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特開2024-127630回転式推進装置または回転式発電装置および回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラ
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  • 特開-回転式推進装置または回転式発電装置および回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127630
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転式推進装置または回転式発電装置および回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラ
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/26 20060101AFI20240912BHJP
   F03B 3/12 20060101ALI20240912BHJP
   B63H 1/20 20060101ALI20240912BHJP
   B63H 1/15 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B63H1/26 D
F03B3/12
B63H1/20 C
B63H1/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036926
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110435
【氏名又は名称】ナカシマプロペラ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】下野 智史
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072BB05
3H072CC43
3H072CC94
(57)【要約】
【課題】中心部であるコア部材に異方性を持たせることにより、プロペラの力を受ける個所による変形挙動の差を調整することができる回転式推進装置または回転式発電装置を提供する。
【解決手段】ハブHと、ハブHに対して固定されると共に、ハブHからラジアル方向に延びる複数のブレードBと、を備えた回転式推進装置または回転式発電装置であって、各ブレードBは、中心部を構成するコア部材21と、コア部材21の周囲を覆うように形成される外表部材22と、で構成されており、コア部材21は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、当該ハブに対して固定されると共に、当該ハブからラジアル方向に延びる複数のブレードと、を備えた回転式推進装置または回転式発電装置であって、
前記各ブレードは、中心部を構成するコア部材と、前記コア部材の周囲を覆うように形成される外表部材と、で構成されており、
前記コア部材は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有する
ことを特徴とする回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項2】
前記コア部材は、内部に空隙を有する構造で形成され、
当該空隙の存在の不均一性により、前記コア部材は異方性を有する
こと特徴とする請求項1に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項3】
前記コア部材は金属で形成され、
当該金属を用いた線または面を連結することで空隙を有する構造を形成した
ことを特徴とする請求項2に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項4】
前記外表部材は、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料で形成され、
前記樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料は前記コア部材を形成する金属より弾性率が低い
ことを特徴とする請求項3に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項5】
前記外表部材とコア部材の厚さの割合が場所によって変化する
ことを特徴とする請求項4に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項6】
前記コア部材の空隙に樹脂が充填されている
ことを特徴とする請求項2に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項7】
前記コア部材はCFRPで形成され、
前記コア部材を形成するCFRPの炭素繊維は異方性を有するように配向される
ことを特徴とする請求項1に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項8】
前記外表部材は、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料で形成され、
前記樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料は前記コア部材を形成するCFRPより弾性率が低い、
