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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127658
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】投影レンズおよび照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20240912BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240912BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240912BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240912BHJP
   F21S 43/20 20180101ALI20240912BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240912BHJP
   G09F 19/18 20060101ALI20240912BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20240912BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240912BHJP
   F21Y 113/10 20160101ALN20240912BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
G03B21/14 D
F21S2/00 330
F21S2/00 350
F21S43/20
F21S43/14
G09F19/18 A
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y113:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036999
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】505474256
【氏名又は名称】佐藤ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】土井 元裕
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA29
2H087PA03
2H087PA17
2H087PB03
2H087QA02
2H087QA05
2H087QA14
2H087QA26
2H087QA39
2H087QA45
2H087RA32
2H087RA41
2H087RA45
2H087UA01
2K203GC03
2K203GC05
2K203GC06
2K203HA08
2K203HA62
2K203HA68
2K203HA73
2K203HA86
(57)【要約】
【課題】基板の光軸方向に限定されずに良好な解像度の投影像が投影可能な投影レンズおよび照明装置を提供する。
【解決手段】投影レンズ1は、光源側から出射される画像光を投影対象に投影する投影レンズであって、光源側より順に配置された第1レンズL1、絞りS、第2レンズL2、および第3レンズL3を有し、第1レンズL1は、光源側に凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズであり、第2レンズL2は、少なくとも一方の面が非球面で、該第2レンズL2に入射された画像光を反射面f5によって第3レンズL3へ向けて偏向させる偏向レンズであり、第3レンズL3は、光源側に凹面を向けた少なくとも一方の面が非球面の負のパワーを持つレンズである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源側から出射される画像光を投影対象に投影する投影レンズであって、
前記投影レンズは、光源側より順に配置された第1レンズ、絞り、第2レンズ、および第3レンズを有し、
前記第1レンズは、光源側に凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズであり、前記第2レンズは、少なくとも一方の面が非球面で、該第2レンズに入射された画像光を反射面によって前記第3レンズへ向けて偏向させる偏向レンズであり、前記第3レンズは、光源側に凹面を向けた少なくとも一方の面が非球面の負のパワーを持つレンズであることを特徴とする投影レンズ。
【請求項2】
前記第2レンズにおいて、前記第2レンズに入射する画像光の有効光束の半径をA、前記第2レンズから出射する画像光の有効光束の半径をB、前記第2レンズに入射する画像光の入射光軸と前記第2レンズから出射する画像光の出射光軸とのなす角度をθ1、入射面から前記入射光軸と前記出射光軸との交点までの入射光軸方向の距離をC1、前記入射光軸と前記出射光軸との交点から出射面までの出射光軸方向の距離をC2とすると、下記の式(1)および(2)を満たすことを特徴とする請求項1記載の投影レンズ。
