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特開2024-127634放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127634
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/04 20060101AFI20240912BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20240912BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G21F1/04
G21F1/08
G21F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036933
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】日塔 光一
(57)【要約】
【課題】数種の放射線を効率よく遮蔽する放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、入射する放射線を減衰させる放射線遮蔽体の製造方法は、複数の種類の骨材構成物質のそれぞれを個別に粉砕するステップS02と、複数の種類の骨材構成物質のそれぞれについて分級により複数の粒度範囲骨材構成物質を生成するステップS20と、複数の種類の骨材構成物質のそれぞれについて複数の粒度範囲の中から細骨材を構成する少なくとも一つの選別粒度範囲骨材構成物質を選別するステップS03と、複数の種類の選別粒度範囲骨材構成物質どうしを混合して細骨材を生成するステップS04と、細骨材ならびに水およびセメントを混成して混成物を生成するステップS05と、混成物を固化してモルタル状の放射線遮蔽体を生成するステップS06を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する放射線を減衰させる放射線遮蔽体の製造方法であって、
複数の種類の骨材構成物質のそれぞれを個別に粉砕するステップと、
複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれについて、分級により複数の粒度範囲骨材構成物質を生成するステップと、
複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれについて、複数の前記粒度範囲骨材構成物質の中から細骨材を構成する少なくとも一つの選別粒度範囲骨材構成物質を選別するステップと、
複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれの前記選別粒度範囲骨材構成物質どうしを混合して前記細骨材を生成するステップと、
前記細骨材ならびに水およびセメントを混成した混成物を生成するステップと、
前記混成物を固化してモルタル状の放射線遮蔽体を生成するステップと、
を有することを特徴とする放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項2】
複数の種類の前記骨材構成物質は、タングステンまたはその化合物、ガドリニウム化合物を有することを特徴とする請求項1に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項3】
前記タングステンまたはその化合物および前記ガドリニウム化合物の合計の重量に対する前記タングステンまたはその化合物の重量は、85%以上かつ100%以下であることを特徴とする請求項2に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項4】
複数の種類の前記骨材構成物質は、マンガン化合物、鉄化合物、モリブデン化合物、鉄化合物、銅化合物、ビスマス、および鉛の少なくとも一つをさらに有することを特徴とする請求項2に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項5】
前記細骨材は、3つ以上の前記選別粒度範囲骨材構成物質を有することを特徴とする請求項1に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項6】
前記骨材構成物質における前記選別粒度範囲骨材構成物質は、相対的に密度の大きな前記選別粒度範囲骨材構成物質のサイズを、相対的に密度の小さな前記選別粒度範囲骨材構成物質のサイズより小さくすることを特徴とする請求項1に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項7】
前記混成物は、前記細骨材ならびに前記水および前記セメントの全体積に対する前記細骨材の体積が、30%以上かつ50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項8】
