(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127644
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240912BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240912BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240912BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240912BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L21/30 564Z
B05C5/02
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036965
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075AC95
4D075AC96
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB02
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4D075DC22
4D075DC24
4D075EA45
4F041AA05
4F041AA06
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA21
4F041BA32
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4F042AA06
4F042AA07
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4F042BA07
4F042BA08
4F042BA11
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4F042CA09
4F042CB03
4F042CB10
4F042DF09
5F146JA02
5F146JA03
5F146JA27
(57)【要約】
【課題】処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に形成される処理液の膜の厚さを均一化することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、スリット状の吐出口14が形成されたノズルブロック151および制御部110を備える。制御部110が、X方向駆動部141およびZ方向駆動部142を制御することにより、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間に処理液が満たされた状態でノズルブロック151が基板W上を移動する。このとき、基板W上に処理液が塗布される。その後、ノズルブロック151が基板Wから離間することにより、ノズルブロック151と基板Wとをつなぐ液柱が形成される。液柱が吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、ノズルブロック151が移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、
前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、
前記移動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルが前記短手方向に相対的に移動する第1の移動動作と、
前記第1の移動動作の後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルがさらに前記短手方向に相対的に移動する第2の移動動作とを、前記移動部に行わせる、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の移動動作において前記基板の前記上面上に処理液が供給されることは、前記隙間で毛細管現象を発生させることにより前記ノズル内の処理液を前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出させることを含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ノズルの前記吐出口は、
前記第1の移動動作により、平面視で前記基板の少なくとも一部の領域を通過して、前記基板の周縁部の予め定められた部分に重なる第1の位置に移動し、
前記第2の移動動作により、平面視で前記第1の位置から前記基板に重ならない第2の位置に移動する、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより上下方向における前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を変更する昇降部をさらに備え、
前記制御部は、
前記昇降部を制御することにより、前記第1の移動動作中前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を、前記所定間隔以下の間隔に維持し、前記第1の移動動作終了後前記第2の移動動作開始前に、前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更し、前記第2の移動動作中前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を、前記所定間隔よりも大きく維持する、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ノズル内の処理液の圧力を調整する圧力調整部をさらに備え、
前記制御部は、
前記圧力調整部を制御することにより、前記第1の移動動作中前記ノズル内の処理液の圧力を予め定められた第1の負の圧力に調整し、前記第1の移動動作終了後前記第2の移動動作開始前に、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも高い第2の負の圧力に調整する、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記移動部および前記昇降部を制御することにより、前記第2の移動動作後、前記吐出口の長手方向に沿って見た側面視で前記ノズル先端部を前記基板の外方に向かって斜め下方に相対的に移動させる、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の移動動作時の前記ノズル先端部と前記基板との間の相対的な移動速度を第1の速度とし、前記第2の移動動作時の前記ノズル先端部と前記基板との間の相対的な移動速度を第2の速度とし、前記第2の移動動作後、前記ノズル先端部が前記基板の外方に向かって斜め下方に相対的に移動する際の前記ノズル先端部と前記基板との間の前記短手方向における相対的な移動速度を第3の速度とした場合に、前記第3の速度は、前記第1の速度および前記第2の速度よりも高い、請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、
前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、
前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより上下方向における前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を変更する昇降部と、
前記ノズル内の処理液の圧力を調整する圧力調整部と、
前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、前記ノズル内の処理液の圧力が予め定められた第1の負の圧力で維持されかつ前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させ、
その後、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整しつつ前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる、基板処理装置。
【請求項9】
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、
前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させる第1の移動ステップと、
前記第1の移動ステップが行われた後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルをさらに前記短手方向に相対的に移動させる第2の移動ステップとを含む、基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の動作ステップにおいて前記基板の前記上面上に処理液が供給されることは、前記隙間で毛細管現象を発生させることにより前記ノズル内の処理液を前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出させることを含む、請求項9記載の基板処理方法。
【請求項11】
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、
前記ノズル内の処理液の圧力を予め定められた第1の負の圧力に調整する第1の圧力調整ステップと、
第1の圧力調整ステップが行われている間、前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間を形成する第1の隙間形成ステップと、