C1×tan(θ1/2)≧A・・・(1)
C2×tan(θ1/2)≧B・・・(2)
【請求項3】
前記第2レンズにおいて、前記第2レンズに入射する画像光の光束の最外光線と前記入射光軸とのなす角度をθ2、使用環境下の屈折率をn1、前記第2レンズの屈折率をn2とすると、下記の式(3)を満たすことを特徴とする請求項2記載の投影レンズ。
90°-(θ1/2)-θ2>arc・sin(n1/n2)・・・(3)
【請求項4】
前記第3レンズの出射面が平面であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の投影レンズ。
【請求項5】
前記投影レンズの画角が100°未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の投影レンズ。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の投影レンズを備える照明装置であって、
前記照明装置は、並列に配置された第1の光源および第2の光源と、前記第1の光源に対応する第1の画像生成部および前記第2の光源に対応する第2の画像生成部とを備え、
前記投影レンズには、前記第1の画像生成部によって生成された第1の画像光および前記第2の画像生成部によって生成された第2の画像光がそれぞれ入射され、
前記投影レンズにおいて、前記第3レンズは、前記第2レンズから前記第1の画像光が入射される第1の凹面と前記第2の画像光が入射される第2の凹面とが隣接して接続された単一レンズであり、前記第3レンズにおいて、各画像光がそれぞれ出射される出射面は平面で、かつ、これら出射面の領域が互いに一部重複していることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾照明などに用いられる投影レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、任意のデザインが施されたデザインフィルムを用いて、模様が付いた投影像を映す照明装置が知られている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1の照明装置は、光源から出射される光をデザインフィルム、および投影レンズに透過させて、ロゴマークなどのデザインを投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-46769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の照明装置は、光源から投影方向が一直線上であり照明装置自体に単独で基板が搭載されている。この照明装置は、任意の投影方向に合わせて当該照明装置の設置を行うことができ、投影像の投影方向の自由度は高いといえる。
【0005】
ところで、上記のような照明装置は、光源の基板と光学系(投影レンズを含む)がセットとなっている場合が多く、専用基板の影響により製品コスト自体は高くなる傾向がある。例えば、既存基板が存在する製品に対して、既存基板を活かしつつ投影方向を選べることができれば、コスト削減や環境負荷軽減にも繋がると考えられる。例えば、特許文献1記載の照明装置の場合、既存基板を活かそうとした場合、投影像の投影方向は直下方向のみとなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板の光軸方向に限定されずに良好な解像度の投影像が投影可能な投影レンズ、および当該投影レンズを備える照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の投影レンズは、光源側から出射される画像光を投影対象に投影する投影レンズであって、上記投影レンズは、光源側より順に配置された第1レンズ、絞り、第2レンズ、および第3レンズを有し、上記第1レンズは、光源側に凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズであり、上記第2レンズは、少なくとも一方の面が非球面で、該第2レンズに入射された画像光を反射面によって上記第3レンズへ向けて偏向させる偏向レンズであり、上記第3レンズは、光源側に凹面を向けた少なくとも一方の面が非球面の負のパワーを持つレンズであることを特徴とする。なお、ここで言うところの各レンズの一方の面とは、入射面または出射面の光学機能面を指す。また、負のパワーを持つレンズとして、上記第3レンズは光軸からレンズの周辺にいくに従ってレンズの厚みが大きくなる両凹レンズ構造、平凹レンズ構造、凹凸レンズ構造を包含するものである。
【0008】
上記第2レンズにおいて、上記第2レンズに入射する画像光の有効光束の半径をA、上記第2レンズから出射する画像光の有効光束の半径をB、上記第2レンズに入射する画像光の入射光軸と上記第2レンズから出射する画像光の出射光軸とのなす角度をθ1、入射面から上記入射光軸と上記出射光軸との交点までの入射光軸方向の距離をC1、上記入射光軸と上記出射光軸との交点から出射面までの出射光軸方向の距離をC2とすると、下記の式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