前記混成物は、前記セメントの重量に対する前記水の重量が、30%以上かつ60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の放射性遮蔽体の製造方法。
【請求項9】
入射する放射線を減衰させる放射線遮蔽体であって、
複数の種類の骨材構成物質を含む細骨材と、
セメント固化体と、
を有する放射線遮蔽体であって、
複数の種類の骨材構成物質のそれぞれは、少なくとも一つの粒度範囲骨材構成物質を有する、
ことを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項10】
複数の種類の骨材構成物質を含む細骨材と、
前記細骨材を収納する収納袋と、
を有する入射する放射線を減衰させる放射線遮蔽体であって、
複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれは少なくとも一つの粒度範囲骨材構成物質を有し、
前記収納袋は、前記少なくとも一つの分級クラスの最小のクラスよりも小さく形成された目開きを有する、
ことを特徴とする放射線遮蔽体。
【請求項11】
前記収納袋は、木綿、リネン、合成樹脂網、金網のうち少なくとも1つを材料とする、
また、少なくとも2種類以上の大きさの袋を組み合わせて用いる、
ことを特徴とする請求項10に記載の放射線遮蔽体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線遮蔽体に使われる材料は、放射線が放射線遮蔽体の材料に当たったときには当該放射線を散乱または吸収して放射線量の透過を減衰させる物質からなる。
【0003】
ここで、放射線とは、α線、β線、γ線、X線、中性子線等の総称を指す。その中でも中性子線は物質と反応してα線、β線、γ線、X線を直接または二次的に放出する。従って、中性子線の遮蔽では中性子のみの遮蔽だけではなくα線、β線、γ線、X線の遮蔽も考える必要がある。
【0004】
これら放射線と物質との相互作用は、放射線の種類やエネルギーの大きさによっても異なる。中でもγ線、X線、中性子線は物質を透過する性質が高いため、これらを遮蔽する物質についての研究開発がなされている。
【0005】
なお、X線、γ線はその発生の仕方で呼び名が異なるが、以降X線とγ線をまとめてγ線と表記することとする。γ線と物質との反応は、原子番号Zの大きさに依存し、同じエネルギーのγ線であれば、遮蔽する物質の原子番号Zや密度が大きいほど反応割合が大きくなり遮蔽能力は高くなる。従って軽元素のカーボン(C)やアルミニウム(Al)よりもタングステン(W)やビスマス(Bi)、鉛(Pb)がγ線の遮蔽材として使用されている。
【0006】
一方、中性子線は、原子番号Zには特に関係せず、特定の元素同位体での反応割合が異なる。例えば、γ線との反応割合が悪い例としては、水素やリチウム(Li)、ホウ素(B)などがあり、リチウムの場合は、Li同位体(天然存在比7.6%)、ホウ素の場合は10B同位体(天然存在比20%)が反応するが、Li同位体(天然存在比92.4%)や11B同位体(天然存在比80%)は中性子とほとんど反応しない。
【0007】
中性子用の遮蔽材料としては、リチウムやホウ素の化合物が主に利用されている。γ線の場合は原子番号Zの大きさに依存しているが、同位体の存在割合には特に依存していない。従って中性子との反応割合を大きくするためには、反応する同位体の割合を濃縮して使用する場合がある。たとえば、天然のホウ素から同位体10B を90%以上に濃縮して使用する。
【0008】
γ線の場合も中性子の場合も一般的には、中性子の同位体で特有の共鳴吸収を行う場合を除いて、放射線のエネルギーが高くなると反応割合が小さくなり、遮蔽能力も小さくなる。そのため、高いエネルギーの放射線を遮蔽するためには、放射線が通る遮蔽体の厚さを厚くする必要がある。
【0009】
実用化されている遮蔽体には、セメント・コンクリート(モルタルもコンクリートに含まれる)の他にも、樹脂やゴムの中に放射線との反応材料を入れて遮蔽体を構成している場合がある。遮蔽用材料としてコンクリートが有利なことは、構造的強度、遮蔽能、加工性と適応性がすぐれているためであり、他面、欠点としては、さらに密実な材料と較べ遮蔽厚が大になることである。この欠点を補うため、各種重量コンクリート、特殊セメントの研究が行われている。
【0010】
コンクリートはセメント、水、粗骨材、細骨材、混和材料から構成される。体積で占める割合で最も多いのが粗骨材、次に細骨材で、セメント、水、混和材料がこれらの隙間に入る。一般的に用いられる粗骨材や細骨材は砂利や砂となっているが、採取される場所により化学的な成分が異なり、アルミニウムやカルシウムなどの酸化物や珪酸塩、炭酸塩等の岩石鉱物である。砂にも、川砂と海砂があり、塩分が異なるが基本的には岩石の風化によって粒子が小さくなったものである。
【0011】