前記第1の圧力調整ステップおよび前記第1の隙間形成ステップが行われている間に、前記ノズル先端部と前記基板との間に形成された前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動ステップと、
前記移動ステップの後、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整する第2の圧力調整ステップと、
第2の圧力調整ステップが行われている間、前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる第2の隙間形成ステップとを含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられる。
【0003】
基板処理装置の一例として、特許文献1には、基板にレジスト膜を形成する回転式基板処理装置が記載されている。その基板処理装置においては、水平姿勢で保持されて回転する基板の中心部にレジスト液が供給される。供給されたレジスト液が基板の周縁部に向かって広がることにより、基板の上面全体にレジスト液の膜が形成される。レジスト液の膜が形成された基板に、乾燥処理等の所定の処理が施される。それにより、基板の上面にレジスト膜が形成される。
【0004】
上記のように、回転する基板の上面に処理液(レジスト液)を供給することにより基板の上面に処理液の膜を形成する方法は、スピン塗布法と呼ばれる。スピン塗布法では、回転する基板の上面全体に遠心力を用いて処理液を塗り広げるため、基板上に供給される処理液の一部が基板の外方に飛散する。したがって、スピン塗布法では、処理液の利用効率に限界がある。
【0005】
基板上への処理液の膜の形成方法としては、上記のスピン塗布法の他、スリット状の吐出口を有するノズル(処理液供給部)を用いたキャピラリ塗布法と呼ばれる方法がある。キャピラリ塗布法は、ノズルと基板との間に隙間を形成し、その隙間に処理液が満たされることで発生する毛細管現象を利用してスリット状の吐出口から基板上に処理液を引き出す方法である(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
キャピラリ塗布法によれば、毛細管現象が発生する状態で吐出口から基板上に処理液が引き出される。そのため、キャピラリ塗布法は、スピン塗布法に比べて処理液の利用効率が高い。
【0007】
また、上記の例の他、基板上にのみ処理液を塗布する方法として、例えばスリット状の吐出口を基板の幅に合わせて調整する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-046850号公報
【特許文献2】特開2017-148769号公報
【特許文献3】特開2017-164700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されているキャピラリ塗布法等は、基板の各部に対してノズルから引き出される処理液が直接塗布されるので、ノズルと基板との位置関係が大きく変化する場合に膜の厚さを制御することが難しい。例えば、基板への処理液の塗布が終了して基板からノズルを引き離す際に、基板上に形成された処理液の膜のうちノズルが引き離される部分の厚さは他の部分の厚さに比べて大きくなる傾向がある。
【0010】
そのため、キャピラリ塗布法等によって基板上に形成される塗布膜の厚さのばらつきは、スピン塗布法によって基板上に形成される塗布膜の厚さのばらつきに比べて大きい。
【0011】
本発明の目的は、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に形成される処理液の膜の厚さを均一化することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に従う基板処理装置は、少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、前記移動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルが前記短手方向に相対的に移動する第1の移動動作と、前記第1の移動動作の後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルがさらに前記短手方向に相対的に移動する第2の移動動作とを、前記移動部に行わせる。
【0013】
本発明の他の局面に従う基板処理装置は、少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、前記基板を保持する基板保持部と、一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより上下方向における前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を変更する昇降部と、前記ノズル内の処理液の圧力を調整する圧力調整部と、前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、前記ノズル内の処理液の圧力が予め定められた第1の負の圧力で維持されかつ前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させ、その後、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整しつつ前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる。
【0014】
本発明のさらに他の局面に従う基板処理方法は、少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、基板保持部により前記基板を保持するステップと、一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させる第1の移動ステップと、前記第1の移動ステップが行われた後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルをさらに前記短手方向に相対的に移動させる第2の移動ステップとを含む。
【0015】
本発明のさらに他の局面に従う基板処理方法は、少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、基板保持部により前記基板を保持するステップと、一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、前記ノズル内の処理液の圧力を予め定められた第1の負の圧力に調整する第1の圧力調整ステップと、第1の圧力調整ステップが行われている間、前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間を形成する第1の隙間形成ステップと、前記第1の圧力調整ステップおよび前記第1の隙間形成ステップが行われている間に、前記ノズル先端部と前記基板との間に形成された前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動ステップと、前記移動ステップの後、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整する第2の圧力調整ステップと、第2の圧力調整ステップが行われている間、前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる第2の隙間形成ステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に形成される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の模式的な外観斜視図である。
【
図2】処理液供給系の基本構成を説明するための図である。
【
図3】
図1の基板処理装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図5】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図6】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図7】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図8】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図9】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図10】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【
図11】
図1の塗布装置による基板の塗布処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置および基板処理方法について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、以下に説明する基板は、平面視でノッチの形成部分を除いて円形状を有する。
【0019】
1.基板処理装置の構成
<1>概要
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の模式的な外観斜視図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、塗布装置100、制御部110および処理液供給系160を含み、図示しない筐体内に収容されている。
図1には、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は上下方向(鉛直方向)に相当する。
【0020】
