(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127633
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】周波数処理装置および無線機
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20240912BHJP
【FI】
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036932
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】足立 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】北畑 雅規
(72)【発明者】
【氏名】垣内 大樹
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA27
5K011EA01
5K011HA01
(57)【要約】
【課題】所定ビット数のデジタル値で表すことができる範囲を超える周波数を所定ビット数のデジタル値として扱えるようにする。
【解決手段】無線機(1)は、デジタル値によって表される無線通信のための周波数を、所定のビット数の最大値以下の範囲に収まるように、複数に区分された周波数帯ごとに設定された規定値を減算した値に変換する変換部(104)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル値によって表される無線通信のための周波数を、所定のビット数の最大値以下の範囲に収まるように、複数に区分された周波数帯ごとに設定された規定値を減算した値に変換する変換部を備える、周波数処理装置。
【請求項2】
前記変換部は、前記規定値が設定された前記周波数帯の前記周波数を変換する一方、前記規定値が設定されていない前記周波数帯の前記周波数を変換せず、変換した前記周波数に、変換時に減算した前記規定値を加算することにより元の値に復元する、請求項1に記載の周波数処理装置。
【請求項3】
前記変換部は、すべての前記周波数を変換する一方、前記周波数に変換時に減算された前記規定値を加算することにより元の値に復元する、請求項1に記載の周波数処理装置。
【請求項4】
前記デジタル値は、符号ありのデジタル値である、請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数処理装置。
【請求項5】
前記周波数は、アマチュア無線の周波数帯に属する、請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の周波数処理装置を備える、無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル値の周波数を扱いやすい形態で処理する周波数処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機においては、デジタル化が進んでおり、各種の値をデジタルに変換して処理を行うことが一般に行われている。このような無線機において、周波数についても、デジタル値で扱われることにより、各種の処理が施される。例えば、特許文献1には、周波数設定をバイナリコードで行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタル値は、ビット数に応じて表現できる最大値が決まっている。例えば、32ビット符号なし整数型の場合、0~4,294,967,295Hzの範囲で周波数をデジタル値として表すことができる。また、32ビット符号あり整数型の場合、-2,147,483,648Hz~+2,147,483,647Hzの範囲で周波数をデジタル値として表すことができる。このような32ビットのデジタル値は、32ビットCPUで問題なく扱うことができる。
【0005】
しかしながら、無線機で扱う周波数が、デジタル値で表すことができる範囲を超える場合、通常の処理を行うことが困難になる。例えば、32ビットCPUを搭載する無線機において、上記の範囲の上限値を超える10GHzのような高い周波数を扱う場合、4バイト変数(32ビット)よりも大きいサイズの8バイト変数(64ビット)で周波数を表す必要がある。
【0006】
このため、演算処理を行うメインメモリの使用量および周波数を記憶するための記憶メモリの使用量が増大する結果、周波数の演算処理に長い時間を要する。また、周波数データが、8バイト変数で周波数を表す場合、周波数の値がメインメモリ上において8バイトアライメントで配置されることにより、パディングの量が増大する。この結果、さらにメインメモリの使用量が増大してしまう。
【0007】
また、扱う周波数がデジタル値で表すことができる範囲を超えない無線機を動作させるソフトウェアを、扱う周波数が上記の範囲を超える無線機に移植する場合、デジタル値の変数サイズを変更するための作業が必要になる。しかも、その作業は膨大である。
【0008】