C1×tan(θ1/2)≧A・・・(1)
C2×tan(θ1/2)≧B・・・(2)
【0009】
上記第2レンズにおいて、上記第2レンズに入射する画像光の光束の最外光線と上記入射光軸とのなす角度をθ2、使用環境下の屈折率をn1、上記第2レンズの屈折率をn2とすると、下記の式(3)を満たすことを特徴とする。
90°-(θ1/2)-θ2>arc・sin(n1/n2)・・・(3)
【0010】
上記第3レンズの出射面が平面であることを特徴とする。
【0011】
上記投影レンズの画角が100°未満であることを特徴とする。
【0012】
本発明の照明装置は、投影レンズを備える照明装置であって、上記照明装置は、並列に配置された第1の光源および第2の光源と、上記第1の光源に対応する第1の画像生成部および上記第2の光源に対応する第2の画像生成部とを備え、上記投影レンズには、上記第1の画像生成部によって生成された第1の画像光および上記第2の画像生成部によって生成された第2の画像光がそれぞれ入射され、上記投影レンズにおいて、上記第3レンズは、上記第2レンズから上記第1の画像光が入射される第1の凹面と上記第2の画像光が入射される第2の凹面とが隣接して接続された単一レンズであり、上記第3レンズにおいて、各画像光がそれぞれ出射される出射面は平面で、かつ、これら出射面の領域が互いに一部重複していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の投影レンズは、光源側より順に配置された第1レンズ、絞り、第2レンズ、および第3レンズを有し、第1レンズは、光源側に凸面を向けたレンズであり、第2レンズは、入射された画像光を反射面によって第3レンズへ向けて偏向させる偏向レンズであり、第3レンズは、光源側に凹面を向けた負のパワーを持つレンズであり、全系におけるパワー配置などを設定することで、基板の光軸方向に限定されずに良好な解像度の投影像が投影可能である。具体的には、光源側から、正のパワーを持つレンズ、絞り、偏向レンズ、負のパワーを持つレンズを配置することで、偏向レンズに入射される画像光の有効光束を小さくし偏向レンズをコンパクトにしつつも、投影する投影像の画角を大きくすることができる。また、各レンズのいずれかの面が非球面であることから、諸収差を良好に補正することができ、良好な解像性能を得ることができる。
【0014】
また、上記式(1)および式(2)を満たすので、第2レンズに入射する画像光および第2レンズから出射する画像光の光線を損なわずに第3レンズへ向けて偏向でき、良好な解像度の投影像に繋がる。
【0015】
また、上記式(3)を満たすので、入射する画像光の光束の最外光線も反射面によって全反射させることができ、良好な解像度の投影像に繋がる。
【0016】
上記第3レンズの出射面が平面であるので、製造しやすく、また汚れなどの付着も防止しやすい。
【0017】
本発明の照明装置は、並列に配置された第1の光源および第2の光源と、第1の画像生成部および第2の画像生成部と、第1の画像光および第2の画像光がそれぞれ入射される本発明の投影レンズとを備え、該投影レンズにおいて、第3レンズは、第2レンズから第1の画像光が入射される第1の凹面と第2の画像光が入射される第2の凹面とが隣接して接続された単一レンズであり、第3レンズにおいて、各画像光がそれぞれ出射される出射面は平面で、かつ、これら出射面の領域が互いに一部重複しているので、第1の画像光および第2の画像光を投影対象の同一箇所に投影する際などにおいて、各投影像のズレ量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の投影レンズの一形態の概略構成図である。
図2図1の投影レンズを透過する画像光の光線を示す図である。
図3】偏向レンズの各寸法を説明するための概略図である。
図4】本発明の投影レンズを適用した照明装置の一形態の概略構成図である。
図5】本発明の照明装置による投影像の一例を示す図である。
図6】本発明の照明装置による投影像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の投影レンズは、光源側から出射される画像を有する光(画像光)を投影対象に投影する照明装置などに搭載される。当該照明装置は、例えば、投影対象となる地面にロゴマークなどを映し出す車両用照明装置などとして用いられる。その他、任意の投影像(デザイン)をスクリーンなどに映し出す照明装置などとして用いられる。
【0020】
本発明の投影レンズは、既製品の光源の既存基板に対して装着させてもよく、光源とセットとなった照明装置の光学系の一部として用いてもよい。本発明の投影レンズは、画像光を入射させるものであることから、既製品において光源から画像生成部までの既存構成を利用しながら、任意の投影方向へ投影させることもできる。
【0021】