塗布装置100は、基板W上に処理液の膜を形成する塗布処理が可能に構成され、2つのステージ支持体120、ステージ装置130、2つのノズル支持体140およびノズル装置150を含む。本実施の形態において、塗布装置100で用いられる処理液はレジスト膜用の塗布液(レジスト液)または反射防止膜用の塗布液(反射防止液)である。なお、本例の塗布装置100において塗布処理の対象となる基板Wは、概ね300mmの直径を有する。
【0021】
制御部110は、塗布装置100の各部の動作を制御する。処理液供給系160は、塗布装置100に処理液を供給する。制御部110および処理液供給系160の詳細は後述する。
【0022】
<2>塗布装置100
塗布装置100の2つのステージ支持体120の各々は、一方向に延びる略直方体形状を有し、X方向に沿って延びるように、図示しない筐体の底面上に設けられている。2つのステージ支持体120は、Y方向に並ぶように配置されている。各ステージ支持体120の上面には、当該ステージ支持体120の長手方向に沿って延びるガイドレール121が設けられている。以下の説明では、ステージ支持体120の一端部taから他端部tbに向く方向を塗布装置100の前方と呼び、ステージ支持体120の他端部tbから一端部taに向く方向を塗布装置100の後方と呼ぶ。
【0023】
ステージ装置130は、Y方向において2つのステージ支持体120の間に位置し、2つのステージ支持体120により支持されている。ステージ装置130は、プレート部材131、プレート調整部132、複数(本例では、3本)の支持ピン133、ピン昇降駆動部134および吸引駆動部135を含む。
【0024】
プレート部材131は、例えば矩形の平板形状を有する石材により形成され、ステージ装置130の上面部分を構成する。プレート部材131の一部には、処理対象となる基板Wが載置される。基板Wが載置されるプレート部材131の部分(以下、基板載置部分と呼ぶ。)には、当該プレート部材131をZ方向に貫通するように、図示しない複数の吸気孔および複数のピン挿入孔が形成されている。
【0025】
プレート調整部132、複数の支持ピン133、ピン昇降駆動部134および吸引駆動部135は、プレート部材131の下方に設けられている。プレート調整部132は、ヒータ等を含み、プレート部材131の基板載置部分の温度を調整する。
【0026】
複数の支持ピン133は、Z方向に延びるようにかつ平面視で基板載置部分の複数のピン挿入孔にそれぞれ重なるようにピン昇降駆動部134により支持されている。ピン昇降駆動部134は、制御部110の制御に基づいて、複数の支持ピン133をZ方向に移動させる。それにより、複数の支持ピン133の上端部は、複数のピン挿入孔を通してプレート部材131よりも上方のピン上昇位置と、プレート部材131よりも下方のピン下降位置との間を移動する。
【0027】
基板Wの搬入時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で、図示しない搬送装置により保持された未処理の基板Wが複数の支持ピン133上に渡される。また、基板Wの搬出時には、複数の支持ピン133の上端部がピン上昇位置にある状態で、複数の支持ピン133上に支持された処理済の基板Wが図示しない搬送装置により受け取られる。さらに、塗布装置100における基板Wの塗布処理時には、複数の支持ピン133の上端部がピン下降位置にある状態で、プレート部材131の基板載置部分に載置された基板Wに処理液が供給される。
【0028】
プレート部材131に形成された複数の吸気孔は、吸引駆動部135および図示しない吸気系を通して工場の排気設備等に接続されている。吸引駆動部135は、制御部110の制御に基づいて、複数の吸気孔と吸気系との間に形成される吸気経路を連通状態と遮断状態との間で切り替える。このような構成により、プレート部材131の基板載置部分に基板Wが載置された状態で、吸引駆動部135は、吸気経路を連通状態とすることにより当該基板Wを基板載置部分に吸着保持させることができる。また、基板載置部分に基板Wが吸着保持された状態で、吸引駆動部135は、吸気経路を遮断状態とすることにより当該基板Wをプレート部材131から解放させることができる。
【0029】
2つのステージ支持体120の上面には、2つのノズル支持体140がそれぞれ設けられている。2つのノズル支持体140は、Y方向に並ぶように配置されている。2つのノズル支持体140の各々は、当該ノズル支持体140が設けられたステージ支持体120のガイドレール121に沿ってX方向(塗布装置100の前後方向)に移動可能となっている。
【0030】
ノズル装置150は、Y方向において2つのノズル支持体140の間に位置し、2つのノズル支持体140により支持されている。2つノズル支持体140のうち少なくとも一方には、X方向駆動部141およびZ方向駆動部142が内蔵されている。
【0031】
ノズル装置150は、ノズルブロック151を含む。ノズルブロック151は、一方向に延びる略直方体形状を有する。ノズルブロック151の両端部は、2つのノズル支持体140にそれぞれ支持されている。
図1では、吹き出し内に、ノズルブロック151の下半部の縦断面図(ノズルブロック151の下半部をY方向に直交する鉛直面で切断した断面図)が示される。その縦断面図に示されるように、ノズルブロック151は、塗布装置100の前方を向く前面11および塗布装置100の後方を向く後面12を有する。
【0032】
また、ノズルブロック151は、基板対向面13a、前傾斜面13bおよび後傾斜面13cを有する。前傾斜面13bは、ノズルブロック151をY方向に見た側面視で、前面11の下端部から後方かつ下方に向かって延びる。一方、後傾斜面13cは、ノズルブロック151をY方向に見た側面視で、後面12の下端部から前方かつ下方に向かって延びる。基板対向面13aは、水平面に対して平行となるように、前傾斜面13bの下端部と後傾斜面13cの下端部とをつないでいる。基板対向面13aには、スリット状の吐出口14が形成されている。吐出口14はY方向に延びている。
【0033】
ノズルブロック151の内部には、液流路15および貯留部16が形成されている。貯留部16は、一定量の処理液を貯留可能に形成されている。貯留部16から吐出口14にかけて液流路15が形成されている。それにより、貯留部16の内部空間は、液流路15および吐出口14を通してノズルブロック151の下方の空間(ノズルブロック151の外部空間)に連通する。ノズルブロック151には、処理液供給系160の一部を構成する配管PIが接続されている。処理液供給系160の配管PIからノズルブロック151の貯留部16内に、処理液が供給される。
【0034】
X方向駆動部141は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、制御部110の制御に基づいて、ノズル支持体140をステージ支持体120のガイドレール121上でX方向に移動させる。Z方向駆動部142は、例えばモータ等のアクチュエータを含み、制御部110の制御に基づいて、ノズル支持体140によって支持されるノズル装置150をZ方向に移動させる。
【0035】
基板Wの塗布処理時には、プレート部材131上に基板Wが吸着保持された状態で、ノズルブロック151が基板Wの上面に近づけられ、ノズル装置150が基板Wの上方の空間をX方向に移動する。このとき、ノズル装置150のZ方向の位置(高さ位置)は、毛細管現象により、ノズルブロック151内の処理液が吐出口14からノズルブロック151と基板Wとの間の隙間に引き出される(吐出される)ように調整される。このように、ノズルの吐出口から毛細管現象を利用して基板W上に塗布液を供給する方法は、キャピラリ塗布法と呼ばれる。
【0036】
<3>処理液供給系160
処理液供給系160の詳細を説明する。
図2は、処理液供給系160の基本構成を説明するための図である。
図2では、処理液供給系160の基本構成とともに、
図1のノズルブロック151およびプレート部材131が模式的に示される。
【0037】
図2に示すように、処理液供給系160は、バルブ161、処理液タンク162、圧力調整部163および配管PIを含む。処理液タンク162には、基板Wの塗布処理に用いられる処理液が貯留される。配管PIは、処理液タンク162の底部とノズル装置150とを接続する。バルブ161は、配管PIに設けられている。バルブ161が開かれることにより、処理液タンク162の内部空間と
図1のノズルブロック151の貯留部16の内部空間とが連通する。それにより、処理液供給系160からノズル装置150への処理液の供給が可能になる。バルブ161が閉じられることにより、配管PIにおける処理液の流通経路が遮断され、処理液供給系160からノズル装置150への処理液の供給が不可能になる。
【0038】
圧力調整部163は、例えば電空レギュレータであり、処理液タンク162内の圧力を変化させる。なお、圧力調整部163は、処理液タンク162の内部空間の圧力を調整することができるのであれば、電空レギュレータに代えて各種ポンプまたはアスピレータ等の他の圧力調整手段で構成されてもよい。
【0039】
キャピラリ塗布法による基板Wの塗布処理時には、上記のように、ノズル装置150のノズルブロック151がプレート部材131に載置された基板Wに近づけられる。また、バルブ161が開かれ、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間に処理液が満たされる。それにより、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間で毛細管現象が発生し、
図2に白抜きの矢印で示すように、ノズルブロック151内の処理液に、当該処理液を吐出口14から基板Wの上面上に引き出す力が作用する。
【0040】