本発明の一態様は、所定ビット数のデジタル値で表すことができる範囲を超える周波数を所定ビット数のデジタル値として扱えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る周波数処理装置は、デジタル値によって表される無線通信のための周波数を、所定のビット数の最大値以下の範囲に収まるように、複数に区分された周波数帯ごとに設定された規定値を減算した値に変換する変換部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、所定ビット数のデジタル値で表すことができる範囲を超える周波数を所定ビット数のデジタル値として扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】上記無線機のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】32ビットで表される周波数の周波数帯ごとの各種情報を示す図である。
【
図4】上記無線機の制御部による周波数を変換する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】上記無線機の制御部による変換された周波数を元の値に変換する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0013】
〈無線機のハードウェア構成〉
図1は、本実施形態に係る無線機1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、無線機1は、送信部2と、受信部3と、送受信切替回路4と、アンテナ5と、表示部6と、操作部7と、PTTスイッチ(Push To Talk)8と、メインメモリ9と、記憶メモリ10と、CPU11(周波数処理装置)とを備えている。無線機1は、例えば、アマチュア無線で音声信号の送受信に使用できる周波数帯の周波数が設定可能であり、アマチュア無線機として使用することができる。
【0015】
送信部2は、入力された音声を送信信号に変換する送信処理を行う。送信部2は、送信処理を行うために、マイク21と、A/D変換器22と、変調部23と、D/A変換器24と、BPF(Band Pass Filter)25と、ALC(Automatic Level Control)回路26と、電力増幅器27とを有している。
図1において、マイク21はMICと示され、A/D変換器22はA/Dと示され、D/A変換器24はD/Aと示され、ALC回路26はALCと示され、電力増幅器27はPAと示される。なお、図示を省略しているが、送信部2は、周波数変換のためのミキサを有している。
【0016】
送信部2において、マイク21から出力される音声信号は、A/D変換器22によってデジタル信号に変換された後、変調部23によって所定の変調方式で変調信号に変調される。変調信号は、D/A変換器24によってアナログ信号に変換された後、BPF25によって所定の帯域のみが通過する。BPF25を経た変調信号は、ALC回路26によって、電力増幅器27への入力レベルが制限される。ALC回路26を経た変調信号の電力は、電力増幅器27によって通信に必要な大きさの電力に増幅される。
【0017】
送信部2から出力された送信信号は、送受信切替回路4を介してアンテナ5に出力される。アンテナ5は、入力された送信信号を電波として放射する。一方、アンテナ5は、電波として受信した受信信号を送受信切替回路4に出力する。この受信信号は、送受信切替回路4を介して受信部3に入力される。
【0018】
送受信切替回路4は、送信部2およびアンテナ5の接続と、受信部3およびアンテナ5との接続を切り替える回路である。送受信切替回路4は、半導体スイッチ、リレーなどを含んで構成されている。
【0019】
受信部3は、受信された受信信号を音声に変換する受信処理を行う。受信部3は、受信処理を行うために、BPF(Band Pass Filter)31と、A/D変換器32と、復調部33と、D/A変換器34と、スピーカ35とを有している。
図1において、A/D変換器32はA/Dと示され、D/A変換器34はD/Aと示され、スピーカ35はSPと示される。なお、図示を省略しているが、受信部3は、周波数変換のためのミキサを有している。
【0020】
受信部3において、入力された受信信号は、BPF31によって帯域が制限されて、A/D変換器32によってデジタル信号に変換された後、復調部33によって所定の復調方式で音声信号に復調される。復調部33からの音声信号は、D/A変換器34によってアナログ信号に変換され、スピーカ35に入力される。スピーカ35からは、入力信号に応じた音声が出力される。
【0021】
なお、上述した送信部2および受信部3の構成は、あくまでも一例であって、当該構成に限定されるものではない。例えば、送信部2におけるBPF25およびALC回路26は入れ替えて配置されていてもよい。
【0022】
表示部6は、CPU11によって作成された各種の情報を可視化するために表示する。操作部7は、操作のための各種のキー、ツマミ、ダイヤル、タッチパネル等を有しており、これらの操作を受け付け、操作に応じた操作信号をCPU11に出力する。