本発明の投影レンズの一形態について図1に基づいて説明する。図1は、投影レンズのレンズ配置を示している。投影レンズ1は、画像生成部Dの光路下流側に配置され、画像生成部Dで生成された画像光が入射されるレンズユニットである。図1では、投影レンズ1に入射される画像光の光軸をO、投影レンズ1から出射される画像光の光軸をOと示している。
【0022】
投影レンズ1の光路上流側には、例えば光源(図示省略)、集光レンズ(図示省略)、および画像生成部Dが配置される。光源には、LED、LD、電球などを用いることができる。例えば、LEDは回路基板上に設けられており、この場合、既存の照明装置においては既存基板を用いてもよい。LEDとしては、例えば、青色、赤色、および緑色などの単色系LED、あるいは青色系LED、赤色系LED、および緑色系LEDを備えたRGB型のLEDを使用できる。
【0023】
上記光源から出射された光は集光レンズに集光された後、画像生成部Dに入射されることが好ましい。集光レンズは、LEDから出射された光を集光して、二次光源を形成するための光学素子であり、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂、ガラスなどの透明材質によって形成される。例えば、集光レンズは凸レンズであり、両面が凸曲面(球面または非球面)である。なお、光源と画像生成部Dの間に配置される集光レンズは、単一のレンズで構成されてもよく、複数のレンズで構成されてもよい。
【0024】
図1において、画像生成部Dはデザインフィルムで構成される。デザインフィルムは、例えば遮光部と非遮光部を有し、当該フィルムを透過する光の光線量の差が模様となって表れる。デザインフィルムには、公知のものを用いることができる。なお、画像生成部Dは、光源から出射された光を変調して画像を生成するものでもよく、例えば、光の偏光成分を制御することによって画像を形成する透過型または反射型の液晶表示素子や、光の進行方向を制御することによって画像を形成する反射型のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)素子などであってもよい。
【0025】
投影レンズ1は、画像生成部Dによって生成された画像光を拡大し、また当該画像光の光軸方向とは交差する方向に画像光を投影するため、複数のレンズを備えている。具体的には、投影レンズ1は、光源側(光源から出射された光の光路の上流側でもある)から投影側(光源から出射された光の光路の下流側でもある)に向かって順に、第1レンズL1、絞りS、第2レンズL2、および第3レンズL3を少なくとも有している。
【0026】
第1レンズL1、第2レンズL2、および第3レンズL3は、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ガラスなどの透明材質によって形成される。なお、第2レンズL2には、第1レンズL1および第3レンズL3よりも、高屈折・高分散材を用いることが好ましい。例えば、第2レンズL2にポリエステル樹脂を用い、第1レンズL1および第3レンズL3にアクリル樹脂を用いることができる。
【0027】
第1レンズL1は、光源側に凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズである。図1において、第1レンズL1は正のパワーを持つレンズであり、入射面f1および出射面f2の両面が凸形状で、かつ、非球面となっている。なお、入射面f1および出射面f2の一方を球面としてもよい。第1レンズL1は、画像光の光軸Oに対し回転対称な形状を有しており、光軸Oと直交する断面形状は円形である。
【0028】
なお、図1では、第1レンズL1は、一枚のレンズで構成されているが、複数枚のレンズ群で構成されてもよい。複数枚のレンズ群で構成する場合、少なくとも1つのレンズ(例えば、当該レンズ群で最も光路上流側に位置するレンズ)が、凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズで構成される。この場合、当該レンズ群全体で正のパワーを持つことが好ましい。
【0029】
絞りSには、例えば遮光性の板材を用いることができる。絞り孔が透過部を形成し、板材のその他の部分が遮光部を形成する。絞りSは、光路において第1レンズL1と第2レンズL2の間に配置されていればよい。
【0030】
第2レンズL2は、少なくとも一方の面が非球面であり、該第2レンズL2に入射された画像光を反射面f5によって上記第3レンズL3へ向けて偏向させる偏向レンズである。図1において、第2レンズL2は、一方の端部が屈曲したような光学部材であり、画像光を入射する入射部(入射面f3を含む)と、入射された画像光を投影方向へ向けて反射する反射面f5と、反射された画像光を第3レンズL3へ向けて出射する出射部(出射面f4を含む)を有する。入射部と出射部の一部は反射面f5で接続されている。第2レンズL2は、円柱状の入射部の中心軸が光軸Oと一致するように配置されている。
【0031】