ことを特徴とする請求項7に記載の回転式推進装置または回転式発電装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載した回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式推進装置または回転式発電装置および回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数枚のブレードと、ブレードを支持するとともに回転軸からの、または回転軸への出力を伝達するハブとを備えた回転体が知られている。主に飛行機用や舶用に用いられる回転体は、プロペラであり、回転軸からの出力を、ハブを介してブレードへ伝達し、推進力へと変換するものである。また、発電用に用いられる回転体は、水車もしくは風車であり、潮流若しくは気流などの流体によってブレードを回転させることで発生するエネルギーを、ハブを介して回転軸に伝達して、タービンを駆動することで機械的動力に変換するものである。
【0003】
回転式推進装置および回転式発電装置に用いられる複数枚のブレードの一例として、格子ブロック材料を使用するプロペラ又はプロペラ翼が公知となっている(例えば特許文献1参照)。前記プロペラ又はプロペラ翼は、軽量化および制振性の向上を目的として提供されており、プロペラの中空内部を軽量の樹脂で充填し、プロペラの重量増加を抑制しつつ振動を減衰させるものである。
【0004】
従来技術においては、その中心部に芯材となるコア部材を有している。コア部材は、エポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂に軽量バルーンやガラスビーズを含有させた樹脂組成物、フォーム材、ハニカム材などにより構成されており、単一もしくは複数の素材で構成されていた。しかしながら、変形を制御するだけの異方性を得るには、中心部におけるコア部材にも異方性が求められていた。また、従来技術に記載のブレードであるプロペラ又はプロペラ翼は、外表皮が金属であるため、所定以上の厚さを有する必要があり、変形を制御するだけの異方性を得るには至らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第07144222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、中心部であるコア部材に異方性を持たせることにより、プロペラの力を受ける個所による変形挙動の差を調整することができる回転式推進装置または回転式発電装置および回転式推進装置または回転式発電装置を用いた船舶用プロペラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明の回転式推進装置または回転式発電装置は、
ハブと、当該ハブに対して固定されると共に、当該ハブからラジアル方向に延びる複数のブレードと、を備えた回転式推進装置または回転式発電装置であって、
前記各ブレードは、中心部を構成するコア部材と、前記コア部材の周囲を覆うように形成される外表部材と、で構成されており、
前記コア部材は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有するものである。
【0008】
第二の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、
前記コア部材は、内部に空隙を有する構造で形成され、
当該空隙の存在の不均一性により、前記コア部材は異方性を有するものである。
【0009】
第三の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、
前記コア部材は金属で形成され、
当該金属を用いた線または面を連結することで空隙を有する構造を形成したものである。
【0010】
第四の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、前記外表部材は、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料で形成され、
前記樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料は前記コア部材を形成する金属より弾性率が低いものである。
【0011】
第五の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、
前記外表部材とコア部材の厚さの割合が場所によって変化するものである。
【0012】
第六の発明の回転式推進装置または回転式発電装置は、
前記コア部材の空隙に樹脂が充填されているものである。
【0013】
第七の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、
前記コア部材はCFRPで形成され、
前記コア部材を形成するCFRPの炭素繊維は異方性を有するように配向されるものである。
【0014】
第八の発明の回転式推進装置または回転式発電装置において、
前記外表部材は、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料で形成され、
前記樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料は前記コア部材を形成するCFRPより弾性率が低いものである。
【0015】
第八の発明の船舶用プロペラにおいて、請求項1から8のいずれか一項に記載した回転式推進装置または回転式発電装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0016】
第一の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、中心部であるコア部材に異方性を持たせることにより、ブレードの力を受ける個所による変形挙動の差を調整することができることが可能となる。
【0017】
第二の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、コア部材が、内部に空隙を有する構造で形成されることにより、中実構造で形成される場合に比して、剛性を下げることができる。また、異方性を与えることができる。
【0018】