【0023】
PTTスイッチ8は、送信部2による送信時に操作されるスイッチである。PTTスイッチ8が操作されないときには、受信部3による受信が行われる。
【0024】
メインメモリ9は、演算等の各種の作業を行うために用いられるメモリである。メインメモリ9は、例えばRAM(Random Access Memory)によって構成されている。
【0025】
記憶メモリ10は、演算結果、ファームウェア等の記憶すべきデータを記憶するメモリである。記憶メモリ10は、読み書き可能な不揮発性のメモリ、例えば、EEPROM(登録商標)(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)によって構成されている。
【0026】
特に、記憶メモリ10は、例えば、アマチュア無線で使用可能である複数に区分された所定の周波数帯ごとの情報を記憶している。記憶メモリ10は、このような情報として、アマチュアバンドの情報、後述する変換部104による変換に用いられる規定値等を記憶している。また、記憶メモリ10は、後述する変換部104によって変換された周波数を対応する周波数帯ごとに記憶する。
【0027】
CPU11は、上記のファームウェアにしたがって、無線機1の制御対象となる各部を制御する制御装置である。具体的には、CPU11は、PTTスイッチ8からの操作信号に基づいて送受信切替回路4の切り替え動作を制御すること、表示部6の表示を制御することなどを行う。また、CPU11は、ユーザによって設定された周波数に所定の処理を行うこと、後述する周波数を変換することなども行う。
【0028】
ここで、無線機1において、メインメモリ9、記憶メモリ10、CPU11等を含むコンピュータアーキテクチャは、一例として32ビットアーキテクチャであるとする。すなわち、当該コンピュータアーキテクチャは、整数型、メモリアドレス、データサイズ等が、最大32ビット幅のアーキテクチャである。なお、無線機1におけるシステムアーキテクチャが32ビットアーキテクチャに限定されないのは勿論である。
【0029】
〈無線機のシステム構成〉
図2は、無線機1のシステム構成を示すブロック図である。
図3は、32ビットで表される周波数の周波数帯ごとの各種情報を示す図である。
【0030】
図2に示すように、無線機1は、制御部101を備えることにより、周波数処理装置として機能する。制御部101は、CPU11が上記のファームウェアとして提供される制御プログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。制御部101は、変復調制御部102と、周波数処理部103とを有している。
【0031】
変復調制御部102は、周波数処理部103から受けた送信周波数を変調部23に与えるとともに、周波数処理部103から受けた受信周波数を復調部33に与える。変調部23は、変復調制御部102からの送信周波数に基づいて変調処理を行う。また、復調部33は、受信信号のうち、変復調制御部102からの受信周波数の受信信号に復調処理を行う。
【0032】
周波数処理部103は、周波数を所定のビット数(ここでは32ビット)のデジタル値によって表される形態で以下の処理を行う。周波数処理部103は、操作部7へのユーザの操作によって設定された、無線通信のための周波数である送信周波数および受信周波数を、変復調制御部102に与えるとともに、表示部6に表示させる。具体的には、周波数処理部103は、後述するように、変換部104によって必要に応じて低い周波数に変換された送信周波数および受信周波数を変復調制御部102に与える。また、周波数処理部103は、低い周波数に変換された送信周波数および受信周波数を変換前の周波数に復元して、表示部6に表示させる。その他、周波数処理部103は、メインメモリ9を作業領域として利用して、送信周波数および受信周波数に各種の演算処理を行う。
【0033】
周波数処理部103は、上記のようにユーザによって設定された送信周波数および受信周波数(以降、適宜「設定周波数」と称する)が記憶メモリ10に記憶されている規定の範囲を超えると、警告を表示部6に表示させる。周波数処理部103は、設定周波数が規定の範囲を超えているか否かを、上記の演算処理の一つとして、電波法の規定に基づいたアマチュアバンドの周波数範囲の上下限値と、設定周波数との比較により判定する。上記の周波数範囲の上下限値は、周波数処理部103により予め低い周波数に変換された値として記憶メモリ10に記憶されている。
【0034】
また、周波数処理部103は、周波数の加減算処理を変換後の低い周波数で行う。そのような加減算処理としては、例えば、送信周波数を一定量シフトするためのΔTX周波数を送信周波数に加算する処理が挙げられる。
【0035】
周波数処理部103は、変換部104を有している。変換部104は、操作部7からの無線通信のための設定周波数を受け入れ、当該設定周波数が、
図3に示す複数の取扱周波数範囲Aのうちのいずれに属するかを判定する。取扱周波数範囲Aは、無線機1で取り扱う周波数であり、対応するアマチュアバンドよりも広く設定されている。
【0036】