一方、ノズルブロック151内部に存在する処理液には、処理液タンク162に貯留される処理液の液面の高さ位置h01と吐出口14の高さ位置h02との関係に応じた力が発生する。例えば、処理液の液面の高さ位置h01が吐出口14の高さ位置h02よりも低いと、ノズルブロック151内の処理液に、液流路15から貯留部16に流入しようとする力が発生する。一方、処理液の液面の高さ位置h01が吐出口14の高さ位置h02よりも高いと、ノズルブロック151内の処理液に、当該処理液を吐出口14からノズルブロック151の外部に流出しようとする力が発生する。上記の流入しようとする力および流出しようとする力は、2つの高さ位置h01,h02の差分が大きいほど大きくなる。したがって、高さ位置h01,h02の差分が0である場合、ノズルブロック151内部に存在する処理液には、2つの高さ位置h01,h02の関係に応じた力は発生しない。この場合、ノズルブロック151内部の処理液には、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間に発生する毛細管現象に起因する力のみが作用する。
【0041】
ここで、毛細管現象に起因する力を除いてノズルブロック151内の処理液に発生する力は、すなわちノズルブロック151内に存在する処理液の圧力(ノズルブロック151の内部圧力)に起因する力である。
【0042】
そこで、キャピラリ塗布法による基板Wの塗布処理時には、上記の毛細管現象に起因して処理液に作用する力と、ノズルブロック151の内部圧力とのバランスが適宜調整される。処理液供給系160の圧力調整部163は、ノズルブロック151の内部圧力を調整するために動作する。圧力調整部163が処理液タンク162内の圧力を変化させることにより、ノズルブロック151の内部圧力が変化する。これにより、基板Wの塗布処理中にノズルブロック151から基板W上に引き出される処理液の量(処理液の吐出量)が調整される。
【0043】
本実施の形態においては、基板Wの塗布処理中、基板Wへの処理液の吐出を許容しつつ、ノズルブロック151の内部圧力が適度に負圧になるように処理液タンク162内の圧力が調整される。この場合、ノズルブロック151内の処理液に、液流路15から貯留部16に流入しようとする力が適度に発生する。したがって、処理液の吐出量は、ノズルブロック151内の処理液に毛細管現象に起因する力のみが作用する場合に比べて少なくなる。
【0044】
<4>基板処理装置1の制御系
図3は、
図1の基板処理装置1の制御系の構成を示すブロック図である。上記のように、基板処理装置1は、制御部110を備える。制御部110は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。ROMは、システムプログラムを記憶する。記憶装置は、基板Wの塗布処理を行うための塗布処理プログラムを記憶する。
【0045】
図3に示すように、制御部110は、基板処理装置1の各部の動作を制御するための機能部として、ノズル移動制御部111、吐出制御部112、プレート制御部113および条件設定部114を含む。CPUが記憶装置に記憶された塗布処理プログラムをRAM上で実行することにより制御部110の機能部が実現される。制御部110の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0046】
条件設定部114には、予め定められた1または複数の処理条件が記憶されている(処理条件の設定)。本実施の形態においては、1または複数の処理条件は、「ノズルブロック151の移動速度」および「ノズルブロック151の移動方向」を含む。また、1または複数の処理条件は、「ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔」、「隙間の間隔の調整速度」および「ノズルブロック151の内部圧力」をさらに含む。
【0047】
以下の説明では、ノズルブロック151が塗布装置100の後方から前方に向かって移動することを前進と呼び、ノズルブロック151が塗布装置100の前方から後方に向かって移動することを後進と呼ぶ。
【0048】
「ノズルブロック151の移動速度」は塗布処理時にノズルブロック151が基板Wに対して塗布装置100の前後方向に移動するときの移動速度であり、「ノズルブロック151の移動方向」は当該塗布処理中のノズルブロック151の進行方向(前進方向または後進方向)である。「隙間の間隔の調整速度」は、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔を変化させる際の隙間の間隔の単位時間当たりの変化量であり、本実施の形態では、基板Wに対するノズルブロック151の上下方向の移動速度である。
【0049】
基板処理装置1は、操作部190をさらに備える。操作部190は、例えばキーボードおよびポインティングデバイスを含み、使用者により操作可能に構成される。使用者は、操作部190を操作することにより塗布処理のための1または複数の処理条件を入力することができる。処理条件が入力された場合、条件設定部114は、入力された処理条件で予め記憶されている処理条件を更新する(処理条件の再設定)。
【0050】
ノズル移動制御部111は、基板Wの塗布処理時に、条件設定部114により設定された各種処理条件に基づいてX方向駆動部141およびZ方向駆動部142を制御する。例えば、ノズル移動制御部111は、Z方向駆動部142を制御することにより、ノズルブロック151と基板Wとの間に、設定された間隔の隙間を設定された調整速度で形成する。また、ノズル移動制御部111は、X方向駆動部141を制御することにより、ノズルブロック151を、設定された移動方向に設定された移動速度で移動させる。
【0051】
吐出制御部112は、基板Wの塗布処理時に、条件設定部114により設定された各種処理条件に基づいて処理液供給系160のバルブ161および圧力調整部163を制御する。例えば、吐出制御部112は、バルブ161を開状態にする。また、吐出制御部112は、圧力調整部163を制御することにより、ノズルブロック151の内部圧力が設定された値となるように、処理液タンク162内の圧力を調整する。
【0052】
プレート制御部113は、ピン昇降駆動部134および吸引駆動部135を制御する。それにより、ピン昇降駆動部134は、例えば塗布装置100における基板Wの搬入および搬出時に複数の支持ピン133を上下動させる。吸引駆動部135は、基板Wをプレート部材131上に吸着保持する。また、プレート制御部113は、プレート調整部132を制御する。それにより、プレート部材131の基板載置部分の温度が調整される。
【0053】
2.基板Wの塗布処理の具体例
以下の説明では、プレート部材131上に載置された基板Wのうち塗布装置100の後方を向く一端部を当該基板Wの後端部と呼ぶ。さらに、プレート部材131上に載置された基板Wのうち塗布装置100の前方を向く他端部を当該基板Wの前端部と呼ぶ。また、塗布装置100の後方を単に後方と呼び、塗布装置100の前方を単に前方と呼ぶ。さらに、Z方向を上下方向と呼ぶ。
【0054】
図4~
図11は、
図1の塗布装置100による基板Wの塗布処理の具体例を説明するための図である。
図4~
図11においては、塗布処理が開始されてから終了するまでの塗布装置100の動作が時系列で示される。
図4~
図11の各図の上段には、当該図面で示される時点に対応して設定されている処理条件が示される。また、各図の中段および下段には、塗布装置100の動作を示す側面図および平面図がそれぞれ示される。各図の下段の平面図には、基板Wとノズルブロック151との位置関係の理解を容易にするために、平面視で基板Wの後端部wp1、中心部wp2および前端部wp3を通って前後方向に延びる仮想線VLが示される。
【0055】
まず、
図4の下段に示すように、前後方向において吐出口14が基板Wの近傍でかつ基板Wよりも後方の初期位置p10に位置するように、ノズルブロック151が配置される。この状態で、処理条件に従って、上下方向におけるノズルブロック151の基板対向面13aと基板Wの上面との間の隙間の間隔が第1の間隔GD1に調整される。第1の間隔GD1は、上記の毛細管現象を発生させることが可能に定められ、5μm以上500μm以下であり、本例では70μm程度である。さらに、ノズルブロック151の内部圧力が、第1の負の圧力(第1の大きさの負のゲージ圧)となるように調整される。第1の負の圧力は、500Pa以上0Pa以下であり、本例では100Pa程度である。
【0056】
次に、ノズルブロック151が初期位置から予め定められた第1の移動速度で前進する。第1の移動速度は、1000μm/sec以上10000μm/sec以下であり、本例では2500μm/sec程度である。
【0057】
平面視でノズルブロック151の吐出口14と基板Wの後端部近傍部分とが重なるタイミングで、図示しないポンプにより所定量の処理液が吐出口14から吐出される。それにより、
図5の中段に示すように、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間が処理液で満たされ、毛細管現象が発生し、ノズルブロック151内の処理液が基板W上に引き出される。第1の移動速度でノズルブロック151が前進することにより、基板Wの上面のうち平面視でノズルブロック151が通過する部分に連続的に処理液の膜が形成される。
【0058】
ここで、基板Wのうち、当該基板Wの前端部wp3に近接しかつ当該基板Wの周縁部に位置する予め定められた部分を周縁停止部wp4と呼ぶ。
図5の下段に示すように、周縁停止部wp4は、仮想線VL上に位置する。前後方向における周縁停止部wp4と前端部wp3との間の距離D1は、前端部wp3よりも前方の距離を負の値で表し、前端部wp3よりも後方の距離を正の値で表した場合に、-1mm以上5mm以下であり、本例では1mm程度である。
【0059】
上記のノズルブロック151の前進動作は、平面視で吐出口14が周縁停止部wp4に重なる位置(以下、第1の位置と呼ぶ。)p11まで継続される。ノズルブロック151が第1の位置p11に到達すると、
