、本発明の第2実施の形態に係る電力取引管理システムについて説明する。
【0094】
なお、図8図10において、第1実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して、その説明を省略するものとするが、本実施の形態を説明する際の必要に応じて、同一の符号を付した第1実施の形態と同様の構成についても説明する場合がある。
【0095】
図8は、本実施の形態に係る電力取引管理システムの構成の概略を説明するブロック図である。図示のように、電力取引管理システム60は、ネットワークNを介して、発電装置20、電力取引管理装置80、配電設備40及び需要家端末50と接続される蓄電池70を備える。
【0096】
本実施の形態では、蓄電池70は、電力供給事業を営む供給事業者1に管理されて電力消費地の周辺に分散配置される、あるいは発電装置20とともに配置される。
【0097】
次に、電力取引管理システム60の各部の具体的な構成について説明する。
【0098】
蓄電池70は、本実施の形態では、例えばリチウムイオン二次電池あるいはキャパシタであって、発電装置20で発電した電力が蓄電されるとともに、蓄電された電力を、配電系統Sを介して需要家3の配電設備40に供給する。
【0099】
電力取引管理装置80は、本実施の形態では、例えばデスクトップ型あるいはノート型のコンピュータによって実装される。
【0100】
図9は、電力取引管理装置80の機能の概略を説明するブロック図である。図示のように、電力取引管理装置80は、電力情報管理部31、換算処理部32、トークン管理部33、権利トークン発行部34、蓄電権利トークン発行部34a、電力移動トークン発行部35、蓄電電力移動トークン発行部35a、トランザクション実行部36及び送金処理部37を備える。
【0101】
これら電力情報管理部31、換算処理部32、トークン管理部33、権利トークン発行部34、蓄電権利トークン発行部34a、電力移動トークン発行部35、蓄電電力移動トークン発行部35a、トランザクション実行部36及び送金処理部37は、メモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101で実行することによって実現される。
【0102】
換算処理部32は、本実施の形態では、権利トークン及び発電装置20からの電力供給量に応じた電力を蓄電池70に蓄電する蓄電契約に対応する蓄電権利トークンを、任意のレートを基準として換算するものである。本実施の形態では、説明の容易化の観点から、1kWh=1トークンである場合を想定する。
【0103】
この蓄電権利トークンの基礎となる蓄電契約は、本実施の形態では、供給事業者1と需要者3との間で締結される契約であって、例えば、発電装置20から電力が供給される蓄電池70の蓄電能力が1000kWであるとした場合、1000kW以内の任意の蓄電能力(例えば500kW)に基づいて蓄電する契約である。
【0104】
すなわち、蓄電権利トークンは、発電装置20の発電能力に基づいて蓄電池70が蓄電するとともに蓄電した電力の供給を受ける蓄電契約が存在することを証明するトークンであって、金銭的な価値を発揮する可能性があるトークンである。
【0105】
なお、この蓄電契約に基づいて需要家3が蓄電池70に蓄電することができる電力量(蓄電量)は、蓄電権利トークンを蓄電池70の蓄電能力で除した値に単位時間あたりの発電量を乗じた次式、
蓄電量=単位時間あたりの発電量×蓄電権利トークン/蓄電池の蓄電能力
によって算出され、例えば、
・単位時間あたりの発電量:800kWh
・蓄電権利トークン:500トークン
・蓄電池の蓄電能力:1000kW
であれば、蓄電量は、
800kWh×500トークン/1000kW=400kWh
であると算出される。
【0106】
さらに、換算処理部32は、電力情報管理部31で管理する情報に基づいて、任意のレートを基準として電力移動トークン及び後述する蓄電電力移動トークンを換算するものである。本実施の形態では、説明の容易化の観点から、1kWh=1トークンである場合を想定する。
【0107】
トークン管理部33は、本実施の形態では、換算処理部32で換算した権利トークン、蓄電権利トークン、電力移動トークン及び蓄電電力移動トークンのうち既に発行されたもの、あるいは今後発行される権利トークン、蓄電権利トークン、電力移動トークン及び蓄電電力移動トークンの数等を情報として管理するものである。
【0108】
蓄電権利トークン発行部34aは、本実施の形態では、トークン管理部33で管理される蓄電権利トークンに関する情報に基づいて、任意の需要者3に対して蓄電権利トークンを発行するものである(蓄電権利トークン発行処理)。
【0109】
蓄電電力移動トークン発行部35aは、本実施の形態では、トークン管理部33で管理される蓄電電力移動トークンに関する情報に基づいて、任意の需要者3に対して蓄電電力移動トークンを発行するものである(蓄電電力移動トークン発行処理)。
【0110】
トランザクション実行部36は、本実施の形態では、電力情報管理部31で管理する情報に基づいて、電力取引管理装置30から需要家3が受け取る権利トークン、蓄電権利トークン、電力移動トークン及び蓄電電力移動トークンを送信するトランザクションを実行するものである。
【0111】
送金処理部37は、本実施の形態では、単位時間あたりに供給される電力量が、電力供給を受ける契約で契約した発電能力に満たない場合、すなわち単位時間あたりで需要家3が消費した電力量が、需要家3が契約した発電能力に満たない場合に、その差分の電力量を換金して需要家3に送金する処理を実行するとともに、蓄電池70に蓄電した電力を、バランシンググループBGを介して売電した際に、その売却益を需要家3に送金する処理を実行する(送金処理)。