放射線遮蔽用には重量コンクリートが用いられる。上記したように、原子番号Zが大きく密度が高い方がγ線を遮蔽する効果が高いため、粗骨材や細骨材に鉄の組成が高く密度が3~4g/cmの褐鉄鋼(2Fe・3HO)や、密度が4.6~5.1g/cmの磁鉄鉱(Fe)、密度が4.2~4.4g/cmの重晶石(BaSO)、更に密度の高い7.5g/cmの方鉛鉱(PbS)が用いられ、密度が7.6~7.8g/cmの鉄塊、鉄片、鋼球なども用いられている。
【0012】
しかしながら、これらの骨材は、γ線に対する遮蔽効果は一般の軽量骨材と比べて高いものの、熱中性子に対しての遮蔽効果は低い。熱中性子吸収用の骨材としては、密度が2.42g/cmのコルマナイト(別名:コレマナイト)(B)や、密度が2.9g/cmのタンブリ石(B)、密度が2.25g/cmのホウケイ酸ガラスまたは硬質ガラス(B)、密度が2.5g/cmの炭化ホウ素(BC)がある。逆にこれらは軽量骨材となり、これだけだとγ線の遮蔽効率が悪くなるため、重量骨材と混ぜて製作する。その結果、全体の体積中に存在する中性子と反応する同位体の割合は更に低くなり、遮蔽の厚さを厚くしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第7097392号公報
【特許文献2】特許第7204133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
放射線遮蔽体にはα線、β線、γ線、X線の遮蔽だけでなく中性子線に対しても遮蔽できることが求められる。また、通常のコンクリート構造物の劣化(アルカリ骨材反応)に加え、放射線が照射されるため、放射線劣化について健全性を考慮しなければならない。
【0015】
高線量の放射線が遮蔽体に照射されると、その放射線のエネルギーが吸収されて発熱が起こる。それに伴い、遮蔽体がコンクリートの場合、骨材やセメントペーストで膨張・収縮が繰り返され、脆化したり割れが発生したりする。また、放射線分解が起こり、特に水や水素を含む遮蔽体が樹脂の場合では化学結合が破壊され水素ガスが発生し、遊離して脆化が起こる。放射線により電離作用が起こると分子レベルで別の物質と化学反応を起こし劣化につながる。
【0016】
特に中性子の場合には、別の核種に変わってしまう場合がある。例えば、中性子吸収材としてよく用いられるホウ素は同位体の10Bが中性子と反応するとα線を放出してリチウムの同位体LiになりLiから478keVの即発γ線が放出される。さらに、中性子の場合は、原子炉を中性子源とした熱中性子(0.025eV付近)を中心とした遮蔽から、加速器中性子源やRI中性子源、宇宙環境における太陽からの高エネルギー中性子の領域を対象とする遮蔽まで、エネルギーの扱うレベルが異なる。
【0017】
エネルギーが高くなると反応の仕方も異なるため、リチウムやホウ素でも遮蔽が難しくなり、中性子の減速材を混ぜてエネルギーを下げてから遮蔽するなど工夫が必要となる。γ線の遮蔽には重量骨材を中心とした放射線遮蔽用コンクリートでよいが、中性子も遮蔽するためには従来からのリチウムやホウ素を含む軽量骨材をさらに導入する必要がある。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、複数種の放射線を効率よく遮蔽する放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的を達成するため、本実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法は、入射する放射線を減衰させる放射線遮蔽体の製造方法であって、複数の種類の骨材構成物質のそれぞれを個別に粉砕するステップと、前記複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれについて、分級により複数の分級クラスに対応する複数の分級物質を生成するステップと、前記複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれについて、複数の前記分級物質の中から細骨材を構成する少なくとも一つの分級クラスの選別分級物質を選別するステップと、前記複数の種類の前記骨材構成物質のそれぞれの前記選別分級物質どうしを混合して細骨材を生成するステップと、前記骨材ならびに水およびセメントを混成した混成物を生成するステップと、前記混成物を固化してモルタル状の放射線遮蔽体を生成するステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る放射線遮蔽体の構成を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法において用いる骨材構成物質の分級の詳細な手順を説明するフロー図である。
図3】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順を示すフロー図である。
図4】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における複数の骨材構成物質の決定ステップの詳細な手順を示すフロー図である。