図6の上段に示すように、ノズルブロック151の前方への移動速度が第1の移動速度から0となる。それにより、ノズルブロック151が一時的に停止する。この時点で、基板Wの上面全体に処理液の膜が形成される。
【0060】
次に、
図7の上段および中段に示すように、ノズルブロック151が予め設定された第1の調整速度で上昇する。それにより、上下方向におけるノズルブロック151の基板対向面13aと基板Wの上面との間の隙間の間隔が第1の間隔GD1から第2の間隔GD2に調整される。第1の調整速度は、10μm/sec以上1000μm/sec以下であり、本例では50μm/sec程度である。第2の間隔GD2は、第1の間隔GD1よりも大きく10μm以上2000μm以下であり、本例では300μm程度である。
【0061】
上記のように隙間の間隔を調整する動作は、ノズルブロック151と基板Wとの間に、ノズルブロック151の基板対向面13aに付着する処理液と基板W上の処理液とをつなぐ液柱LCを形成するために行われる。そのため、上記の第1の調整速度および第2の間隔GD2は、ノズルブロック151と基板Wとの間で処理液のつながりが完全に遮断されないように、ノズルブロック151の下端部の外表面の物性、および処理液の物性等の関係を考慮して定められる。第1の調整速度および第2の間隔GD2は、実験またはシミュレーションにより定められてもよい。
【0062】
さらに、ノズルブロック151の内部圧力が、第1の負の圧力から第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力(第1の大きさよりも大きい第2の大きさの負のゲージ圧)となるように調整される。第2の負の圧力は、500Pa以上0Pa以下であり、本例では100Pa程度である。このようにノズルブロック151の内部圧力を調整する動作は、ノズルブロック151と基板Wとの間に形成される液柱LCの一部をノズルブロック151内に吸引し、液柱LCの横断面を小さくするために行われる。液柱LCの横断面は、液柱LCを当該液柱LCが延びる方向に直交する面(本例では水平面)で切断した断面である。
【0063】
なお、ノズルブロック151の内部圧力が、第2の負の圧力とされる場合には、基板W上の周縁停止部wp4およびその周辺部に塗布された余剰の処理液の一部も、液柱LCを通して吐出口14からノズルブロック151内に吸引される。また、ノズルブロック151の後傾斜面13cに付着する余剰の処理液の一部も、吐出口14からノズルブロック151内に吸引される。
【0064】
ただし、第2の負の圧力は、第1の調整速度および第2の間隔GD2と同様に、ノズルブロック151と基板Wとの間で処理液のつながりが完全に遮断されないように、ノズルブロック151の下端部の外表面の物性、および処理液の物性等の関係を考慮して定められる。第2の負の圧力は、実験またはシミュレーションにより定められてもよい。
【0065】
次に、
図8の上段に示すように、ノズルブロック151の内部圧力が、第2の負の圧力から第1の負の圧力に戻される。また、
図8の中段および下段に示すように、ノズルブロック151が第1の位置p11から基板Wよりも前方の第2の位置p12に向かって第1の移動速度で前進する。前後方向における基板Wの前端部wp3と第2の位置p12との間の距離D2は、前端部wp3よりも前方の距離を正の値で表した場合に0mm以上5mm以下であり、本例では0mm程度である。
【0066】
ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12まで前進する間、液柱LCの断面は、ノズルブロック151と基板Wとの間の前後方向の距離が大きくなるにつれて小さくなる。また、ノズルブロック151の基板対向面13aに付着する液柱LCの上端部の処理液は、当該基板対向面13a上で後方に移動する。
【0067】
その結果、ノズルブロック151が第2の位置p12に到達する際には、
図9の中段に示すように、液柱LCの上端部の処理液はノズルブロック151の基板対向面13a上で吐出口14から後方に離間した位置まで移動する。また、この場合、基板W上に塗布された処理液と液柱LCとの接続部分が基板Wの周縁停止部wp4から基板Wの前端部wp3に近づく。
【0068】
このようにして、本例では、ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12まで前進する間に、液柱LCが吐出口14内の処理液に接する液接触状態から吐出口14内部の処理液に接しない液非接触状態に移行する。
【0069】
次に、
図10および
図11の上段および中段に示すように、ノズルブロック151が予め設定された第2の調整速度で下降する。それにより、上下方向におけるノズルブロック151の基板対向面13aと基板Wの上面との間の隙間の間隔が第2の間隔GD2から第3の間隔GD3(
図11)に調整される。
【0070】
第2の調整速度の大きさは、第1の調整速度と同じ大きさであってもよいし、第1の調整速度の大きさよりも大きくてもよい。第2の調整速度は、5μm/sec以上500μm/sec以下であり、本例では50μm/sec程度である。第3の間隔GD3は、第1の間隔GD1および第2の間隔GD2よりも小さく、基板Wの上面よりも下方の距離を負の値で表し、基板Wの上面よりも上方の距離を正の値で表した場合に、-1000μm以上70μm以下であり、本例では70μm程度である。
【0071】
また、上下方向におけるノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔が調整される間に、ノズルブロック151が第2の位置p12よりも前方の第3の位置p13に向かって第2の移動速度で前進する。第2の移動速度は、第1の移動速度よりも高く、1000μm/sec以上10000μm/sec以下であり、本例では2500μm/sec程度である。
【0072】
ここで、ノズルブロック151が第2の位置p12にある状態で、液柱LCは、ノズルブロック151が第1の位置p11にある状態(
図7)に比べて小さい断面を有し、ある程度分断されやすい状態にある。本例では、ノズルブロック151は、第2の位置p12に到達した後、斜め下方に高速で前進する。それにより、液柱LCは、
図11の中段および下段に示すように、ノズルブロック151が第2の位置p12から第3の位置p13まで前進する間に分断される。それにより、基板Wの塗布処理が完了する。
【0073】
3.効果
上記の塗布処理においては、最初に、ノズルブロック151と基板Wの上面との間に第1の間隔GD1が形成されつつ、ノズルブロック151の内部圧力が第1の負の圧力に調整される。この状態で、ノズルブロック151が初期位置p10から第1の位置p11まで前進する(
図4~
図6参照)。このとき、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間で処理液に作用する毛細管現象により、吐出口14から引き出された処理液が基板の上面に塗布される。この場合、ノズルブロック151内の処理液は毛細管現象が作用しない状態で吐出口から吐出されない。したがって、処理液の無駄な消費が抑制される。
【0074】
ノズルブロック151が第1の位置p11にある状態で、ノズルブロック151と基板Wとの間の間隔が、第1の間隔GD1よりも大きい第2の間隔GD2に調整される。それにより、ノズルブロック151の下端部の外表面上に付着する処理液と基板W上に塗布された処理液との間に、液柱LCが形成される。
【0075】
また、ノズルブロック151の内部圧力が第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整される。それにより、基板Wの周縁停止部wp4およびその近傍に塗布された処理液のうち余剰の部分が、液柱LCを通して吐出口14からノズルブロック151内に吸引される。また、ノズルブロック151の下端部の外表面上に付着する処理液のうち余剰の部分が、吐出口14からノズルブロック151内に吸引される。さらに、液柱LCの一部が吐出口14からノズルブロック151内に吸引され、液柱LCの断面が小さくなる(
図6および
図7参照)。
【0076】
液柱LCが液接触状態にある状態で分断されると、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間、ノズルブロック151の下端部の外表面の物性、および処理液の物性等の関係によっては、ノズルブロック151内の処理液が吐出口14から基板W上に過剰に引き出される可能性がある。
【0077】
これに対して、上記の塗布処理の具体例では、ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12まで前進する間に、液柱LCが分断されることなく液接触状態から液非接触状態に移行する(
図8および
図9参照)。そのため、ノズルブロック151が第2の位置p12に到達した後に液柱LCが分断されても、その分断時にノズルブロック151内の処理液が吐出口14から基板処理装置1上に過剰に引き出されることがない。さらに、上記のように、ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12への前進を開始する前に、液柱LCの断面はある程度小さくされている。そのため、液柱LCが分断される際に当該液柱LCの一部が基板W上に流れる場合でも、その流動量が低減される。したがって、基板Wの上面上で処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0078】
さらに、ノズルブロック151は、第2の位置p12から斜め下方に向かうように前進する。この場合、基板W上の処理液と液柱LCとの接続部分を基板Wの周縁停止部wp4から前端部wp3に近づけることができる。したがって、液柱LCが分断される際に当該液柱LCの一部が基板W上に流れる場合でも、当該分断に起因して局所的に処理液の膜の厚さが大きくなる部分が前端部wp3に極めて近い領域に制限される(