変換部104は、設定周波数が属する取扱周波数範囲Aの判定結果に基づいて、デジタル値によって表される設定周波数のうち、所定のビット数のデジタル値で表現可能な最大値を超える当該設定周波数を低い周波数に変換する。具体的には、変換部104は、当該設定周波数を記憶メモリ10に記憶されている規定値を減算した値に変換して、記憶メモリ10に記憶させる。減算に用いられる規定値は、設定周波数が属する周波数帯について設定された値である。
【0037】
変換部104は、設定周波数が変換不要な取扱周波数範囲Aに属するという判定結果に基づいて、当該設定周波数から規定値を減算せずに、当該設定周波数の変換を行わない。変換部104は、変換しなかった設定周波数をそのまま記憶メモリ10に記憶させる。
【0038】
ここで、記憶メモリ10は、
図3に示すように、周波数帯ごとに、変換周波数範囲Cを記憶している。周波数帯としては、無線機1が設定可能なHF帯、VHF帯、UHF帯、1.2GHz帯、2.4GHz帯、5.6GHz帯および10GHz帯が設けられている。変換周波数範囲Cは、32ビット符号あり整数型で表される値である。変換周波数範囲Cは、取扱周波数範囲Aから対応する規定値Bが減算された周波数範囲である。また、記憶メモリ10は、取扱周波数範囲Aおよび規定値Bが32ビットには収まらない値を含むため、32ビットを超えるサイズ(例えば64ビット)で記憶する。
【0039】
また、規定値Bは、設定周波数から規定値Bが減算された値が、上記の最大値以下の範囲に収まるように設定されている。これにより、変換部104は、設定周波数を当該最大値以下の範囲に収まるように変換することができる。
【0040】
変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている設定周波数が規定値Bの設定されている周波数帯に属する場合、当該設定周波数に当該周波数帯について設定されている規定値Bを加算して逆変換すなわち復元する。一方、変換部104は、設定周波数が規定値Bの設定されていない周波数帯に属する場合、規定値Bを加算しない。
【0041】
〈制御部による周波数変換処理〉
図4は、制御部101による周波数を変換する処理の手順を示すフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、まず、変換部104は、操作部7からユーザの操作によって設定された周波数を設定周波数として取得する(ステップS1)。次いで、変換部104は、取得した周波数が
図3に示す取扱周波数範囲A内にあるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において、変換部104は、取得した周波数が取扱周波数範囲A内にあると判定すると(YES)、当該周波数が変換の必要な周波数であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
ステップS3において、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている各周波数帯を参照することにより、取得した周波数が属する周波数帯を特定する。そして、変換部104は、特定した周波数帯に規定値Bが設定されているか否かに基づいて、取得した周波数が変換の必要な周波数であるか否かを判定する。
【0044】
ここで、
図3に示す、HF帯およびVHF帯の周波数帯については、便宜上“0”の規定値Bが設定されているが、“0”は規定値Bが設定されていないことと同義とする。
【0045】
ステップS3において、変換部104は、取得した周波数が変換の必要な周波数であると判定すると(YES)、判定した周波数から規定値Bを減算して低い周波数に変換する(ステップS4)。次いで、変換部104は、変換した周波数を記憶メモリ10に記憶させる(ステップS5)。
【0046】
例えば、取得した周波数が5.65GHzである場合、変換部104は、
図3に示す周波数帯を参照することにより、当該周波数が5.6GHz帯に属することを特定する。そして、変換部104は、当該周波数帯に規定値Bとして4,687,000,000(Hz)が設定されていることに基づいて、5.65GHzが変更の必要な周波数であると判定する。すると、変換部104は、上記の規定値Bを減算することにより、当該周波数を963,000,000(Hz)に変換する。この変換後の周波数は、上記の最大値より低い値である。
【0047】
ここで、取扱周波数範囲Aおよび規定値Bが64ビットで記憶メモリ10において記憶されている場合、ステップS2~S4の処理は64ビットで行われる。
【0048】
一方、ステップS3において、変換部104は、取得した周波数が変換の必要な周波数でないと判定すると(NO)、処理をステップS5に移行する。ステップS5において、変換部104は、変換していない周波数を記憶メモリ10に記憶させる。
【0049】