第三の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、コア部材が金属で形成されることにより、複合材料や樹脂のみでブレードを成形した場合と比較して剛性に優れたブレードを作成することができる。また、空隙を有する構造が、線または面の連結により形成されていることにより、3Dプリンタによる三次元モデリングが容易となる。
【0019】
第四の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、コア部材が剛性および異方性を備えているため、外表部材の素材については、樹脂、繊維フィラー入り樹脂、繊維複合材料などのコア部材の金属より弾性率が低いもので形成することが可能となる。したがって、ブレードの流体機能を発揮するために必要な形状を形成しやすくなる。
【0020】
第五の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、流体設計で決定される船舶用ブレードの外形形状に対して、剛性の高いコア部材と剛性の低い外表部材の厚さの割合を場所によって変えることで剛性を変化させることができ、コア部材の空隙構造や金属材料弾性率の選択以上に、変形挙動の差を大きくする、もしくは小さく設計することが可能となる。
【0021】
第六の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、充填する樹脂に機能性を持たせる、例えば、充填する樹脂として減衰性の高い素材を使用することにより、減衰特性に優れたブレードを作成することができる。
【0022】
第七の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、コア部材がCFRPで形成されることにより、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料のみでブレードを成形した場合と比較して剛性に優れたブレードを作成することができる。
【0023】
第八の発明に係る回転式推進装置または回転式発電装置は、コア部材が剛性および異方性を備えているため、外表部材の素材については、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料樹脂などの骨格より弾性率が低いもので形成することが可能となる。したがって、ブレードの流体機能を発揮するために必要な形状を形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る回転式推進装置を示す正面図。
図2】本発明の一実施形態に係るブレードを示すA-A線断面図。
図3】本発明の一実施形態に係るブレードのコア部材をしめす斜視概略図。
図4】本発明の一実施形態に係る回転式発電装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の本発明の実施形態の説明は、好適な実施形態の一例であり、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、回転式推進装置1の一例を示す図である。回転式推進装置1は、ブレードBの回転によって紙面に直交する方向へ液流もしくは気流を発生させることで、軸方向奥側へ向けて推進力を発生させる装置であり、船舶用プロペラ11と、船舶用プロペラ11を回転駆動させる駆動装置5とを備えている。
【0027】
船舶用プロペラ11は、図1においては紙面に直交する回転中心軸回りに回転可能なハブHと、ハブHに対して回転一体に固定された複数の(図例では3枚の)ブレードBと、を備えて構成されている。3枚のブレードBは、周方向に等間隔を空けて配設されていると共に、各ブレードBは、ハブHから径方向の外方に向かってラジアル方向に延びるように配設されている。尚、ブレードBの枚数及び各ブレードBの平面形状は、特に限定されるものではない。
【0028】
図2は、ブレードBの横断面を示している。ブレードBは、中心部を構成するコア部材21と、コア部材21の周囲を覆うように形成される外表部材22と、で構成されている。
コア部材21は、ブレードBの中空部分を充填し、それによってブレードBの横断面形状を保持する機能を有する。コア部材21は、少なくとも二つ以上の領域に分割され、本実施形態においては、第一コア21a、第二コア21b、第三コア21c、第四コア21dによって、概略翼型形状が構成されることになる。
【0029】
コア部材21は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有する。すなわち、第一コア21a、第二コア21b、第三コア21c、第四コア21dはそれぞれが異なる異方性をもって形成されている。
【0030】
根元部分に設けられた第一コア21aは、回転方向に対して前面と側面との交線端(リーディングエッジ)方向に異方性の方向が向くように配置している。また、先端部分に設けられた第四コア21dは、回転方向に対して後面と側面との交線端(トレーリングエッジ)方向に異方性の方向が向くように配置している。また、第二コア21b、第三コア21cは、第一コア21aおよび第四コア21dと異方性の方向が異なるように、および、ブレードBの根本側から先端側へ向かうにつれて徐々に異方性の方向が、トレーリングエッジ方向へ向かうように、配置している。
【0031】
なお、異方性の方向については、上記構造に限定されるものではなく、例えば、第一コア21a、第四コア21dの異方性の方向を揃えて、第二コア21b、第三コア21cの異方性の方向が異なるように構成してもよい。
【0032】
コア部材21は内部に空隙を有する構造で形成される。例えば、コア部材21は、金属を用いた線または面を連結することで空隙を有する構造を形成している。コア部材21は、ラティス構造、ジャイロイド構造、トラス構造等を有することにより、空隙を形成する。
【0033】