図10および
図11参照)。すなわち、基板Wの外周端部近傍に、液柱LCの分断に起因する厚さの変化部分が発生する場合でも、その厚さの変化部分を基板W上の処理対象領域(例えばチップの形成領域等)から外すことができる。
【0079】
また、ノズルブロック151が第2の位置p12から斜め下方に前進する際には、その移動速度が高くなる。それにより、液柱LCが所望のタイミングで分断される。したがって、意図しないタイミングで液柱LCが分断されることに起因して、基板W上に形成される処理液の膜の厚さにばらつきが発生することが防止される。
【0080】
これらの結果、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板W上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【0081】
4.他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係る基板Wの塗布処理においては、ノズルブロック151の前進時に、ノズルブロック151と基板Wとの間に形成される液柱LCが液接触状態から液非接触状態に移行すればよい。これにより、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板W上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することができる。
【0082】
この観点を考慮すると、ノズルブロック151の前進中に液柱LCが液接触状態から液非接触状態に移行する場合には、ノズルブロック151と基板Wとの間隔は第1の位置p11で第1の間隔GD1から第2の間隔GD2に変更されなくてもよい。あるいは、ノズルブロック151の前進中に液柱LCが液接触状態から液非接触状態に移行する場合には、ノズルブロック151の内部圧力は第1の位置p11で第1の負の圧力から第2の負の圧力に変更されなくてもよい。
【0083】
(b)上記実施の形態に係る基板Wの塗布処理においては、ノズルブロック151の前進時に、ノズルブロック151と基板Wとの間に形成される液柱LCの断面ができる限り小さくされればよい。これにより、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板W上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することができる。
【0084】
この観点を考慮すると、第1の位置p11でノズルブロック151と基板Wとの間隔が第2の間隔GD2に調整されかつノズルブロック151の内部圧力が第1の負の圧力から第2の負の圧力に変更されることにより液柱LCの断面が十分小さくされる場合には、液柱LCを液接触状態から液非接触状態に移行させなくてもよい。
【0085】
(c)上記実施の形態に係る基板Wの塗布処理では、第1の位置p11でノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔が第2の間隔GD2に調整される際にノズルブロック151の内部圧力が第2の負の圧力で維持される。その後、ノズルブロック151が前進する際に、ノズルブロック151の内部圧力が第2の負の圧力から第1の負の圧力に戻される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0086】
ノズルブロック151の内部圧力は、ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12まで前進する間第2の負の圧力で維持されてもよい。あるいは、ノズルブロック151の内部圧力は、ノズルブロック151が第1の位置p11から第3の位置p13まで前進する間、第2の負の圧力で維持されてもよい。
【0087】
(d)上記実施の形態に係る基板Wの塗布処理において、ノズルブロック151は、第1の位置p11で当該ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔が第2の間隔GD2に調整された状態で、所定時間保持されてもよい。すなわち、ノズルブロック151は、第1の位置p11で当該ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間の間隔が第2の間隔GD2に調整された状態で、所定時間動作を停止してもよい。この場合、所定時間は、例えば10sec以下である。これにより、ノズルブロック151と基板Wとの間に形成される液柱LCの断面を十分に小さくすることができる。
【0088】
(e)上記実施の形態に係る基板Wの塗布処理では、ノズルブロック151は初期位置p10から第1の位置p11まで第1の移動速度で前進し、第1の位置p11から第2の位置p12まで第1の移動速度で前進する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。ノズルブロック151は、第1の移動速度とは異なりかつ第2の移動速度よりも低い移動速度で、第1の位置p11から第2の位置p12まで前進してもよい。
【0089】
(f)上記実施の形態に係る塗布装置100においては、基板Wの上面全体に処理液が塗布されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの上面のうち一部の領域にのみ処理液の膜が形成されてもよい。
【0090】
(g)上記実施の形態に係る塗布装置100は、固定されたプレート部材131上の基板Wに対してノズル装置150が前後方向に移動することにより基板W上に処理液の膜が形成されるが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
塗布装置100は、プレート部材131が前後方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、固定されたノズル装置150に対してプレート部材131が前後方向に移動することにより、プレート部材131に載置された基板W上に処理液の膜が形成されてもよい。あるいは、ノズル装置150が前進(または後進)するとともにプレート部材131が後進(または前進)することにより、プレート部材131に載置された基板W上に処理液の膜が形成されてもよい。
【0092】
(h)上記実施の形態においては、ノズルブロック151が第1の位置p11に到達して上昇する際に、ノズルブロック151の内部圧力が第1の負の圧力から第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整されるとしているが、本発明はこれに限定されない。第2の負の圧力は、第1の負の圧力よりも高くてもよい。
【0093】
この場合、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間で発生する毛細管現象が解消されることに起因してノズルブロック151の外部の雰囲気が吐出口14からノズルブロック151の内部に引き込まれることが防止される。それにより、ノズルブロック151内の処理液中に気泡が混在することが防止される。
【0094】
(i)上記実施の形態に係る基板処理装置1において、ノズルブロック151から基板Wには、ノズルブロック151と基板Wとの間の隙間で発生する毛細管現象を利用して基板W上に処理液が供給されるが、本発明はこれに限定されない。
【0095】
例えば、基板処理装置1は、毛細管現象の発生を利用することなく、ノズルブロック151の吐出口14から基板W上に処理液を供給するように構成されてもよい。この場合、ノズルブロック151から基板Wへの処理液の供給時に、ノズルブロック151と基板Wとの間の距離を毛細管現象が発生しない程度に大きくすることができる。
【0096】
なお、上記のように、毛細管現象を利用しない場合、ノズルブロック151から基板Wへの処理液の供給は、ノズルブロック151内の処理液の圧力を調整する(高くする)ことにより行われる。また、この場合、基板Wに対するノズルブロック151の移動中、スリット状の吐出口14の開口領域を基板Wの幅に合わせて調整することが好ましい。このように、スリット状の吐出口14のうち、基板Wに対向しない部分を適宜閉塞する。それにより、基板Wが存在しない領域に処理液が吐出されることが防止され、処理液の無駄な消費が防止される。
【0097】
5.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0098】
上記実施の形態においては、基板処理装置1が基板処理装置の例であり、ステージ装置130が基板保持部の例であり、吐出口14が吐出口の例であり、ノズルブロック151がノズルの例であり、ノズルブロック151の下端部がノズル先端部の例であり、Y方向が吐出口の長手方向の例であり、X方向および塗布装置100の前後方向が吐出口の短手方向の例である。
【0099】
また、2つのノズル支持体140およびX方向駆動部141が移動部の例であり、制御部110が制御部の例であり、第1の間隔GD1が所定間隔の例であり、第2の間隔GD2が所定間隔よりも大きい間隔の例であり、ノズルブロック151が初期位置p10から第1の位置p11まで移動する動作が第1の移動動作の例である。
【0100】
また、液柱LCが液柱の例であり、ノズルブロック151が第1の位置p11から第2の位置p12まで移動する動作が第2の移動動作の例であり、基板Wの周縁停止部wp4が基板の周縁部の予め定められた部分の例であり、第1の位置p11が第1の位置の例であり、第2の位置p12が第2の位置の例であり、2つのノズル支持体140およびZ方向駆動部142が昇降部の例であり、処理液供給系160の圧力調整部163が圧力調整部の例である。
【0101】