図5】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における複数の骨材構成物質の分級および選別のステップを示す説明図である。
図6】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における混成のステップを示す説明図である。
図7】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルAの成分構成を示すグラフである。
図8】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルBの成分構成を示すグラフである。
図9】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルC1の成分構成を示すグラフである。
図10】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルC2の成分構成を示すグラフである。
図11】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルC3の成分構成を示すグラフである。
図12】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体のサンプルC4の成分構成を示すグラフである。
図13】実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の実施例により製造された放射線遮蔽体の各サンプルと従来例および比較例との密度の対比を示す表である。
図14】実施形態に係る放射線遮蔽体のγ線透過特性を示す図である。
図15】実施形態に係る放射線遮蔽体の熱中性子線透過特性を示す図である。
図16】実施形態に係る放射線遮蔽体の熱中性子から共鳴領域の中性子線透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重畳する説明は省略する。
【0022】
図1は、実施形態に係る放射線遮蔽体10の構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、放射線遮蔽体10は、γ線1、中性子2、電子線3などの放射線を遮蔽するものである。放射線遮蔽体10は、細骨材11およびセメント固化体15を有する。
【0024】
細骨材11は、複数種類の骨材構成物質12、具体的には、第1の骨材構成物質12aおよび第2の骨材構成物質12bを有する。第1の骨材構成物質12aと第2の骨材構成物質12bは、互いに異なる物質であり、かつそのそれぞれの粒の大きさの分布も互いに異なるものである。
【0025】
第1の骨材構成物質12aは、たとえばタングステン(W)あるいはタングステン合金ヘビアロイ(WHA)であり、第2の骨材構成物質12bは、たとえば酸硫化ガドリニウム(GdS:以下「GOS」)などのガドリニウム(Gd)焼結体である。また、第1の骨材構成物質12aの粒の大きさの分布は、第2の骨材構成物質12の粒の大きさの分布より小さいものである。
【0026】
また、セメント固化体15は、セメント13(図6)と水14(図6)との化学反応により生成される物質である。
【0027】
図1に示す放射線遮蔽体10においては、細骨材11すなわち第1の骨材構成物質12aおよび第2の骨材構成物質12bのそれぞれの粒が、セメント固化体15の中に散在し、セメント固化体15により保持されている。
【0028】
ここで、実施形態に係る放射線遮蔽体10の製造方法の全体の手順を説明する前に、その手順における分級ステップの詳細を説明する。
【0029】
図2は、実施形態に係る放射線遮蔽体10の製造方法において用いる骨材構成物質12の分級の詳細な手順(分級ステップS10)を説明するフロー図である。
【0030】
今、篩分けのための複数種類の篩(図示しない)が準備されているものとする。ここで、図2で示す例では、篩の目開きが、a[mm]、a[mm]、a[mm]、a[mm]、a[mm]の篩が準備されているものとする。ここで、a、a、a、a、aの値は、JIS Z 8801-1:2006に規定された公称目開きWの中から選出した値である。
【0031】
また、aは、5mm未満であり、たとえば、4.75mmである。また、それぞれの目開きの値は、次の式(1)の関係にある。
【0032】
>a>a>a>a ・・・(1)
【0033】
図2は、骨材構成物質12すなわち第1の骨材構成物質12aおよび第2の骨材構成物質12bについてのそれぞれ個別の手順を示している。以下では、第1の骨材構成物質12aおよび第2の骨材構成物質12bのそれぞれを、骨材構成物質12と表記して説明する。
【0034】
分級ステップS10に先立って、それぞれの骨材構成物質12についての粉砕が行われる(ステップS02)。
【0035】