そして、周波数処理部103は、記憶メモリ10に記憶されている周波数を取得して、当該周波数に対する所定の処理を行い(ステップS6)、処理を終える。ステップS6において、周波数処理部103は、記憶メモリ10に記憶されている周波数を読み出して、各種の処理を行う。例えば、ステップS6において、周波数処理部103は、上述したような、設定周波数が規定の範囲を超えているか否かをアマチュアバンドの周波数範囲の上下限値と設定周波数との比較により判定すること、周波数の加減算処理を変換後の低い周波数で行うことなど実行する。
【0050】
また、ステップS2において、変換部104は、取得した周波数が取扱周波数範囲A内にないと判定すると(NO)、エラー処理を行って(ステップS7)、処理を終える。これにより、取扱周波数範囲A外の周波数は、周波数処理部103による処理の対象から除外される。
【0051】
〈制御部による周波数の復元処理〉
図5は、制御部101による変換された周波数を元の値に変換する処理の手順を示すフローチャートである。
【0052】
図5に示すように、まず、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている周波数を読み出して取得する(ステップS11)。次いで、変換部104は、取得した周波数が変換された周波数であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0053】
ステップS12において、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている変換周波数範囲Cを参照することにより、取得した周波数が属する周波数帯を特定する。そして、変換部104は、特定した周波数帯に規定値Bが設定されているか否かに基づいて、取得した周波数が変換された周波数であるか否かを判定する。
【0054】
ステップS12において、変換部104は、取得した周波数が変換された周波数であると判定すると(YES)、当該周波数の変換時において減算に用いられた規定値Bを当該周波数に加算して復元する(ステップS13)。
【0055】
例えば、記憶メモリ10から取得した周波数が963,000,000(Hz)である場合、変換部104は、変換周波数範囲Cを参照することにより、当該周波数が5.6GHz帯の変換周波数範囲Cの範囲内にあることから、5.6GHz帯に属することを特定する。そして、変換部104は、当該周波数帯に規定値Bとして4,687,000,000(Hz)が設定されていることに基づいて、当該周波数が変換された周波数であると判定する。すると、変換部104は、上記の963,000,000(Hz)に上記の規定値Bを加算することにより逆変換して、元の値5.65(GHz)に復元する。
【0056】
さらに、周波数処理部103は、変換部104によって復元された周波数を表示部6に表示させて(ステップS14)、処理を終える。一方、ステップS12において、変換部104は、取得した周波数が変換された周波数でないと判定すると(NO)、処理をステップS14に移行する。これにより、周波数処理部103は、変換部104によって復元されていない周波数を表示部6に表示させる。
【0057】
〈実施形態の効果〉
本実施形態に係る無線機1は、変換部104を含む制御部101を備えている。変換部104は、デジタル値によって表される無線通信用の周波数を所定のビット数(32ビット)の最大値以下の範囲に収まる低い周波数に変換する。具体的には、変換部104は、無線通信用の周波数を、当該最大値以下の範囲に収まるように、複数に区分された周波数帯ごとに設定された規定値を減算した値に変換する。
【0058】
特に、アマチュア無線では、0~10GHzの周波数帯域の全てを使用しているのではなく、部分的に使用しているために多くの未使用の領域が存在する。変換部104は、その未使用の領域に周波数を配置するように設定された規定値を用いて、周波数を低い周波数に変換する。
【0059】
変換部104を備えない構成では、上記の最大値を超える高い周波数を32ビット符号あり整数型の値として扱うことができない。このため、変数としての周波数を入れる型(変数サイズ)を大きくしなければならない。それゆえ、64ビットで周波数を表現する場合、ファームウェアで扱う各記憶領域、周波数を記憶するメモリチャンネル、演算に使用するためのメインメモリ9の容量などを大きくしなければならない。このため、メインメモリ9および記憶メモリ10の使用量の増大する結果、CPU11による演算処理の時間が長引く。
【0060】
これに対し、上記の構成によれば、無線機用の周波数が当該最大値以下の範囲に収まるように変換される。具体的には、
図3に示すUHF帯、1.2GHz帯、2.4GHz帯、5.6GHz帯および10GHz帯のそれぞれの取扱周波数範囲Aの周波数が低い周波数に変換される。これにより、周波数処理部103は、所定のビット数(32ビット)のコンピュータアーキテクチャによる通常の処理を行うことができる。それゆえ、32ビットアーキテクチャを有する無線機1において、10GHzのように上記の最大値を超える高い周波数を32ビット符号あり整数型の値として扱うことができる。したがって、メインメモリ9および記憶メモリ10の使用量が増大することなく、CPU11による演算処理の長時間化を回避することができる。
【0061】