また、第1の負の圧力が第1の負の圧力の例であり、第1の移動速度が第1の速度および第2の速度の例であり、第2の移動速度が第3の速度の例である。さらに、他の実施の形態の項目(h)を除く部分に記載された第2の負の圧力が請求項8および11に記載の第2の負の圧力の例であり、他の実施の形態の項目(h)に記載された第2の負の圧力が請求項5に記載の第2の負の圧力の例である。
【0102】
6.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る基板処理装置は、
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、
前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、
前記移動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルが前記短手方向に相対的に移動する第1の移動動作と、
前記第1の移動動作の後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルがさらに前記短手方向に相対的に移動する第2の移動動作とを、前記移動部に行わせる。
【0103】
その基板処理装置においては、第1の移動動作時に、スリット状の吐出口を有するノズルを用いて基板上の上面上に処理液が塗布される。したがって、処理液の無駄な消費が抑制される。
【0104】
第1の移動動作終了時点で、ノズル先端部と基板との間の隙間には処理液が満たされている。ノズル先端部と基板との間の距離が広がると、ノズル先端部の外表面上に付着する処理液と基板上に塗布された処理液との間に、液柱が形成される。液柱が液接触状態にある状態で分断されると、ノズル先端部と基板との間の隙間、ノズル先端部の外表面の物性、および処理液の表面張力等の関係によっては、ノズル内の処理液が吐出部から基板上に過剰に引き出される可能性がある。
【0105】
これに対して、上記の構成によれば、第2の移動動作時に、液柱が分断されることなく液接触状態から液非接触状態に移行する。そのため、第2の移動動作後に液柱が分断されても、その分断時にノズル内の処理液が吐出部から基板上に過剰に引き出されることがない。したがって、基板の上面上で処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0106】
その結果、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【0107】
(第2項)第1項に記載の基板処理装置において、
前記第1の移動動作において前記基板の前記上面上に処理液が供給されることは、前記隙間で毛細管現象を発生させることにより前記ノズル内の処理液を前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出させることを含んでもよい。
【0108】
この場合、第1の移動動作時に、ノズル先端部と基板との間の隙間で処理液に作用する毛細管現象により、スリット状の吐出口から引き出された処理液が基板の上面に塗布される。したがって、毛細管現象が作用しない状態でノズル内の処理液が吐出口から吐出されないように、ノズルを構成することができる。
【0109】
(第3項)第1項または第2項に記載の基板処理装置において、
前記ノズルの前記吐出口は、
前記第1の移動動作により、平面視で前記基板の少なくとも一部の領域を通過して、前記基板の周縁部の予め定められた部分に重なる第1の位置に移動し、
前記第2の移動動作により、平面視で前記第1の位置から前記基板に重ならない第2の位置に移動してもよい。
【0110】
この場合、基板の周縁部に塗布される処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0111】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の基板処理装置において、
前記基板処理装置は、
前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより上下方向における前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を変更する昇降部をさらに備え、
前記制御部は、
前記昇降部を制御することにより、前記第1の移動動作中前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を、前記所定間隔以下の間隔に維持し、前記第1の移動動作終了後前記第2の移動動作開始前に、前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更し、前記第2の移動動作中前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を、前記所定間隔よりも大きく維持してもよい。
【0112】
この場合、第1の移動動作終了後第2の移動動作開始前にノズル先端部と基板との間の間隔が大きくなる。それにより、ノズル先端部の外表面上に付着する処理液と基板上に塗布された処理液との間に液柱が形成される。
【0113】
液柱は、ノズル先端部と基板との間の間隔が大きくなるにつれて引き伸ばされる。それにより、ノズル先端部と基板とをつなぐ液柱の断面が小さくなる。そのため、ノズル先端部と基板との間で液柱が分断される際に当該液柱の一部が基板上に流れる場合でも、その流動量が低減される。したがって、基板の上面上で処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0114】
ここで、第1の移動動作終了後第2の移動動作開始前に、ノズル内の処理液の圧力が低くなるように調整されてもよい。この場合、基板の周縁部の予め定められた部分およびその近傍に塗布された処理液のうち余剰の部分が、液柱を通して吐出口からノズル内に吸引され、ノズル先端部と基板とをつなぐ液柱の断面がより小さくなる。そのため、ノズル先端部と基板との間で液柱が分断される際に当該液柱の一部が基板上に流れる場合でも、その流動量が低減される。したがって、基板の上面上で処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0115】
(第5項)第4項に記載の基板処理装置において、
前記基板処理装置は、
前記ノズル内の処理液の圧力を調整する圧力調整部をさらに備え、
前記制御部は、
前記圧力調整部を制御することにより、前記第1の移動動作中前記ノズル内の処理液の圧力を予め定められた第1の負の圧力に調整し、前記第1の移動動作終了後前記第2の移動動作開始前に、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも高い第2の負の圧力に調整してもよい。
【0116】
この場合、第1の移動動作中ノズル内の処理液の圧力は第1の負の圧力に調整される。それにより、毛細管現象が発生しない状態で吐出口から処理液が漏れ出ること、および吐出口から過剰な量の処理液が漏れ出ることが防止される。
【0117】
また、上記の構成によれば、第1の移動動作終了後第2の移動動作開始前に、ノズル先端部と基板との間に液柱が形成されとともに、ノズル内の処理液の圧力は第2の負の圧力に調整される。それにより、ノズル先端部と基板との間で発生する毛細管現象が解消されることに起因してノズルの外部の雰囲気が吐出口からノズルの内部に引き込まれることが防止される。それにより、ノズル内の処理液中に気泡が混在することが防止される。
【0118】
(第6項)第4項または第5項に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記移動部および前記昇降部を制御することにより、前記第2の移動動作後、前記吐出口の長手方向に沿って見た側面視で前記ノズル先端部を前記基板の外方に向かって斜め下方に相対的に移動させてもよい。
【0119】
この場合、基板上の処理液と液柱との接続部分を基板の周縁部の予め定められた部分から基板の外周端部により近い部分に近づけることができる。したがって、ノズル先端部と基板との間で液柱が分断される際に当該液柱の一部が基板上に流れる場合でも、当該分断に起因して局所的に処理液の膜の厚さが大きくなる部分が基板の外周端部に極めて近い位置に制限される。
【0120】
(第7項)第6項に記載の基板処理装置において、
前記第1の移動動作時の前記ノズル先端部と前記基板との間の相対的な移動速度を第1の速度とし、前記第2の移動動作時の前記ノズル先端部と前記基板との間の相対的な移動速度を第2の速度とし、前記第2の移動動作後、前記ノズル先端部が前記基板の外方に向かって斜め下方に相対的に移動する際の前記ノズル先端部と前記基板との間の前記短手方向における相対的な移動速度を第3の速度とした場合に、前記第3の速度は、前記第1の速度および前記第2の速度よりも高くてもよい。
【0121】
平面視で吐出口が第2の位置にある状態で、ノズル先端部と基板との間の液柱は、第2の移動動作の開始時点に比べて小さい断面を有し、ある程度分断されやすい状態にあると考えられる。したがって、ノズル先端部が基板の外方に向かって斜め下方に相対的に移動する際の第3の速度が、第1の速度および第2の速度よりも大きいことにより、液柱が小さくなった所望のタイミングで液柱を円滑に分断することができる。その結果、意図しないタイミングで液柱が分断されることに起因して、基板上に形成される処理液の膜の厚さにばらつきが発生することが防止される。
【0122】
(第8項)第8項に係る基板処理装置は、
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルと、
前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動部と、