分級ステップS10においては、まず、目開きa[mm]の篩での篩分けを行う(ステップS21)。この結果、目開きa[mm]の篩に残ったものを回収する(ステップS22)。ここで、目開きa[mm]の篩に残った骨材構成物質12の大きさを「粒度範囲(amm~)」と表記する。
【0036】
次に、ステップS22で、目開きa[mm]の篩に残って回収された大きな粒度のものが、所定値以下か否かを判定する(ステップS23)。所定値以下と判定されない(ステップS23 NO)場合は、粉砕ステップS02からステップS23までを繰り返す。
【0037】
所定値以下と判定されない(ステップS23 NO)場合は、次のステップ(S24)に進む。ここで、所定値は、たとえば、目開きa[mm]の篩に残って回収された大きな粒度のものを廃棄しても問題とならない程度の量の値である。
【0038】
次に、ステップS21の篩分けで篩を抜けて落ちたものを回収し、目開きa[mm]の篩での篩分けを行う(ステップS24)。この結果、目開きa[mm]の篩に残ったものを回収する(ステップS25)。ここで、目開きa[mm]の篩に残った骨材構成物質12の大きさを、「粒度範囲(a~amm)」と表記する。
【0039】
次に、ステップS24の篩分けで篩を抜けて落ちたものを回収し、目開きa[mm]の篩での篩分けを行う(ステップS26)。この結果、目開きa[mm]の篩に残った「粒度範囲(a~amm)」の骨材構成物質を回収する(ステップS27)。
【0040】
次に、ステップS26の篩分けで篩を抜けて落ちたものを回収し、目開きa[mm]の篩での篩分けを行う(ステップS28)。この結果、目開きa[mm]の篩に残った「粒度範囲(a~amm)」の骨材構成物質を回収する(ステップS29)。
【0041】
次に、ステップS28の篩分けで篩を抜けて落ちたものを回収し、目開きa[mm]の篩での篩分けを行う(ステップS30)。この結果、目開きa[mm]の篩に残った「粒度範囲(a~amm)」の骨材構成物質を回収する(ステップS31)。また、目開きa[mm]の篩から落ちた「粒度範囲(~amm)」の骨材構成物質を回収する(ステップS32)。
【0042】
以上が、篩分けによる分級の手順である。なお、5種類の篩を用いた篩分けの場合を例にとって説明したが、少なくとも0.5mm未満で3種類の分級が可能なように、3種類以上の篩を用いれば、5種類に限定しない。
【0043】
なお、以下、j<kの場合、「粒度範囲(aj+1mm)」の骨材構成物質の方が「粒度範囲(ak+1mm)」の骨材構成物質より粒度範囲が大きい、「粒度範囲(ak+1mm)」の骨材構成物質の方が「粒度範囲(aj+1mm)」の骨材構成物質より粒度範囲が小さいと言うものとする。
【0044】
図3は、実施形態に係る放射線遮蔽体10の製造方法の手順を示すフロー図である。
【0045】
まず、遮蔽対象とする放射線に関する情報の取得を行う(ステップS01)。放射線に関する情報は、放射線の線種、エネルギーあるいはエネルギーの範囲、放射線の強度などを含む。
【0046】
次に、複数の骨材構成物質12の決定を行う(ステップS10)。その詳細は、後に図4を引用しながら説明する。
【0047】
次に、それぞれの骨材構成物質12の粉砕(ステップS02)およびそれぞれの骨材構成物質12の分級(ステップS20)を行う。この際、粉砕および分級は、それぞれの骨材構成物質12ごとに個別に行い、互いに混在することのないようにする。詳細は、図2を参照しての前述のとおりである。
【0048】
次に、それぞれの骨材構成物質12の粒度範囲の選別を行い少なくとも一つの選別粒度範囲骨材構成物質とし(ステップS03)、そののちに、それぞれ選別された粒度範囲の骨材構成物質12(選別粒度範囲骨材構成物質)の混合を行う(ステップS04)。ステップS04の骨材構成物質12の混合により混合骨材として細骨材11が生成される。ステップS03およびステップS04の詳細は、後に図5を引用しながら説明する。
【0049】
次に、細骨材11と、セメント13(図6)、水14(図6)とを混成する(ステップS05)。混成したのちに型枠(図示しない)に入れて固化する(ステップS06)。この結果、モルタル状の遮蔽体10(図6)が生成される。ステップS05およびステップS06の詳細は、後に図6を引用しながら説明する。
【0050】
次に、生成された遮蔽体10の成分分析、性能確認を行う(ステップS07)。なお、ステップS07は、ステップS01からステップS02による製造方法が確立されたのちは、実施しない、あるいは抜き取り検査等によってもよい。
【0051】
図4は、実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における複数の骨材構成物質12の決定ステップS10の詳細な手順を示すフロー図である。複数の骨材構成物質12の決定ステップS10は、遮蔽対象とする放射線に関する情報の取得ステップS01に続いて行う以下のステップを有する。
【0052】
まず、放射線遮蔽体10について、γ線の対策のみか否かを判定する(ステップS11)。
【0053】