ラティス構造を有するコア部材21は、金属3Dプリンタによって形成される。3D金属プリンタに用いることのできる素材として、アルミニウム、ステンレス、マルエージング鋼、チタン、ニッケル合金、銅合金などがある。
【0034】
ラティス構造は、枝状に分岐した格子が周期的に並んだ構造であり、格子の形状特性に基づいて、空隙の配置を変更し、ポアソン比や負の屈折率などを人工的に構成することができる。空隙の存在の不均一性により、コア部材21は異方性を有する。ジャイロイド構造は、周期極小曲面を連続させた構造であり、XYZの3方向に無限に連結された三次元形状である。ジャイロイド構造の利点は、軽量化だけでなく、単位立方体あたりの表面積を大きくできる点と、応力集中を防げる点にある。トラス構造は、三角形の集合体で平面充填されている形状であり、強度が高い構造である。空隙を設けることで軽量化を図ることができ、空隙の存在の不均一性により、コア部材21は異方性を有する。
【0035】
外表部材22は、コア部材21の周囲を被覆する部材であり、コア部材21よりも弾性率が低い素材で形成されている。
【0036】
外表部材22は、樹脂、繊維フィラー入り樹脂、繊維複合材料などのコア部材21の金属より弾性率が低いもので形成されている。樹脂フィラーとは、軽量化に用いられる添加樹脂であり、例えば、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーンなどが採用される。樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料はコア部材21を形成する金属より弾性率が低い。
【0037】
外表部材22は、ブレードBの外形形状を形成する部分である。コア部材21を中心として樹脂を射出成形することによりブレードBの外形形状を所望の形にすることができる。外表部材22を形成する素材としては、コア部材21より弾性率が低いものが望ましく、形状を維持するのに必要な弾性率を有していればよい。
【0038】
樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料は、コア部材21を形成する金属より弾性率が低いので、ブレードBの流体機能を発揮するために必要な形状を形成しつつ、弾性が低いブレードBを構成することができる。なお、外表部材22の成型方法は射出成形に限定するものではなく、注型成形や塗布により成形することも可能である。
【0039】
外表部材22とコア部材21の厚さの割合は、場所によって変化する。例えば、流体設計で決定される船舶用のブレードBの外形形状に対して、剛性の高いコア部材21と剛性の低い外表部材22の厚さの割合を場所によって変えることで剛性を変化させることができる。剛性の高いコア部材21の厚さの方が厚くなると、当該断面における剛性が高くなるため、耐変形性が向上する。ブレードBの根元部分における断面においては、剛性の高いコア部材21の厚さの方が厚いほうがよい。
【0040】
またブレードBのその他の部分においては、剛性の低い外表部材22の厚さを厚くすることができる。このように、局所的に厚みを変更することが可能となるため、翼断面を所望の形状に変形させてキャビテーションを抑制することができる。例えば、航空機におけるモーフィング翼のように、翼の形状を連続的に変形させた一体構造を構成することができる。
【0041】
以上のように、ハブHと、ハブHに対して固定されると共に、ハブHからラジアル方向に延びる複数のブレードBと、を備えた回転式推進装置または回転式発電装置であって、各ブレードBは、中心部を構成するコア部材21と、コア部材21の周囲を覆うように形成される外表部材22と、で構成されており、コア部材21は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有するものである。
このように構成することにより、中心部であるコア部材21に異方性を持たせることにより、ブレードBの力を受ける個所による変形挙動の差を調整することができることが可能となる。
【0042】
また、コア部材21は、内部に空隙を有する構造で形成され、空隙の存在の不均一性により、コア部材21は異方性を有する。
このように構成することにより、コア部材21が、内部に空隙を有する構造で形成されることにより、中実構造で形成される場合に比して、剛性を下げることができる。また、空隙の割合を変化させることにより、コア部材21の異方性を調整することができる。
【0043】
例えば、異方性を下記の通り定義する。プロペラの回転軸をZ軸とし、ブレードの半径方向にX軸、残りのY軸をX軸、Z軸に直交するものと定義する。
X軸方向に沿ったブレードの弾性率Exと、Y軸方向に沿った弾性率Eyの比が、2:1以上、好ましくは3:1以上、より好ましくは4:1以上となる。弾性率の差が大きいほど、制振性等の作用効果も大きくなる。ただし、弾性率の比率が大きくなりすぎると、Y軸方向に沿った弾性率Eyを小さくする必要があり、Y軸方向に沿った弾性率Eyが必要以上に小さくなった場合は、強度面への悪影響が発生するおそれがある。そのため、弾性率の比率は、5:1以下が好ましい。
また、X軸から45deg回転した方向の弾性率をExyとすると、ExとExyの比、またはEyとExyの比が5:1以上となるのが好ましい。
また、望みの変形を得るために局所的にX軸をZ軸周りに回転させて異方性の方向を変更することができる。
【0044】
また、コア部材21は金属で形成され、金属を用いた線または面を連結することで空隙を有する構造を形成したものである。
このように構成することにより、コア部材21が金属で形成されることにより、複合材料や樹脂のみでブレードBを成形した場合と比較して剛性に優れたブレードBを作成することができる。また、空隙を有する構造が、線または面の連結により形成されていることにより、3D金属プリンタによる三次元モデリングが容易となる。
【0045】