前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより上下方向における前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を変更する昇降部と、
前記ノズル内の処理液の圧力を調整する圧力調整部と、
前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記移動部、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、前記ノズル内の処理液の圧力が予め定められた第1の負の圧力で維持されかつ前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させ、
その後、前記昇降部および前記圧力調整部を制御することにより、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整しつつ前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる。
【0123】
その基板処理装置においては、ノズルと基板の上面との間に所定間隔以下の隙間が形成された状態で基板およびノズルが短手方向に相対的に移動する。このとき、当該隙間で処理液に作用する毛細管現象により、スリット状の吐出口から引き出された処理液が基板の上面に塗布される。上記の移動中、ノズル内の処理液の圧力は第1の負の圧力に調整される。それにより、毛細管現象が発生しない状態で吐出口から処理液が漏れ出ること、および吐出口から過剰な量の処理液が漏れ出ることが防止される。
【0124】
また、上記の構成によれば、基板およびノズルが短手方向に相対的に移動した後、平面視で吐出口が基板の一部に重なる状態で、ノズル内の処理液の圧力が第2の負の圧力に調整される。また、ノズル先端部と基板との間の間隔が所定間隔よりも大きくなる。それにより、基板の一部およびその近傍に塗布された処理液のうち余剰の部分が、液柱を通して吐出口からノズル内に吸引され、基板とノズル先端部とをつなぐ液柱の断面が小さくなる。そのため、ノズル先端部と基板との間で液柱が分断される際に当該液柱の一部が基板上に流れる場合でも、その流動量が低減される。したがって、基板の上面上で、処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0125】
これらの結果、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【0126】
(第9項)第9項に係る基板処理方法は、
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、
前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間が形成されかつ前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記吐出口から前記基板の前記上面上に処理液を供給させつつ、前記基板および前記ノズルを前記短手方向に相対的に移動させる第1の移動ステップと、
前記第1の移動ステップが行われた後、前記基板の前記上面上に存在する処理液と前記ノズル先端部の外表面に付着する処理液とをつなぐ液柱が、前記吐出口の内部に存在する処理液に接する液接触状態から前記吐出口の内部に存在する処理液に接しない液非接触状態に移行するように、前記基板および前記ノズルをさらに前記短手方向に相対的に移動させる第2の移動ステップとを含む、基板処理方法。
【0127】
その基板処理方法においては、第1の移動動作時に、スリット状の吐出口を有するノズルを用いて基板上の上面上に処理液が塗布される。したがって、処理液の無駄な消費が抑制される。
【0128】
第1の移動ステップ終了時点で、ノズル先端部と基板との間の隙間には処理液が満たされている。ノズル先端部と基板との間の距離が広がると、ノズル先端部の外表面上に付着する処理液と基板上に塗布された処理液との間に、液柱が形成される。液柱が液接触状態にある状態で分断されると、ノズル先端部と基板との間の隙間、ノズル先端部の外表面の物性、および処理液の表面張力等の関係によっては、ノズル内の処理液が吐出部から基板上に過剰に引き出される可能性がある。
【0129】
これに対して、上記の方法によれば、第2の移動ステップ時に、液柱が分断されることなく液接触状態から液非接触状態に移行する。そのため、第2の移動動作後に液柱が分断されても、その分断時にノズル内の処理液が吐出部から基板上に過剰に引き出されることがない。したがって、基板の上面上で処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0130】
その結果、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【0131】
(第10項)第9項に記載の基板処理方法において、
前記第1の動作ステップにおいて前記基板の前記上面上に処理液が供給されることは、前記隙間で毛細管現象を発生させることにより前記ノズル内の処理液を前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出させることを含んでもよい。
【0132】
この場合、第1の移動ステップにおいて、ノズル先端部と基板との間の隙間で処理液に作用する毛細管現象により、スリット状の吐出口から引き出された処理液が基板の上面に塗布される。したがって、毛細管現象が作用しない状態でノズル内の処理液が吐出口から吐出されないように、ノズルを構成することができる。
【0133】
(第11項)第11項に係る基板処理方法は、
少なくとも一部が円形状の外周部を有する基板の上面に処理液の膜を形成する基板処理方法であって、
基板保持部により前記基板を保持するステップと、
一方向に延びるスリット状の吐出口が形成されたノズル先端部を有するノズルを用意するステップと、
前記ノズル内の処理液の圧力を予め定められた第1の負の圧力に調整する第1の圧力調整ステップと、
第1の圧力調整ステップが行われている間、前記基板保持部に保持された前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることにより前記ノズル先端部と前記基板との間に所定間隔以下の隙間を形成する第1の隙間形成ステップと、
前記第1の圧力調整ステップおよび前記第1の隙間形成ステップが行われている間に、前記ノズル先端部と前記基板との間に形成された前記隙間に処理液が満たされる状態で、前記ノズル内の処理液が前記隙間に発生する毛細管現象により前記吐出口から前記基板の前記上面上に引き出されるように、前記基板および前記ノズルのうち少なくとも一方を他方に対して前記吐出口の長手方向に交差する短手方向に相対的に移動させる移動ステップと、
前記移動ステップの後、平面視で前記吐出口が前記基板の一部に重なる状態で、前記ノズル内の処理液の圧力を前記第1の負の圧力よりも低い第2の負の圧力に調整する第2の圧力調整ステップと、
第2の圧力調整ステップが行われている間、前記ノズル先端部と前記基板との間の間隔を前記所定間隔よりも大きい間隔に変更させる第2の隙間形成ステップとを含む、基板処理方法。
【0134】
その基板処理方法においては、ノズルと基板の上面との間に所定間隔以下の隙間が形成された状態で基板およびノズルが短手方向に相対的に移動する。このとき、当該隙間で処理液に作用する毛細管現象により、スリット状の吐出口から引き出された処理液が基板の上面に塗布される。上記の移動中、ノズル内の処理液の圧力は第1の負の圧力に調整される。それにより、毛細管現象が発生しない状態で吐出口から処理液が漏れ出ること、および吐出口から過剰な量の処理液が漏れ出ることが防止される。
【0135】
また、上記の構成によれば、基板およびノズルが短手方向に相対的に移動した後、平面視で吐出口が基板の一部に重なる状態で、ノズル内の処理液の圧力が第2の負の圧力に調整される。また、ノズル先端部と基板との間の間隔が所定間隔よりも大きくなる。それにより、基板の一部およびその近傍に塗布された処理液のうち余剰の部分が、液柱を通して吐出口からノズル内に吸引され、基板とノズル先端部とをつなぐ液柱の断面が小さくなる。そのため、ノズル先端部と基板との間で液柱が分断される際に当該液柱の一部が基板上に流れる場合でも、その流動量が低減される。したがって、基板の上面上で、処理液の膜の厚さが局所的に大きくなることが低減される。
【0136】
これらの結果、処理液の無駄な消費を抑制しつつ基板上に塗布される処理液の膜の厚さを均一化することが可能になる。
【0137】
上記の実施形態に係る基板処理装置および基板処理方法によれば、処理液の無駄な消費が抑制されるので、多量な処理液を生成する必要がない。したがって、処理液に起因する地球環境の汚染の低減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0138】
1…基板処理装置,11…前面,12…後面,13a…基板対向面,13b…前傾斜面,13c…後傾斜面,14…吐出口,15…液流路,16…貯留部,100…塗布装置,110…制御部,111…ノズル移動制御部,112…吐出制御部,113…プレート制御部,114…条件設定部,120…ステージ支持体,121…ガイドレール,130…ステージ装置,131…プレート部材,132…プレート調整部,133…支持ピン,134…ピン昇降駆動部,135…吸引駆動部,140…ノズル支持体,141…X方向駆動部,142…Z方向駆動部,150…ノズル装置,151…ノズルブロック,160…処理液供給系,161…バルブ,162…処理液タンク,163…圧力調整部,190…操作部,LC…液柱,PI…配管,VL…仮想線,W…基板,h01,h02…高さ位置,p10…初期位置,p11…第1の位置,p12…第2の位置,p13…第3の位置,ta…一端部,tb…他端部,wp1…後端部,wp2…中心部,wp3…前端部,wp4…周縁停止部