図1において、第2レンズL2の入射面f3は光源側に凹面を向けて形成され、非球面となっている。入射面f3の外周側は、光軸Oに対して交差する平面f3aで形成されている。この場合、第2レンズL2の光源側の端面は、凹曲面からなる入射面f3と円環状の平面f3aで形成される。
【0032】
反射面f5は、例えば、光軸O上から、その光軸Oに対して偏向方向へ向けて傾けた直線で切断した傾斜平面である。なお、反射面f5は、全反射面でもよく、ミラー蒸着によって形成した反射面などでもよい。また、反射面f5の形状は、傾斜平面に限らない。
【0033】
第2レンズL2において、第3レンズL3と対向する出射部の端面が出射面f4である。出射面f4は投影側に凸面を向けて形成され、非球面となっている。出射面f4から出射される光は拡散されて第3レンズL3に入射される。円柱状の出射部の中心軸は、光軸Oと一致している。
【0034】
なお、図1では、第2レンズL2の入射面f3および出射面f4はいずれも非球面となっているが、入射面f3および出射面f4の一方を球面としてもよい。
【0035】
第3レンズL3は、光源側に凹面を向けた少なくとも一方の面が非球面の負のパワーを持つレンズである。図1において、第3レンズL3は、平凹構造のレンズであり、入射面f6および出射面f7は非球面となっている。第3レンズL3は、光軸Oに対し回転対称な形状を有している。
【0036】
第3レンズL3において、入射面f6の外周側は、光軸Oに対して交差する平面f6aで形成されている。この場合、第3レンズL3の光源側の端面は、凹曲面からなる入射面f6と円環状の平面f6aで形成される。円環状の平面f6aは平面となっているため、第3レンズL3の生産性を向上でき、また平面部分があることでハウジングへの取り付けなどにおいて有利となる。第3レンズL3の入射面f6と第2レンズL2の出射面f4は同軸上に配置されており、図1に示すように、入射面f6の直径d2は出射面f4の直径d1よりも大きいことが好ましい。これにより、第2レンズL2から拡散されて出射される画像光の光束を損なうことなく第3レンズL3に入射させやすくなる。
【0037】
第3レンズL3の出射面f7は、投影側に凸曲面や凹曲面となっていてもよいが、図1に示すように、第3レンズL3の出射面f7は平面であることが好ましい。また、図1に示すように、第3レンズL3の投影側のレンズ面全体が平面であることが好ましい。これにより、第3レンズL3の製造コストを削減することができ、また、第3レンズL3の投影側の面へのゴミなどの付着を低減させることができる。さらに、後述の図4に示すように、並列に入射される複数の画像光を投影する際において、互いの光線交差に影響されずに配置ピッチを小さくすることができる。
【0038】
なお、図1では、第3レンズL3は、一枚のレンズで構成されているが、複数枚のレンズ群で構成されてもよい。複数枚のレンズ群で構成する場合、少なくとも1つのレンズが、凹面を向けた負のパワーを持つレンズで構成され、かつ、各レンズのいずれかの面が非球面となる。この場合、当該レンズ群のうち、最も投影側に位置するレンズの出射面が平面であることが好ましい。
【0039】
次に、投影レンズに入射された光が出射されるまでの光線を図2に示す。図2では、画像生成部Dによって生成される画像光の光束のうち、光軸に沿った主光線と最外光線を示している。図2に示すように、画像生成部Dから出射された画像光は、正のパワーを持つ第1レンズL1によって集光され、絞りSを透過した後、第2レンズL2の凹曲面の入射面f3に入射される。第2レンズL2に入射された画像光は、その有効光束径が拡がるように進み、反射面f5によって反射されて出射面f4から出射される。出射面f4にて拡散された画像光は、負のパワーを持つレンズである第3レンズL3によってさらに拡散されて、広角に出射される。
【0040】
光源側から、正のパワーを持つレンズ、絞り、偏向レンズ、負のパワーを持つレンズを配置することで、偏向レンズに入射される画像光の有効光束を小さくして偏向レンズ(特に入射側)をコンパクトにしつつ、投影する投影像の画角を大きくすることができる。
【0041】
投影レンズ1の画角は、例えば10°以上であり、好ましくは30°以上である。低収差を確保するため、特に第2レンズL2には高い屈折力を持たせることが好ましい。例えば、高い屈折力を確保するため、プラスチック製のレンズよりもガラス製のレンズであることが好ましく、第2レンズL2に、ガラス製のレンズを用いることもできる。なお、画角の上限は、例えば120°であり、100°未満が好ましい。
【0042】
また、第3レンズL3から出射される画像光の直径φ2は、画像生成部Dによって生成される画像光の直径φ1以上(φ1≦φ2)であることが好ましく、直径φ1よりも大きいことが好ましい。
【0043】
続いて、図3では、第2レンズの各寸法を説明する概略図を示す。なお、入射面f3および出射面f4は便宜上、平面で記載しているが、実際は、図1に示すように、凹曲面および凸曲面である。また、第2レンズは周辺側が一部欠損した図としている。なお、図3では、第2レンズに入射された画像光の光束における最外光線e、eも示している。
【0044】