また、外表部材22は、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料で形成され、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料はコア部材21を形成する金属より弾性率が低いものである。
このように構成することにより、コア部材21が剛性および異方性を備えているため、外表部材22の素材については、樹脂、繊維フィラー入り樹脂、繊維複合材料などのコア部材21の金属より弾性率が低いもので形成することが可能となる。したがって、ブレードBの流体機能を発揮するために必要な形状を形成しやすくなる。
【0046】
また、外表部材22とコア部材21の厚さの割合が場所によって変化するものである。
このように構成することにより、流体設計で決定される船舶用のブレードBの外形形状に対して、剛性の高いコア部材21と剛性の低い外表部材22の厚さの割合を場所によって変えることで剛性を変化させることができ、コア部材21の空隙構造や金属材料弾性率の選択以上に、変形挙動の差を大きくする、もしくは小さく設計することが可能となる。
【0047】
また、コア部材21の空隙に樹脂が充填されているものである。
このように構成することにより、充填する樹脂に機能性を持たせる、例えば、充填する樹脂として、減衰性の高い素材を使用することにより、減衰特性に優れたブレードBを作成することができる。
【0048】
また、別の実施形態においては、コア部材21は、CFRPで形成され、コア部材21を形成するCFRPの炭素繊維は異方性を有するように配向される。CFRPは、異方性を持つプリプレグを重ね合わせる(積層させる)ことにより、異なるヤング率やポアソン比を持つ材料を形成する。これにより、コア部材21は異方性を有する。
なお、本実施形態においては、CFRPは、積層して異方性を有するように配向されているが、これに限定されるものではなく、例えば、平織り、綾織り等の織り構造において、その厚み方向にも繊維を補強した三次元織物構造としてもよい。
【0049】
また、コア部材21はCFRPで形成され、コア部材21を形成するCFRPの炭素繊維は異方性を有するように配向されるものである。
このように構成することにより、コア部材21がCFRPで形成されることにより、樹脂、または繊維フィラー入り樹脂、または繊維複合材料のみでブレードBを成形した場合と比較して剛性に優れたブレードBを作成することができる。
【0050】
また、図4は、回転式発電装置101の一例を示す図である。回転式発電装置101は、例えば潮流によってタービン105を回転させることにより発電する潮流発電装置である。回転式発電装置101は、主に数十~100kW級の発電量の発電装置であり、タービン105の直径が数mに設定されている。タービン105に直結された水車111は、タービン軸105aに固定されたハブHと、当該ハブHに対して固定されると共に、当該ハブHからラジアル方向に延びる複数のブレードBと、を備える。
【0051】
3枚のブレードBは、周方向に等間隔を空けて配設されていると共に、各ブレードBは、ハブHから径方向の外方に向かってラジアル方向に延びるように配設されている。尚、ブレードBの枚数及び各ブレードBの平面形状は、特に限定されるものではない。回転式発電装置101は、紙面に直交する方向から流れる潮流によって、ブレードBを回転させることで、ハブHと連結するタービン軸105aを回転させて発電する装置である。
【0052】
ブレードBは、第一実施形態に記載さ入れたブレードBと同様の構成である。図2は、ブレードBの横断面を示している。ブレードBは、中心部を構成するコア部材21と、コア部材21の周囲を覆うように形成される外表部材22と、で構成されている。
【0053】
コア部材21は、ブレードBの中空部分を充填し、それによってブレードBの横断面形状を保持する機能を有する。コア部材21は、少なくとも二つ以上の領域に分割され、本実施形態においては、第一コア21a、第二コア21b、第三コア21c、第四コア21dによって、概略翼型形状が構成されることになる。
【0054】
コア部材21は、方向ごとに弾性率が異なる異方性を有する。すなわち、第一コア21a、第二コア21b、第三コア21c、第四コア21dはそれぞれが異なる異方性をもって形成されている。
【0055】
根元部分に設けられた第一コア21aは、回転方向に対して前面と側面との交線端(リーディングエッジ)方向に異方性の方向が向くように配置している。また、先端部分に設けられた第四コア21dは、回転方向に対して後面と側面との交線端(トレーリングエッジ)方向に異方性の方向が向くように配置している。また、第二コア21b、第三コア21cは、第一コア21aおよび第四コア21dと異方性の方向が異なるように、および、ブレードBの根本側から先端側へ向かうにつれて徐々に異方性の方向が、トレーリングエッジ方向へ向かうように、配置している。
【0056】
このように構成することにより、中心部であるコア部材21に異方性を持たせることにより、ブレードBの力を受ける個所による変形挙動の差を調整することができることが可能となる。回転式発電装置101に用いられるブレードBは、前後方向の潮流を受けるため、力を受ける個所が前後面どちらにも存在する。したがって、回転式発電装置101のブレードBは、四つ以上の領域に分割されるのが好ましい。
【0057】
なお、回転式発電装置は、潮流発電装置に限定するものではなく、例えば、風を受けて回転する風車を備えた風力発電装置であってもよい。また、回転式発電装置は、船舶に搭載されて、船舶の推進に伴う水流を受けて回転する水車を備えた小型発電装置であってもよい。また、回転式発電装置は、水道施設や管水路に設置し、管内の水流を受けて回転する水車を備えたマイクロ水力発電装置であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
B ブレード
H ハブ
1 回転式推進装置
5 駆動装置
11 船舶用プロペラ
21 コア部材
22 外表部材
101 回転式発電装置
105 タービン
111 水車
図1
図2
図3
図4