γ線の対策のみと判定された場合(ステップS11 YES)には、骨材構成物質12として物質Aを選別する(ステップS12)。ここで、物質Aは、γ線に対する減衰効果の大きなものとして、WあるいはWHAなどのWの化合物、Gd、Fe、Pbなどがある。なお、この中では、WあるいはW化合物が最もγ線減衰効果が大きい。
【0054】
γ線の対策のみと判定されなかった場合(ステップS11 NO)には、加えて熱中性子の対策のみ必要か否かを判定する(ステップS13)。
【0055】
加えて熱中性子の対策のみ必要と判定された(ステップS13 YES)場合には、物質Aに加えて、物質Bを選別する。ここで、物質Bは、熱中性子に対する減衰効果の大きなものとして、Gd化合物がある。熱中性子のみを考慮する場合には、Cd、Hfなどがあるが、Gdの場合は、γ線に対しても減衰効果が大きい。
【0056】
加えて熱中性子の対策のみ必要と判定されなかった(ステップS13 NO)場合には、高速中性子の対策も必要か否かを判定する(ステップS15)。
【0057】
高速中性子の対策も必要と判定された(ステップS15 YES)場合には、物質A、Bに加えて、物質Cを選別する。ここで、物質Cとしては、たとえばモリブデン(Mo)を使用することができる。
【0058】
以上のステップで、基本的な骨材構成物質12の種類を選別したうえで、さらに、ほかの種類の骨材構成物質12を加えてもよい。
【0059】
図5は、実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における複数の骨材構成物質12の分級ステップS20および選別ステップS03を示す説明図である。
【0060】
図5では、骨材構成物質12として、第1の骨材構成物質12a、第2の骨材構成物質12b、および第3の骨材構成物質12cの3種類の骨材構成物質12を使用する場合を例にとって示している。ただし、これに限定されず、複数であれば2種類あるいは4種類以上の場合であってもよい。
【0061】
また、図5では、粒度範囲(a~amm)骨材構成物質ないし粒度範囲(an+1~amm)骨材構成物質に分級する場合を示している。第1の骨材構成物質12aについては破線で、第2の骨材構成物質12bについては実線で、また第3の骨材構成物質12cについては一点鎖線で示すように、ステップS20として、それぞれ、粒度範囲(a~amm)骨材構成物質ないし粒度範囲(an+1~amm)骨材構成物質に分級する。
【0062】
次に、ステップS03として、第1の骨材構成物質12aについては、破線矢印で示すように、粒度範囲(a~amm)骨材構成物質およびこれより小さくこれに近い粒度範囲のものを選別する。第3の骨材構成物質12cについては、一点鎖線の矢印で示すように、粒度範囲(an+1~amm)骨材構成物質およびこれより大きくこれに近い粒度範囲のものを選別する。また、第2の骨材構成物質12bについては、第1の骨材構成物質12aと第3の骨材構成物質12cの中間の粒度範囲のものを選別する。
【0063】
図5に示すように、それぞれ選別された第1の骨材構成物質12aと第2の骨材構成物質12bの粒度範囲が互いに重なってもよい。同様に、それぞれ選別された第2の骨材構成物質12bと第3の骨材構成物質12cの粒度範囲が互いに重なってもよい。
【0064】
以上説明した例では、選別された第1の骨材構成物質12aが最も粒度範囲が大きく、次に、選別された第2の骨材構成物質12b、選別された第3の骨材構成物質12cに従って、粒度範囲が小さくなる。
【0065】
この場合に、骨材構成物質12の種類との関係については、比重の大きな骨材構成物質12ほど、粒度範囲が小さくなるように選別する。たとえば、WとGdを用いる場合、比重が相対的に大きなWは粒度範囲が小さくなるように、比重が相対的に小さなGdは粒度範囲が大きくなるように、粒度範囲の選別を行う。
【0066】
次に、ステップS03として、それぞれ選別された第1の骨材構成物質12a、第2の骨材構成物質12bおよび第3の骨材構成物質12cを混合し、細骨材11としての混合骨材を生成する。比重の大きな骨材構成物質12ほど、粒度範囲が小さくなるように選別した結果、比重の大きな骨材構成物質12の下側への移動が抑制され、より均一な混合骨材を生成することができる。
【0067】
図6は、実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の手順における混成のステップS05を示す説明図である。混成ステップS05では、モルタル状の放射線遮蔽体10を生成するために、まず、細骨材11、セメント13、および水14の混成を行う。
【0068】
混成により、セメント13と水14が反応してセメント固化体15が生成される。ここで、セメント13の重量wcと水14の重量wwについては、次の式(1)の水セメント重量比rcwを所定の範囲となるように管理する。
rcw=ww/wc ・・・(1)
【0069】