第2レンズL2において、第2レンズL2に入射する画像光の有効光束の半径をA、第2レンズL2から出射する画像光の有効光束の半径をB、第2レンズL2に入射する画像光の入射光軸(図3では光軸O)と第2レンズL2から出射する画像光の出射光軸(図3では光軸O)とのなす角度をθ1、入射面f3から入射光軸と出射光軸との交点Pまでの入射光軸方向の距離をC1、入射光軸と出射光軸との交点Pから出射面f4までの出射光軸方向の距離をC2とすると、下記の式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
C1×tan(θ1/2)≧A・・・(1)
C2×tan(θ1/2)≧B・・・(2)
【0045】
上記式(1)および式(2)を満たすことで、第2レンズL2に入射する画像光および第2レンズL2から出射する画像光の光線を損なわずに第3レンズL3へ向けて偏向でき、例えば投影像の光量などを確保することができる。
【0046】
また、反射面f5と光軸Oとのなす角度(例えば45°未満の角度)がθ1/2の場合において、第2レンズL2の入射側レンズ半径をA’、第2レンズL2の出射側レンズ半径をB’とすると、上記の式(1)および式(2)は、下記の式(4)および(5)に置き換えることができる。
A’≧A・・・(4)
B’≧B・・・(5)
なお、入射側レンズ半径A’は、入射面f3を光軸Oと直交する面で切断した断面の最大円の半径である。出射側レンズ半径B’は、出射面f4を光軸Oと直交する面で切断した断面の最大円の半径である。
【0047】
また、第2レンズL2において、第2レンズL2に入射する画像光の最外光線と入射光軸(図3では光軸O)とのなす角度をθ2、使用環境下の屈折率をn1、第2レンズL2の屈折率をn2とすると、下記の式(3)を満たすことが好ましい。
90°-(θ1/2)-θ2>arc・sin(n1/n2)・・・(3)
屈折率n1は、例えば使用環境下が空気中である場合、値は「1」となる。屈折率n2は、例えば第2レンズL2の材質がアクリル樹脂の場合、値は「1.49」となる。
【0048】
上記の式(3)を満たすことで、第2レンズL2に入射された画像光が全反射されることになり、例えば投影像の光量を確保することができ、投影対象に表示される投影像が薄くなったり、暗くなったりすることを防止できる。なお、上記の式(3)の左辺に相当する角度は、図3中の角度αとなる。
【0049】
第2レンズL2において、出射部における有効光束の断面積は、入射部における有効光束の断面積よりも大きいことがより好ましい。言い換えると、図3においてA<Bであることが好ましい。出射部の有効光束の断面積は、光軸Oに対して直交する面で切断した有効光束の断面の面積(図3では円面積)である。入射部の有効光束の断面積は、光軸Oに対して直交する面で切断した有効光束の断面の面積(図3では円面積)である。
【0050】
本発明の投影レンズは、小型化の観点からは、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズがそれぞれ1枚で構成された3枚のレンズで構成されることが好ましい。なお、本発明の投影レンズは、上記図1図3の構成に限定されるものではない。例えば、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、および絞り以外の光学素子を有する構成としてもよい。
【0051】
図4には、本発明の投影レンズを照明装置に適用した一例を示す。この照明装置11は、例えば、2種の絵柄を投影対象tの同一箇所に重ね合わせることで、1つの重ね合わせ像を投影する重ね合わせ投影装置である。その結果、例えば後述の図5および図6に示すように、立体感を持った投影が可能となる。
【0052】
図4に示すように、照明装置11は、並列に配置された第1の光源12aおよび第2の光源12bと、集光レンズ13と、第1の光源12aに対応する第1の画像生成部14aおよび第2の光源12bに対応する第2の画像生成部14bと、本発明の投影レンズとしての投影レンズ15とを有している。2種の絵柄の画像光は、それぞれ画像生成部14a、14bによって生成される。なお、図4は、図1図2で示した構成図を上側から眺めたような図を示している。
【0053】
光源12a、12bには、それぞれ上述した光源を用いることができる。図4では、集光レンズ13は単一のレンズからなり、2つの入射面および2つの出射面を有している。集光レンズ13の各入射面は光源側に凸で形成され、各出射面は投影側に凸で形成されており、光源12a、12bからそれぞれ出射された光が集光される。集光レンズ13から出射された光は、画像生成部14a、14bを透過し画像光がそれぞれ生成される。
【0054】
図4では、画像生成部14a、14bによって生成された第1の画像光および第2の画像光がそれぞれ、投影レンズ15に入射される。投影レンズ15は、各画像光を投影対象tの同一箇所に投影する投影レンズであって、光源側より順に配置された第1レンズL11a、L11b、絞り、第2レンズL12a、L12bと、第3レンズL13とを有する。第1レンズ、絞り、および第2レンズは、それぞれ2つずつ光軸方向と平行に並列に配置されている。一方、第3レンズL13は単一のレンズで形成されている。