変換部104は、周波数が規定値の設定されている周波数帯に属する場合、当該周波数を変換する一方、周波数が規定値の設定されていない周波数帯に属する場合、当該周波数を変換しない。
【0062】
また、変換部104は、変換した周波数に、変換時に減算した規定値を加算することにより元の値に復元する。具体的には、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている周波数が、規定値の設定されている周波数帯に属する場合、当該周波数に規定値を加算することにより元の値に復元する。一方、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている周波数が、規定値の設定されていない周波数帯に属する場合、規定値を加算しない。
【0063】
上記の構成によれば、周波数処理部103が変換された周波数を処理した後に、当該周波数を変換前の値に復元することができる。これにより、周波数処理部103は、10GHzというような32ビットで表される最大値を超えるような周波数であっても、変換された周波数ではなく、ユーザによって設定された値で表示部6に表示することができる。また、周波数が規定値の設定されていない周波数帯に属する場合、当該周波数を変換する必要がないので、変換を行わないことにより、変換のための規定値の減算を省くことかできる。
【0064】
また、デジタル値は、符号ありのデジタル値、すなわち32ビット符号あり整数型である。これにより、負の周波数を扱うことができる。それゆえ、変換後の周波数を上述した変換周波数範囲Cの上下限値と比較するような、負の値が生じる可能性のある演算処理を行うことができる。
【0065】
無線機1において、周波数はアマチュア無線の周波数帯に属する。これにより、無線機1がアマチュア無線機として機能するようになる。
【0066】
無線機1は、変換部104を有する周波数処理部103を有することにより、周波数処理装置として機能する。これにより、高周波数に対応したアマチュア無線機における周波数の処理を効率的に行うことができる。
【0067】
なお、本実施形態では、変換部104は、32ビット符号なし整数型の最大値以下の範囲に収まるように周波数を変換してもよい。これにより、32ビット符号あり整数型のように、最上位ビットを符号に割り当てないので、負の値を扱うことはできないが、周波数の最大値を32ビット符号あり整数型の周波数の最大値のほぼ倍に拡大することができる。また、変換部104は、32ビット符号あり整数型の最大値以下の範囲に収まるように周波数を変換することと、32ビット符号なし整数型の最大値以下の範囲に収まるように周波数を変換することとを必要に応じて使い分けてもよい。
【0068】
〈変形例〉
本実施形態の変形例について説明する。上記の実施形態では、規定値“0”を規定値が設定されていないことと同義に扱う。このため、変換部104は、規定値“0”の設定された周波数帯に属する周波数を変換しない。これに対し、本変形例に係る無線機1では、規定値“0”を変換に用いる規定値として扱う。
【0069】
このため、変換部104は、設定されたすべての周波数を対応する規定値を減算することで低い周波数に変換する。また、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている周波数に変換時に減算した規定値を加算することにより元の値に復元する。具体的には、復元時において、変換部104は、記憶メモリ10に記憶されている周波数を読み出して取得するとともに、記憶メモリ10に記憶されている変換周波数範囲Cを参照することにより、取得した周波数が属する周波数帯を特定する。そして、変換部104は、特定した周波数帯に設定された規定値を、取得した周波数に加算して復元する。
【0070】
これにより、
図4におけるステップS2の判定処理、および
図5におけるステップS12の判定処理を省略することができる。それゆえ、制御部101の処理を簡素化することができる。
【0071】
〔ソフトウェアによる実現例〕
無線機1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部101に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0072】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つのCPU11と少なくとも1つのメインメモリ9を有するコンピュータを備えている。このCPU11およびメインメモリ9により上記プログラムを実行することにより、上記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0073】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0074】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0075】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 無線機
11 CPU(周波数処理装置)
104 変換部