ここで、水セメント重量比rcwの所定の範囲は、30%以上かつ60%以下である。水セメント重量比rcwが30%より小さいと、放射線遮蔽体10の強度が不足する。また、水セメント重量比rcwが60%より大きいと、水が過剰となり、混成の際、上に水の層ができてしまいセメント固化体15の質が低下する。
【0070】
混成に際して、細骨材11の体積va、セメント13の体積vcおよび水14の体積vwは、次の式(2)の骨材体積割合rvが所定の範囲となるように管理する。
rv=va/(vc+vw) ・・・(2)
【0071】
ここで、骨材体積割合比rvの所定の範囲は、30%以上かつ50%以下である。骨材体積割合rvが30%より小さいと、放射線遮蔽体10の密度が不足し、遮蔽性能が落ちる。また、骨材体積割合rvが50%より大きいと、混ぜると空気が入りモルタルが固まりにくくなる。なお、骨材体積割合rvが35%以上かつ45%以下であることが好ましい。
【0072】
[実施例]
以下に、 サンプルとして、サンプルA、サンプルB、サンプルC1、サンプルC2、サンプルC3、サンプルC4を作成して比較を行った実施例について、図7ないし図12を引用しながら説明する。
【0073】
まず、それぞれのサンプルのための骨材構成物質12を準備した。それぞれの骨材構成物質12を粉砕し、分級、選別を行ったうえで、混合して細骨材11を生成した。なお、分級の際は、相対的に比重の大きな骨材構成物質12の粒度範囲を、相対的に比重の大きな骨材構成物質12の粒度範囲より大きい側とした。たとえば、Gdの粒度範囲を、WやWHAの粒度範囲より大きい側とした。
【0074】
次に、細骨材11、セメント13および水14を混成した。
【0075】
ここで、水セメント重量比rcwを約40%、骨材体積割合rvを約34%とした。
【0076】
次に、混成した細骨材11、セメント13および水14を型枠に入れて、約 時間(または、約 時間~ 時間)放置し、乾燥させた。作成した放射線遮蔽体の各サンプルは、一辺が約50mmの立方体形状のブロックである。
【0077】
図7ないし12は、実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法により製造された放射線遮蔽体の成分構成を示すグラフであり、図7はサンプルA、図8はサンプルB、図9はサンプルC1、図10はサンプルC2、図11はサンプルC3、図12はサンプルC4の場合を示す。ここで、成分構成は、体積割合を示している。
【0078】
成分表示で、Wはタングステン(W)、Cはセメント固化体15、WHA-1およびWHA―2はタングステン合金ヘビアロイであり、WHA-1は、目開きa4とa5で分級した粒度範囲(a5~a4mm)、WHA―2は目開きa5で分級した粒度範囲(~a5mm)である。8HUは混和剤である。GOS-1は目開きa2とa3で分級した粒度範囲(a3~a2mm)、GOS-2は目開きa3とa4で分級した粒度範囲(a4~a3mm)である。
【0079】
図7で示すサンプルAは、W、WHAの合計が約74%、GOSは含まない。図8で示すサンプルBは、W、WHAの合計が約70%、GOSが約5%である。図9で示すサンプルC1は、W、WHAの合計が約59%、GOSが約1%である。図10で示すサンプルC2は、W、WHAの合計が約59%、GOSが約2%である。図11で示すサンプルC1は、W、WHAの合計が約58%、GOSが約3%である。図12で示すサンプルC2は、W、WHAの合計が約58%、GOSが約4%である。
【0080】
このように、いずれもWおよびWHAが成分の主体であり、Gdに関しては、サンプルAでは含まない、サンプルC1ないしC4、サンプルBとなるにつれて、1%から順次5%まで増加している。
【0081】
図13は、実施形態に係る放射線遮蔽体の製造方法の実施例により製造された放射線遮蔽体の各サンプルと従来例および比較例との密度の対比を示す表である。密度[kg/m]は、作成した各サンプルの体積[m]および重量[kg]を測定し、重量[kg]を体積[m]で除することにより算出した。
【0082】
図13では、実施例としてのサンプルA、サンプルB、サンプルC1ないしサンプルC4の密度に加えて、比較例として、従来の普通コンクリート、重コンクリートの通常の密度、およびGOS骨材コンクリートの密度並びに鉄無垢材、銅無垢材、鉛無垢材を示している。
【0083】
次に、実施形態に係る放射線遮蔽体10の各放射線の透過特性、逆に見れば遮蔽性能について説明する。
【0084】
実際に作製したサンプルAとサンプルBの厚さの異なるステップウェッジを作製してγ線(実効エネルギー8MeV)の透過特性、熱中性子(0.025eV)の透過特性、並びに熱中性子から共鳴領域(1MeV以下)の中性子領域での透過特性を測定した。測定ではサイクロトロン加速器中性子源を用い、γ線についてはイメージングプレートで直接測定し、熱中性子はジスプロシウム(Dy)をコンバータとして放射化させてイメージングプレート(IP)に転写する中性子ラジオグラフィの転写法を用いて測定した。熱中性子から共鳴領域の測定は、コンバータにインジウム(In)を用いて転写法で実施した。