【0112】
この送金処理は、需要家3による売電に基づくものと把握することができる。
【0113】
次に、電力取引管理システム60の処理について説明する。
【0114】
図10は、電力取引管理システム60の処理の概略を説明するブロック図である。図示のように、発電装置20を管理する供給事業者1と需要家3との間で、バランシンググループBGを介在して電力供給を受ける契約が締結される。
【0115】
さらに、本実施の形態では、蓄電池70を管理する供給事業者1と需要家3との間で、発電装置20で発電した電力を、バランシンググループBGを介在して蓄電池70に蓄電する蓄電契約が締結される。
【0116】
なお、供給事業者1と複数の需要家3との間で電力供給を受ける契約が締結され、発電装置20がその発電能力に応じて複数の需要家3によって区分所有されるものであってもよいし、供給事業者1と複数の需要家3との間で蓄電契約が締結され、蓄電池70がその蓄電能力に応じて複数の需要家3によって区分所有されるものであってもよい。
【0117】
本実施の形態では、1000kWの発電能力を有する発電装置20に関して、供給事業者1と需要家3との間で500kWの電力供給を受ける契約が締結され、1000kWの蓄電能力を有する蓄電池70に関して、供給事業者1と需要家3との間で蓄電池70に500kWを蓄電する蓄電契約が締結される。
【0118】
これらの契約に基づいて、バランシンググループBGが需要家3の需要家端末50aに権利トークン(500トークン)を送信するとともに、蓄電権利トークン(500トークン)を送信する。
【0119】
需要家端末50に管理される権利トークン及び蓄電権利トークンは、本実施の形態では、STOを用いて取引することが可能である。
【0120】
このような場合において、例えば午後12時の電力取引の状況を想定すると、発電装置20の単位時間あたりの発電量が800kWhであるから、需要家3の午後12時の消費電力(400kWh)に応じて発電装置20から供給される電力は、
800kWh×500トークン/1000kW=400kWh
となり、この電力供給量に対応する電力移動トークン(400トークン)を需要家端末50に送信する。
【0121】
このとき、需要家3の権利トークン(500トークン)から電力移動トークン(400トークン)を減じた差分値は100トークンであって正であるから、差分値に対応する電力量(100kWh)を換金して需要家3に送金する。
【0122】
一方、午後12時に発電装置20から供給される電力が蓄電池70に蓄電される蓄電量は、
800kWh×500トークン/1000kW=400kWh
となり、この蓄電量に対応する蓄電電力移動トークン(400トークン)を需要家端末50に送信する。
【0123】
その後、例えば午後4時の電力取引の状況を想定すると、需要家3の午後4時の消費電力(300kWh)に応じて、蓄電池70から需要家3に300kWhの電力が供給され、この電力の供給量に対応する蓄電電力移動トークン(300トークン)を需要家端末50に送信する。
【0124】
このとき、蓄電池70には100kWhの電力が残余するから、需要家3は、蓄電池70に蓄電した電力を、バランシンググループBGを介して売電することができる。売電した場合、本実施の形態では、100kWhの電力を換金して売電した場合の売却益を需要家3に送金する。
【0125】
なお、蓄電池70に蓄電する時間、及び蓄電池70からの電力の供給を受ける時間は、例えば日照時間や時間帯による売電価格の相場の状況等に応じて、需要家3が任意に設定することができる。
【0126】
この設定は、例えば供給事業者1と需要家3との蓄電契約で予め設定することもできるし、需要家端末30のアプリケーションを介して需要家3が適宜設定することもできる。
【0127】
このように、再生可能エネルギーによる発電装置20からの電力を蓄電池70に蓄電する蓄電契約に対応する蓄電権利トークンが発行され、この蓄電権利トークンに基づいて算出される蓄電量に対応する蓄電電力移動トークンが発行されることから、発電装置20と蓄電池70との間の電力の取引がトークンと関連づけられる。
【0128】
したがって、再生可能エネルギーによる電力の取引を適切に管理することができることから、このような取引が活性化されて取引の市場の規模が拡大されることが期待される。
【0129】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0130】
上記各実施の形態では、電力取引管理装置30、80において電力の管理とトークンの処理とが共に実行される場合を説明したが、例えば、発電装置20を管理する供給事業者1が管理する任意の端末と電力取引管理装置30、80との間で分散処理されるように構成してもよい。
【0131】
例えば、電力の管理及びトランザクションの実行は電力取引管理装置30、80によって処理され、トークンの管理及び発行等は供給事業者1が管理する任意の端末で処理されるように構成してもよい。
【0132】
上記各実施の形態では、電力取引管理装置30、80が事業者1に管理されるコンピュータで実装される場合を説明したが、電力取引管理装置30、80はクラウド環境で実装されるコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 事業者
2 事業者
3 需要家
10、60 電力取引管理システム
20 発電装置
30、80 電力取引管理装置
40 配電設備
50 需要家端末
70 蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10