【0055】
第1レンズL11a、L11bは、光源側に凸面を向けた少なくとも一方の面が非球面のレンズであり、図4では、第1レンズL11a、L11bの入射面および出射面の両面が非球面である。第2レンズL12a、L12bは、少なくとも一方の面が非球面で、該第2レンズL12a、L12bに入射された画像光を反射面によって第3レンズL13へ向けて偏向させる偏向レンズである。図4では、第2レンズL12a、L12bの入射面および出射面の両面が非球面である。
【0056】
第3レンズL13は、光源側に凹面を向けた少なくとも一方の面が非球面の負のパワーを持つレンズである。具体的には、第3レンズL13は、第2レンズL12aの出射面に対向する第1の凹面(第1の入射面)と、第2レンズL12bの出射面に対向する第2の凹面(第2の入射面)を有し、これらが隣接して接続されている。また、第3レンズL13の投影側の面は、一様に平面で形成されている。この場合、画像生成部14aに基づく第1の画像光が出射される第1の出射面および画像生成部14bに基づく第2の画像光が出射される第2の出射面は、いずれも平面で、かつ、これら出射面の領域(図4のQの箇所)が互いに一部重複している。
【0057】
図4に示すように、照明装置11において、投影レンズ15の最前形状(最も投影側のレンズ面)を平面とすることで、光線交差に左右されずに、投影レンズ15から出射される各画像光を一部(図4のQの箇所)重ね合わせることができる。これに対して、例えば最も投影側のレンズ面が投影側に凸曲面の場合には、各画像光が互いに干渉することから、凸曲面同士の領域を重複させることが難しく、結果として、各レンズ群の配置ピッチが大きくなる。そのため、図4に示すように、両出射面を平面とし、かつ、出射面の領域を互いに一部重複させることで、並列に配置された各レンズ群の配置ピッチを小さくすることができ、投影対象tに投影される投影像iaと投影像ibのズレ量を小さくすることができる。その結果、例えば1つの重ね合わせ像とした場合に、立体感を持たせつつ、位置ズレのない画像となる。なお、図4では、説明上、ズレ量を誇張して記載している。
【0058】
また、投影像iaと投影像ibのズレ量を小さくする観点から、画像生成部14a、14bによって生成される各画像光の直径は、第3レンズL13から出射される各画像光の直径以下であることが好ましい。画像生成部14a、14bは互いに一部を重ね合わせることができないが、第3レンズL13の各出射面は、図4に示すように互いに一部を重ね合わせることができるため、重ね合わせることが可能な部分を有効に使用でき、ズレ量を小さくすることに繋がる。
【0059】
図5および図6には、各投影像ia、ibと重ね合わせ像(ia+ib)をそれぞれ示す。図5では、投影像ia(周辺側)が鮮明さの高い画像であり、投影像ib(中心側)が鮮明さの低い画像である。また、図6では、投影像ia(周辺側)が鮮明さの低い画像であり、投影像ib(中心側)が鮮明さの高い画像である。このように、鮮鋭度に差をつけたそれぞれを重ね合わせることにより、遠近感が表現でき、立体感を持った投影が可能となる。なお、光源を1つとした単一のレンズ群では、例えば、周辺の鮮鋭度を低くすることは比較的容易であるとしても、例えば中心側のみ、あるいは部分的に鮮鋭度を低くしたり高くすることは困難である。
【0060】
本発明の照明装置は、図4図6で説明した構成に限定されるものではない。例えば、図4では、投影レンズ15において、第1レンズおよび第2レンズは、それぞれ2つずつ別体のものとしたが、第1レンズや第2レンズが、それぞれ単一のレンズで形成されていてもよい。また、図4では、2つの光源によって2つの画像光を生成しそれらを投影する構成としたが、それ以上の光源を用いて対応する画像光を生成するようにしてもよい。
【0061】
また、投影像iaあるいは投影像ibの光源色を変えて、色目違いの投影表現としてもよい。この場合、例えば、白ベースの絵柄に赤の絵柄を追加するような2灯仕様とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の投影レンズは、基板の光軸方向に限定されずに良好な解像度の投影像が投影可能であるので、例えば、既製品の既存基板に対しても任意の投影方向へ投影させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 投影レンズ
D 画像生成部
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
S 絞り
11 照明装置
12a 第1の光源
12b 第2の光源
13 集光レンズ
14a 第1の画像生成部
14b 第2の画像生成部
15 投影レンズ
L11a、L11b 第1レンズ
L12a、L12b 第2レンズ
L13 第3レンズ
ia、ib 投影像
t 投影対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6