【0085】
また、サンプルAとサンプルBの他に比較できるように鉛(Pb)無垢材並びに鉄、銅の無垢材のステップウェッジを作製して同様のデータを採取した。
【0086】
図14は、実施形態に係る放射線遮蔽体10のγ線透過特性を示す図である。横軸は遮蔽体の厚さ[mm]、縦軸は当該放射線の透過相対値(対数)である。図15、16も同様である。
【0087】
WHAを主骨材としたサンプルA並びにサンプルBは、無垢材のPbには及ばないものの銅や鉄の無垢材よりもγ線の減衰が大きく、優れた遮蔽特性を示している。このことは、無垢材それぞれの密度と元素の原子番号Zの大きさに関係している。サンプルBはサンプルAに対して5%ヘビアロイがGOSになっているため密度も鉄に近くなっているがWHAのタングステン(Z=74)が鉄(Z=26)、銅(Z=29)に比べて大きくGOSのガドリニウム(Z=64)もタングステンよりは小さいが、鉄や銅よりも原子番号が大きいためγ線との反応割合が大きくなり遮蔽効果が高くなる。
【0088】
図15は、実施形態に係る放射線遮蔽体10の熱中性子線透過特性を示す図である。
【0089】
γ線に対する遮蔽効果では鉛の無垢材がなかでは比較に良い結果になっていたが、逆に熱中性子に対しては、より透過性は大きく減衰が小さく遮蔽効果が最も少なくなっている。熱中性子に対しては、サンプルAとサンプルBの遮蔽効果が高く、更にGOSを5%含むサンプルBの結果が特に優れている。作製したサンプルC1からC4はGOSの含有量を1%から4%まで変化させたもので、サンプルAとサンプルBの間に入るものである。
【0090】
図16は、実施形態に係る放射線遮蔽体の熱中性子から共鳴領域の中性子線透過特性を示す図である。
【0091】
熱中性子から共鳴領域(1MeV以下)の中性子に対しては、サンプルAは鉄や銅の無垢材と比較して遮蔽効果が悪くなっているが、Gdを含むGOSが5%入ったサンプルBの遮蔽効果が高いことがわかる。
【0092】
γ線についてはサンプルAとサンプルBの差は少ないが、よりγ線の遮蔽効果を高めるにはGOSの濃度少なくしてWHAの濃度を高くした方が良い。
【0093】
一方、中性子については、中性子のエネルギーによって特性は異なる。具体的には、Gdを多く含む方が遮蔽効果は高くなり、今回作成したサンプルBよりもさらに多くGOSを含む場合は、さらに効果は高くなる。但しγ線の遮蔽効果が悪くなる。
【0094】
中性子の遮蔽では必ず中性子と相互作用したγ線が存在するため、特に熱中性子で十分な遮蔽が行われれば、中性子と反応して発生するγ線をより効果的に遮蔽する目的としてはサンプルBの濃度を中心に調整することが望ましい。
【0095】
γ線は、約10MeV以上の高エネルギーになると物質を構成する原子核との相互作用で光核反応を起こし、中性子が発生するようになる。
【0096】
また、約数MeV以上のγ線の場合、物質との相互作用で、電子対生成と制動放射を多段にシャワー上に繰り返し、多数の電子やX線が生じる電磁シャワーが発生する。この電磁シャワーは、1次粒子が高エネルギー電子の場合でも同様に発生する。さらに、制動放射によるX線のエネルギーが約10MeV以上である場合、上記の光核反応による中性子が発生する。この光核反応には(γ,n)反応や(γ,2n)反応などは原子番号Zとの関係から原子番号Zが大きいほど反応割合が大きくなる。逆に(γ,p)反応などは原子番号Zが30以上では反応割合が減衰する傾向がある。従って、エネルギーの高いγ線の場合、原子番号Zの比較的小さい鉄などの材料でγ線を減衰させてから原子番号Zの大きい材料で遮蔽することにより、高エネルギー中性子の発生を少なくすることができる。
【0097】
このような高エネルギーのガンマ線を遮蔽する場合、2次的に発生する中性子や電磁シャワーについても遮蔽するため、1段目にγ線を減衰させる原子番号Zの比較的小さい元素を骨材とした遮蔽材にして、2段目にZの大きいタングステン、ビスマス、鉛、モリブデン、あるいはWHAを骨材に配合した放射線遮蔽体、3段目に2次的に発生した中性子や電磁シャワーを減衰させるGOSを骨材に用いた放射線遮蔽体を使用する方法を用いてもよい。あるいは、上述した骨材を複数混合配合して用いた1種類の放射線遮蔽体で高エネルギーのγ線を遮蔽する方法を用いてもよい。
【0098】
以上、説明した実施形態によれば、数種の放射線を効率よく遮蔽する放射線遮蔽体および放射線遮蔽体の製造方法を提供することが可能となる。
【0099】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…γ線、2…中性子、3…電子線、10…放射線遮蔽体、11…細骨材、12…骨材構成物質、12a…第1の骨材構成物質、12b…第2の骨材構成物質、12c…第3の骨材構成物質、13…セメント、14…水、15…セメント固化体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16